(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5896179
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】位置誤差を補正する形状ロック接続、形状ロック接続のためのボルト、ナット、および調整リング
(51)【国際特許分類】
F16B 5/02 20060101AFI20160317BHJP
F16B 35/00 20060101ALI20160317BHJP
F16B 43/00 20060101ALI20160317BHJP
B60B 3/16 20060101ALN20160317BHJP
【FI】
F16B5/02 A
F16B35/00 K
F16B43/00 Z
!B60B3/16 D
【請求項の数】16
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-532080(P2013-532080)
(86)(22)【出願日】2011年10月7日
(65)【公表番号】特表2014-500444(P2014-500444A)
(43)【公表日】2014年1月9日
(86)【国際出願番号】EP2011005024
(87)【国際公開番号】WO2012045471
(87)【国際公開日】20120412
【審査請求日】2014年9月17日
(31)【優先権主張番号】102010038067.9
(32)【優先日】2010年10月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513073496
【氏名又は名称】ウァイス,ウォルフガング
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ウァイス,ウォルフガング
【審査官】
塚原 一久
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第02/075170(WO,A1)
【文献】
米国特許第5057111(US,A)
【文献】
特開平01−182614(JP,A)
【文献】
英国特許出願公告第00400887(GB,A)
【文献】
米国特許第6193320(US,B1)
【文献】
米国特許第5797912(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/00− 5/12
F16B 23/00−43/02
B60B 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置誤差を補正する形状ロック接続であって、
互いに接続される第1の部品(1;201;301;401)および第2の部品(2;202;302;402)、
前記第1の部品(1;201;301;401)に配置された環状の第1の形状ロック要素(30’;230’;330’;430’)、
前記第2の部品(2;202;302;402)に配置された環状の第2の形状ロック要素(21;221;321;421’)、および
前記第1の形状ロック要素と前記第2の形状ロック要素の間に設けられる補正要素、を備え、
前記補正要素は調整リング(4;204;304;404)として形成されており、
前記第1および第2の形状ロック要素はその軸位置で固定され、前記補正要素とともに、前記第1の部品(1;201;301;401)と前記第2の部品(2;202;302;402)を相対して配置する形状ロック手段を形成しており、
前記第1の形状ロック要素は、前記第2の形状ロック要素に向いている側に球形セグメント状に湾曲した第1の面(32;232;332;432)を備えており、前記第1の面(32;232;332;432)の湾曲中心点(M1;M3)は前記第1の形状ロック要素の軸(X;X5)上にあり、
前記第2の形状ロック要素は、前記第1の形状ロック要素に向いている側に球形セグメント状に湾曲した第2の面(22;222;322;422)を備えており、前記第2の面(22;222;322;422)の湾曲中心点(M2)は前記第2の形状ロック要素の軸(X2;X6)上にあり、
前記調整リング(4;204;304;404)は、球形セグメント状に湾曲した第3の面(40;240;340;440)および第4の面(42;242;342;442)を備えており、前記第3および第4の面の湾曲はそれぞれ、対面している球形セグメント状に湾曲した前記第1の面、および第2の面に適合しており、
前記調整リング(4;204;304;404)の半径方向内側が、球形セグメント状に湾曲した前記第3の面(40;240;340;440)であること、
前記調整リング(4;204;304;404)の半径方向外側が、球形セグメント状に湾曲した前記第4の面(42;242;342;442)であること、
前記調整リング(4;204;304;404)の半径方向内側の球形セグメント状に湾曲した前記第3の面(40;240;340;440)が環状の前記第1の形状ロック要素(30’;230’;330’;430’)の球形セグメント状に湾曲した前記第1の面(32;232;332;432)と接触すること、
前記調整リング(4;204;304;404)の半径方向外側の球形セグメント状に湾曲した前記第4の面(42;242;342;442)が環状の前記第2の形状ロック要素(21;221;321;421’)の球形セグメント状に湾曲した前記第2の面(22;222;322;422)と接触していること、
前記調整リング(4;204;304;404)の半径方向内側の球形セグメント状に湾曲した前記第3の面(40;240;340;440)と半径方向外側の球形セグメント状に湾曲した前記第4の面(42;242;342;442)が半径方向において互いに逆の方向を向いた面であること、
