特許第5896420号(P5896420)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5896420
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】動的分散型電力グリッド制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20160317BHJP
【FI】
   H02J13/00 311R
【請求項の数】40
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2012-537164(P2012-537164)
(86)(22)【出願日】2010年11月1日
(65)【公表番号】特表2013-510545(P2013-510545A)
(43)【公表日】2013年3月21日
(86)【国際出願番号】US2010054950
(87)【国際公開番号】WO2012008979
(87)【国際公開日】20120119
【審査請求日】2013年11月1日
(31)【優先権主張番号】61/257,834
(32)【優先日】2009年11月3日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/846,520
(32)【優先日】2010年7月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512110961
【氏名又は名称】スパイリア、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ケリアン、スニル
(72)【発明者】
【氏名】ケーオ、ブレンダン
(72)【発明者】
【氏名】パシフィック、オリヴァー
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−112515(JP,A)
【文献】 特表2010−518296(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/080564(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0124026(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0005315(US,A1)
【文献】 特開平11−098694(JP,A)
【文献】 特開2008−061382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電力消費施設と接続された複数の分散型エネルギー資源(DER)を含む送電/配電電力グリッドのための分散型制御システムであって、
前記送電/配電電力グリッドのための、発電及び電力消費データを収集する既存の監視制御及びデータ取得システム(SCADA)に通信可能に接続され、前記送電/配電電力グリッド内の全体の電力潮流を管理する企業制御モジュールと、
複数の前記DERのうちの1つにそれぞれ一意的に関連付けられる複数の局所制御モジュールと、
前記企業制御モジュールと前記複数の局所制御モジュールの一部との間にそれぞれ介在する複数の地域制御モジュールと
を備え、
前記複数の地域制御モジュールの各々は、1地域内の動的電力管理及び隣接する地域との電力交換の少なくとも一方を実行し、
前記複数の局所制御モジュールの各々は、前記関連付けられたDERの管理のため、前記複数の地域制御モジュールの指示に従い、
前記企業制御モジュールは、前記複数の地域制御モジュールの1又は複数に、複数の電力要求を送信し、
前記動的電力管理は、局所電力潮流パラメータ及び地域電力潮流パラメータを特定の動作制限内に維持するように調整し、
自己修正及び予測計算のうち少なくとも一方を含む
分散型制御システム。
【請求項2】
前記企業制御モジュールは、通信ネットワークと通信可能に接続されている請求項1に記載の分散型制御システム。
【請求項3】
一の地域制御モジュールを、前記企業制御モジュールと別の地域制御モジュールとの間に介在させて、分散型システムを構成する請求項1又は2に記載の分散型制御システム。
【請求項4】
前記複数のDERは、エネルギーの生成、蓄積及び需要/負荷管理から構成される一群から選択される請求項1からのいずれか一項に記載の分散型制御システム。
【請求項5】
送電/配電電力グリッドDERは、グリッド及び設備保護、電圧調整、電力潮流制御、コンデンサバンク及び変圧器からなる一群から選択される請求項1からのいずれか一項に記載の分散型制御システム。
【請求項6】
前記企業制御モジュールは、前記複数の地域制御モジュール間の電力需要、及び、隣接する電力グリッド又は電力システムとの電力交換を管理する請求項1からのいずれか一項に記載の分散型制御システム。
【請求項7】
前記複数の地域制御モジュール間の電力需要を管理することは、第2地域における電力需要の変化に応答して、第1地域における発電を変化させるべく、前記複数の地域制御モジュールに対する命令を起動することを含む請求項に記載の分散型制御システム。
【請求項8】
前記複数の地域制御モジュール間の電力需要を管理することは、前記複数の地域制御モジュールの各々と関連付けられた複数の局所制御モジュール及び複数の地域制御モジュールを再規定することを含む請求項又はに記載の分散型制御システム。
【請求項9】
前記企業制御モジュールは、前記複数の局所制御モジュール及び前記複数の地域制御モジュールの少なくとも一方に対して、選択的にブロードキャスト制御命令を発行する請求項1からのいずれか一項に記載の分散型制御システム。
【請求項10】
前記企業制御モジュール、前記複数の地域制御モジュール及び前記複数の局所制御モジュールの間で通信障害が発生した場合には、前記複数の局所制御モジュールは前記企業制御モジュール及び前記複数の地域制御モジュールから独立して動作し、通信が復旧した場合には、前記複数の地域制御モジュールは、前記DERのステータスを含む前記複数の局所制御モジュールの状態を前記複数の局所制御モジュールから取得し、前記企業制御モジュールからの命令に応じた動作に戻る請求項1からのいずれか一項に記載の分散型制御システム。
【請求項11】
前記分散型制御システムは、
前記複数の局所制御モジュールの各々とそれに関連付けられたDERとの間に介在するデバイスインターフェースを更に備え、
前記デバイスインターフェースは、前記関連付けられたDERが理解できるように、標準化された局所制御モジュール命令を変換し、前記局所制御モジュールが理解できる標準化されたメッセージへとDER応答を変換する請求項1から10のいずれか一項に記載の分散型制御システム。
【請求項12】
前記複数の局所制御モジュールの各々は、それぞれ接続された前記DERに関するデータを収集し、
前記データは、最大出力、最小出力及び応答時間の少なくとも1つを含む請求項1から11のいずれか一項に記載の分散型制御システム。
【請求項13】
前記複数の局所制御モジュールの各々は、前記複数の地域制御モジュールのそれぞれから前記DERへの複数の命令を前記DERが理解できる標準化された複数のコマンドに変換すること、及び、前記DERから前記複数の地域制御モジュールのそれぞれへの複数の応答メッセージを前記複数の地域制御モジュールのそれぞれが理解できる標準化された複数の応答メッセージに変換することのうち少なくとも一方を行う請求項1から12のいずれか一項に記載の分散型制御システム。
【請求項14】
発電管理は、前記地域内の発電、負荷及び蓄電、及び、隣接する地域との電力交換の少なくとも一つに基づく請求項1から13のいずれか一項に記載の分散型制御システム。
【請求項15】
前記複数の地域制御モジュールのそれぞれによる各地域内における発電管理は、前記各地域内の動的な電力需要を満たすべく独立して行われる請求項1から14のいずれか一項に記載の分散型制御システム。
【請求項16】
前記複数の地域制御モジュールの各々は、前記企業制御モジュールから発電命令を受信する及び前記発電命令に応答する請求項1から15のいずれか一項に記載の分散型制御システム。
【請求項17】
前記複数の地域制御モジュールのそれぞれは、制御命令を前記複数のDERに発行する前に、前記企業制御モジュールから受信した発電命令による実際の発電量が、前記複数の地域制御モジュールのそれぞれと関連付けられている前記地域内の前記複数のDER及び前記送電/配電電力グリッドの所定のシステム制限内に維持されているかを検証する請求項16に記載の分散型制御システム。
【請求項18】
前記発電命令は、検証され、所定のシステム制限内に実際の発電量を維持するべく、前記複数のDERに制御命令を発行する前に修正される請求項16又は17に記載の分散型制御システム。
【請求項19】
前記企業制御モジュール、前記複数の地域制御モジュールの各々及び前記複数の局所制御モジュールの各々は、ユーザーインターフェースを介して認証されたユーザーから発行された命令を受信する及び前記命令に応答する請求項1から18のいずれか一項に記載の分散型制御システム。
【請求項20】
発電及び電力消費状況を含むシステム状態に対するシステム応答及びオペレーションを予測することができるモデリングモジュールを更に備える請求項1から19のいずれか一項に記載の分散型制御システム。
【請求項21】
前記モデリングモジュールは、前記複数のDERでの発電を割り当て、特定の電力潮流目標を満たすべく、モデル化された制御のセットを構築する請求項20に記載の分散型制御システム。
【請求項22】
前記モデル化された制御のセットを、前記システムに適用することができる請求項21に記載の分散型制御システム。
【請求項23】
コンピュータを、
複数の電力消費施設に接続された複数の分散型エネルギー資源(DER)を含む送電/配電電力グリッドを管理する手段、
自己修正及び予測計算のうち少なくとも一方を使用して、前記送電/配電電力グリッド内の電力潮流パラメータ特定の動作制限内に維持するように、企業制御モジュールにおいて動的に管理する手段、
複数の前記DERのうちの一部と関連付けられた1地域とそれぞれ関連付けられる複数の地域制御モジュールのうちの1又は複数において、前記企業制御モジュールからの電力要求を受信する手段、
前記複数の地域制御モジュールの各々において、関連付けられた地域内の前記複数のDERを管理する手段
として機能させるためのプログラム。
【請求項24】
前記コンピュータを、
前記企業制御モジュールにおいて、前記複数の地域制御モジュール及び複数のシステムユーザーの少なくとも一方のうちの少なくとも1つからの地域電力潮流要求を受信する手段として更に機能させる請求項23に記載のプログラム。
【請求項25】
前記コンピュータを、
前記複数の地域制御モジュール及び前記複数のシステムユーザーの少なくとも一方のうちの前記少なくとも1つから受信された地域電力潮流要求に応答して、前記企業制御モジュールにより地域電力潮流命令を発行する手段として更に機能させる請求項24に記載のプログラム。
【請求項26】
前記コンピュータを、
複数の局所制御モジュール及び複数のシステムユーザーの少なくとも一方のうちの少なくとも1つからの局所電力潮流要求を、前記複数の地域制御モジュールのうちの少なくとも1つにより受信する手段として更に機能させる請求項24又は25に記載のプログラム。
【請求項27】
前記コンピュータを、
前記複数の局所制御モジュール及び複数のシステムユーザーの少なくとも一方のうちの前記少なくとも1つから受信した局所電力潮流要求に応答して、前記複数の地域制御モジュールのそれぞれにより局所電力潮流命令を発行する手段として更に機能させる請求項26に記載のプログラム。
【請求項28】
前記複数のDERを管理する手段は、局所制御モジュールを介して複数のDERに対して発行される、前記DERが理解できる標準化された制御命令を管理する請求項23から27のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項29】
前記コンピュータを、
前記複数のDERの各々に関するデータを収集する手段として更に機能させ、
前記データは、最大出力、最小出力及び応答時間の少なくとも1つを含む
請求項23から28のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項30】
前記コンピュータを、
第2地域における電力需要の変化に応答して、第1地域における電力潮流を変化させるべく、前記複数の地域制御モジュールの1又は複数に対する命令を起動する手段として更に機能させる請求項23から29のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項31】
前記コンピュータを、
ユーザーが起動した要求に応答して、地域における電力潮流を変化させるべく、前記複数の地域制御モジュールの1又は複数に対する命令を開始する手段として更に機能させる請求項23から30のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項32】
前記コンピュータを、
ユーザーが起動した要求に応答して又は自動的に、前記複数の地域制御モジュールの各々と関連付けられた前記複数のDERを再規定する手段として更に機能させる請求項23から31のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項33】
前記コンピュータを、
予測された又は導出された電力潮流に基づいて、DERの静的オペレーション及び動的オペレーションの少なくとも一方を決定する手段として更に機能させる請求項23から32のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項34】
前記コンピュータを、
前記送電/配電電力グリッドの既存の接続性及び状態をリアルタイムに分析する手段として更に機能させる請求項23から33のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項35】
前記コンピュータを、
前記送電/配電電力グリッドとは電気的に分離された地域のオペレーションを前記地域内の動的な電力需要を満たすべく独立して行う手段として更に機能させる請求項23から34のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項36】
前記コンピュータを、
独立して行われる地域のオペレーションを、前記送電/配電電力グリッドへと再び組みこむ及び同期させるべく、前記複数のDERを動的に管理する手段として更に機能させる請求項35に記載のプログラム。
【請求項37】
前記企業制御モジュール、前記複数の地域制御モジュール、複数の局所制御モジュール及び前記複数のDER間の接続経路を修正する手段として更に機能させる請求項23から36のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項38】
