特許第5896243号(P5896243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5896243再生可能材料から得られるブロックコポリマーと、このブロックコポリマーの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5896243
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】再生可能材料から得られるブロックコポリマーと、このブロックコポリマーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 81/00 20060101AFI20160317BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20160317BHJP
【FI】
   C08G81/00
   C08J5/00CEZ
【請求項の数】34
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2013-503155(P2013-503155)
(86)(22)【出願日】2011年4月5日
(65)【公表番号】特表2013-523970(P2013-523970A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】FR2011050754
(87)【国際公開番号】WO2011124833
(87)【国際公開日】20111013
【審査請求日】2014年4月4日
(31)【優先権主張番号】1052617
(32)【優先日】2010年4月7日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100092277
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100155446
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 洋
(72)【発明者】
【氏名】マレ, フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ル,ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ジュアノ,ジュリアン
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0312485(US,A1)
【文献】 特表2008−537943(JP,A)
【文献】 特開2008−133469(JP,A)
【文献】 特開平10−259243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 81/00−81/02
C08J 5/00−5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)と(2):
(1)ASTM規格D6866に従って決定される14Cを含む酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンから少なくとも一部が得られる少なくとも一つのポリエーテルのソフトブロック:5〜95%、
(2)ポリアミドブロック、ポリウレタンブロック、ポリエステルブロックおよびこれらの混合物の中から選択される少なくとも一つのリジッドブロック:5〜95%、
から成るブロックコポリマーであって、
上記の少なくとも一つのポリエーテルブロックが、再生可能材料から少なくとも一部が得られる少なくとも一種のポリエチレングリコール(PEG)および/またはポリプロピレングリコール(PPG)を含む、
ことを特徴とするブロックコポリマー
【請求項2】
上記の少なくとも一つのソフトブロックの質量比率がコポリマーの全質量の5〜85%で、上記の少なくとも一つのリジッドブロックの質量比率がコポリマーの全質量の15〜95%である請求項に記載のブロックコポリマー。
【請求項3】
少なくとも一つのリジッドブロックの少なくとも一部が再生可能材料から得られる請求項1または2に記載のコポリマー。
【請求項4】
少なくとも一つのポリエーテルブロックおよび/または少なくとも一つのリジッドブロックの全部が再生可能材料から得られる請求項1〜のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項5】
バイオ炭素の含有量が少なくとも1%であり、これは14C/12C同位体比が少なくとも1.2・10-14に対応する請求項1〜のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項6】
バイオ炭素の含有量が5%以上である請求項1〜のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項7】
少なくとも一つのポリアミドブロックを含む請求項1〜のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項8】
ポリアミドがコポリアミドから成る請求項に記載のブロックコポリマー。
【請求項9】
少なくとも一つのポリアミドブロックが下記の分子:アミノ−11−ウンデカン酸、n−ヘプチルアミノ−11−ウンデカン酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ミリスチン酸、テトラデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、デカメチレンジアミン、脂肪酸二酸、ダイマー化脂肪酸およびこれらの混合物の少なくとも一つを含む請求項またはに記載のブロックコポリマー。
【請求項10】
少なくとも一つのポリアミドブロックが下記のポリアミドモノマー:11、5.4、5.9、5.10、5.12、5.13、5.14、5.16、5.18、5.36、6.4、6.9、6.10、6.12、6.13、6.14、6.16、6.18、6.36、10.4、10.9、10.10、10.12、10.13、10.14、10.16、10.18、10.36、10.T、12.4、12.9、12.10、12.12、12.13、12.14、12.16、12.18、12.36、12.Tおよびこれらの混合物の中から選択される少なくとも一つのモノマーを含む請求項のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項11】
ブロッコポリマーがポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを含むコポリマー(PEBA)である請求項1〜10のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項12】
ブロックコポリマーが少なくとも一つのポリエステルブロックを含む請求項1〜11のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項13】
ポリエステルがコポリエステルを含む請求項12に記載のブロックコポリマー。
【請求項14】
少なくとも一つのポリエステルブロックが下記の分子:エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,10−デカンジオール、2,5−フランジカルボン酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ミリスチン酸、テトラデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、脂肪酸二酸、ダイマー化脂肪酸の少なくとも一つを含む請求項12または13に記載のブロックコポリマー。
【請求項15】
ブロックコポリマーがポリエーテルエステルである請求項1214のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項16】
ブロックコポリマーが少なくとも一つのポリウレタンブロックを含む請求項1〜15のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項17】
ポリウレタンがコポリウレタンを含む請求項16に記載のブロックコポリマー。
【請求項18】
少なくとも一つのポリウレタンブロックが下記のポリオール:澱粉由来のポリオール、エリトリトール、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、糖類、ショ糖由来のポリオール、イソマルト、キシリトール、トウモロコシ、大豆、綿、菜種、ヒマワリまたは落花生由来のポリオール、グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール、バイオディーゼル製造時の反応副生成物、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(1,2−プロピレングリコール)(PPG)、ポリ(1,3−プロピレングリコール)(PO3G)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)の中から選択される、再生可能な材料起源の少なくとも一つのポリオールから製造される請求項16または17に記載のブロックコポリマー。
【請求項19】
ブロックコポリマーがポリエーテルウレタンである請求項1618のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項20】
少なくとも一つのポリエーテルブロックが、PEGおよび/またはPPG以外のポリエーテルをさらに含む請求項19のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項21】
上記のPEGおよび/またはPPG以外のポリエーテルが再生可能な材料起源または化石起源のPO3G、PTMG、ポリ(3−メチルテトラヒドロフラン)および/または化石起源のPEGおよび/またはPPGである請求項20に記載のブロックコポリマー
【請求項22】
ブロックコポリマーがコポリエーテルエステルアミド、コポリエーテルアミドウレタン、コポリエーテルエステルウレタンの中から選択される3つの異なるブロックを含むトリブロックコポリマーで、ポリエーテルのソフトブロックの質量百分率がこのトリブロックコポリマーの全質量の20%以上で、ポリアミドのリジッドブロックの質量百分率がトリブロックコポリマーの全質量の10%以上である請求項1〜21のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか一項に記載のブロックコポリマーの製造方法であって、
14Cを含む酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンから少なくとも一部が得られるポリエーテルを供給し、それを合成によってブロックコポリマーに変換する段階を含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
上記ポリエーテルが、バイオ炭素含有量が少なくとも1%のポリエチレングリコールおよび/またはポリプロピレングリコールから成る請求項23に記載の方法。
【請求項25】
バイオ炭素含有量が少なくとも1%の酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンから上記ポリエーテルを製造する段階を含む請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンをそれぞれエチレンおよび/またはプロピレンから製造する段階を含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
上記供給段階が上記エチレンおよび/またはプロピレンを植物バイオマスから製造する段階を含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
植物バイオマスからのエチレンの製造が下記(a)および(b)段階を含む請求項27に記載の方法:
(a)再生可能な原料を発酵し、精製して、エタノールおよびエタノールを含むアルコールの混合物から選択される少なくとも一種のアルコールを作り、
(b)得られたアルコールを第1の反応器中で脱水して、エチレンおよびエチレンを含むアルケンの混合物から選択される少なくとも一種のアルケンを作り、アルケンを精製してエチレンを作る。
【請求項29】