半径方向内側の球形セグメント状に湾曲した前記第3の面(40;240;340;440)の湾曲中心点(M1’)と半径方向外側の球形セグメント状に湾曲した前記第4の面(42;242;342;442)の湾曲中心点(M2’)は軸方向において互いに離れており、半径方向内側の球形セグメント状に湾曲した前記第3の面(40;240;340;440)の湾曲中心点(M1’)は半径方向外側の球形セグメント状に湾曲した前記第4の面(42;242;342;442)の湾曲中心点(M2’)よりも前記調整リング(4;204;304;404)の近くにあること、および、
前記調整リング(4;204;304;404)が前記第1および第2の形状ロック要素(30’;230’;330’;430’、21;221;321;421’)の間でどの方向にも回転可能であることにより、前記第1の形状ロック要素(30’;230’;330’;430’)の軸と前記第2の形状ロック要素(21;221;321;421’)の軸が互いにずれた場合にも、球形セグメント状に湾曲した前記第3の面(40;240;340;440)が前記第1の面(32;232;332;432)と、および前記第4の面(42;242;342;442)が前記第2の面(22;222;322;422)と接したままであること、を特徴とする形状ロック接続。
【請求項2】
球形セグメント状に湾曲した前記第1の面(32;232;332;432)と前記第4の面(42;242;342;442)が凸状に湾曲しており、さらに
球形セグメント状に湾曲した前記第2の面(22;222;322;422)と前記第3の面(40;240;340;440)が凹状に湾曲していることを特徴とする、請求項1に記載の形状ロック接続。
【請求項3】
前記第1の形状ロック要素が前記第1の部品(401)の開口部にあり、さらに
前記第2の形状ロック要素が前記第2の部品(402)の開口部にあることを特徴とする、請求項1に記載の形状ロック接続。
【請求項4】
前記第1の形状ロック要素がボルト締結手段(3;203;303)に設けられ、前記ボルト締結手段(3;203;303)が前記第1の部品(1;201;301)と接続され、前記第1の部品(1;201;301)の軸位置に固定されており、前記第2の部品(2;202;302)の穴(20;220;320)を貫通すること、
前記第2の形状ロック要素が前記第2の部品(2;202;302)の前記穴(20;220;320)に設けられること、
前記第2の部品(2;202;302)が前記ボルト締結手段(3;203;303)と前記第1の部品(1;201;301)の間にはめ込まれていること、
前記ボルト締結手段(3;203;303)は、前記第1の部品(1;201;301)と反対側の端部で、かつ、前記第2の部品(2;202;302)に向いている面に、前記ボルト締結手段(3;203;303)の円周に沿って、球形セグメント状に湾曲した前記第1の面(32;232;332)が備わった少なくとも1つの半径断面(30;230;330)を有しており、前記第1の面(32;232;332)の湾曲中心点(M1;M3)が前記ボルト締結手段(3;203;303)の軸(X;X5)上にあること、
前記第2の部品(2;202;302)は穴(20;220;320)の円周に沿って、前記ボルト締結手段(3;203;303)の球形セグメント状の断面(30;230;330)に向いている面に球形セグメント状に湾曲した前記第2の面(22;222;322)を備えており、前記第2の面(22;222;322)の湾曲中心点(M2;M4)が穴(20;220;320)の軸(X2;X6)上にあること、および
前記調整リング(4;204;304)が、前記第2の部品(2;202;302)と前記ボルト締結手段(3;203;303)の前記半径断面(30;230;330)の間に設けられていること、を特徴とする、請求項1または2に記載の形状ロック接続。
【請求項5】
前記ボルト締結手段(3)がボルト(31)で形成されており、前記ボルト(31)が前記第1の部品(1)のねじ穴(10)に締め込まれており、さらに、前記半径断面(30)が前記ボルト(31)のボルト頭部(33)に形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の形状ロック接続。
【請求項6】
前記ボルト締結手段(203)がボルト(231)で形成されており、前記ボルト(231)が前記第1の部品(201)の穴(210)を貫通しており、さらに前記第1の部品(201)に支えられているナット(237)に締め込まれていることを特徴とする、請求項4に記載の形状ロック接続。
【請求項7】
前記ボルト締結手段(303)が前記第1の部品と接続されているねじ付きボルト(310)と前記ねじ付きボルト(310)に締め込まれているナット(350)によって形成されており、このとき、前記半径断面(330)が前記ナット(350)に設けられていることを特徴とする、請求項4に記載の形状ロック接続。
【請求項8】
ホイール(302)をホイール受け(301)に固定するためのものであり、前記第1の部品が前記ホイール受け(301)で形成されており、前記第2の部品が前記ホイール(302)で形成されている請求項1〜7のうちいずれか一項に記載の形状ロック接続。
【請求項9】
前記形状ロック接続が前記ホイール(302)のセンタリングロック(300)として形成されていることを特徴とする、請求項8に記載の形状ロック接続。
【請求項10】
前記ホイール受け(301)にねじ(311)を備えている中央のホイール固定ボルト(310)があり、さらに前記半径断面(330)が前記ホイール固定ボルト(310)にはめ込み可能なナット(350)に設けられていることを特徴とする、請求項7または8に記載の形状ロック接続。
【請求項11】
前記ホイール受け(301)が第1の環状のプロファイル加工(5)を備えており、前記ホイール(302)が第2の環状のプロファイル加工(6)を備えており、前記第1および前記第2の環状のプロファイル加工(5、6)が互いにかみ合っており、前記ホイール受け(301)に対して前記ホイール(302)が中心にあることを特徴とする、請求項8から10のうちのいずれか一項に記載の形状ロック接続。
