特許第5896139号(P5896139)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社IHIの特許一覧

<>
  • 特許5896139-車両検出方法及び車両検出装置 図000002
  • 特許5896139-車両検出方法及び車両検出装置 図000003
  • 特許5896139-車両検出方法及び車両検出装置 図000004
  • 特許5896139-車両検出方法及び車両検出装置 図000005
  • 特許5896139-車両検出方法及び車両検出装置 図000006
  • 特許5896139-車両検出方法及び車両検出装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5896139
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】車両検出方法及び車両検出装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/01 20060101AFI20160317BHJP
   G08G 1/04 20060101ALI20160317BHJP
   G01S 17/89 20060101ALI20160317BHJP
【FI】
   G08G1/01 D
   G08G1/04 A
   G01S17/89
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-60849(P2012-60849)
(22)【出願日】2012年3月16日
(65)【公開番号】特開2013-196171(P2013-196171A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】細矢 征史
(72)【発明者】
【氏名】久光 豊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文男
【審査官】 白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−280372(JP,A)
【文献】 特開2009−139228(JP,A)
【文献】 特開2000−057499(JP,A)
【文献】 特開2009−075638(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0285774(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/01
G01S 17/89
G08G 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路上に設定した車線領域にレーザ光を走査して、前記車線領域内を走行する車両を検出する車両検出方法であって、
前記車線領域にレーザ光を1回走査した際の多数の計測点に対して、車高に基づいて設定される高さ閾値及び車両間隔に基づいて設定される計測点間隔閾値のそれぞれで選別処理を行って、互いに関連する計測点同士をグループ化した後、
このグループ化して成る高さが前記高さ閾値を超えない計測点群で且つ隣接する計測点同士の間隔が前記計測点間隔閾値以下の計測点群に対して、車両の大きさに基づいて設定される計測点数の閾値で選別処理して残った前記計測点数の閾値を超える計測点数の計測点群を前記車線領域内に存在する車両として検出した際に、
前記車線領域を左寄り領域,中央領域及び右寄り領域の3つの領域に分割し、
前記検出した車両の左側部分が前記車線領域の左寄り領域に含まれ且つ該車両の右側部分が前記車線領域の右寄り領域に含まれない場合は、該車両が前記車線領域の左寄り領域に存在すると判定し、
前記検出した車両の右側部分が前記車線領域の右寄り領域に含まれ且つ該車両の左側部分が前記車線領域の左寄り領域に含まれない場合は、該車両が前記車線領域の右寄り領域に存在すると判定し、
前記検出した車両が前記車線領域の左寄り領域及び右寄り領域のいずれにも含まれない場合は、該車両が前記車線領域の中央領域に存在すると判定する
ことを特徴とする車両検出方法。
【請求項2】
前記車線領域が道路上に複数設定された場合において、
前記検出した車両の車幅方向中心が前記複数設定された車線領域のうちのいずれの車線領域に存在するかを判定して、該検出した車両をその車幅方向中心が存在する車線領域に振り分ける請求項1に記載の車両検出方法。
【請求項3】
前記検出した車両が前記車線領域の左寄り領域及び右寄り領域の双方に含まれる場合は、該車両が前記車線領域の中央領域に存在すると判定する請求項1又は2に記載の車両検出方法。
【請求項4】
道路上に設定した車線領域にレーザ光を走査して、前記車線領域内を走行する車両を検出する車両検出装置であって、
