(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表面に細孔を有し数平均一次粒子径が1〜30μmの範囲そして平均細孔径が0.01〜0.5μmの範囲にあるポリアミド多孔質粒子と、数平均一次粒子径が該ポリアミド多孔質粒子の平均細孔径に対して1/100〜1/2の範囲にあって、80個%以上が強酸性成分を含むことがない無機化合物微粒子とを乾燥状態にて混合することを特徴とする、該無機化合物微粒子を、該無機化合物微粒子とポリアミド多孔質粒子との合計量に対して0.01〜80質量%の範囲の量にて坦持するポリアミド多孔質粒子からなる粉末の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明において、無機化合物担持ポリアミド多孔質粒子は表面に細孔を有するポリアミド多孔質粒子と、そのポリアミド多孔質粒子の表面及び細孔内に担持された多数の無機化合物微粒子とからなる。本発明の無機化合物担持ポリアミド多孔質粒子は、多孔質でない表面が平滑なポリアミド粒子に無機化合物微粒子を担持させた無機化合物担持ポリアミド粒子と比べて、表面に凹凸が多く存在する。このため、本発明の無機化合物担持ポリアミド多孔質粒子の粉末は、可視光に対して高い散乱性を示す。
【0016】
本発明において、無機物粒子を担持するポリアミド多孔質球状粒子は、単一粒子そのものが球晶構造を有することが好ましい。ポリアミド多孔質球状粒子は、球晶構造と多孔性の構造とが相俟って光の散乱性が向上する。なお、本発明において、「単一粒子そのものが球晶構造からなる」とは、単一粒子が、粒子の中心付近の単数又は複数の核から高分子フィブリルが三次元等方あるいは放射状に成長して形成した結晶性高分子粒子特有の球晶構造からなることを意味する。単一粒子が球晶構造からなることは、透過型電子顕微鏡(TEM)による粒子断面の観察結果や、偏光顕微鏡による直交ニコル下での光透過性の観察結果により確認することができる。
【0017】
無機物粒子を担持するポリアミド多孔質粒子は、球状、略球状、一方の側に膨らみを有し、反対側に欠損部を有する形状(例えば、C型状、勾玉状)、筒状及びダンベル状であってもよい。また、ポリアミド多孔質粒子の粒子全体の70個%以上、好ましくは80個%以上、さらに好ましくは90個%以上が同一の粒子形状で構成されていることが望ましい。粒子形状が不均一であると、ポリアミド多孔質粒子に無機化合物微粒子を均一に担持させることが難しくなることがある。ポリアミド多孔質粒子は、球状であることが好ましい。
【0018】
ポリアミド多孔質粒子は、平均一次粒子径(数平均一次粒子径)が1〜30μmの範囲、好ましくは1〜25μmの範囲にある。平均一次粒子径が1μmより小さいと二次凝集力が強く、取り扱い性が低くなる。平均一次粒子径が30μmより大きいと、化粧品に加えた場合、ざらつき感が増し、感触が悪くなることがある。
【0019】
ポリアミド多孔質粒子は、平均一次粒子径(数平均一次粒子径:Dn)に対する体積平均一次粒子径(Dv)の比[Dn/Dv、粒度分布指数(PDI)という]が、1.0〜2.0の範囲にあることが好ましく、1.0〜1.5の範囲にあることがより好ましく、1.0〜1.3の範囲にあることがさらに好ましい。粒度分布指数(PDI)は、ポリアミド多孔質粒子の粒子分布の拡がりを表す指標の一つであり、粒度分布指数が1に近いほど、粒度分布の拡がりが狭いことを意味する。粒度分布指数(PDI)が1に近い方が、粒子の分散が均一になるため、化粧品に加えた場合に、その製造や使用に対して優れた効果を示す。
【0020】
ポリアミド多孔質粒子は、平均細孔径が0.01〜0.5μmの範囲にあることが好ましく、0.01〜0.3μmの範囲にあることがより好ましい。平均細孔径が0.01μmより小さいと、可視光の散乱効果が得られる量の無機化合物微粒子を担持させるのが難しくなる。また、平均細孔径が0.5μmより大きいと、無機化合物微粒子が凝集した状態で細孔内に坦持され易くなる。紫外線吸収能のある無機化合物微粒子(例えば、酸化チタン微粒子、酸化亜鉛微粒子)では凝集するほど無機化合物微粒子の紫外線吸収性能が低
下する場合がある。
【0021】
ポリアミド多孔質粒子は、BET比表面積が0.1〜80m
2/gの範囲にあることが
好ましく、3〜75m