【請求項12】
前記第1の環状のプロファイル加工(5)と前記第2の環状のプロファイル加工(6)がハースカップリングとして形成されていることを特徴とする請求項11に記載の形状ロック接続。
【請求項13】
請求項5,6,8、または11のうちいずれか一項に記載の形状ロック接続のためのボルトであって、前記ボルトの頭部(33;233)の、前記ボルト(31;231)のねじ部(35;236)に向いている面に球形セグメント状で凸に湾曲した面(32;232)を備えており、前記湾曲した面の湾曲中心点(M1)が前記ボルト(31;231)の軸(X)上にあることを特徴とするボルト。
【請求項14】
請求項7から12に記載の形状ロック接続のためのナットであって、前記ナット(350)が、少なくとも1つの軸端に球形セグメント状で凸に湾曲した面(332)を備えており、前記湾曲した面の湾曲中心点(M3)が前記ナット(350)の軸(X5)上にあることを特徴とするナット。
【請求項15】
請求項1から12のうちいずれか一項に記載の形状ロック接続のための調整リングであって、前記調整リング(4;204;304;404)がそれぞれ1つの球形セグメント状に湾曲した面(40、42;240、242;340、342;440、442)を備えており、そのそれぞれの湾曲中心点(M1’、M2’)が前記調整リングの軸(X3)上にあることを特徴とする調整リング。
【請求項16】
請求項15に記載の調整リングであって、球形セグメント状に湾曲した2つの面のうちの1つの面(40;240;340;440)が凹面であり、球形セグメント状に湾曲した2つの面のうちのもう1つの面(42;242;342;442)が凸面であることを特徴とする調整リング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の、位置誤差、特に軸のずれおよび/または軸の偏角を補正する形状ロック接続に関する。さらに、このような形状ロック接続のボルト、ナットおよび補正要素に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの部品を互いに接続し、接続軸に対して半径方向力を遊びなしに吸収することのできる形状ロック接続は、互いに接続される部品において、それぞれの形状ロック要素の軸が、正確にかつ公差なく合致する必要がある。2つの部品を互いに固定するために、それぞれ半径方向力の遊びのない吸収を保証する2つ以上の形状ロック接続が設けられている場合、形状ロック要素の製造時には調整誤差に至る可能性のある公差がつねに生じることから、通常、形状の過剰決定が発生する。このような形状の過剰決定は望ましくないため、回避する必要がある。
参考文献、Symonds,Pat、“Why loose wheels drive us nuts”、RACE TECH INTERNATIONAL,vol.17,issue7(2010年5月)では、ホイール接続時にホイールとホイール固定の軸のずれの問題点について記載されている。
【0003】
種類に応じた形状ロック接続の例を
図1に示す。
【0004】
図1には、互いに接続される第1および第2の部品1、2を示しており、これらの部品は、センタリングコーン22’の付いた穴20(第2の形状ロック要素)に差し込まれ、第1の部品1にある締め付け穴10にねじ込まれたセンタリングコーン9’の付いたボルト9(第1の形状ロック要素)を介して互いに接続されている。例えばセンタリングボルトとして形成され、そのセンタリングコーン9’で穴20のセンタリングコーン22’に接しているボルト9は、2つの部品1、2がボルト9の軸方向において、またボルト9の半径方向においても、遊びなしに相対して配置されることを確実にしている。もしも2つの部品1、2がさらにもう1つ別の位置で形状ロック手段によって互いに接続され、しかもその形状ロック手段が、同様にボルトの軸に対して半径方向に働く力を吸収することができるとしたら、第1の部品1にある締め付け穴10の軸X
1と第2の部品2にある穴20の軸X
2が同一であるとすれば、2つの部品1、2の間の接続全体が形状的に固定されるだろう。しかし、製造上の公差があるため、実際には通常こういうことはない。
図1の例では、2つの軸X
1とX
2は、距離Δxで互いにずれている。
【0005】
例えばねじ穴として形成された第1の部品1の穴10にねじ込まれるボルトを用いて、接続される第1の部品1と第2の部品2の間に第2の接続を設けることは可能であるものの、このとき、ボルト頭部は
図1の第2の部品2の右の外側で自身を支えるため、確かにこのようなボルト接続は第1の部品1および第2の部品2をボルトの軸方向にのみ固定するが、軸X
1に対して半径方向に働く力を吸収することはできない。このような接続は、軸のずれやわずかな軸の偏角を補正することができるものの、半径方向力の吸収には適していない。
【0006】
図1に例示する、ねじ付きボルト9を用いた2つの部品1、2の相対する第1の固定は、他の方法でも(例えばリベットを用いて)実現することができる。
【0007】
2つの部品が、ハースカップリングとして形成される環状のセレーションにより接続される例を、
図8および9に示し、図の説明で解説する。ホイール、例えば車両ホイールを、セレーションを用いてホイールキャリアにセンタリングし、センタリングロックによりこれをホイールキャリアに固定する方法については、EP 0 928 249 B1に開示されている。もっとも、ここで開示されているボルト接続では、半径方向の支持力を、ナットを介して吸収することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、接続される2つの部品を形状ロック要素の軸方向に固定する際に、全体の構成において形状の過剰決定が生じることなく、半径方向に発生する力を2箇所以上で吸収することができる形状ロック接続を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1の特徴を有する形状ロック接続によって解決される。
