特許第5896172号(P5896172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5896172凝縮混合装置、凝縮混合方法、蒸発ガス再液化装置及び蒸発ガス再液化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5896172
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】凝縮混合装置、凝縮混合方法、蒸発ガス再液化装置及び蒸発ガス再液化方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20160317BHJP
【FI】
   F17C13/00 302A
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-249223(P2013-249223)
(22)【出願日】2013年12月2日
(65)【公開番号】特開2015-105740(P2015-105740A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2015年10月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】松本 繁則
(72)【発明者】
【氏名】林 謙年
(72)【発明者】
【氏名】山口 以昌
【審査官】 高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−117562(JP,A)
【文献】 特開2000−240895(JP,A)
【文献】 特開平08−178188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温液体から発生した蒸発ガスを該低温液体の流れで形成される主流へ注入して、該蒸発ガスを凝縮して上記主流の低温液体に混合する凝縮混合装置において、
上流から下流へ向けて流れる低温液体を上記主流として流通させる方向に軸線をもつ管状体をなし、該管状体よりも上流側で主流の一部を分流して得られる副流を受ける接線方向注入口が形成され、上記副流により上記主流に対して旋回流を生じさせる旋回流形成部と、
該旋回流形成部よりも下流側で該旋回流形成部の軸線の延長線上に位置するベンチュリ管を有し、上記旋回流形成部から上記旋回流をなす低温液体を受けるとともに、上記ベンチュリ管の管壁に上記蒸発ガスを受ける蒸発ガス孔が形成され、該蒸発ガスを凝縮して上記旋回流をなす低温液体に混合して混合液を生成する混合管部と
上記旋回流形成部に流入する上記主流の流量を計測する主流流量計と、
上記旋回流形成部に流入する上記副流の流量を計測する副流流量計と、
上記混合管部から流出する混合液の温度を計測する混合液温度計および該混合液の圧力を計測する混合液圧力計と、
上記主流の流量、上記副流の流量、上記混合液の温度および圧力のそれぞれの計測値に基いて、上記副流の流量を制御する制御手段とを備えることを特徴とする凝縮混合装置。
【請求項2】
制御手段は、混合液の過冷度が小さくなるにしたがって、副流の流量を増大させるように制御することとする請求項1に記載の凝縮混合装置。
【請求項3】
低温液体から発生した蒸発ガスを該低温液体の流れで形成される主流へ注入して、該蒸発ガスを凝縮して上記主流の低温液体に混合する凝縮混合装置において、
上流から下流へ向けて流れる低温液体を上記主流として流通させる方向に軸線をもつ管状体をなし、該管状体よりも上流側で主流の一部を分流して得られる副流を受ける接線方向注入口が形成され、上記副流により上記主流に対して旋回流を生じさせる旋回流形成部と、
該旋回流形成部よりも下流側で該旋回流形成部の軸線の延長線上に位置するベンチュリ管を有し、上記旋回流形成部から上記旋回流をなす低温液体を受けるとともに、上記ベンチュリ管の管壁に上記蒸発ガスを受ける蒸発ガス孔が形成され、該蒸発ガスを凝縮して上記旋回流をなす低温液体に混合して混合液を生成する混合管部と、
上記旋回流形成部に流入する上記主流の流量を計測する主流流量計と、
上記旋回流形成部に流入する上記副流の流量を計測する副流流量計および該副流の流量を調整するための副流調整弁と、
上記混合管部から流出する混合液の温度を計測する混合液温度計および該混合液の圧力を計測する混合液圧力計と、
上記混合液の圧力とその圧力での飽和温度との対応関係を第一対応関係として、そして許容し得る混合液の過冷度の最小値と、上記主流および副流の流量の和で該副流の流量を除して得られる副流流量比との対応関係を第二対応関係として予め記憶している記憶手段と、
上記第一対応関係および上記第二対応関係を参照しつつ、上記主流の流量、上記副流の流量、上記混合液の温度および圧力のそれぞれの計測値に基いて、上記混合液の過冷度が小さくなるにしたがって副流の流量を増大させるように上記副流調整弁の開度を調整する制御手段とを備えることを特徴とする凝縮混合装置。
【請求項4】
制御手段は、記憶手段に記憶されている第一対応関係を参照して、混合液の圧力の計測値に対応する飽和温度を導出してから、飽和温度の導出値と上記混合液の温度の計測値との差を該混合液の過冷度として算出する過冷度算出手段と、
主流の流量の計測値と副流の流量の計測値との和で該副流の流量の計測値を除して副流流量比を算出する副流流量比算出手段と、
上記過冷度の算出値を、上記記憶手段に記憶されている第二対応関係における過冷度の最小値と比較して、上記過冷度の算出値が上記過冷度の最小値以下であるときには、上記第二対応関係を参照して、上記過冷度の最小値が上記過冷度の算出値より小さくなるような副流流量比を目標値として導出し、副流流量比の算出値が上記目標値に追従するように、副流調整弁の開度を大きくして副流の流量を増大させる副流流量調整手段とを有していることとする請求項3に記載の凝縮混合装置。
【請求項5】
