特許第5896359号(P5896359)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5896359
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】医薬製剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20160317BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20160317BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20160317BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20160317BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20160317BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20160317BHJP
【FI】
   A61K39/395 M
   A61K9/00
   A61K37/02
   A61K37/04
   A61K37/24
   A61K48/00
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-85378(P2013-85378)
(22)【出願日】2013年4月16日
(65)【公開番号】特開2014-231478(P2014-231478A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2013年4月17日
【審判番号】不服2014-21662(P2014-21662/J1)
【審判請求日】2014年10月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513095030
【氏名又は名称】安井 清忠
(74)【代理人】
【識別番号】100072213
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 一義
(72)【発明者】
【氏名】安井 清忠
【合議体】
【審判長】 内藤 伸一
【審判官】 齋藤 恵
【審判官】 新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第89/02265(WO,A1)
【文献】 特表2009−514843(JP,A)
【文献】 特開2007−271527(JP,A)
【文献】 特開2009−45140(JP,A)
【文献】 早川 行夫,生物薬品の開発の現状とトランスレーショナルリサーチへの条件,医学の歩み,2002年,Vol.200, No.7,p.539−543
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K38,39,48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1製剤成分及び第2製剤成分からなる医薬製剤であって、
前記第1製剤成分は有効成分と任意溶剤のみからなり、かつ、非臨床試験において予め安定性、有効性及び安全性が示された原薬であり、前記有効成分はタンパク質製剤成分又は核酸製剤成分の何れかであり、
前記タンパク質製剤成分は、モノクローナル抗体、アルブミン、グロブリン、ヒトエリスロポエチン又はロミプロスチムであり、
前記核酸製剤成分は、アンチセンス、siRNA、アプタマー、リボザイム又はデコイであり、
前記第2製剤成分は溶剤、安定化剤、保存剤、緩衝剤、pH調整剤、抗酸化剤、界面活性化剤から選ばれる少なくとも一種の製剤添加剤を含み、投与の直前に前記第1製剤成分と混合して用いられるものである医薬製剤。
【請求項2】
前記第1製剤成分及び第2製剤成分は滅菌処理されたものである請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
前記第2製剤成分は製剤としての安定性に寄与する製剤添加剤を含まない請求項1又は2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
前記第2製剤成分は界面活性剤を含まない請求項1〜3の何れか1項に記載の医薬製剤。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の医薬製剤の製造方法であって、
非臨床試験において予め安定性、有効性及び安全性が示された前記第1製剤成分と、前記第2製剤成分とを用意する工程と、
前記第1製剤成分と前記第2製剤成分を任意の割合で混合して製剤化し、臨床試験における安定性を評価することなく投与可能にする工程を含む医薬製剤の製造方法。
【請求項6】
前記第1製剤成分と第2製剤成分との混合の直前に、前記第1製剤成分を滅菌処理する工程を含む請求項5に記載の医薬製剤の製造方法。
【請求項7】
キット形態中に含まれる第1製剤成分と第2製剤成分とを混合して用いる治療用キットであって、
前記第1製剤成分は有効成分と任意溶剤のみからなる原薬であり、前記有効成分はタンパク質製剤成分又は核酸製剤成分の何れかであり、
前記タンパク質製剤成分は、モノクローナル抗体、アルブミン、グロブリン、ヒトエリスロポエチン又はロミプロスチムであり、
前記核酸製剤成分は、アンチセンス、siRNA、アプタマー、リボザイム又はデコイであり、
前記第2製剤成分は溶剤、安定化剤、保存剤、緩衝剤、pH調整剤、抗酸化剤、界面活性化剤から選ばれる少なくとも一種の製剤添加剤を含み、投与の直前に前記第1製剤成分と混合して用いられるものである治療用キット。
【請求項8】
前記キット形態中には、前記第2製剤成分との混合の直前に前記第1製剤成分を濾過滅菌するための濾過滅菌用フィルターが含まれている請求項7に記載の治療用キット。
【請求項9】
前記第2製剤成分は製剤としての安定性に寄与する製剤添加剤を含まない請求項7又は8に記載の治療用キット。
【請求項10】
前記第2製剤成分は界面活性剤を含まない請求項7〜9の何れか1項に記載の治療用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製剤添加剤等を含まない原薬からなる製剤成分に対し、投与直前に製剤添加剤等を含む他の製剤成分と混合して製剤化し使用する医薬製剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新薬の開発を行う場合、動物を対象とした非臨床試験、及びヒトを対象とした臨床試験が行われる。非臨床試験では原薬が動物に投与され、その安定性、有効性及び安全性が試験される。また、臨床試験では、非臨床試験を通過した原薬を製剤化し、この製剤についてヒトを対象に安定性、有効性及び安全性に関する試験が行われる。