【0010】
このために、形状ロック接続は、互いに接続される第1の部品と第2の部品を備え、また、本発明の特徴として、第1の部品に配置された第1の環状の形状ロック要素;第2の部品に配置された第2の環状の形状ロック要素、および第1の形状ロック要素と第2の形状ロック要素の間にある補正要素を備えている。このとき、形状ロック要素はその軸位置に固定され、補正要素とともに、第1の部品と第2の部品を相対して配置する1つの形状ロック手段を形成している。第1の形状ロック要素は、その第2の形状ロック要素に向いている面に、球形セグメント状に湾曲した第1の面を備えており、その湾曲中心点が第1の形状ロック要素の軸上にある。第2の形状ロック要素はその第1の形状ロック要素に向いている面に、球形セグメント状に湾曲した第2の面を備えており、その湾曲中心点が第2の形状ロック要素の軸上にあり、さらに補正要素は、軸方向において互いから離れている面にそれぞれ球形セグメント状に湾曲した第3の面と第4の面を備え、それぞれの湾曲面は、それに対置している球形セグメント状に湾曲した第1の面または第2の面に適合している。
【0011】
本発明による形状ロック要素の形態および本発明によって形成される補正要素により、2つの形状ロック要素の間の位置偏差を構造設定の範囲内で補正すことができるようになる。このとき、位置偏差は、
図1に示した軸のずれのような軸の平行ずれであることもあれば、この2つの軸の偏角であることもあり、ともに補正することが可能である。
【0012】
本発明による形状ロック接続では、互いに接続される2つの部品とその接続要素の間における形状の過剰決定を回避し、同時に、2つの部品を2箇所以上で、共通の接平面に対して平行方向に遊びなしに位置合わせすることが保証されるようにする。
【0013】
好ましくは、球形セグメント状に湾曲した第1および第4の面が凸状に湾曲し、球形セグメント状に湾曲した第2および第3の面が凹状に湾曲している。
【0014】
本発明の1つの実施形態では、第1の部品の開口部に第1の形状ロック要素と、第2の部品の開口部に第2の形状ロック要素を設けることができる。この際、形状ロックは2つの開口部に差し込まれた補正要素のみで作られ、このとき、2つの部品を接続するために、本発明により形成される複数の形状ロック接続を設けることができる。
【0015】
好ましくは、補正要素が調整リングとして形成される。
【0016】
本発明のその他の実施形態では、第1の形状ロック要素が1つのボルト締結手段に設けられ、このとき、このボルト締結手段が第1の部品と接続され、これらの軸位置で固定されて、第2の部品の穴を貫通し、さらに第2の形状ロック要素が第2の部品の穴に設けられ、このとき、第2の部品はボルト締結手段と第1の部品の間で締め付けられている。ボルト締結手段には、第2の部品に向いている面の第1の部品とは反対側の端部に、円周に沿って少なくとも1つの半径断面がある。この半径断面は、第2の部品に向いている面に、球形セグメント状に湾曲した第1の面が備わっており、その湾曲中心点がボルト締結手段の軸上にある。第2の部品は、穴の円周に沿って、ボルト締結手段の半径断面に向いている面に、球形セグメント状に湾曲した第2の面が備わっており、その湾曲中心点が穴の軸上にあり、さらに、調整リングとして形成された補正要素が、第2の部品とボルト締結手段の半径断面の間に設けられている。
【0017】
本発明による、ボルト接続として形成された形状ロック接続のその他の好ましい実施形態では、このボルト締結手段はボルトで形成され、このとき、このボルトは第1の部品のねじ穴に締め込まれ、さらに半径断面がボルトのボルト頭部に形成されている。
【0018】
これの代替方法として、このボルト締結手段は、第1の部品の穴を貫通し、第1の部品で自身を支えるナットに締め込まれているボルトで形成することができる。
【0019】
このボルト締結手段は、第1の部品と接続されたねじ付きボルトとこれに締め込まれるナットで形成することもでき、このとき、半径断面はナット上に設けられる。
【0020】
このボルト締結手段がボルトまたはナットとして形成される場合、調整リングは取り外し不可能だが、ボルト上またはナット上で可動可能なように取り付けることができる。
【0021】
本発明による形状ロック接続の望ましい適用は、特にこの固定がホイールのセンタリングロックによって形成される場合の、ホイールをホイール受けに固定する適用である。このとき、第1の部品はホイール受けで、第2の部品はホイールで形成される。ホイールをホイール受けに固定するためのこの適用は、センタリングロックとしてだけでなく、ホイールが、例えばセンタリングするホイールボルトまたはホイールナットといった大半のセンタリングボルト締結手段によってホイール受けに固定可能な場合にも実現可能である。そのつど自身でセンタリングするこのボルト締結手段が本発明による形状ロック接続として形成されていれば、ホイール固定における形状の過剰決定が回避される。
【0022】
有利には、この適用のその他の実施形態が、ホイールのセンタリングロックであり、このとき、例えばホイール受けが、ねじの付いた中央のホイール固定ボルトを有し、さらにこのとき、半径断面が、例えばホイール固定ボルトに締め込まれるナット上に設けられている。
【0023】