貯槽内に貯留された低温液体から発生する蒸発ガスを、貯槽から払い出された低温液体に注入して凝縮させることにより該低温液体に混合して再液化する蒸発ガス再液化装置において、
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の凝縮混合装置と、貯槽から低温液体を送出する送出ポンプと、蒸発ガスを圧縮する蒸発ガス圧縮機とを備え、該送出ポンプで低温液体を凝縮混合装置の旋回流形成部へ供給し、上記蒸発ガス圧縮機で蒸発ガスを凝縮混合装置の上記混合管部内へ注入するようになっていることを特徴とする蒸発ガス再液化装置。
【請求項6】
低温液体から発生した蒸発ガスを該低温液体の流れで形成される主流へ注入して、該蒸発ガスを凝縮して上記主流の低温液体に混合する凝縮混合方法において、
上流から下流へ向けて上記主流として流れる低温液体の流量を計測する主流流量計測工程と、
上記主流の一部を分流して得られる副流として流れる低温液体の流量を計測する副流流量計測工程と、
上記主流の低温液体を管状体内に流通させるとともに、上記副流の低温液体を上記管状体の接線方向で注入して、上記副流により上記主流に対して旋回流を生じさせる旋回流形成工程と、
該旋回流形成工程で旋回流が形成された低温液体を受けるベンチュリ管に上記蒸発ガスを注入して、該蒸発ガスを凝縮して上記旋回流が形成された低温液体に混合して混合液を生成する混合工程と、
上記混合液の温度を計測する混合液温度計測工程と、
上記混合液の圧力を計測する混合液圧力計測工程と、
上記主流の流量、上記副流の流量、上記混合液の温度および圧力のそれぞれの計測値に基いて、上記副流の流量を制御する制御工程とを備えることを特徴とする凝縮混合方法。
【請求項7】
制御工程は、混合液の過冷度が小さくなるにしたがって、上記副流の流量を増大させることとする請求項6に記載の凝縮混合方法。
【請求項8】
低温液体から発生した蒸発ガスを該低温液体の流れで形成される主流へ注入して、該蒸発ガスを凝縮して上記主流の低温液体に混合する凝縮混合方法において、
上流から下流へ向けて上記主流として流れる低温液体の流量を計測する主流流量計測工程と、
上記主流の一部を分流して得られる副流として流れる低温液体の流量を計測する副流流量計測工程と、
上記主流の低温液体を管状体内に流通させるとともに、上記副流の低温液体を上記管状体の接線方向で注入して、上記副流により上記主流に対して旋回流を生じさせる旋回流形成工程と、
該旋回流形成工程で旋回流が形成された低温液体を受けるベンチュリ管に上記蒸発ガスを注入して、該蒸発ガスを凝縮して上記旋回流が形成された低温液体に混合して混合液を生成する混合工程と、
上記混合液の温度を計測する混合液温度計測工程と、
上記混合液の圧力を計測する混合液圧力計測工程と、
上記混合液の圧力とその圧力での飽和温度との対応関係である第一対応関係、そして許容し得る混合液の過冷度の最小値と、上記主流および副流の流量の和で該副流の流量を除して得られる副流流量比との対応関係である第二対応関係を参照しつつ、上記主流の流量、上記副流の流量、上記混合液の温度および圧力のそれぞれの計測値に基いて、上記混合液の過冷度が小さくなるにしたがって副流の流量を増大させるように制御する制御工程とを備えることを特徴とする凝縮混合方法。
【請求項9】
制御工程は、第一対応関係を参照して、混合液の圧力の計測値に対応する飽和温度を導出してから、飽和温度の導出値と上記混合液の温度の計測値との差を該混合液の過冷度として算出する過冷度算出工程と、
主流の流量の計測値と副流の流量の計測値との和で該副流の流量の計測値を除して副流流量比を算出する副流流量比算出工程と、
上記過冷度の算出値を第二対応関係における過冷度の最小値と比較して、上記過冷度の算出値が上記過冷度の最小値以下であるときには、上記第二対応関係を参照して、上記過冷度の最小値が上記過冷度の算出値より小さくなるような副流流量比を目標値として導出し、副流流量比の算出値が上記目標値に追従するように副流の流量を増大させる副流流量調整工程とを有していることとする請求項8に記載の凝縮混合方法。
【請求項10】
貯槽内に貯留された低温液体から発生する蒸発ガスを、貯槽から払い出された低温液体に注入して凝縮させることにより該低温液体に混合して再液化する蒸発ガス再液化方法において、
請求項6乃至請求項9のいずれかに記載の凝縮混合方法に記載の工程と、貯槽から低温液体を送出する送出工程と、蒸発ガスを圧縮する蒸発ガス圧縮工程とを備え、
上記送出工程で低温液体を管状体へ供給し、上記蒸発ガス圧縮工程で蒸発ガスをベンチュリ管内へ注入するようになっていることを特徴とする蒸発ガス再液化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気と低温液体を接触させ蒸気を凝縮し液化して低温液体に混合する凝縮混合装置、凝縮混合方法、蒸発ガス再液化装置及び蒸発ガス再液化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガス(LNG)をはじめとする低温液体をタンクで貯蔵する場合、外部からのタンクへの入熱によりタンク内の低温液体の一部が蒸発し、タンク内には蒸発ガスが発生する。低温液体がLNGの場合には、メタンを主成分とする蒸発ガスが発生する。
【0003】
発生した蒸発ガスは、そのまま圧縮して都市ガスとして需要側へ供給することも可能であるが、圧縮動力が非常に大きくなる。そこで、かかる動力を削減するために、蒸発ガスを再液化して液の状態で昇圧した後に再びガス化して都市ガスとして供給することが考えられる。再液化するには、蒸発ガスを圧縮し、そして冷却する工程を経ることになるが、その冷却方法として、タンクからの低温液体としての払出LNGの冷熱で蒸発ガスを冷却する、つまり圧縮された蒸発ガスをLNGとの間で熱交換して冷却する方法が、特許文献1,2に開示されている。
【0004】
