(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5896331
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】冷房補助装置及び冷房補助方法
(51)【国際特許分類】
F24F 1/42 20110101AFI20160317BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20160317BHJP
F25B 39/04 20060101ALI20160317BHJP
【FI】
F24F1/42
F25B1/00 381G
F25B39/04 N
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-180833(P2014-180833)
(22)【出願日】2014年9月5日
【審査請求日】2015年1月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514226796
【氏名又は名称】クリタ・ケミカル関東株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514226785
【氏名又は名称】セイコー産業東京株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504313228
【氏名又は名称】ダイヤアクアソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089886
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 雅雄
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(72)【発明者】
【氏名】上野 賢二
(72)【発明者】
【氏名】斉田 眞吾
(72)【発明者】
【氏名】鳫 千佳男
【審査官】
久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−126334(JP,A)
【文献】
特開昭55−134269(JP,A)
【文献】
特開2014−122728(JP,A)
【文献】
特開2007−271200(JP,A)
【文献】
特表2013−536398(JP,A)
【文献】
特開2012−047390(JP,A)
【文献】
特開2010−243144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/42
F25B 1/00
F25B 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷房装置用の室外機の熱交換器を介して前記室外機周辺の空気と熱交換することにより冷媒を凝縮する際に、前記熱交換器の放熱性を高めるために用いる冷房補助装置において、
給水源より供給された水から逆浸透膜を利用して逆浸透膜処理水を生成する逆浸透膜処理水生成手段と、噴霧口を前記室外機周辺の空気に向けた一流体ノズルからなる微小口径の噴霧ノズルと、該噴霧ノズルに前記逆浸透膜処理水生成手段で生成された逆浸透膜処理水を高圧で供給する処理水供給手段とを備え、
該処理水供給手段は、前記逆浸透膜処理水を一時的に貯留する加圧タンクと、該加圧タンクに貯留された逆浸透膜処理水を前記噴霧ノズルに供給するダイヤフラムポンプからなる移送手段とを備え、
前記噴霧ノズルより室外機周辺の空気に向けて前記逆浸透膜処理水が所望の粒径で微細ミスト状に噴霧されるようにしたことを特徴とする冷房補助装置。
【請求項2】
前記処理水供給手段は、前記逆浸透膜処理水の前記噴射ノズルへの供給を制御する制御部を備え、前記噴射ノズルに所望の間隔で間欠的に噴霧させるようにした請求項1に記載の冷房補助装置。
【請求項3】
前記噴霧ノズルは、前記室外機の外面に噴霧口を外側に向けて固定された請求項1又は2に記載の冷房補助装置。
【請求項4】
冷房装置用の室外機の熱交換器を介して前記室外機周辺の空気と熱交換することにより冷媒を凝縮する際に、熱交換器周辺の空気を冷却することにより前記熱交換器の放熱性を高める冷房補助方法であって、