前記車線領域にレーザ光を照射すると共に前記車線領域内に存在する検出対象物で反射して戻った反射光を受光して、前記車線領域内に存在する検出対象物までの距離を測定するレーザ距離測定部と、
このレーザ距離測定部で得た多数の計測点に基づいて、前記検出対象物が車両であるか否かの判別を行う車両検出部を備え、
前記車両検出部は、請求項1〜3のいずれかに記載された車両検出方法により、前記車線領域における前記車両の幅方向位置の判定を行う
ことを特徴とする車両検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路に設定される車線領域を走行する車両を検出するのに利用される車両検出方法及び車両検出装置に関わり、特に、車線領域内における車両の幅方向の位置判定に適した車両検出方法及び車両検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、踏切や車道における移動体(障害物を含む)の検出手段として、三次元レーザレーダを用いた検出装置が実用化されてきており、このような三次元レーザレーダを用いた検出装置は、検出した移動体の位置や大きさや速度等のデータを安全性向上のための情報として保安システムや信号制御器等の上位システムに提供している。
【0003】
特に、道路交通分野において、上記三次元レーザレーダを用いた検出装置を実用化するには、通行車両の安全な走行を確保するうえで、車線領域を走行する車両をより高精度で検出する技術の構築が求められており、例えば、複数の車線領域が設定された道路の場合、どの車線領域のどの位置に車両が存在するのかを認識することが求められている。
【0004】
ここで、三次元レーザレーダを用いた車両の検出において、移動体が車両である場合には、レーザ光の反射点(計測点)が数点〜数十点にも及ぶものの、このような多数の計測点の集まりである計測点群に基づいて移動体の位置を推定するので、画像のように移動体の形状を正確には捉えることができない。
【0005】
また、三次元レーザレーダを用いた車両の検出において、車両進行方向の前方又は後方からレーザ光を走査する場合には、車両の両サイドに配置されるヘッドライトやテールランプやサイドミラー等の反射し易い部分からの反射光を多く捕捉し得るので、車両の車幅方向位置は比較的高精度で検出可能である反面、車両中央のボンネットやフロントガラス等の反射し難い部分からの反射光は多く捕捉し得ないことから、車長方向の位置誤差が生じ易い。
【0006】
このような特徴を有する三次元レーザレーダを用いた検出手段として、例えば、レーザ光の1回の走査で得られる移動体の位置データ(1フレーム)をつなぎ合わせて、三次元レーザレーダの検出視野内に存在する移動体を歩行者として検出する特許文献1に開示された横断歩行者検出方法や、今回の1フレームで得られる検出結果に対して、2フレーム前からの検出結果による移動体の位置の蓄積により、今回の移動体が前回の移動体のうちのどれと同一であるかを判定する特許文献2に開示された車両の検出方法がある。
【0007】
そして、これらの従来における検出手段では、例えば、複数の車線領域が設定された道路の場合、三次元レーザレーダの設置時に道路上の車線領域をあらかじめ測定しておき、検出した車両の位置を各車線領域上にプロットして車線領域毎に振り分けることで、車両の検出精度を高めるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002-140790号
【特許文献2】特開2010-044496号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した従来の検出手段にあっては、車線領域における車両の存在を認識することができるものの、車線領域内において車両が右に寄って走行しているか左に寄って走行しているかを認識することはできないという問題を有しており、この問題を解決することが従来の課題となっていた。
【0010】
本発明は、上述した従来の課題に着目してなされたもので、車線領域を走行する車両の存在を認識することができるのは勿論のこと、車線領域内における車両の幅方向位置をも把握することが可能である車両検出方法及び車両検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る発明は、道路上に設定した車線領域にレーザ光を走査して、前記車線領域内を走行する車両を検出する車両検出方法であって、前記車線領域にレーザ光を1回走査した際の多数の計測点(1フレーム)に対して、車高に基づいて設定される高さ閾値及び車両間隔に基づいて設定される計測点間隔閾値のそれぞれで選別処理を行って、互いに関連する計測点をグループ化した後、このグループ化して成る高さが前記高さ閾値を超えない計測点群で且つ隣接する計測点同士