複数の分散型エネルギー資源(DER)を含む送電/配電電力グリッドを管理するためのコンピュータシステムであって、
前記コンピュータシステムは、
複数の前記DERの各々のためのDERインタフェースと、
ソフトウェアとして具現化される命令を実行可能であり、送電/配電電力グリッドの、発電及び電力消費データを収集する既存の監視制御及びデータ取得システム(SCADA)と接続可能な機械と、
複数のソフトウェア部分と
を備え、
前記DERインタフェースの各々は、実装特定のコマンド及びデータを変換し、
前記複数のソフトウェア部分の1つは、自己修正及び予測計算のうち少なくとも一方を使用して、前記送電/配電電力グリッド内の電力潮流パラメータ特定の動作制限内に維持するように、企業制御モジュールにおいて動的に管理するよう構成され、
前記複数のソフトウェア部分の別の1つは、複数の地域制御モジュールのうちの1又は複数において、前記企業制御モジュールからの電力要求を受信するよう構成され、
前記複数の地域制御モジュールの各々は、前記複数のDERの一部と関連付けられる1地域と関連付けられ、
前記複数のソフトウェア部分の更なる別の1つは、前記複数の地域制御モジュールの1又は複数において、前記複数の地域制御モジュールのうちの1つを介して、前記1又は複数の地域制御モジュールと関連付けられた前記地域内における前記複数のDERの1又は複数に対する命令を発行するように構成されるコンピュータシステム。
【請求項39】
第2地域からの潮流要求に応答して、第1地域における電力潮流を修正するべく前記複数の地域制御モジュールの1又は複数に対する前記企業制御モジュールからの命令を起動するよう設定されたソフトウェア部分を更に備える請求項38に記載のコンピュータシステム。
【請求項40】
様々なシステム状態に対するシステム応答及びオペレーションを予測するソフトウェア部分を更に備える請求項38又は39に記載のコンピュータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、概して、電力グリッド(送電網)に関し、より詳細には、電力グリッドにおける電力の割り当て、生成及び消費の制御のためのシステム及び方法に関する。
【0002】
[関連出願]
本願は、2009年11月3日出願の米国特許仮出願61/257,834号、及び、2010年7月29日出願の米国特許出願12/846,520号明細書の優先権を主張するものであり、前記出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
電力グリッドは、単体ではなく、複数のネットワーク及び複数の電力会社の統合体であり、複数の運営会社が、様々なレベルの通信及び調整方法を採用しており、多くの場合、手動で制御されている。スマートグリッドは、電力供給側及び電力消費側との間の接続性、自動化及び調整力、電力の長距離伝送又は局所配電を実行するネットワークを向上させる。
【0004】
今日の交流電流電力グリッドは、19世紀後半に設計された。当時の実装における判断及び仮定の多くは、今日でも使用されている。例えば、現在の電力グリッドは、需要主導型の中央化された一方向電力送信システムを含む。過去50年にわたって、電力グリッドは、現代における課題に対して遅れをとってきたと言える。例えば、セキュリティ、代替エネルギー発電の採用という国の目標、環境保全の目標、電力需要ピークの制御、無停電電力の需要、及び、新しいデジタル制御デバイスのような課題について、今日の送電グリッドが解決する能力を有しているかは疑問である。これらの課題の性質を理解するには、現在の発電及び配電を正しく理解することが必要である。
【0005】
既存の電力グリッドは、発電所から始まり、その後、様々な送電線を通じて、電力を消費する施設に分配される。発電は、ほぼ全てのケースで、発電機を回すことによって行われる。発電機は、水力発電のダム、大型ディーゼルエンジン又はガスタービンによって駆動される場合もあるが、大半は、蒸気で駆動される。蒸気は、石炭、石油、天然ガスを燃やすことによって生成され、原子炉によって生成される場合もある。電力はまた、化学的な反応、太陽光から直接変換する、及び、その他の手段によっても生成することができる。
【0006】
このような発電機によって生成される電力は、交流電流である。直流とは異なり、交流電流は、正弦波に似た態様で振動する。1つの正弦波として動作する交流電流(AC)は、単相電力と称される。既存の発電所及び送電線は、AC電力の3つの異なる相を同時に搬送する。これらの相の各々は、互いに120°のオフセットを有し、各相は、別々に分配される。電力がグリッドに印加される場合、使用される特定の送電線の現在の相と同期させる必要がある。
【0007】
この3相の電力が発電所の発電機を離れると、長距離送電のために発電された電圧が高周波数へとアップコンバートされる送電変電所へと入る。そして、地域の配電エリアに到達すると、高送電電圧は、局所的な又は地域の送電グリッドに適応するべくステップダウンされる。このステップダウンプロセスは、通常は受変電設備で、複数の段階に分けて行われる。
【0008】
図1は、当業者にとって周知の典型的な電力グリッドである。図に示すように、3つの発電所110が、電力消費者150の3つの異なる別個領域に電力を供給している。発電所110はそれぞれ、送電線140を介して電力消費者150と接続されている。発電側110と消費側150との間には、1以上の送電変電所125及び受変電設備130が介在する。図1にはまた、発電所が、高圧送電線120を介して接続されている様子も示されている。
【0009】
各発電所110から、電力は送電変電所125へと分配された後、配電バスと接続されている受変電設備130へとステップダウンされ、電気が標準的な送電電圧である約7200Vになる。このような電線は、世界中で街でよく見かける電線であり、それにより、エンドユーザー150へと電力が届けられる。家庭及び多くの会社は、一般的に電線で送電される3相の電力のうちの1つのみを必要とする。各家庭に到達する前に、配電変圧器が、7200Vを約240Vにまで下げ、それを通常の家庭での電気使用のために変換する。
【0010】
現在の配電システムには、複数のエンティティが関わっている。例えば、発電が1つのエンティティによって行われ、長距離送電が別のエンティティによって行われる場合がある。このような会社の各々は、最終的に電力を電力消費者へと届ける1以上の配電ネットワークとやり取りを行う。本明細書に記載される制御の区分は絶対ではないが、配電電力グリッドにおける電力の動的制御の障害物を表している。
【0011】
現在の送電グリッドの下では、電力消費者のグループが要求する電力が、関連付けられている発電施設の発電能力を超える場合があり、このような発電施設は、ネットワークを構成する別の発電所から余剰電力を買うことができる。電力を信頼性高く効率的に輸送できる距離には限界があり、電力消費需要が増加した場合には、その地域に発電施設が必要となる。消費者は、消費する電力を生成する発電側について、ほとんど制御することができない。
【0012】
この種の送電網が、過去100年にわたって使用されてきている。そして、全体のコンセプトはほとんど変わっておらず、非常に信頼の高いものである。しかしながら、既存の電力グリッドが古くなりつつあり、電力が発電側から消費側と効率的に分配されるような新規の制御システムが必要であることが明らかになってきている。例えば、消費者が要求する電力が日常的に地域の発電施設の能力を超えてしまうような場合、地域の発電ネットワークの管理者及び所有者は、更なる発電能力を追加すること、又は、消費者の一部にサービスの提供を断る、すなわち、電力供給の一時停止を考える。更なる電力をグリッドに追加するためには、新規の配電オプションを理解及び制御するための複雑で時間の掛かるプロセスを通過しなければならない。グリッドがどの程度ピーク需要を扱うことができるかその能力を知る必要があり、また、グリッドが安全に動作するかを監視・確認する必要があり、場合によっては、更なるインフラを構築する必要がある。このプロセスは何年も掛かり、発電及び電力需要の動的性質を考慮できなくなってしまう。
【0013】
既存の送電網制御システムを改良する必要がある一側面として、新規の代替及び再生可能発電資源の出現、分散型蓄電システム、需要管理システム、スマート家電及びネットワーク管理のためのインテリジェントデバイスが挙げられる。これらの選択肢はそれぞれ、送電ネットワークの動的電力管理を必要とし、現在送電ネットワーク管理に利用されている制御ストラテジーを拡張する必要がある。
【0014】
既存のネットワーク管理ソリューションでは、様々なタイムスケールでのネットワークにわたる電力潮流を管理する配電インテリジェンスが欠けている。グリッドに接続されている新規の発電アセットは一般的に、異なる複数の団体によって所有されており、様々な利点を異なる複数の団体に異なる時間に届けるのに利用できることから、既存のソリューションの欠点がより明白となる。従来の電力システム管理ツールは、ネットワーク事業者自身が所有するネットワーク設備及びシステムを動作させるように設計されている。そして、従来の電力システム管理ツールは、エンドユーザー(電力消費者)、サービス提供側、ネットワーク事業者、発電側、及び、その他市場の参加者間での動的なやり取りを可能とするように設計されていない。
【0015】
既存の電力グリッドは、一方向の電力の流れに対して設計されており、局所サブネットワーク又は地域で消費量を超える電力が発電される場合、電力の反対方向の流れは、安全性及び信頼性に問題があった。したがって、様々なエネルギー消費者、発電資源の所有者、サービス提供者、市場参加者、及び、ネットワーク事業者の間の動的なやりとりを可能とするべく、発電アセットをリアルタイムで管理するという課題が存在する。現在の送電グリッドにおけるこれら及びその他の課題は、本発明の1以上の実施形態により解決される。
【発明の概要】
【0016】
一例として、送電グリッドにおける電力の動的管理及び送電のためのシステムが記載される。本発明の一実施形態によれば、多階層の制御アーキテクチャは、既存の送電グリッド及び配電グリッドに統合されて、発電、送電、蓄電及び電力消費(分散型エネルギー資源と総称する)の管理を可能とする。この動的制御は、実装の前に提案された送電解決方法をモデル化する能力により補完され、それにより、提案された送電解決方法が、既存のインフラの物理的及び規制の制限内で動作するか否かを検証することができる。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、分散型制御システムは、既存の送電グリッドに結合して、効率的に発電及び配電を制御する。分散型制御システムは、i)企業制御モジュール、ii)地域制御モジュール、及び、iii)局所制御モジュールという3つの主要な階層を有する。企業制御モジュールは、既存の監視制御及びデータ取得システム、並びに、複数の地域制御モジュールと通信可能に接続される。地域制御モジュールは、既存の送電変電所及び配電変電所に組み込まれて、グリッドにおける電力潮流を動的に管理するべく、その他のデバイス又は制御モジュールを監視する及びこれらへの制御信号を発行する。各地域制御モジュールは更に、発電施設及び需要管理システム又はスマート家電と接続された複数の局所制御モジュールと関連付けられる。発電施設としては、蒸気駆動発電機、風力発電施設、水力発電設備及び太陽光発電アレイ、熱又は電気蓄積デバイス及び電気自動車のバッテリーのような蓄電リソースが挙げられる。
【0018】
各局所制御モジュールは、関連付けられた発電施設、電力消費施設又はデバイスの管理及び制御のため、地域制御モジュールの指示に従う。制御応答を標準化することにより、地域制御モジュールは、関連付けられた地域内の発電、配電、蓄電及び電力消費を管理することができる。本発明の別の実施形態では、地域制御モジュールは、企業制御モジュールを介して、更なる発電要求を特定することができる。その他の地域の発電能力及びその他の地域が余剰発電容量を有するか否かを知ることにより、企業制御モジュールは、異なる地域制御モジュールに対して、発電量の増加を指示し、余剰電力を発電する又は蓄積されていたエネルギーを利用することができる。余剰電力は、配電のために電力を必要としている地域に送信される。
【0019】
本発明の別の実施形態によれば、発電及び配電システムに対する修正を、リアルタイムでシミュレーションすることができ、増加する電力消費要求を満たすべく提案された解決策が、規制、安全のガイドライン、及び/又は、システム能力の範囲内であるかを判断することができる。提案された解決策が、基準を満たすものであると判断された場合には、リアルタイム制御を使用してその解決策を実装することができる。
【0020】
本発明の別の側面は、電力グリッド全体にわたる企業レベルの電力負荷需要、エネルギー生成及び配電を管理することを含む。複数の電力消費施設より需要の変化が発生すると、企業制御モジュールは、1以上の地域制御モジュールを使用して、更なる電力の必要性を検出することができる。加えて、企業制御モジュールは、局所的な消費者の需要に関連して余剰電力を生成する能力についての各地域制御モジュールからのデータを受信することができる。企業制御モジュールは、余剰電力を別ルートに振り分け、発電を増加させる又は電力消費を低減させるべく、1以上の地域制御モジュールに命令を発行することができる。このような命令を受信すると、地域制御モジュールは、地域内における発電施設と通信を行い、発電量を増加させる。各発電施設に送信される命令は標準化されて、分散型電力グリッドと関連付けられる様々な発電オプションによる発電応答が、一貫性を有したものになるようにしている。また、システムを安定した動作状態に保つために早急な対応が求められる場合には、局所制御モジュール及び地域制御モジュールは、独立して動作することができる。
【0021】
本発明は更に、ネットワーク構造、アセットの利用可能性、発電レベル又は負荷状態の変化に対して、再プログラミングを必要とせず、自動的に応答する能力を有する。本発明の一実施形態によれば、企業制御モジュール及び地域及び局所制御モジュールは、分散型エネルギーグリッドの周知の構成要素の知識を有する。例えば、更なる風力タービンのような周知の分類の新規の構成要素がグリッドに接続されると、本発明の様々な階層が即時にそれを認識し、風力タービンが特定の特性及び能力を有することを認識する。本発明では、これらの特徴及び能力を知ることにより、発電及び配電に関して、シームレスに命令を発行することができる。命令が発行されると、地域及び局所制御モジュールは、デバイスが理解可能であり期待されるように実行可能な態様で、正確な情報を各構成要素に提供することができる。本発明はまた、分散型グリッドのものとは異なる構成要素を認識する能力を有する。未認識のデバイスがグリッドに接続されると、局所制御モジュールは、このデバイスの特性、属性及び能力を特定するべく問い合わせを開始する。そして、その情報が情報リポジトリ(保存場所)に追加され、デバイスの通信及び制御に利用される。このプロセスは、手動で行われてもよいし、自動で行われてもよい。