給水源より供給された水から逆浸透膜を利用して逆浸透膜処理水を生成し、加圧タンクに一時的に貯留した前記逆浸透膜処理水をダイヤフラムポンプからなる移送手段によって一流体ノズルからなる微小口径の噴霧ノズルに高圧で供給し、前記逆浸透膜処理水を前記室外機周辺の空気に向けた前記噴霧ノズルから所望の粒径で微細ミスト状に噴霧することを特徴とする冷房補助方法。
【請求項5】
前記逆浸透膜処理水を所望の間隔で間欠的に噴霧する請求項4に記載の冷房補助方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外に設置された冷房装置用室外機の熱交換器による放熱特性を向上させ、冷房装置全体の省力化を可能にする冷房補助装置及び冷房補助方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷房装置は、屋外に室外機を備え、冷媒がこの室外機の熱交換器を通して放熱し、凝縮するようになっており、その為、熱交換器による放熱特性が冷房装置全体の運転効率に大きく影響する。
【0003】
特に、都市部のオフィスビル等では、限られた屋上スペースに多数の室外機が密集した状態で設置され、それらが日差しに晒されることで各室外機の熱交換器自体の温度及び室外機周辺空気温度の上昇を招くことから、熱交換器の放熱特性の低下が懸念されていた。
【0004】
そこで、従来では、室外機の熱交換器の放熱特性向上を図るべく室外機の熱交換器を冷却する冷房補助装置が使用されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
この冷房補助装置は、熱交換器に向けて散水し、熱交換器自体を冷却することにより放熱特性を高め、冷房装置全体の運転効率向上を図っている。
【0006】
しかしながら、この種の冷房補助装置では、主に水道水を熱交換器に向けて直接散水するため、水道水に含まれるカルシウム、マグネシウム、シリカ等の成分からなるスケール(水垢)が熱交換器に付着し、それによって熱交換器の性能が損なわれる虞があり、また、水道水に含まれる塩素成分等により熱交換器の腐食を招く虞もあった。
【0007】
一方、この種の冷房補助装置では、散水量や散水のタイミングを厳密に制御することにより、スケールの付着や腐食の軽減を図る技術(例えば、特許文献2を参照)が提案されているが、このような従来の技術では、装置が複雑化し、装置が高価になる上、スケールの付着や腐食の問題の根本的な改善には至っていなかった。
【0008】
そこで、この種の冷房補助装置にあっては、給水源より供給された水から逆浸透膜処理により逆浸透膜処理水(以下、RO水という)を生成する逆浸透膜処理水生成手段を備え、水道水に換えて逆浸透膜処理を施したRO水を熱交換器に向けて散布するようにしたものが開発されている(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−065409号公報
【特許文献2】特開2001−317821号公報
【特許文献3】特開2010−243144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、RO水を直接熱交換器に散布し、熱交換器を冷却する構造であることから、熱交換器にRO水を万遍無く散布する必要、即ち、広い散布対象面積に対し多量のRO水を散布する必要がある。
【0011】
よって、このRO水を利用した冷房補助装置では、多量のRO水を生成するために大型の逆浸透膜処理水生成手段を必要とし、その分、装置の導入コスト及び運転コストが嵩むという問題があった。
【0012】
また、この種の熱交換器に直接散水し、熱交換器を冷却する冷房補助装置では、散布量が多い為、散布したRO水が蒸発又は消散せずに残存し、非効率的であるとともに、余剰RO水が室外機周辺の床面や室外機内を水浸しにする虞があり、その為、従来では、余剰RO水を処理するための手段を必要とし、その分、装置の導入コスト及び運転コストが嵩むという問題があった。