の間隔が前記計測点間隔閾値以下の計測点群に対して、車両の大きさに基づいて設定される計測点数の閾値で選別処理して残った前記計測点数の閾値を超える計測点数の計測点群を前記車線領域内に存在する車両として検出した際に、前記車線領域を左寄り領域,中央領域及び右寄り領域の3つの領域に分割し、前記検出した車両の左側部分が前記車線領域の左寄り領域に含まれ且つ該車両の右側部分が前記車線領域の右寄り領域に含まれない場合は、該車両が前記車線領域の左寄り領域に存在すると判定し、前記検出した車両の右側部分が前記車線領域の右寄り領域に含まれ且つ該車両の左側部分が前記車線領域の左寄り領域に含まれない場合は、該車両が前記車線領域の右寄り領域に存在すると判定し、前記検出した車両が前記車線領域の左寄り領域及び右寄り領域のいずれにも含まれない場合は、該車両が前記車線領域の中央領域に存在すると判定する構成としたことを特徴としており、この車両検出方法の構成を前述の従来の課題を解決するための手段としている。
【0012】
また、本発明の請求項2に係る車両検出方法は、前記車線領域が道路上に複数設定された場合において、前記検出した車両の車幅方向中心が前記複数設定された車線領域のうちのいずれの車線領域に存在するかを判定して、該検出した車両をその車幅方向中心が存在する車線領域に振り分ける構成としている。
【0013】
さらに、本発明の請求項3に係る車両検出方法において、前記検出した車両が前記車線領域の左寄り領域及び右寄り領域の双方に含まれる場合は、該車両が前記車線領域の中央領域に存在すると判定する構成としている。
【0014】
一方、本発明の請求項4に係る車両検出装置は、道路上に設定した車線領域にレーザ光を走査して、前記車線領域内を走行する車両を検出する車両検出装置であって、前記車線領域にレーザ光を照射すると共に前記車線領域内に存在する検出対象物で反射して戻った反射光を受光して、前記車線領域内に存在する検出対象物までの距離を測定するレーザ距離測定部と、このレーザ距離測定部で得た多数の計測点に基づいて、前記検出対象物が車両であるか否かの判別を行う車両検出部を備え、前記車両検出部は、請求項1〜3のいずれかに記載された車両検出方法により、前記車線領域における前記車両の幅方向位置の判定を行う構成としたことを特徴としており、この車両検出装置の構成を前述の従来の課題を解決するための手段としている。
【0015】
本発明に係る車両検出方法及び車両検出装置において、車線領域に照射するレーザ光としては、半導体レーザや固体レーザやガスレーザなどを用いることができ、信号波形がパルス状や位相変調した正弦波状を成すレーザ光が使用される。
【0016】
また、本発明に係る車両検出方法及び車両検出装置において、1フレームにおける多数の計測点に対する選別処理で用いる高さ閾値は、車高として適当ではない高さ、すなわち、大型車両の車高を超える高さ(例えば3m)に設定され、この高さ閾値以上の計測点は除去する。
【0017】
さらに、本発明に係る車両検出方法及び車両検出装置において、同じく1フレームにおける多数の計測点に対する選別処理で用いる計測点間隔閾値は、車両同士が通常最低限確保しようとする距離(例えば1m)に設定され、隣り合う計測点同士の間隔がこの計測点間隔閾値以下の計測点はグループ化して同一の計測点群に含まれるものとして扱う。
【0018】
この際、グループ化されて成る計測点群が、例え高さ閾値以下で且つ計測点間隔閾値以下の計測点の集まりであったとしても、二輪車や乗用車等の車両の大きさを考慮して設定される計測点数の閾値(例えば3個)を下回る場合には、この計測点群全体をノイズとして除去する。
【0019】
さらにまた、本発明に係る車両検出方法及び車両検出装置において、計測点群を車両として検出した際に車線領域を分割して設定される左寄り領域,中央領域及び右寄り領域の各領域は、例えば、通常の車道の幅及び普通自動車の幅に基づいた幅に設定することができる。
【0020】
本発明に係る車両検出方法及び車両検出装置では、車線領域内に存在する計測点群を車両として検出した際に、この検出した車両が、車線領域を3つに分割して成る左寄り領域,中央領域及び右寄り領域のいずれの領域に存在しているのかを認識し得ることとなる、すなわち、車線領域内における車両の幅方向位置を把握し得ることとなる。
【0021】
つまり、車両の左脇をすり抜けようとする二輪車や車線を変更しようとしている車両の存在を認識し得ることとなり、この判定結果を、例えば、上位システムであるカーナビゲーションシステムに送ることで、右左折や路肩停車を安全に行い得ることとなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る車両検出方法では、上記した構成としたから、車線領域を走行する車両の存在を検出することができるのは言うまでもなく、車線領域内における車両の幅方向位置をも把握することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施例に係る車両検出装置を示すブロック図である。
