特許第5896135号(P5896135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5896135
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】無線通信装置及び通信確立方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 74/08 20090101AFI20160317BHJP
   H04W 72/08 20090101ALI20160317BHJP
   H04W 84/18 20090101ALI20160317BHJP
   H04J 1/00 20060101ALI20160317BHJP
【FI】
   H04W74/08
   H04W72/08 110
   H04W84/18
   H04J1/00
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-46249(P2012-46249)
(22)【出願日】2012年3月2日
(65)【公開番号】特開2013-183317(P2013-183317A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2015年1月23日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、総務省、戦略的情報通信研究開発推進制度、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(72)【発明者】
【氏名】田久 修
(72)【発明者】
【氏名】山北 恭之
(72)【発明者】
【氏名】笹森 文仁
(72)【発明者】
【氏名】半田 志郎
(72)【発明者】
【氏名】藤井 威生
【審査官】 久慈 渉
(56)【参考文献】
【文献】 再公表特許第2004/082213(JP,A1)
【文献】 特開昭61−280130(JP,A)
【文献】 特開2009−267995(JP,A)
【文献】 田久 修,外3名,マルチチャネル無線アクセスにおける学習型占有率測定法と高速ランデブチャネルの実現,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.111 No.13,日本,社団法人電子情報通信学会,2011年 4月14日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−2
CT WG1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチャネルを順次サーチして、各々の前記チャネルが利用されている時間の割合である占有率を算出する無線環境測定部と、
前記チャネルの各々の占有率に基づいて、各々の前記チャネルに対してランキングを生成し、該ランキングに対し予め設定されている確率に基づき、前記無線環境測定部のサーチする前記チャネルを決定するチャネル接続決定部と、
前記複数のチャネルのうちのいずれかで他局を呼び出すときに、前記無線環境測定部が実際に算出した前記占有率に基づいて、前記複数のチャネルで取りうる占有率すべてに対する発生確率を求め、さらに、求めたすべての該発生確率から、前記複数のチャネルで取りうる占有率の組み合わせの中で最高確率となる組み合わせを選択し、前記選択した組み合わせに基づき、前記チャネルに対する送信用ランキングを生成し、該送信用ランキングに対し予め設定されている確率に基づき、前記他局を呼び出すためのチャネルを決定する送信用チャネル決定部を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記送信用チャネル決定部が、前記取りうる占有率の低い前記チャネルほど、確率の高い前記送信用ランキングに割り当てることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記送信用チャネル決定部が、前記他局を呼び出せなかったとき、前記最高確率よりも順次一つずつ低い確率の前記取りうる占有率の組み合わせを選択し、選択した組み合わせに基づき前記送信用ランキングを生成することを特徴とする請求項1又は2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記送信用チャネル決定部が、前記他局を呼び出せなかったとき、そのチャネルにおける前記ランキングに基づいて予め設定されている確率aを用いて、前記最高確率となる組み合わせの該最高確率に(1−a)を乗算して確率を修正し、この修正した組み合わせ及び残りの組み合わせの中で、最も高い確率となる組み合わせを選択し、選択した組み合わせに基づき前記送信用ランキングを生成することを特徴とする請求項1又は2に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記送信用チャネル決定部が、前記他局を呼び出せなかったとき、そのチャネルで呼び出しを繰り返すことを特徴とする請求項1又は2に記載の無線通信装置。
【請求項6】
複数のチャネルを順次サーチして、各々の前記チャネルが利用されている時間の割合である占有率を算出する無線環境測定ステップと、
前記チャネルの各々の占有率に基づいて、各々の前記チャネルに対してランキングを生成し、該ランキングに対し予め設定されている確率に基づき、前記無線環境測定ステップでサーチする前記チャネルを決定するチャネル接続決定ステップと、