【0013】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、熱交換器のスケール付着や腐食を防止しつつ、放熱特性の向上を図れ、且つ、装置導入費及び運転費用が安価な冷房補助装置及び冷房補助方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明の特徴は冷房装置用の室外機の熱交換器を介して前記室外機周辺の空気と熱交換することにより冷媒を凝縮する際に、前記熱交換器の放熱性を高めるために用いる冷房補助装置において、給水源より供給された水から逆浸透膜を利用して逆浸透膜処理水を生成する逆浸透膜処理水生成手段と、噴霧口を前記室外機周辺の空気に向けた一流体ノズルからなる微小口径の噴霧ノズルと、該噴霧ノズルに前記逆浸透膜処理水生成手段で生成された逆浸透膜処理水を高圧で供給する処理水供給手段とを備え、該処理水供給手段は、前記逆浸透膜処理水を一時的に貯留する
加圧タンクと、
該加圧タンクに貯留された逆浸透膜処理水を前記噴霧ノズルに供給するダイヤフラムポンプからなる移送手段とを備え、前記噴霧ノズルより室外機周辺の空気に向けて前記逆浸透膜処理水が所望の粒径で微細ミスト状に噴霧されるようにした冷房補助装置にある。
【0015】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記処理水供給手段は、前記逆浸透膜処理水の前記噴射ノズルへの供給を制御する制御部を備え、前記噴射ノズルに所望の間隔で間欠的に噴霧させるようにしたことにある。
【0016】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記噴霧ノズルは、前記室外機の外面に噴霧口を外側に向けて固定されたことにある。
【0017】
請求項4に記載の発明の特徴は、冷房装置用の室外機の熱交換器を介して前記室外機周辺の空気と熱交換することにより冷媒を凝縮する際に、熱交換器周辺の空気を冷却することにより前記熱交換器の放熱性を高める冷房補助方法であって、給水源より供給された水から逆浸透膜を利用して逆浸透膜処理水を生成し、
加圧タンクに一時的に貯留した前記逆浸透膜処理水をダイヤフラムポンプからなる移送手段によって一流体ノズルからなる微小口径の噴霧ノズルに高圧で供給し、前記逆浸透膜処理水を前記室外機周辺の空気に向けた前記噴霧ノズルから所望の粒径で微細ミスト状に噴霧する冷房補助方法にある。
【0018】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項4の構成に加え、前記逆浸透膜処理水を所望の間隔で間欠的に噴霧することにある。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る冷房補助装置は、上述したように、冷房装置用の室外機の熱交換器を介して前記室外機周辺の空気と熱交換することにより冷媒を凝縮する際に、前記熱交換器の放熱性を高めるために用いる冷房補助装置において、給水源より供給された水から逆浸透膜を利用して逆浸透膜処理水を生成する逆浸透膜処理水生成手段と、噴霧口を前記室外機周辺の空気に向けた一流体ノズルからなる微小口径の噴霧ノズルと、該噴霧ノズルに前記逆浸透膜処理水生成手段で生成された逆浸透膜処理水を高圧で供給する処理水供給手段とを備え、該処理水供給手段は、前記逆浸透膜処理水を一時的に貯留する
加圧タンクと、
該加圧タンクに貯留された逆浸透膜処理水を前記噴霧ノズルに供給するダイヤフラムポンプからなる移送手段とを備え、前記噴霧ノズルより室外機周辺の空気に向けて前記逆浸透膜処理水が所望の粒径で微細ミスト状に噴霧されるようにしたことにより、RO水を使用するので熱交換器へのスケールの付着や腐食を防げ、且つ、噴霧ノズルの目詰まりも防止できる。更には、少ない水量で熱交換器の放熱特性の向上を図れるので、装置の導入費及びランニングコストを抑えることができる。
【0020】
また、本発明において、前記処理水供給手段は、前記逆浸透膜処理水の前記噴射ノズルへの供給を制御する制御部を備え、前記噴射ノズルに所望の間隔で間欠的に噴霧させるようにしたことにより、使用水量を抑え、ランニングコストの低減を図ることができる。
【0021】