2/gの範囲にあることがより好ましく、5〜70m
2/gの範囲にあることがさらに好ましい。比表面積が0.1m
2/gより低いと、可視光の散乱効果が
得られる量の無機化合物微粒子を担持させるのが難しくなる。
【0022】
ポリアミド多孔質粒子は、ポリアミド多孔質粒子と同一の平均一次粒子径を有し、かつ表面に細孔を有しない表面が平滑なポリアミド球状粒子の比表面積(S
0)に対する該ポ
リアミド多孔質粒子のBET比表面積(S)の比[S/S
0、多孔質度(RI)という]
が5〜100の範囲にあることが好ましく、10〜80の範囲にあることがより好ましい。多孔質度(RI)が5より低いと、可視光の散乱効果が得られる量の無機化合物微粒子を担持させるのが難しくなる。なお、ポリアミド多孔質球状粒子と同一の数平均粒子径を有し、表面に細孔を有しない平滑なポリアミド球状粒子の比表面積(S
0)は、下記の式
により求めることができる。
S
0(m
2/kg)=6/[ρ(kg/m
3)×Dn(m)]
(但し、ρは、ポリアミドの密度であり、Dnは、数平均粒子径である。)
【0023】
ポリアミド多孔質粒子は、空孔率が30〜70%の範囲にあることが好ましい。空孔率が30%よりも低いと可視光の散乱効果が得られる量の無機化合物微粒子を担持させるのが難しくなる。空孔率が70%より大きいと、ポリアミド多孔質粒子の均一な形状が保てなくなり、取り扱いが悪くなることがある。ここで、空孔率は、ポリアミド多孔質粒子の全体積(ポリアミドの体積と空孔の体積との合計)に対する空孔の体積の割合を意味する。空孔率は、下記の式により求めることができる。
空孔率(%)=100×P(m
3/kg)/[P(m
3/kg)+1000/ρ(kg/m
3)]
(但し、Pは、ポリアミド多孔質粒子の粒子内累積細孔容積であり、ρは、ポリアミド多孔質粒子の密度である。)
【0024】
ポリアミド多孔質粒子のJIS K 5101による煮亜麻仁油吸油量は、150mL/100g以上であることが好ましく、200mL/100g以上であることがより好ましい。ポリアミド多孔質粒子の吸油量が大きいほど、無機化合物微粒子を坦持した粒子の吸油量も大きくなる。
【0025】
ポリアミド多孔質粒子は、脂肪族、脂肪環族及び芳香族のポリアミド、又はこれらの共重合体から製造されているものを用いることができる。好ましいのは、脂肪族ポリアミドである。脂肪族ポリアミドの例としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12の単独重合体及びそれらの共重合体を挙げることができる。脂肪族ポリアミドのなかで好ましいのは、ポリアミド6、ポリアミド66の単独重合体及びそれらの共重合体であり、特に好ましいのはポリアミド6の単独重合体である。ポリアミドは、末端基にアミノ基をカルボキシル基よりも多く含むことが好ましい。
ポリアミドは、数平均分子量が3000〜100000の範囲にあることが好ましく、5000〜40000の範囲にあることがより好ましく、6000〜20000の範囲にあることがさらに好ましい。
【0026】
ポリアミド多孔質粒子は、ポリアミド溶液と、ポリアミドの非溶媒及び水を混合し、一時的に均一な混合溶液を調製し、その後ポリアミド粒子を析出させることにより製造することができる。
【0027】
ポリアミド溶液の溶媒としては、フェノール化合物またはギ酸を挙げることができる。
フェノール化合物の例としては、具体的には、フェノール、0−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、クレゾール酸、クロロフェノールを挙げることができる。これらは、室温、または温度30〜90℃の加熱により、結晶性ポリアミドを溶解する、または、溶解を促進するから好ましい。特に、好ましい溶媒は、フェノールである。フェノールは、他の溶媒よりも毒性が少なく、作業上安全である。ポリアミド溶液中のポリアミド濃度は、好ましくは0.1〜30重量%の範囲、より好ましくは0.2〜25重量%の範囲である。
【0028】
ポリアミド溶液には、凝固点降下剤を添加してもよい。凝固点降下剤としては、ポリアミド溶液中のポリアミドを析出させない範囲であれば、ポリアミドの非溶媒を用いることができる。凝固点降下剤の例としては、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、及びジグリセリンを挙げることができる。