【0003】
ここで、例えば、臨床試験における安定性試験において製剤の安定性を調べるためには、原薬の入手後、実際に製剤を製造し予備的な安定性を調べてから臨床試験用製剤を製造して行う必要がある。製剤の安定性については長期間(約3年)の保証が求められているが、予備的な安定性の確認を行ってから臨床試験用製剤を製造し臨床試験を行っていては、臨床試験の段階における開発期間は長期に及ぶことになり、結果として新薬の開発費の増大と販売機会の損失を招来する。
【0004】
しかし、予備的な安定性を確認することなく臨床試験を実施すると、商品として要求される安定性を確保できない可能性を否定できないまま臨床試験を実施しなければならない。その結果、仮に有効性及び安全性が確認されたとしても、臨床試験における安定性が示されない場合には、開発自体を中止せざるを得ない場合も生じる。従って、新薬の開発に於いては、効率的な開発と開発期間の短縮化が求められている。
【0005】
一方、製剤には、溶血性、安定性、刺激性、及び容器壁面に対する吸着防止の為に、等張化剤、pH調整剤、界面活性剤等の製剤添加剤が必要である。しかし、製剤添加剤は天然物由来物質であっても人体に対し有害な場合がある。従って、製剤添加剤は製剤に極力添加しない方が好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−271527号公報
【特許文献2】特開2009−45140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、医薬製剤の開発期間の短縮化を可能にしながらも、製剤添加剤やアジュバントの省略が図れ、かつ、安定性及び無菌性に優れた医薬製剤及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者等は、前記従来の課題を解決すべく、医薬製剤及びその製造方法について検討した。その結果、下記構成を採用することにより、前記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明に係る医薬製剤は、前記の課題を解決する為に、第1製剤成分及び第2製剤成分からなる医薬製剤であって、前記第1製剤成分は有効成分と任意の溶剤のみからなる原薬であり、前記有効成分はタンパク質製剤成分、核酸製剤成分又はワクチン製剤成分の何れかであり、前記第2製剤成分は、前記有効成分が前記タンパク質製剤成分又は核酸製剤成分である場合には、少なくとも一種の前記製剤添加剤を含み、前記有効成分が前記ワクチン製剤成分である場合には、少なくとも一種の前記アジュバント及び/又は前記製剤添加剤を含むものであり、投与の直前に前記第1製剤成分と混合して用いられるものであることを特徴とする。
【0010】
前記医薬製剤の構成に於いて、前記第1製剤成分及び第2製剤成分は滅菌処理されたものであることが好ましい。
【0011】
また前記医薬製剤の構成に於いて、前記第2製剤成分は製剤としての安定性に寄与する製剤添加剤を含まないことが好ましい。
【0012】
また前記医薬製剤の構成に於いて、前記第2製剤成分は界面活性剤を含まなくてもよい。
【0013】
本発明に係る医薬製剤の製造方法は、前記の課題を解決する為に、前記に記載の医薬製剤の製造方法であって、非臨床試験において予め安定性、有効性及び安全性が示された前記第1製剤成分と、前記第2製剤成分とを用意する工程と、前記第1製剤成分と前記第2製剤成分を任意の割合で混合して製剤化し、臨床試験における安定性を評価することなく投与可能にする工程を含むことを特徴とする。
【0014】
前記医薬製剤の製造方法の構成に於いては、前記第1製剤成分と第2製剤成分との混合の直前に、前記第1製剤成分を滅菌処理する工程を含むことが好ましい。
【0015】
本発明に係る治療用キットは、前記の課題を解決する為に、キット形態中に含まれる第1製剤成分と第2製剤成分とを混合して用いる治療用キットであって、前記第1製剤成分は有効成分と任意の溶剤のみからなる原薬であり、前記有効成分はタンパク質製剤成分、核酸製剤成分又はワクチン製剤成分の何れかであり、前記第2製剤成分は、前記有効成分が前記タンパク質製剤成分又は核酸製剤成分である場合には、少なくとも一種の前記製剤添加剤を含み、前記有効成分が前記ワクチン製剤成分である場合には、少なくとも一種の前記アジュバント及び/又は前記製剤添加剤を含むものであり、投与の直前に前記第1製剤成分と混合して用いられるものであることを特徴とする。
【0016】
前記治療用キットの構成に於いて、前記キット形態中には、前記第2製剤成分との混合の直前に前記第1製剤成分を濾過滅菌するための濾過滅菌用フィルターが含まれていることが好ましい。
【0017】
また、前記治療用キットの構成に於いて、前記第2製剤成分は製剤としての安定性に寄与する製剤添加剤を含まないことが好ましい。
【0018】
また前記治療用キットの構成に於いて、前記第2製剤成分は界面活性剤を含まなくてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、前記に説明した手段により、以下に述べるような効果を奏する。
即ち、本発明の医薬製剤は原薬からなる第1製剤成分と、製剤添加剤及び/又はアジュバントを含む第2製剤成分とからなり、投与の直前に第1製剤成分と第2製剤成分を混合して製剤化し用いるものである。そのため、臨床試験において求められている、製剤としての長期の安定性の保証を必要としない。
【0020】
また、従来、製剤添加剤に安定化剤や保存剤等を用いる場合には、その効果を確認して添加量やその種類を決定していたが、本発明に於いては製剤としての長期の安定性を保証する必要がないので、そのような製剤の安定性に寄与する製剤添加剤を用いる必要もない。その結果、安定化剤や保存剤の種類及び添加量等を決定するための製造プロセスも省略することができる。
【0021】
従って、本発明によれば、従来の医薬製剤と比較して開発期間の大幅な短縮化が図れる。また、製剤添加剤等は天然物由来物質であっても人体に対し有害な場合があるが、前記の通り、本発明は安定化剤や保存剤等の製剤としての安定性の保証の寄与する製剤添加剤を省略することができるので、人体に対する安全性の向上も図れる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の一形態について以下に説明する。
本実施の形態に係る医薬製剤は、第1製剤成分及び第2製剤成分からなる。また、本実施の形態の医薬製剤は、投与の直前に第1製剤成分と第2製剤成分を任意の割合で混合して製剤化される。
【0023】