植物バイオマスからのプロピレンの製造が下記(a')および(b')段階を含む請求項27に記載の方法:
(a')再生可能な原料を発酵し、精製して、アルコールまたはアルコールの混合物を作り、このアルコールまたはアルコールの混合物は少なくともイソプロパノールおよび/またはエタノールと1-ブタノールの少なくとも一つの混合物を含み、
(b')得られたアルコールまたはアルコールの混合物を少なくとも一つの第1の反応器中で脱水してアルケンまたはアルケン混合物 (このアルケンまたはアルケン混合物は少なくともプロピレンを含む) を作り、ルケン混合物を精製してプロピレンを作る。
【請求項30】
請求項1〜22のいずれか一項に記載のブロックコポリマーの、自動車、テキスタイル、織布、不織布、衣類、靴、スポーツ用品、レジャー用品、電子機器、コンピュータ機器、健康器具、工業用添加剤、包装材料および/または家庭用品での使用。
【請求項31】
請求項1〜22のいずれか一項に記載のブロックコポリマーの、計器パネル、エアバッグ、運動靴の底、ゴルフボール、医療用チューブ、カテーテル、血管形成術用バルーン、蠕動バンド、コンベヤーベルト、通気性レインウェア、帯電防止添加剤、外板および/または合成皮革、熱可塑性フィルム、包装フィルムでの請求項30に記載の使用。
【請求項32】
上記のコポリマーが5〜100質量%占める、請求項1〜22のいずれか一項に記載のブロックコポリマーの単独または混合物としての請求項30または31に記載の使用。
【請求項33】
PEBAがPA11−PEG、PA10.10−PEG、PA10.12−PEG、PA10.14−PEG、PA6.10−PEG、PA6.12−PEG、PA6.18−PEG、PA11−PPG、PA10.10−PPG、PA10.12−PPG、PA10.14−PPG、PA6.10−PPG、PA6.12−PPG、PA6.18−PPG、PA11−PEG/PPG、PA10.10−PEG/PPG、PA10.12−PEG/PPG、PA10.14−PEG/PPG、PA6.10−PEG/PPG、PA6.12−PEG/PPG、および/またはPA6.18−PEG/PPGをベースにしたものである請求項11に記載のブロックコポリマー。
【請求項34】
PEBAがPA11−PEG、PA11−PPGまたはPA11−PEG/PPGをベースにしたものである請求項33に記載のブロックコポリマー
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマー(TPE)ポリマー、特に、種々の分野、例えばエレクトロニクス、自動車またはスポーツの分野で用いられる高付加価値のテクニカルポリマーに関するものである。
本発明は特に、再生可能な出発材料から得られる熱可塑性エラストマーのポリマーに関するものである。
本発明はさらに、再生可能材料からの上記熱可塑性エラストマーポリマーの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の熱可塑性エラストマー中には基本的に石油起源または合成起源の成分が含まれており、それを得る製造方法はしばしば環境汚染源とみなされている。すなわち、これら成分の合成に使用される出発材料は石油留分の水蒸気分解や接触分解で得られ、これらの材料を使用することは地球温室化効果を増大させる原因となる。また、石油埋蔵鉱量は世界的に減少しており、この出発材料資源は徐々に枯渇する。
【0003】
バイオマスに由来する出発材料は再生可能な資源であり、生育環境への影響は少なく、石油製品の精製工程(高エネルギーを必要とする)は不必要であり、CO2の発生量が減り、地球温暖化に対する影響は少ない。
【0004】
従って、化石燃料起源の出発材料に依存しない、再生可能な材料を起源とする出発材料を使用した合成プロセスが必要である。今日ではTPEを使用するメーカーはエコの概念を採用するようになっており、植物起源の高付加価値のあるプラスチックを求めている。
【0005】
スポーツまたは自動車産業のような競争の激しいマーケットのメーカーは技術上の性能と環境上の性能の両方を有するポリマー材料に対する消費者のニーズに応えなければならないが、これらの性能は出発材料と使用プロセスとに依存する。
【0006】
本発明の目的は、機械特性、耐薬品性、耐老化性の点および環境倫理の点の両方で上記の各種条件を満たすTPEを提供することにある。
【0007】
熱可塑性エラストマー(TPE、thermoplastic elastomer)とは、硬質またはリジッドなブロックまたはセグメント(熱可塑性の挙動を有する)と、軟質またはソフトなブロックまたはセグメント(エラストマー的な挙動を有する)とを交互に含むブロックコポリマーを意味する。
【0008】
ブロックのガラス遷移温度(Tg)が低い場合に、ブロックは「柔軟(pliable)」という。低いガラス遷移温度とは、15℃以下、好ましくは0℃以下、有利には−15℃以下、さらに有利には−30℃以下、場合によっては−50℃以下のガラス遷移温度Tgを意味する。
【0009】
ソフトなブロックは一般にポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(1,2−プロピレングリコール)(PPG)、ポリ(1,3−プロピレングリコール)(PO3G)、ポリ(テトラメチレングリコール)(PTMG)およびこれらのコポリマーまたは混合物の中から選択されるポリエーテル(PE)をベースにし、リジッドなブロックは一般にポリアミドブロック、ポリウレタンブロック、ポリエステルブロックまたはこれらの混合物をベースにしている。
【0010】
リジッドなブロックとソフトなブロックとを含むコポリマーの例としては(a)ポリエステルブロックとポリエーテルブロックとを含むコポリマー(COPE、コポリエーテルエステル)、(b)ポリウレタンブロックとポリエーテルブロックとを含むコポリマー(熱可塑性ポリウレタンの略であるTPUともよばれる)および(c)ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを含むコポリマー(IUPACではPEBAともよばれる)が挙げられる。
【0011】
熱可塑性エラストマー、例えばTPUまたはCOPEの分野では、一部が再生可能な材料起源の原料から製造された製品が市販されている。その一つの例であるメルキンサ(Merquinsa)社からパールタン(Pearlthane、登録商標)ECO−D12T95の商品名で市販のTPUはASTM-D6866で定義する再生可能炭素の比率が38%である。デュポン(DuPont)社から商品名ユッテル(Hytrel、登録商標)RSで市販のCOPEシリーズも挙げられる。このCOPEは石油化学のポリオールではない再生可能資源に由来のPO3Gを含む。
【0012】
PEBA(ポリエーテルブロックアミド)は主として化石起源の原料から得られ、ある種の用途で必要とされるコスト/パフォーマンスはこれでのみバランスできる。すなわち、例えばアルケマ社からぺバックス(Pebax、登録商標)の商品名で市販のPEBAは、可塑剤を含まないテクニカルポリマーのクラスに属する熱可塑性エラストマーである。これは射出成形や押出成形によってフィルムや成形品に容易に加工でき、織布や不織布用のフィラメント、糸および繊維の形でも使用できる。これは高付加価値の用途、特に下記の用途で用いられている:
(1)高級スポーツ用具の用途、特に短距離、サッカー、ラグビー、テニス、バスケットボール、ランニング、アルペンまたはノルディックスキー、ゴルフボール、その他の多くのスポーツ用品の靴底要素、
(2)工業用途、特にコンベヤーベルト、通気性レインウェア、帯電防止添加剤、
(3)医療分野、特にカテーテル、血管形成術用バルーン、蠕動バンド、
(4)自動車用途、特に合成皮革、外板、計器パネル、エアバッグ部品等。
【0013】
PEBAは耐熱性または耐紫外線老化性に関する極めて優れた機械特性と低密度とを一つのポリマー中で組み合わせることができる。従って、軽量な部品を製造できる。特に、硬度が同じ場合、他の材料より消散エネルギーが少なく、曲げまたは引張り時の動的応力に対する優れた耐久性が与えられ、例外的に優れた弾性反発特性を示す。
ポリアミドブロックとPEGブロックとを含むPEBAはさらに、下記文献に記載されているように、周知の恒久的な帯電防止特性を有し、通気性防水特性および漏れ止め特性を有するフィルムになる。
【特許文献1】欧州特許第1046675号公報
【特許文献2】欧州特許第0737709号公報
【0014】
2007年以降で、熱可塑性エラストマー中の再生可能な材料起源の炭素比率が約20〜95%(再生可能な材料起源のポリアミド中の含有量)である工学グレードの熱可塑性エラストマーはアルケマ(Arkema)社から市販の「ぺバックス(登録商標)Rnew」シリーズだけである。これに対して従来のPEBAはリジッドなブロックがポリアミド12(またはポリアミド6)から作られ、ソフトなブロックがポリエーテルから作られる熱可塑性エラストマーで、これら2つのブロックは化石起源の材料から作られる。
【0015】
リジッドなブロック用の再生可能原料を開発するという最初の動きは植物起源の原料から作られるポリアミド、例えばアミノ−11−ウンデカン酸を選択するということであった。すなわち、アミノ−11−ウンデカン酸はヒマシ油を加工して得られる同じ名前の植物(トウゴマ、ヒマ)のヒマの種子から抽出され、PEBAの製造でPA12の代わりにこのアミノ−11−ウンデカン酸を重縮合して得られるPA11を用いることで環境への影響が減るだけでなく、化石起源の材料より優れた特性を有する材料が得られている。特に、PA11をベースにして製造されたPEBAは応力を受けた時の塑性閾値がなく、低温衝撃強度だけでなく、曲げ疲労強度も向上し、低温での剛性が向上し、耐熱性も向上する。
【0016】
しかし、ポリエーテルのソフトブロックで現在使用できる再生可能代替物はデュポン(DuPont)社からセレノル(Cerenol、登録商標)の商品名で最近発売されたPO3Gポリエーテルか、ユニクマ(Uniqema)社からプリプラスト(Priplast、登録商標)の商品名で市販のダイマー化脂肪酸をベースにした可撓性ポリエステルだけである。しかし、PEBAの製造でこのPO3Gポリエーテルブロックまたはプリプラスト(Priplast、登録商標)ポリエステルのみを用いても、密度、水吸収性および/または機械特性、帯電防止特性、通気性防水特性および漏れ止め特性がPEGブロックを用いた場合と同じ性能にはならない。
しかも、これらのPO3Gまたはポリエステルブロックを用いても、ブロックコポリマーの機械特性と帯電防止特性の両方を容易に調節することはできない。さらに、これらのPO3Gを用いても、低い吸湿性の点でおよび環境湿度に対する機械特性の安定性の点で、PPGブロックを用いた場合と同じ性能を得ることはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、再生可能な材料を起源とした高い性能を有する新規なTPEを提供することにある。
本発明の他の目的は、化石起源の従来のTPEと少なくとも同じ性能を有する再生可能な材料起源のTPEを提供することにある。
本発明の他の目的は、エネルギーを必要とする面倒な化学物質のハンドリングや技術を必要とせず、汚染物が無く、従って環境への影響ができるだけ少ない、単純で、迅速、簡単に実行可能(工程数が少ない)TPEの製造方法を提供することにある。
特に、本発明の目的は、調節が容易、すなわち、所望の帯電防止特性、制汗特性および機械特性に合わせるのが容易な方法を提供することにある。
【0018】
本出願人の高性能なバイオポリマーメーカーとしての専門知識に基づいて、本発明者は下記の特徴を有するTPEの製造方法を開発した:
(1)14Cを含む酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンを使用、特にバイオマスから作られるPEGおよび/またはPPGブロックを使用することで、ポリエーテルのソフトブロックを再生可能な材料起源にすることができ、
(2)ポリエーテルブロックが化石起源のものに対応するTPEの性能と少なくとも同じ性能にすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の対象は、14Cを含む少なくとも一種の酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンモノマーから得られるブロックコポリマーにある。このコポリマーは14Cを含む酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンから少なくとも一部が得られる少なくとも一つのポリエーテルのブロックを含むのが有利である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のブロックコポリマーは下記(1)と(2)のブロックから成るのが有利である:
(1)14Cを含む酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンから少なくとも一部が得られる少なくとも一つのポリエーテルソフトブロック:1〜99%、
(2)ポリアミドブロック、ポリウレタンブロック、ポリエステルブロックおよびこれらの混合物の中から選択される少なくとも一つのリジッドブロック:1〜99%。
【0021】
上記の少なくとも一つのポリエーテルソフトブロックは、再生可能材料から少なくとも一部が得られる少なくとも一種のポリエチレングリコール(PEG)および/またはポリプロピレングリコール(PPG)を含むのが有利である。上記の少なくとも一つのソフトブロックの質量比率はコポリマーの全質量の5〜95%、好ましくは5〜85%で、少なくとも一つのリジッドブロックの質量比率がコポリマーの全質量の5〜95%、好ましくは15〜95%であるのが有利である。
【0022】
少なくとも一つのリジッドブロックの少なくとも一部は再生可能材料から得られるのが有利である。
少なくとも一つのポリエーテルブロックおよび/または少なくとも一つのリジッドブロックの全部が再生可能材料から得られるのが有利である。
【0023】
本発明のコポリマーはバイオ炭素の含有量が少なくとも1%であるのが有利であり、これは14C/12C同位体比が少なくとも1.2×10-14であることに対応する。本発明のコポリマーはバイオ炭素の含有量が5%以上、好ましくは10%以上、好ましくは25%以上、好ましくは50%以上、好ましくは75%以上、好ましくは90%以上、好ましくは95%以上、好ましくは98%以上、好ましくは99%以上であり、ほぼ100%であるのが有利である。これは14C/12C同位体比が少なくとも1.2×10-12であることに対応する。
【0024】
本発明のコポリマーは少なくとも一つのポリアミドブロックを含むのが有利である。このポリアミドはコポリアミドを含むのが有利である。本発明のコポリマーは少なくとも一つのポリアミドブロックが下記の分子:アミノ−11−ウンデカン酸、n−ヘプチルアミノ−11−ウンデカン酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ミリスチン酸、テトラデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、デカメチレンジアミン、脂肪酸二酸、ダイマー化脂肪酸およびこれらの混成物の少なくとも一つを含むのが有利である。この少なくとも一つのポリアミドブロックは下記のポリアミドモノマー:11, 5.4, 5.9, 5.10, 5.12, 5.13, 5.14, 5.16, 5.18, 5.36, 6.4, 6.9, 6.10, 6.12, 6.13, 6.14, 6.16, 6.18, 6.36, 10.4, 10.9, 10.10, 10.12, 10.13, 10.14, 10.16, 10.18, 10.36, 10.T, 12.4, 12.9, 12.10, 12.12, 12.13, 12.14, 12.16, 12.18, 12.36, 12.T およびこれらの混合物またはコポリマーの中から選択される少なくとも一つのモノマーを含むのが有利である。本発明のブロックコポリマーはポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを含むコポリマー(PEBA)であるのが有利である。
【0025】
このPEBAはPA11−PEG、PA10.10−PEG、PA10.12−PEG、PA10.14−PEG、PA6.10−PEG、PA6.12−PEG、PA6.18−PEG、PA11−PPG、PA10.10−PPG、PA10.12−PPG、PA10.14−PPG、PA6.10−PPG、PA6.12−PPG、PA6.18−PPG、PA11−PEG/PPG、PA10.10−PEG/PPG、PA10.12−PEG/PPG、PA10.14−PEG/PPG、PA6.10−PEG/PPG、PA6.12−PEG/PPG、および/またはPA6.18−PEG/PPG、好ましくはPA11−PEG、PA11−PPGまたはPA11−PEG/PPGをベースにするのが有利である。
【0026】
本発明のコポリマーは少なくとも一つのポリエステルブロックを含むのが有利である。このポリエステルはコポリマーから成るのが有利である。この少なくとも一つのポリエステルブロックは下記の分子:エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,10−デカンジオール、対応するジオールを得るのに還元されるダイマー化脂肪酸、2,5−フランジカルボン酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ミリスチン酸、テトラデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸および/またはダイマー化脂肪酸の少なくとも一つを含むのが有利である。
【0027】
本発明のコポリマーはポリエーテルエステルであるのが有利である。
本発明のコポリマーは少なくとも一つのポリウレタンブロックを含むのが有利である。このポリウレタンはコポリマーすなわちコポリウレタンから成るのが有利である。この少なくとも一つのポリウレタンブロックは下記のポリオール:澱粉由来のポリオール、エリトリトール、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、糖類、ショ糖由来のポリオール、イソマルト、キシリトール、トウモロコシ、大豆、綿、菜種、ヒマワリまたは落花生由来のポリオール、グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール、バイオディーゼル製造時の反応副生成物、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(1,2−プロピレングリコール)(PPG)、ポリ(1,3−プロピレングリコール)(PO3G)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)の中から選択される、再生可能な材料起源の少なくとも一つのポリオールから製造されるのが有利である。
本発明のコポリマーはポリエーテルウレタンであるのが有利である。
【0028】
少なくとも一つのポリエーテルブロックは、PEGおよび/またはPPG以外のポリエーテル、例えば再生可能な材料起源または化石起源のPO3G、PTMG、ポリ(3−メチルテトラヒドロフラン)および/または化石起源のPEGおよび/またはPPGをさらに含むのが有利である。
【0029】
本発明のコポリマーはコポリエーテルエステルアミド、コポリエーテルアミドウレタン、コポリエーテルエステルウレタンの中から選択される3つの異なるブロックを含むトリブロックコポリマーで、ポリエーテルのソフトブロックの質量百分率がこのトリブロックコポリマーの全質量の20%以上で、ポリアミドのリジッドブロックの質量百分率がトリブロックコポリマーの全質量の10%以上であるのが有利である。
【0030】
本発明の他の対象は、上記定義のブロックコポリマーの製造方法であって、14Cを含む酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンから少なくとも一部が得られるポリエーテルを供給し、合成によってブロックコポリマーに変換する段階を含むことを特徴とする方法にある。このポリエーテルは、バイオ炭素含有量が少なくとも1%のポリエチレングリコールおよび/またはポリプロピレングリコールを含むのが有利である。
【0031】
この供給段階は、バイオ炭素含有量が少なくとも1%である酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンからポリエーテルを製造する段階を含むのが有利である。この供給段階は、酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンをそれぞれエチレンおよび/またはプロピレンから製造する段階を含むのが有利である。この供給段階は上記エチレンおよび/またはプロピレンを植物バイオマスから製造する段階を含むのが有利である。上記のエチレンおよび/またはプロピレンはバイオエタノールおよび/またはイソプロパノールの脱水によって製造するのが有利である。
【0032】
本発明のさらに他の対象は、上記定義のブロックコポリマーの、自動車工業、テキスタイル、織布、不織布、衣類、靴、スポーツ用品、レジャー用品、電子機器、コンピュータ機器、健康器具、工業用添加剤、包装材料および/または家庭用品での使用にある。
本発明のブロックコポリマーは計器パネル、エアバッグ、運動靴の底、ゴルフボール、医療用チューブ、カテーテル、血管形成術用バルーン、蠕動バンド、コンベヤーベルト、通気性レインウェア、帯電防止添加剤、外板および/または合成皮革、熱可塑性フィルムおよび/または包装フィルムに用いられるのが有利である。
【0033】
本発明のブロックコポリマーは単独または混合物として使用され、このコポリマーは5〜100質量%、好ましくは5〜70質量%、好ましくは5〜30質量%を占めるのが有利である。
【0034】
本発明は熱可塑性エラストマーを製造するための出発生成物として天然起源物を用いる。バイオ材料の炭素は植物の光合成、従って大気中のCO2から来る。従って、これらの材料が分解(分解とは使用寿命後の燃焼/焼却も含む)してCO2になっても大気中へ排出される炭素の量は全く増えず、地球温暖化の原因にはならない。従って、バイオ材料のCO2バランスが改良され、得られる生成物の二酸化炭素排出量の減少に寄与する(考慮する点は製造エネルギーだけでよい)。逆に、化石起源の材料はCO2に分解するとCO2の比率を上げ、地球温暖化の原因となる。従って、本発明の化合物は化石源から得られる化合物よりも二酸化炭素排出量が改善される。従って、本発明はTPEの製造時の生態学的バランスを改良する。
【0035】
「バイオ炭素」とは以下に説明するような再生可能な材料起源または天然起源であり、バイオ材料から生じる炭素を意味する。バイオ炭素含有量、14C含有量およびバイオ材料含有量は表現は違うが同じ値を示す。
【0036】
再生可能な材料起源の材料はバイオ材料ともよばれ、光合成によって大気から(人間の時間で)最近に固定されたCO2から炭素が生じる有機材料である。このCO2は地上では植物によって捕捉または固定され、海中では光合成を行うバクテリアまたはプランクトンによって捕捉または固定される。バイオ材料(天然起源の炭素100%)は14C/12C同位体比が10-12以上、一般に約1.2×10-12であり、化石材料での比率がゼロである。すなわち、14C同位体は大気中で生成され、最大でも数十年の時間規模で光合成によって固定される。14Cの半減期は5730年であるので、光合成で得られた材料すなわち一般には植物では必然的に同位体14C含有量が最大になる。
【0037】
14Cの有無、バイオ材料含有量、バイオ炭素含有量または材料の再生可能な材料起源の有機炭素含有量はASTM規格D6866(ASTM D 6866−06)およびASTM規格D7026(ASTM D 7026−04)で決定される。ASTM規格D6866は「放射性炭素、同位体比質量ペクトル分析を用いた天然材料のバイオ含有量の測定法」であり、ASTM規格D7026は「炭素同位体分析を用いた材料のバイオ含有量の測定結果のサンプリングおよび報告方法」である。後者の規格の第1パラグラフで前者の規格に言及している。
【0038】
前者の規格にはサンプル中の14C/12C比を測定し、この測定値を100%再生可能な材料起源の参考サンプルの14C/12C比と比較して、サンプル中の再生可能な材料起源のCの相対的割合を出すためのテスト法が記載されている。この規格は14C年代測定と同じ概念に基づいているが、年代測定方程式は適用しない。
このようにして計算した比を「pMC」(モダンカーボン濃度)とよぶ。分析される材料がバイオ材料と化石原料(放射性同位体を含まない)との混合物である場合に得られたpMCの値はサンプル中に存在するバイオ材料の量に直接相関する。14Cによる年代測定に用いる参考値は1950年の値である。この年が選ばれたのは大気圏内核実験が行われ、この年以降、大気中に多量の同位体が放出されたからである。1950年参考値はpMC値100に対応する。核融合試験を考慮して採用すべき現在値は約107.5である(補正率0.93に対応)。従って、現在の植物の放射性炭素痕跡値(signature)は107.5である。従って、痕跡値54pMCおよび99pMCはそれぞれサンプル中のバイオ材料の量で50%および93%に対応する。