【0029】
ポリアミドの非溶媒は、ポリアミドの溶媒(芳香族アルコール又はギ酸)、及び水が部分的に相溶するもの(少量溶解するもの)を用いることができる。ポリアミドの非溶媒の例としては、脂肪族アルコール、脂肪族ケトン及びこれらの混合溶液を挙げることができる。脂肪族アルコールの例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンを挙げることができる。脂肪族ケトンの例としては、アセトン及びメチルエチルケトンを挙げることができる。
【0030】
ポリアミド多孔質粒子の製造に際して、ポリアミド溶液、非溶媒及び水の添加順序については、ポリアミド溶液、非溶媒及び水を混合し、一時的に均一な混合溶液が調製できればよく、特に添加順序などに制限はない。すなわち、ポリアミド多孔質粒子の製造に際しては、1)ポリアミド溶液に、非溶媒を添加し、次に水を加える、2)非溶媒と水とを混合し、ポリアミド溶液を加える、3)ポリアミド溶液に水を添加し、非溶媒を加えるなどの方法を利用することができる。上記2)の非溶媒と水とを混合し、ポリアミド溶液を加えて混合溶液を調製するに際して、ポリアミド溶液は一時に加えてもよいし、二回以上に分割して加えてもよい。
【0031】
ポリアミド多孔質粒子の製造において、一時的に均一な混合溶液を調製するために、溶液に適当な撹拌を加えてもよい。多孔質ポリアミド粒子を析出させる際の混合溶液の液温は、0〜80℃の範囲が好ましく、20〜40℃の範囲がより好ましい。
【0032】
析出したポリアミド粒子は、デカンテーション、遠心分離、ろ過などの通常の方法で溶液から分離することができ、例えば、ポリアミド粒子の析出した溶液に、さらにメタノール、エタノール及びプロパノールなどの脂肪族アルコールや水、アセトンを加え、デカンテーションや遠心分離などの方法で、ポリアミド粒子を分離することができる。また、析出したポリアミド粒子はさらに数回メタノール、エタノール及びプロパノールなどの脂肪族アルコールや水、アセトンなどで洗浄し、デカンテーションや遠心分離などの方法で分離してもよく、さらに熱風乾燥、噴霧乾燥、攪拌乾燥、真空乾燥してもよい。
【0033】
上記の方法により得られたポリアミド多孔質粒子は、ポリアミド溶液の溶媒と40℃以上の温度で相溶するポリアミド非溶媒を40℃以上の温度にて接触させることによって、ポリアミド多孔質粒子中に残留した溶媒を抽出除去することができる。溶媒を抽出除去するのに用いるポリアミド非溶媒の例として、脂肪族アルコール、脂肪族もしくは芳香族ケ
トン、脂肪族もしくは芳香族の炭化水素、及び水からなる群より選ばれる化合物を挙げることができる。この非溶媒は、二種類以上の混合物でもよい。液温が40℃でポリアミドを0.01質量%以上溶解することがないものであることが好ましい。脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、及び2−プロパノールなどの炭素原子数が1〜3の1価の脂肪族アルコールを挙げることができる。脂肪族ケトンの例としては、アセトン、及びメチルエチルケトンを挙げることができる。芳香族ケトンの例としては、アセトフェノン、プロピオフェノン、及びブチロフェノンを挙げることができる。芳香族炭化水素の例としては、トルエン及びキシレンを挙げることができる。脂肪族炭化水素の例としては、ヘプタン、ヘキサン、オクタン、及びn−デカンを挙げることができる。
【0034】
ポリアミド多孔質粒子に担持される無機化合物微粒子は、その80個%以上、好ましくは90個%以上、より好ましくは100個%が強酸性成分を含むことがない無機化合物微粒子である。
【0035】
無機化合物微粒子の平均一次粒子径は0.001〜0.5μmの範囲、好ましくは0.001〜0.1μmの範囲にある。また、無機化合物微粒子の平均一次粒子径は、ポリアミド多孔質粒子の平均細孔径の1/100〜1/2の範囲にあることが好ましく、1/50〜1/5の範囲にあることがより好ましい。無機化合物微粒子の形状は、球状、不定形状、塊状、針状、棒状など特に制限されるものではない。
【0036】
