特許第5896321号(P5896321)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5896321業務用ガスレンジのパイロットガスバーナー用補助器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5896321
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】業務用ガスレンジのパイロットガスバーナー用補助器具
(51)【国際特許分類】
   F23Q 9/00 20060101AFI20160317BHJP
   F23D 14/48 20060101ALI20160317BHJP
【FI】
   F23Q9/00 F
   F23D14/48 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-88753(P2015-88753)
(22)【出願日】2015年4月8日
【審査請求日】2015年6月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515112399
【氏名又は名称】松本 慶子
(73)【特許権者】
【識別番号】515112702
【氏名又は名称】松本 浩
(72)【発明者】
【氏名】松本 慶子
(72)【発明者】
【氏名】松本 浩
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3000256(JP,U)
【文献】 実開平04−095017(JP,U)
【文献】 特開2014−001918(JP,A)
【文献】 特開平07−286706(JP,A)
【文献】 特開昭60−057115(JP,A)
【文献】 特開平09−303726(JP,A)
【文献】 特開2012−193898(JP,A)
【文献】 特開平08−075126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/00−18
F23D 14/26−84
F23Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
業務用ガスレンジに付設されているパイロットガスバーナーに着脱可能に装着するための接続部と、パイロットガスバーナー未使用時にパイロットガスバーナーの種火吹き出し口の先端開口部から油煙、粉塵等が侵入することを防止するために種火吹き出し口の先端開口部の前方に設置された遮蔽部と、種火吹き出し口の先端開口部と遮蔽部との間の設置距離を決めるためのストッパーとを備えたパイロットガスバーナー用補助器具において、前記接続部は、弾性変形して略円筒状のパイロットガスバーナーの外周部を挟み込むことにより、パイロットガスバーナーに着脱可能に装着することができることを特徴とするパイロットガスバーナー用補助器具。
【請求項2】
前記遮蔽部は、断面V字形の薄板であり、その開口率を40%から60%、開度を90度から150度、設置距離を5mmから10mm、にしたことを特徴とする請求項に記載のパイロットガスバーナー用補助器具。
【請求項3】
前記ストッパーは、パイロットガスバーナー用補助器具の略円筒部分の内側に対向して設けられた一対の凸状突起物であることを特徴とする請求項1または2に記載のパイロットガスバーナー用補助器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、業務用ガスレンジに付設されているパイロットガスバーナー未使用時に油煙や粉塵等が、パイロットガスバーナーの種火吹き出し口の先端開口部からその奥にある口径の細いガス吹き出し口の中に入り込み、油やごみとして堆積し詰まることを軽減して、パイロットガスバーナーの使用時間(寿命)を延ばすためのパイロットガスバーナー用補助器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のパイロットガスバーナーの寿命を延ばす方法としては、流動焼却システム用ガンバーナーに関するものがあり、例えば特許文献1には前方と後方に仕切板を設け、パイロット手段を単一にして管内の空間を広く確保することでパイロットガスバーナーの寿命を延ばす構造が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特開平6−213419号公報
【特許文献2】 特開2001−340231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
業務用ガスレンジにおいては、調理中に被調理物からの油煙がバーナーの燃焼面に接触しないように仕切板を設けた文献(例えば、特許文献2参照。)はあるが、パイロットガスバーナー未使用時に油煙や粉塵等が、パイロットガスバーナーの種火吹き出し口の先端開口部からその奥にある口径の細いガス吹き出し口の中に入り込み、油やごみとして堆積され、やがて徐々に口径を塞いでいき、種火の吹き出しが維持できない状態となって、業務用ガスレンジの点火が不能となるといった使用時間(寿命)の問題の改善を目的とした文献は見当たらない。
