【文献】
石津健太郎, ほか,「データベースと連携してTVホワイトスペースで運用可能な無線ネットワークシステム」,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2012年 5月17日,第112巻, 第55号,第23-30ページ,ISSN 0913-5685, SR2012-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記対通信品質が、前記対利用可能周波数を利用可能な、該対通信品質にかかわる一方の被管理装置における他方の被管理装置からの相互の電界強度、該対利用可能周波数を用いたときの前記一方および他方の被管理装置の間の最高通信速度、遅延、ジッタ、パケットロス率、ビット誤り率のうちのひとつ以上の情報に基づいた品質であることを特徴とする請求項1記載の通信管理装置。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、テレビジョンホワイトスペース(TVWS)環境下で動作する通信装置を管理する目的で設けられる通信管理装置およびその通信管理方法において、被管理装置が複数集まって構成される並列的なネットワーク構造(メッシュネットワーク)に適用して、時々刻々と変化し得る通信環境にも対応して通信品質を良好に維持することが可能な通信管理装置および通信管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様である通信管理装置は、管理対象である複数の被管理装置の各地理的位置と、該各地理的位置で利用可能な周波数を示す有効周波数とを対応づける対応リストを記憶保持する手段と、前記複数の被管理装置のうちの2つの被管理装置のすべての組み合わせ対ごとに、前記対応リストに基づいて、該2つの被管理装置で共通に利用可能な周波数を、対利用可能周波数として特定する手段と、前記対利用可能周波数を、該対利用可能周波数に関連する2つの被管理装置のそれぞれに報知する手段と、前記組み合わせ対で特定されている前記対利用可能周波数を用いたときの、該組み合わせ対の間での通信の品質である対通信品質のそれぞれを、前記複数の被管理装置のそれぞれから取得する手段と、前記組み合わせ対ごとに、前記対通信品質が最良となる前記対利用可能周波数を、最良対利用可能周波数として定め、かつ、該最良対利用周波数に対応する対通信品質を最良対通信品質として定める手段と、前記組み合わせ対ごとに、他の被管理装置を中継した場合の経路を含めたすべての経路を、該組み合わせ対ごとの候補経路として特定する手段と、前記最良対通信品質の情報に基づいて、前記組み合わせ対ごとに、前記最良対利用周波数を用いる前記組み合わせ対の間での通信をつないだ前記候補経路のそれぞれにおける通信品質として各経路通信品質を算定する手段と、前記組み合わせ対ごとに、前記候補経路のうちから前記経路通信品質が最良となる候補経路を利用経路として選択する手段と、前記組み合わせ対の間での通信を、前記最良対利用周波数を用いた前記組み合わせ対の間での通信でつないだ前記利用経路により行うべく、前記複数の被管理装置のそれぞれに指示する手段とを具備することを特徴とする。
【0009】
この通信管理装置は、管理対象である複数の被管理装置の各地理的位置と、この各地理的位置で利用可能な周波数を示す有効周波数とを対応づける対応リストを記憶保持する。そして、複数の被管理装置のうちの2つの被管理装置のすべての組み合わせ対ごとに、上記の対応リストに基づいて、この2つの被管理装置で共通に利用可能な周波数を、対利用可能周波数として特定する。さらに、この対利用可能周波数を、この対利用可能周波数に関連する2つの被管理装置のそれぞれに報知する。
【0010】
次に、組み合わせ対で特定されている対利用可能周波数を用いたときの、この組み合わせ対の間での通信の品質である対通信品質のそれぞれを、複数の被管理装置のそれぞれから取得する。そして、組み合わせ対ごとに、対通信品質が最良となる対利用可能周波数を、最良対利用可能周波数として定め、かつ、この最良対利用周波数に対応する対通信品質を最良対通信品質として定める。
【0011】
次に、組み合わせ対ごとに、他の被管理装置を中継した場合の経路を含めたすべての経路を、この組み合わせ対ごとの候補経路として特定する。そして、最良対通信品質の情報に基づいて、組み合わせ対ごとに、最良対利用周波数を用いる組み合わせ対の間での通信をつないだ候補経路のそれぞれにおける通信品質として各経路通信品質を算定する。さらに、組み合わせ対ごとに、候補経路のうちから経路通信品質が最良となる候補経路を利用経路として選択する。