特許文献1では、圧縮された蒸発ガスを熱交換器でLNGと熱交換して冷却する方式(間接熱交換方式)が開示されている。しかし、熱交換器を要するこの間接熱交換方式では、熱交換のための十分な伝熱面積を確保するために大型の熱交換器が必要となり、設備が大型になりコストが嵩むという問題がある。さらには、伝熱が伝熱面を介しての間接であるため、この伝熱面での伝熱性能の改善も求められる。
【0005】
これに対し、特許文献2では、圧縮された蒸発ガスをLNG配管内に吹き込みLNGと直接に接触させて熱交換する方式(直接接触熱交換方式)が開示され、蒸発ガスのLNG中への吹込み方法として、LNG配管内を流れる払出しLNGの流れ方向と直交する方向もしくはLNGの流れ方向に逆らう方向になるように一つの蒸発ガス供給ノズルをLNG配管内に配置する装置が開示されている。該蒸発ガス供給ノズルは、LNG配管内でL字状に屈曲されていて、LNG配管の中心線上に該ノズルの吐出口が位置していて蒸発ガスがLNGの流れと逆方向に向けてLNG中へ吐出されている。吐出された蒸発ガスは、LNGとの熱交換により冷却され、凝縮して液化しLNGと混合される。
【0006】
このような特許文献2の直接接触熱交換方式は、伝熱面を介さずに熱交換するためLNGと蒸発ガスの両者が接する界面での伝熱性能は向上する。しかし、直接接触熱交換方式では、気体である蒸発ガスと低温液体であるLNGの密度の違いから、蒸発ガスと低温液体の接触、混合が十分に行われないことに起因して液化効率が悪くなりやすい。その改善のために、気体の蒸発ガスと低温液体のLNGとを混合し蒸発ガスを凝縮させ混合する効率的な凝縮混合装置が要望されているが、特許文献2の方法であっても、気体の蒸発ガスと液体のLNGの接触、混合を十分に確保でき、所望の液化性能を確保できるとは言い難い。
【0007】
凝縮混合装置が蒸発ガスと低温液体とを完全に均一に凝縮混合できている場合には、蒸発ガスが凝縮した凝縮液と低温液体とは混合液として均一に混合されており、混合液の温度は飽和温度(その際の圧力下で蒸発ガスが凝縮する最高温度)より低い温度になっている。このとき、混合液中には蒸発ガスが存在せず液体状態である。
【0008】
低温液体に蒸発ガスを吹き込み、蒸発ガスを液体と接触させて冷却し凝縮させるとき、混合液の温度は混合前の低温液体の温度から上昇する。低温液体に蒸発ガスを吹き込む量は、吹き込んだときの蒸発ガスと低温液体の混合液の温度が(上昇して)飽和温度となるまで(混合液が飽和状態になるまで)の量を最大量として吹き込むことができる。この量を超える量の蒸発ガスを吹き込むと、混合液中に蒸発ガスの気泡が存在し問題が生じる。
【0009】
実際には、凝縮混合装置が完全に均一に凝縮混合できるわけではないので、混合液中に蒸発ガスの気泡が存在しないようにするため、混合液の温度を飽和温度より低い温度にするように低温液体に蒸発ガスを吹き込む量を少なくしている。この実際の混合液の温度(凝縮混合装置から流出される混合液の温度)と飽和温度との差を過冷度という。
【0010】
凝縮混合装置から流出される混合液を液体状態とするためには、所定の過冷度を保つことが必要であり、そのために低温液体に蒸発ガスを吹き込む量を制限することが必要となっている。ここで、凝縮混合装置における凝縮混合性能を向上させることができれば、過冷度が小さくても混合液を液体状態とすることができ、蒸発ガス吹き込み量を増大でき、凝縮混合装置の処理能力を向上させることが期待できる。
【0011】
特許文献3には、管内の混合室を流通する低温液体としての水に蒸発ガスとしての蒸気を注入して該蒸気を凝縮して水に混合することにより温水を生成する凝縮混合装置が開示されている。この凝縮混合装置には、混合室内で水に旋回を付与するための固定旋回羽根が設けられており、該固定旋回羽根によって水と蒸気との混合効率の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭55‐145897
【特許文献2】特開平08‐173781
【特許文献3】特開平7−116486
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、気体の蒸発ガスを昇圧して低温液体に直接接触させる場合、十分な凝縮混合性能が確保されないと、低温液体に合流した蒸発ガスが完全に液化されず、液化されないままで気泡が残留した状態で液送ポンプに供給されると、液送が困難になるのみならず、液送ポンプの故障の原因にもなる。また、特許文献3のような凝縮混合性能を向上させる旋回付与機構を備えた凝縮混合装置において、該凝縮混合装置内の流体は固定旋回羽根を通過するため、凝縮混合装置の圧力損失が大きくなるという問題がある。
【0014】
かかる事情に鑑み、本発明は、気体の蒸発ガスを昇圧して、この蒸発ガスをLNG等の低温液体に直接接触させて再液化させる際に、蒸発ガスを効果的に凝縮して低温液体へ混合する凝縮混合装置、凝縮混合方法、そして蒸発ガスの再液化を効果的に実現できる蒸発ガス再液化装置及び蒸発ガス再液化方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題は、本発明によると、次のような構成の第一発明及び第二発明に係る凝縮混合装置、第三発明に係る蒸発ガス再液化装置、第四発明に係る凝縮混合方法及び第五発明に係る蒸発ガス再液化方法により解決される。
【0016】
<第一発明>
第一発明に係る凝縮混合装置は、低温液体から発生した蒸発ガスを該低温液体の流れで形成される主流へ注入して、該蒸発ガスを凝縮して上記主流の低温液体に混合する。
【0017】
かかる凝縮混合装置において、第一発明では、上流から下流へ向けて流れる低温液体を上記主流として流通させる方向に軸線をもつ管状体をなし、該管状体よりも上流側で主流の一部を分流して得られる副流を受ける接線方向注入口が形成され、上記副流により上記主流に対して旋回流を生じさせる旋回流形成部と、該旋回流形成部よりも下流側で該旋回流形成部の軸線の延長線上に位置するベンチュリ管を有し、上記旋回流形成部から上記旋回流をなす低温液体を受けるとともに、上記ベンチュリ管の管壁に上記蒸発ガスを受ける蒸発ガス孔が形成され、該蒸発ガスを凝縮して上記旋回流をなす低温液体に混合して混合液を生成する混合管部とを備えることを特徴としている。