【0039】
ASTM規格D6866では同位体14Cの含有量の測定方法が3つ提案されている:
(1)液体シンチレーションを用いたスペクトロメトリ:LSC(液体シンチレーション計数)
この方法の基本は14Cの崩壊で生じた「β」粒子をカウントすることにある。質量(Cの原子数)が分かっているサンプルに由来するβ線を一定時間測定する。この「放射能」は求めることができ、14C原子の数に比例する。サンプル中に存在する14Cはβ線を出し、それが液体発光物質(シンチレータ)と接触すると光子が出る。この光子は種々のエネルギー(0〜156keV)を有し、14Cスペクトルを形成する。この方法には2つの変形法があり、適当な吸収剤の溶液中で炭素化サンプルが予めCO2を作り、測定するか、炭素化サンプルを予めベンゼンに変換し、そのベンゼン量を測定する。従って、ASTM規格D6866はこのLSC法に基づいた、2つの方法AおよびCを与える。
【0040】
(2)AMS/IRMS(同位体放射性質量分析法と組合せた加速質量分析法):
この方法はマススペクトル分析をベースにし、サンプルをグラファイトまたはCO2ガスにし、質量分析機で分析する。この方法では14Cイオンを12Cイオンから分離するための加速器と質量分析装置とを使用して2つの同位体の比を求める。
【0041】
本発明の化合物は少なくとも一部がバイオ材料に由来するので、バイオ材料含有量は少なくとも1%であり、これは少なくとも1.2×10-1414Cの含有量に対応する。この含有量はさらに高く、特に最大で100%であるのが有利であり、これは1.2×10-1214Cの含有量に対応する。従って、本発明の化合物は100%のバイオ炭素を含むか、化石起源との混合物から得ることができる。
【0042】
既に述べたように、本発明の化合物は少なくとも一部が再生可能な材料起源の原料から得られる熱可塑性エラストマー(TPE)である。
特に、本発明の対象は、14Cを含む少なくとも一種の酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンモノマーから得られる少なくとも一つのポリエーテルブロックを含む熱可塑性エラストマー(TPE)ブロックコポリマーにある。
【0043】
14Cを含む酸化エチレンから作られるポリエーテルの例としては、ポリオキシエチレングリコール、より一般的にはポリ(エチレングリコール)またはポリエチレングリコール(PEG)ともよばれるポリ(酸化エチレン)が挙げられる。14Cを含む酸化プロピレンから作られるポリエーテルの例としては、ポリオキシプロピレングリコール、より一般的にはポリ(1,2−プロピレングリコール)またはポリプロピレングリコール(PPG)ともよばれるポリ(酸化プロピレン)が挙げられる。
本発明のTPEのポリエーテルブロックは少なくとも一部が再生可能な材料起源であり、炭素がバイオ炭素である少なくとも一つの単位−O−(CH22−および/または少なくとも一つの単位−O−CHCH3−(CH2)−を含む。
【0044】
本発明でのポリエーテル(以降、PE)ブロックとはポリアルキレンエーテルポリオール、特にポリアルキレンエーテルジオールを意味する。本発明の上記コポリマーの少なくとも一つのPEブロックは少なくとも一部が再生可能な材料起源であるポリ(エチレングリコール)(PEG)および/またはポリプロピレングリコール(PPG)を少なくとも含むが、本発明のコポリマーのPEブロックは再生可能な材料起源であるポリ(エチレングリコール)(PEG)および/またはポリプロピレングリコール(PPG)、ポリ(1,2−プロピレングリコール)(PPG)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ポリヘキサメチレングリコール、ポリ(1,3−プロピレングリコール)(PO3G)、ポリ(3−アルキルテトラヒドロフラン)、特にポリ(3−メチルテトラヒドロフラン)(ポリ(3MeTHF))およびこれらの混合物の中から選択される再生可能な材料起源または化石起源の他のPEをさらに含むことができる。上記PEブロック鎖の少なくとも2つを含むブロックまたはランダム「コポリエーテル」タイプのPEブロックを考えることもできる。
【0045】
ポリエーテルブロックはビスフェノール、例えばビスフェノールAのエトキシル化によって得られるブロックで構成することもできる。後者の生成物は下記文献に記載されている。
【特許文献3】欧州特許第613,919号公報
【0046】
ポリエーテルブロックは第1アミンのエトキシル化でも構成できる。ポリエーテルブロックはこのブロックを用いるのがさらに有利である。エトキシル化第1アミンの例としては下記式の生成物が挙げられる:
【化1】
【0047】
(ここで、mおよびnは1〜20で、xは8〜18である)
この化合物はセカ(CECA)社からノラモックス(NORAMOX、登録商標)の商品名で、また、クラリアン(CLARIANT)社からジェナミン(GENAMIN、登録商標)の商品名で市販されている。
【0048】
PEブロックの鎖末端はその合成方法に応じてジOH、ジNH2、ジイソシアネートまたは二酸になる。NH2鎖末端を有するPEブロックはポリエーテルジオールとよばれる脂肪族ジヒドロキシル化したα,ω-ポリオキシアルキレンブロック、例えばハンツマン(Huntsmann社)の製品であるジェファミン(登録商標)D300、D400、D2000、ED600、ED900、ED2003、エラスタミン(登録商標)RP−409、RP−2009、RT−1000、RE−600、RE−900、RE−2000、HT−1700、HE−180をシアノアセチル化して得ることができる。上記ブロックは下記文献に記載されている。
【特許文献4】日本国特許第2004346274号公報
【特許文献5】日本国特許第2004352794号公報
【特許文献6】欧州特許第1482011号公報
【0049】
本発明の一実施例では、上記の少なくとも一つのポリエーテル、例えばPEGは14Cを含む少なくとも一種の酸化エチレンモノマーから合成され、この酸化エチレンモノマーはエチレンから合成され、このエチレン自体はエタノール(バイオエタノール)からまたはエタノールを含むアルコールの混合物から合成される。このアルコールは再生可能な原料、特に砂糖キビおよび砂糖大根、カエデ(メープル)、ナツメヤシ、ヤシ糖、モロコシ、アメリカリュウゼツラン、とうもろこし、小麦、オオムギ、モロコシ、ソフト小麦、米、ジャガイモ、カッサバ、サツマイモおよびアルジーから選択される植物材料の発酵で得られる。
【0050】
本発明の第2実施例では、上記の少なくとも一つのポリエーテル、例えばPPGは14Cを含む少なくとも一種の酸化プロピレンモノマー(PPG)から合成され、この酸化プロピレンモノマーはプロピレンから合成され、このプロピレン自体はアルコールからまたは少なくともイソプロパノールおよび/または少なくともエタノールと1−ブタノールとの混合物を含むアルコールの混合物から合成される。このアルコールはアルコール自体が再生可能な原料の誘導体であり、砂糖キビおよび砂糖大根、カエデ(メープル)、ナツメヤシ、ヤシ糖、モロコシ、アメリカリュウゼツラン、とうもろこし、小麦、オオムギ、モロコシ、ソフト小麦、米、ジャガイモ、カッサバ、サツマイモ、およびセルロースまたはヘミセルロースを含む材料、例えば木材、麦藁または紙から選択される植物材料の発酵で得られる。
本発明のこれらの2つの実施例は変形例であり、ポリエーテルブロックが14Cを含むPEGとPPGの両方を含むように、ASTM規格D6866に従って組み合わせることができる。
【0051】
本発明の熱可塑性エラストマー(TPE)はポリエーテルベースではない他のソフトブロックをさらに含むことができる。特に、ポリエステル、例えばポリ(カプロラクトン)またはプリプラスト(Priplast、登録商標)タイプのポリエステルをベースにしたブロック、ポリジメチルシロキサン(PDMS)をベースにしたブロック、脂肪族ポリカーボネートをベースにしたブロック、ポリオレフィン、例えばポリブタジエン、ポリイソブチレン等をベースにしたブロックが挙げられる。
【0052】
さらに、本発明の熱可塑性エラストマー(TPE)はブロックまたはランダムコポリマーの形のポリアミドブロック、ポリウレタンブロック、ポリエステルブロックおよびこれらの混合物の中から選択される少なくとも一つのリジッドブロックを含む。
リジッドブロックは再生可能材料および/または化石起源材料から得ることができる。このリジッドブロックはさらに少なくとも一部が再生可能材料から得られるのが有利である。本発明の特に有利な実施例では、ポリエーテルブロックおよび/またはポリアミドブロックおよび/またはポリウレタンブロックおよび/またはポリエステルブロックの全部が再生可能材料から得られる。
【0053】
すなわち、選択するソフトブロックおよびリジッドブロックの成分に応じて、本発明のコポリマーのバイオ炭素含有量は少なくとも1%であり、これは14C/12C同位体比が少なくとも1.2×10-14であることに対応する。本発明のコポリマーのバイオ炭素含有量は好ましくは5%以上、好ましくは10%以上、好ましくは25%以上、好ましくは50%以上、好ましくは75%以上、好ましくは90%以上、好ましくは95%以上、好ましくは98%以上、好ましくは99%以上であり、これはほぼ100%であるのが有利であり、これは14C/12C同位体比が少なくとも1.2×10-12であることに対応する。
【0054】
本発明の好ましい実施例では、本発明ブロックコポリマーは、少なくとも一部が14Cを含む酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンから得られる少なくとも一つのポリエーテルソフトブロック、好ましくは再生可能な材料起源の原料およびポリアミドブロックから少なくとも一部が得られる少なくとも一つのPEGおよび/またはPPGを含む。
【0055】
「ポリアミド」という用語は、本発明では、ホモポリアミドおよびコポリアミド、すなわち、ラクタム、アミノ酸またはジアミンと二酸の縮合生成物を意味し、互いにアミド基で結合した単位から成る任意のポリマーである。
【0056】
本発明のコポリマーに含むことができる完全に再生可能な材料起源のポリアミドとは下記を意味する:
(1)ラクタムまたはアミノ酸から得られる脂肪族ポリアミド(例えば11−アミノウンデカン酸の縮重合で得られるPA11);
(2)ジカルボン酸とジアミンとの縮合生成物(例えばPA 10.10、デカンジアミンとセバシン酸との縮合生成物、PA 10.12、デカンジアミンとドデカンジオン酸との縮合生成物、またはPA 10.36、デカンジアミンと脂肪酸ダイマーの縮合生成物);
(3)各種モノマー、例えば上記の各モノマーの重合で得られるコポリアミド、例えば下記:PA11/10.10、PA11/10.12、PA10.10/10.12、PA11/10.36、PA 10.12/10.36、PA 10.10/10.36のコポリアミド、アミノ−11−ウンデカン酸/n−ヘプチル−11−アミノウンデカン酸コポリアミド、再生可能な材料起源(少なくとも2つのモノマーから成る)のコポリアミド、特に下記文献に記載のコポリアミド
【特許文献7】フランス国特許出願第07.53319号公報
【0057】
コポリアミドの「モノマー」という用語は「反復単位」を意味する。すなわち、PAの反復単位の場合、ジアミンと二酸との組合せを意味する。これはジアミンと二酸との組合わせ、すなわち、モノマーに対応するジアミン.二酸の(等モル量の)組合せと考えることができる。これは二酸またはジアミンは個別には構造単位で、単独では重合するのには十分でないということで説明される。
【0058】
再生可能な材料起源のアミノ酸の例としては例えばヒマシ油から得られる11−アミノウンデカン酸、例えばオレイン酸のメタセシスで得られるデシレン酸から得られる10−アミノデカン酸、例えばオレイン酸から得られる9−アミノノナン酸を挙げることができる。
【0059】
再生可能な材料起源の二酸の例としては分子(Cx)の炭素数xに従って下記を挙げることができる:
C4:例えばグルコースから得られるコハク酸;
C6:例えばグルコースから得られるアジピン酸;
C7:例えばヒマシ油から得られるヘプタンジオン酸;
C9:例えばオレイン酸から得られる(オゾン分解)アゼライン酸;
C10:例えばヒマシ油から得られるセバシン酸;
【0060】