望ましくは、ホイール受けが第1の環状のプロファイル加工、好ましくは例えばハースカップリングのようなセレーションを備え、さらにホイールが第2の環状のプロファイル加工、好ましくは例えばハースカップリングのようなセレーションを備えており、このとき、第1および第2の環状のプロファイル加工または刻み目が互いにかみ合い、ホイールがホイール受けに対して中心にきている。ホイール受けとホイールの間の接続のこの実施形態において、ホイールボルトまたはホイールナットがホイール受けとは反対側のホイールの面にある従来のボルト接続をセンタリングロックとして設けると、このボルト接続により、軸力のみがボルト接続の軸方向に伝達されることになる。このとき、ホイールとボルト接続の間の半径方向の支持力は支えられない。この出願人の試みでは、このようにホイール受けに固定されたホイールに動力が作用し、この動力によってホイール上のボルト接続位置において振動運動が発生する可能性があり、これにより、ねじ接続に開きトルクがかかることでボルト接続に緩みトルクがかかり、その結果ボルト接続が緩む可能性があることが明らかとなった。この緩みトルクの半径方向力を支えるために、ホイールのボルト接続部分においても、ホイールとホイール受けの間に遊びのない接続を設けることは有意義かもしれない。しかし、このような接続では、製造上の公差が回避できないため、ホイール受けへのホイールの固定において形状の過剰決定が生じるであろう。
【0024】
本発明はこの点を踏まえ、形状の過剰決定を回避するが、静的および動的な動作において生じるホイールの半径方向力をホイールキャリアのホイール固定ボルトを介しても支えることのできるようなホイールのセンタリングロックのためのボルト接続を作り出す。
【0025】
ボルト接続として形成された本発明による形状ロック接続のためのボルトの望ましい形態は、ボルト頭部が、そのボルトのねじ部に向いている面に凸状に湾曲した球形セグメント状の面を備えており、その湾曲中心点がボルトの軸上にあることを特徴とする。好ましくは、調整リングがボルト上で可動可能でありながら、取り外し不可能に配置されている。
【0026】
ボルト接続として形成された本発明による形状ロック接続のためのナットの望ましい形態は、ナットが、少なくとも1つの軸の端面に球形セグメント状に凸状に湾曲した面を備えており、その湾曲中心点がナットの軸上にあることを特徴とする。
【0027】
本発明によるボルト接続のためには、補正要素、特にシムワッシャーまたは調整リングの実施が望ましく、このとき、補正要素がその2つの軸端にそれぞれ球形セグメント状に湾曲した面を備えており、そのそれぞれの湾曲中心点が補正要素の軸上にある。この2つの湾曲中心点が一致すると、角度補正しか可能とならないが、これに対し、この2つの湾曲中心点が軸方向において互いから離れていれば、2つの軸の軸方向に平行なずれも補正することができる。
好ましくは、調整リングの2つの球形セグメント状に湾曲した面の1つが凹状であるのに対し、調整リングの2つの球形セグメント状に湾曲した面のもう1つが凸状である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施例について詳細に説明する。
【0029】
【
図1】
図1は、遊びなしに互いに接続している2つの部品を示す部分断面図である;
【
図2】
図2は、ボルト接続として、本発明による形状ロック接続の第1の変形例を示す部分断面図である;
【
図3】
図3は、軸のずれを補正する場合の
図2に従ったボルト接続を示す部分断面図である;
【
図4】
図4は、軸の偏角を補正する場合の
図2に従ったボルト接続を示す部分断面図である;
【
図5】
図5は、ボルト接続として、本発明による形状ロック接続の第2の変形例を示す部分断面図である;
【
図6】
図6は、軸のずれを補正する場合の
図5に従った第2の変形例を示す部分断面図である;
【
図7】
図7は、形状ロック接続の調整リングの軸平面での縦断面である;
【
図8】
図8は、ホイールのセンタリングロックへの適用として、本発明の形状ロック接続の第3の変形例を示す部分断面図である;
【
図9】
図9は、軸のずれを補正する場合の
図8に従った第3の変形例を示す部分断面図である;
【
図11】
図11は、本発明による形状ロック接続の第4の変形例を示す部分断面図である;
【
図12】
図12は、軸のずれを補正する場合の
図11に従った第4の変形例を示す部分断面図である;
【発明を実施するための形態】
【0030】
すでに最初に説明した
図1には、下側に2つの穴10、20があり、このとき、穴20は第1の部品1とは反対側の口部に円錐形で環状のセンタリング面22’を備えている。これら2つの穴10、20では、2つの穴の軸X
1とX
2が、軸誤差として形成された距離Δxの軸のずれで互いにずれている。
【0031】
以下、本発明による、これら2つの穴10、20を通るボルト接続としての形状ロック接続による2つの部品1、2の接続を、
図2から
図6に基づいて説明する。
【0032】
図2は、位置誤差(軸のずれおよび/または軸の偏角など)が生じていない状態で、ボルト31として形成されたボルト締結手段3による2つの部品1、2の接続を示しており、すなわち、軸X
1とX
2が同一であり、ボルト締結手段3の軸Xと一致している。このボルト接続は、1つのねじ接続に限定されない;他の方法でも、例えばバヨネット接続またはリベット接続としても形成することができる。
【0033】
このボルト接続を示した実施形態では、穴10は、ボルト31が締め込まれるねじ穴として形成される。ボルト31にはボルト頭部33が備わっており、この頭部には、ねじ穴10に締め込まれるねじ部35に向いている面に、ねじ部35に対して半径方向に突き出している部分30がある。この半径断面30は第1の形状ロック要素を形成し、そのために、球形セグメント状に凸状に湾曲した環状の面32を備えている。
【0034】
球形セグメント状に湾曲した面32の湾曲半径R1の中心点M1は、ボルト31として形成されたボルト締結手段3の軸X上にある。
図2の例には軸誤差がないため、ボルト31の軸Xに相当するねじ穴10の軸X
1および穴20のX
2はともに一直線上に並んでいる。
【0035】
第2の部品2の穴20の口部にある環状のセンタリング面は、第2の環状の形状ロック要素21として形成され、そのために、凹状に湾曲した球形セグメント状の面22を備えている。球形セグメント状に湾曲した面22の湾曲半径R2の中心点M2は、穴20の軸X