【0005】
なお、一定期間使用後にこの問題が発生して種火の吹き出し状態が悪くなったら、パイロットガスバーナーを新品に交換するか、メインバーナーに直接トーチ型ライターを用いて点火するしかないのが現状であり、交換する方法では、既存の業務用ガスレンジの一部を解体してパイロットガスバーナーを取り換えるため、専門業者に依頼する必要があり、コストと時間がかかるといった問題も生じ、直接、点火する方法では、業務用ガスレンジのメインバーナーに、使用する度にトーチ型ライターを用いて点火するという手間が掛かり非常に煩わしいという問題も生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、業務用ガスレンジに付設されているパイロットガスバーナーに着脱可能に装着するための接続部と、パイロットガスバーナー未使用時にパイロットガスバーナーの種火吹き出し口の先端開口部から油煙、粉塵等が侵入することを防止するために種火吹き出し口の先端開口部の前方に設置された遮蔽部と、種火吹き出し口の先端開口部と遮蔽部との間の設置距離を決めるためのストッパーとを備えたパイロットガスバーナー用補助器具を提案するものである。
【発明の効果】
【0007】
パイロットガスバーナー用補助器具をパイロットガスバーナーに装着することでパイロットガスバーナー未使用時に油煙や粉塵等が、パイロットガスバーナーの種火吹き出し口の先端開口部からその奥にある口径の細いガス吹き出し口の中に入り込み、油やごみとして堆積され、やがて徐々にガス吹き出し口の口径を塞いでいき、種火の吹き出しが維持できない状態となって業務用ガスレンジの点火が不能となるといった問題を改善でき、使用時間(寿命)を延ばせる。更に、油煙、粉塵等が油やごみとして遮蔽部に堆積した時には、着脱可能なので取り外して洗浄除去し、再び装着して何度でも使用することができるため、パイロットガスバーナーの交換のコストと手間が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態を示すパイロットガスバーナー用補助器具の斜視図
図2】パイロットガスバーナー
図3】本発明の実施形態を示すパイロットガスバーナー用補助器具の正面図
図4】同遮蔽部のA−A断面図
図5】同パイロットガスバーナー用補助器具の側面図
図6】同パイロットガスバーナー用補助器具の背面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、略円筒状のパイロットガスバーナーの外周部にパイロットガスバーナー用補助器具を着脱可能に装着固定できる弾性変形可能な接続部と、業務用ガスレンジ未使用時にパイロットガスバーナーの種火吹き出し口の先端開口部から油煙や粉塵等が入り込み、開口部からその奥にある口径の細いガス吹き出し口の中に入り込み、その口径を塞いだり狭めたりすることを防止するために種火吹き出し口の先端開口部の前方に設置する遮蔽部と、先端開口部と遮蔽部との間が予め設定された位置となるようにパイロットガスバーナー用補助器具の略円筒部の内側に対向して設けられたストッパーとを備えたパイロットガスバーナー用補助器具に関する。
【0010】
材料はステンレス鋼を用いたが、パイロットガスバーナー、ガスレンジのメインバーナーの両方を着火した状態でガスレンジ周辺の温度が最大約400℃となるため、その温度に耐えられる材料であれば、ステンレス鋼以外の耐熱鋼や非鉄系の耐熱材料を使用しても良い。
【実施例】
【0011】
以下、本発明のパイロットガスバーナー用補助器具1の実施例を図1から図6及び表1に基づいて説明する。
【0012】
接続部9は略円筒部分の内径7(図6参照)とその一部に設けた切欠き部2(図6参照)から成り、その接続方法は、パイロットガスバーナー用補助器具1(図1、3、5、6参照)の略円筒部分の内径7を、同じく略円筒状のパイロットガスバーナー6(図1、2参照)の外径より少し小さく作り、かつ、その一部に切欠き部2を設け、切欠き部2からパイロットガスバーナー6に押し込み、パイロットガスバーナー用補助器具1の略円筒部分を弾性変形させてパイロットガスバーナー6の外周部を挟み込むことによりパイロットガスバーナー用補助器具1を着脱可能に装着固定するものである。その他、ボルトナットやバンドによる固定など、着脱可能な接続方法を用いても良い。
【0013】
油煙、粉塵等の侵入防止のため、パイロットガスバーナー6の種火吹き出し口の先端開口部5(図2参照)の周囲はほとんどパイロットガスバーナー用補助器具1で覆われている(図1参照)が、遮蔽部3には、業務用ガスレンジ未使用時にその周辺で発生する油煙、粉塵等がパイロットガスバーナー6の種火吹き出し口の先端開口部5から入り込むことを防ぐと共に業務用ガスレンジ使用時にはメインバーナー着火に支障がないようにパイロットガスバーナー6の種火吹き出し口の先端開口部5から出てくる種火を発火させておくという、相反する二つの機能が求められているため、その開口率、開度、設置位置、断面形状が重要となる。