C11:例えばヒマシ油から得られるウンデカンジオン酸;
C12:例えばドデカン酸=ラウリン酸(リッチオイル:キャベツヤシの油、ココナッツ油)のバイオ発酵で得られるドデカンジオン酸;
C13:例えば菜種中のエルカ酸(オゾン分解)から得られるブラシル(brassylic)酸;
C14:例えばミリスチン酸(リッチオイル:キャベツヤシの油、ココナッツ油)のバイオ発酵で得られるテトラデカンジオン酸;
C16:例えばパルミチン酸(主としてパーム油)のバイオ発酵で得られるヘキサデカンジオン酸;
C18:例えばステアリン酸(主として動物脂肪中に存在し、全ての植物油にわずかに存在する)のバイオ発酵で得られるオクタデカンジオン酸;
C20:例えばアラキジン酸(主として菜種油中)のバイオ発酵で得られるエイコサンジオン酸;
C22:例えばウンデシレン酸(ヒマシ油)のメタセシスで得られるドコサンジオン酸
C36:主としてオレイン酸とリノール酸から得られる脂肪酸ダイマー。
【0061】
再生可能な材料起源のジアミンの例としては分子(Cx)の炭素数xに従って下記を挙げることができる:
C4:バイオ発酵によって、コハク酸のアミノ化で得られるブタンジアミン;
C5:(リシンからの)ペンタメチレンジアミン;および
上記の再生可能な材料起源の二酸のアミノ化で得られるジアミン等。
【0062】
「部分的に再生可能な材料起源のポリアミド」すなわち一部のみが再生可能な材料に由来するポリアミド(「混成、mixte」ポリアミドという)には下記が含まれる:
(1)ジカルボン酸とジアミンの縮合生成物で、その一つまたは2つ(二酸またはジアミン)だけが再生可能な材料起源のもの。例えばPA 6.10の場合で、この場合、6.10モノマーでセバシン酸のみが再生可能な材料起源で、ヘキサメチレンジアミンは石油化学に由来する;
【0063】
(2)例えば上記の各種モノマー(再生可能または再生不可能または両者の混成物)の重合で得られるコポリアミド。これは例えばCoPA 6.6/10.10の場合で、この場合の「6.6」モノマーは再生不可能な材料起源であるが、「10.10」モノマーは再生可能な材料起源である。また、例えばPA11/10.Tの場合で、これは再生可能な材料起源「11」モノマーと部分的に再生可能な材料起源の混成(「10.T」)モノマーとから成る(デカンジアミンは再生可能な材料起源であるが、テレフタル酸(T)はそうではない)。
【0064】
「化石起源のポリアミド」とは上記2つのカテゴリーに含まれない、すなわち、再生可能有機原料から作られない地上の他の全てのポリアミドを意味する。
本発明のブロックコポリマーはポリエーテルブロックアミド(PEBA)から成るのが有利である。
【0065】
従って、本発明のPEBAは14Cを含む酸化エチレンおよび/または酸化プロピレン、例えばPEGおよび/またはPPG(それぞれ再生可能材料から少なくとも一部が得られる)から少なくとも一部が得られる少なくとも一つのポリエーテルブロックと、化石材料または完全または部分的(混成ポリアミドの場合)に再生可能原料から得られる少なくとも一つのPAブロック(ホモポリアミドまたはコポリアミド)とを含む全てのTPEを含む。
【0066】
特に、PEBAは下記(1)〜(3)のような反応性末端基を有するポリアミドブロックと反応性末端基を有するポリエーテルブロックとの重縮合で得られる:
(1)ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックと、ジカルボン酸鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロック、
(2)ジカルボン鎖末端を有するポリアミドブロックと、ポリエーテルジオールとよばれる脂肪族ジヒドロキシル化α、ω−ポリオキシアルキレンブロックをシアノエチル化および水素化して得られるジアミン鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロック、
(3)ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックと、ポリエーテルジオール(この場合に得られる生成物を特にポリエーテルエステルアミドという)。
【0067】
ジカルボン鎖末端を有するポリアミドブロックは例えば連鎖制限剤のジカルボン酸の存在下でのポリアミド先駆体の縮合で得られる。
ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックは例えば連鎖制限剤のジアミンの存在下でのポリアミド先駆体の縮合で得られる。ポリアミドブロックの数平均分子量Mnは400〜20000g/mol、好ましくは500〜10000g/mol、さらに好ましくは600〜6000g/molである。
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するポリマーはランダムに分散する単位を含んでいてもよい。
ポリアミドブロックはホモポリアミドまたはコポリアミドから成ることができる。
【0068】
PAブロックの組成中に3つのタイプのポリアミドを入れることができる。
第1のタイプでは、ポリアミドブロックは少なくとも一つのジカルボン酸(脂肪族、脂環式または芳香族)、特に4〜36の炭素原子を有するもの、好ましくは6〜18の炭素原子を有するものと、特に2〜20からの炭素原子を有するジアミン、好ましくは6〜15の炭素原子を有するジアミンの中から選択される少なくとも一つのジアミン(脂肪族、脂環式または芳香族)との縮合で得られる。
【0069】
脂肪族二酸の例としてはブタン二酸、アジピン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ミリスチン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸およびダイマー化した脂肪酸を挙げることができる。
脂環式二酸の例としては1,4−シクロヘキシルジカルボン酸が挙げられる。
芳香族二酸の例としてはテレフタル(T)酸およびイソフタル(I)酸を挙げることができる。
【0070】
脂肪族ジアミンの例としては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,10−デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミンが挙げられる。
脂環式ジアミンの例としては、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン(BACMまたはPACM)の異性体、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン(BMACMまたはMACM)の異性体、および、2,2−ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン(BMACP)の異性体、イソホロンジアミン(IPDA)、2,6−ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)、およびピペラジン(Pip)を挙げることができる。
【0071】
本発明のコポリマーは下記のPAをベースにした少なくとも一つのPAブロックを含むのが有利である:PA 4.4, PA 4.6, PA 4.9, PA 4.10, PA 4.12, PA 4.14, PA 4.16, PA 4.18, PA 4.36, PA 6.4, PA 6.6, PA 6.9, PA 6.10, PA 6.12, PA 6.13, PA 6.14, PA 6.16, PA 6.18, PA 6.36, PA 9.4, PA 9.6, PA 9.10, PA 9.12, PA 9.14, PA 9.18, PA 9.36, PA 10.4, PA 10.6, PA 10.9, PA 10.10, PA 10.12, PA 10.13, PA 10.14, PA 10.16, PA 10.18, PA 10.36, PA 10.T, PA BMACM.4, PA BMACM.6, PA BMACM.9, PA BMACM.10, PA BMACM.12, PA BMACM.14, PA BMACM.16, PA BMACM.18, PA BMACM.36, PA PACM.4, PA PACM.6, PA PACM.9, PA PACM.10, PA PACM.12, PA PACM.14, PA PACM.16, PA PACM.18, PA PACM.36, PA Pip.4, PA Pip.6, PA Pip.9, PA Pip.10, PA Pip.12, PA Pip.14, PA Pip.16, PA Pip.18 および/または PA Pip.36,およびこれらの混成物。
【0072】
第2のタイプでは、ポリアミドブロックは一種または複数のα、ω−アミノカルボン酸および/または6〜12個の炭素原子を有する一種または複数のラクタムを4〜12個の炭素原子またはジアミンを有するジカルボン酸の存在下で縮合して得られる。
ラクタムの例としては、カプロラクタム、エナントラクタムおよびラウリラクタムが挙げられる。
α、ω−アミノカルボン酸の例としては、アミノカプロン酸、アミノ−7−ヘプタン酸、アミノ−11−ウンデカン酸およびアミノ−12−ドデカン酸が挙げられる。
第2のタイプのポリアミドブロックはポリアミド−11、ポリアミド−12またはポリアミド−6ブロックであるのが有利である。
【0073】
第3のタイプでは、ポリアミドブロックは第1のタイプの少なくとも一つのモノマーと、第2のタイプの少なくとも一つのモノマーとの縮合で得られる。換言すれば、ポリアミドブロックは少なくとも一種のα、ω−アミノカルボン酸(またはラクタム)と、少なくとも一種のジアミンと、少なくとも一種のジカルボン酸との縮合で得られる。
【0074】
この場合、PAブロックは:
(1)X個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式または芳香族ジアミン、
(2)Y個の炭素原子を有するジカルボン酸、および
(3)Z個の炭素原子を有するラクタムおよびα、ω−アミノカルボン酸の中から選択される一つまたは複数のコモノマー{Z}を
(4)ジカルボン酸またはジアミンまたは構造単位として用いる過剰な二酸またはジアミンの中から選択される連鎖制限剤の存在下で、重縮合して調製する。
用いる連鎖制限剤はY個の炭素原子を有するジカルボン酸をジアミンの化学量論より過剰に用いるのが有利である。
【0075】
他の実施例では、ポリアミドブロックは少なくとも2種のα、ω−アミノカルボン酸または6〜12個の炭素原子を有する少なくとも2種のラクタムまたは一種のラクタムと、必要に応じて連鎖制限剤の存在下で炭素原子の数が同じではないアミノカルボン酸との縮合で得られる。
【0076】
第3のタイプのポリアミドブロックの例としては下記のポリアミドで形成されたもの(コポリアミド)が挙げられる:
PA6/6.6(ここで、6はカプロラクタムを意味し、6.6はヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との縮合で得られるモノマーを意味する)
PA6.6/Pip.10/12(ここで、6.6はヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との縮合で得られるモノマーを意味し、Pip.10はピペラジンとセバシン酸との縮合で得られるモノマーを意味し、12はラウリルラクタムを意味する)
【0077】
PA6.6/6.10/11/12(ここで、6.6はヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との縮合で得られるモノマーを意味し、6.10はヘキサメチレンジアミンとセバシン酸との縮合で得られるモノマーを意味し、11はアミノ−11−ウンデカン酸を意味し、12はラウリルラクタムを意味する)
【0078】
例としてはPA10.10/11, PA6.10/11, PA10.12/11, PA10.10/11/12, PA 6.10/10.10/11, PA 6.10/6.12/11, PA 6.10/6.12/10.10が挙げられる。
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックを有するこれらコポリマーのポリエーテルブロックの量はコポリマーの1〜99重量%、好ましくは5〜90重量%にするのが好ましい。ポリエーテルブロックのモル質量は100〜6000g/mol、好ましくは200〜3000g/mol、さらに好ましくは250〜2000g/molである。