【0022】
本発明は更に、企業制御モジュールは、機能的能力を、様々な種類のサービスを実装するためのその他のアプリケーションに対して開示される。例として、コントローラによって提供されるインポート/エクスポート機能を使用して、変電所におけるフィーダの最大負荷を制限するフィーダピーク負荷管理アプリケーション、及び、局所発電資源及び局所制御を使用して、グリッドから分離されて独立して動作するべく、地域制御モジュールに"アイランド"命令を発行する信頼性アプリケーションが挙げられる。企業制御モジュールによって明らかとなる機能的能力の情報を利用して、多くのアプリケーションが、安定を犠牲にする又は動作制限を破ることなく、ネットワークの発電能力、消費能力及びアセット蓄積能力を利用することができる。
【0023】
本発明は、グリッド運営の安定性及び信頼性を保ちつつ、異なるサービス提供者間及びサービス利用者間の一般的なやり取りの自動化(電力消費側、サービス提供側、ネットワーク管理、発電施設及びその他の市場参加者間の動的なやりとり)を可能とする方法及びシステムを提供する。本発明の多階層のアプローチにより、システムのフロントエンドで動作するアプリケーションと、バックエンドに接続されるデバイスとの間の安定したインターフェースを提供することができる。すなわち、アプリケーション及びデバイスの両方が、分散型電力グリッドの管理に利用できる"プラグアンドプレイ"を利用可能となる。一例として、ピーク負荷管理アプリケーションが自動的に利用可能発電機を見つけ、配電フィーダにおいて需要限界を超えないように、発電機を利用することができる。これは、文書作成アプリケーションが、必要に応じて自動的に利用可能なネットワークプリンタを探すのと似ている。
【0024】
本開示及び以下の詳細な説明に記載される特徴及び利点は、全て包括的なものではない。図面、明細書及び特許請求の範囲において、数多くの更なる特徴及び利点が、当業者であれば理解できる。また、明細書で使用される言葉は原則として、読み易さ及び教示することを目的として選択されており、特許請求の範囲を参照して、発明の特徴を決定するのに必要な特徴を詳細に説明するべく選択されていない場合がある。
【0025】
本発明の上記の及びその他の特徴及び目的、及び、目的を達成する態様については、添付の図面を参照して1以上の実施形態について説明される以下の説明を参照することにより、明らかとなり、発明自体もより良好に理解されるであろう。
【0026】
添付の図面は、本発明を例示する目的で、本発明の実施形態を示している。当業者であれば、以下の説明から、図示される構造及び方法の別の実施形態を、明細書に記載される本発明の原理から逸脱することなく採用することができることが理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】従来技術で知られている送電グリッドが示されている。
図2】本発明の一実施形態に係る分散型電力グリッドを制御するシステムの高レベルプロセスを示した図である。
図3A】本発明の一実施形態に係る、分散型制御方法をシミュレーションされた電力システムへと実装するプロセスフローを示した高レベルブロック図である。
図3B】本発明の一実施形態に係る、制御方法に変更を加えずに、図3Aでテストされた分散型制御方法を、シミュレーションされた電力システムを使用して実際の電力システムに実装するためのプロセスフローを示した高レベルブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係る発電、トポロジー及びアセット管理のための分散型エネルギー資源ネットワークオペレーティングシステム(図3A及び図3Bに示したスマートグリッド制御の別の実施形態)の高レベル機能ブロック図であり、分散型エネルギー資源ネットワークオペレーティングシステムによって明らかになった機能的能力を新規のアプリケーションが利用して、より複雑なシステム能力を実装する場合が示されている。
図5】本発明の一実施形態に係る分散型電力グリッドを制御するためのマルチレイヤアーキテクチャの高レベルブロック図である。
図6】本発明の一実施形態に係る局所制御モジュールオペレーションのフローチャートである。
図7】本発明の一実施形態に係る地域制御モジュールのフローチャートである。
図8】本発明の一実施形態に係る企業制御モジュールのフローチャートである。
図9】本発明の係る分散型電力グリッドにおける送電及び発電を制御する方法の一実施形態のフローチャートである。この実施形態では、需要の低下が、負の発電としてとらえられている。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の説明を簡便にするべく、次のような用語が使用されている。以下の用語の説明は、紹介及び要約に過ぎず、以下に示される用語は、詳細な説明で使用されるコンテキストにより、正確に解釈されるべきである。
【0029】
"クラウドコンピューティング"とは、動的に拡張可能であり、多くの場合、仮想化されたリソースが提供されるコンピューティングの理論的枠組みであり、インターネットを介したサービスとして提供される。ユーザーは、利用する"クラウド"の知識、専門知識を必要とせず、また、その技術的インフラの制御を行う必要がない。コンピュータネットワークの略図においてどのようにインターネットが描かれているかに基づいて、クラウドという用語はインターネットのメタファーとして使用されており、隠れている複雑なインフラの抽象表現である。
【0030】
"HTTP(ハイパーテキストトランスファープロトコル)"は、インターネット上又は同様なワイドエリアネットワークでの情報の転送のための通信プロトコルである。HTTPは、クライアントとサーバとの間のリクエスト/応答規格である。クライアントはエンドユーザーであり、サーバはウェブサイトである。ウェブブラウザ、スパイダー、又は、その他のエンドユーザーツールを使用して、HTTPリクエストを生成するクライアントは、ユーザーエージェントと称される。HTMLファイル及び画像のようなリソースを格納又は生成する応答サーバーは、オリジンサーバと称される。ユーザーエージェントとオリジンサーバとの間には、プロキシ、ゲートウェイ及びトンネルのような様々な介在物が存在してもよい。HTTPは、インターネット上で最も利用されているTCP/IP(以下に規定する)及びその支持層の使用に限定されない。
【0031】
"ウェブサーバ"とは、ウェブブラウザとして知られるウェブクライアントからのHTTPリクエストを受け取る役割を行うコンピュータプログラムを収容するコンピュータであり、通常HTMLドキュメントやリンクされたオブジェクト(画像等)等のウェブページである必要に応じたデータコンテンツと共に、HTTP応答を提供する。
【0032】
"インターネットプロトコル(IP)"は、TCP/IPとも称されるインターネットプロトコルスイート(Internet Protocol Suite)を使用して、パケット交換インターネットワークにわたってデータを通信するのに使用されるプロトコルである。インターネットプロトコルスイートは、インターネット及びその他の同様のネットワークに対して使用される通信プロトコルのセットである。これは、伝送制御プロトコル(Transmission Control Protocol:TCP)及びインターネットプロトコル(IP)という最も重要な2つのプロトコルから命名されており、この2つは、この規格において最初に規定されたネットワークプロトコルである。現在のIPネットワークは、1960年代及び1970年代に発展し始めた幾つかの動きの統合を表しており、すなわち、1980年代半ば及び後半に登場したインターネット及びLAN(ローカルエリアネットワーク)と、1990年代初頭に誕生したワールドワイドウェブとの統合である。多くのプロトコルスイートと同様に、インターネットプロトコルスイートは、複数の階層(layer)の1セットと見なすことができる。各階層は、データ送信に関する複数の問題の1セットを解決し、幾つかの下階の層からのサービスの利用に基づいて、上層の層プロトコルに良好に規定されたサービスを提供する。上層は、論理的にユーザーに近く、より抽象的なデータを扱い、最終的に物理的に送信することができる形式へとデータを変換する下層のプロトコルに依存している。TCP/IPモデルは、4つの階層(RFC1122)から構成されている。最下層から最上層まで順番に、リンク層、インターネット層、トランスポート層及びアプリケーション層の4つである。
【0033】
ワイドエリアネットワーク(WAN)は、広域をカバーするコンピュータネットワークである(すなわち、通信リンクが、大都市、地域又は国の境界を超える任意のネットワーク)。WANは、一般的に部屋、建物、構内又は特定の都市領域(例えば、市)にそれぞれ限定されるパーソナルエリアネットワーク(PAN)、ローカルエリアネットワーク、キャンパスエリアネットワーク(CAN)又は特定のメトロポリタンエリアネットワーク(MAN)とは異なる。WANは、ローカルエリアネットワークとその他の種類のネットワークとを一緒につなげるのに使用され、あるロケーションにおけるユーザー及びコンピュータは、その他のロケーションにおけるユーザー及びコンピュータと通信を行うことができるようになる。多くのWANは、1つの特定の組織を対象として構築される及びプライベートである。その他、インターネットサービスプロバイダによって構築されるWANは、組織のローカルエリアネットワークからインターネットへの接続を提供する。
【0034】
"ローカルエリアネットワーク(LAN)"は、家庭、オフィス、又は、学校又は空港のような建物の小さなグループのような小さな物理的エリアをカバーするコンピュータネットワークである。WANとは対称的に、LANの特徴として、一般的に、高いデータ転送レート、地理的に小さなエリア、及び、リースの通信ラインが必要ないということが含まれる。
【0035】
インターネットは、規格化されたインターネットプロトコルスイートを使用した相互接続コンピュータネットワークのグローバルシステムであり、世界で数十億人にサービスを提供している。インターネットは、数百万のプライベート、公共、学術、ビジネス及び政府機関のネットワークからなるネットワークを接続するネットワークであり、ローカルからグローバルまで、銅線、光ファイバーケーブル、無線通信及びその他の技術によって接続されている。インターネットは、無数の情報ソース及びサービスを搬送し、特に、ワールドワイドウェブのインターリンクされたハイパーテキストドキュメントを搬送する、及び、電子メールをサポートするインフラでもある。加えて、オンラインチャット、ファイル転送及びファイル共有、ゲーム、インターネット取引、ソーシャルネットワーク、出版、ビデオオンディマンド、テレビ電話及び電気通信のような多くの人に利用されているサービスもサポートする。
【0036】
遠隔監視制御・情報取得(Supervisory Control And Data Acquisition:SCADA)とは、プロセスの監視及び制御と関連して使用される産業制御システム、電気グリッド制御システム又はコンピュータシステムを指す。一般的に、SCADAシステムとは、広域に広がるシステムのサイト又は複合体の監視を調整するシステムを指す。制御動作の多くは、遠隔端末装置(RTU)又はプログラマブルロジックコントローラ(PLC)によって自動的に実行される。本発明の目的において、SCADAは、本発明が電力消費需要情報及び分散型電力グリッドに関するデータを取得するための数多くの手段のうちの1つである。
【0037】
分散型エネルギー資源(DER)とは、発電、エネルギーの蓄積/解放、消費管理及び電力グリッド全体にわたる測定及び制御を提供可能なアセット、設備又はシステムのことである。エネルギー資源はそれぞれ、種類及び能力が異なる。
【0038】
プロセス制御のためのオブジェクトのリンク及び埋め込み(OPC:(Object Linking and Embedding) for Process Control)は、Windows(登録商標)プログラムが産業のハードウェアデバイスと通信を行うことを可能とするソフトウェアインターフェース規格である。OPCは、サーバ/クライアントの対に実装される。OPCサーバは、プラグラマブルロジックコントローラ(PLC)(1以上のハードウェアデバイスを制御する小型の産業コンピュータ)によって使用されるハードウェア通信プロトコルを、OPCプロトコルへと変換するソフトウェアプログラムである。OPCクライアントソフトウェアは、ハードウェアを接続するのに必要な任意のプログラムのことである。OPCクライアントは、OPCサーバを使用して、ハードウェアからデータを取得する又はハードウェアにコマンドを送信する。本発明において、様々なDER、アプリケーション及びシステムと通信を行うのに利用するアプリケーション又はシステム間での情報交換に、多くのインターフェース規格及びプロトコルを利用可能である。
【0039】
スマートグリッドは、エネルギー生成、消費、蓄積及び放出を制御するデジタル技術を利用して、電力供給側から消費者へと電気を供給し、消費者の家庭における家電は、需要を管理及び/又は節電し、コストを低減させ、信頼性及び透明性を高めている。スマートグリッドと従来のグリッドとの違いは、グリッドオペレーションの最適化、サービス選択肢の増加、及び、複数のサービスプロバイダ(エネルギー消費者を含む)が、動的なエネルギー及びサービス取引に参加することを可能にするべく、広範通信及びインテリジェントの制御が使用される点である。
【0040】
添付の図面を参照して、本発明の実施形態が、詳細に記載される。本発明が、ある程度の詳細度で記載及び例示されるが、本開示は、一例であり、構成要素の組み合わせ及び配置における数多くの変更が、本発明の精神及び範囲内で当業者には可能である。
【0041】
本発明の実施形態は、分散型電力グリッドに接続される複数のDER及びネットワーク構成要素の管理及び制御を可能とする。従来の電力グリッドと異なり、スマート電力グリッドは、送電ネットワーク内の局所レベル又は領域レベルにおける発電、蓄電及び負荷管理を可能とする。発電、蓄電、負荷管理及び送電を簡易にするべく、本発明では、様々な複数のエネルギー生成及び制御要素に様々なサービスを提供する様々なアプリケーションを接続する多階層の制御システムを構築する。以下の説明に含まれるフローチャートには、設置されるDER及びシステムの能力を利用した送電及び配電電力グリッドの制御及び管理に使用してもよい方法の例が示されている。以下の説明では、フローチャートの各ブロックの例、フローチャートにおけるブロックの組み合わせの例は、コンピュータプログラム命令によって実装することができる。これらコンピュータプログラム命令は、コンピュータ又はその他のプログラム可能装置に読み込まれて、命令がコンピュータ又はその他のプログラム可能装置で実行されると、フローチャートの1ブロック又は複数のブロックに規定される機能を実装する手段を生成する機械が構成される。これらコンピュータプログラム命令は、コンピュータ又はその他のプログラム可能装置を特定の態様で機能させるように向けることができるコンピュータ可読メモリに格納されてもよく、コンピュータ可読メモリに格納される命令は、フローチャートの一ブロック又は複数のブロックに規定される機能を実装する命令手段を含む製造物品を生み出す。コンピュータプログラム命令はまた、コンピュータ又はその他のプログラム可能装置に読み込まれてもよく、コンピュータ又はその他のプログラム可能装置において実行される一連の動作段階を引き起こし、コンピュータ又はその他のプログラム可能装置において実行される命令がフローチャートの1ブロック又は複数のブロックに規定される機能を実装する段階を提供するコンピュータ実装されるプロセスが生成される。