本発明で用いる無機化合物微粒子としては、酸化物、窒化物及び炭化物の微粒子を挙げることができる。強酸性成分を含むことがない無機化合物微粒子の具体例としては、酸化鉄(黄色酸化鉄、ベンガラ、黒色酸化鉄)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、炭化ケイ素、有機色素、群青、紺青、カーボンブラック、酸化鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、インジウム―スズ複合酸化物、シリカ―酸化リチウム複合酸化物、マグネタイト、マグヘマイト、マンガン・ジンクフェライト、希土類鉄ガーネット、ニッケル・ジンクフェライト、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ホウ素、ヒドロキシアパタイト、α−リン酸カルシウム、β−リン酸カルシウム、γ―リン酸カルシウム、リン酸八カルシウム、モンモリロナイト等の粘土質物、マイカ、タルク及びこれらの複合物の微粒子が挙げることができる。これらのなかで好ましいのは、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム及び二酸化チタンの微粒子であり、特に好ましいのは酸化亜鉛の微粒子である。酸化亜鉛微粒子は、前述のように皮脂中の遊離脂肪酸と反応して金属石けんを形成する作用がある。また、ポリアミド多孔質粒子は優れた吸油特性を示す。このため、酸化亜鉛微粒子を担持させたポリアミド多孔質粒子を化粧品組成物に用いると、化粧品組成物の皮脂の除去効果が向上し、化粧持ちが長くなる。無機化合物微粒子は、二種以上を併用してもよい。
【0037】
無機化合物微粒子をポリアミド多孔質粒子に担持させる方法の一つとしては、無機化合物微粒子とポリアミド多孔質粒子とを分散溶媒に分散させた混合物スラリーを調製して、次いでその混合物スラリーを撹拌混合した後、乾燥する方法を挙げることができる。
【0038】
分散溶媒は、水、又は水と親和性の高い有機溶媒及びこれらの混合物であることが好ましい。水と親和性の高い有機溶媒の例としては、アセトン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノールエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0039】
混合物スラリーの調製には、無機化合物微粒子のスラリーとポリアミド多孔質粒子のス
ラリーとをそれぞれ別に用意して、両者を混合する方法、無機化合物微粒子のスラリーを用意して、これにポリアミド多孔質粒子を加えて混合する方法、及びポリアミド多孔質粒子のスラリーを用意して、これに無機化合物微粒子を加えて混合する方法を利用することができる。
【0040】
混合物スラリーの撹拌混合方法としては、スリーワンモーターと撹拌羽根を用いる方法、撹拌子とマグネティックとを用いる方法、超音波ホモジナイザーを用いる方法、及びこれらを組み合わせた方法を用いることができる。
【0041】
混合物スラリーを撹拌混合して無機化合物微粒子を担持させたポリアミド多孔質粒子は、ろ過あるいは遠心分離などの方法でスラリーから分離した後、真空乾燥あるいは恒温乾燥により乾燥させることができる。また、無機化合物微粒子を担持させたポリアミド多孔質粒子は混合物スラリーを直接噴霧乾燥して、乾燥させることもできる。
【0042】
無機化合物微粒子をポリアミド多孔質粒子に担持させる別の方法としては、無機化合物微粒子とポリアミド多孔質粒子とを乾燥状態で、混合攪拌を行なう方法を挙げることができる。
【0043】
乾燥状態にて無機化合物微粒子とポリアミド多孔質粒子とを攪拌混合する場合は、その強力な機械的エネルギーによってポリアミド多孔質粒子の表面細孔がつぶれて消滅したり、破砕されたり、また衝突に伴う熱エネルギーによりポリアミド多孔質粒子自体が溶融してしまうことがない範囲であればどのような方法を用いてもよい。例えば微粒子に回転やあるいは揺動を与える混合攪拌方法として、愛知電気株式会社製のロッキングミキサーや、小型シェーカーである(株)イカジャパンのIKA−VIBRAX VXRベーシック
などが挙げられる。
【0044】
無機化合物微粒子をポリアミド多孔質粒子に担持させる前に、無機化合物微粒子のポリアミド多孔質粒子への結着性を向上させるために、無機化合物微粒子とポリアミド多孔質粒子の両方又は一方の表面に界面活性剤を付着させてもよい。
