(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記クロック送信部が、多相クロックのうちから選択するクロックを切り替えることで、位相シフトを与えられたクロックを生成して送出する、ことを特徴とする請求項1に記載の送信装置。
前記データ送信部が、前記クロック送信部から送出されるクロックに位相シフトが与えられるのに先立って当該位相シフトタイミングを告知する位相シフト告知コマンドを送出し、前記位相シフト告知コマンドに続いて前記特定データとしてダミーデータを送出し、
前記クロック送信部が、前記データ送信部が前記ダミーデータを送出するタイミングでクロックに位相シフトを与える、
ことを特徴とする請求項1に記載の送信装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、初めに比較例について説明し、その後に本実施形態について説明する。
【0016】
図1は、比較例の送信装置10の構成を示す図である。比較例の送信装置10は、送信データ生成部11および出力バッファ部12を備える。送信データ生成部11は、受信装置へ送出すべきデータdata1およびクロックclock1を生成し、これらを出力バッファ部12へ出力する。出力バッファ部12は、データ送信部13およびクロック送信部14を含む。
【0017】
データ送信部13は、高速シリアルデータラインを介して受信装置と接続されている。データ送信部13は、FIFO(first-in first-out)メモリを含み、送信データ生成部11から出力されたデータdata1をFIFOメモリに入力して記憶し、また、FIFOメモリに記憶されているデータおよび必要に応じて付加されるダミーデータをデータdata2として受信装置へ出力する。データ送信部13のFIFOメモリがデータdata1を入力して記憶するタイミングは、送信データ生成部11から出力されるクロックclock1により指示される。また、データ送信部13のFIFOメモリがデータdata2を出力するタイミングは、クロック送信部14から出力されるクロックclock2により指示される。
【0018】
クロック送信部14は、クロックラインを介して受信装置と接続されている。クロック送信部14は、SSCGを含み、送信データ生成部11から出力されたクロックclock1を入力し、このクロックclock1に対して周波数を時間的に変調(SS印加)して生成したクロックclock2を出力する。クロック送信部14から出力されるクロックclock2は、受信装置へ送られる他、データ送信部13のFIFOメモリからのデータdata2の出力を指示する信号として用いられる。これにより、データ送信部13は、クロック送信部14により送出されるクロックclock2に同期してデータ data2を送出することができる。
【0019】
図2は、比較例の送信装置10から出力されるクロックclock2の周波数の時間的変化を示す図である。この図に示されるSS印加の一例では、SS印加前のクロックclock1が一定周波数f0であるのに対し、SS印加後のクロックclock2の周波数は三角波状に変調されている。クロックclock2の変調周波数をfmod(変調周期を1/fmod)とし、クロックclock2の中心周波数をf0とし、また、クロックclock2の変調の振幅をΔfとする。
【0020】
図3は、比較例の送信装置10から出力されるクロックclock2の周波数スペクトラムを示す図である。SS印加前のクロックclock1の周波数スペクトラムは周波数f0に集中しているのに対して、
図2に示されるようなSS印加後のクロックclock2の周波数スペクトラムは、周波数f0を中心とする幅2(Δf+fmod)の帯域を有し、ピーク強度が低減されている。これにより、EMIノイズの低減を図ることができる。
【0021】
図4は、比較例の送信装置10から出力されるクロックclock2の位相の時間的変化を示す図である。SS印加後のクロックclock2の位相は、
図2に示される周波数f(t)を積分したものとなる。この図から判るように、周波数変調の振幅Δfが僅かであっても、周波数の積分である位相は、SS印加無しの場合の位相ph0から大きく変動する。
【0022】
SS印加後のクロックclock2の位相変動の振幅Δphは下記(1)式で表される。この式を用いて、例えば、中心周波数f0を1GHzとし、変調周波数fmodを30kHzとし、中心周波数f0に対する変調振幅Δfの割合を3%とすると、位相変動の振幅Δphは250・2π(rad)となる。すなわち、SS印加無しの場合と比較すると、SS印加後のクロックclock2の位相の変動は最大で±250周期分程度となる。
【0024】
比較例の送信装置10のクロック送信部14は、