【0018】
<第二発明>
第二発明に係る凝縮混合装置は、低温液体から発生した蒸発ガスを該低温液体の流れで形成される主流へ注入して、該蒸発ガスを凝縮して上記主流の低温液体に混合する。
【0019】
かかる凝縮混合装置において、第二発明では、上流から下流へ向けて流れる低温液体を上記主流として流通させる方向に軸線をもつ管状体をなし、該管状体よりも上流側で主流の一部を分流して得られる副流を受ける接線方向注入口が形成され、上記副流により上記主流に対して旋回流を生じさせる旋回流形成部と、該旋回流形成部よりも下流側で該旋回流形成部の軸線の延長線上に位置するベンチュリ管を有し、上記旋回流形成部から上記旋回流をなす低温液体を受けるとともに、上記ベンチュリ管の管壁に上記蒸発ガスを受ける蒸発ガス孔が形成され、該蒸発ガスを凝縮して上記旋回流をなす低温液体に混合して混合液を生成する混合管部と、上記旋回流形成部に流入する上記主流の流量を計測する主流流量計と、上記旋回流形成部に流入する上記副流の流量を計測する副流流量計および該副流の流量を調整するための副流調整弁と、上記混合管部から流出する混合液の温度を計測する混合液温度計および該混合液の圧力を計測する混合液圧力計と、上記混合液の圧力とその圧力での飽和温度との対応関係を第一対応関係として、そして許容し得る混合液の過冷度の最小値と、上記主流および副流の流量の和で該副流の流量を除して得られる副流流量比との対応関係を第二対応関係として予め記憶している記憶手段と、上記第一対応関係および上記第二対応関係を参照しつつ、上記主流の流量、上記副流の流量、上記混合液の温度および圧力のそれぞれの計測値に基いて、上記混合液の過冷度が上記最小値より大きくなるように上記副流調整弁の開度を調整して上記副流の流量を制御する制御手段とを備えることを特徴としている。
【0020】
第二発明では、制御手段が、上記第一対応関係および上記第二対応関係を参照しつつ、上記主流の流量、上記副流の流量、上記混合液の温度および圧力のそれぞれの計測値に基いて上記副流の流量を制御することにより、上記混合液の過冷度が常に上記過冷度の最小値より大きくなるので、蒸発ガスを確実に凝縮させて低温液体に効果的に混合することができる。ここで、「過冷度の最小値」とは、混合液に蒸気が存在しないようにする過冷度の最も小さい値である。
【0021】
第二発明において、制御手段は、記憶手段に記憶されている第一対応関係を参照して、混合液の圧力の計測値に対応する飽和温度を導出してから、飽和温度の導出値と上記混合液の温度の計測値との差を該混合液の過冷度として算出する過冷度算出手段と、主流の流量の計測値と副流の流量の計測値との和で該副流の流量の計測値を除して副流流量比を算出する副流流量比算出手段と、上記過冷度の算出値を、上記記憶手段に記憶されている第二対応関係における過冷度の最小値と比較して、上記過冷度の算出値が上記最小値以下であるときには、上記第二対応関係を参照して、上記過冷度の算出値が上記最小値より大きくなるような副流流量比を目標値として導出し、副流流量比の算出値が上記目標値に追従するように、副流調整弁の開度を大きくして副流の流量を増大させる副流流量調整手段とを有していることが好ましい。
【0022】
ここで、「副流流量比」とは、上述したように、主流の流量と副流の流量との和で副流の流量を除して得られる比であり、旋回流形成部で形成される旋回流の強さ、すなわち「旋回強さ」を表す。旋回流がある場合は、旋回流がない場合と比べて過冷度の最小値が低下し、また、副流流量比(旋回強さ)が大きいほど過冷度の最小値が低下する(図3参照)。つまり、副流により主流に対して旋回流を生じさせることによって、また、旋回強さが大きいほど過冷度が小さくなり、凝縮混合装置の混合性能が向上する。
【0023】
<第三発明>
第三発明に係る蒸発ガス再液化装置は、貯槽内に貯留された低温液体から発生する蒸発ガスを、貯槽から払い出された低温液体に注入して凝縮させることにより該低温液体に混合して再液化する。
【0024】
かかる蒸発ガス再液化装置において、第三発明では、第一発明又は第二発明に係る凝縮混合装置と、貯槽から低温液体を送出する送出ポンプと、蒸発ガスを圧縮する蒸発ガス圧縮機とを備え、該送出ポンプで低温液体を凝縮混合装置の旋回流形成部へ供給し、上記蒸発ガス圧縮機で蒸発ガスを凝縮混合装置の上記混合管部内へ注入するようになっていることを特徴としている。
【0025】
第二発明に係る凝縮混合装置を備える構成の蒸発ガス再液化装置によれば、第二発明と同様に、上記混合液の過冷度が常に上記最小値より大きくなるので、蒸発ガスを確実に凝縮させて低温液体に効率的に混合して再液化させることができる。
【0026】
<第四発明>
第四発明に係る凝縮混合方法は、低温液体から発生した蒸発ガスを該低温液体の流れで形成される主流へ注入して、該蒸発ガスを凝縮して上記主流の低温液体に混合する。
【0027】
かかる凝縮混合方法において、第四発明では、上流から下流へ向けて上記主流として流れる低温液体の流量を計測する主流流量計測工程と、上記主流の一部を分流して得られる副流として流れる低温液体の流量を計測する副流流量計測工程と、上記主流の低温液体を管状体内に流通させるとともに、上記副流の低温液体を上記管状体の接線方向で注入して、上記副流により上記主流に対して旋回流を生じさせる旋回流形成工程と、該旋回流形成工程で旋回流が形成された低温液体を受けるベンチュリ管に上記蒸発ガスを注入して、該蒸発ガスを凝縮して上記旋回流が形成された低温液体に混合して混合液を生成する混合工程と、上記混合液の温度を計測する混合液温度計測工程と、上記混合液の圧力を計測する混合液圧力計測工程と、上記混合液の圧力とその圧力での飽和温度との対応関係である第一対応関係、そして許容し得る混合液の過冷度の最小値と、上記主流および副流の流量の和で該副流の流量を除して得られる副流流量比との対応関係である第二対応関係を参照しつつ、上記主流の流量、上記副流の流量、上記混合液の温度および圧力のそれぞれの計測値に基いて、上記混合液の過冷度が上記最小値より大きくなるように上記副流の流量を制御する制御工程とを備えることを特徴としている。