更に、本発明において、前記噴霧ノズルは、前記室外機の外面に噴霧口を外側に向けて固定されたことにより、室外機の周辺空気に向けて好適にRO水ミストを噴霧できる。
【0022】
本発明において、冷房装置用の室外機の熱交換器を介して前記室外機周辺の空気と熱交換することにより冷媒を凝縮する際に、熱交換器周辺の空気を冷却することにより前記熱交換器の放熱性を高める冷房補助方法であって、給水源より供給された水から逆浸透膜を利用して逆浸透膜処理水を生成し、
加圧タンクに一時的に貯留した前記逆浸透膜処理水をダイヤフラムポンプからなる移送手段によって一流体ノズルからなる微小口径の噴霧ノズルに高圧で供給し、前記逆浸透膜処理水を前記室外機周辺の空気に向けた前記噴霧ノズルから所望の粒径で微細ミスト状に噴霧することにより、RO水を使用するので熱交換器へのスケールの付着や腐食を防げ、且つ、噴霧ノズルの目詰まりも防止できる。更には、少ない水量で熱交換器の放熱特性の向上を図ることができる。
【0023】
また、本発明において、前記逆浸透膜処理水を所望の間隔で間欠的に噴霧することにより、使用水量を抑えランニングコストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る冷房補助装置の使用態様を示す側面図である。
【
図2】
図1中の逆浸透膜処理水生成手段の概要を示すブロック図である。
【
図3】同上の処理水供給手段の概要を示すブロック図である。
【
図4】同上の噴霧ノズルの使用態様の一例を示す平面図である。
【
図5】本発明装置及び本発明方法の冷房補助効果を検証する際の各噴霧ノズルの設置位置を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の実施の態様を図面に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号1は冷房装置用の室外機、符号2は冷房補助装置である。
【0026】
室外機1は、内部に冷媒の循環路(図示せず)が通る箱状の筐体11と、循環路上に設けられた熱交換器12,12とを備え、熱交換器12,12を介して室外機1周辺の空気と熱交換することにより冷媒を凝縮するようになっている。
【0027】
また、この室外機1には、内部にファン13等の通風手段を備え、室外機1外より空気を取り込み、熱交換器12,12との熱交換を経て外部に排気されるようになっている。
【0028】
冷房補助装置2は、冷媒が室外機1の熱交換器12,12を介して室外機1周辺の空気と熱交換する際、熱交換器12,12の放熱特性を高めるために用いられる。
【0029】
この冷房補助装置2は、給水源3より供給された水から逆浸透膜を利用して逆浸透膜処理水(以下、RO水という)を生成する逆浸透膜処理水生成手段4と、噴霧口を室外機1周辺の空気に向けた複数の噴霧ノズル5,5...と、各噴霧ノズル5,5...に逆浸透膜処理水生成手段4で生成されたRO水を所望の水圧で供給する処理水供給手段6とを備え、給水源3、逆浸透膜処理水生成手段4、処理水供給手段6を順次経ることにより噴霧ノズル5,5...より室外機1の周辺の空気に向けてRO水が所望の粒径で微細ミスト状に噴霧できるようになっている。
【0030】
給水源3は、特に限定されないが、例えば、水道水の取水口から取水するようにしてもよく、屋上に設置された貯水タンクから取水するようにしてもよい。
【0031】
逆浸透膜処理水生成手段4は、
図2に示すように、給水源3より供給された水をろ過する前処理部41と、逆浸透膜を有する逆浸透膜モジュール42,42...と、前処理部41と逆浸透膜モジュール42,42...との間に介在させた移送手段43と、移送手段43の動作を制御する制御部44とを備え、給水源3より供給された水道水等の水が、各部を連結する管路451〜455を通して前処理部41及び逆浸透膜モジュール42,42...を順次経ることによりRO水が生成され、そのRO水が処理水供給口47より処理水供給手段6に供給されるようになっている。
【0032】
尚、この逆浸透膜処理水生成手段4は、箱状の筐体46を備え、この筐体46内に前処理部41、逆浸透膜モジュール42,42...及び移送手段43を含む各部が収容されてユニット化されている。
【0033】