本実施の形態の医薬製剤は、臨床試験において製剤としての有効性及び安全性が確認されたものである。但し、製剤としての安定性については、必ずしも臨床試験において確認されたものでなくてもよい。前記の通り、本実施の形態の医薬製剤は、投与直前に第1製剤成分と第2製剤成分を混合して製剤化されるものであり、臨床試験において求められている、製剤としての長期の安定性の保証を必要としないからである。
【0024】
本実施の形態の第1製剤成分は、動物を対象とした非臨床試験において、原薬としての安定性、有効性及び安全性が確認されたものをいう。ここで、原薬とは、本実施の形態の医薬製剤を製造するための原料を意味する。第1製剤成分は予め滅菌処理された原薬であることが好ましい。また、第1製剤成分は滅菌処理後の無菌状態ないし滅菌状態が、第2製剤成分との混合による製剤化の直前まで保持されていることが好ましい。従来の原薬においては非臨床試験において無菌性が保証されていなくても、それを用いて製剤化された後の臨床試験において無菌性が保証されていれば十分であった。しかし本実施の形態の医薬製剤は、その使用直前に製剤化されるという特殊な使用態様によるものであるため、原薬からなる第1製剤成分であってもその無菌性が確保されていることが好ましい。
【0025】
第1製剤成分は有効成分と任意の溶剤のみからなる。有効成分とは、薬理活性成分や生理活性成分などの有用な効果を有する成分を意味し、具体的には、タンパク質製剤成分、核酸製剤成分又はワクチン製剤成分の何れかである。有効成分がタンパク質製剤成分である場合、本実施の形態の医薬製剤はタンパク質製剤となり、有効成分が核酸製剤成分である場合は核酸製剤となる。また、第1製剤成分がワクチン製剤成分である場合、本実施の形態の医薬製剤はワクチン製剤となる。
【0026】
第1製剤成分が、有効成分としてタンパク質製剤成分又は核酸製剤成分を含む原薬からなる場合、当該第1製剤成分中には溶剤以外の製剤添加剤は含まれない。溶剤は含まれていてもよいが、当該溶剤の量が多すぎると好ましくない。溶剤の量が多いと、第1製剤成分は製剤として臨床試験における安定性等の保証が必要になる場合があるからである。さらに、第1製剤成分がタンパク質製剤成分を含む場合には、当該タンパク質が加水分解される可能性があり安定性の確保が困難になるからである。第1製剤成分が、有効成分としてワクチン製剤成分を含む原薬からなる場合、当該第1製剤成分中にはアジュバントや製剤添加剤は含まれない。但し、この場合も溶剤は含まれていてよい。
【0027】
第1製剤成分は液体、固体、半固体、粉末状の何れであってもよいが、液体の方が好ましい。固体、半固体又は粉末状であると無菌性の保証が困難になる場合がある。一方、第1製剤成分が液体であると、後述のろ過滅菌等により滅菌処理を容易に行うことができ、第1製剤成分の無菌性の確保が図れる。尚、第1製剤成分は、液体の状態にあるときに滅菌処理や異物の除去を行ったものであれば、その後、凍結により固体にして保存することも可能である。
【0028】
前記タンパク質製剤成分とは、有効成分としてのタンパク質(糖タンパク質、リポタンパク質を含む)成分を意味する。具体的には、例えば、モノクローナル抗体製剤、アルブミン製剤、グロブリン製剤、ヒトエリスロポエチン製剤、ロミプロスチム製剤等における有効成分が挙げられるが、本実施の形態はこれらに限定されるものではない。
【0029】
また、前記核酸製剤成分とは、有効成分としてDNA成分やRNA成分等を含むことを意味する。具体的には、例えば、アンチセンス製剤、siRNA(small interference RNA)製剤、アプタマー製剤、リボザイム製剤、デコイ製剤等における有効成分が挙げられるが、本実施の形態はこれらに限定されるものではない。
【0030】
本実施の形態の第1製剤成分が、有効成分としてワクチン製剤成分を含む原薬からなる場合、当該ワクチン製剤成分としては特に限定されず、例えば、生ワクチンに用いられているBCG、種痘、ポリオ、水痘、はしか、風疹、おたふくかぜ、牛疫、NDV、マレック病等の生菌や弱毒菌が挙げられる。また、不活化ワクチンに用いられている肺炎球菌莢膜ポリサッカライド、抗TNF抗体等の抗原が挙げられる。
【0031】
尚、前記ワクチンとは、ヒトの身体中に投与されて、活性な免疫を生成する、通常感染性因子または感染因子のある部分を含む抗原性懸濁液または溶液を意味する。ワクチンを構成する抗原性部分は、微生物(例えば、ウイルス又は細菌など)又は微生物から精製された天然の産生物、合成生成物または遺伝子操作したタンパク質、ペプチド、多糖または同様な産生物であり得る。また、前記不活化ワクチンとは、感染力を失わせているが免疫原性を保持させた抗原(不活化抗原)がワクチンとして使用されるものを意味し、サブユニットワクチンも含まれる。サブユニットワクチンとは、対象となる免疫不全ウイルス由来の抗原の全てを有さず、1又は複数の選択された蛋白抗原を含むワクチンをいう。当該サブユニットワクチンは、ウイルスの他の成分や感染細胞由来の成分から少なくとも部分的に切り離されている。サブユニットワクチンは免疫不全ウイルス蛋白質を少なくとも部分的に精製することにより調製することが可能である。また、組み換えによる生産又は合成により作製することも可能である。生組み換えワクチンのベースとなるウイルスや微生物としては特に限定されず、例えばポックスウイルス、アデノウイルス、サルモネラ、ポリオウイルス、マイコバクテリア、インフルエンザウイルス、又はセムリキフォレストウイルス等が挙げられる。
【0032】
本実施の形態の第2製剤成分は、第1製剤成分がタンパク質製剤成分又は核酸製剤成分を含む原薬からなる場合、少なくとも一種の前記製剤添加剤を含むものである。第2製剤成分には前記溶剤が含まれていてもよいが、有効成分は含まれない。
【0033】
前記製剤添加剤とは、本実施の形態に係る医薬製剤に含まれる成分のうち有効成分以外のものを意味する。従って、製剤添加剤は、製剤の投与量において薬理作用を示さず、無害であり、有効成分の治療効果を妨げないものであることが好ましい。また、化学的に安定で、日本薬局方の試験に支障をきたさないものであることが好ましい。
【0034】
前記製剤添加剤としては、具体的には、例えば、溶剤、溶解補助剤、安定化剤、保存剤(防腐剤)、緩衝剤、等張化剤、pH調整剤、抗酸化剤、無痛化剤、矯味剤、界面活性剤等が挙げられる。第2製剤成分に於いて、これらの製剤添加剤は必要に応じて、一種単独で、又は二種以上を併用して用いることができる。
【0035】
前記溶剤としては特に限定されず、例えば、精製水、注射用水、生理食塩水、エタノール、グリセリン、植物油等が挙げられる。これらの溶剤はタンパク質製剤成分又は核酸製剤成分の種類等に応じて適宜選択して用いられる。
【0036】
前記溶解補助剤としては特に限定されず、例えば、安息香酸ナトリウム、エチレンジアミン、ニコチン酸アミド、シクロデキストリン、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらの溶解補助剤はタンパク質製剤成分又は核酸製剤成分の種類等に応じて適宜選択して用いられる。