【0028】
第四発明において、制御工程は、第一対応関係を参照して、混合液の圧力の計測値に対応する飽和温度を導出してから、飽和温度の導出値と上記混合液の温度の計測値との差を該混合液の過冷度として算出する過冷度算出工程と、主流の流量の計測値と副流の流量の計測値との和で該副流の流量の計測値を除して副流流量比を算出する副流流量比算出工程と、上記過冷度の算出値を第二対応関係における過冷度の最小値と比較して、上記過冷度の算出値が上記最小値以下であるときには、上記第二対応関係を参照して、上記過冷度の算出値が上記最小値より大きくなるような副流流量比を目標値として導出し、副流流量比の算出値が上記目標値に追従するように副流の流量を増大させる副流流量調整工程とを有していることが好ましい。
【0029】
<第五発明>
第五発明に係る蒸発ガス再液化方法は、貯槽内に貯留された低温液体から発生する蒸発ガスを、貯槽から払い出された低温液体に注入して凝縮させることにより該低温液体に混合して再液化する。
【0030】
かかる蒸発ガス再液化方法において、第五発明では、第四発明に係る凝縮混合方法に記載の工程と、貯槽から低温液体を送出する送出工程と、蒸発ガスを圧縮する蒸発ガス圧縮工程とを備え、上記送出工程で低温液体を管状体へ供給し、上記蒸発ガス圧縮工程で蒸発ガスをベンチュリ管内へ注入するようになっていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0031】
本発明では、以上のように、制御手段あるいは制御工程によって、混合液の過冷度が常に最小値より大きくなるように副流の低温液体の流量が制御される構成としたので、蒸発ガスを確実に凝縮させて低温液体中に効果的に混合して再液化させることができ、ポンプに蒸発ガスが気体のまま流入してポンプに障害が発生するのを防止できる。また、蒸発ガスの再液化が効率よく短時間で完了すると共に、その結果、装置構成をコンパクトにできる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態装置の蒸発ガス再液化装置の概要構成図である。
図2】(A)は図1の蒸発ガス再液化装置に用いられる凝縮混合装置の概略構成図であり、(B)は(A)のB−B断面図である。
図3】混合液の過冷度の最小値と副流流量比(旋回強さ)との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施の形態を説明する。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態としての凝縮混合装置を備えた蒸発ガス再液化装置の概要構成図である。
【0035】
図1において、符号1は本実施形態の蒸発ガス再液化装置であり、後に図2に詳細に示される構造の凝縮混合装置2を有していて該凝縮混合装置2の入口側(図にて左側)には、該凝縮混合装置2へ低温液体25を送出する送出ポンプ3そして蒸発ガス26を注入する蒸発ガス圧縮機4が接続されている。
【0036】
低温液体25は、例えば、タンク(図示せず)内に貯蔵されている液化天然ガス(LNG)の一部であり、また、蒸発ガス26は、例えば、上記タンク内の液化天然ガスの一部が蒸発して発生したボイルオフガス(BOG)である。
【0037】
図1に見られるように、低温液体25は送出ポンプ3により送出されて上記凝縮混合装置2へ流入する。この凝縮混合装置2内を流れる上記低温液体25へ、蒸発ガス圧縮機4で圧縮された蒸発ガス26が注入される。
【0038】
上記凝縮混合装置2の出口側には、昇圧ポンプ5が接続されていて、低温液体25中への注入後に凝縮して該低温液体25に混合された蒸発ガス26を液化状態で含んで凝縮混合装置2から排出された混合低温液体(以下、「混合液」という)を昇圧する。昇圧された混合液は、例えば、該低温液体25が液化天然ガスならば、気化器へもたらされ再びガス化されてから都市ガスとして需要側に送出される。
【0039】
凝縮混合装置2は、図2(A)に示されているように、上流側から下流側へ向けて流れる低温液体25を主流として流通させる主流管6と、該主流管6から分岐して低温液体25を副流として流通させる副流管7と、上記主流および上記副流の低温液体を受けて該副流により該主流に対して旋回流を生じさせる旋回流形成部8と、該旋回流をなす低温液体25および蒸発ガス26を受けて該蒸発ガス26を凝縮して低温液体25に混合して混合液を生成する混合管部9と、該混合管部9から流出した混合液を下流側へ流通させる混合液管10とを有している。
【0040】
凝縮混合装置2は、さらに、主流管6に設けられた主流流量計11および主流調整弁12と、副流管7に設けられた副流流量計13および副流調整弁14と、混合液管10に設けられた混合液圧力計15および混合液温度計16と、主流および副流のそれぞれの流量を制御するための制御手段17と、該制御手段17による制御に際して参照されるデータを記憶する記憶手段18とを有している。
【0041】