2上にある。従って、M1およびM2の中心点は、
図2の例では一直線上にあるが、軸方向に互いに離れている。
【0036】
第2の部品2の穴20から球形セグメント状の面22への移行部は、穴20の直径が、第1の部品1に向いている穴20の円筒形の部品20’の移行部において、まずは小さくなるように形成され、それから球形セグメント状に湾曲した面22に沿って大きくなるようにしている。このように、球形セグメント状に湾曲した面22’の半径方向の内端の切り下げを形成し、これにより、球形セグメント状に湾曲した面22において特に有利な圧力分散が実現される。
【0037】
調整リング4は、部品2の穴20の口部において、ボルト31の凸状に湾曲した面32と凹状に湾曲した面22の間に入れられる。そのために、調整リング4は、
図7に示すように、その内径に球形セグメント状に凹状に湾曲したリング面40を備えており、その湾曲はボルト31の凸状に湾曲した面32の湾曲に適合している。従って、調整リング4の凹状の面40は、ボルト31の凸状の面32にぴったり接することが可能である。
【0038】
調整リング4は、その半径方向の外側に、球形セグメント状に凸状に湾曲した面42を備えており、部品2の穴20の口部において、凹状の面32の湾曲に適合している。従って、調整リング4の凸状の面42は、部品2の凹状の面22にぴったり接することが可能である。
【0039】
図7の調整リング4の縦断面図で示すように、湾曲した面40の湾曲の中心点M1’と湾曲した面42の中心点M2’はともに調整リング4の軸X
3上、つまり調整リング4の同じ面にある。
【0040】
ボルト31の凸状に湾曲した面32と調整リング4の凹状の内面40はそれぞれ球形セグメント状に形成されているので、調整リング4は、湾曲したそれぞれの面が互いに接したまま回して締めることができる。回して締めることにより調整リング4の位置に傾斜が生じるため、調整リングは、軸がずれている場合でも、部品2の面22ともボルト31の面32とも接したままとなる。
【0041】
球形セグメント状に湾曲した面32と40の同一の湾曲半径R1とR1’は、球形セグメント状に湾曲した面22と42の同じく同一の湾曲半径R2とR2’より小さい。
【0042】
以下、
図2に示した本発明によるボルト接続の変形例の位置誤差補正の機能方法を、
図3を参照して説明する。
【0043】
図3では、部品2の穴20の軸X
2が、ボルト31の軸Xに相当する部品1のねじ穴10の軸X
1に対して下側に平行にずれている。この軸のずれがあるため、ボルト31の上側におけるボルト31の外周と部品2の穴20の内周の間の半径方向の距離a
1は、
図3の説明図において、ボルト下側のこれに対応する半径方向の距離a
2より小さい。これにより、調整リング4は、ボルト31をねじ穴10に締め込むとき、
図3の断面図において、矢印と記号W
1およびW
2で象徴的に表すように時計回りに回転させる。この回転の際、調整リング4の湾曲した面40、42は、それぞれ対置しているボルト31の湾曲した面32、または第2の部品2の面22とつねに面接触している。
【0044】
従って、第2の部品2からボルト31に対しその半径方向に作用する力Fは、調整リング4を介してボルト31に、またそこから第1の部品1に伝わることができる。
【0045】
図4は、
図2に従った本発明による形状ロック接続を示しているが、このときここで(誇張して図示している)、ボルト31の軸Xと一致する部品1のねじ穴10の軸X
1の軸の偏角が、部品2の穴20の軸X
2について補正される。
図4では、軸の偏角によってボルト31の位置が傾斜しているにもかかわらず、ボルト31の湾曲した面32が調整リング4の湾曲した面40に隙間なく接しているため、ボルト31はその湾曲した面32の部分で円周に沿って平面的に調整リングに接しており、その一方でこのリングは、凸状に湾曲した半径方向の外面42が穴20の凹状に湾曲した面22に平面的に接しているため、ボルト31はその円周全体に沿って調整リング4を介して間接的に第2の部品2と接触していることがわかる。
【0046】
同様に、軸の偏角がある場合、第2の部品2からボルト31に対し半径方向に作用する力Fは、調整リング4を介してボルト31に、またそこから第1の部品1に伝わることができる。
【0047】
図5および
図6には、本発明の第2の実施形態を説明しており、これは基本的には、
図2から
図4に示した第1の実施形態に即している。ただしここでは、ボルト締結手段203を形成するボルト231に、自由端部にのみ外ねじ236が設けられている円筒軸235が備わっている。このとき、円筒軸235は、第2の部品202にある穴220を通って、第1の部品201にある、内ねじのない円筒形の穴として形成された穴210にはめ込まれている。ボルト231の外ねじ236が備わった自由端部にはナット237が締め込まれ、これは、第2の部品202とは反対側の第1の部品201の外面201’に当たっている。これにより、部品201と202は調整リング204を介して固定され、このときこのリングは、穴220の口部に形成された凹状の面222上でその凸状の面242で自身を支え(これによって、第2の形状ロック要素221が形成されている)、さらにこのとき、凸状のリング面232に対する調整リング204の凹状の面240は、第1の形状ロック要素230’を形成するボルト頭部233の半径断面230に接している。
【0048】
このとき、ボルト231は、構造的に、
図2および
図3に示した第1の実施例のボルト31に相当する。
【0049】
この第2の実施形態では、
図6に示すように、
図3および
図4の第1の実施形態に関連して示したのと同じように、軸のずれおよび/または軸の偏角が補正される。
【0050】
本発明による位置誤差を補正するボルト接続の第3の変形例は、
図8および
図9に、ホイール、例えば車両ホイール用のセンタリングロックの例で説明する。