【0079】
本発明のポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーは本発明に従ってポリアミドブロック(PAブロック)とポリエーテルブロック(PEブロック)とを結合できる任意の手段で製造できる。実際には基本的に2つのプロセスすなわち2段プロセスと1段プロセスが使われている。これらの2つのプロセスは下記文献に記載されている。
【特許文献8】フランス国特許出願第0856752号公報
【0080】
PEBAコポリマーは、PAブロックが主成分(PAの全重量の50重量%以上)として下記のポリアミドPA 11, PA 10.10, PA 10.12, PA 10.14, PA 10.18, PA 6.10, PA 6.12, PA 6.14, PA 6.18の少なくとも一つを含み、PEブロックが主成分(PAの全重量の50重量%以上)として再生可能な材料起源のPEGおよび/またはPPGを含み、任意成分として本発明のPEBAのPEブロックのその他の成分として再生可能な材料起源のPO3Gを含むのが有利である。
【0081】
本発明の特に好ましいブロックコポリマーはPA11−PEG、PA10.10−PEG、PA10.12−PEG、PA10.14−PEG、PA6.10−PEG、PA6.12−PEG、PA6.18−PEG、PA11−PPG、PA10.10−PPG、PA10.12−PPG、PA10.14−PPG、PA6.10−PPG、PA6.12−PPG、PA6.18−PPG、PA11−PEG/PPG、PA10.10−PEG/PPG、PA10.12−PEG/PPG、PA10.14−PEG/PPG、PA6.10−PEG/PPG、PA6.12−PEG/PPG、および/またはPA6.18−PEG/PPGである。
特に、完全に再生可能な材料起源である本発明のPA11−PEG、PA11−PPGまたはPA11−PEG/PPGが好ましい。
【0082】
本発明の第2実施例では、本発明のブロックコポリマーは、少なくとも一部が再生可能な材料起源の原料から得られる少なくとも一つのPEGおよび/またはPPGグリコールと、少なくとも一つのポリエステルブロックとを含む少なくとも一つのポリエーテルソフトブロックを含む。
【0083】
本発明でのポリエステルとは、ジカルボン酸とジオールとの縮合生成物、一般には、エステル化学官能基を含む反復単位を高分子主鎖に有する任意のポリマーを意味する。
【0084】
ポリエステルブロック(以降、PESブロック)は一般にジカルボン酸とジオールとの重縮合で製造される。適したカルボン酸はポリアミドブロックの形成で用いた上記のものである。適したジオールは直鎖脂肪族ジオール、例えばエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、分岐鎖のジオール、例えばネオペンチルグリコール、3−メチルペンタングリコール、1,2−プロピレングリコールおよび環状ジオール、例えば1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールを含む。
【0085】
本発明のブロックコポリマーはコポリエーテルエステル(COPE)、すなわちポリエステルブロックとポリエーテルブロックとを含むコポリマーから成るのが有利である。
従って、本発明のCOPEは少なくとも一つのポリエーテルブロック(PE)(後者は14Cを含む酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンから少なくとも一部が得られる)を含む、好ましくは再生可能材料から少なくとも一部が得られるポリエチレングリコール(PEG)および/またはポリプロピレングリコール(PPG)と、化石材料または完全または部分的(混成ポリエステルの場合)に再生可能原料から得られる少なくとも一つのポリエステルブロックPES(ホモポリマーまたはコポリエステル)とを含む全てのTPEを含む。
【0086】
COPEはポリエーテルジオール由来のポリエーテルのソフトブロックと少なくとも一種のジカルボン酸と少なくとも一種の鎖延長剤の短いジオール単位との反応で得られるリジッドなポリエステルブロックとからなる。ポリエステルブロックとポリエーテルブロックはジカルボン酸の酸官能基とポリエーテルジオールのOH官能基との反応で生じるエステル結合を介して結合されている。鎖延長剤の短いジオールはネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、式:HO(CH2nOHの脂肪族グリコール(ここで、nは2〜10の整数)から成る群の中から選択できる。ポリエーテルおよび二酸の鎖はソフトブロックを形成し、一方で、グリコールまたはブタンジオールと二酸との鎖はコポリエーテルエステルのリジッドブロックを形成する。
【0087】
この二酸は8〜14個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸であるのが有利である。50モル%以下の芳香族ジカルボン酸を少なくとも一種の他の8〜14個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸で置換でき、および/または、20モル%以下を2〜14個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸で置換できる。
【0088】
芳香族ジカルボン酸の例としては下記のものが挙げられる:テレフタル酸、イソフタル酸、ジベンゾイン酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4'−ジフェニレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン酸、エチレンビス(p−安息香酸)、1,4−テトラメチレンビス(p−オキシ安息香酸)、エチレンビス(パラ−オキシ安息香酸)および1,3−トリメチレンビス(p−オキシ安息香酸)。
【0089】
グリコールの例としては下記が挙げられる:エチレングリコール、1,3−トリメチレングリコール、1,4−テトラメチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,8−オクタメチレングリコール、1,10−デカメチレングリコールおよび1,4−シクロヘキシレンジメタノール。
【0090】
ポリエステルブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーは例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリトリメチレングリコール(PO3G)またはポリテトラメチレングリコール(PTMG)のようなポリエーテルジオールに由来のポリエーテル単位、テレフタル酸のようなジカルボン酸単位、グリコール単位(エタンジオール)または1,4−ブタンジオールを有するコポリマーである。このようなコポリエーテルエステルは例えば下記特許文献に記載されている。これらのポリエーテルエステルは可塑剤および当業者に周知の他の添加剤を含んでいてもよい。
【特許文献9】欧州特許第402,883号公報
【特許文献10】欧州特許第405,227号公報
【0091】
本発明の第3実施例では、本発明のブロックコポリマーは、14Cを含む酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンから少なくとも一部が得られ、好ましくは少なくとも一部が再生可能な材料起源の原料から得られる少なくとも一つのポリエチレングリコールおよび/またはポリプロピレングリコールを含む少なくとも一つのポリエーテルソフトブロックと、少なくとも一つのポリウレタンリジッドブロックとを含む。
【0092】
本発明でポリウレタン(PU)とは、芳香族ジイソシアネート(例えばMDI、TDI)および/または脂肪族ジイソシアネート(例えばHDIすなわちヘキサメチレンジイソシアネート)の中から選択できる少なくとも一種のジイソシアネートと少なくとも一種の短いジオールとの反応で得られる生成物を意味する。鎖延長剤の短いジオールはコポリエーテルエステルの説明の所で挙げたグリコールの中から選択できる。本発明のコポリマーの組成物に含まれるポリウレタンは全てのタイプのポリオールを含むことができ、特に、再生可能な材料起源のポリオール、例えば澱粉由来のポリオール(エリトリトール、ソルビトール、マルチトール、マンニトール)、糖類、例えば、ショ糖由来のポリオール(イソマルト、キシリトール)、トウモロコシ、大豆、綿、菜種、ヒマワリまたは落花生由来のポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール、バイオディーゼル製造時の反応副生成物)を含むことができる。これらのポリウレタン組成物中に含まれるポリオールの他の例としてはポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(1,2−プロピレングリコール)(PPG)、ポリ(1,3−プロピレングリコール)(PO3G)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)が挙げられ、石油化学材料起源または再生可能な材料起源にすることができる。再生可能な材料から得られるPEGおよび/またはPPGを用いるのが有利である。
【0093】
本発明のブロックコポリマーは熱可塑性ポリウレタン(TPU)、すなわちポリウレタンとポリエーテルブロックとを含むコポリマー(ポリエーテルウレタンともよばれる)から成るのが有利である。
【0094】
従って、本発明のTPUはポリエーテルブロック(後者は14Cを含む酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンから少なくとも一部が得られる)、例えば再生可能材料から少なくとも一部が得られるPEGおよび/またはPPGと、化石材料または完全または部分的(混成ポリウレタンの場合)に再生可能原料から得られるPUブロック(ホモポリマーまたはコポリウレタン)とを含む全てのTPEを含む。このPUブロックは14Cを含む酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンから得ることもでき、例えば再生可能材料から少なくとも一部が得られるPEGおよび/またはPPGを含んでいてもよい。
【0095】
ポリエーテルウレタンはポリエーテルジオール由来のポリエーテルのソフトブロックとポリウレタンリジッドブロックとの縮合で得られる。ポリウレタンブロックとポリエーテルブロックはポリウレタンのイソシアネート官能基とポリエーテルジオールのOH基との反応で得られる連結部を介して結合される。
【0096】
上記のブロックコポリマーが一般に少なくとも一つのポリエーテルソフトブロックと少なくとも一つのリジッドブロックとを含む場合、これらのブロックの少なくとも一つが、14Cを含む少なくとも一つの酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンモノマーから得られる場合に、本発明は本明細書に挙げたものの中から選択される2つ、3つ、4つ(またはそれ以上)の異なるブロックを含む任意のコポリマーが含まれるということは明らかである。
【0097】
本発明のコポリマーは3つの異なるブロックを含むセグメント化ブロックコポリマー(以降、「トリブロック」)であるのが有利である。このコポリマーは上記の複数のブロックの縮合で得られる。このトリブロックはコポリエーテルエステルアミド、コポリエーテルアミドウレタン、コポリエーテルエステルウレタンの中から選択され、
(1)ポリエーテルソフトブロックの質量百分率はトリブロックの全質量の20%以上であり、
(2)ポリアミドリジッドブロックの質量百分率はトリブロックの全質量の10%以上であるのが有利である。
【0098】
本発明のブロックコポリマーは単独または混合物として使用され、コポリマーは混合物の全質量の5〜100質量%、好ましくは5〜70質量%、好ましくは5〜30質量%を占めるのが有利である。
【0099】
本発明のコポリマーは添加剤として安定剤、可塑剤、潤滑剤、天然または有機充填剤、染料、顔料、真珠層、抗菌剤、防火剤、帯電防止剤、コポリマーの粘度調整剤および/または熱可塑性ポリマーの分野の当業者に周知の他の任意の添加剤を含むことができる。
【0100】