前記複数のチャネルのうちのいずれかで他局を呼び出すときに、前記無線環境測定ステップで実際に算出した前記占有率に基づいて、前記複数のチャネルで取りうる占有率すべてに対する発生確率を求め、さらに、求めたすべての該発生確率から、前記複数のチャネルで取りうる占有率の組み合わせの中で最高確率となる組み合わせを選択し、前記選択した組み合わせに基づき、前記チャネルに対する送信用ランキングを生成し、該送信用ランキングに対し予め設定されている確率に基づき、前記他局を呼び出すためのチャネルを決定する送信用チャネル決定ステップを備え、
前記無線環境測定ステップとチャネル接続決定ステップとをループ処理することを特徴とする通信確立方法。
【請求項7】
前記送信用チャネル決定ステップで、前記取りうる占有率の低い前記チャネルほど、確率の高い前記送信用ランキングに割り当てることを特徴とする請求項6に記載の通信確立方法。
【請求項8】
前記他局を呼び出せなかったときに、前記送信用チャネル決定ステップで、前記最高確率よりも順次一つずつ低い確率の前記取りうる占有率の組み合わせを選択し、選択した組み合わせに基づき前記送信用ランキングを生成することを特徴とする請求項6又は7に記載の通信確立方法。
【請求項9】
前記他局を呼び出せなかったときに、前記送信用チャネル決定ステップで、呼び出せなかった該チャネルにおける前記ランキングに基づいて予め設定されている確率aを用いて、前記最高確率となる組み合わせの該最高確率に(1−a)を乗算して確率を修正し、この修正した組み合わせ及び残りの組み合わせの中で、最も高い確率となる組み合わせを選択し、選択した組み合わせに基づき前記送信用ランキングを生成することを特徴とする請求項6又は7に記載の通信確立方法。
【請求項10】
前記他局を呼び出せなかったときに、前記送信用チャネル決定ステップで、呼び出せなかった該チャネルで呼び出しを繰り返すことを特徴とする請求項6又は7に記載の通信確立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信における通信装置及び通信確立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周波数資源の枯渇に対する対策として、コグニティブ無線が有力視されている。コグニティブ無線は、無線機が自由に周波数チャネルを使用できる環境で、他の無線機が利用していないチャネルを無線機自らが探索し、通信接続に活用する。その結果、実効的な周波数利用効率を高め、周波数資源の枯渇問題への解決策として有力視されている。
【0003】
コグニティブ無線では、送信機と受信機が異なるチャネルに接続しているため、デッドロック状態と呼ばれる相互の信号が受信できない状態が頻繁に発生する。それを回避し、送信受信機のチャネルを同一にする手順として、ランデブチャネルあるいはアクセスネゴシエーションが検討されている。
【0004】
これまで報告された関連技術として、ランデブチャネル(ランデブ)確立を専門とする周波数チャネルを用意し、すべての無線機は、このチャネルから情報を受信することで、デッドロック状態を回避する報告がある(特許文献1、非特許文献1)。しかし、特定チャネルに無線機が絶えず接続していなければならないため、コグニティブ無線に必要な機能となる周辺チャネルの環境監視が困難になる。さらに、無線機が増加すると、制御信号が集中するため、共存のためのアクセスプロトコルを新たに設立しなければならない。その結果、制御信号の送信の待ち時間が大きくなることや、アクセスプロトコルに準拠しない無線機は接続できなくなる問題が生じる。この報告では、ランデブ用の時間を設定する方法も提案されているが、データ送信の停止によるスループット低下や、すべての無線端末において同期を確立しなければならないため、技術的な複雑さが高い。
【0005】
また、この非特許文献1では、通信接続を希望する無線機がチャネルを任意に選択して、通信接続要求を示す制御信号をすべての無線機に放送する。そして、希望する無線機がそれを受け取った場合に、応答信号を返信する。この方法をランダムホッピング(RH)法と呼ぶ。もし、一定時間経過しても応答信号が返信されない場合には、そのチャネルに所望無線機が接続していないと判断し、接続するチャネルを切り替える。RH法では、無線機の任意接続性を維持し、一方で、同期を不要とするため、技術的な複雑さが低いという利点がある。しかし、接続無線機が接続するチャネルを探索するまでに、制御信号を繰り返し送信しなければならないため、時間を要する。さらには、制御信号送信に多くのエネルギーを消費する欠点がある。
【0006】
また、各無線機が現在接続しているチャネルについての情報(周波数チャネルを選択する順番を示す情報、接続している端末などの情報などのネットワーク構成内容)をビーコンと呼ばれる信号に含めて、絶えず定期的に周辺無線機に通知する手法について報告がある(特許文献2)。その結果、すべての無線機が接続しているチャネル番号を知ることができるため、デッドロック状態を回避できる。しかし、本手法では、すべての無線機が定期的にビーコンを送信しなければならず、消費電力が大きい。データ情報以外の信号を送信するため、伝送レートの低下をもたらす。また、本手法では、すべてのチャネルの無線構成を絶えず記録しなければならないため、記憶すべき情報量が大きい。加えて、すべての無線機がビーコンによる同期を確立することを前提としているため、同期を確立しない無線機が存在した場合に適用できない。また、複数無線機によるビーコンの同時送信を回避するため、CSMA/CAなどのアクセスプロトコルが必要となるため、ビーコンの送信方法が複雑になり、また多くの待ち時間が生じる可能性がある。