【0012】
最後に、組み合わせ対の間での通信を、最良対利用周波数を用いた組み合わせ対の間での通信でつないだ利用経路により行うべく、複数の被管理装置のそれぞれに指示する。このような利用経路による通信によれば、時々刻々と変化し得る通信環境にも対応して通信品質を良好に維持することが可能である。これは、もともと、対利用可能周波数を用いたときの、組み合わせ対の間での通信の品質である対通信品質のそれぞれを、複数の被管理装置のそれぞれから取得し、それに基づき、最良対利用周波数を用いた組み合わせ対の間での通信でつないで利用経路としているからである。
【0013】
また、本発明の別の態様である通信管理方法は、管理対象である複数の被管理装置の各地理的位置と、該各地理的位置で利用可能な周波数を示す有効周波数とを対応づける対応リストを記憶保持し、前記複数の被管理装置のうちの2つの被管理装置のすべての組み合わせ対ごとに、前記対応リストに基づいて、該2つの被管理装置で共通に利用可能な周波数を、対利用可能周波数として特定し、前記対利用可能周波数を、該対利用可能周波数に関連する2つの被管理装置のそれぞれに報知し、前記組み合わせ対で特定されている前記対利用可能周波数を用いたときの、該組み合わせ対の間での通信の品質である対通信品質のそれぞれを、前記複数の被管理装置のそれぞれから取得し、前記組み合わせ対ごとに、前記対通信品質が最良となる前記対利用可能周波数を、最良対利用可能周波数として定め、かつ、該最良対利用周波数に対応する対通信品質を最良対通信品質として定め、前記組み合わせ対ごとに、他の被管理装置を中継した場合の経路を含めたすべての経路を、該組み合わせ対ごとの候補経路として特定し、前記最良対通信品質の情報に基づいて、前記組み合わせ対ごとに、前記最良対利用周波数を用いる前記組み合わせ対の間での通信をつないだ前記候補経路のそれぞれにおける通信品質として各経路通信品質を算定し、前記組み合わせ対ごとに、前記候補経路のうちから前記経路通信品質が最良となる候補経路を利用経路として選択し、前記組み合わせ対の間での通信を、前記最良対利用周波数を用いた前記組み合わせ対の間での通信でつないだ前記利用経路により行うべく、前記複数の被管理装置のそれぞれに指示することを特徴とする。
【0014】
この通信管理方法は、上記した通信管理装置に準拠した管理方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、テレビジョンホワイトスペース(TVWS)環境下で動作する通信装置を管理する目的で設けられる通信管理装置およびその通信管理方法において、メッシュネットワークに適用して、時々刻々と変化し得る通信環境にも対応して通信品質を良好に維持することが可能な通信管理装置および通信管理方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施態様として、前記複数の被管理装置のそれぞれから、前記各地理的位置を取得する手段と、前記各地理的位置をデータベースに送信する手段と、前記対応リストを記憶保持することを目的として、前記各地理的位置に応じた情報として前記データベースから送られてくる前記対応リストを受信する手段とをさらに具備する、とすることができる。
【0018】
この態様は、被管理装置のそれぞれから各地理的位置の情報を取得し、この通信管理装置からこの各地理的位置をデータベースに送信して問合せを行う。つまり、各被管理装置の個々にデータベースとの接続手段が存在しない場合にも、通信管理装置によりデータベースに問い合わせができる態様である。逆に、各被管理装置の個々にデータベースとの接続手段が存在する場合には、被管理装置においてその利用可能周波数をデータベースに問い合わせ、各被管理装置から、その各地理的位置に応じた情報である利用可能周波数の情報を得、通信管理装置において上記の対応リストとして集約することもできる。
【0019】
また、実施態様として、前記複数の被管理装置のうちのひとつの被管理装置として機能させる手段をさらに具備する、とすることができる。これは、つまり、通信管理装置としての構成を被管理装置のひとつに備えさせたものであり、言い換えると、メッシュを構成し得る並列的な通信装置のうちのひとつが通信管理装置でもあるという構成である。このように、通信管理装置としての機能は独立した装置に担わせることもできるし、メッシュを構成し得る並列的な位置づけの通信装置のうちのひとつに担わせることもできる。
【0020】