前処理部41は、セディメントフィルタ411や活性炭フィルタ412,413等の複数種のフィルタを備え、この各種フィルタ411〜413を通すことにより給水源3から取り込んだ水から錆や塵等の微細な不純物を除去するとともに、脱色、脱臭するようになっている。
【0034】
前処理部41の終端に連結された管路452は、他端が分岐して移送手段43に接続され、移送手段43の動作により前処理された水が逆浸透膜モジュール42,42...に移送されるとともに、給水源3より水を前処理部41に取り込むようになっている。
【0035】
移送手段43には、複数のダイヤフラムポンプ431,431...を使用し、各ダイヤフラムポンプ431の動作を制御部44で制御し、所望の流量及び水圧で水を移送できるようになっている。
【0036】
逆浸透膜モジュール42,42...は、移送手段43を介して前処理部41から移送された水を通すことにより、逆浸透膜を利用して逆浸透膜を通過した水(逆浸透膜処理水)と、不純物が高濃度で溶解した濃縮水とに分離され、逆浸透膜処理水(RO水)からは、塩分、金属イオン、溶解シリカ等の不純物の全てが実質的に除去される。
【0037】
尚、分離されたRO水と濃縮水とは、移送手段43の動作に連動して処理水供給口47と濃縮排水口48とにそれぞれ管路454,455を通して移送され、生成されたRO水は処理水供給手段6に供給され、濃縮水は排水処理されるようになっている。
【0038】
処理水供給口47と逆浸透膜モジュール42,42...とを結ぶ管路454には、高圧スイッチ491、流量計492、水質計493等の各種計測器が介在され、各計測器491〜493によって計測されたデータが制御部44に送られ、制御部44はこれら計測データに基づき移送手段43、即ち、ダイヤフラムポンプ431,431...を制御するようになっている。尚、図中符号494、495は、管路451〜455を流れる水の水圧を計測する圧力計である。
【0039】
尚、図中符号7は逆浸透膜処理水生成手段4と処理水供給手段6とを連結する連通ホースであって、連通ホース7の一端が継手を介して処理水供給口47に連結され、他端が処理水供給手段6の導水口61に連結する。
【0040】
処理水供給手段6は、
図3に示すように、RO水を一時的に貯留する貯水部62と、貯水部62とノズル側接続口68との間に介在させた移送手段63と、移送手段63の動作を制御する制御部64とを備え、各部が管路651〜655により連結され、導水口61より導入されたRO水を貯水部62で一時的に貯留し、それを給水ホース8を通して所望の水圧で各噴霧ノズル5,5...に供給できるようになっている。
【0041】
尚、この処理水供給手段6は、箱状の筐体66を備え、この筐体66内に貯水部62、移送手段63及び制御部64を含む各部が収容されてユニット化されている。
【0042】
また、この処理水供給手段6には、室外機1周辺の温度を計測する温度計671、湿度等を計測する湿度計672等からなる雰囲気計測手段67を備え、雰囲気計測手段67から送られた計測データに基づき制御部64は移送手段63を制御するようになっている。
【0043】
貯水部62は、加圧タンク等の一定量の貯水が可能な貯水タンク621,621により構成され、貯水部62の一端が管路651を通じて導水口61に接続され、他端が管路652を通して分岐して移送手段63に接続されている。
【0044】
移送手段63は、複数のダイヤフラムポンプ631,631...により構成され、直列配置されたダイヤフラムポンプ631,631が複数系統(図中では3系統)に分岐して備えられており、各ダイヤフラムポンプ631,631...を制御部64で制御することにより、所望の流量のRO水を高圧で移送できるようになっている。
【0045】
制御部64は、CPU等からなる演算部と、動作タイミングを制御するためのタイマー部と、各ダイヤフラムポンプ631,631...に動作信号を送信するスイッチングデバイスとを備え、所望のタイミングで各ダイヤフラムポンプ631,631...を動作させることにより所望の系統を適宜選択し、所望の供給タイミングでRO水を各噴霧ノズル5,5...に供給できるようになっている。
【0046】