【0007】
また、特許文献2では、新規の無線機が通信を確立する際に、接続していない他のチャネルの情報を受け取ることができないことを前提としてシステムの提案を行っている。具体的には、他チャネルのビーコンに含めた情報を得るため、あらかじめ別の無線機が、他チャネルのビーコン情報を受信しておき、新規無線機に通知する方法が提案されている。よって、特許文献2で提案される手法では、協力的な他の無線機の存在が前提となっているため、コグニティブ無線のように自律分散で、他の無線機との協力が必ずしも得られない環境では適用できない。
【0008】
また、特許文献2では、マルチチャネル環境(周波数チャネルが複数ある環境)における、チャネル接続方法については、乱数を用いた接続ルールを例に示すのみとなっており、確定的な接続ルールについての規定がされていない。
【0009】
また、マルチチャネル無線ネットワークにおいて、所定のネットワーク情報共有手順に基づきネットワーク情報を配信するネットワーク情報装置システムについて報告がある。また、ビーコン情報を代理端末と呼ばれる他のシステムが受信しておき、システム間で各チャネル情報を共有するシステムについて報告がある(特許文献3、4)。しかし、これらはいずれも複数の無線システムが異なる周波数チャネルに接続している環境において、各チャネル状態を示すビーコン情報を得ることを前提としているため、接続チャネル以外の情報は取得できず、別の端末によりあらかじめ取得された情報を利用する。そして、取得したデータを共有することで、チャネル全体の無線通信環境状況を認識する手法である。これは、上述の特許文献2と同様に協力無線機の存在を前提にしているため、コグニティブ無線への適用は困難である。
【0010】
また、非特許文献2では、ランデブチャネルに有利な、待ち受け端末が接続しているチャネル設定方法を規定している(非特許文献2)。無線機の各チャネルへの接続確率を、測定した占有率に反比例するように設定することで、占有率が低いチャネルへの接続時間を拡大し、ランデブチャネルに有利な低占有率のチャネルに受信機を集め、そのチャネルで、上述のランダムホッピング(RH)法と同様に、制御信号と応答信号の交換をする。しかし、この手法では、無線機が接続する確率が占有率に応じて柔軟に切り替わるため、後述するチャネル接続予測が困難になる。加えて、占有率が極めて高いチャネルに対しては、接続確率が極めて低く、ランデブチャネルを確立する無線機が、チャネル番号の推定を誤った時に、デッドロック状態になりやすいという危険がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2010−505295号公報
【特許文献2】特開2005−45637号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】K.C.Chen、R. Prasad, Cognitive radio networks, John Wiley & Sons Ltd, 2009年
【非特許文献2】田久 修、外3名,“マルチチャネル無線アクセスにおける学習型占有率測定法と高速ランデブチャネルの実現”,電子情報通信学会、ソフトウェア無線研究会,2011年4月,SR2011-4,p.19-24
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記従来技術が有する課題に鑑みてなされたものであり、無線通信、特にコグニティブ無線の環境において、ランデブチャネルによる遅延の少ない、高速なランデブチャネルの方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
即ち、前記の目的を達成するためになされた、請求項1に記載された無線通信装置は、
複数のチャネルを順次サーチして、各々の該チャネルが利用されている時間の割合である占有率を算出する無線環境測定部と、
各々の該占有率に基づいて各々の該チャネルに対してランキングを生成し、該ランキングに対し予め設定されている確率に基づき、該無線環境測定部のサーチする該チャネルを決定するチャネル接続決定部とを備えることを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載された無線通信装置は、請求項1に記載されたものであり、前記チャネル接続決定部が、前記占有率の低い前記チャネルほど、確率の高い前記ランキングに割り当てることを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載された無線通信装置は、請求項1又は2に記載されたものであり、前記無線環境測定部のサーチで自局への呼び出しを検出したときに、自局を呼び出した他局と通信を確立することを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載された無線通信装置は、請求項1から3のいずれかに記載されたものであり、前記複数のチャネルのうちのいずれかで他局を呼び出すときに、前記チャネル接続決定部が決定するチャネルで呼び出しを行うことを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載された無線通信装置は、請求項1から3のいずれかに記載されたものであり、前記複数のチャネルのうちのいずれかで他局を呼び出すときに、