また、実施態様として、前記対通信品質のそれぞれを計測するように前記複数の被管理装置のそれぞれに指示する手段をさらに具備する、とすることができる。これは、つまり、例えば通信管理装置の側で通信環境の変化を察知した場合に、メッシュ構造(リンク状態)の変更を行うべく、その作業の開始としての指示を臨時に行う態様である。このように指示を行う場合だけでなく、例えば、複数の被管理装置においては定期的に対通信品質の計測を行うようにしておき、その計測結果をその都度、通信管理装置に報告し通信管理装置でこれを蓄積しておくようにすることもできる。
【0021】
また、実施態様として、前記対通信品質が、前記対利用可能周波数を利用可能な、該対通信品質にかかわる一方の被管理装置における他方の被管理装置からの相互の電界強度、該対利用可能周波数を用いたときの前記一方および他方の被管理装置の間の最高通信速度、遅延、ジッタ、パケットロス率、ビット誤り率のうちのひとつ以上の情報に基づいた品質である、とすることができる。これらは、対通信品質の具体的な例である。複数の対通信品質を活用することもできる。なお、対通信品質を用いて経路通信品質を算出する場合には、活用した対通信品質の性質に応じて、一定の評価関数を用いることができる。
【0022】
以上を踏まえ、以下では本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。まず、
図1を参照して、実施形態の通信管理装置を設け得る、ホワイトスペース下のメッシュネットワークについて説明する。
図1は、本発明の一実施形態である通信管理装置を設け得る、ホワイトスペース下のメッシュネットワークを説明するシステム構成図である。
【0023】
同図に示すように、このシステムは、被管理装置1、2、3、4(例として4台あるが、台数に制限があるわけではない。)、通信管理装置(メッシュマネージャ:MM)10、データベース20を有する。被管理装置1〜4は、互いに並列的な位置づけの無線通信装置であり例えば基地局(BS)や移動基地局と考えることができるが、通信管理装置10に管理されている端末(特に移動端末)と考えることもできる。(移動)基地局である場合には、被管理装置1〜4のそれぞれには、それらとの間で接続を行う端末(不図示)が存在し得る。被管理装置1〜4は、TVWS環境下で動作するように構成されている。
【0024】
被管理装置1〜4(以下では、A〜Dで表す場合もある)は、そのうちの2台の組み合わせ対ごとに通信のためのリンクが成立し得る。図示するすべてのリンクが成立していなくても、各被管理装置からみて少なくともひとつのリンクが成立している場合には、任意のすべての被管理装置間の通信が可能である。他の被管理装置を中継装置として活用できるからである。
【0025】
このようなメッシュネットワークの構造においては、任意のすべての被管理装置間で、中継を含めたどの経路を用いればその被管理装置間での通信品質が最良になるかという点に対する解答が存在する一方、その解答は自明でなく、さらに通信環境の変化に応じてその解答も変動する。通信環境の変化として典型的には、被管理装置1〜4の位置移動に伴う利用周波数の電界変化や、他の2次ユーザとの競合状態などが考えられる。
【0026】
通信管理装置10は、被管理装置1〜4を管理する目的で、いずれの被管理装置1〜4とも接続が可能な状態で設けられている。管理するための必要な機能については後で詳述するが、端的には、TVWS環境下において、任意のすべての被管理装置間で、中継を含めたどの経路を用いればその被管理装置間での通信品質が最良になるかという点に対する解答を探索し、その結果に従って各被管理装置1〜4に必要なリンクを成立させるように指示することである。
【0027】
データベース20は、TVWS環境下で運用され得る2次ユーザに、1次ユーザに影響を与えず利用可能な周波数に関する情報を少なくとも提供するようにインターネット上に設けられたサーバである。返信されてくる利用可能な周波数は、少なくとも1次ユーザに影響を与えないことは必須であるが、すでに別の2次ユーザに割り振られた周波数が除かれているという仮定を置くこともできる。
図1に示したシステムでは、データベース20との接続は、もっぱら管理装置10が行うと仮定している。ただし、各被管理装置1〜4が直接にデータベース20との接続が行えるように構成されていることを排除するものではない。
【0028】
次に、
図2は、本発明の一実施形態である通信管理装置の構成を示す機能ブロック図である。換言すると、
図1中に示した通信管理装置10の内部構造である。