移送手段63より導出した各管路653〜655は、それぞれノズル側接続口68に接続され、ノズル側接続口68にそれぞれ各噴霧ノズル5,5...に接続された給水ホース8が接続されている。
【0047】
また、移送手段63とノズル側接続口68とを結ぶ各管路653〜655には、水圧調節弁691からなる水圧調整手段69が介在され、噴射ノズル5,5...に移送されるRO水を所望の水圧に調整できるようになっている。尚、図中符号692は各管路653〜655を流れるRO水の水圧を計測する圧力計である。
【0048】
噴霧ノズル5,5...は、微小口径の一流体ノズルであって、ノズル口径が0.15mm〜0.5mmのものを使用し、処理水供給手段6より所望の水圧で供給されたRO水を1.3〜48μmの所望の粒径で微細ミスト状に噴霧するようになっている。
【0049】
各噴霧ノズル5,5...の使用態様は、特に限定されないが、例えば、
図4に示すように、室外機1の外面であって、熱交換器12,12が露出した面に幅方向に間隔を置いて噴霧口を水平方向外側に向けて固定されることが好ましく、室外機1の大きさ、熱交換器12,12が露出した面の面積に応じて噴霧ノズル5,5...を上下方向に多段配置に備えるようにしてもよい。
【0050】
また、室外機1に隣接する床面上に各噴霧ノズル5,5...を支持するノズル支持体51を設置し、各噴霧ノズル5,5...の噴霧口を直接熱交換器12,12に向けないようにノズル支持体51に支持させるようにしてもよい。
【0051】
このように構成された冷房補助装置2を使用した冷房補助方法では、給水源3より供給された水から逆浸透膜処理水生成手段4で逆浸透膜を利用して逆浸透膜処理水を生成し、逆浸透膜処理水を室外機1周辺の空気に向けて所望の粒径で噴霧することにより、冷房装置用の室外機1の熱交換器12,12を介して室外機1周辺の空気と熱交換することにより冷媒を凝縮する際に、熱交換器12,12周辺の空気を冷却することにより熱交換器12,12の放熱性を高めることができる。
【0052】
即ち、本発明方法では、各噴霧ノズル5,5...より室外機1周辺の空気に向けてRO水を微細なミスト状に噴霧することにより、RO水ミストが気化し、室外機1周辺の空気から気化熱を奪うことで、室外機1周辺の空気の温度が低下し、室外機1は、その低下した周辺の空気を取り込み、熱交換器12,12との熱交換を経て外部に排気するので熱交換器12,12の放熱特性が向上する。
【0053】
その際、室外機1周辺の空気に向けてRO水を微細ミスト状に噴霧するので、熱交換器12,12に直接散水する場合に比べて、少ない水量で効率的に熱交換器12,12の放熱特性を高めることができ、噴霧されたRO水は、気化して消散するので熱交換器12,12に直接付着せず、スケールの付着及び腐食を防止することができ、床面や室外機1内に落下して水浸しにしたりすることがないので、余剰水処理のための手段も必要としない。
【0054】
従って、逆浸透膜処理水生成手段4及び処理水供給手段6の処理容量が小さくてよく、その分、装置の小型化及び低価格化を実現し、運転費用(ランニングコスト)の低減も図ることができる。
【0055】
また、噴霧にRO水を使用するので、取り込まれる室外機1周辺の空気に含有される不純物を抑制でき、熱交換器12,12に対する付着物及び腐食を防止することができ、更には、微小口径である噴霧ノズル5,5...の不純物による目詰まりを防止でき、寿命が長く管理も容易である。
【0056】
更には、RO水を所望の時間間隔で間欠的に噴霧することにより、装置の稼働時間の短縮及び噴霧するRO水の水量の低減を図ることができる。尚、RO水の噴霧間隔は、噴霧している時間及び停止している時間ともに特に限定されないが、5秒程度噴霧した後、15〜30秒停止することが好ましく、停止間隔は室外機1周辺の温度、湿度その他の諸条件に基づいて調整する。また、連続して噴霧するようにしてもよい。
【0057】
次に、本発明装置及び本発明方法による冷房補助効果について説明する。
【0058】