以下、凝縮混合装置2の各部の構成を説明する。副流管7は、図2(A)に見られるように、旋回流形成部8よりも上流側で主流管6から分岐しており、主流管6内を流れる主流の一部を分流して得られる副流を旋回流形成部8へ向けて流通させるようになっている。旋回流形成部8は、上流から下流へ向けた方向(図2(A)にて左右方向)に軸線をもつ管状体をなし、主流管6の下流側の端部に接続されている。該旋回流形成部8の管壁には、副流管7の下流側の端部が接続された接線方向注入口8Aが形成されており、副流をなす低温液体25を該接線方向注入口8Aから旋回流形成部8の接線方向で受けるようになっている。このように接線方向で副流を受ける結果、旋回流形成部8内で、該副流により主流に対して旋回流が形成される(図2(B)参照)。上記副流管7内を流れる低温液体は、もともと送出ポンプ3により与えられた流れの勢いで接線方向注入口8Aに注入されることもできるが、その勢いをさらに確実に得るには、副流管7にポンプを設けておくことが好ましい。
【0042】
混合管部9は、旋回流形成部8の下流側端部に接続された横型筒状のケーシング19と、該ケーシング19内に収容され旋回流をなす低温液体25を旋回流形成部8から受けるベンチュリ管20と、ケーシング19とベンチュリ管20との間の空間に挿填された挿填物21とを有している。混合管部9の軸線は、旋回流形成部8の軸線の延長線上に位置している(図2(A)の軸線Xを参照)。
【0043】
ケーシング19は、低温液体25の流れ方向における上流側に入口部19Aと、下流側に出口部19Bと、それらの中間位置でベンチュリ管20が収容配置される収容部19Cとを有しており、入口部19Aと出口部19Bは内径が等しく、収容部19Cにて内径が増大されている。入口部19A、出口部19Bそして収容部19Cの中心となる軸線は同一の直線上に位置している(図2(A)の軸線Xを参照)。上記収容部19Cは、その内径が上記ベンチュリ管20の外径よりも大きく、該ベンチュリ管20の周囲に空間を形成し、ステンレススチールなどの繊維状金属細線の織物あるいは編物から成る挿填物21がこの空間に分散して挿填されている。さらに、上記収容部19Cの上部上流側位置には、上方に開口する蒸発ガス注入部19Dが開口形成されていて、蒸発ガス圧縮機4から圧送されてくる蒸発ガス26を該蒸発ガス注入部19Dで受け入れるようになっている。図2(A)で示す凝縮混合装置2では、蒸発ガス注入部19Dが収容部19Cの上部上流側位置に開口形成されているが、蒸発ガス注入部19Dの位置はこれに限定されるものではなく、収容部19Cの側部上流側位置に開口形成されてもよい。
【0044】
ベンチュリ管20は、軸線X方向の両側に半径外方に突出する取付フランジ20D,20Eを有していて、該取付フランジ20D,20Eで、上記ケーシング19の収容部19C内に、ベンチュリ管20、ケーシング19の入口部19Aそして出口部19Bの軸線Xが一致して一つの直線上に位置するように取り付けられている。
【0045】
上記ベンチュリ管20の内径は、ケーシング19の入口部19A側に位置する縮径部20A、該縮径部20Aの直後に位置する喉部20B、そして該喉部20Bから出口部19Bに向け延びる拡径部20Cを順次形成している。上記縮径部20Aは曲面をもって比較的急激に内径が小さくなって流路断面積を絞り込んでおり、拡径部20Cは軸線X方向で長い距離にわたり内径を回復するように拡径している。喉部20Bは縮径部20Aと拡径部20Cとを低温液体の流れに対して低抵抗となるように円滑な曲線で結んでおり、最小の流路断面積となるように最小径に形成されている。
【0046】
拡径部20Cには、円周方向そして液体の流れ方向の複数位置に、小口径の蒸発ガス孔20C−1が多数形成されている。各蒸発ガス孔20C−1は、ベンチュリ管20の管壁を半径方向に貫通して形成されていて、半径内方に向け軸線方向下流側に傾くように形成されている。後述するように、蒸発ガス注入部19Dから注入された蒸発ガス26は、それら複数の蒸発ガス孔20C−1から分散して拡径部20Cへ吸引される。この結果、拡径部20C内を流れる旋回流の低温液体25内で蒸発ガス26が凝縮されて該旋回流の低温液体25に混合され、混合液が生成される。
【0047】
混合液管10は、混合管部9のケーシング19の出口部19Bの下流側の端部に接続されており、混合管部9で生成された混合液を下流側、すなわち昇圧ポンプ5側へ向けて流通させる。
【0048】
主流流量計11および主流調整弁12は、それぞれ主流管6に設けられている。該主流流量計11は、主流管6内を流れ旋回流形成部8へ流入する主流の低温液体25の流量を計測する。主流調整弁12は、後述する制御手段17の制御を受けて開度が調整されることにより、主流の流量を調整可能となっている。また、副流流量計13および副流調整弁14は、それぞれ副流管7に設けられている。該副流流量計13は、副流管7内を流れ旋回流形成部8へ注入される副流の低温液体25の流量を計測する。副流調整弁14は、後述する制御手段17の制御を受けて開度が調整されることにより、副流の流量を調整可能となっている。また、混合液圧力計15および混合液温度計16は、それぞれ混合液管10に設けられており、混合管部9から流出し混合液管10内を流れる混合液の圧力および温度をそれぞれ計測する。
【0049】
記憶手段18は、混合液の圧力とその圧力での飽和温度との対応関係のデータを第一対応関係Aとして、そして許容し得る混合液の過冷度の最小値と副流流量比(旋回強さ)との対応関係のデータを第二対応関係B(図3参照)として予め記憶している。この第一対応関係Aおよび第二対応関係Bのデータは、後述するように、副流の流量の制御を行う際に制御手段17によって参照される。ここで、「過冷度の最小値」とは、混合液に蒸気が存在しないようにする過冷度の最も小さい値である。過冷度の最小値が小さいほど、混合液に蒸気が存在しないように混合液を冷却する温度は飽和温度に近くなる。過冷度算出手段により、過冷度が飽和温度の導出値と上記混合液の温度の計測値との差として算出される。また、「副流流量比」とは、主流の流量と副流の流量の和に対する副流の流量の割合であり、副流流量比算出手段23によって、主流の流量の計測値と副流の流量の計測値との和で副流の流量の計測値を除して算出される。また、記憶手段18は、上記第一対応関係Aを、例えば、混合液の圧力と飽和温度との関係式、関係線図または蒸気表等の形態として記憶していることが望ましい。