図1に示すように、この通信管理装置10は、被管理装置との通信機能部11、被管理装置情報記憶保持部12、データベース問合せ部13、試験指示情報生成部14、成立リンク判定部15を有する。
【0029】
図2は、機能ブロック図を示しているが、以下でこの図中の構成のそれぞれについて機能、動作を説明する場合に、適宜
図3ないし
図8を参照する。
【0030】
被管理装置との通信機能部11は、まず、被管理装置のそれぞれからその各地理的位置を取得する機能を有する。
図1での説明では言及しなかったが、各被管理装置には少なくとも、例えばGPS衛星を利用して自装置の現在の地理的位置の特定を行う機能が備わっている。取得された各地理的位置は、被管理装置情報記憶保持部12に渡されて記憶保持される。通信機能部11および被管理装置情報記憶保持部12には他にも重要な機能があるが、その点については後述する。
【0031】
被管理装置情報記憶保持部12に記憶保持された被管理装置の各地理的位置は、データベース問合せ部13に渡される。データベース問合せ部13は、情報記憶保持部12から渡された各地理的位置をデータベースに送信し、その位置で利用可能な周波数帯(加えて、場合によりその最大送信電力のほか利用諸条件)について問い合わせを行う。
【0032】
データベースからは、例えば、
図3に示すような、各被管理装置ごとの利用可能な周波数に関する情報(対応リスト)が返信される。例えば被管理装置Aについては、その地理的位置に応じて利用可能周波数はaである、というような対応リストである。利用可能周波数aは、一般に複数存在し得る。ほかの被管理装置B〜D、利用可能周波数b〜dについても同様である。なお、
図3では「最大送信電力のほか利用諸条件」については図示省略している。データベースから得られた対応リストは、データベース問合せ部13において記憶保持されるとともに、試験指示情報生成部14に渡される。
【0033】
試験指示情報生成部14は、被管理装置のうちの2つの被管理装置のすべての組み合わせ対ごとに、対応リストに基づいて、2つの被管理装置で共通に利用可能な周波数を、対利用可能周波数として特定する。これを
図4を参照してさらに説明すると以下である。
【0034】
図1に示したようなシステムにおいて、被管理装置のうちの2つの被管理装置のすべての組み合わせ対(これを以下、リンク対という場合があるが、リンクとして成立し得るという意味であり実際にリンク状態になっているかどうかはとは関係しない。)は、
図4に示すように、A−B、A−C、A−D、B−C、B−D、C−Dの6通りある。何通りあるかは一般に、
nC
2で計算できる(n台の被管理装置から任意の2台を選択する組み合わせ)。
【0035】
各リンク対で利用可能な周波数は、その関連する2つの被管理装置で共通に利用可能な周波数と考えることが可能であり、
図4に示すように、例えば、リンク対A−Bであれば、(a∩b)
1、(a∩b)
2、…、(a∩b)
nABと列挙、特定できる。なお、共通に利用可能な周波数がなく(つまりa∩b=φ)、対利用可能周波数が存在しない場合も一般にはあり得る。以上の点は、他のリンク対も同様である。
【0036】
試験指示情報生成部14は、上記のように特定された対利用可能周波数を、通信機能部11に伝え、これにより通信機能部11は、対利用可能周波数をその関連する2つの被管理装置のそれぞれに、その相手方の被管理装置の識別情報とともに報知する。対利用可能周波数は、それぞれの被管理装置においては、通信品質を計測するための指示情報の一部になる。
【0037】
対利用可能周波数が報知された各被管理装置は、対利用可能周波数を用いたときの、その関連の組み合わせ対の間での通信の品質である対通信品質を、例えば小規模の試験データを実際に流して計測する。
【0038】
このような対通信品質としては、対利用可能周波数を用いたときの2つの被管理装置の間の最高通信速度、遅延、ジッタ、パケットロス率、ビット誤り率などを例示することができる。対通信品質には、これらのうちの少なくともひとつを用いることができるが、複数計測し用いるようにしてもよい。また、対通信品質のひとつとして、対利用可能周波数を利用可能な、この対通信品質にかかわる一方の被管理装置における他方の被管理装置からの(相互の)電界強度を用いることもできる。
【0039】
各被管理装置での対通信品質の計測は、リンク状態が成立しているか否かとはかかわりなく、すべてのリンク対において例えば定期的に行われるようにしておく。その計測結果は、各被管理装置から、通信機能部11を介して吸い上げられて(または報告されて)取得され、被管理装置情報記憶保持部12に記憶保持される(蓄積してもよいが、少なくとも最新のものは記憶保持する)。