図2に示されるようなSS印加後のクロックclock2を生成して出力するためにSSCGを含む。SSCGは、基本的にはPLL(phase lock loop)回路構成を有しており、このPLL回路により周波数変調されたクロックclock2を生成して出力する。しかし、このようなPLL回路を含むSSCGは、回路規模が大きく、ノイズに弱い。
【0025】
また、比較例の送信装置10のデータ送信部13は、SS印加前のクロックclock1に同期してデータdata1を入力し、SS印加後のクロックclock2に同期してデータdata2を出力する。入力データdata1に対して出力データdata2は上記のΔphの位相差を有する。この位相差に因るデータ送受信誤りを防ぐ為に、送信装置10はFIFOメモリを含む必要がある。SS印加後のクロックclock2の位相変動の振幅Δphが大きいほど、FIFOメモリの容量も大きいことが必要である。したがって、このようなFIFOメモリも回路規模が大きい。
【0026】
このように、比較例の送信装置10は、回路規模が大きく、半導体集積回路により構成される場合には半導体チップ面積が大きい。これに対して、以下に説明する本実施形態の送信装置10A〜10Dは、クロック送信部が間欠的に位相シフトを与えられたクロックを生成して送出することで、SSCGを含む必要がないので、回路規模の増大を抑制しつつEMIノイズの低減を図ることができる。
【0028】
図5は、第1実施形態の送信装置10Aの構成を示す図である。第1実施形態の送信装置10Aは、送信データ生成部11および出力バッファ部12Aを備える。送信データ生成部11は、受信装置へ送出すべきデータdata1およびクロックclock1を生成し、これらを出力バッファ部12Aへ出力する。出力バッファ部12Aは、データ送信部13およびクロック送信部14Aを含む。
【0029】
図1に示された比較例の送信装置10の構成と比較すると、
図5に示される第1実施形態の送信装置10Aは、出力バッファ部12に替えて出力バッファ部12Aを備える点で相違し、また、クロック送信部14に替えてクロック送信部14Aを備える点で相違する。クロック送信部14Aは、PLL15、カウンタ16およびクロック反転部17を含み、入力したクロックclock1に基づいて、間欠的に位相シフトを与えられたクロックclock2を生成し、このクロックclock2を送出することができる。このように、間欠的に位相シフトが与えられたクロックclock2は、その位相シフトの量がπ(180度)だとすると、間欠的に電圧振幅を反転させたクロックclock2と同じになる。
【0030】
PLL15は、送信データ生成部11から出力されたクロックclock1を入力し、この入力クロックclock1の周波数を一定値倍した周波数を有するクロックclock3を生成して、このクロックclock3を出力する。カウンタ16は、PLL15から出力されたクロックclock3を入力し、このクロックclock3のパルスを計数して、一定パルス数毎に一定期間だけ有意値となるクロック反転制御信号を出力する。
【0031】
クロック反転部17は、PLL15から出力されたクロックclock3を入力するとともに、カウンタ15から出力されたクロック反転制御信号を入力して、クロック反転制御信号が有意値となる度にクロックclock3の正相と逆相とを切り替えてクロックclock2として出力する。データ送信部13は、クロック送信部14Aのクロック反転部17から出力されるクロックclock2に同期してデータ data2を送出する。
【0032】
図6は、第1実施形態の送信装置10Aにおけるクロックclock1,clock2およびclock3等のタイミングチャートである。この図には、上から順に、PLL15に入力されるクロックclock1、PLL15から出力されるクロックclock3、クロックclock3を反転した信号、カウンタ15から出力されるクロック反転制御信号、および、クロック反転部17から出力されるクロックclock2、が示されている。
【0033】
同図では、PLL15から出力されるクロックclock3の周波数は、PLL15に入力されるクロックclock1の周波数を21/20倍となっている。すなわち、クロックclock3の21パルスの期間は、クロックclock1の20パルスの期間と等しい。クロックclock3のパルス#21のエッジは、クロックclock1のパルス#20のエッジと同じタイミングである。また、カウンタ15から出力されるクロック反転制御信号は、クロックclock3の10パルス毎に一定期間だけハイレベルとなる。そして、クロック反転部17から出力されるクロックclock2は、クロック反転制御信号がハイレベルとなる度に(すなわち、クロックclock3の10パルス毎に)、クロックclock3の正相と逆相とを切り替えたものとなり、位相がπだけシフトしたものとなる。