【0045】
界面活性剤には、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を用いることができる。
陰イオン性界面活性剤の例としては、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウムなどの脂肪酸石けんのほか、高級アルキル硝酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、リン酸エステル塩などを挙げることができる。陽イオン性界面活性剤の例としては、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウムなどを挙げることができる。非イオン性界面活性剤の例としては、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、しょ糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン(炭素原子数2又は3)アルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体などを挙げることができる。
【0046】
本発明の無機化合物担持ポリアミド多孔質粒子の粉末は、化粧品の材料として有利に使用することができる。また、触媒担持体、電子分野の光学部品、塗料用、医療用、食品工業分野用の機能性粒子としても利用することができる。
【0047】
本発明の化粧品組成物は、化粧品基材中に、前記本発明の無機化合物担持ポリアミド多孔質粒子からなる粉末が分散されてなる。化粧品基材とは、化粧品組成物の剤型を保持す
るための成分を意味する。化粧品基材としては、油性基材、水性基材、粉体基材、パックなどの被膜を作る高分子基材、乳化剤として機能する界面活性剤、及びこれらの混合物がある。
【0048】
油性基材の例としては、油脂、ロウ、炭化水素、及び高級脂肪酸を挙げることができる。水性基材の例としては、精製水、及びエタノールなどの低級アルコールを挙げることができる。粉体基材の例としてはタルクやカオリンなどの無機顔料を挙げることができる。高分子基材の例としては、天然高分子及び合成高分子を挙げることができる。界面活性剤の例としては、ノニオン系界面活性剤及びアニオン系界面活性剤を挙げることができる。
【0049】
化粧品基材には、さらに、洗浄剤、保湿剤、柔軟化剤、収斂剤、紫外線カット剤、着色剤、香料、消臭剤、増粘剤、防腐剤、pH調整剤、金属イオン封鎖剤、細胞賦活剤、血行促進剤、美白剤、皮脂抑制剤、殺菌剤、抗炎症剤、及び制汗剤を添加してもよい。
【実施例】
【0050】
本実施例において、平均一次粒子径(数平均一次粒子径)、体積平均一次粒子径、粒度分布指数(PDI)、BET比表面積、平均細孔径、多孔度指数(RI)、空孔率、結晶化度、煮亜麻仁油吸油量、視覚反射率、及び酸化亜鉛含有量は次のようにして測定した。
【0051】
[数平均一次粒子径、体積平均一次粒子径、粒度分布指数(PDI)]
走査型電子顕微鏡を用いて、粒子100個の粒子径を測定し、公法に従って算出する。
【0052】
[BET比表面積]
窒素吸着によるBET3点法にて測定する。
【0053】
[平均細孔径]
水銀ポロシメータを用いて測定する。測定範囲は、0.0036〜14μmの範囲とする。
【0054】
[多孔度指数(RI)]
上記の方法により測定したBET比表面積を用いて、前述の式により算出する。ポリアミド6の密度は、1180kg/m
3とする。
【0055】
[空孔率]
水銀ポロシメータを用いて累積細孔容積を測定して、細孔径に対する累積細孔容積のグラフを作成する。そのグラフ上で最も大きい変曲点での細孔径よりも0.035μm小さい細孔径までの累積細孔容積を粒子内累積細孔容積とし、前述の式に従って空孔率を算出する。ポリアミド6の密度は、1180kg/m
3とする。
【0056】
[結晶化度]
DSC(示差走査熱量計)を用いて、流速40mL/分窒素ガス中、昇温速度5℃/分、温度範囲120〜230℃の吸熱ピークの面積から結晶融解熱を算出する。結晶化度は、算出した融解熱量とポリアミド6の結晶融解熱量との比から求める。ポリアミド6の結晶融解熱は189J/gとした。
【0057】