【0042】
したがって、フローチャートのブロックに例示される手段の組み合わせが、規定された機能を実行するための段階の組み合わせ及び規定される機能を実行する手段の組み合わせをサポートする。フローチャートの各ブロックの例示、及び、フローチャートにおける複数のブロックの組み合わせの例は、特定の機能又は段階を実行する専用ハードウェアベースのコンピュータシステム、又は、専用ハードウェアとコンピュータ命令との組み合わせによって実装することができる。
【0043】
現在、電力グリッドシステムは、発電所、送電線、変電所及び多数のエネルギー使用者といったように、高価値アセットのための制御システム内に、様々なレベルの通信を有する。一般的に、情報は、ユーザーから一方向に流れ、ユーザーが制御する負荷が、電気の公共事業体へと戻される。電気公共事業体は、発電側と共に需要に応えることを試み、自動的に負荷を追従して、予備供給を送電する。送電の成功又は失敗については、様々な程度が存在する(通常動作、停電、輪番停電、無制御停電)。ユーザーが必要とする電力の総量は、非常に範囲の広い確立分布となり、急速に変化する電力使用量に応えるために、スタンバイモードで動作する予備の発電設備が必要となる。このようなグリッド管理方法は高価であり、ある試算によれば、発電容量の少なくとも10%を1%の時間のために用意する必要があり、電圧低下及び輪番停電は、消費者に高くついてしまう。
【0044】
グリッドの既存の電線は、元は、放射状モデルを使用して構築されており、後の接続性は、メッシュネットワーク構造と称される複数のルートによって保証されている。ネットワークにおける電流の流れ又は関連する効果が、特定のネットワーク要素の限界を超えた場合、障害が発生し、電流は別のネットワーク要素に短絡されて、最終的にはまた障害が発生し、ドミノ効果が起きてしまう。このような障害の発生を防ぐ技術として、輪番停電又は電圧低下(brownout)による電力平均分配(負荷制限)がある。
【0045】
分散型発電は、個々の消費者が好適であると考える発電方法を利用して、電力消費場所で発電することを可能にする。これにより、個人が自身の発電を、直接電力消費に合わせることができ、送電網の障害とは無関係にすることができる。しかしながら、地域のサブネットワークが消費される量を超える電力を発電する場合、逆流が生じて、安全面及び信頼性に問題が生じ、電力グリッドの障害の連鎖が発生する可能性がある。分散型発電は、電力グリッドの任意の部分に追加することができるが、このようにエネルギー資源を追加する場合、電力システムへの負の影響を最小限にするべく適切に調整を行う必要がある。本発明の実施形態は、上記の問題に対処するべく、安全且つ信頼性高く、分散型電力グリッドにおける発電、送電、蓄電及び消費を制御する方法を提供する。
【0046】
本発明の一実施形態によれば、多階層の制御システムが、既存の電力グリッドに重ね合わせられる及び統合される。既存のSCADAシステムに関して収集されたデータを使用して、企業の制御モジュールが、電力需要、制御、管理及び送電全体を統括する。この企業制御モジュールは、局所又は地域レベルにおける発電及び送電を管理する地域制御モジュールとやりとりを行う。地域制御モジュールはそれぞれの管轄エリア内において、複数のDERと接続されており、動的に発電及び消費を管理し、システムを所定の信頼性及び安全性の限度内に維持する。企業制御モジュール、地域制御モジュール及び局所制御モジュールの3つの層が、分散エネルギー資源ネットワークオペレーティングシステムを構成し、このシステムは、複数のエネルギー生成者の任意の1つが、エネルギーを提供し、複数のエネルギー消費者のうちの任意の1つがエネルギーを引き出すことができるような安定的な環境を提供する。本発明のシステムは、分散型電力グリッドの安定性及び信頼性に弊害をもたらすことなく、電力グリッドの個々の構成要素、エネルギー消費者及び生成者に動的に変化することを可能とする。
【0047】
図2には、本発明の一実施形態に係る分散型電力グリッドの制御のための通信システムの高次オーバーレイが示されている。従来の発電施設110は、変電所125と接続されており、風力発電施設220及び太陽電池パネル210も変電所125と接続されている。図2には、発電の3つの形態が示されているが、当業者であれば、本発明は発電又はエネルギー源の如何なる形態にも適用可能であることは理解できる。本発明は、分散エネルギーグリッドに付加される電力を等しく管理可能であり、電力がグリッドの形式と互換性を有する限り、例えば、電気自動車のバッテリーの電力にも適用可能である。
【0048】
各変電所125には、地域制御モジュール225が関連付けられている。地域制御モジュールは、その地域内における利用可能なDERを使用して、発電、送電及び電力消費を管理する。また、大型商業施設及び住居の負荷250を表す工業負荷260が、各地域と関連付けられている。本発明によれば、1以上のアプリケーションを使用する地域制御モジュールは、その地域内の送電及び発電を自立的に管理することができる。自立的なオペレーションは、安全なグリッド動作を達成するのに十分な頻度で、グリッドの周波数及び電圧の管理が実行されるアイランドモードであってもよい。本発明は、DER及びグリッドのオペレーションの様々なモードを動的に管理し、電力潮流の管理に加えて、これらの機能を実行する。
【0049】
典型的な発電所110、及び、再生可能又は代替エネルギー源220のような、発電エンティティ210はそれぞれ、局所制御モジュール215を介して、地域グリッドと接続されている。地域制御モジュール215は、複数の発電設備それぞれに対して、制御コマンド応答を標準化する。地域制御モジュール225に対して、複数の発電エンティティの各々からの標準化された応答を提供することにより、地域制御モジュールは、拡張可能な態様で動的に電力グリッドを管理することができる。これは、任意の時間に利用可能なDERに応じて、コントローラがその動作を動的に変更できることを意味する。分散されたコントローラは、付加される、サービスから除外される、障害が発生する、又は、接続性を失うアセットを動的及び自動的に補償する。このような能力により本発明は、ネットワーク構造又はDERの供給力に変化が生じる都度、システムを手動で変更する必要を最小限にする高度に拡張可能な性質を提供する。これは、本発明の、固有で有効な特徴である。
【0050】
本発明の多用途性及び拡張性を良好に理解するために、以下のような例を考える。図2には、送電管理ネットワーク200でオーバーレイされたプライマリ電力グリッド205(図では、点線で示されている)が示されている。図2に示されるように、地域制御モジュール225は、自身の管轄エリア内の発電、電力消費及びエネルギー分布を動的に管理する。動的管理を行うために、地域制御モジュール225は、企業制御モジュール275と接続し、企業制御モジュールは、地域制御モジュール225に、スマートグリッド制御285、データ280、及び、企業制御モジュール275と関連付けられたその他の管理アプリケーションへのアクセスを与える。この例では、管轄エリアが、分散型エネルギー生成プラント110及び風力発電施設220を含むことを考慮している。このような発電施設のやり取りの他に、地域制御モジュール225は、住宅における負荷250及び商業施設の負荷260によるエネルギー消費及び需要を知ることができる。風がない場合には、風力発電施設220がアイドル状態となる。そこで、地域制御モジュールは、発電所110によって生成されるエネルギー及びプライマリグリッド205から引き出される電力の、様々なエネルギー消費者250、260への分配を管理する。
【0051】
風力発電施設のタービンを動かすのに十分なそよ風が吹き始めた場合を仮定する。複数の風力タービンが一列になり、発電を行う状態となる。風力タービンが発電を開始すると、そのことを地域制御モジュール225が把握し、風力タービンが特定の性質及び特性を有することから、分散型エネルギー資源ネットワークオペレーティングシステム全体もそのことを特定する。風力タービンの性質及び特性を知ることにより、地域制御モジュールは、風力タービンとの通信及び制御を確立することができる。風力タービンが、更なる電力を提供できるようになると、地域制御モジュールは、住宅における負荷250及び商業施設における負荷260両方の分析に基づいて、発電所110に発電量を低減させるよう要求することができ、動作限界及び市場に基づく契約限界内でシステムを維持するように、プライマリグリッド205から引き出される電力を調整することができる。
【0052】
上記を実現するべく、地域制御モジュール225は、その地域内における配電スキーム(ネットワークトポロジー)を修正して、発電及び配電を最適化する。風力発電施設220における風力タービンのうちの1つが、地域制御モジュールが未知の種類である場合を仮定する。発電されている間、その性質、特性及びその他の発電に関するデータが、地域制御モジュールによって処理されない。本発明の一実施形態によれば、地域制御モジュール225及び局所制御モジュール215は、複数の照会(inquiries)を新規の風力タービンに送信して、その風力タービンに関するデータが、分散型電力グリッドに組み込まれるようにする。同じデータを、オペレーターが手動で入力することにより取得してもよい。データが取得されると、その情報は、全ての地域制御モジュールがアクセス可能なリポジトリ(保存場所)にデータを格納する企業制御モジュール275によって共有される。
【0053】
従来の発電所における発電は、蒸気を発生させて1以上の蒸気駆動式のタービンを回転させて、蒸気タービンが、発電機を駆動することにより発電される。その地域内で需要が増加すると、需要を実現し、新規のエネルギー量を生成できるのは、限られた時間である。この種の応答は、発電の種類のよって異なる。例えば、増加する需要が満たされた時点から、ガスタービンによる発電が利用可能となるまでの時間は、2分程度である。これは、制御インターフェースがガスタービンに発電を開始するよう命令を発行する時点から、変電所において電力が実際に実現されるまでに掛かる時間が、5分程度又はそれ以外の時間の長さであることを意味している。別の場合として、蒸気発電タービンが、その出力を30秒以内に増加させることができる場合、天然ガス往復エンジンを回転させることにより、出力を数秒で増加させることができ、フライホイールは、エネルギー生成に瞬時に貢献することができる。発電システム各々の制御入力に対する反応性は、それぞれ異なる。本発明の異なる階層内の制御アルゴリズムは、これらの異なる点を管理し、常に発電が動的に電力需要を満たすようにする。本発明の別の実施形態は、発電に関する入力を制御する応答を標準化する。DERの応答特性の知識は、所望の結果を生成するべく、コントローラが信頼性の高い適切な信号を発行することを可能にする。このようにすることにより、DERはそれぞれ、"プラグアンドプレイ"エネルギー生成デバイスの均等物となる。DERはそれぞれ固有の特性を有するが、本発明の制御管理システムへのDERの接続は、標準化されており、複数の異なる修理のDERの制御及び管理を可能にしている。性能特性、動作境界及びその他のDER及びグリッドの制約に関する情報は、様々な制御階層によって使用され、従来のSCADAベースのグリッド制御システムのように中央集中管理者が決定することなく、局所又は地域におけるアクションが取られる。この特徴ある方法により、本発明は、高度に拡張可能であり、状況変化に対する応答を高速化し、電力システム内に地理的に拡散する発電、蓄電及び負荷管理の様々なアセットを統合することができる。
【0054】
地域制御モジュール225と企業制御モジュール275との間の通信により、局所制御モジュール215はそれぞれ、DERの特性に関するデータを地域制御モジュール225に提供する。特性としては、最大出力、最小出力、応答時間、及び、当業者にとって周知のその他の特性が含まれてもよい。これらの特性を理解することにより、地域制御モジュール225及び企業制御モジュール275は、グリッドの信頼性及び安全性を危険に晒すことなく、発電及び送電を管理することができる。
【0055】
地域制御モジュール225が電力需要の増加を認識する別の例を考える。その地域内で関連付けられている局所制御モジュール215を介して、地域制御モジュール225は、1以上の更なる発電設備に増加した需要を満たすように指示することができる。発電設備の各々の制御応答を理解することにより、地域制御モジュールは、地域の動的な需要を満たすべく、適切な時間に適切なシーケンスで命令を発行する。
【0056】
地域制御モジュール225は更に、地域内の発電能力及び送電グリッドの限界を認識している。地域制御モジュール225は、発電側及び電力消費側に関するトポロジー及びその配電能力を理解している。地域制御モジュール225の各々は、本発明の一実施形態では、広域ネットワーク230を介して企業制御モジュール275に通信可能に接続されている。当業者であれば、広域エリアネットワークは、インターネット又は遠隔ロケーション間でデータを伝達するその他の手段であってもよいことは理解できる。本発明のその他の実施形態において、ローカルエリアネットワーク又はインターネットを介して、企業制御モジュール275と地域制御モジュール225との間でデータの交換を行うことができる。
【0057】
本発明の一実施形態によれば、企業制御モジュール275は、分散型電力グリッドの管理を助ける複数のアプリケーションを含む。これらのアプリケーションの中には、特に、データ可視化280、スマートグリッド制御285及び環境シミュレーション290が含まれる。スマートグリッド制御285は、フィーダ又はグリッド接続点における有効及び無効電力潮流制御、電圧、及び、ボルトアンペア無効電力(VAR)制御、風力発電及び太陽光発電のような再生可能発電源からの発電量の変動を中和するべく様々なアセットを利用した間欠性管理、及び、動作基準、コスト基準又は排出基準を満たすべく、発電、蓄電又は制御可能な負荷を最適に発動する能力といった能力を含む。
【0058】