【0051】
図8にはホイール302の部分断面図を示しており、このホイールは、ボルト締結手段3を形成している、以下に説明するセンタリングロック300により、ホイール受け301に固定されている。
【0052】
ホイール受け301は、図示されていないホイールキャリアに従来の方法で適切な玉軸受を用いて回転可能に取り付けられている。中央のホイール固定ボルト310は、ホイール受け301の軸X
5に対して中央かつ同軸に広がっている。ホイール固定ボルト310は、その自由端部に、第1の形状ロック要素330’を形成する半径断面330を持つ締め込み可能なナット350を受けるための外ねじ311を備えている。第2の形状ロック要素321は、ホイール302の中央のホイール固定ボルト310を受ける貫通穴320の口部周囲に形成され、球形セグメント状に凹状に湾曲した環状の面322を備えている。ナット350とホイール302の間には、
図2から
図4の実施例に示すような調整リング304が配置されている。
【0053】
調整リング304の形態は、
図2から
図4および
図7に示した調整リング4の実施形態に即している。その結果、ホイール302は、
図2から
図4に示した第1の実施例の第2の部品2に相当する。ホイール302またはホイール302側に向いているナット350の環状連結部337に、対応する反対面322、332を備えている凸状および凹状の球形セグメント状の面342または340を持つ調整リング304の動作方式も、
図9に図示するように、
図2から
図4と関連して説明した作用方式に一致している。このとき、球形セグメント状に湾曲した面332の湾曲半径R3の中心点M3は、ナット350の軸上にあり、この軸は、締め込まれた状態では基本的にホイール固定ボルト310の軸X
5に合致している。
【0054】
ホイール受け301は、ホイール302に向いている面で半径方向に大きくなり、そこで、ホイール受け301の軸X
5に対して垂直に延びている環状表面を形成している。必ずというわけではないが、示した実施例において、ホイール受け301と統合して形成されたホイール固定ボルト310は、この表面から軸方向に突き出ている。ホイール固定ボルト310を取り囲んでいるこの環状表面は、ホイール302に向いている面に、例えば、ホイール受け301の回転軸X
5に対して垂直に中心に配置されているセレーションの環状スプロケットを形成しているプロファイル加工5が形成されている。このセレーションは、例えばハースカップリングとして形成することができる。
【0055】
ホイール302には、ハブ部分にホイール受け301に向いている面に同じく環状のプロファイル加工6があり、これはホイール受け301のプロファイル加工5に適合しており、従って同様にセレーションとして、好ましくはハースカップリングとして形成することができる。2つのプロファイル加工5、6は、互いにかみ合うように形成されている。以下、
図10に関連してプロファイル加工5、6の形態を説明する。
【0056】
図10には、プロファイル加工5、6として、ホイール302とホイール受け301に配置した、2つの対応するセレーションを透視図で例示している。ここでは、三角形の断面514、614によって刻み目が形成されており、その縦軸515、615が中心線または回転軸X
5で交差していることがはっきりとわかる。このとき、断面514、614のくさび角度αは、縦軸 515、615に対して一定である。当然ながら、その他の断面形状も考えられる。
【0057】
プロファイル加工5のくさび面513とプロファイル加工6のくさび面613は、互いに平面で接するように形成されている。ホイールの302をホイール受け301にはめ合わせた状態のとき、プロファイル加工5、6は互いにかみ合っている。
【0058】
このとき、ホイールの302のプレストレスは、互いにかみ合ったプロファイル加工5、6を介してホイール受け301に伝達される、つまりプロファイル加工5、6のくさび面513、613、例えばセレーションによって吸収されるため、ホイール302は、くさび形のガイド面と支持面によって必然的に、3つの空間座標で表される位置、かつ回転軸X
5に関してホイール受け301と一直線上に配置され、固定される。
【0059】
互いにかみ合っている2つのプロファイル加工5、6を介して、矢印と記号F’で表されるホイール荷重も、双方向矢印と記号MMで表されるブレーキトルクと駆動トルクも、ホイール受け301とホイール302の間に伝達される。
【0060】
ホイール302が、ホイール受け301の回転軸X
5に関して、互いにかみ合っているプロファイル加工5、6によって3つの空間座標に関して固定されているにもかかわらず、例えばホイール302の接触面で回転軸X
5に対して横に離れて平行に作用する横力F”によって引き起こされる傾斜トルクの作用によって、プロファイル加工5、6のくさび面513、613の互いの接触が離れてしまう可能性がある。本発明人は先行技術に関して、これによりプロファイル加工5、6部分の表面が摩耗してしまうだけでなく、ホイール302をホイール受け301に固定しているナット350が緩んでしまう可能性もあることに気付いた。これを回避するために、本発明は、互いにかみ合っているプロファイル加工5、6を介して力の支持に加え、ホイール受け301へのホイール302の固定において形状の過剰決定が生じることなく、センタリングロック300のナット350の部分における半径方向力の支持も設けている。これは、
図8および
図9に示した調整リング304とホイールナット350の配置によって実現される。
【0061】
図9の説明図では、ホイール固定ボルト310の軸X
5と貫通穴320の軸X
6の間の軸のずれがホイールの302の中心にある。ホイールの302の凹状に湾曲した面322の湾曲半径R4の中心点M4はホイール軸X
6上にある。
【0062】