【0040】
このようにして記憶保持される最新の情報は、例えば、
図5に示すようになる。すなわち、各リンク対の対利用可能周波数ごとに、対通信品質Qが対応づけられている。対通信品質Qのそれぞれは、単一ではなく上記のように複数の場合(すなわちQがベクトル量となる場合)もあり得る。
図5に示される情報は、記憶保持部12から成立リンク判定部15に渡される。ちなみに、対利用可能周波数が存在しないリンク対の場合には、そのリンク対の対通信品質は、便宜上、例えば、もっとも悪い品質を示す数値を与えておくことができる。
【0041】
なお、各被管理装置での対通信品質の計測を、すべてのリンク対において定期的に行わせるために、被管理装置のそれぞれからその地理的位置を取得し、そこでの利用可能周波数の情報(
図3)をデータベースから取得し、これにより得られる対利用可能周波数の情報(
図4)を関連する被管理装置に報知するという動作も、定期的に行うのが好ましい。被管理装置の位置が移動したり、別の要因で通信環境が変わり対利用可能周波数も変動したりする可能性があるからである。
【0042】
成立リンク判定部15は、まず、記憶保持部12から渡された
図5に示すような情報を用いて、リンク対ごとに、その含まれる対通信品質の中から最良となる最良対通信品質を選択し、さらにこれに対応する対利用可能周波数である最良対利用可能周波数を決定する。ここで、例えばリンク対A−Bにおける最良対通信品質をQ
AB*のように表現し、その対応する最良対利用可能周波数を(a∩b)*のように表現すると、リンク対のすべてについて
図6に示すようなリストが得られる。
【0043】
なお、対通信品質Qがベクトル量である場合に最良対通信品質を選択するためには、例えば、そのベクトル量の要素を加重平均してそのスカラー値によって判断する、などの方法を適用することができる。加重平均するための係数については、通信で必要な仕様に応じて適宜設定、選択することができる。
【0044】
成立リンク判定部15は、次に、組み合わせ対ごとに、他の被管理装置を中継した場合の経路を含めた、すべての経路を、組み合わせ対ごとの候補経路として特定する。例えば、A−Bの組み合わせ対であれば、候補経路は、A−B、A−C−B、A−D−B、A−C−D−B、A−D−C−Bの5通りになる。他の組み合わせ対についても同様に特定することができる(
図7中の表を参照)。
【0045】
ちなみに、ひとつの組み合わせ対に候補経路がいくつあるかについては、一般に、
i=0Σ
n−2(n−2)C
i・i!で算出することができる。この式は、中継装置となる装置の数iをパラメータに、
(n−2)C
iで中継装置を選択し、その中継装置のあり得る経路順序i!を掛け合わせて、その積を最後にΣで加え合わせたものである。
【0046】
成立リンク判定部15は、続いて、
図6に示したような最良対通信品質の情報に基づいて、組み合わせ対ごとに、最良対利用周波数を用いる組み合わせ対の間での通信をつないだ候補経路のそれぞれにおける通信品質として各経路通信品質を算定する。例えば、A−Bの組み合わせ対で、候補経路がA−D−Bの場合には、A−Dの最良対通信品質Q
AD*とB−D(D−Bと同じ)の最良対通信品質Q
BD*とを用いて、A−D−Bの経路通信品質を算定できる。
【0047】
図7に示すリストからわかるように、この場合、組み合わせ対ごとに経路通信品質は5通り計算される。この場合組み合わせ対は6通りなので、合計30の経路通信品質が計算される。計算量の圧縮のためには、例えば、経路中に「もっとも悪い品質を示す数値」が与えられたリンク対が存在する場合には、その経路については計算を打ち切る(しない)ようにしてもよい。
【0048】
上記のように複数の最良対通信品質から経路通信品質を算定するためには、その品質の性質に基づいて、評価関数を設定することができる。例えば、品質が「遅延」であれば、経路総合の遅延量は、各リンク対での遅延の和となるので、評価関数は、各リンク対の遅延量の和として設定することができる。また、品質が「通信速度」であれば、経路総合の通信速度は、最小の通信速度をもつリンク対がボトルネックとなるので、評価関数は、各リンク対の遅延量から最小値を選択する関数として設定できる。さらに、品質が「ビット誤り率」であれば、経路総合の誤り率を算定する例えば「1−(1−ビット誤り率
A−D)・(1−ビット誤り率
B−D)」のような式の評価関数を設定することができる。
【0049】