図2図1における車両検出装置による計測状況を示す斜視説明図である。
図3図1における車両検出装置による車線領域内での車両判別要領を示す側面説明図(a)及び平面説明図(b)である。
図4図1における車両検出装置による車線領域内での車両の幅方向位置判定要領を示す平面説明図である。
図5図1に示した車両検出装置による1フレーム分の車両の幅方向位置判定フローチャート前半である。
図6図1に示した車両検出装置による1フレーム分の車両の幅方向位置判定フローチャート後半である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る車両検出方法及び車両検出装置を図面に基づいて説明する。
図1図6は、本発明に係る車両検出方法及び車両検出装置の一実施例を示しており、この実施例では、道路上に車線領域が複数設定されている場合を例に挙げて説明する。
【0025】
図1に示すように、この車両検出装置は、道路上に設定された車線領域にレーザ光LTを照射すると共に車線領域内に存在する検出対象物で反射して戻った反射光LRを受光して、車線領域内に存在する検出対象物までの距離を測定するレーザ距離測定部10を備えている。このレーザ距離測定部10は、レーザ光LTを投光する投光部1と、反射光LRを受光して受光信号Srを発信する受光部2と、受光信号Srから検出対象物の測定距離を含む多数の計測点データDを作成する信号処理部3と、投光部1、受光部2及び信号処理部3を収容するレーザレーダヘッド7を具備しており、このレーザレーダヘッド7は、図2に示すように、道路Eの脇に立設した支柱8の上端部に配置されて、車両Bの進行方向の前方からレーザ光LTを走査するようになっている。
【0026】
また、この車両検出装置は、レーザ距離測定部10のレーザレーダヘッド7と離隔して配置されて、多数の計測点データDを受信して車両の存在を検出する車両検出部6を有している。
【0027】
投光部1は、例えば、光源となるレーザダイオード1aと、レーザ光Lをコリメートする投光レンズ1bと、レーザダイオード1aを操作するLDドライバ1cとから構成される。LDドライバ1cは、信号処理部3からのトリガー信号Stに基づいてレーザ光Lを発光するようにレーザダイオード1aを操作し、レーザ光Lの投光と同時にパルス状の投光同期信号Ssを信号処理部3に発信する。なお、投光同期信号Ssは、トリガー信号Stにより代用するようにしてもよい。
【0028】
図1において、投光レンズ1bを透過したレーザ光LTは、回転駆動されるポリゴンミラー11と回動駆動される平面ミラー12とにより構成される走査部の光学系により、略水平方向及び略鉛直方向に走査されるようになっている。ポリゴンミラー11は、例えば、6面体の4側面が鏡面化されており、鏡面化された4側面以外の互いに対峙する2面(上下面)の中心を回転軸としてモータ11aにより回転されるように構成されている。モータ11aは、モータドライバ11bにより操作される。平面ミラー12は、例えば、モータ12aにより回動される回動軸の側面に接続されている。モータ12aは、モータドライバ12bにより操作される。また、モータドライバ11b,12bは、信号処理部3からの制御信号Smにより制御されるとともに、スキャン角度やスイング角度等の投光条件信号Scを信号処理部3に発信する。なお、この光学系は単なる一例であり、図示した構成に限定されるものではない。
【0029】
受光部2は、例えば、反射光LRを集光する受光レンズ2aと、集光された反射光LRを受光して電圧に変換するフォトダイオード等の光電変換素子や増幅器等を有する受光部本体2bとから構成される。レーザレーダヘッド7の前面の投光窓Wを透過した反射光LRは、平面ミラー12及びポリゴンミラー11を介して受光レンズ2aに導かれる。そして、反射光LRを受光した受光部本体2bは、電圧値に変換された受光信号Srを信号処理部3に発信する。なお、図1では、投光部1と受光部2と個別に設けて投光軸と受光軸とがずれるように構成しているが、投光軸と受光軸とが一致するように投光部1と受光部2が一体に形成されていてもよい。
【0030】
前記信号処理部3は、測定距離、受光強度、投光条件等のデータを含む計測点データDを発信する機器である。信号処理部3は、主信号処理部31と時間計測部32とを有する。主信号処理部31は、トリガー信号Stの発信、モータドライバ11b,12bの制御信号Smの発信、スキャン角度やスイング角度等の投光条件信号Scの受信、時間計測部32からの信号(受光強度信号Sq及び飛光時間信号Sd)の受信、計測点データDの発信等の処理を行う。また、時間計測部32は、投光同期信号Ssの受信により時間の計測を開始し、受光信号Srを受信した時間を把握する。したがって、時間計測部32では、投光されたレーザ光LTが、検出対象物に反射して受光されるまでの飛光時間を計測することになる。