【0037】
前記安定化剤としては特に限定されず、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸、トコフェロール、エデト酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。これらの安定化剤はタンパク質製剤成分又は核酸製剤成分の種類等に応じて適宜選択して用いられる。
【0038】
前記保存剤としては特に限定されず、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸メチル等が挙げられる。これらの保存剤はタンパク質製剤成分又は核酸製剤成分の種類等に応じて適宜選択して用いられる。
【0039】
前記緩衝剤としては特に限定されず、例えば、酸、塩基、酸と塩基の塩又はアミノ酸などが挙げられ、これらを混合して用いてもよい。より具体的には、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウ酸、炭酸などの鉱酸;シュウ酸、クエン酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸、乳酸、酢酸、安息香酸などの有機カルボン酸;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの無機塩基;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、メグルミン、トロメタモールなどの有機塩基;塩化ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素ニナトリウム、リン酸ニ水素ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素ニカリウム、リン酸ニ水素カリウム、ホウ砂、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの鉱酸と無機塩基の塩;クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウムなどの有機カルボン酸と無機塩基の塩;メタンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸と無機塩基の塩;タウリンなどのアミノスルホン酸;アスパラギン酸、グルタミン酸などの酸性アミノ酸;グルタミン、グリシンなどの中性アミノ酸;ならびにアルギニン、リジンなどの塩基性アミノ酸などが挙げられる。これらの緩衝剤はタンパク質製剤成分又は核酸製剤成分の種類等に応じて適宜選択して用いられる。
【0040】
前記等張化剤としては特に限定されず、例えば、塩化ナトリウム、ブドウ糖、果糖、乳糖、D−マンニトール、D−ソルビトール、キシリトール、グリセリン等が挙げられる。これらの等張化剤はタンパク質製剤成分又は核酸製剤成分の種類等に応じて適宜選択して用いられる。
【0041】
前記pH調整剤としては特に限定されず、例えば、アンモニア水、塩酸、クエン酸、コハク酸、酢酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、硫酸、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等が挙げられる。これらのpH調整剤はタンパク質製剤成分又は核酸製剤成分の種類等に応じて適宜選択して用いられる。
【0042】
前記抗酸化剤としては特に限定されず、例えば、ビタミンC、ビタミンE、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、チオ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等が挙げられる。これらの抗酸化剤はタンパク質製剤成分又は核酸製剤成分の種類等に応じて適宜選択して用いられる。
【0043】
前記無痛化剤としては特に限定されず、例えば、塩酸プロカイン、リドカイン、ベンジルアルコール等が挙げられる。これらの無痛化剤はタンパク質製剤成分又は核酸製剤成分の種類等に応じて適宜選択して用いられる。
【0044】
前記矯味剤としては特に限定されず、例えば、白糖、サッカリンナトリウム、カンゾウエキス、ソルビトール、キシリトール、グリセリン等が挙げられる。これらの矯味剤はタンパク質製剤成分又は核酸製剤成分の種類等に応じて適宜選択して用いられる。
【0045】
前記界面活性剤としては特に限定されず、例えば、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ペンタ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、及びテトラ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタンのようなソルビタン脂肪酸エステル類;モノステアリン酸プロピレングリコールのようなプロピレングリコール脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(HCO−40)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50(HCO−50)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(HCO−60)、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80のような硬化ヒマシ油誘導体;モノラウリル酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)、及びイソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタンのようなポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類ポリオキシエチレンモノヤシ油脂肪酸グリセリル;グリセリンアルキルエーテル;アルキルグルコシド;ポリオキシエチレンセチルエーテルのようなポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ステアリルアミン、及びオレイルアミンのようなアミン類;ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、及びPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンのようなシリコーン系界面活性剤;リン脂質、サーファクチン、及びサポニンなどの天然界面活性剤;ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、及びステアリン酸ジエチルアミノプロピルアミドなどの脂肪酸アミドアミン;トリラウリルアミン、ジメチルステアリルアミン、及びジ−2−エチルヘキシルアミンなどのアルキルアミン;ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、及びラウリルヒドロキシスルホベタインなどのベタイン系両性界面活性剤などが挙げられる。