本発明の他の対象は、上記定義のコポリマーの製造方法にある。本発明方法は、14Cを含む酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンから少なくとも一部が得られるポリエーテルブロック(PE)を供給し、それを合成によって本発明のブロックコポリマーに変換する段階を含む。合成による変換によって少なくとも一部が再生可能な材料起源である少なくとも一つのPEGおよび/またはPPGブロックを含むブロックコポリマーが得られる。このPEはバイオ炭素含有量が少なくとも1%のPEGおよび/またはPPGを含むのが好ましい。
【0101】
特に、本発明のポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーはポリアミドブロック(PAブロック)とポリエーテルブロック(PEブロック)とを結合できる任意の手段で製造できる。実際には基本的に2つのプロセスすなわち2段プロセスと1段プロセスが使われている。
【0102】
1段プロセスでは、ポリアミド前駆体と連鎖制限剤とポリエーテルとを一緒に混合する。従って、ポリアミドブロックも1段プロセスで製造される。ポリエーテルブロックとポリアミドブロックの前駆体の同時重縮合は180〜300℃の温度で行うのが好ましい。得られるものは主として種々の長さのポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを有するポリマーであるが、ポリマー鎖に沿ってランダムに分布したランダムに反応した種々の反応物も含んでいる。
【0103】
1段プロセスでも2段プロセスでも反応は触媒の存在下に実行するのが有利である。「触媒」はエステル化またはアミド化によってポリアミドブロックをポリエーテルブロックに結合させる任意の化合物と定義される。このエステル化触媒はチタン、ジルコニウムおよびハフニウムまたは強酸、例えば燐酸またはホウ酸で形成される群の中から選択される金属の誘導体であるのが有利である。使用可能な触媒は下記文献に記載されている。
【特許文献11】米国特許第4,331,786号明細書
【特許文献12】米国特許第4,115,475号明細書
【特許文献13】米国特許第4,195,015号明細書
【特許文献14】米国特許第4,839,441号明細書
【特許文献15】米国特許第4,864,014号明細書
【特許文献16】米国特許第4,230,838号明細書
【特許文献17】米国特許第4,332,920号明細書
【特許文献18】国際特許第WO 04,037898号公報
【特許文献19】欧州特許第1262527号公報
【特許文献20】欧州特許第1270211号公報
【特許文献21】欧州特許第1136512号公報
【特許文献22】欧州特許第1046675号公報
【特許文献23】欧州特許第1057870号公報
【特許文献24】欧州特許第1155065号公報
【特許文献25】欧州特許第506495号公報
【特許文献26】欧州特許第504058号公報
【0104】
2段プロセスでは、先ず最初にポリアミドブロックを作り、第2段でこのポリアミドブロックをポリエーテルブロックに結合する。本発明のポリエーテルジオールブロックはそのまま用いるか、カルボキシル基末端を有するポリアミドブロックと共重縮合して用いるか、アミン化してポリエーテルジアミンに変え、それとカルボキシル基末端を有するポリアミドブロックと縮合する。PAブロックとPEブロックとの間にエステル結合を有するPEBAコポリマーを2段階で調製する一般的な方法は周知であり、例えば下記文献に記載されている。
【特許文献27】フランス国特許第2,846,332号公報
【0105】
PAブロックとPEブロックとの間にアミド結合を有する本発明のPEBAコポリマーの一般的な製造方法は周知であり、例えば上記欧州特許第1,482,011号公報に記載されている。
【0106】
PAブロックの生成反応は通常、180〜300℃、好ましくは200〜290℃の温度で行い、反応器内の圧力は5〜30barに設定し、この圧力を約2〜3時間維持する。反応器を雰囲気圧に置き、次いで圧力をゆっくりと下げ、過剰な水は例えば1,2時間の蒸留で除去する。
【0107】
カルボン酸末端を有するポリアミドを作った後に、ポリエーテルと触媒とを添加する。ポリエーテルおよび触媒は1回または複数回で添加できる。好ましい実施例では、ポリエーテルを初めに添加する。ポリエーテルのOH末端基とポリアミドのCOOH末端基との反応と、エステル結合の形成および水の除去が一緒に始まる。反応混合物中の水を蒸留によってできるだけ除去した後、触媒を導入してポリアミドブロックをポリエーテルブロックに結合させる。この第2段階は好ましくは100mbar以下、好ましくは50mbar以下、好ましくは20mbar以下、好ましくは10mbar以下の減圧下で反応物および得られたコポリマーが溶融状態にあるような温度で攪拌しながら実施する。この温度は例えば100〜300℃、一般に200〜250℃でよい。溶融ポリマーから攪拌器に加わるトルクを測定するか、攪拌器の消費電力を測定することによって反応をモニターし、このトルクまたは消費電力値によって反応の終点を決定する。
【0108】
酸化防止剤として用いる一種または複数の分子、例えばイルガノックス(Irganox、登録商標)1010またはイルガノックス(Irganox、登録商標)245を、合成中の最も適切であると判断される時に添加することができる。
【0109】
本発明方法の一つの実施例では、本発明方法のPE供給段階が、バイオ炭素含有量が少なくとも1%のそれぞれ酸化エチレン(EO)および/または酸化プロピレン(PO)からPEGおよび/またはPPGポリエーテルを製造する予備段階をさらに含む。本発明ではPEGおよび/またはPPGをそれぞれ酸化エチレン(EO)および/または酸化プロピレン(PO)から製造する任意の周知な方法を用いることができる。これらの方法は下記文献に記載されている。
【非特許文献1】ウルマン(Ullman)化学技術百科事典、第A21巻、583頁
【0110】
例えば酸化エチレンと、水と、エチレングリコールまたはエチレングリコールオリゴマーとを反応させて低分子量ポリエチレングリコール(分子量20 000以下)を製造する。この反応は酸性または塩基性触媒、例えば金属酸化物またはアルカリ金属酸化物によって触媒される。エチレングリコールおよびそのオリゴマーは狭い分子量分布(低い多分散度指数)のポリマーを得ることができるので、出発反応物として水より好ましい。ポリマー鎖長は反応物間の比に依存する。
HOCH2CH2OH+n(CH2CH2O)→HO(CH2CH2O)n+1
【0111】
触媒のタイプに応じて、重合機構はカチオンまたはアニオンにすることができる。アニオン機構は低い多分散度指数のPEGを得ることができるので好ましい。酸化エチレンの重合(重縮合)は発熱プロセスである。
【0112】
高分子量酸化ポリエチレン(分子量20 000以上)は、懸濁重合によって合成される。重縮合プロセス中は、溶液中に成長ポリマー鎖を維持することが必要である。この反応は例えば、有機金属マグネシウム、アルミニウムまたはカルシウム化合物によって触媒される。溶液からのポリマー鎖の凝固を防ぐために、キレート添加剤、例えばジメチルグリオキシムを用いる。
【0113】
アルカリ金属触媒、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)または炭酸ナトリウム(Na2CO3)を用いて低分子量ポリエチレングリコールを製造する。
【0114】
本発明方法の他の有利な実施例では、本発明方法における上記のPE、例えば(酸化エチレン(EO)および/または酸化プロピレン(PO)からの)PEGおよび/またはPPG供給段階が、エチレンから酸化エチレンを製造する予備段階および/またはプロピレンから酸化プロピレンを製造する予備段階をさらに含む。ここで、エチレンおよび/またはプロピレンは再生可能な原料から得られる。
【0115】
エチレンからの酸化エチレンの製造は、一般に、空気または酸素によるエチレンの直接酸化を含む。触媒の存在下での酸素によるエチレンの直接酸化は反応:C241/22->C24Oに応じて240〜270℃および15〜25気圧(1.5〜2.5MPa)を用いるのが好ましい。
【0116】
酸化プロピレンおよびプロピレンを得る主要な方法は2つある、すなわち、従来の元クロロヒドリン(ex-chlorohydrin)経路および触媒エポキシ化である。従来の元クロロヒドリン経路では、プロピレンを水性媒体中で塩素と反応させてクロロヒドリンを生成させ、これをCa(OH)2の存在下で脱塩化水素させる。触媒エポキシ化では、3種のヒドロペルオキシドが工業的重要性を有する。すなわち、tert-ブチルのヒドロペルオキシド、エチルベンゼンのヒドロペルオキシドおよび過酸化プロピレンである。これらをプロピレンと反応することによって酸化プロピレンを生成する。
【0117】
さらに他の実施例では、本発明方法におけるエチレンおよび/またはプロピレンからの上記PE(PEGおよび/またはPPG)供給段階が、このエチレンおよび/またはプロピレンを再生可能な原料から製造する予備段階をさらに含む。
【0118】
例としては、再生可能な原料からのエチレンの製造が下記(a)および(b)段階を含む:
(a)再生可能な原料を発酵し、必要に応じて精製して、エタノールおよびエタノールを含むアルコールの混合物から選択される少なくとも一種のアルコールを作り、
(b)得られたアルコールを第1の反応器中で脱水して、エチレンおよびエチレンを含むアルケンの混合物から選択される少なくとも一種のアルケンを作り、必要に応じてアルケンを精製してエチレンを作る。
【0119】
植物由来の材料、動物由来の材料または回収材料(原料のリサイクル)由来の植物または動物原料を、エチレンまたはプロピレンを製造するための再生可能な原料として使用することができる。
本発明では、植物起源の原料は少なくとも砂糖および/または澱粉を含む。
砂糖を含む植物材料は基本的に砂糖キビおよび砂糖大根であり、カエデ(メープル)、ナツメヤシ、ヤシ糖、モロコシ、アメリカリュウゼツランも挙げられ、澱粉を含む植物材料は基本的に穀類および豆果、例えばとうもろこし、小麦、オオムギ、モロコシ、ソフト小麦、米、ジャガイモ、カッサバ、サツマイモまたはアルジーである。
回収材料由来の原料としては、植物性廃棄物または砂糖および/または澱粉から成る有機性廃棄物を特に挙げることができる。再生可能な原料は植物材料であるのが好ましい。
【0120】
セルロースまたはヘミセルロース、さらにはリグニンの再生可能な原料は適当な微生物の存在下で砂糖含有原料に変換して使用できる。再生可能な原料には麦藁、木材および紙、好ましくは回収材料から得られる紙が含まれる。
回収材料由来の原料としては、植物性廃棄物または砂糖および/または多糖から成る有機性廃棄物を特に挙げることができる。しかし、上記のリストに制限されるものではない。
【0121】
再生可能な原料の発酵は一種以上の適当な微生物の存在下で行う。この微生物は必要に応じて化学的または物理的ストレスによって天然で変成または遺伝的に変成できる(この場合は突然変異という)。
【0122】
一般に、エチレン製造に使用する微生物はサッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)またはその突然変異の一つである。
発酵段階後に精製段階を行ってエタノールを他のアルコールから分離するのが好ましい。
(b)段階では得られたアルコールを最初の反応器中で脱水して、エチレンおよびエチレンを含むアルケンの混合物から選択される少なくとも一種のアルケンを製造する。脱水の副産物は水である。
【0123】
一般に、脱水はEUROSUPPORT社から商品名ESM 110(登録商標)で市販の触媒のようなα−アルミナ(残留Na2Oをほとんど含まない(約0.04%)の未ドープ三葉アルミナ)をベースにした触媒を使用して実行される。
【0124】
脱水操作条件は当業者の一般的知識の一部を形成するが、脱水は約400℃の温度で一般に実行される。
【0125】
本発明方法の一つの利点はエネルギー節約型である点にある。本発明方法の発酵脱水段階は500℃以下、好ましくは400℃以下の温度で相対的に低い温度で実行される。これに対して石油のクラッキングおよび水蒸気分解でエチレンにする段階の温度は約800℃である。このエネルギー節約で空気に放出するCO2の量も減る。
【0126】
精製段階は(a)段階または(b)段階で行うのが好ましい。任意段階の精製段階((a)段階で得られるアルコールの精製)((b)段階で得られるアルケンの精製)は、通常のフィルタ、例えばモレキュラーシーブ、ゼオライト、カーボンブラック等での吸収で行うのが好ましい。(a)段階で得られるアルコールを精製してエタノールを単離する場合には、(b)段階で得られるアルケンはエチレンである。(a)段階で得られるアルコールを精製しなかった場合には、エチレンを含むアルケンの混合物が(b)段階の終わりに得られる。