【0031】
また、時間計測部32は、受光信号Srから所望の受光強度を有する受光信号Srを選択する弁別機能や、受光信号Srのうち飛光時間の短いものを除外するゲート機能を有していてもよい。これらの弁別機能やゲート機能により、ノイズを効率よく排除することができる。そして、時間計測部32は、弁別機能やゲート機能を通過した受光信号Srの受光強度信号Sq及び飛光時間信号Sdを主信号処理部31に発信する。主信号処理部31は、飛光時間信号Sdを(光の速度)×(飛光時間)/2の計算式により距離データに変換し、受光強度信号Sq、スキャン角度やスイング角度等の投光条件信号Sc等と共に計測点データDを作成し、車両検出部6に計測点データDを発信する。
【0032】
この場合、車両検出部6は、車線領域にレーザ光LTを1回走査した際の多数の計測点(1フレーム)に対して、車高に基づいて設定される高さ閾値及び車両間隔に基づいて設定される計測点間隔閾値のそれぞれで選別処理を行って、互いに関連する計測点同士をグループ化する。
【0033】
また、車両検出部6は、このグループ化して成る計測点群に対して、車両の大きさを考慮して設定される計測点数の閾値で選別処理して残った計測点群を車線領域内に存在する車両として検出するようになっている。
【0034】
具体的には、図3(a)に示すように、1回の走査による多数の計測点bに対して、車高に基づいて設定される高さ閾値H(例えば3m)により選別処理を行い、この高さ閾値H以上の計測点bnは除去し、同じく1回の走査による多数の計測点bに対して、図3(b)に示すように、車両間隔に基づいて設定される計測点間隔閾値(例えば1m)により選別処理を行い、隣り合う計測点b同士の間隔dがこの計測点間隔閾値以下の計測点bをグループ化して同一の計測点群G1〜G5に含まれるものとして扱う。
【0035】
そして、このグループ化して成る計測点群G1〜G5に対して、該計測点群G1〜G5を構成する計測点bの構成数の閾値(例えば2個)で選別処理し、この閾値以下の計測点群G5をノイズとして除去すると共に、残った計測点群G1〜G4を車線領域L1,L2内に存在する車両として検出する。
【0036】
さらに、車両検出部6は、図4に示すように、上記計測点群G1〜G4を車線領域L1,L2内に存在する車両B1〜B4として検出した際に、車線領域L1,L2をそれぞれ左寄り領域L1L,L2L、中央領域L1C,L2C及び右寄り領域L1R,L2Rの3つの領域に分割して、検出した車両B1〜B4が、車線領域L1,L2の左寄り領域L1L,L2L、中央領域L1C,L2C及び右寄り領域L1R,L2Rのいずれの領域に存在しているのかを判定するようになっている。
【0037】
さらにまた、車両検出部6は、画像処理や、故障診断や、誤差補正を行うようになっており、車両B1〜B4の検出結果をディスプレイ、プリンタ、警報機等の出力機器9に出力する。
【0038】
次に、図5及び図6の車両の幅方向位置判定フローチャートを用いて、上記した車両検出装置による1フレームの車両の検出要領を説明する。
【0039】
まず、ステップS1において、平面座標系上に多角形で定義した車線領域L1,L2にレーザ光LTを走査し、車線領域L1,L2上の計測点以外は除去する。
【0040】
次いで、ステップS2において、車線領域L1,L2上における多数の計測点bのうちの高さが車両として適切でない計測点bn、すなわち、高さ閾値H以上、例えば、高さが3m以上の計測点bnは除去する。
【0041】
そして、ステップS3において、残っている計測点bのうちの隣接する計測点b同士の距離dが計測点間隔閾値(例えば1m)以下の計測点bは同一の計測点群としてグループ化する。
【0042】
次に、ステップS4において、グループ化した計測点群G1〜G5のうちの計測点数が閾値以下の小さい計測点群G5はノイズとして除去し、ステップS5において、上記ステップを経て除去されずに残った計測点群G1〜G4を車両B1〜B4とみなす。
【0043】
ここで、計測点群が複数の車線領域に跨ることも想定されるので、最終的には特定の1点(幅方向中心)が存在する位置に基づいて車線領域を決める。すなわち、ステップS6において、検出した車両B1〜B4における幅方向の中心位置(車両の中心とみなす位置)がどの車線領域L1,L2上に存在するかを判定して、検出した車両B1〜B4が存在する車線領域L1,L2を設定する。これにより、計測点群が複数の車線領域に跨る場合にも対応可能である。
【0044】