[煮亜麻仁油吸油量]
JIS K 5101に記載の方法に従って測定する。
【0058】
[視覚反射率]
測定対象粉末0.2gを透明両面テープ(10cm×10cm)の一方の接着面に均一
に付着させて、視覚反射測定用試料を作成する。視覚反射測定用試料を(株)カラーシステム社製、変角分光側色システムカラーロボIIIにセットして、入射光の角度を45度に
固定して光を視覚反射測定用試料に照射し、反射角0度、20度及び45度の反射光の強度を測定して、各反射角のおける入射光に対する反射光の割合の百分率を視覚反射率として算出する。
【0059】
[酸化亜鉛含有量]
測定対象粉末5mgを硫酸−硝酸混合液にて湿式分解して、ICP発光分析法により亜鉛量を測定し、酸化亜鉛含有量に換算する。
【0060】
[実施例1]
液温70℃のフェノール810gに、ポリアミド6(宇部興産(株)製、1010X1、数平均分子量:8000)100gを加えて攪拌し、ポリアミド6を完全に溶解させた後、さらにメタノールを90g加えて攪拌しながら徐冷し、ポリアミド6濃度10質量%のポリアミド6溶液を1kg調製した。得られたポリアミド6溶液1kgの液温を20℃に調節しながら、該ポリアミド6溶液にメタノール7kgと水0.5kgとを加え、攪拌混合して、均一な混合溶液となった時点で攪拌を停止し、静置した。混合溶液中にポリアミド6粒子が析出したのを確認して、さらに混合溶液を2時間静置した。静置後、混合溶液中のポリアミド6粒子をろ紙を用いてろ別し、ろ紙上にて25℃のメタノール10000mLで5回ほど洗浄した。次に、洗浄したポリアミド6粒子を熱風乾燥機を用いて、温度60℃で、8時間乾燥した後、さらに真空乾燥機を用いて、温度60℃で、8時間乾燥した。乾燥後のポリアミド6粒子10gを保温付きソックスレー抽出器に充填し、抽出器内にメタノールを10時間還流して、ポリアミド6粒子とメタノールとを接触させた。次に、ポリアミド6粒子をソックスレー抽出器から取り出して、メタノールに分散させて10質量%スラリーとした後、スプレードライヤーを用いて、温度180℃で噴霧乾燥して、ポリアミド6粉末を得た。
【0061】
得られたポリアミド6粉末を走査型電子顕微鏡を用いて観察したところ、ポリアミド6粒子は比較的均一な多孔質の球状粒子であることが確認された。また、得られたポリアミド6粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で断面観察を行なった結果、中心の核より結晶が成長していることが確認でき、単一粒子そのものは球晶構造を有することがわかった。さらに、ポリアミド6粒子を偏光顕微鏡で観察した結果、直交ニコル下で光が透過することが確認され、このことからもポリアミド6粒子の単一粒子そのものは球晶構造を有することが確認された。得られたポリアミド6多孔質粉末の平均一次粒子径(数平均一次粒子径)、体積平均一次粒子径、粒度分布指数(PDI)、BET比表面積、平均細孔径、多孔度指数(RI)、空孔率、結晶化度、煮亜麻仁油吸油量、視覚反射率を前記の方法により測定した。その結果、平均一次粒子径は8.2μm、体積平均粒子径は11.8μm、PDIは1.43、BET比表面積は28.2m
2/g、平均細孔径は0.095μm、多
孔度指数(RI)は45.0、空孔率は65%、煮亜麻仁油吸油量は210mL/100g、結晶化度は57%であった。視覚反射率は26.44%(反射角:0度)、30.62%(反射角:20度)及び68.02%(反射角:45度)であった。
【0062】
上記のようにして得たポリアミド6多孔質粉末1gと、酸化亜鉛微粉末[堺化学工業(株)製、FINEX−75、平均一次粒子径:0.010μm、視覚反射率:4.39%(反射角:0度)、10.07%(反射角:20度)、160.0%以上(反射角:45度)]0.5gとをガラス製サンプル瓶に入れ、小型シェーカー((株)イカジャパン製、IKA−VIBRAX VXRベーシック)を用いて、2000rpmの回転速度で2
時間機械的に攪拌して、ポリアミド6多孔質粉末と酸化亜鉛微粉末とを混合した。次いで、得られた粉末混合物を孔径3μmのろ紙の上に取り出して、メタノールで洗浄した後、真空乾燥機に入れ、温度60℃で、8時間真空乾燥した。
【0063】
得られた粉末混合物の粒子形態を、走査型電子顕微鏡及び透過型電子顕微鏡を用いて観察した。