企業制御モジュール275は、複数の地域制御モジュール225と制御下にある発電設備との間のやり取りを管理することができる。上記で述べたように、適用可能なアプリケーションを使用する地域制御モジュール225の各々は、制御下にある電力消費者及び電力生成者を動的に管理することができる。地域制御モジュール225によって管理される特定の領域内の需要(有効電力又は無効電力)が増加又は減少すると、1以上のDERアプリケーションが作動して、特定の領域内の発電を補償することができる。優先企業制御モジュール275及び地域制御モジュール225が、この種の動的及び安定な制御を可能とする。しかしながら、本発明では、1つの地域における電力消費需要が、その地域の発電施設の能力を超える可能性があることを考慮している。本発明の1つの特徴は、DERアプリケーションを利用する企業制御モジュール275が、更なる電力要求及び余剰電力発電能力の管理及び制御を請け負う。基本的に、企業制御モジュールはシステムレベルの調整を提供し、地域制御モジュールは地域の調整を提供し、局所制御モジュールはアセットの高速制御を提供し、それにより、様々なタイムスケール及び様々な地理的条件にわたって分散する多数のアセットを円滑に制御することができ、特定のシステム目標を達成することができる。
【0059】
データ可視化ユニット280は、ユーザー又はDERアプリケーションに、分散型電力グリッド全体にわたる電力需要及び発電能力の現在のステータスを提供する。任意の時点で、ユーザーは、発電側が更なる電力を供給できる能力、又は、ある地域における具体的な負荷を可視化することができる。さらに、データ可視化モジュール280は、ユーザーに、送電に使用される経路の利用可能性を知らせてもよい。地域制御モジュール225に対して発電量を増加させる命令を発行する前に、企業制御モジュール275は、提案された命令の効果をシミュレーションして、提案された変更下でのグリッドの安定性を試験することができる。
【0060】
既存の地域制御モジュール225及びそのDER設備からのリアルタイムデータを使用したシミュレーションモデル290で、予測される負荷を満たすべくシミュレーションされた一連の命令を起動することができる。分散型グリッドのトポロジー及び制御エリアの影響内の要素の電気的性質を知ることにより、シミュレーションモデル290は、提案された命令が、安全性及び規制等の所定の制限内で、増加した負荷を満たすことができるか否かを検証することができる。シミュレーションモデル290を使用して提案された命令が有効であると判断されると、同じ命令がスマートグリッド制御モジュール285に供給されて実行される。これは、自動動作で行われてもよいし、人間のオペレーターが仲介してもよい。このシミュレーションモデルは、システム内に配備される本発明の多階層分散型電力グリッド制御システムの振る舞い及び影響を考慮している。シミュレーションで、多階層分散型電力グリッド制御システムの振る舞いを考慮することができる点が、本発明の特徴である。
【0061】
図3A及び図3Bには、本発明の一実施形態に係る電力システムへシミュレーションされた(図3A)及び実際の(図3B)制御方法を実装するプロセスフローを示した高次ブロック図である。本発明の一実施形態において、データ可視化モジュール280は、ユーザーインターフェース315、データ取得管理モジュール310、及び、履歴データ分析モジュール305を含む。これらのモジュールは、互いに関連して動作し、地域制御モジュール225を介して分散型電力グリッドからのデータを収集・分析し、ユーザーインターフェース315を介してユーザーに、発電及び電力消費に関するステータスを含む送電グリッドに関する情報を提示する。
【0062】
この情報を利用し、スマートグリッド制御モジュール285を使用して、分散型電力グリッド内の発電及び送電を管理するべく命令セットを発行することができる。スマートグリッド制御モジュール285内には、埋め込み電力システムシミュレーションエンジン320、リアルタイム制御エンジン325及びリアルタイムインテリジェント制御インターフェース335が存在する。図3A及び図3Bに示すように、スマートグリッド制御モジュール285は、環境シミュレーションモデル290の一部であるシミュレーションされた電力システム340と情報のやり取りを行う。当業者であれば、シミュレーションモデル290は、分散型電力グリッドに関する様々なモデルを含むことができることが理解できる。この例に示すように、環境シミュレーションモジュール290は、シミュレーションされた電力システム340を含む。これ以外にも、環境ミュレーションモジュール290は、送電グリッドトポロジー、DER特性、負荷のモデル、及び、分散型電力グリッドの正確で動的な管理に重要なその他の特性に関するモデルを含むことができる。
【0063】
これらのモジュール(スマートグリッド制御モジュール285、リアルタイムインテリジェント制御インターフェース、シミュレーションされた電力システム340、シミュレーションモジュール290、埋め込み電力システムシミュレーションエンジン320及びリアルタイム制御エンジン325)は、電力グリッドの管理及び制御するべく、本発明の多階層分散型電力グリッド制御システムに統合される。
【0064】
図3に戻り、送電グリッドにおける需要の増加を地域制御モジュールから提供されるデータによって認識したユーザー(自動モードで動作している場合には、企業制御モジュールで実行されているアプリケーション)は、埋め込み電力システムシミュレーションエンジン320及びシミュレーションされた電力システム340を使用して、スマートグリッド制御モジュール285を介して一連の命令を起動することができる。シミュレーションされた環境下で、リアルタイム制御及びインテリジェントインターフェース命令が開発及び試験される。開発が終了すると、シミュレーションされた環境において命令が実行されて、提案された解決方法が、分散型電力グリッドに課せられた安全性及び規制の制約を含む所定の制限を超えているか又は満たしているかを確かめる。基本的には、本発明の多階層分散型電力グリッド制御システムは、現在のグリッドトポロジー及びエネルギー生成施設に関するリアルタイムの実際のデータ、及び、エネルギー消費に関するリアルタイムデータをシミュレーションエンジンに提供して、シミュレーションエンジンは、増加した電力需要を満たすべく、提案された解決方法の1以上のシミュレーションを実行する。
【0065】
環境シミュレーションモジュール290によって一連のシミュレーションが有効であると判断されると、グリッドにおける変更がグリッドの安定性に悪影響を与えることを心配することなく、グリッド制御ストラテジーを実際の電力システム350に適用することができる。これは、多階層分散型電力グリッド制御システム285及びデータ管理可視化モジュール280をフィールドに設置し、シミュレーションされたグリッド及びアセット290ではなく、物理的グリッド205及びデバイス350にこれらを接続することによって達成される。実際の命令を実際の電力システム350に提供する間に、データ取得管理モジュール310を介してデータが再度取得されて、発行された命令が所望の結果を生成しているかを検証する。シミュレーションにおいて多階層分散型電力グリッド制御システム285の振る舞いを評価し、システムを(デバイスのアドレス等の僅かな変更と共に)直接フィールドに配備するシステムの能力は、本発明の特徴の1つである。
【0066】
企業層275で動作する管理アプリケーションは、分散型電力グリッド内の様々な地域の中で、発電量及び送電量を増加させる命令を1以上の地域制御モジュール225へと送信開始できる。例えば、電力需要又は電力負荷の増加が起きている地域制御モジュール225によって管理及び制御されている地域を考える。需要の増加は、例えば、非常に暑い日で空調の利用が増えた、又は、地域内に位置する産業の集中により営業時間内に電力需要の増加が見込まれる場合などに発生する。企業制御モジュール275と関連付けられている及び通信を行う地域制御モジュール225は、ピーク負荷管理、需要応答又はその他のDER管理アプリケーションを使用して、この負荷の増加を予測及び認識することができる。地域制御モジュール225は更に、地域内の発電施設が、需要を満たすのに十分な電力を生成できない場合、又は、需要を満たすような電力を発電すると安全性及び規則の制限を超えてしまうような場合を認識することができる。
【0067】
このような状況が発生したことを認識すると、地域制御モジュール225は、企業制御モジュール275を介して更なる電力の要求を発行する。企業制御モジュール275と関連付けられたアプリケーションは、残りの地域制御モジュール225に対して、余剰電力生成能力についての問い合わせを発行する。その他の地域制御モジュール225は問い合わせに対して、別の地域からの電力要求に応答して発電量を増加させる能力を有することを示す応答を行ってもよい。
【0068】
1つの領域が余剰電力容量を有し、別の領域が更なる電力を必要としていることを理解し、分散型電力グリッドのトポロジーを知ることにより、企業制御モジュール275と関連付けられているアプリケーションは、第1領域の発電量を増やし、余剰電力を第2領域へと移動させる一連のシミュレーションされた制御を実行することができる。命令が有効であると判断されると、命令がスマートグリッド制御モジュール285によって発行され、対象の地域制御モジュール225の両方、すなわち、余剰電力容量を有する領域及び電力を必要としている領域の領域制御モジュール225へと送信される。更に、送電アプリケーションは、第1領域から第2領域へと電力を移送する分散型電力グリッド全体にわたるスイッチを設定することができる。
【0069】
企業制御モジュール275と関連付けられている1以上のアプリケーションによって管理される1つの領域からの電力要求及び別の領域からの余剰電力の応答は、動的プロセスである。当業者であれば、特定の領域内の電力消費量は動的に変化し、任意の領域が発電する能力も動的に変化することは理解できる。履歴データは、1以上の領域が経験する典型的な負荷に関する見識、及び、別の領域が余剰電力を生成する能力に関する見識を提供することができ、発電及び送電を、リアルタイムで動的に制御する必要がある。本発明の多階層分散型電力グリッド制御システム内において、様々に異なる層によって様々な電力管理機能が実行される。シミュレーションを利用して、どのような動作を行うべきかについての判断を行う予見能力が、全てのレベルにおいて存在する。これは、分散型コントローラの1機能であり、全ての判断が企業レベルにおいて行われる必要はない。また、数多くのシミュレーションが地域コントローラレベルにおいて実行され、システムレベルのシミュレーションは、企業レベルにおいて実行されてもよい。基本的には、リアルタイム制御に必要なシミュレーションは、適切な制御層において自動的に実行され、様々な動作状況下においてオペレーターに提示される選択肢を提供するシミュレーションは、企業レベルで実行される。
【0070】
図4は、本発明の一実施形態に係る発電、トポロジー及びアセット管理のための分散型エネルギー資源ネットワークオペレーティングシステムの高次機能ブロック図である。分散型エネルギー資源ネットワークオペレーティングシステム(Distributed Energy Resource Network Operating System:DER−NOS)410は、複数の管理アプリケーションと様々なエネルギー生成資源との間に介在する。本発明の一実施形態によれば、DER−NOSは、ゲートウェイ又はインターフェース(局所制御モジュール)445を使用して様々な発電リソースと接続される。ゲートウェイ445は、製造者間で各デバイスが同じ態様で動作することを確かにするべく、特定のデバイスについてシーケンス及び形式について正しい順序で命令を発行するインターフェースである。このゲートウェイ445はまた、多階層の分散型電力グリッド制御システムの最下層を実行する。この例において、DER−NOSは、太陽電池セル440、従来の発電所430、混合燃料発電能力420、再生可能発電資源415等のDERと、一貫性をもって接続する。また、記憶デバイス又は負荷管理システムのような更なるアセットを管理することが可能である。DER−NOSは、様々なアプリケーションツールを使用して、発電、蓄電及びリソース消費を管理及び制御する。
【0071】
本発明の一実施形態によれば、分散型エネルギー資源は、とりわけ、ピーク負荷管理465、分散型発電アプリケーション460、要求応答アプリケーション455、及び、その他のDER−NOS監視アプリケーション450を含むプリケーションモジュールを使用して管理及び制御されてもよい。これらの管理及び制御ツールの各々は、エンジニアリングワークステーションと接続されて、ユーザーがシステムを配置し、分散型電力グリッド全体にわたる分散型エネルギー資源を理解及び管理するのを助ける。この管理及び制御は、DER−NOSを介して達成される。当業者であれば、一実施形態において、エンジニアリングワークステーション475が、図2を参照して説明したようなデータ仮想化モデル280とやり取りを行うことは理解できる。このエンジニアリングワークステーションは、システムをフィールド状態に合致するように設定することを可能にする。
【0072】
図4には更に、本明細書では、シミュレーションモジュール290と称されるモデリングシュミレーションモジュールを介した、エンジニアリングワークステーション475及び監視アプリケーション450の間の相互作用が示されている。監視アプリケーションは、シミュレーションモジュールにリアルタイムデータを提供し、シミュレーションモジュールは、システムを設定及び調整するのに使用される。システムが、フィールドからのリアルタイムデータを利用して、シミュレーションを実行し、システムを総合的な態様で更に調整できる能力は、従来技術とは異なる本発明の特徴である。
【0073】
DER−NOSは、様々な管理アプリケーション465、460、455、450及びエネルギー生成資源440、430、420、415とやり取りを行って、電力管理480、トポロジー管理485及びエネルギー資源アセット(DER)管理490を提供する。本発明の一実施形態によれば、この管理は、3層のオペレーティングシステムが、一方の側の管理アプリケーションと他方の側の分散型エネルギーリソースとの間のブリッジの役割を果たすことにより達成される。本発明のDER−NOSがない場合、管理及び制御アプリケーションの各々は、データを取得する、各DERと接続する、命令を送信する、及び、様々なDERを有するアプリケーションをメッシュするその他の機能をどのように実装するか等の命令をその都度カスタムで生成しなければならない。DER−NOSは、利用する全ての電力管理アプリケーションに対する共通のプラットフォームである。例えば、本発明の一実施形態によれば、分散型発電アプリケーション460は、特定の種類の蒸気発電の発電量を増加させるべく特定のどのコマンドを発行するべきかを知る必要がない。アプリケーションは、発電所が発電量を増加させる命令を単純に発行させればよく、DER−NOSは命令を、蒸気発電所が認識可能な形式に変換する。また、DER−NOSは、DERの"統合"及び"可視化"を実行する。これは、ユーザー又はアプリケーション固有の基準に基づいて、様々なDERを動的にプールすることによって達成できる。プールにおけるDERの能力の合計、及び、プールで実行可能なオペレーションは、DER−NOSによって計算される。この(従来の発電所に相当する能力を有する)"仮想的な"リソースは、様々な管理アプリケーション465、460、455、450が利用可能となる。コンピュータのオペレーティングシステムが、メモリ、プロセッサの時間及び周辺機器をアプリケーションに割り当てるのと同様に、利用可能性、適合性、プール及び/又はアプリケーションへの割り当て、コンフリクトの解消、エラー対処、及び、その他のリソース管理機能がDER−NOSによって実行される。資源を管理する能力、及び、プールにおいて個々に利用可能にする能力、又は、様々な機能に対して資源を最適に利用するためのアプリケーションに対する仮想化された資源が、従来のシステムに対して本発明のシステムが有する利点である。