前記無線環境測定部が実際に算出した前記占有率に基づいて、前記複数のチャネルで取りうる占有率すべてに対する発生確率を求め、さらに、求めたすべての該発生確率から、該複数のチャネルで取りうる占有率の組み合わせの中で最高確率となる組み合わせを選択し、選択した組み合わせに基づき、該チャネルに対する送信用ランキングを生成し、該送信用ランキングに対し予め設定されている確率に基づき、該他局を呼び出すための該チャネルを決定する送信用チャネル決定部を備えることを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載された無線通信装置は、請求項5に記載されたものであり、前記送信用チャネル決定部が、前記取りうる占有率の低い前記チャネルほど、確率の高い前記送信用ランキングに割り当てることを特徴とする。
【0020】
請求項7に記載された無線通信装置は、請求項5又は6に記載されたものであり、前記送信用チャネル決定部が、前記他局を呼び出せなかったとき、前記最高確率よりも順次一つずつ低い確率の前記取りうる占有率の組み合わせを選択し、選択した組み合わせに基づき前記送信用ランキングを生成することを特徴とする。
【0021】
請求項8に記載された無線通信装置は、請求項5又は6に記載されたものであり、前記送信用チャネル決定部が、前記他局を呼び出せなかったとき、そのチャネルにおける前記ランキングに基づいて予め設定された確率aを用いて、前記最高確率となる組み合わせの該最高確率に(1−a)を乗算して確率を修正し、この修正した組み合わせ及び残りの組み合わせの中で、最も高い確率となる組み合わせを選択し、選択した組み合わせに基づき前記送信用ランキングを生成することを特徴とする請求項5又は6に記載の無線通信装置
【0022】
請求項9に記載された無線通信装置は、請求項5又は6に記載されたものであり、前記送信用チャネル決定部が、前記他局を呼び出せなかったとき、そのチャネルで呼び出しを繰り返すことを特徴とする。
【0023】
請求項10に記載された通信確立方法は、
該複数のチャネルを順次サーチして、各々の該チャネルが利用されている時間の割合である占有率を算出する無線環境測定ステップと、
各々の該占有率に基づいて各々の該チャネルに対してランキングを生成し、該ランキングに対し予め設定されている確率に基づき、該無線環境測定ステップでサーチする該チャネルを決定するチャネル接続決定ステップとを備え、該無線環境測定ステップとチャネル接続決定ステップとをループ処理することを特徴とする。
【0024】
請求項11に記載された通信確立方法は、請求項10に記載されたものであり、前記チャネル接続決定ステップが、前記占有率の低い前記チャネルほど、確率の高い前記ランキングに割り当てることを特徴とする。
【0025】
請求項12に記載された通信確立方法は、請求項10又は11に記載されたものであり、前記無線環境測定ステップのサーチで自局への呼び出しを検出したときに、自局を呼び出した他局と通信を確立することを特徴とする。
【0026】
請求項13に記載された通信確立方法は、請求項10から12のいずれかに記載されたものであり、前記複数のチャネルのうちのいずれかで他局を呼び出すときに、前記チャネル接続決定ステップで決定されたチャネルで呼び出しを行うことを特徴とする。
【0027】
請求項14に記載された通信確立方法は、請求項10から12のいずれかに記載されたものであり、前記複数のチャネルのうちのいずれかで他局を呼び出すときに、
前記無線環境測定ステップで実際に算出した前記占有率に基づいて、前記複数のチャネルで取りうる占有率すべてに対する発生確率を求め、さらに、求めたすべての該発生確率から、該複数のチャネルで取りうる占有率の組み合わせの中で最高確率となる組み合わせを選択し、選択した組み合わせに基づき、該チャネルに対する送信用ランキングを生成し、該送信用ランキングに対し予め設定されている確率に基づき、該他局を呼び出すための該チャネルを決定する送信用チャネル決定ステップを備えることを特徴とする。
【0028】
請求項15に記載された通信確立方法は、請求項14に記載されたものであり、前記送信用チャネル決定ステップで、前記取りうる占有率の低い前記チャネルほど、確率の高い前記送信用ランキングに割り当てることを特徴とする。
【0029】
請求項16に記載された通信確立方法は、請求項14又は15に記載されたものであり、前記他局を呼び出せなかったときに、前記送信用チャネル決定ステップで、前記最高確率よりも順次一つずつ低い確率の前記取りうる占有率の組み合わせを選択し、選択した組み合わせに基づき前記送信用ランキングを生成することを特徴とする。
【0030】
請求項17に記載された通信確立方法は、請求項14又は15に記載されたものであり、前記他局を呼び出せなかったときに、前記送信用チャネル決定ステップで、呼び出せなかった該チャネルにおける前記ランキングに基づいて予め設定された確率aを用いて、前記最高確率となる組み合わせの該最高確率に(1−a)を乗算して確率を修正し、この修正した組み合わせ及び残りの組み合わせの中で、最も高い確率となる組み合わせを選択し、選択した組み合わせに基づき前記送信用ランキングを生成することを特徴とする。