図1に走査電子顕微鏡写真を、
図2に透過型電子顕微鏡写真を示す。
図1及び
図2に示すように、粉末混合物の粒子は、ポリアミド6多孔質粒子の表面及び細孔内に、多数の酸化亜鉛微粒子が担持されてなる酸化亜鉛担持ポリアミド多孔質粒子であることが確認された。
得られた粉末混合物の酸化亜鉛含有量、BET比表面積、平均細孔径、視覚反射率を前記の方法により測定した。その結果、酸化亜鉛含有量は17.4質量%、BET比表面積は26.5m
2/g、平均細孔径は0.082μm、視覚反射率は35.20%(反射角
:0度)、37.79%(反射角:20度)及び40.53%(反射角:45度)であった。
【0064】
[実施例2]
実施例1において、酸化亜鉛微粉末の量を0.3gとした以外は、実施例1と同様にして粉末混合物を製造した。
得られた粉末混合物の粒子形態を、走査型電子顕微鏡と透過型電子顕微鏡とを用いて観察したところ、粉末混合物の粒子は、ポリアミド6多孔質粒子の表面及び細孔内に、多数の酸化亜鉛微粒子が担持されてなる酸化亜鉛担持ポリアミド多孔質粒子であることが確認された。
得られた粉末混合物の酸化亜鉛含有量、BET比表面積、平均細孔径、視覚反射率を前記の方法により測定した結果、酸化亜鉛含有量は11.7質量%、BET比表面積は25.5m
2/g、平均細孔径は0.073μm、視覚反射率は33.68%(反射角:0度
)、36.04%(反射角:20度)及び42.84%(反射角:45度)であった。
【0065】
[実施例3]
実施例1において、酸化亜鉛微粉末の量を0.1gとした以外は、実施例1と同様にして粉末混合物を製造した。
得られた粉末混合物の粒子形態を、走査型電子顕微鏡と透過型電子顕微鏡とを用いて観察したところ、粉末混合物の粒子は、ポリアミド6多孔質粒子の表面及び細孔内に、多数の酸化亜鉛微粒子が担持されてなる酸化亜鉛担持ポリアミド多孔質粒子であることが確認された。
得られた粉末混合物の酸化亜鉛含有量、BET比表面積、平均細孔径、視覚反射率を前記の方法により測定した結果、酸化亜鉛含有量は5.6質量%、BET比表面積は24.2m
2/g、平均細孔径は0.073μm、視覚反射率は33.42%(反射角:0度)
、36.00%(反射角:20度)及び44.08%(反射角:45度)であった。
【0066】
実施例1〜実施例3にて製造した粉末混合物、粉末混合物の製造に用いたポリアミド6多孔質粒子及び酸化亜鉛微粒子の視覚反射率を下記の表1に示す。表1の結果から、粉末混合物は、原料として用いたポリアミド6多孔質粒子及び酸化亜鉛微粒子と比べて、各反射角での視覚反射率の変動が小さいことから、可視光の散乱性が高いことがわかる。
【0067】
【表1】
【0068】
[実施例4]
撹拌羽根3枚パドル翼を装着した容量2Lのセパラブルフラスコに、イソプロパノール750gと水450gとを投入し、液温を25℃に調節しながら、パドル翼の回転速度500rpmの条件で撹拌してイソプロパノールと水の混合溶媒を調製した。このイソプロパノールと水の混合溶媒の撹拌を続けながら、該混合溶媒に、フェノールとイソプロピルアルコールとを90:10(質量比)の割合で含む溶媒にポリアミド6(数平均分子量:13000)を溶解させて調製した濃度10質量%のポリアミド溶媒30gを添加した(一段目)。次いで、一段目のポリアミド溶液の添加が終了してから30秒経過した後に、一段目で投入したポリアミド溶液と同じ組成のポリアミド溶液120gを添加して(二段目)、ポリアミド含有混合液を調製した。
【0069】
混合液中にポリアミド6粒子が析出したのを確認して、さらに混合溶液を1時間静置した。静置後、混合溶液中のポリアミド6粒子を吸引ろ過により分離回収し、イソプロパノールで繰り返し洗浄した後、乾燥して、ポリアミド6粉末を得た。
【0070】
得られたポリアミド6粉末を走査型電子顕微鏡を用いて観察したところ、ポリアミド6粒子は比較的均一な多孔質の球状粒子であることが確認された。また、得られたポリアミド6粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で断面観察を行なった結果、中心の核より結晶が成長していることが確認でき、単一粒子そのものは球晶構造を有することがわかった。さらに、ポリアミド6粒子を偏光顕微鏡で観察した結果、直交ニコル下で光が透過することが確認され、このことからもポリアミド6粒子の単一粒子そのものは球晶構造を有することが確認された。得られたポリアミド6多孔質粉末の平均一次粒子径(数平均一次粒子径)、体積平均一次粒子径、粒度分布指数(PDI)、BET比表面積、平均細孔径、多孔度指数(RI)、空孔率、結晶化度、煮亜麻仁油吸油量を前記の方法により測定した。その結果、平均一次粒子径は11.1μm、体積平均粒子径は12.3μm、PDIは1.11、BET比表面積は19.8m