成立リンク判定部15は、続いて、組み合わせ対ごとに、候補経路のうちから経路通信品質が最良となる候補経路を利用経路として選択する。例えば、
図7に示すリストにおいては、各組み合わせ対において太字斜体で示された候補経路が最良の経路通信品質であるとして選択されたとする。なお、対通信品質が一般にベクトル量であった場合には、経路通信品質も同じ要素数をもつベクトル量になる。このような場合の最良のものの選択は、例えば、そのベクトル量の要素を加重平均してそのスカラー値によって判断する、などの方法を適用することができる。加重平均するための係数については、通信で必要な仕様に応じて適宜設定、選択することができる。
【0050】
成立リンク判定部15は、最後に、各組み合わせ対の間での通信を、最良対利用周波数を用いたリンク対の間での通信でつないだ上記の利用経路により行うべく、被管理装置のそれぞれに指示する情報を生成する。この指示情報は、成立リンク判定部15から通信機能部11を介して各被管理装置に伝えられる。このような指示により、被管理装置のネットワークには、例えば、
図7に示すように、成立したリンクと成立させていないリンクとが存在する状態となる。この場合、成立したリンクは、A−B、B−C、B−D、C−Dの4つであり、これだけ成立させれば
図7のリスト中のすべての「選択経路」が成立する。すなわち、すべての2つの被管理装置の間の通信品質が最良のものとなる。
【0051】
以上本発明の一実施形態である通信管理装置について説明した。上記のように選択した利用経路による被管理装置間の通信によれば、時々刻々と変化し得る通信環境にも対応して通信品質を良好に維持することが可能である。これは、もともと、対利用可能周波数を用いたときの対通信品質のそれぞれを、被管理装置のそれぞれから取得し、それに基づき、最良対利用周波数を用いたリンク対の間での通信でつないで利用経路としているからである。
【0052】
例えば
図7に示したようにメッシュネットワークのリンク状態が成立している場合に、何らかの通信環境の変化があると、
図3から
図7を用いて説明した過程により、別の利用経路が選択されるようにリンク状態が変化し得る。変化後の一例を
図8に示す。この場合、成立したリンクは、A−B、A−D、B−Cの3つであり、これだけ成立させれば
図8のリスト中のすべての「次の選択経路」が成立する。すなわち、すべての2つの被管理装置の間の通信品質が最良のものとなる。
【0053】
以上説明した実施形態は、例えば、通信インフラを臨時に構築する場合や災害時に応急的に対処する場合に適している。すなわち、複数の基地局を適当な位置に厳密な計画なく設置しても、通信環境の変化にも応じて自動的に最良のリンクが成立し、これにより、面積的に広い領域をカバーしたネットワークを構築することができる。
【0054】
次に、上記説明した実施形態の変形例について補足的に説明する。上記の実施形態では、被管理装置のそれぞれから各地理的位置を取得し、この各地理的位置をデータベースに送信し、対応リストを記憶保持することを目的として、各地理的位置に応じた情報としてデータベースから送られてくる対応リストを受信していたが、以下のようにもできる。すなわち、各被管理装置の個々にデータベースとの接続手段が存在する場合には、被管理装置においてその利用可能周波数をデータベースに問い合わせ、各被管理装置から、その各地理的位置に応じた情報である利用可能周波数の情報を送ってもらえば、通信管理装置において上記の対応リストとして集約することができる。
【0055】
また、上記の実施形態では、通信管理装置が被管理装置とは独立的に存在したが、この通信管理装置が被管理装置のうちのひとつの被管理装置としても機能するものであってもよい。これは、つまり、通信管理装置としての構成を被管理装置のひとつに備えさせたものであり、言い換えると、メッシュを構成し得る並列的な通信装置のうちのひとつが管理装置でもあるという構成である。このように、通信管理装置としての機能は独立した装置に担わせることもできるし、メッシュを構成し得る並列的な位置づけの通信装置のうちのひとつに担わせることもできる。
【0056】
また、通信管理装置に、対通信品質のそれぞれを計測するように被管理装置のそれぞれに指示する機能を設けるようにしてもよい。これは、つまり、例えば通信管理装置の側で通信環境の変化を察知した場合に、メッシュ構造(リンク状態)の変更を行うべく、その作業の開始としての指示を臨時に行う形態である。
【0057】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。