これらの界面活性剤はタンパク質製剤成分又は核酸製剤成分の種類等に応じて適宜選択して用いられる。尚、界面活性剤は界面を持つ不安定な分散系製剤に対し安定化させるために用いられ、その他に可溶化や湿潤、消泡等の目的で添加される。さらに、容器の壁面に対する医薬製剤の吸着を防止する目的で添加される場合もある。しかし、界面活性剤はヒトに対し細胞毒性を示すものである。従って、当該界面活性剤は医薬製剤中には添加されない方が好ましい。本実施の形態に於いては、第1製剤成分と第2製剤成分を混合させて製剤化させた後の医薬製剤が、界面活性剤を添加しなくても容器内部の壁面に吸着しない場合には、当該界面活性剤の添加を省略することができる。
【0046】
前記に例示した各製剤添加剤の第2製剤成分中における添加量については特に限定されず、第1製剤成分の種類等に応じて適宜選択することができる。
【0047】
第2製剤成分は、第1製剤成分が有効成分としてワクチン製剤成分を含む原薬からなる場合、少なくとも一種の前記アジュバント及び/又は前記製剤添加剤を含む。但し、第2製剤成分には有効成分は含まれない。
【0048】
前記アジュバントとは、免疫学的活性を有する抗体と混和して投与した場合に、その抗体に対する特定の免疫応答を高める化合物またはエマルジョン等の微細粒子を意味する。そのようなアジュバントとしては、例えば、以下のものが挙げられる。即ち、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミニウム塩等の鉱酸塩のアジュバント;コレラ毒素、大腸菌易熱性毒素、サルモネラ毒素等の毒素;MF59(商標)、AS03、プロバックス(Provax)等のO/W型エマルジョン;Montanide ISA51/ミネラルオイルと植物由来界面活性剤等のW/O型エマルジョン;PLG、PMM、イヌリン、Advax/biopolymer等のバイオポリマー;QS21、クイルA(Quil A)、イスコマトリックス(Iscomatrix)、イスコム(ISCOM)等の植物由来アジュバント;ロムルチド、デトックス(DETOX)、MPL、CWS、マンノース、CpG7909、ISS−1018、IC31、イミダゾキノリン、アンプリゲン(Ampligen)、リビ529(Ribi529)、イモキシン(IMOxine)、IRIV、VLP、コレラ毒素、大腸菌易熱性毒素、サルモネラ毒素、Pam3Cys、フラジェリン、GPIアンカー、LNFPIII/ルイス(Lewis)X、抗菌性ペプチド、UC−1V150、RSV融合タンパク質、cdiGMP等の微生物由来のアジュバント;IL−12、GM−CSF等のサイトカイン;DOTAP、DDA等のカチオン;N’−CARD−PTD等のポリペプチド等が挙げられる。これらのアジュバントは抗原の種類等に応じて適宜選択して用いられる。
【0049】
前記アジュバントの第2製剤成分中における添加量については特に限定されず、第1製剤成分の種類等に応じて適宜選択することができる。
【0050】
尚、第2製剤成分に於いては、製剤としての安定性に寄与する製剤添加剤を省略することができる。製剤としての安定性に寄与する製剤添加剤とは、臨床試験において要求されている製剤としての長期安定性を維持させるための成分を意味する。より具体的には、例えば、前記安定化剤、保存剤(防腐剤)、緩衝剤、pH調整剤、抗酸化剤等が挙げられる。第2製剤成分にこれらの成分を含めないことで、人体に対し細胞毒性を示す成分等を極力無くすことができ、安全性の一層の向上が図れる。尚、製剤としての安定性に寄与する製剤添加剤の省略は、本実施の形態の医薬製剤がタンパク質製剤若しくは核酸製剤であると、又はアジュバント製剤であるとを問わない。
【0051】
前記製剤としての安定性に寄与する製剤添加剤について更に詳述すると、例えば、前記安定化剤は一般に医薬製剤の変質防止のために用いられる。しかし、本実施の形態の医薬製剤は、患者への投与の直前に第1製剤成分と第2製剤成分を混合して製剤化するものであり、第1製剤成分は原薬としての安定性がGCP(Good Clinical Practice)上保証されたものであるため、製剤化後の変質の防止を考慮する必要がない。その結果、本実施の形態に於いては、第2製剤成分への安定化剤の添加を省略することができる。
【0052】
また、前記保存剤(防腐剤)は一般に医薬製剤において微生物の発育を阻害する目的で用いられる。しかし、本実施の形態の医薬製剤は、患者への投与の直前に第1製剤成分と第2製剤成分を混合して製剤化するものであり、第1製剤成分は無菌性が保証されたものであるため、微生物の発育の阻害を考慮する必要がない。その結果、本実施の形態に於いては、第2製剤成分への保存剤の添加を省略することができる。
【0053】
さらに、前記緩衝剤は液状製剤のpHを適切に調整維持したり、刺激を緩和する目的で用いられる。しかし、本実施の形態の医薬製剤は、患者への投与の直前に第1製剤成分と第2製剤成分を混合して製剤化するものであるので、pHを調製維持し安定性を確保する必要がない。その結果、本実施の形態に於いては、第2製剤成分への緩衝剤の添加も省略することができる。
【0054】
また、前記pH調整剤は一般に製剤のpHを約2〜8の間で一定に保つために用いられる。例えば、製剤が酸性の場合、pH調整剤としては塩基性化合物が用いられ、薬剤が塩基性の場合、pH調整剤としては酸性化合物が用いられる。しかし、本実施の形態の医薬製剤は、患者への投与の直前に第1製剤成分と第2製剤成分を混合して製剤化するものであり、長期間にわたってpHを所定の範囲内に安定化させる必要がない。従って、本実施の形態に於いては、第2製剤成分へのpH調整剤の添加を省略することができる。
【0055】
前記抗酸化剤は一般に医薬製剤中の成分の酸化を抑制するために用いられる。即ち、医薬製剤中のある成分が酸化される代わりに酸化されることにより抗酸化作用を発揮する。しかし、本実施の形態の医薬製剤は、患者への投与の直前に第1製剤成分と第2製剤成分を混合して製剤化するものであるので、医薬製剤中の成分の酸化を抑制する目的での抗酸化剤の添加は省略することができる。
【0056】
本実施の形態の医薬製剤は、例えば、静脈内投与若しくは皮下投与を可能にする注射剤や点滴剤、点眼剤、透析用剤など、無菌の液状製剤に好適に適用することができる。
【0057】