ホイール302は、互いにかみ合っているプロファイル加工5、6によって、ホイール受け301に関してすでに形状的に固定されていることから、調整リング304は(
図3の実施例のように)、ナット350がホイール固定ボルト310にはめ込まれているときに、ホイール302、調整リング304およびナット350の間で形状ロックが生じるように、矢印と記号Vで示すように時計回りに回転する必要がある。
【0063】
ホイールの302をホイール受け301にこのように固定することで、静的および動的状態においてホイール302に作用する力の半径方向の分力を、互いにかみ合っているプロファイル加工5、6を介しても、また調整リング304とナット350を介しても、矢印と記号F
1とF
2で示すように、ホイール受け301に伝達することができる。これにより、従来のようにホイールの302の中心をねじで固定する際に、前述したように輪郭の歯が離れたり、それによって摩耗およびホイール固定の緩みが生じたりする原因となるトルクが、2つの互いにかみ合っているプロファイル加工5、6の接続にかからない。
【0064】
ホイール固定ボルト310の軸X
5と貫通穴320の軸X
6がある角度を成している軸の偏角も、
図4の例のように補正される。
【0065】
位置誤差(軸のずれおよび/または軸の偏角など)を補正するための本発明による形状ロック接続のその他の適用を、
図11と
図12に示す。
【0066】
ここでは、2つの互いに接続される部品401と402が上下に配置されており、例えば重力Gや支持力F
Gのような外部の力が作用することで、互いに支えられている。その向かい合っている表面401’と402’は接している。実地では、第1の部品401は例えばブリッジで、第2の部品402はブリッジベアリングで形成されていることも可能である。
【0067】
第2の部品402は上側に環状の凹部420が備わっており、第1の部品401に向いている、第2の形状ロック要素421’を形成しているその凹部の口縁部には、横断面が球形セグメント状に湾曲した凹状の環状面422が備わっている。凹部420の底部には、止まり穴部分421が設けられている。止まり穴部分421の直径は、球形セグメント状に湾曲した凹状面422の半径方向の内縁422’より大きいため、止まり穴部分422は、
図2から
図4の例のように、逃げ溝を形成している半径方向の内縁422’の切り下げを形成している。
【0068】
第1の部品401は、貫通穴410を備えている。2つの部品401と402を相対して理想的に調整すると、
図11からわかるように、貫通穴410の軸Y
1と環状凹部420の軸Y
2が一致する。
【0069】
図7に示した補正要素4のように外側に形成され、それに相似する半径方向に外側に凸状に湾曲したリング面442と半径方向に内側に凹状に湾曲したリング面440を備えた環状の補正要素404を凹部420に入れる。この補正要素は凹部420にはめ込まれている。このとき、直径がより大きく凸状に湾曲した補正要素404のリング面442は、第2の部品402の凹部420の口部で球形セグメント状に湾曲した凹状面422に接している。
【0070】
貫通穴410に円筒形の挿入部430を正確にはめ込む。このとき、挿入部430は貫通穴410の半径方向には基本的に遊びがないが、軸方向(穴の軸Y
1の方向)にはずれることが可能なように入れられている。貫通穴410は、第2の部品402とは反対側の端部に内ねじ部分411が備わっており、ここに締め付けねじ412が締め込まれている。締め付けねじ412で、挿入部430を補正要素404に向かって締め付けることができる。
【0071】
挿入部430は、第2の部品402に向いている下側に、環状の軸部431があり、これが第1の形状ロック要素430’を形成し、さらに第2の部品402に向いている部分に球形セグメント状に湾曲した凸状の面432が備わっており、これが環状の補正要素404にはまり込み、その凹状のリング面440に接するように形成されている。挿入部430が補正要素404に向かって締め付けられているとき、挿入部430の球形セグメント状に湾曲した凸状の面432は、補正要素404の半径方向に凹状の内側のリング面440に接している。
【0072】
以下、本発明による形状ロック接続のこの実施形態の機能方法を、
図12を参照して説明する。
【0073】
2つの部品1と2が横方向に互いにずれていると、第1の部品401の貫通穴410の軸Y
1と、第2の部品402の環状の凹部420の軸Y
2が一直線上に並ばず、
図12に示すように、横方向に互いにずれる。まず締め付けねじ412が緩むことで、挿入部430が軸Y
1に沿ってずれる。このとき、挿入部430が締め付けねじ412によって補正要素404の方に動くと、補正要素404は、締め付けねじ412をさらに締めていくときに、軸Y
1と軸Y
2の間に軸のずれがあるため、補正要素404の球形セグメント状に湾曲した面440と挿入部430の球形セグメント状に湾曲した面432が互いに接するまで傾く。このとき、軸方向に互いに反対側にある補正要素404の表側周縁部は、一部が穴410と止まり穴部分421に形成された空洞に沈む。
【0074】
同様に互いに接している第2の部品402の球形セグメント状に湾曲した面422と補正要素404の面442とともに、貫通穴410において挿入部430が基本的に半径方向に遊びがなければ、第1の部品401と第2の部品402の間の形状ロック接続は、横力F
Q、F
Q’を介して伝達されることが可能である。
【0075】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、単に本発明の中心思想を一般的に説明しているにすぎない。本発明による装置は、保護範囲内で、むしろ上述した実施形態以外の装置であってもよい。このとき本装置は、特に請求項の個々の特徴に基づく組み合わせを持つという特徴がある。
【0076】
本請求項にある引用符、説明および図面は、単に本発明の理解を深めるためのものにすぎず、本発明の保護範囲を限定するものではない。