続いて、ステップS7において、検出した車両B1〜B4を車線領域L1,L2毎に分類するのに続いて、ステップS8において、車両B1〜B4のうち複数車線領域に跨っている車両がある場合には、その車両の左右端位置を車線領域L1,L2の左右端位置に補正し、この後、ステップS9において、各車線領域L1,L2を左寄り領域L1L,L2L、中央領域L1C,L2C及び右寄り領域L1R,L2Rの3つの領域に分割する。
【0045】
そして、ステップS10において、車線領域L1,L2及び検出した車両B1〜B4について、車線領域L1,L2内における車両B1〜B4の幅方向位置を判定し、判定済みでない場合は、ステップS11において、判定していない車両が車線領域L1,L2の中央領域L1C,L2Cに存在しているものとして初期値設定する。
【0046】
次いで、ステップS12において、検出した車両Bの左側部分が車線領域L1,L2の左寄り領域L1L,L2Lに含まれるか否かを判定し、車両の左側部分が車線領域L1,L2の左寄り領域L1L,L2Lに含まれる場合(図4の車両B3の場合)は、ステップS13において該車両B3は車線領域L2の左寄り領域L2Lに存在するものとし、一方、車両の左側部分が車線領域L1,L2の左寄り領域L1L,L2Lに含まれない場合は、ステップS14に進む。
【0047】
このステップS14では、検出した車両の右側部分が右寄り領域L1R,L2Rに含まれるか否かを判定し、車両の右側部分が車線領域L1,L2の右寄り領域L1R,L2Rに含まれる場合(図4の車両B4の場合)は、ステップS15において該車両B4は車線領域L2の右寄り領域L2Rに存在するものとし、一方、車両の右側部分が車線領域L1,L2の右寄り領域L1R,L2Rに含まれない場合は、ステップS16に進む。
【0048】
この時点において、車両が車線領域L1,L2の左寄り領域L1L,L2L及び右寄り領域L1R,L2Rのいずれにも存在していないと判定されたことになるので(図4の車両B1の場合)、車両B1が車線領域L1の中央領域L1Cに存在しているものとしてステップS16に進む。
【0049】
このステップS16において、検出した車両が車線領域L1,L2の左寄り領域L1L,L2Lに含まれ且つ右寄り領域L1R,L2Rに含まれるか否かを判定し、通常はこのステップS16に至るまでに、すでに車両が車線領域L1,L2の左寄り領域L1L,L2L,中央領域L1C,L2C及び右寄り領域L1R,L2Rのいずれかに存在していると判定されているので、ステップS10に戻って、車線領域L1,L2及び検出した車両B1〜B4について判定済みになるまで、ステップS11〜S16を繰り返し、ステップS10で全車両B1〜B4について判定済みになった段階で、ステップS18に進んで、車線内位置判定処理を終了する。
【0050】
なお、ステップS17は、車線領域幅の大半を占める大型車両等の車両の車線領域内位置判定を行えるようにするための措置であり、ステップS16において、検出した車両が車線領域L1,L2の左寄り領域L1L,L2Lに含まれ且つ右寄り領域L1R,L2Rに含まれる場合(図4の車両B2の場合)には、このステップS17において、検出した車両B2が車線領域幅の大半を占める車両であると判定して、ステップS10に戻る。
【0051】
上記したように、この実施例に係る車両検出方法及び車両検出装置では、車線領域L1,L2内に存在する計測点群G1〜G4を車両B1〜B4として検出した際に、この検出した車両B1〜B4が、車線領域L1,L2を3つに分割して成る左寄り領域L1L,L2L、中央領域L1C,L2C及び右寄り領域L1R,L2Rのいずれの領域に存在しているのかを認識し得ることとなる、すなわち、車線領域L1,L2内における車両B1〜B4の幅方向位置を把握し得ることとなる。
【0052】
つまり、車両の左脇をすり抜けようとする二輪車や車線を変更しようとしている車両の存在を認識し得ることとなり、この判定結果を、例えば、上位システムであるカーナビゲーションシステムに送ることで、右左折や路肩停車を安全に行い得ることとなる。
【0053】
なお、上記した実施例では、道路上に車線領域が複数設定されている場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、道路上に車線領域が一つ設定されている場合であってもよい。
【0054】
また、閾値処理を行う際の高さ閾値や計測点間隔閾値の各値は、上記した実施例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0055】
6 車両検出部
10 レーザ距離測定部
B,B1〜B4 車両
b,bn 計測点
d 計測点間隔閾値
G1〜G5 計測点群
H 高さ閾値
L1,L2 車線領域
L1C,L2C 車線領域の中央領域
L1L,L2L 車線領域の左寄り領域
L1R,L2R 車線領域の右寄り領域
LR 反射レーザ光
LT 投光レーザ光
図1
図2
図3
図4
図5
図6