【0074】
図5は、本発明に係る一実施形態のDER−NOSの拡張図を示す分散型電力グリッドを制御するための多階層アーキテクチャの高次ブロック図である。図5に示すように、DER−NOSは、局所制御モジュール510、地域制御モジュール520及び企業制御モジュール530を有する多階層アプローチを含む。企業制御モジュール530は、複数の地域制御モジュール520の各々と通信可能に接続され、地域制御モジュール520の各々は、複数の局所制御モジュール510に通信可能に接続されている。DER−NOSは、カスタムインターフェース545、555及び565を介して、外部のアプリケーションとやり取りを行う。このような接続を介して、DER−NOSは、既存のDERアセット、グリッド設備、ユーティリティSCADAシステム、及び、その他のアプリケーションとやり取りをして、データ及び制御命令を交換する能力を得る。このカスタムインターフェースは、実装固有のインターフェースを、システム内で使用される共通言語へと変換するアダプタの役割を果たす。
【0075】
DER−NOS410は、図4で上記したように、様々な管理アプリケーション580と接続される。複数の管理アプリケーション580の各々は、OPCサーバ531によってDER−NOS410へと接続される。企業制御モジュール530及び地域制御モジュール520の両方は、OPCクライアント/サーバ535を含み、DER−NOS410と複数の管理アプリケーション580との間の通信を補助する。当業者であれば、OPCの利用は、通信インターフェース実装の数多くの手段のうちの1つであることは理解できる。信頼性が高く高速な同様なその他のインターフェースを、本発明の範囲内において、本発明と関連して利用可能である。この実施形態において、企業制御モジュール530は、DER−NOS内のアセットの各種類に対するオブジェクトモデルを使用する。オブジェクトモデルは、DERのような特定のアセットに対する入出力を規定するだけではなく、アセットに対して発行される命令における変更の制御/システム応答も規定する。アセットが同様な態様で命令に対して応答することを確かにすることにより、安定的及び反復可能な制御アーキテクチャを維持する能力を企業制御モジュールに提供する。例えば、"OFF"命令に対して2つの発電機が異なる応答をした場合、制御を実装する複雑性は、制御下に置くエリアが拡大すればするほど、及び、変化するアセットの数が多くなるほど難しくなる。共通のオブジェクト情報モデルを使用して、共通の情報及び制御を提供することにより、このようなジレンマを解決する。これらの共通のオブジェクトモデルは、共通オブジェクトモデル規定に基づいて、局所制御モジュール510の各々において実装されて、システム全体に伝播される。この方法は、製造者又はサイト固有のカスタマイズに関わらず、フィールドにおける任意のアセットとシステムを接続可能にし、それを表す共通のオブジェクトモデルを有することを確かにできる。サイト、アセット及び実装の具体的な詳細から、共通オブジェクトモデルへのマッピングは、局所制御モジュール510によって実行される。
【0076】
企業制御モジュール530はまた、カスタムインターフェースを介して、既存の監視制御及びデータ取得システム540へと接続される。これらのシステムを介して、及び、地域制御モジュール520からの更なるデータを使用して、制御ユニット530は、既存のSCADAシステム及びDER−NOS固有の制御モジュールを介して、データ点及びデバイスを監視及び制御する。
【0077】
本発明の一実施形態によれば、企業制御モジュール530は、ネットワークトポロジーモジュール532、地域制御モジュール520及びエネルギー資源を管理する制御533、動的設定変更ハンドラ535、地域制御モジュールインターフェースハンドラ536及び入出力インターフェースマネージャ538を含む。地域制御モジュール520はそれぞれ、ネットワークトポロジーモジュール532、地域内のエネルギー資源を管理する制御533、動的設定変更ハンドラ535、局所制御モジュールインターフェースハンドラ525、及び、入出力インターフェースマネージャ538を含む。
【0078】
ローカル制御モジュール510はそれぞれ、アセットインターフェースハンドラ515を使用して、エネルギー資源を管理する制御533を含む。ローカル制御モジュール510はまた、OPCクライント534、動的設定変更ハンドラ535、及び、入出力インターフェースマネージャ538を含む。ローカル制御モジュール510は、(本明細書では、分散型エネルギー資源又はDERとも称される)電力資源560、及び、カスタムインターフェース565を介して測定システムと直接やり取りをする。地域制御モジュール520は、そのカスタムインターフェース555を介して、フィールドシステム550及び/又はサブシステムコントローラ/アプリケーションとやり取りを行う。DER−NOS410のこれら3層は、管理アプリケーション580と一緒に動作して、分散型電力グリッドを管理及び制御する。
【0079】
当業者であれば理解できるように、ネットワークトポロジーを知ることは、分散型電力グリッドを管理する重要な側面である。ネットワークトポロジーモジュール532は、制御範囲/能力を向上させるべく、特定の制御に統合されるネットワークトポロジー解析問い合わせをサポートする。ネットワークトポロジーは、電力システムの様々な要素(変圧器、母線、ブレーカー、フィーダ等)と接続されるDERとの間の接続を表している。DER−NOSは、このサブシステムを利用して、グリッドの安定性を損なうリスクを最小限にして、将来の制御が安全に実行可能であることを確かにする。これは、潮流計算及び提案された動作に基づくシステムの将来の状態を予測する動的シミュレーションを実行し、得られた状態が、安定性、信頼性又はネットワークの動作条件を冒していないかを評価することにより達成される。ネットワークトポロジーモジュール532サブシステムはまた、様々なデータ源から電気ネットワークの動的ステータス更新を受信することができる。これにより、ネットワークトポロジーモジュールは、"現実の"システムの状態についての最新の情報で更新されることが可能となり、入手可能な最新の情報で予測を行うことができる。
【0080】
企業制御モジュール530と関連付けられるネットワークトポロジーモジュール532は、問い合わせを地域制御モジュール520に発行でき、その結果を待つ。地域制御モジュール520は、自身のネットワークトポロジーモジュール532を使用して、企業制御モジュール530からの問い合わせに対する結果を計算するアルゴリズムを制御する。このようにして、企業制モジュール530は、ネットワーク全体そのものを分析する必要がなく、分析を複数の地域制御モジュール520に分担させることができる。
【0081】
ローカル制御モジュール510と関連付けられている制御サブシステム517は、地域制御モジュール520から供給された命令を、電力資源560に向けてデコードする。制御サブシステム533は、対象とするアセットが、一貫性及び信頼性をもって応答することを確かにする。このオペレーションでは、システム内で使用されている共通オブジェクトモデルベースの命令を、DER560を動作させるのに必要な、サイト、設備及び実装固有のコマンドへと変換する。
【0082】
入出力インターフェースマネージャ538は、企業制御モジュール530とSCADAシステム及びその他の企業アプリケーションのような外部システムとの間のリモート通信を扱うべく、インターフェース管理システムを提供する。地域制御モジュール520内では、入出力インターフェースマネージャ538は、フィールドデバイス、システム及びサブシステム550とのリモート通信を扱い、外部のデバイス(分散型エネルギー資源、メーター等)と情報及び制御信号を交換する能力を提供する。これらの入出力インターフェースモジュール538、地域制御モジュールインターフェース536、局所制御モジュールインターフェース525及びアセットインターフェースハンドラ515は、システムが、外部データ点、デバイス及びシステムを、システム内で使用される共通オブジェクトモデルへとマッピングして、各サブシステム内で使用されるデータ間の一貫性及び信頼性を確保する。
【0083】
フィールドシステム又はサブシステムコントローラ及びアプリケーション550は、DER−NOS外部の任意のシステムであってもよく、その場合、地域制御モジュール520は、データ及び制御信号を交換する必要がある。例として、変電所におけるスイッチ(ブレーカー)が挙げられる。
【0084】
各モジュールに設けられる動的設定変更ハンドラ535は、ユーティリティSCADAのような別のシステムからのフィールド信号、情報、又は、ユーザー入力及びネットワーク(ネットワークトポロジー)の設定における変更に対する応答、アセットの利用可能性、又は、システムの適切な部分に行われる内部変更による通信システム変更を受け取るエンジンである。上記したようにDER−NOSは、分散型コントローラであるから、動的設定ハンドラ535は、リアルタイム変更情報が適切にシステム全体を伝播することを確かにし(システムのシャットダウン及び再スタートを行うことなく)、様々な資源(DER及びグリッドアセット)が動的にオペレーションの新規のモードになることを確かにするエンジンである。
【0085】
典型的には、局所制御モジュール510は、シングルデバイスと、又は、1つのサイトにおいて、直接接続される複数のデバイスの小さなグループとのみ、やり取りを行う。したがって、地理的に分散している複数のデバイス/サイトに渡って設定の変更を扱うような高度な動的設定マネージャ535は必要ない。局所制御モジュール533における制御は、局所制御モジュール510が接続されるデバイスに必要とされる設定変更を管理する能力を有する。
【0086】
図6は、本発明の一実施形態に係る局所制御モジュールの論理的オペレーションを示したフローチャートである。層間で通信が行えなくなった場合又は別のサブシステムの不良が起きた場合に、各制御モジュールが、その他のシステムがオンラインに戻るまで、又は、シャットダウンシーケンスのような所定のプログラムされたシーケンスがトリガされるまで、フェイルセーフモードで動作を継続できるように、DER−NOS410アーキテクチャの各層は、別の層とは独立して動作する。
【0087】
局所制御モジュールは、前のシステム状態610に基づいて、オペレーションを実行することにより動作する。その状態から、局所制御モジュールは、接続されているDER各々のステータス、局所グリッド状態、及び、システムにおけるその他の局所制約を更新620する。次いで、更新リクエストが、局所制御モジュールから地域制御モジュールへと送信650される。更新が受信された後、局所制御モジュールは、次の動作及び/又は地域制御モジュール670へと送信するべき応答を決定する。この時点から、局所制御モジュールは、1以上の動作を実行680し、これらの動作に関して地域制御モジュールを更新する。
【0088】
図7は、地域制御モジュールのオペレーションロジックを示したフローチャートである。局所制御モジュールの場合と同様に、地域制御モジュールは、前のシステム状態710に基づいて動作を実行する。地域制御モジュールは、接続されている局所制御モジュール720それぞれから情報を受信し、局所制御モジュール720の状態及びSCADA及び/又はサブシステムコントローラからのネットワークステータスを更新する。管轄地域内のグリッド測定値及び監視イベントもまた、更新される。監視下の局所制御モジュールのステータスの知識を用いることにより、地域制御モジュール要求740は、地域制御モジュールが満たすべき目標を含む、企業制御モジュールからの更新を行う。
【0089】
その後、地域制御モジュールは、これらの目標を満たすべく、次のコースの動作760を決定する。このように、地域制御モジュールは、局所シミュレーション及び局所インテリジェントアルゴリズムを使用して、提案されるアクション各々の結果を評価770する。動作又は警告の最終的なセットが決定されるまでは、別のアクションについても考慮780してもよい。最後に、地域制御モジュールは、決定された動作のセットを実行790して、応答を企業制御モジュールに送信し、これらの動作及びコマンドを適用可能な局所制御モジュールに知らせる。
【0090】
図8は、本発明の一実施形態に係る企業制御モジュールの論理的オペレーションを示すフローチャートである。企業制御モジュールは、システム810の前の状態に基づいて動作を実行する。全体を管轄するエンティティとして、企業制御モジュールは、接続される地域制御モジュール、企業アプリケーション、及び、やり取りを行うその他の企業アセットのステータスを更新820する。また、システムステータス更新が、ユーザー(人間)インターフェースシステムを更新するのに使用される表示サブシステムへと送信850される。同様に、ユーザーインターフェースを使用して、供給される場合にはユーザー入力を受信することができる。
【0091】
そして、企業制御モジュールは、グローバルシミュレーション及びインテリジェントアルゴリズムを実行することにより、様々なアクションの結果を評価して、次にどの動作をとるべきかを決定870する。最終的に許容される動作又は警告のセットが決定されるまでは、代替案の動作も考慮880される。動作が決定されると、企業制御モジュールは、これらの動作を実行890して、接続される地域制御モジュールへ応答及び命令、及び、新たな命令を送信する。
【0092】
図9は、本発明に係る分散型電力グリッドにおける送電及び発電を管理するための方法の一実施形態を示したフローチャートである。当業者であれば理解できるように、ネットワークオペレーティングシステムを利用した分散型エネルギー資源の制御及び管理は、特に、エネルギー生成の割り当て、ネットワークトポロジーの修正、蓄電エネルギーの割り当て、負荷管理、シミュレーションを含むことができる。図9は、分散型電力グリッドにおける電力資源の再割り当ての一方法の例が示されている。当業者であれば、この方法の例は、DER−NOSを介した、様々なDER管理アプリケーションとエネルギー源との間のやり取りを表しており、DER−NOSの能力又は範囲に限定されないことが理解できる。