本実施の形態の医薬製剤を用いれば、以下の方法により製造することができ、医薬製剤の開発期間の大幅な短縮が図れる。
先ず、非臨床試験において予め安定性、有効性及び安全性が示された前記第1製剤成分と、前記第2製剤成分とを用意する。
【0058】
第1製剤成分に対する非臨床試験とは動物を対象とした原薬に対する試験を意味する。例えば、安定性が示された第1製剤成分とは、非臨床試験における安定性試験、より具体的には、過酷試験、長期保存試験及び加速試験により原薬としての安定性が確認されたものを意味する。
【0059】
第1製剤成分においては無菌性についても保証されているのが好ましい。無菌性については、例えば、第1製剤成分を液体の状態で取扱い、滅菌処理を施すことにより確保することができる。滅菌処理は第1製剤成分に最も適した方法で行われるのが好ましい。例えば、第1製剤成分が、加熱により分解するような成分からなる場合には、当該第1製剤成分に対しろ過滅菌を行うのが好ましい。また、第1製剤成分が、最終滅菌法の適用が可能な成分からなる場合には、当該第1製剤成分をバイアル等の容器に充填した後に最終滅菌法を行ってもよい。最終滅菌法に於いては、加熱法、照射法、ガス法の中から可能性のある被滅菌物質と第1製剤成分の物理化学的性質をもとに適宜選択して行うことができる。前記加熱法として特に限定されず、例えば、高圧蒸気法、乾燥法等が挙げられる。前記照射法としては特に限定されず、例えば、放射線法、高周波法等が挙げられる。尚、第1製剤成分を液体の状態で取り扱うのは、第1製剤成分が固体や粉末の状態であると、無菌性の保証が困難になることによる。
【0060】
また、第1製剤成分は、その有効期間や安定性、安全性及び有効性の観点から、第2製剤成分との混合を行うまで冷蔵保存や冷凍保存をしておいてもよい。この場合、保存条件は原薬における保存条件を満たせば足りる。従って、本実施の形態の医薬製剤に於いては、製剤化後の保存条件や有効期間の設定に必要な情報を得る必要がない。その結果、新薬の開発期間の一層の短縮化が図れる。
【0061】
第2製剤成分については、化学的に安定で、かつ、ヒトに対し安全性が確認されているものであればよい。安定性及び安全性の確認は従来公知の試験方法により行うことができる。また、第2製剤成分に於いても、第1製剤成分と同様、その無菌性が保証されているものが好ましい。さらに、無菌性については、第1製剤成分の場合と同様、滅菌処理を施すことにより確保することができる。この場合、滅菌処理は第2製剤成分に最も適した方法で行われるのが好ましい。例えば、第2製剤成分が、加熱により分解するような成分からなる場合には、当該第2製剤成分に対しろ過滅菌を行うのが好ましい。また、第2製剤成分が、最終滅菌法の適用が可能な成分からなる場合には、当該第2製剤成分をバイアル等の容器に充填した後に最終滅菌法を行ってもよい。最終滅菌法の方法については、前述の通りである。
【0062】
次に、投与の直前に前記第1製剤成分と前記第2製剤成分を任意の割合で混合して製剤化し、本実施の形態の医薬製剤を製造する。本実施の形態の医薬製剤は投与直前に製剤化するものであるため、製剤後の変質や微生物の発育を考慮しなくてもよい。従って、本実施の形態の医薬製剤は、臨床試験における安定性試験(より具体的には、過酷試験、長期保存試験及び加速試験)を省略することが可能になる。その結果、新薬の開発期間の大幅な短縮化が図れる。尚、本実施の形態の医薬製剤は、製剤としての有効性及び安全性については臨床試験により確認されたものであることを要する。
【0063】
第1製剤成分と第2製剤成分との混合は、第1製剤成分が原薬としての有効期間、及び製剤化に用いることができるリテスト期間内に行うのが好ましい。また、第1製剤成分と第2製剤成分の混合方法については特に限定されない。
【0064】
尚、本実施の形態の医薬製剤はキット製剤としても好適に用いることができる。これにより、第1製剤成分と第2製剤成分の混合時の負担軽減や過誤及び汚染の防止が図れる。キット製剤としての形態を採用する場合、第1製剤成分及び第2製剤成分の他に、当該第1製剤成分をろ過滅菌するためのろ過滅菌用フィルターを組み合わせてもよい。これにより、医薬製剤の無菌性の確保が確実に図れる。ろ過滅菌用フィルターとしては特に限定されず、例えば、ポアサイズが0.22μm以下の滅菌用フィルターを使用するのが好ましい。より具体的には、デュラポア(登録商標、日本ミリポア株式会社製)、ザルトポア2(登録商標、ザルトリウス株式会社製)などが挙げられる。
【実施例】
【0065】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定するものではない。
【0066】
(実施例1−1)
インフリキシマブ(抗TNF−αキメラIgG 1Kモノクローナル抗体、商品名:レミカデ(登録商標)(Centocor,Inc.,Malvern,Pennsylvania)、Janssen.BiotecInc.製)5000mgを含む第1製剤成分としての原薬を、0.22μmのメンブランフィルターを用いてろ過滅菌し、その後バイアルに100ml充填して、異物検査及び無菌検査を行った。さらに、この原薬を−40℃の温度条件下で冷凍庫に凍結保存した。保存期間は6か月とした。尚、原薬としては、非臨床試験における安定性、有効性及び安全性が確認されたものを用いた。
【0067】
一方、第2製剤成分として、トロメタモール(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、緩衝剤)を20mg、トレハロースを6g、ポリソルベート80を4mg、水酸化ナトリウムを適量、塩酸を適量、注射用蒸留水と混合し、全量が100mlとなるように調製した。この第2製剤成分をメンブランフィルター(ポアサイズ0.22μm)を用いてろ過滅菌し、その後100mlのバイアルに充填しゴム栓で打栓して、キャップを巻締めした。続いて、121℃、20分間の条件下で、オートクレーブにて滅菌処理をした。さらに、第2製剤成分の異物検査及び無菌検査を行い、室温下で保存した。保存期間は室温下で3年とした。尚、第2製剤成分としては安定性試験が実施済のものを用いた。
【0068】
インフリキシマブ50mg/mlを含む原薬を室温で解凍し、その後ファイナルフィルター(ポアサイズ0.22μm)でろ過滅菌した。99mlの第2製剤成分が充填されたバイアルに原薬1mlを加えて溶解させ、全量を100mlとした。さらに、第2製剤成分により原薬を希釈した液から1mlを取り出し、これを第2製剤成分が入ったバイアルに加えて溶解させ、全量が100mlとなるように希釈した。これにより、製剤としての安定性試験を必要とせず、20mlの点滴静脈内投与を可能にする10μg製剤を得た。
【0069】
(実施例1−2)
本実施例においては、インフリキシマブ50mg/mlを含む第1製剤成分としての原薬0.1mlを第2製剤成分が入ったバイアルに加えてこれを溶解させ、全量を100mlとして、20mlの点滴静脈内投与を可能にする1mg製剤を得た。それ以外は前記実施例1−1と同様にした。