【0031】
請求項18に記載された通信確立方法は、請求項14又は15に記載されたものであり、前記他局を呼び出せなかったときに、前記送信用チャネル決定ステップで、呼び出せなかった該チャネルで呼び出しを繰り返すことを特徴とする。
【0032】
本発明に係る無線通信装置及び通信確立方法では、接続待ちの無線機は、チャネルの利用状況を一定時間記憶し、時間に対するチャネルを利用している時間の割合(占有率)を算出する。そして、占有率が最も低いチャネルへの接続時間を、他のチャネルよりも大きくする。その結果、待ち受けの無線機は占有率が低いチャネルに長時間待機している。一方、通信を新規に確立したい無線機は、接続希望の無線機が接続するチャネルを推定するため、占有率を測定する。そして、測定した占有率情報から、理論式により各チャネルへの接続確率を導出する。そして、最も存在する確率が高いチャネルに対して制御信号を送信する。
【0033】
本発明に係る無線通信装置及び通信確立方法の特徴は、コグニティブ無線において空きチャネルを探索しようとする動作を活用している点である。待ち受け無線機が、占有率の低いチャネルへの接続時間を長くすることにより、占有率と接続時間に関係を与え、他の無線機が占有率を測定することで、無線機が接続しているチャネルの推定を可能にしている。
【0034】
従来技術と比較した本発明の優位点としては、制御信号用のチャネルが不要な点が挙げられる。これによって、周波数資源を効率的に利用することが可能になる。また、上述したランダムホッピング法と比較しても、接続チャネルの推定を行うことにより高速化を実現している。また、他の協力無線機、協力無線システムへの依存がなく、簡易に確立することが可能である。
【0035】
無線通信技術への適用が期待され、既存技術では、Bluetooth(登録商標)と呼ばれる、パソコンにおける周辺機器を接続する無線規格でランデブチャネルが利用されており、本発明に係る技術の適用が期待される。制御信号の交換によりランデブチャネルを確立することは、標準等で仕様として定められているが、制御信号を送信するチャネル番号は実装に任されており、本発明が適用できる範囲であると考えられる。関連技術分野として、ロボットなどに利用される自動制御技術は、環境認識と動作決定がなされるため、本発明が好適に適用可能である。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る無線通信装置及び通信確立方法によれば、無線通信環境において、チャネル接続決定部又はチャネル接続決定ステップによる、占有率のランキングを活用した効率的な接続チャネル決定が行われることで、短時間でランデブチャネルを確立することが可能な無線通信装置及び通信確立方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の実施形態の一例として想定される無線機の要部を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態の一例として想定される無線通信環境の概要図である。
図3】待ち受け端末によるチャネル接続を決定する手順についてのフローチャートである。
図4】制御信号を送信するチャネルを選択する手順についてのフローチャートである。
図5】新規に通信を確立するのに必要な時間(スロット数)特性のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に本発明に係る無線通信装置及び通信確立方法を実施するための形態について説明する。
【0039】
本発明に係る無線通信装置である無線機は、その要部を図1に示すように、無線環境測定部10、チャネル接続決定部20、制御信号送信用チャネル決定部30、制御信号交換処理部40を備えている。無線環境測定部10は受信機であり、待ち受け状態のときに、チャネル接続決定部20が決定するチャネルで複数のチャネルを順次サーチして、他局から自局への呼び出しの有無を監視する。自局への呼び出しを検出したときは、そのチャネルで他局と通信を確立する。また、後に詳述するように、無線環境測定部10は、複数のチャネルをサーチするときに、各チャネルの占有率を算出する。制御信号交換処理部40は送信機であり、制御信号送信用チャネル決定部30が決定するチャネルで他局を呼び出す制御信号を送信する。同図では、受信用アンテナと送信用アンテナとを備えている例を図示しているが、一つのアンテナで送受共用してもよい。
【0040】
図2は、本発明の実施形態の一例として想定される無線通信環境を示す。通信を確立している無線機(通信中の無線端末)、待ち受け中の無線機(通信を待ち受けしている無線端末)、通信を確立するためランデブを確立しようとする無線機(通信確立を希望する無線端末)が存在する。それぞれは、任意のチャネルに接続しており、通信中の無線機は送受信機が同一のチャネルで通信を定期的に行う。一方、待ち受け端末は、あるチャネルに接続しており、そのチャネルから信号を受信することや、他の通信中の無線機の信号を検出して、チャネルの利用の有無を判断できる。
【0041】
本発明に係る無線通信装置及び通信確立方法は、2つのプロトコルから構成される。1つ目は、待ち受け端末によるチャネル接続を決定するプロトコルであり、2つ目は、ランデブチャネルを確立するために制御信号を送信するチャネルを選択するプロトコルである。
【0042】
(待ち受け端末によるチャネル接続を決定するプロトコル)