特に、種火吹き出し口の先端開口部5の前方に設ける遮蔽部3は種火がメインバーナー近傍に届き易くするために、その開口率(先端開口部5の口径の中心線上から遮蔽部3を通して種火吹き出し口の先端開口部5の面積を見たときに遮蔽部3に邪魔されずに見える種火吹き出し口の先端開口部5の面積を、種火吹き出し口の先端開口部5の面積で割った割合をいう。開口率(%)=100×[(先端開口部5の面積)−(遮蔽部に覆われている先端開口部5の面積)]/(先端開口部5の面積))は遮蔽の具合と種火の着きやすさから考慮すると40%から60%が好ましい。
更に、遮蔽部3の断面形状は、種火が出てくる種火吹き出し口の先端開口部5に向かい凸のV字形(図4参照)となるように平板の長手方向に折り目を入れ、かつ、その開度(種火吹き出し口の先端開口部5の口径の中心線に対して両側に等角度ずつ開いた形。例えば開度90度のときは中心線に対し45度ずつ両側に開いた扇状の形)は油煙、粉塵等の遮蔽効果も考慮すると90度から150度が良く、設置距離はパイロットガスバーナーの種火吹き出し口の先端開口部5の口径の中心線に沿って同・開口部5から5mmから10mmの範囲にあれば、メインバーナーの着火及び油煙等の遮蔽効果に問題はない。なお、遮蔽部3は、薄板の代わりに複数の短冊状の幅の短い薄板もしくは金網やパンチメタルを用いても良く、その厚さは薄い程良い。例えば0.5mm〜1.0mmであれば安価で入手も容易であり加工し易く好適である。
なお、遮蔽部3の付近以外からの油煙、粉塵等の侵入を防止するために、側面カバー部8(図1参照)も種火吹き出し口の先端開口部5の周辺を覆っている。
【0014】
ストッパー4(図1、5、6参照)とは、パイロットガスバーナー用補助器具1の略円筒部分の内径7側、すなわち略円筒部分の内側に対向して設けられた一組(2個)の凸状の突起物のことであり、プレス加工等により高さ1〜2mm程に作られ、パイロットガスバーナー用補助器具1をパイロットガスバーナー6に装着した後、パイロットガスバーナー用補助器具1の設置位置を調整する時にパイロットガスバーナー6の種火吹き出し口の先端開口部5と接し、それ以上移動できないようにするためのもので、予め設定された遮蔽部3と種火吹き出し口の先端開口部5との間の距離を確保するためのものである。
【0015】
次に、表1の実験結果について述べる。日頃の業務経験より、パイロットガスバーナー用補助器具1を装着していない状態で、繁盛して常時業務用ガスレンジを稼動させている店舗では6ヶ月ほどでパイロットガスバーナー6が使用不能になる例が見られ、そこまで繁盛してはいないが毎日業務用ガスレンジを稼動させている店舗でも12ヶ月ほどで使用不能になる例が多く見られることから、本実験は12ヶ月間行い、表1は12ヶ月使用後のメインバーナーの着火具合の状態をみた実験結果である。遮蔽部3の開口率と、遮蔽部3の断面形状の開度と、遮蔽部3と種火吹き出し口の先端開口部5までの設置距離との関係をメインバーナーの着火具合の違いにより、まとめてあり、種火の勢いは変わらずメインバーナーへの着火も良好に行えた状態を「◎」、種火の勢いは弱まっているがメインバーナーへの着火ができた状態を「○」、種火が点滅しメインバーナーへの着火ができなかった状態を「△」、種火が点火せずメインバーナーへの点火ができなかった状態を「×」で表示している。なお、本実験は新品の業務用ガスレンジを使用し、パイロットガスバーナーとメインバーナーのガスは常に全開にした状態で12ヶ月間実験を行った。
【0016】
遮蔽部3の開口率を30%〜70%、開度を80度〜160度、設置距離を3mm〜15mmとして実験を行った結果を表1に示す。12ヶ月使用後であっても開口率40%〜60%、開度90度〜150度、設置距離5mm〜10mmに設定した場合、メインバーナーに安定的に着火することが分かった。また、上記以外に設定した場合は、それぞれ表1で示したごとく不安定な結果となった。したがって、表1における「◎」の範囲であれば未点火時における油煙、粉塵等の侵入によるパイロットガスバーナーの種火吹き出し口の目詰まりを軽減して寿命を延ばすことが可能である。
【0017】
【表1】
【符号の説明】
【0018】
1 パイロットガスバーナー用補助器具
2 切欠き部
3 遮蔽部
4 ストッパー
5 種火吹き出し口の先端開口部
6 パイロットガスバーナー
7 略円筒部分の内径
8 側面カバー
9 接続部
【要約】
【課題】 従来の業務用ガスレンジのパイロットガスバーナーは、未使用時に油煙や粉塵等がパイロットガスバーナーの種火吹き出し口の先端開口部からその奥にある口径の細いガス吹き出し口の中に入り込み、油やごみとして堆積してガス吹き出し口が徐々に塞がり、やがては種火の吹き出しが維持できなくなって、点火が不能となり業務上の使用に支障をきたしていた。
【解決手段】 パイロットガスバーナーに着脱可能に装着するための接続部と、パイロットガスバーナー未使用時にパイロットガスバーナーの種火吹き出し口の先端開口部から油煙、粉塵等が侵入することを防止するために種火吹き出し口の先端開口部の前方に設置された遮蔽部と、種火吹き出し口の先端開口部と遮蔽部との間の設置距離を決めるためのストッパーとを備えたパイロットガスバーナー用補助器具を提案するものである。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6