【0070】
(参考例1−1)
粉末のホスフェニトイン(商品名:ホストイン(商標)、エーザイ株式会社製)7500mgを注射用蒸留水に溶解させ、全量10mlの第1製剤成分としての原薬を用意した。次いで、この原薬をメンブランフィルター(ポアサイズ0.22μm)を用いてろ過滅菌し、その後バイアルに100ml充填して、121℃、20分間の条件下でオートクレーブにて滅菌処理をした。続いて、原薬の異物検査及び無菌検査を行い、冷暗所で保存した。保存期間は3年とした。尚、粉末のホスフェニトインは無菌性であることを保証することが困難であるため、注射用蒸留水に溶解させたものを用いた。また、原薬としては、非臨床試験における安定性、有効性及び安全性が確認されたものを用いた。
【0071】
一方、第2製剤成分として、トロメタモール(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、緩衝剤)を1.211mg、塩酸を適量、注射用蒸留水と混合し、全量が100mlとなるように調製した。この第2製剤成分をメンブランフィルター(ポアサイズ0.22μm)を用いてろ過し、100mlのバイアルに充填しゴム栓で打栓して、キャップを巻締めした。続いて、121℃、20分間の条件下で、オートクレーブにて滅菌処理をした。さらに、異物検査及び無菌検査を行い、これを第2製剤成分として室温で保存した。保存期間は室温下で3年とした。尚、第2製剤成分としては安定性試験が実施済のものを用いた。
【0072】
続いて、ホスフェニトイン750mgを含む原薬10mlをファイナルフィルター(ポアサイズ0.22μm)でろ過滅菌した。さらに、ろ液を10mlの第2製剤成分と混和させ全量を20mlとした。
【0073】
(参考例1−2)
本参考例においては、ホスフェニトイン75mgを含む第1製剤成分としての原薬を第2製剤成分が入ったバイアルに加えてこれを溶解させ、全量を100mlとして、10mlの点滴静脈内投与を可能にする7.5mg製剤を得た。それ以外は前記参考例1−1と同様にした。
【0074】
(実施例2−1)
エグリズマブ(商品名:ソリリス(Soliris)(登録商標)、アレクシオンファーマ合同会社製)6000mgを含む第1製剤成分としての原薬30mlを、メンブランフィルター(ポアサイズ0.22μm)を用いてろ過滅菌し、その後バイアルに30ml充填して、異物検査及び無菌検査を行った。この原薬を2〜8℃の温度条件下で凍結を避けて遮光保存した。保存期間は6か月とした。尚、原薬としては、非臨床試験における安定性、有効性及び安全性が確認されたものを用いた。
【0075】
一方、第2製剤成分として、塩化ナトリウム2.631g、リン酸2水素ナトリウム138mg、リン酸1水素ナトリウム534mg、ポリソルベート80を66mg、注射用蒸留水と混合し、全量が300mlとなるように調製した。この第2製剤成分を0.22μmのメンブランフィルターを用いてろ過滅菌し、その後300mlのバイアルに充填しゴム栓で打栓してキャップを巻締めした。続いて、121℃、20分間の条件下で、オートクレーブにて滅菌処理をした。その後、異物検査及び無菌検査を行い、室温下で保存した。保存期間は室温3年とした。尚、第2製剤成分としては安定性試験が実施済のものを用いた。
【0076】
続いて、エグリズマブ6000mgを含む第1製剤成分としての原薬30mlをファイナルフィルター(ポアサイズ0.22μm)でろ過滅菌した。さらに、第2製剤成分が充填されたバイアルに、原薬1.5mlを加えて溶解させ、全量を30mlとした。これにより、製剤としての安定性試験を必要とせず、30mlの点滴静脈内投与を可能にする300mg製剤を得た。
【0077】
(実施例2−2)
本実施例においては、エグリズマブ6000mg/30mlを含む第1製剤成分としての原薬0.15mlを、第2製剤成分が入ったバイアルに加えてこれを溶解させ、全量を300mlとした。これにより、製剤としての安定性試験を必要とせず、30mlの点滴静脈内投与を可能にする3mg製剤を得た。それ以外は前記実施例2−1と同様にした。
【0078】
(実施例3−1)
エポエチンベータペゴル(持続型赤血球造血刺激因子製剤、商品名:ミルセラ(登録商標)、中外製薬株式会社製)2.5mg/mlを含む第1製剤成分としての原薬を、メンブランフィルター(ポアサイズ0.22μm)を用いてろ過滅菌し、その後バイアルに3ml充填して、異物検査及び無菌検査を行った。この原薬を2〜8℃の温度条件下で凍結を避けて遮光保存した。保存期間は6か月とした。尚、原薬としては、非臨床試験における安定性、有効性及び安全性が確認されたものを用いた。
【0079】
一方、第2製剤成分として、L−ヒスチジンを200mg、D−マンニトールを4g、ポリソルベート80を4mg、水酸化ナトリウムを適量、塩酸を適量、注射用蒸留水と混合し、全量が100mlとなるように調製した。この第2製剤成分をメンブランフィルター(ポアサイズ0.22μm)を用いてろ過滅菌し、その後100mlのバイアルに充填しゴム栓で打栓してキャップを巻締めした。続いて、121℃、20分間の条件下で、オートクレーブにて滅菌処理をした。その後、異物検査及び無菌検査を行い、室温下で保存した。保存期間は室温下で3年とした。尚、第2製剤成分としては安定性試験が実施済のものを用いた。
【0080】
続いて、エポエチンベータペゴル2.5mg/mlを含む第1製剤成分としての原薬を室温で解凍し、その後ファイナルフィルター(ポアサイズ0.22μm)でろ過滅菌した。その後、原薬1mlに第2製剤成分を加え、全量が100mlとなるように混合して、1mlの皮下投与を可能にする25μg製剤を得た。
【0081】
(実施例3−2)
本実施例においては、エポエチンベータペコル2.5mg/mlを含む第1製剤成分としての原薬をファイナルフィルター(ポアサイズ0.22μm)でろ過滅菌した後、第2製剤成分により全量が10mlになるように希釈し、1mlの皮下投与を可能にする250μg製剤を得た。それ以外は前記実施例3−1と同様にした。
【0082】
(参考例2−1)
ガニレリクス酢酸塩(商品名:ガニレスト(登録商標)、MSD株式会社製)25mgを注射用蒸留水に溶解させ、全量1mlの第1製剤成分としての原薬を用意した。次いで、この原薬をメンブランフィルター(ポアサイズ0.22μm)を用いてろ過滅菌し、その後バイアルに1ml充填して、異物検査及び無菌検査を行った。その後、原薬を室温下で保存した。保存期間は6か月とした。尚、原薬としては、非臨床試験における安定性、有効性及び安全性が確認されたものを用いた。
【0083】