図3は、待ち受け端末によるチャネル接続を決定する手順についてのフローチャートを示す。以下このフローチャートに従って、プロトコルの詳細を説明する。まず、無線機は、無線環境測定部10により、接続可能なチャネル別に占有率を測定する(無線環境測定ステップS1)。ここで、占有率とは、チャネルが利用されている時間の割合である。占有率の測定方法の一例を示すと、各チャネルにおいて、一定期間(スロット)ごとにチャネルが使用されているか否か、つまりチャネルで電波が出されているか否かを検出し、その検出結果を順次、所定スロット数分記憶して、最新の所定スロット数の検出結果を可算平均する。最新の所定スロット数の検出結果の記録には、FIFO(First In First Out)型メモリを使用してもよい。例えば、あるチャネルにおいて、最新の100スロット(Mスロット)中、30スロット(kスロット)で電波が検出されたとき、占有率は30/100=0.3である。電波の検出は、例えば公知の検波回路を使用してその検波レベルを閾値判定する。
【0043】
占有率の測定方法には、他の方法を使用してもよい。
【0044】
占有率(利用状況の確認結果)は、チャネル別にそれぞれ用意されたメモリに個別に記憶する。同時に接続できるチャネルが1チャネルに限定しているため、無線機は絶えずチャネルを切り替えながら、占有率を測定する。獲得した占有率の結果を得た後、接続チャネルを決定するためのチャネル接続決定ステップS2に移る。
【0045】
チャネル接続決定ステップS2では、チャネル接続決定部20が、接続するチャネルを乱数で決定する。ただし、各チャネルへ接続する平均確率は測定した占有率に依存する。たとえば、占有率が低くなるほど高順位となるように、ランキングを生成する。そして、ランキングによってあらかじめ用意された確率で、各チャネルへの接続を決める乱数を生成する。ランキング(1st,2nd,…,Nth)と確率aとの関係は次の数式(1)としている。
【数1】
【0046】
ここで、Nは接続できるチャネルの個数を示している。また、上記数式(1)では、占有率が低いチャネルに対して、接続確率が高くなるように記載しているが、本発明はこれに限定されることはなく、接続確率が占有率と関連している限りであれば、任意に選択可能である。
【0047】
チャネル決定の乱数の生成法としては、0〜1までの一様乱数列を用いて、0〜a1stまでの値が出たら1stのチャネルを選択する方法で、各チャネルへの選択確率を任意に設定できる。
【0048】
次に、確率に基づく乱数により、接続するチャネルを切り替える。切り替える時間周期は、任意に設定可能であり、一定時間が経過した後に、切り替える方法や、新たに測定結果が得られるたびに、切り替えてもよい。
【0049】
本方式では、無線環境である占有率と接続チャネルとの関連付けを与えている。よって、外部の無線機も占有率を正確に得ることができれば、無線機が接続している確率が高いチャネルを、数式(1)に従い予測することが可能である。
【0050】
(制御信号を送信するチャネルを選択するプロトコル)
次に、通信確立を希望する無線機が、待ち受け端末の一つと通信を確立するためのランデブチャネルのプロトコルを説明する。図4にプロトコルのフローチャートを示す。フローチャートでは、無線環境測定ステップS1、チャネル接続決定ステップS2、時間判定ステップS3、制御信号送信用チャネル決定ステップ(送信用チャネル決定ステップ)S4、制御信号交換処理ステップS5、判定ステップS6の処理を行う。このうち、無線環境測定ステップS1、及びチャネル接続決定ステップS2は、前述の待ち受け端末における処理方法と同一である。
【0051】
無線機は、待ち受け端末と通信確立を行うときに、先ず、無線環境測定ステップS1、及びチャネル接続決定ステップS2を任意の必要時間(時間判定ステップS3)だけ繰り返すループ処理を行う。なお、無線機は、他局と通信確立を行おうとする前には、待ち受け状態である。待ち受け状態では、前述の「待ち受け端末によるチャネル接続を決定するプロトコル」におけるステップS1、S2のループ処理が行われているので、その結果をそのまま用いてもよい。また、無線機は、このループ処理を、他局を呼び出そうとするときにだけ、行ってもよい。このステップS1〜S3のループ処理で、任意の時間、環境測定を実施し、占有率を得て、この占有率から占有率が低い場合を上位としたチャネルのランキングを生成し、数式(1)で示される一覧表を用いて、ランキングと受信機が接続している無線機との関係を得る。その結果、最も高い確率で、通信を行おうとしている他局(待ち受け端末)が接続(待ち受け)しているチャネル番号を特定することができる。したがって、この特定したチャネル番号で待ち受け端末を呼び出してもよい。
【0052】
しかし、待ち受け端末も、同様に無線環境測定ステップS1により得られた占有率から、チャネル番号を決定しているため、占有率が確率的に変動する。そこで、占有率の変動を予測する確率式を導入して、制御信号送信用チャネル決定部(送信用チャネル決定部)30が制御信号を交換するチャネルを選択する(制御信号送信用チャネル決定ステップS4)。ここで、制御信号とは、通信接続を希望する端末のアドレス情報を含む信号を指す。
【0053】