【0050】
図3は、混合液の過冷度の最小値と副流流量比(旋回強さ)との関係、すなわち第二対応関係Bを示す図である。図3に示されているように、副流流量比が0すなわち旋回がない場合に比べて旋回があると混合液の過冷度の最小値が小さくなり、また、混合液の過冷度の最小値と副流流量比(旋回強さ)とは、副流流量比が大きいほど過冷度の最小値が低下する関係にある。つまり、副流流量比が大きいほど過冷度の最小値が小さくなり、混合液に蒸気が存在しない液体状態の混合液の温度は飽和温度に近くなり、凝縮混合装置の混合性能が向上する。
【0051】
制御手段17は、図2(A)に見られるように、混合液の過冷度を算出する過冷度算出手段22と、副流流量比を算出する副流流量比算出手段23と、主流調整弁12および副流調整弁14のそれぞれの開度を調整する流量調整手段24とを有している。過冷度算出手段22は、記憶手段18に記憶されている第一対応関係Aを参照して、混合液の圧力の計測値に対応する飽和温度を導出してから、飽和温度の導出値と上記混合液の温度の計測値との差を該混合液の過冷度として算出する。副流流量比算出手段23は、主流の流量の計測値と副流の流量の計測値との和で該副流の流量の計測値を除して副流流量比を算出する。流量調整手段24は、上記過冷度の算出値を、上記記憶手段18に記憶されている第二対応関係B(図3参照)における過冷度の最小値と比較して、上記過冷度の算出値が上記最小値以下であるときには、上記第二対応関係Bを参照して、上記過冷度の算出値が上記最小値より大きくなるような副流流量比を目標値として導出し、副流流量比の算出値が上記目標値に追従するように、副流調整弁14の開度を大きくして副流の流量を増大させる。
【0052】
次に、上述のように構成された本実施形態の蒸発ガス再液化装置1そしてその動作を図1そして図2に基づき説明する。
【0053】
先ず、タンク(図示せず)内の低温液体(例えば、LNG)25の一部が、送出ポンプ3によって送出されて凝縮混合装置2に導入される。また、上記タンク内で発生した蒸発ガスは、蒸発ガス圧縮機4によって大気圧と都市ガス運用圧力(4〜7MPa)の間の圧力(中間圧)まで昇圧された後、凝縮混合装置2に導入される。
【0054】
凝縮混合装置2に導入される低温液体25は、主流として主流管6内を流通して旋回流形成部8に直接流入する。また、主流管6を流通する主流の低温液体の一部が副流管7を副流として流通し旋回流形成部8の接線方向注入口8Aから接線方向に注入される。旋回流形成部8に直接流入した低温液体25は軸線X方向に流入し、接線方向注入口8Aから注入された低温液体は周方向に流れて主流に対して旋回流を生ずる。したがって、上記接線方向注入口8Aよりも後流側では、上流側から軸線X方向に流れてきた低温液体25も上記旋回流の影響を受け、旋回流形成部8を流れる低温液体25全体が旋回流を形成するようになる。本実施形態では、上記主流および副流の流量は、主流調整弁12および副流調整弁14のそれぞれの開度が制御手段17によって調整されることにより制御される。
【0055】
上記旋回流形成部8で旋回流となった低温液体25は、ベンチュリ管20を収容している混合管部9のケーシング19に設けられた入口部19Aを経てベンチュリ管20に流入し、縮径部20A、喉部20Bそして拡径部20Cを流れ、ケーシング19の出口部19Bへ達する。ベンチュリ管20内を流れる低温液体25は、縮径部20Aで流速を高め、喉部20Bで最大流速に達し、その後、拡径部20Cで徐々に流速を低めるが、拡径部20Cでの下流端(図2(A)にて右端)における最大内径でも上記入口部19Aの内径より小さいので、拡径部20Cでの流速は入口部19Aの流入時の流速よりも高く、したがって、圧力は低くなっており、蒸発ガス孔20C−1に対しては吸引力をもたらす。
【0056】
一方、蒸発ガス26は蒸発ガス圧縮機4により昇圧されて、上記凝縮混合装置2のケーシング19に設けられた、蒸発ガス注入部19Dを経て上記ケーシング19内に注入される。ベンチュリ管20を収容しているケーシング19の収容部19Cには、ベンチュリ管20の外周に挿填物21が挿填されており、蒸発ガス圧縮機4で圧送されて上記蒸発ガス注入部19Dから注入された蒸発ガス26は、挿填物21により緩衝されそして収容部19C内でベンチュリ管20の全周そして全長にわたり拡散する。
【0057】
上述の通り、ベンチュリ管20の拡径部20Cを流れる低温液体25は、ベンチュリ管現象により蒸発ガス孔20C−1に対して吸引力をもたらすので、上記収容部19C内に拡散している蒸発ガス26は、各蒸発ガス孔20C−1から拡径部20Cへ吸引導入される。図2(A)に見られるように蒸発ガス孔20C−1が半径内方に向け上流側に傾いているので、流入した蒸発ガスは、ベンチュリ管20内の主流の低温液体25の流れに逆らうことなく低抵抗のもとで合流する。その際、上記主流の低温液体25は旋回流を形成しているので、上記蒸発ガス26は周方向でも半径方向でも、十分に低温液体25に混合される。
【0058】
上記拡径部20Cに吸引導入された蒸発ガス26は低温液体内に混入して該低温液体により冷却される。その冷却の結果、蒸発ガスは凝縮して確実に再液化し、低温液体25の一部として下流側へ流れる。このようにして再液化された蒸発ガスを含む低温液体は昇圧ポンプ5で昇圧されて気化器へもたらされた後、気化器で気化されて都市ガスとして需要側に送出される。
【0059】
次に、凝縮混合装置2における制御手段17による副流の流量の制御動作について、説明する。本実施形態では、主流調整弁12が開状態そして副流調整弁14が閉状態で蒸発ガス再液化装置1が運転されている場合において、必要に応じて、副流調整弁14を開状態として旋回流形成部8に副流を注入して旋回流を形成するときの制御動作について説明する。
【0060】