【0127】
(a)段階および/または(b)段階では、純度が85重量%以上、好ましくは95重量%以上、さらに好ましくは99重量%以上、より好ましくは99.9重量%以上のエチレンを得るために、少なくとも一つの精製段階を行うのが有利である。(a)段階で得られるアルコールを精製してエタノールを単離し、従って、(b)段階で得られるアルケンをエチレンにするのが特に好ましい。
【0128】
エタノールの脱水で得られるエチレン中に存在する主たる不純物はエタノール、プロパンおよびアセトアルデヒドである。エチレンの酸化を容易にするために、エチレンを精製してエタノール、プロパンおよびアセトアルデヒドを除去するのが好ましい。エチレン、エタノール、プロパンおよびアセトアルデヒドは一回または複数の低温蒸留で分離できる。これらの化合物の大気圧での沸点は以下の通りである:
【表1】
【0129】
エチレン、エタノール、プロパンおよびアセトアルデヒドを約-105℃、好ましくは、-103.7℃に冷却し、次いで蒸留してエチレンを取り出す。
【0130】
本発明方法の他の利点は不純物にある。エタノールの脱水で得られるエチレン中に存在する不純物はクラッキングや水蒸気分解で得られるエチレン中に存在する不純物とは全く異なる。特に、クラッキングまたは水蒸気分解で得られるエチレン中に存在する不純物は、初期導入(charge)の組成にかかわらず、二水素およびメタンである。一般に、二水素およびメタンの分離は36バールで圧縮し且つ約−120℃に冷却した後に行う。これらの条件下で、液体である二水素およびメタンを脱メタン塔で分離する。次いで、エチレンを19バールおよび−33℃で回収する。本発明の方法では二水素およびメタンを分離する段階を無くすことができ且つ混合物を36バール、−120℃の代わりに、大気圧で−105℃に冷却することができる。この分離段階での冷却は、分離すべき化合物の沸点を上げるために加圧下(例えば約20バールおよび−35℃)で行うこともできる。これらの相違点から本発明方法は従来のプロセスに比べてより経済的になる(材料およびエネルギーが節約でき、空気中に放出されるCO2の量を減らすことができる)。
【0131】
他の利点は、本発明方法の(b)段階で得られるエチレンが、クラッキングや水蒸気分解で得られるエチレンとは違って、アセチレンを含まないことにある。アセチレンは極めて高い反応性を有し、オリゴマー化の副反応を引き起こす。従って、アセチレンを用いずにエチレンを得ることは特に有利である。
【0132】
本発明方法の他の利点は、原料の生産場所に設置した生産設備で実行できる点にある。さらに、本発明方法の生産設備のサイズは石油精製装置のサイズよりはるかに小さい。特に、石油精製装置は一般に原料の製造センターから遠く離れて位置し、パイプラインで供給される大型の設備である。
【0133】
例えば、再生可能な原料からのプロピレンの製造は下記(a')および(b')段階を含む:
(a')再生可能な原料を発酵し、必要に応じて精製して、アルコールまたはアルコールの混合物を作り、このアルコールまたはアルコールの混合物は少なくともイソプロパノールおよび/またはエタノールおよび/または1-ブタノールの少なくとも一つの混合物を含み、
(b')得られたアルコールまたはアルコールの混合物を脱水して、少なくとも一つの第1の反応器中でアルケンまたはアルケン混合物(このアルケンまたはアルケン混合物は少なくともプロピレンを含む)を作り、必要に応じてアルケン混合物を精製してプロピレンを作る。
これらの(a)段階および(b)は特に下記文献に記載されている。
【特許文献28】フランス国特許出願第0858244号公報
【0134】
再生可能な原料としては上記定義のものを用いる。多糖の場合、使用する植物材料は一般に発酵段階前に加水分解した形にする。この予備的な加水分解によって例えば澱粉を糖化してグルコースに変換し、スクロースをグルコースに変換することができる。
再生可能な原料の発酵は一種以上の適当な微生物の存在下で行う。この微生物は必要に応じて化学的または物理的ストレスによって天然で変成でき、まは、遺伝的に変成できる(この場合は突然変異という)。
【0135】
使用する微生物はクロストリジウム ベイジャリンキイ(Clostridium beijerinckii)またはその突然変異の一つであるのが有利であり、好ましくはポリマー繊維またはカルシウム・タイプの支持体上に固定する。この発酵でエタノール、イソプロパノールおよび1-ブタノールを含むアルコール混合物を得ることができる。得られたアルコールはパーベーパーレーション膜を使用して連続的に抽出できる。このタイプの膜を使用する利点の一つは微生物を良く保持できる点にある。微生物はあまりに高く濃縮すると破壊される。
【0136】
使用可能な他の微生物はクロストリジウム オウランティブチリシム(Clostridium aurantibutyricum)、クロストリジウム ブチリシム(Clostridium butylicum)またはこれの突然変異種である。原料の発酵で基本的にイソプロパノールおよび/またはブタノールが得られ、アセトンが生じることもある。
第1変形例で得られるアルコールは基本的にイソプロパノールである。
【0137】
発酵段階後に精製段階、例えば蒸留を行ってイソプロパノールを他のアルコールから分離するのが好ましい。
第1変形例では(b')段階でイソプロパノールの脱水を実行して、最初の反応器中で少なくともプロピレンまたはプロピレンを含むアルケンの混合物を製造する。脱水の副産物は水である。
一般に、脱水はEUROSUPPORT社から商品名ESM 110(登録商標)で市販の触媒のようなα−アルミナ(残留Na2Oをほとんど含まない(約0.04%)の未ドープ三葉アルミナ)をベースにした触媒を使用して酸素と水の存在下で実行される。
【0138】
脱水操作条件は当業者の一般的知識の一部を形成するが、一般に脱水は約400℃の温度で実行される。
本発明方法の一つの利点はエネルギー節約型である点にある。発明方法の発酵脱水段階は500℃以下、好ましくは400℃以下の温度で相対的に低い温度で実行される。これに対して石油をクラッキングおよび水蒸気分解でプロピレンにする段階の温度は約800℃である。
【0139】
このエネルギー節約で空気に放出するCO2の量も減る。
クロストリジウム ベイジャリンキイ(Clostridium beijerinckii)またはその変異株を用いた発酵を実行する本発明の第2変形例では少なくともエタノールと1-ブタノールを含むアルコールの混合物が得られる。
発酵段階後に精製段階を行い、例えば蒸留でエタノールおよび1-ブタノールを他のアルコールから分離するのが好ましい。
【0140】
この第2の変形例では段階(b')を下記の一連の反応器を使用して行う:
(1)第1シリーズの反応器の第1部(液体の流れ方向で上記シリーズの反応器の入口に位置した反応器)でエタノールと1-ブタノールを脱水して少なくともエチレンと1-ブテンとを製造する。この脱水は上記のイソプロパノールの脱水と同じ条件下に実行する。
(2)上記第1シリーズの第2部(上記シリーズの反応器の中間に位置した反応器)で1- ブテンをヒドロ異性化して2-ブテンにする。
(3)上記第1シリーズの第3部(液体の流れ方向で上記シリーズの反応器の出口に位置した反応器)でエチレンと2-ブテンをメタセシスしてプロピレンを作る。
【0141】
ヒドロ異性化およびメタセシス反応の詳細は下記特許文献に記載されている。
【特許文献29】フランス特許第FR 2880018号公報
【0142】
1-ブテンを2-ブテンにするヒドロ異性化反応は一般に第VIII族遷移金属、特にパラジウムまたはニッケルの化合物から成る触媒組成物を使用して実行される。この触媒組成物は反応をクローズドシステムまたは半クローズドシステムまたは連続的に比較的低い温度で実行できるようにするための第四アンモニウムおよび/またはホスホニウム塩を含むことができる。
【0143】
メタセシス反応は反応物を触媒ベッドと接触させて実行され、メタセシスは一般に連続的に実行され、反応期と再生期とを有する。使用する触媒はアルミナまたはアルミナに由来する化合物、例えばシリカアルミナまたは酸化硼素-アルミナに担持した酸化レニウムから成る。
【0144】
使用する微生物はクロストリジウム ベイジャリンキイ(Clostridium beijerinckii)またはその変異株の一つであるのが好ましい。この微生物は第1変形例および第2変形例を実行するために使うことができる。このプロセスはイソプロパノールおよび/またはエタノールと1-ブタノールの組合せを使用して実行できる。
【0145】
任意段階の精製段階(段階(a')で得られるアルコールの精製)(段階(b’)で得られるアルケンの精製)は、通常のフィルタ、例えばモレキュラーシーブ、ゼオライト、カーボンブラック、その他での吸収で行うのが好ましい。
少なくとも一つの精製段階は重合または共重合を実行するのに充分な純度を有するプロピレンを得るために段階(a')および/または段階(b')に行う。得られるプロピレンの純度は85重量%以上、好ましくは95重量%以上、さらに好ましくは99重量%以上、より好ましくは99.9重量%以上であるのが好ましい。これらの脱水で得られるプロピレン中に存在する主たる不純物はアセトン、ジイソプロピルエーテル、アセトアルデヒド、1- プロパノールおよび水素である。
【0146】
プロピレンを精製してアセトン、ジイソプロピルエーテル、アセトアルデヒド、1- プロパノールおよび水素を除去するのが好ましい。
【0147】
沸点がプロピレンの沸点よりはるかに低い水素はガスを圧縮し、わずかに冷却して分離できる(例えば19バールで-33℃)。
プロピレン、アセトン、ジイソプロピルエーテル、アセトアルデヒドおよび1-プロパノールは一つまたは複数の低温蒸留で分離できる。これらの化合物の大気圧での沸点は以下の通りである:
化合物 沸点(℃)
プロピレン −47.7
アセトアルデヒド 20.8
アセトン 56
ジイソプロピルエーテル 68
1−プロパノール 97
【0148】
プロピレン、アセトン、ジイソプロピルエーテル、アセトアルデヒドおよび1-プロパノールを大気圧で約-50℃、好ましくは、-47.7℃に冷却し、次いで蒸留してプロピレンを取り出す。必要に応じてこの蒸留を加圧下で行って高い温度でプロピレンを取り出すことができる。
【0149】
本発明方法の他の利点は不純物にある。アルコールの脱水で得られるプロピレン中に存在する不純物はクラッキングや水蒸気分解で得られるプロピレン中に存在する不純物とは全く異なる。特に、クラッキングまたは水蒸気分解で得られるプロピレン中に存在する不純物はメチルアセチレンとプロパジエンを含む。
【0150】
本発明方法でもメチルアセチレンとプロパジエンが得られるが、これらの化合物ははるかに少ない量で存在する。この違いによってメチルアセチレンの極めて高い反応性に起因するリスクを減らし、オリゴマー化の副反応を減らすことができる。
本発明方法の他の利点は、原料の生産場所に設置した生産設備で実行できる点にある。さらに、本発明方法の生産設備のサイズは石油精製装置のサイズよりはるかに小さい。特に、石油精製装置は一般に原料の製造センターから遠く離れて位置し、パイプラインで供給される大型の設備である。
上記の全ての相違点から本発明方法はプロピレンを得るための従来のプロセスに比べてより経済的になる(材料およびエネルギーが節約でき、空気中に放出されるCO2の量を減らすことができる)。
【0151】
本発明の方法で得られるPEGブロックを含むコポリマーは、密度、水吸収性および/または機械特性、帯電防止特性、通気性防水特性および漏れ止め特性の点で良好な特性を有する。本発明の方法で得られるPPGブロックを含むコポリマーは、低い吸湿性の点でおよび環境湿度に対する機械特性の安定性の点で良好な特性を有する。本発明のPEGおよびPPGブロックの両方を含むコポリマーはこれらの有利な特性を併せ持つ。本発明の方法は、PEG/PPG比を変えることによってこれらの特性を容易に調節できる。
【0152】
また、本発明方法を用いることによって、(同じ化学式であるが)化石起源の対応するコポリマーの性能と同じ(またはそれ以上の)性能を有するブロックコポリマーを再生可能な材料起源の酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンから得ることができる。
また、本発明のブロックコポリマーの製造方法を用いることによって、石油起源の原料の消費量を減らし、さらには完全に無くし、植物の成長で得られる原料を用いることができる。さらに、本発明方法によって温室ガスの排出量を削減できる。