一方、第2製剤成分として、D−マンニトール4.7g、氷酢酸を20mg、pH調節剤を適量、注射用蒸留水と混合し、全量が100mlとなるように調製した。この第2製剤成分をメンブランフィルター(ポアサイズ0.22μm)を用いてろ過滅菌し、その後100mlのバイアルに充填しゴム栓で打栓してキャップを巻締めした。続いて、121℃、20分間の条件下で、オートクレーブにて滅菌処理をした。その後、異物検査及び無菌検査を行い、室温下で保存した。保存期間は室温下で3年とした。尚、第2製剤成分としては安定性試験が実施済のものを用いた。
【0084】
続いて、ガニレリクス酢酸塩25mgを含む第1製剤成分としての原薬1mlをファイナルフィルター(ポアサイズ0.22μm)でろ過滅菌した。さらに、第2製剤成分が充填されたバイアルに原薬を加えて溶解させ、全量を100mlとした。これにより、1mlの皮下投与を可能にする0.25mg製剤を得た。
【0085】
(参考例2−2)
本参考例においては、ガニレリクス酢酸塩25mgを含む第1製剤成分としての原薬1mlをファイナルフィルター(ポアサイズ0.22μm)でろ過滅菌した後、第2製剤成分により全量が2mlになるように希釈し、2mlの皮下投与を可能にする25mg製剤を得た。それ以外は前記参考例2−1と同様にした。
【0086】
(実施例4−1)
ロミプロスチム(商標、Nplate,Amgen Inc.製)25mgを含む第1製剤成分としての原薬を、メンブランフィルター(ポアサイズ0.22μm)を用いてろ過滅菌し、バイアルに5ml充填して、異物検査及び無菌検査を行った。その後、原薬を−40℃の温度条件下で冷凍庫により冷凍保存した。保存期間は6か月とした。尚、原薬としては、非臨床試験における安定性、有効性及び安全性が確認されたものを用いた。
【0087】
一方、第2製剤成分として、D−マンニトールを3g、精製白糖を1.5g、L−ヒスチジンを120mg、ポリソルベート20を3mg、希塩酸を適量、注射用蒸留水と混合し、全量が72mlとなるように調製した。この第2製剤成分をメンブランフィルター(ポアサイズ0.22μm)を用いてろ過滅菌し、その後100mlのバイアルに充填しゴム栓で打栓して、キャップを巻締めした。続いて、121℃、20分間の条件下で、オートクレーブにて滅菌処理をした。その後、異物検査及び無菌検査を行い、室温下で保存した。保存期間は室温下で3年とした。尚、第2製剤成分としては安定性試験が実施済のものを用いた。
【0088】
続いて、ロミプロスチム25mg/5mlを含む第1製剤成分としての原薬を室温で解凍し、その後ファイナルフィルター(ポアサイズ0.22μm)でろ過した。さらに、第2製剤成分が充填されたバイアルに、原薬0.05mlを加えて溶解させ、全量を0.72mlとした。これにより、製剤としての安定性試験を必要とせず、0.72mlの皮下投与を可能とする250μg製剤を得た。
【0089】
(実施例4−2)
本実施例においては、ロミプロスチム25mg/5mlを含む第1製剤成分としての原薬を室温で解凍後、ファイナルフィルター(ポアサイズ0.22μm)でろ過滅菌した。その後、第2製剤成分を加えて全量を144mlとした。これにより、0.72mlの皮下投与を可能にする25μg製剤を得た。それ以外は前記実施例4−1と同様にした。
【0090】
(実施例5−1)
肺炎球菌莢膜ポリサッカライド(商品名:プレベナー水性懸濁皮下注、ファイザー株式会社製)4mgを含む第1製剤成分としての原薬を、メンブランフィルター(ポアサイズ0.22μm)を用いてろ過滅菌し、バイアルに10ml充填して、異物検査及び無菌検査を行った。その後、原薬を2℃〜8℃の温度条件下で遮光保存した。保存期間は6か月とした。尚、原薬としては、非臨床試験における安定性、有効性及び安全性が確認されたものを用いた。
【0091】
一方、第2製剤成分の調製は以下の通り行った。即ち、50mlの注射用蒸留水に25mgのリン酸アルミニウム及び900mgの水酸化ナトリウムを加え、高せん断能を持つホモジナイザーを用いて5分間均一に懸濁させた。その後、メンブランフィルター(ポアサイズ0.22μm)でろ過滅菌し、121℃、20分間の条件下で、オートクレーブにて滅菌処理をした。続いて、異物検査及び無菌検査を行い、これを室温で保存した。保存期間は2年とした。尚、第2製剤成分としては安定性試験を実施済のものを用いた。
【0092】
続いて、肺炎球菌莢膜ポリサッカライド4mg/10mlを含む第1製剤成分としての原薬をファイナルフィルター(ポアサイズ0.22μm)でろ過滅菌し、1mlを第2製剤成分が入ったバイアルにこれを加えてよく撹拌し全量を10mlとした。その後、バイアルを30分間室温下で放置し、再度撹拌した。これにより、0.5mlの皮下投与を可能にする200μg/ml製剤を得た。
【0093】
(実施例5−2)
本実施例においては、肺炎球菌莢膜ポリサッカライド4mg/10mlを含む第1製剤成分としての原薬をファイナルフィルター(ポアサイズ0.22μm)でろ過滅菌した。0.1mlの第2製剤成分を加えて全量を100mlとした。それ以外は前記実施例5−1と同様にすることにより、0.5mlの皮下投与が可能な2μg/ml製剤を得た。
【0094】
(実施例6−1)
トロンボモジュリン アルファ64000U/ml(商品名、リコモヂュリン点滴静注用、旭化成株式会社製)を含む第1製剤成分としての原薬をメンブランフィルター(ポアサイズ0.22μm)を用いてろ過滅菌し、バイアルに充填して異物検査及び無菌検査を行った。その後、原薬を−40℃の冷凍庫で凍結保存した。保存期間は6か月とした。尚、原薬としては、非臨床試験における安定性、有効性及び安全性が確認されたものを用いた。
【0095】
一方、第2製剤成分として、塩化ナトリウム90mgを注射用蒸留水と混合し、全量が100mlとなるようにして調製した。この第2製剤成分をメンブランフィルター(ポアサイズ0.22μm)でろ過滅菌し後、その後100mlのバイアルに充填しゴム栓打栓してキャップを巻締めした。続いて、121℃、20分間の条件下で、オートクレーブにて滅菌処理をした。その後、異物検査及び無菌検査を行い、室温下で保存した。
【0096】
次に、トロンボモジュリン アルファ64000U/mlを含む第1製剤成分としての原薬を室温で解凍し、その後ファイナルフィルター(ポアサイズ0.22μm)でろ過滅菌した。さらに、原薬1mlを第2製剤成分が入ったバイアルに加えて溶解させ全量を100mlとした。続いて、希釈後の原薬0.2mlを第2製剤成分99.8mlが入ったバイアルに加えて溶解させ全量を100mlとした。これにより、100mlの点滴静脈内投与を可能にする128U製剤を得た。
【0097】
(実施例6−2)
本実施例においては、トロンボモジュリン アルファ64000U/mlを含む第1製剤成分としての原薬0.2mlに、前記第2製剤成分を加えて全量を100mlとした。それ以外は前記実施例6−1と同様にすることにより、100mlの点滴静脈内投与を可能にする12800U製剤を得た。