2/g、平均細孔径は0.102μm、多孔度指数(
RI)は43.2、空孔率は65%、煮亜麻仁油吸油量は195mL/100g、結晶化度は57%であった。
【0071】
上記のようにして得たポリアミド6多孔質粉末1gと酸化亜鉛微粉末0.5gとを実施例1と同様に混合して、粉末混合物を製造した。得られた粉末混合物の粒子形態を、走査型電子顕微鏡と透過型電子顕微鏡とを用いて観察したところ、粉末混合物の粒子は、ポリアミド6多孔質粒子の表面及び細孔内に、多数の酸化亜鉛微粒子が担持されてなる酸化亜鉛担持ポリアミド多孔質粒子であることが確認された。
得られた粉末混合物の酸化亜鉛含有量、BET比表面積、平均細孔径、視覚反射率を前記の方法により測定した結果、酸化亜鉛含有量は16.7質量%、BET比表面積は18
.2m
2/g、平均細孔径は0.092μm、視覚反射率は35.14%(反射角:0度
)、37.20%(反射角:20度)及び40.79%(反射角:45度)であった。
【0072】
[実施例5]
実施例1にて製造したポリアミド6多孔質粉末1gと、酸化亜鉛微粉末(平均一次粒子径:0.010μm)0.5gとをガラス製サンプル瓶に入れ、小型シェーカーを用いて、実施例1と同様にしてポリアミド6多孔質粉末と酸化亜鉛微粉末とを混合した。得られた粉末混合物1.5gを容量20mLの試料瓶に入れ、次いで該試料瓶にオレイン酸2.2gを加えた後、スターラーチップ(直径:15mm)を投入して、該スターラーチップを数100rpmの回転速度にて回転させ、粉末混合物とオレイン酸とを混合撹拌したところ、オレイン酸と酸化亜鉛との金属石けん化により固体化が起こり、スターラーチップの回転開始後約2分でスターラーチップが回転しなくなり、ポリアミド多孔質粒子に酸化亜鉛微粒子を担持させた酸化亜鉛担持ポリアミド多孔質粒子は、オレイン酸と酸化亜鉛とを金属石けん化させる効果が高いことが確認された。
【0073】
[比較例1]
市販の非多孔質球状ポリアミド粉末1gと、酸化亜鉛微粉末(平均一次粒子径:0.010μm)0.5gとをガラス製サンプル瓶に入れ、小型シェーカーを用いて、実施例1と同様にして、非多孔質球状ポリアミド6粉末と酸化亜鉛微粉末とを混合した。得られた粉末混合物1.5gを容量20mLの試料瓶に入れ、次いで実施例2と同様に該試料瓶にオレイン酸2.2gを加えた後、スターラーチップを投入し、該スターラーチップを数100rpmの回転速度にて回転させ、粉末混合物とオレイン酸とを混合撹拌したところ、オレイン酸の酸化亜鉛による金属石けん化による固体化により、スターラーチップが回転しなくなるまでスターラーチップの回転開始後約13分30秒を要した。
【0074】
[実施例6]
実施例1で製造した酸化亜鉛担持ポリアミド多孔質粒子からなる粉末6質量部に、下記のA相〜F相の材料を加え、さらに水を加えて全体量を100質量部とした後、均一に混ぜ合わせて、ファウンデーションクリームを調製した。得られたファウンデーションクリームを肌表面に塗布して、ファウンデーションクリームの塗布面に光を照射したところ、肌表面での光異常散乱(てかり)は見られなかった。
A相:シクロメチコーン22質量部とセチルジメチコーン0.2質量部とからなる混合物B相:マイカ0.1質量部、シリカ1質量部、チタン7.5質量部及び酸化亜鉛2.0質量部からなる混合物
C相:酸化鉄製黒色顔料0.17質量部、酸化鉄製赤色顔料0.52質量部及び酸化鉄製黄色顔料1.82質量部からなる混合物
D相:トリヒドロキシステアリン0.3質量部とシクロメチコーン1.0質量部とからなる混合物
E相:プロピルパラベン0.75質量部
F相:グリセリン8.0質量部、ポリビニルピロリドン0.5質量部、塩化ナトリウム2.0質量部、デヒドロ酢酸ナトリウム0.3質量部、フェノキシエタノール0.25質量部及びEDTA四ナトリウム1.0質量部からなる混合物