制御信号送信用チャネル決定ステップS4について、以下具体的に説明する。各無線機は、Mビットサイズのメモリに、各スロットでの通信確立の有無を格納し、Mビット中kビット(k=0、1、…、M)が通信中であるとする結果を得たとする。その時の占有率は、k/Mとなる。よって、i番目のチャネル(i=1、2、…、N)の占有率がki/Mである確率f(ρi,M,ki)は次の数式(2)と与えられる。ρiは、無線環境測定ステップS1においてチャネルiで実際に算出された占有率である。
【数2】
【0054】
ここで、Mk は、Mの候補からkを取り出す際の組み合わせ数を返す関数である。これにより、ki=0、1、…、Mまで順次切り替えることで、それぞれのチャネルにおいてそれぞれの占有率と受信機が測定する確率を求めることができる。
【0055】
つまり、チャネルiにおいて取りうる占有率ρは0/M〜M/MまでのM+1通りある。数式(2)は、無線環境測定ステップS1で実際に測定された占有率ρiを式中に入れて計算することで、M+1通りのそれぞれの占有率ρが発生する確率を求めている。
【0056】
ここで、受信機のメモリサイズはすべての無線機においてMと規定しているが、無線機固有のメモリサイズに設定しても良い。その場合、事前にメモリサイズを規定した結果を周知するため、上記特許文献2のように、ビーコン情報であらかじめ他の無線機に周知する方法を使用することができる。
【0057】
数式(2)を用いて、1チャネルあたりM+1通りの各占有率ρに対して、それらが与えられる確率を導出する。すべてのチャネルで確率を導出する。導出した結果を表1の確率テーブルに示す。
【表1】
【0058】
次に、各チャネル番号において取りうる占有率ρのすべての組み合わせについての発生確率を算出する。占有率組み合わせ確率gは次の数式(3)となる
【数3】
【0059】
ここで、ki∈1,2,.....,Mは、1、2、…、Mのいずれかの値をkiは取ることができることを意味している。また、kiは、kiが取りうるすべての場合を考慮することを示している。よって、すべてのki組み合わせ(言い換えると、すべての占有率の組み合わせ)の中から、最大の確率となる組み合わせを選択する。さらに、最大確率の組み合わせに準ずる、上位複数の順位の組み合わせも、数式(3)で与えられる確率とともに記録する。ここで、メモリサイズ(M)やチャネル数(N)が大きくなると、組み合わせ数が膨大になり、計算量が禁止的になる。そこで、各チャネルにおける考えられる占有率のうち、上位L個(L=1、2、など最大Mまでの整数)に制限して、組み合わせ数を絞ってもよい。
【0060】
最大の組み合わせ確率(g)より、得られた占有率の組み合わせから、低占有率を上位とするチャネルのランキング(送信用ランキング)を生成し、数式(1)との対応関係から、無線機による各チャネルへの接続確率を求める。この接続確率のもっとも高い確率となるチャネルを制御信号の交換用のチャネルとして決定する。数式(1)では、第1位のランキングのチャネルが最も滞在確率が高いため、第1位を制御用信号の交換に使用するチャネルとなる。しかし、先述したように、ランキングと接続確率は任意に決定してよいので、他の順位の場合が最大接続確率となる場合もある。
【0061】
上記の各プロトコルによってチャネルが決定された後、制御信号交換処理部40が、制御信号交換処理を行う(制御信号交換処理ステップS5)。制御信号の交換については、上述したRH法と同じく、接続を希望する無線端末のアドレスが記載された制御信号を選択したチャネルで報知し、所望とする無線機からの応答を待つ。所望とする無線機が、報知された制御信号を受信したときには、返答を示す信号を返信する。これにより、ランデブチャネルを確立できる。ただし、所望とする無線機が偶発的にそのチャネルに接続していないため、制御信号を受信できない場合には、応答信号が返信されない。RH法と同じく、一定時間の返答がない場合には、制御信号交換処理部40は失敗と判定する(判定ステップS6)。このとき、提案法では、送信用チャネル決定ステップS4に戻って、チャネル番号決定を見直すことができる。式(3)で示される、最大の組み合わせ確率(g)に準ずる、第2位の組み合わせ確率(g)から、得られた占有率の組み合わせから、低占有率を上位とするチャネルのランキングを生成し、そのチャネルを選択して制御信号送信用チャネル番号として選択することができる。これにより、受信機が測定した占有率が別の場合の可能性を考慮することができる。また、制御信号送信用チャネル番号を切り替える方法として、数式(1)の接続確率を考慮に入れて、切り替える方法も可能である。たとえば、数式(1)では、占有率が最も低いチャネルへの接続確率a1stが最も高くなる。そのチャネルにおいて、受信機が接続していない確率は(1-a1st)である。そこで、組み合わせ確率が最大となる確率に(1-a1st)を乗算することで、そのチャネルに受信機が接続し、占有率を測定した結果の確率を修正することができる。そこで、修正した確率とそれ以外の占有率組み合わせ確率の中から最大の確率となる場合を改めて、計算しなおすことができる。修正した、組み合わせ確率と残りの組み合わせ確率の中で、最大の確率となる、組み合わせを選択し、改めて最大接続確率となるチャネルを選択する。最大の確率となる組み合わせ確率を定式化すると次の数式(4)となる。
【数4】
【0062】
チャネル番号を見直す場合とは反対に、続けて同じチャネルを制御信号交換用のチャネルとして選択することも可能である。続けて同じチャネルで、制御信号を交換することで、偶発的に受信機が他のチャネルに接続していたために、制御信号が受信できなかった場合に対して、繰り返し制御信号を送信することで、確実に制御信号の受信が可能になる。
