【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、上記目的を実現するために、請求項1に記載の発明では、被粉砕物と粉砕メディアとの衝撃力により微粉砕する粉砕機に使用する粉砕メディアであって、平均粒径が0.2〜10.0mmであり、かつ硬度がビッカース硬さで390〜700である鉄系材料からなり、前記鉄系材料は、炭素を0.80〜1.20質量%、珪素を0.4質量%以上、マンガンを0.35〜1.20質量%、アルミニウムを0.04〜1.20質量%、リンを0.05質量%以下、硫黄を0.05質量%以下、を含有し、残部が鉄及び不可避不純物とからな
る、という技術的手段を用いる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、粉砕メディアは、平均粒径が0.2〜3.0mmの略球状に形成されている、という技術的手段を用いる。
【0009】
請求項1及び請求項2に記載の発明によれば、粉砕メディアの形状、硬度を適切に設定することにより、被粉砕物と粉砕メディアの接触回数を増加させて効率よく微粉砕を行うことができ、長寿命である鉱物等の微粉砕に好適に用いることができる粉砕メディアを提供することができる。
ここで「鉄系材料」とは、Feを主成分(50%以上含有)とするものだけでなく、Feと合わせてNi等の鉄族元素が主成分とするものも含む概念である。また、「略球状」とは真球状だけではなく外観形状がほぼ球状であることを示し、扁平状、楕円球状等を除く概念である。以下、明細書中の「球状体」も同様である。
鉄系材料は、アルミニウムを0.04〜1.20質量%含有しているので、脱酸効果により、鉄系材料を球状に造粒しやすく、空隙率を低減することができる
。
【0011】
請求項
3に記載の発明では、請求項
1または請求項2に記載の粉砕メディアにおいて、前記鉄系材料は、炭素を0.85〜1.15質量%、珪素を0.60〜1.00質量%、マンガンを0.60〜0.95質量%、リンを0.05質量%以下、硫黄を0.05質量%以下、を含有し、残部が鉄及び不可避不純物とからなる、という技術的手段を用いる。
【0012】
本発明の粉砕メディアを構成する鉄系材料は、請求項
1に記載の組成、好ましくは請求項
3に記載の組成とすることで、粉砕時の損耗が少なく、かつ粉砕効率が高い粉砕メディアを得ることができる。
【0015】
請求項
4に記載の発明では、請求項
1ないし請求項
3のいずれか1つに記載の粉砕メディアにおいて、前記鉄系材料は、更にクロムを0.1〜1.2質量%含む、という技術的手段を用いる。
【0016】
請求項
4に記載の発明によると、焼入れ性を向上させることができる。
【0021】
請求項
5に記載の発明では、請求項1ないし請求項
4のいずれか1つに記載の粉砕メディアにおいて、真比重が6.5g/cm
3以上である、という技術的手段を用いる。
【0022】
請求項
5に記載の発明のように、粉砕メディアの真比重が6.5g/cm
3以上であるように構成すると、粉砕に必要な十分な衝突エネルギーを生じさせることができる。また、比重が高く、内部欠陥等が少ないため、長寿命の粉砕メディアとすることができる。
【0023】
請求項
6に記載の発明では、粉砕方法であって、請求項1ないし請求項
5のいずれか1つに記載の粉砕メディアを当該粉砕メディアより外形寸法が大きい大径メディアとあらかじめ設定された混合比で混合した混合メディアを用いて前記粉砕機により被粉砕物を粉砕する、という技術的手段を用いる。
【0024】
請求項
6に記載の発明のような混合メディアを用いると、大径メディアは寸法が大きな被粉砕物に作用し、粉砕力が大きいので粉砕メディアが粉砕可能な寸法まで迅速に荒粉砕を行うことができる。粉砕メディアは寸法が小さな被粉砕物に作用し、大径メディアよりも寸法が小さいため前記粉砕機への充填量を多くすることができ、被粉砕物と粉砕メディアの接触回数が増えるため効率よく微粉砕を行うことができる。これにより、鉱物等の微粉砕を迅速に行うことができる。