ここでは、上面部にファン13等の通風手段が、筐体11の外側面に熱交換器12,12がそれぞれ配置され、室外機1の外側面より周辺空気を取り込み、熱交換を経て上面より排気するようにした室外機1を使用し、噴霧ノズル5,5...の取付け位置及び角度、噴霧間隔が異なる実施例について冷房装置全体の使用電気量削減率を測定し、使用電気量削減率に基づき冷房補助効果について検証した。
【0059】
また、噴霧ノズル5,5...には、口径の異なる3種類の噴霧ノズル5,5...(それぞれ口径が0.15mm、0.3mm、0.5mm)を使用し、ノズル口径の違いによる冷房補助効果についても検証した。
【0060】
実施例1では、室外機1外側面上端(
図5(a))に二つの噴霧ノズル5,5...を水平幅方向に間隔を置いて設置し、5秒噴霧した後30秒停止する噴霧間隔を繰り返した。
【0061】
実施例2では、室外機1全高の上端より1/3程度の高さ(
図5(b))に二つの噴霧ノズル5,5...を水平幅方向に間隔を置いて設置し、5秒噴霧した後30秒停止する噴霧間隔を繰り返した。
【0062】
実施例3では、室外機1全高の上端より1/3程度の高さ(
図5(b))に二つの噴霧ノズル5,5...を幅方向に間隔を置いて設置し、5秒噴霧した後15秒停止する噴霧間隔を繰り返した。
【0063】
実施例4では、室外機1全高の上端より1/3程度及び2/3程度の高さ(
図5(c))毎に二つの噴霧ノズル5,5...を水平幅方向に間隔を置いて設置し、5秒噴霧した後30秒停止する噴霧間隔を繰り返した。
【0064】
実施例5では、室外機1全高の上端より1/3程度及び2/3程度の高さ(
図5(c))毎に二つの噴霧ノズル5,5...を水平幅方向に間隔を置いて設置し、5秒噴霧した後15秒停止する噴霧間隔を繰り返した。
以下にその結果を示す。
【0066】
このように本発明に係る冷房補助装置2及び冷房補助方法を使用することにより本冷房補助装置2を含む冷房装置全体の使用電気量が削減されることを確認した。
【0067】
特に、噴霧間隔において停止時間を短くした場合には、使用水量は多くなるが、装置全体の使用電気量が少なくなり、全体としてランニングコストの低減が図られる。
【0068】
また、ノズル口径が0.3mmの場合が最も使用電気量の削減効率が高かった。即ち、冷房補助には、噴霧されるRO水のミスト粒径が大きく影響し、ミスト粒径が小さいと風の影響で流され、逆にミスト粒径が大きいと比重で落下し易くなり周辺空気が冷却され難くなる。
【0069】
尚、上述の実施例では、逆浸透膜処理水生成手段4と、処理水供給手段6とをそれぞれ別個にユニット化した例について説明したが、逆浸透膜処理水生成手段4と、処理水供給手段6とを一体的に備えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 室外機
11 筐体
12 熱交換器
13 ファン
2 冷房補助装置
3 給水源
4 逆浸透膜処理水生成手段
41 前処理部
42 逆浸透膜モジュール
43 移送手段
44 制御部
451〜455 管路
46 筐体
47 処理水供給口
48 濃縮排水口
491 高圧スイッチ
492 流量計
493 水質計
494,495 圧力計
5 噴霧ノズル
51 ノズル支持体
6 処理水供給手段
61 導水部
62 貯水部
63 移送手段
64 制御部
651〜655 管路
66 筐体
67 雰囲気計測手段
68 ノズル側接続口
69 水圧調節手段
691 水圧調節弁
692 圧力計
7 連通ホース
8 給水ホース
【要約】
【課題】熱交換器のスケール付着や腐食を防止しつつ、放熱特性の向上を図れ、且つ、装置導入費及び運転費用が安価な冷房補助装置及び冷房補助方法の提供。
【解決手段】冷房装置用の室外機1の熱交換器12を介して室外機周辺の空気と熱交換することにより冷媒を凝縮する際に、熱交換器1の放熱性を高めるために用いる冷房補助装置2において、給水源3より供給された水から逆浸透膜を利用して逆浸透膜処理水を生成する逆浸透膜処理水生成手段4と、噴霧口を室外機1周辺の空気に向けた噴霧ノズル5,5...と、噴霧ノズル5に逆浸透膜処理水生成手段4で生成された逆浸透膜処理水を所望の水圧で供給する処理水供給手段6とを備え、噴霧ノズル5,5...より室外機1周辺の空気に向けて逆浸透膜処理水が所望の粒径で噴霧されるようにした。
【選択図】
図1