【0093】
本発明の一実施形態によれば、企業制御モジュールを介して動作する管理アプリケーションは、予測された発電及び電力消費910に基づいて、予測電力システム分析を実行する。電力システム分析が実行されると、実際の発電及び電力消費が、各地域制御モジュール920内で監視される。加えて、ネットワークトポロジー及びネットワーク接続性が分析930される。
【0094】
企業制御モジュールにおいて、更なる電力に対する要求が受信940されると、企業制御モジュールの要求応答アプリケーションが、余剰電力発電能力を有する1以上の地域を特定950する。その後、管理アプリケーションは、受信された要求を満たすべく、発電資源の再割り当て提案、及び、ネットワーク接続性修正を決定960する。
【0095】
発電資源の再割り当て提案のシミュレーションが、分散型グリッドにおける接続変更のシミュレーションと共に開始970される。シミュレーションの結果が所定の制約を満たす場合、制御アプリケーションは、提案された電力再割り当て980になるように一連の命令を構築する。
【0096】
発電資源の再割り当て提案が有効であると判断されると、管理アプリケーション及び制御アプリケーションは、企業制御モジュール介して、命令990を直接、適用可能な地域制御モジュールへと送信する。再割り当て命令を受信すると、地域制御モジュールは、適用可能な地域内の発電施設に対して発電命令を発行する、及び/又は、ネットワークトポロジーを修正して、その他の地域の負荷要求を満足するべく余剰電力を分配する。
【0097】
本発明の実施形態は、複数の発電資源を有する分散型電力グリッドを動的に管理及び制御することができる。多階層のネットワークオペレーティングシステムと関連して動作する地域制御モジュールを使用して、分散型電力グリッド内の複数の地域セルは自立的に管理される。地域制御モジュールの各々は、分散電力グリッドを監視する様々な管理及び制御アプリケーションと接続される企業制御モジュールに接続可能に結合される。また、地域制御モジュールの各々は、地域内の発電資源と直接接続される複数の局所制御モジュールと関連付けられて、DERインターフェースを標準化する。発電及び電力消費は、継続して監視及び分析される。本発明の一実施形態において、地域の電力消費がその地域の発電容量を超えると判断されると、企業制御モジュールを介して動作する管理アプリケーションが、グリッド全体にわたって、動的に発電資源を再割り当てする。発電及び送電の再割り当ては、継続して監視及び調整が行われて、グリッドが安定し、信頼性高く安全な状態を維持するようにする。
【0098】
本発明が電力グリッド管理に関して説明されたが、本発明は、商業施設、学校の構内、又は、部屋、建物、再生可能電力資源、負荷管理システム、電気自動車等の間を送電する送電線が存在するその他の場所における分散型電力管理にも適用可能である。特に、大型の商業施設、軍事基地、遠隔地にある送電線網を使用しない村等にも適用可能である。本発明は、施設又は遠隔地に静的に形成されたマイクログリッドではなく、分散型電力システムを動的に構成及び管理する。
【0099】
本発明の望ましい実施形態の概略を以下に説明する。
一実施形態において、複数の電力消費施設と接続された複数の分散型エネルギー資源(DER)を含む送電及び配電グリッドのための分散型制御システムは、送電/配電電力グリッド及び/又はその他の企業アプリケーションのための既存の監視制御及びデータ取得システムと通信可能に接続された企業制御モジュールと、それぞれが個別に複数のDERのうちの1つと関連付けられている複数の局所制御モジュールと、企業制御モジュールと複数の局所制御モジュールの一部との間にそれぞれ介在する複素の地域制御モジュールとを備え、地域制御モジュールは、地域内の電力管理及び/又は隣接する地域との電力交換を実行する。
【0100】
別個に存在する又は組み合わせられてもよく、適切である場合には、含まれてもよいその他の望ましい特徴を以下に列挙する。
企業制御モジュールは、通信ネットワークと接続可能に結合することができる。
地域制御モジュールを、企業制御モジュールと別の地域制御モジュールとの間に介在させて、分散システムを構成することができる。
複数のDERは、エネルギー生成、蓄積及び需要/負荷管理から構成される一群から選択することができる。
送電及び配電電力グリッドDERは、グリッド及び設備保護、電圧調整、電力潮流制御、コンデンサバンク及び変圧器からなる一群から選択することができる。
企業制御モジュールは、複数の地域制御モジュール間の需要、及び、隣接する電力グリッド又は電力システムとの電力交換を管理することができる。
複数の地域制御モジュール間の需要を管理することは、第2地域における需要の変化に応答して、第1地域における発電を変化させるべく、地域制御モジュールに対する命令を開始することを含んでもよい。
複数の地域制御モジュール間の需要を管理することは、地域制御モジュールと関連付けられた局所制御モジュール及び地域制御モジュールを再規定することを含んでもよい。
企業制御モジュールは、複数の局所制御モジュール及び/又は地域制御モジュールに対して、選択的にブロードキャスト制御命令を発行することができる。
分散型制御システムは、通信障害が発生した場合には、自立オペレーション方式に切り替え、通信が復旧した場合には、データを同期し、命令方式に戻ることができる。
分散型制御システムは更に、局所制御モジュールとそれに関連付けられたDERとの間に介在するデバイスインターフェースを備えることができる。
デバイスインターフェースは、関連付けられたDERが理解できるように、標準化された局所制御モジュール命令を変換することができ、また、局所制御モジュールが理解できる標準化されたメッセージへとDER応答を変換することができる。
局所制御モジュールは、結合されたDERそれぞれに関するデータを収集することができる。結合されたDERそれぞれに関するデータは、DERの静的、動的、又は、制御の応答特性を含んでもよい。
局所制御モジュールは、DERと地域制御モジュールとの間の命令及び/又は応答メッセージを標準化することができる。発電管理は、地域内の発電、負荷及び蓄電、及び/又は隣接する地域との電力交換に基づいてもよい。
各地域内における地域制御モジュールによる発電管理は、自立的に行われてもよい。
地域制御モジュールの各々は、企業制御モジュールから発電命令を受信することができる及び応答することができる。
地域制御モジュールは、制御命令をDERに発行する前に、企業制御モジュールから受信された発電命令が、地域制御モジュールと関連付けられている地域内のDER及び送電/配電電力グリッドの所定の制限内であるかを検証することができる。
発電命令は、動的に検証されてもよく、また、所定のシステム制限内に実際の発電量を維持するように先制的に修正されてもよい。
企業制御モジュール、複数の地域制御モジュールの各々及び複数の局所制御モジュールの各々は、ユーザーインターフェースを介して認証されたユーザーから発行された命令を受信及び命令に応答することができる。
分散型制御システムは更に、様々なシステム状態に対するシステム応答及びオペレーションを予測することができるモデリングモジュールを備えてもよい。
モデリングモジュールは、複数のDERのオペレーションを割り当て、特定の電力潮流目標を満足するべく、モデル化された制御のセットを構築することができる。モデリングモジュールによって開発されたモデル化された制御のセットを、直接システムに適用することができる。
【0101】
別の実施形態では、分散型制御システムは、コンピュータのような機械によって実行される命令のプログラムとして実装される。このような実施形態においては、命令のプログラムは、送電/配電電力グリッドを管理するための複数のプログラムコードを備え、送電/配電電力グリッドは、複数の電力消費者に結合された複数の分散型エネルギー資源(DER)を含む。この命令のプログラムは、送電/配電電力グリッド内の電力潮流を企業制御モジュールにおいて管理するためのプログラムコードと、各地域制御モジュールは、複数のDERのうちの一部と関連付けられた地域と関連付けられ、企業制御モジュールから複数の電力要求のうちの1以上を地域制御モジュールで受信するためのプログラムコードと、関連付けられた領域内の複数の地域制御モジュール各々においてDERを管理するためのプログラムコードとを含む。
【0102】
上記の分散型制御システムは、以下に列挙するような望ましい特徴を個別に又は組み合わせて含んでもよい。
企業制御モジュールにおいて、複数の地域制御モジュール及び/又はシステムユーザーのうちの少なくとも1つからの地域電力潮流要求を受信することができる。
複数の地域制御モジュール及び/又はシステムユーザーのうちの少なくとも1つから受信された地域電力潮流要求に応答して、企業制御モジュールにより地域電力潮流命令が発行されてもよい。
複数の局所制御モジュール及び/又はシステムユーザーのうちの少なくとも1つからの局所電力潮流要求を、複数の地域制御モジュールのうちの少なくとも1つにおいて受信することができる。
複数の局所制御モジュール及び/又はシステムユーザーのうちの少なくとも1つから受信した局所電力潮流要求に応答して、地域制御モジュールは局所電力潮流命令を発行することができる。
DERを管理するプログラムコードは、局所制御モジュールを介してDERに対して発行された標準化された制御命令に対するプログラムコードを含むことができる。
命令のプログラムは更に、各DERに関するデータを収集するためのプログラムコードを含んでもよい。
命令のプログラムは更に、第2地域における需要の変化に応答して、第1地域における電力潮流を変化させるべく、1以上の地域制御モジュールに対する命令を開始するためのプログラムコードを含んでもよい。
命令のプログラムは更に、ユーザーが起動した要求に応答して、地域における電力潮流を変化させるべく、1以上の地域制御モジュールに対する命令を開始するためのプログラムコードを含んでもよい。
命令のプログラムは更に、ユーザーが起動した要求に応答して又は自動的に、地域制御モジュール各々と関連付けられたDERを再規定するためのプログラムコードを含んでもよい。
命令のプログラムは更に、予測された又は導出された電力潮流に基づいて、DERの静的及び/又は動的オペレーションを決定するためのプログラムコードを含んでもよい。
命令のプログラムは更に、送電/配電電力グリッド既存の接続性及び状態のリアルタイム分析のためのプログラムコードを含んでもよい。
命令のプログラムは更に、送電/配電電力グリッドとは分離された地域の電力を自立的に運営するプログラムコードを含んでもよい。
命令のプログラムは更に、自立的に運営される地域のオペレーションを、送電/配電電力グリッドへと再び組みこむ及び同期させるべく、DERを動的に管理するプログラムコードを含んでもよい。
命令のプログラムは更に、企業制御モジュール、複数の地域制御モジュール、複数の局所制御モジュール及び複数のDER間の接続経路を修正するためのプログラムコードを含んでもよい。
【0103】
本発明の別の実施形態は、複数の分散型エネルギー資源(DER)を含む送電/配電電力グリッドを管理するためのコンピュータシステムを特徴とする。この実施形態において、コンピュータシステムは、ソフトウェアとして具現化される命令を実行可能であり、送電/配電電力グリッドの既存の監視制御及びデータ取得システムと接続可能な機械を備えることができる。システムはまた、複数のソフトウェア部分を備えることができ、複数のソフトウェア部分の1つは、企業制御モジュールにおいて、送電/配電電力グリッド内の電力潮流を管理するよう構成され、別のソフトウェア部分は、複数の地域制御モジュールの1以上において、企業制御ユニットからの電力要求を受信するよう構成され、地域制御モジュールは、複数のDERの一部と関連付けられる地域と関連付けられる。更に、別のソフトウェア部分は、複数の地域制御モジュールの1以上において、複数の地域制御モジュールのうちの1つを介して1以上の地域制御モジュールの関連付けられた地域内における1以上のDERに対して命令を発行するように構成されてもよい。
【0104】
この実施形態の以下に列挙するその他の特徴を、別個に又は組み合わせて実装することができる。
第2地域からの潮流要求に応答して、第1地域における電力潮流を修正するべく1以上の地域制御モジュールに対して、企業制御モジュールから命令を起動するよう設定されたソフトウェア部分。
様々なシステム状態に対するシステム応答及びオペレーションを予測するように構成されたソフトウェア部分。
【0105】
当業者であれば理解できるように、本発明の複数の部分は、メインフレームコンピュータ、パーソナルコンピュータ(PC)、ラップトップコンピュータ、ネットブックコンピュータ、ハンドヘルドコンピュータ又はポケットコンピュータ及び/又はサーバーコンピュータのような典型的なコンピュータシステム又は汎用コンピュータシステムに実装することができる。典型的なシステムとしては、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、キーボード、プリンタ、ポインティングデバイス、表示装置に接続されたディスプレイ又はビデオアダプタ、取り外し可能(マス)ストレージデバイス(例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD等)、固定(マス)ストレージデバイス(例えば、ハードディスク)、通信(COMM)ポート又はインターフェース、及び、ネットワークインターフェースカード(NIC)又はコントローラ(例えば、イーサーネット)に接続された中央演算処理装置(CPU)又はプロセッサを含む。別個に図示されていないが、リアルタイムシステムクロックがシステム内に一般的な態様で含まれている。
【0106】
CPUは、本発明を実装するのに好適なプロセッサを含む。CPUは、双方向システムバス(任意の必要な入出力(I/O)制御回路及びその他のグルーロジックを含む)を介してシステムのその他の構成要素と通信を行う。システムメモリをアドレス指定するアドレス線を含むバスは、様々な構成要素間のデータ転送を提供する。RAMは、CPUの動作メモリとして機能する。ROMは、BIOS(basic input/output system code)及び低レベルルーチンのセットをROMに格納し、アプリケーションプログラム及びオペレーティングシステムはこれらを利用して、キーボードからの文字の読み出し、プリンタへの文字の出力等を含むハードウェアとのやり取りを行うことができる。
【0107】