制御手段17の過冷度算出手段22は、記憶手段18に記憶されている第一対応関係Aを参照して、混合液圧力計15により計測された混合液の圧力の計測値に対応する飽和温度を算出し、次に、算出した飽和温度と混合液温度計16により計測された混合液の温度の計測値との差を過冷度として算出する。また、副流流量比算出手段23は、主流流量計11により計測された主流の流量の計測値と副流流量計13により計測された副流の流量の計測値との和で該副流の流量の計測値を除して副流流量比(旋回強さ)を算出する。
【0061】
流量調整手段24は、過冷度算出手段22により算出された過冷度の算出値を、記憶手段18に記憶されている第二対応関係Bにおける過冷度の最小値と比較する。この比較の結果、上記過冷度の算出値が上記最小値より大きいときには、蒸発ガスは低温液体中に気泡として存在することなく低温液体に混合していると言える。したがって、流量調整手段24は、副流調整弁14を開状態とする制御を行うことはない。つまり、旋回流形成部8に副流が注入されないので、主流に対して旋回流が形成されない状態が維持される。
【0062】
一方、上記過冷度の算出値が上記最小値以下であるときには、混合管部9から流出する混合液に蒸発ガスの気泡が残存していて該混合液が気液二相流となっていると言える。このような状態において、凝縮混合装置2の下流側で蒸発ガスが凝縮すると、ウォーターハンマー作用の発生など、蒸発ガス再液化装置1全体の安全な運転に支障が生じる。
【0063】
そこで、流量調整手段24は、上記第二対応関係Bを参照して、上記過冷度の算出値が上記最小値より大きくなるような副流流量比を目標値として導出し、副流流量比算出手段23により算出される副流流量比の算出値が上記目標値に追従するように、副流調整弁14の開度を調整する。この結果、適切な流量に調整された副流の低温液体が旋回流形成部8に接線方向で注入され、主流に対して旋回流を形成することにより、混合液の過冷度の最小値が小さくなる。したがって、蒸発ガスを低温液体中に残存させることなく確実に凝縮して低温液体に混合させることができる。
【0064】
上述の制御動作の具体的な例として、旋回流が形成されておらず(旋回強さ0%)混合液の過冷度を5℃で運転している状態から、混合液の流量をあまり変えずに、混合液の温度を高くするような場合について説明する。この場合、ベンチュリ管20に吹き込む蒸発ガスの流量を増大させる必要があるが、第二対応関係Bを示す図3を見ると判るように、混合液の過冷度は最小値(5℃)にあるので、このままでは混合液中蒸発ガスの気泡が残存することになり、蒸発ガスの流量を増大できない。
【0065】
そこで、副流調整弁14を開状態として副流の低温液体を旋回流形成部8に接線方向で注入して旋回流を形成することにより、過冷度の最小値を低下させ、混合液の温度を高くできるようにする。図3より、混合液の温度を2℃上昇させる(過冷度5℃から過冷度3℃に上昇させる)場合は、副流流量比(旋回強さ)を約35%になるように副流の流量を調整して、蒸発ガスの凝縮混合性能を高め、混合液中に蒸発ガスの気泡が残存しないようにする。このような旋回の付与は凝縮混合装置2の流体の圧力損失の増大を招き、供給するポンプの動力を増大させるので、旋回の付与は混合液の過冷度を小さくしたい場合にのみ実施することが望ましい。このように旋回の付与を必要な場合にのみ行うようにすることにより、固定旋回羽根等の装置を設ける場合に比べて圧力損失の増大を最小限に抑制することができ、むやみにエネルギー消費を増大させることを防ぐことができる。
【0066】
上述したような旋回付与の制御は、上述したように、低温液体に凝縮混合させる蒸発ガスの量を増大させる場合に行われる。また、この旋回付与の制御は、例えば、低温液体としての水に蒸発ガスとしての水蒸気を混合して混合液としての温水を生成するときのように、得られる混合液の温度を高くすることが所望される場合においても有効である。
【0067】
本実施形態では、混合液の過冷度が常に最小値より大きくなるように副流の低温液体の流量が制御される構成としたので、蒸発ガスを低温液体中に効果的に混合して再液化させることができ、ポンプに蒸発ガスが気体のまま流入してポンプに障害が発生するのを防止できる。また、旋回付与のために、従来のような固定旋回羽根等の装置を設ける必要がないので、凝縮混合装置の圧力損失を最小限に抑えることができ、蒸発ガスの再液化が効率よく短時間で完了すると共に、装置構成をコンパクトにできる。
【0068】
また、本実施形態では、制御手段17は、主流調整弁12および副流調整弁14の両方を制御することとしたが、これに代えて、副流調整弁14のみを制御するようにしてもよい。
【0069】
また、本実施形態では、凝縮混合装置2を水平方向に配置しているが、鉛直方向に配置してもよい。凝縮混合装置2を鉛直方向に配置し低温液体25を鉛直方向下向きに流通し、蒸発ガスを水平方向から流入することにより、低温液体中で蒸発ガスは浮力を受け滞留時間が長くなるため、蒸発ガスの凝縮混合がより安定して行われる。
【0070】
また、本実施形態では、過冷度の算出値を第二対応関係Bにおける過冷度の最小値と比較して、過冷度の算出値が最小値より大きくなるような副流流量比を目標値として副流の流量を調整することとしているが、過冷度の最小値に一定値を加算した値より大きくなるような副流流量比を目標値とするようにして、適用システムに要求される安全係数を反映するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 蒸発ガス再液化装置
2 凝縮混合装置
3 送出ポンプ
4 蒸発ガス圧縮機
8 旋回流形成部
9 混合管部
11 主流流量計
13 副流流量計
14 副流調整弁
15 混合液圧力計
16 混合液温度計
17 制御手段
18 記憶手段
20 ベンチュリ管
20C−1 蒸発ガス孔
22 過冷度算出手段
23 副流流量比算出手段
24 副流流量調整手段
25 低温液体
26 蒸発ガス
図1
図2
図3