【0063】
<実施例>
本発明に係る無線通信装置及び通信確立方法の有効性を計算機シミュレーションにより評価する。無線環境は図2と同様であり、今回はチャネル数を2までに限定している。また、端末Aが通信確立を希望する無線端末、端末Bが接続先の端末であり、通信を待ち受けしている状態である。
【0064】
新規に無線通信を確立する無線機以外は、任意のチャネルで通信を確立していると仮定する。評価の簡易化のため、すべての無線機はスロット同期を確立しており、アクセスの有無はスロット毎に切り替わる。ただし、本実施例に係る方法では、スロット同期の必要性はない。チャネルの平均的な真の占有率をρ1、ρ2で規定する。占有率モデルとして、スロット毎に独立な一様乱数でモデル化し、各チャネルの平均的なアクセス率は占有率ρ1、ρ2にそれぞれ等しい。新規に無線通信を確立する2端末(端末AとB)は、各無線機の電波が放出されたとき、誤りなく信号を検出することができる。つまり、通信を確立していないが、確立していると判断する誤警報、及び通信を確立しているが、確立していないと判断する誤検出は、今回は簡単のため、発生しないとした。また、無線機が保有するメモリサイズは最大50ビットとし、利用状況を示す1ビット情報(0:利用されていない、1:利用さている)を格納する。本実施例においては、待機している端末は、すでに十分長い時間、環境を観測していると仮定し、メモリ内にすべての観測結果が格納されているとした。一方、データ通信を確立したい端末は、まだ、環境認識(無線環境測定ステップ)を実施していないため、メモリ内にチャネルの利用を示す情報は、格納されていない。各チャネルの観測は、1スロット毎に交互に行っている。また、今回は、制御信号の交換に失敗しても、同じチャネルに接続を継続し、繰り返し制御信号を送信した場合について評価している。
【0065】
図5に、新規に通信を確立するのに必要な時間(スロット数)特性を示す。横軸には、提案法において環境を認識するスロット数を示している。縦軸は、環境学習(無線環境測定ステップ及びチャネル接続決定ステップ)を実施した期間および制御信号の交換に要する総時間に対して、99%の確率でランデブチャネルが終了するまでの時間を示している。ここで、制御信号の交換では、チャネル選択を決定後、制御信号を送信する前に、スロットにおいて他の無線機が選択チャネルを利用していないかを確認するキャリアセンスを行う。キャリアセンスにより他の無線機のチャネルの利用が認められる場合には、そのスロットでの制御信号の発信は控え、待機する。待機による待ち時間も、制御信号の交換に要する時間として含める。制御信号の交換では、端末Aから端末Bへ制御信号を通知するのに必要な時間を1スロット、端末Aが認識し、端末Bに返答するまでに必要な時間を1スロットとする。ここで、端末Bが返答する際にも、キャリアセンスを行い、他の無線機が利用中の場合には待機する。よって、この待機時間も交換に要する時間に含める。さらに、端末Aが制御信号を送信したが、端末Bがそのチャネルに接続していないため、返答されない場合を考える。端末Bの返答の有無を確認するため端末Aは制御信号を送信後、絶えず信号検出を続け、端末Bの返答を待つ。そして、他の無線機の利用が終了し、空きチャネルの状態となったとき、端末Bの返答がない場合には、端末Aは制御信号の通知に失敗したと判断して、再度制御信号を送信する。このように、通知に失敗と認識するにも時間を要する。しかし、本評価では、制御信号が受信できなかったことを端末Aが認識するのに要する時間は無視している.また、学習時間0は、送信器側は、環境観測せずに、任意にチャネルを選択して、制御信号を送信した場合を示している。よって、従来法と同じ方法となる。また、ρ1、ρ2の値は、各チャネルにおける平均占有率を示している。さらに、数式(1)で示されるチャネルの選択基準は、a1st=0.9、a2nd=0.1とした。つまり、占有率が低いチャネルへの接続確率は0.9、高いチャネルは0.1である。
【0066】
図5より、ρ1=0.2、ρ2=0.8では、学習期間の増加に対して、ランデブチャネル確立に要する時間は、下に凸の傾向が認められる。学習時間が12スロットにおいて、ランデブ確立に要する時間が最少となっている。これより、受信機がより高確率で接続しているチャネルを、環境の観測学習により、高精度に選択することができることがわかる。しかし、学習期間を過剰に大きくした場合、ランデブチャネルに要する総時間が増加している。これは、環境学習期間を過剰に伸ばしても、チャネル選択を予測する精度の改善は認められず、一方で環境学習に消費する時間が大きくなり、ランデブチャネルの総時間が大きくなったと考えられる。このように、提案法を適用することによって、最少時間となる、学習期間が存在することがわかる。また、真の占有率が変化した場合に、最少となる学習期間は異なるため、学習期間については、切り替える機能(構成)を含める必要性があることがわかる。
【符号の説明】
【0067】
10は無線環境測定部、20はチャネル接続決定部、30は制御信号送信用チャネル決定部、40は制御信号交換処理部、S1は無線環境測定ステップ、S2はチャネル接続決定ステップ、S3は時間判定ステップ、S4は制御信号送信用チャネル決定ステップ、S5は制御信号交換処理ステップ、S6は判定ステップである。
図1
図3
図4
図2
図5