【0025】
請求項
7に記載の発明では、請求項
6に記載の粉砕方法において、前記大径メディアは、平均粒径が10〜30mmである、という技術的手段を用いる。
【0026】
請求項
7に記載の発明のように大径メディアの平均粒径を設定することにより、十分な粉砕力を付与し粉砕時間を短縮することができるとともに、大径メディアによって被粉砕物を粉砕メディアで微粉砕を適切に行うことができる寸法まで粉砕することができる。
【0027】
請求項
8に記載の発明では、請求項
6または請求項
7に記載の粉砕方法において、前記混合メディアにおける粉砕メディアの混合比は、容積比で15〜25%である、という技術的手段を用いる。
【0028】
請求項
8に記載の発明のように混合メディアにおける粉砕メディアの混合比を設定することにより、粒度分布がシャープな粉砕物が得られるとともに、粉砕時間を短縮することができる。
【0029】
請求項
9に記載の発明では、請求項
6ないし請求項
8のいずれか1つに記載の粉砕方法において、前記粉砕機は回転攪拌型粉砕機である、という技術的手段を用いる。
【0030】
回転攪拌型粉砕機は、円筒形の粉砕機本体内にモータ等の回転手段に連結された回転媒体(粉砕羽根や粉砕盤、等)を備えた粉砕機である。前記粉砕機本体内に粉砕メディアを投入し、回転媒体を高速で回転させることで前記粉砕メディアを該粉砕機本体内で激しく攪拌させると共に、該粉砕機本体内に投入された被粉砕物を該粉砕メディアとが接触することで粉砕が行われる。粉砕された被粉砕物は連続的に該粉砕機本体内より排出される。このような粉砕機は粉砕効率は高いが、微粉砕を行うためには被粉砕物の滞留時間を長くする必要がある。滞留時間を長くするには粉砕機が大型化する必要がある。請求項
9に記載の発明によって、装置を大型化することがなく、かつ粉砕効率のよい粉砕方法を提供することができる。
また、請求項9に記載の発明は、請求項10に記載の発明のように石灰石の粉砕に好適に適用することができる。
【0031】
請求項11に記載の発明では、炭素を0.80〜1.20質量%、珪素を0.4質量%以上、マンガンを0.35〜1.20質量%、アルミニウムを0.04〜1.20質量%、リンを0.05質量%以下、硫黄を0.05質量%以下、を含有し、残部が鉄及び不可避不純物とからなるように秤量した鉄系材料の原料を溶融する溶融工程と、溶融した前記原料を水アトマイズ法またはディスクアトマイズ法により造粒し造粒物を製造する造粒工程と、を備え、平均粒径が0.2〜10.0mmであり、硬度がビッカース硬さで390〜700である鉄系材料からなる粉砕メディアを製造する、という技術的手段を用いる。
水アトマイズ法またはディスクアトマイズ法により造粒して粉砕メディアを製造すると、粒径が0.2〜3.0mmの造粒物については、概ね球状であるため、球状にするための加工が不要である。これにより、安価に球状の粉砕メディアを製造することができる。
粒径が3.0mm以上の造粒物には、扁平状、楕円球状、涙形状、大径粒子の周りに小径粒子が付着した形状、等球状以外の形状が含まれるが、この粒径の粉砕メディアは比較的粒径が大きな
被粉砕物の粉砕に用いるため、球状以外のメディアが混在していてもよい。
以上より、粉砕メディアを水アトマイズ法またはディスクアトマイズ法によって製造することにより、比較的粒径が小さな被粉砕物(例えば10mm未満)を粉砕するのに適した粉砕メディアと、比較的粒径が大きな被粉砕物(例えば10〜20mm)を粉砕するのに適した粉砕メディアと、をそれぞれ製造することができる。
また、請求項12に記載の発明では、請求項11に記載の粉砕メディアの製造方法において、前記造粒工程の後に、焼入れ及び焼戻しを施す、という技術的手段を用いる。水アトマイズ法またはディスクアトマイズ法によって造粒した後、焼入れ及び焼戻しを行うことで、造粒物の硬度を所定の値に調整することができる。