マスストレージデバイスは、磁気、光学又は光磁気記憶システム、フラッシュメモリ、又は、その他の好適なマスストレージ技術のような固定媒体及び取り外し可能媒体に、固定記憶装置を提供する。マスストレージは、ネットワーク上で共有されてもよいし、専用のマスストレージであってもよい。一般的に、固定記憶装置は、オペレーティングシステム、ユーザーアプリケーションプログラム、ドライバ及びその他のサポートファイル、並びに、あらゆる種類のデータファイルを含むコンピュータシステムのオペレーションに指示を出すコード及びデータを格納する。また、固定記憶装置は、システムのメインハードディスクとして機能する。
【0108】
基本的なオペレーションでは、(上記で記載した本発明の方法を実装するロジックを含む)プログラムロジックは、取り外し可能記憶装置又は固定記憶装置から、CPUによって実行されるメイン(RAM)メモリへと読み込まれる。プログラムロジックのオペレーションの間、システムは、キーボード及びポインティングデバイスからの入力、及び、音声認識システム(図示せず)からの音声ベースの入力を受け付ける。キーボードは、アプリケーションプログラムの選択、キーボードベースの入力又はデータのエントリ、スクリーン又は表示装置に表示される個々のデータオブジェクトの選択及び操作を可能とする。同様に、マウス、トラックボール、ペンデバイス等のポインティングデバイスは、表示装置に表示されるオブジェクトの選択及び操作を可能にする。このように、これら入力デバイスは、システムで実行される任意のプロセスに対するユーザーの手動の入力をサポートする。
【0109】
コンピュータシステムは、表示装置上に、テキスト及び/又はグラフィック画像及びその他のデータを表示させる。ディスプレイとシステムバスとの間に介在するビデオアダプタは、表示装置を駆動する。CPUにアクセス可能なビデオメモリを含むビデオアダプタは、ビデオメモリに格納される画素データを、陰極線管(CRT)ラスタ又は液晶表示(LCD)モニタが使用するのに好適なラスタ信号に変換する。表示された情報又はシステム内のその他の情報のハードコピーは、プリンタ又はその他の出力デバイスから取得されてもよい。
【0110】
システム自体は、ネットワーク(例えば、イーサーネットワーク、ブルートゥース無線ネットワーク等)に接続されたNICを介して、その他のデバイス(例えば、その他のコンピュータ)と通信を行う。システムはまた、RS−232シリアルポート、ユニバーサルシリアルバス(USB)インターフェース等を含んでもよいCOMMインターフェースを介して、一時的に接続されるローカルデバイス(例えば、シリアルケーブルで接続されるデバイス)と通信を行ってもよい。インターフェースとローカルに共通して接続されるデバイスとしては、ラップトップコンピュータ、ハンドヘルドオーガナイザー、デジタルカメラ等が含まれる。
【0111】
上記したように、本発明は、ローカルエリアネットワーク又は広域ネットワーク等のネットワーク設定に配備することができる。このようなネットワークはまた、(データリポジトリ又はその他のメモリソースにアクセスする)ゲートウェイコンピュータ又はアプリケーションサーバのようなメインフレームコンピュータ又はサーバを含んでもよい。ゲートウェイコンピュータは、各ネットワークへのエントリ点として機能する。ゲートウェイは、通信リンクの手段により、別のネットワークと結合されてもよい。更に、ゲートウェイコンピュータは、1以上のデバイスと間接的に結合されていてもよい。ゲートウェイコンピュータはまた、(データリポジトリのような)記憶デバイスと結合されていてもよい。ゲートウェイコンピュータは、様々なアーキテクチャを利用して実装されてもよい。
【0112】
当業者であれば、ゲートウェイコンピュータは、ネットワークから地理的に遠く離れた場所に位置してもよく、また、デバイスもネットワークから遠く離れた場所に位置してもよいことは理解できる。例えば、ネットワークはカリフォルニアに位置し、ゲートウェイはテキサスに位置し、1以上のデバイスがニューヨークに位置してもよい。デバイスは、携帯電話、無線周波数ネットワーク、衛星ネットワーク等の数多くの代替接続媒体上で、TCP/IPのようなネットワークプロトコルを使用して無線ネットワークと接続されてもよい。無線ネットワークは、望ましくは、IP上のTCP又はUDP(ユーザーデータグラムプロトコル)、X.25、フレーム中継、ISDN(Integrated Services Digital Network)、PSTN(Public Switched Telephone Network)等のネットワーク接続を使用して、ゲートウェイと接続される。デバイスは、これに替えて、デジタル接続を利用してゲートウェイと直接接続されてもよい。また、無線ネットワークは、同様な態様で、1以上のその他のネットワーク(図示せず)に接続されてもよい。
【0113】
好ましい実施形態では、本発明の複数の部分を、ソフトウェアに実装することができる。本発明を具現化するソフトウェアプログラムコードは、典型的には、ハードドライブのような、ある種類の長期記憶媒体からマイクロプロセッサによってアクセスされる。ソフトウェアプログラムコードは、ハードドライブ又はCD−ROMのようなデータ処理システムと共に、利用可能なあらゆる種類の周知の媒体に具現化されてもよい。コードは、このような媒体上で配布される、又は、その他のシステムによって使用されるべく、ある種のネットワーク上で1つのコンピュータシステムのメモリ又は記憶装置から、その他のコンピュータシステムへと配布されてもよい。これに替えて、プログラミングコードはメモリに具現化されてもよく、バスを使用して、マイクロプロセッサによってアクセスされる。ソフトウェアプログラムコードをメモリ又は物理的媒体上に具現化する、及び/又は、ソフトウェアコードをネットワークを介して配布する方法及び技術は、周知であり、ここでは説明しない。本発明の実装は、ウェブ環境において事項することができ、ソフトウェアインストールパッケージが、ハイパーテキストトランスファープロトコル(HTTP)のようなプロトコルを使用して、ウェブサーバから、インターネットを介して接続されている1以上の対象のコンピュータへとダウンロードされる。これに替えて、本発明の実装は、その他の非ウェブネットワーク環境において(インターネット、企業のイントラネット又はエクストラネット、又は、その他のネットワークを使用して)実行されてもよく、遠隔メソッド呼び出し(RMI)、OPC又は共通オブジェクト・リクエスト・ブローカー・アーキテクチャ(CORBA)のような技術を使用してインストールするべくソフトウェアパッケージが配布される。環境の設定は、クライアント/サーバーネットワーク及び多層環境を含む。また、上記したように、本発明は、ネットワーク接続によるのではなく、局所的に利用可能な設置媒体からソフトウェアパッケージをインストールすることを望む設置者による環境のように、スタンドアローン環境において利用されてもよい。更に、特定の設備のクライアント及びサーバの両方が、同一の物理的装置に存在する場合には、ネットワーク接続が必要なくなる。したがって、問い合わせが行われる対象のシステムは、本発明の実装が実装される局所デバイスであってもよい。本発明を使用してインストールを行うべくソフトウェアパッケージを準備するソフトウェアソフトウェア開発者又はソフトウェアインストール実行者は、ネットワークに接続されたワークステーション、スタンドアローンワークステーション、又は、その他の同様なコンピュータデバイスを使用してもよい。これらの環境及び設定は、当技術分野において周知である。
【0114】
当技術分野に精通している者であれば、本発明の幾つかの部分は、本発明の精神又は主要な特徴の範囲内において、その他の特定の形式に具現化可能であることが理解できる。同様に、モジュール、マネージャ、機能、システム、エンジン、層、特徴、属性、方法及びその他の側面の具体的な名称及び区分は、必須又は意味のあるものではなく、本発明又はその特徴を実装する機械は、異なる名称、区分及び/又は形式を有していてもよい。また、当業者であれば理解できるように、本発明のモジュール、マネージャ、機能、システム、エンジン、層、特徴、属性、方法及びその他の側面は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア又はこれらの任意の組み合わせとして実装可能である。無論、本発明の構成要素又は部分が、ソフトウェアとして実装される場合、構成要素は、スクリプト、スタンドアローンプログラム、大きなプログラムの一部、複数の個別のスクリプト及び/又はプログラム、静的又は動的にリンクされたライブラリ、カーネル読み込み可能モジュール、デバイスドライバ、及び/又は、コンピュータプログラミングの分野の当業者に周知の又は将来周知となるその他の手段として実装することが可能である。更に、本発明は、特定のプログラミング言語、又は、特定のオペレーションシステム又は環境への実装に限定されない。したがって、本発明の開示は、例示することを意図しており、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定することを意図していない。本発明の原理が、送電グリッドと関連付けて説明されたが、上記の説明は、一例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。特に、上記の開示の教示するところは、その他の変形例についても当業者に示唆していることが理解される。このような変形例は、本質的に周知のその他の特徴であって、上記で説明した特徴の替わりに又はこれに加えて使用されてもよいその他の特徴を伴ってもよい。本願では、特定の特徴の組み合わせによって特許請求の範囲が構成されているが、本開示の範囲は、新規の特徴、又は、黙示的又は明示的に開示されている特徴の新規の組み合わせ、又は、当業者に自明のそれらの一般化又は改良も含み、このような改良が特許請求されている同じ発明に関係するか否か、及び、本発明が直面する同じ技術的な問題の一部又は全てを解決するか否かに関わらず、改良が本発明の範囲に含まれる。出願人は、本願の審査の間及び派生する出願において、このような特徴及び/又はこのような特徴の組み合わせにより新規の請求項を構成する権利を有する。
[項目1]
機械によって実行可能な命令のプログラムを具現化するコンピュータ可読記憶媒体であって、
上記命令のプログラムは、
複数の電力消費施設に接続された複数の分散型エネルギー資源(DER)を含む送電/配電電力グリッドを管理するための複数のプログラムコードと、
上記送電/配電電力グリッド内の電力潮流を企業制御モジュールにおいて管理するためのプログラムコードと、
複数のDERのうちの一部と関連付けられた1地域とそれぞれ関連付けられる複数の地域制御モジュールのうちの1以上で、上記企業制御モジュールからの電力要求を受信するためのプログラムコードと、
上記複数の地域制御モジュール各々において、関連付けられた地域内の上記複数のDERを管理するためのプログラムコードと
を有するコンピュータ可読記憶媒体。
[項目2]
上記企業制御モジュールにおいて、上記複数の地域制御モジュール及び複数のシステムユーザーの少なくとも一方のうちの少なくとも1つからの地域電力潮流要求が受信される項目1に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
[項目3]
上記複数の地域制御モジュール及び上記複数のシステムユーザーの少なくとも一方のうちの上記少なくとも1つから受信された地域電力潮流要求に応答して、上記企業制御モジュールにより地域電力潮流命令が発行される項目2に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
[項目4]
複数の局所制御モジュール及び複数のシステムユーザーの少なくとも一方のうちの少なくとも1つからの局所電力潮流要求が、上記複数の地域制御モジュールのうちの上記少なくとも1つにおいて受信される項目2に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
[項目5]
上記複数の局所制御モジュール及び複数のシステムユーザーの少なくとも一方のうちの上記少なくとも1つから受信した局所電力潮流要求に応答して、上記地域制御モジュールにより局所電力潮流命令が発行される項目4に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
[項目6]
複数のDERを管理する上記プログラムコードは、局所制御モジュールを介して複数のDERに対して発行される標準化された制御命令のプログラムコードを含む項目1に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
[項目7]
上記複数のDERの各々に関するデータを収集するためプログラムコードを更に備える項目1に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
[項目8]
第2地域における需要の変化に応答して、第1地域における電力潮流を変化させるべく、上記複数の地域制御モジュールの1以上に対する命令を起動するためのプログラムコードを更に備える項目1に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
[項目9]
ユーザーが起動した要求に応答して、地域における電力潮流を変化させるべく、上記複数の地域制御モジュールの1以上に対する命令を開始するためのプログラムコードを更に備える項目1に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
[項目10]
ユーザーが起動した要求に応答して又は自動的に、上記複数の地域制御モジュールの各々と関連付けられた上記複数のDERを再規定するためのプログラムコードを更に備える項目1に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
[項目11]
予測された又は導出された電力潮流に基づいて、DERの静的オペレーション及び動的オペレーションの少なくとも一方を決定するためのプログラムコードを更に備える項目1に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
[項目12]
上記送電/配電電力グリッドの既存の接続性及び状態のリアルタイム分析のためのプログラムコードを更に備える項目1に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
[項目13]
上記送電/配電電力グリッドとは分離された地域の電力を自立的に運営するプログラムコードを更に備える項目1に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
[項目14]
自立的に運営される地域のオペレーションを、上記送電/配電電力グリッドへと再び組みこむ及び同期させるべく、複数のDERを動的に管理するプログラムコードを更に備える項目13に記載のコンピュータ可読記憶媒体。

図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9