【0034】
このような動作において、クロック反転部17から出力されるクロックclock2において、PLL15から出力されるクロックclock3のパルス#11のエッジに相当するものが欠落する。したがって、クロックclock1の20パルスの期間に、クロックclock3の21パルスを発生させ、クロックclock2の20パルスを発生させる。
【0035】
図7は、第1実施形態の送信装置10Aから出力されるデータおよびクロックのタイミングチャートである。同図(a)では、クロックは位相シフトがない。同図(b)では、クロックは間欠的にπだけ位相シフトする。何れの場合にも、送信装置10Aから出力されるデータおよびクロックを受信する受信装置においては、クロックのパルスのエッジでデータをサンプリングすればよい。
【0036】
図8は、第1実施形態の送信装置10Aから出力されるクロックの周波数スペクトラムの一例を示す図である。クロックclock1の周波数スペクトラムは周波数f0に集中しているのに対して、第1実施形態の送信装置10Aから出力されるクロックclock2の周波数スペクトラムは、周波数f0成分が無くなり、f0±fmod/2,f0±fmod,f0±3fmod/2,・・・にピークを有するものとなり、ピーク強度が低減されている。これにより、EMIノイズの低減を図ることができる。fmodは、クロックに位相シフトを与えるタイミングの周波数である。
【0037】
なお、以上の説明では、送信装置10Aから出力されるクロックは一定パルス数毎に(すなわち、一定周波数fmodで)位相シフトが与えられた。しかし、送信装置10Aから出力されるクロックclock2は、N1パルス毎とN2パルス毎とに位相シフトが与えられてもよい。この場合には、PLL15の分周比は(N1+N2+1)/(N1+N2)となり、カウンタ16はクロックclock3のパルス数N1とN2を計数する度に一定期間だけ有意値となるクロック反転制御信号を出力すればよい。
【0038】
図9は、第1実施形態の送信装置10Aから出力されるクロックの周波数スペクトラムの他の一例を示す図である。fmodや位相シフト量を変化させることで、更にスペクトラムのピーク強度が低減され、EMIノイズの更なる低減を図ることができる。
【0039】
図10〜
図12を用いて、クロックの周波数スペクトラムのシミュレーション計算結果について説明する。
図10は、SS印加しない場合のクロックの波形および周波数スペクトラムを示す図であり、同図(a)はクロック波形を示し、同図(b)は周波数スペクトラムを示す。
図11は、第1実施形態において10パルス毎にπだけ位相シフトした場合のクロックの波形および周波数スペクトラムを示す図であり、同図(a)はクロック波形を示し、同図(b)は周波数スペクトラムを示す。
図12は、第1実施形態において9パルス毎および7パルス毎にπだけ位相シフトした場合のクロックの波形および周波数スペクトラムを示す図であり、同図(a)は9パルス毎に位相シフトしたクロック波形を示し、同図(b)は7パルス毎に位相シフトしたクロック波形を示し、同図(c)は周波数スペクトラムを示す。これらの図の比較から判るように、SS印加しない場合(
図10)より、10パルス毎にπだけ位相シフトした場合(
図11)にはスペクトラムのピーク強度が低減され、9パルス毎および7パルス毎に位相シフトした場合(
図12)にはスペクトラムのピーク強度が更に低減される。
【0040】
比較例の送信装置10は回路規模が大きいSSCGおよびFIFOメモリを必要したのに対して、第1実施形態の送信装置10Aは、固定分周比のPLLおよび低容量値のFIFOメモリを備えていればよいので、回路規模の増大を抑制しつつEMIノイズの低減を図ることができ、半導体集積回路により構成される場合には半導体チップ面積が小さい。
【0042】
図13は、第2実施形態の送信装置10Bの構成を示す図である。第2実施形態の送信装置10Bは、送信データ生成部11および出力バッファ部12Bを備える。送信データ生成部11は、受信装置へ送出すべきデータdata1およびクロックclock1を生成し、これらを出力バッファ部12Bへ出力する。出力バッファ部12Bは、データ送信部13およびクロック送信部14Bを含む。
【0043】
図5に示された第1実施形態の送信装置10Aの構成と比較すると、
図13に示される第2実施形態の送信装置10Bは、出力バッファ部12Aに替えて出力バッファ部12Bを備える点で相違し、また、クロック送信部14Aに替えてクロック送信部14Bを備える点で相違する。クロック送信部14Bは、PLL15、カウンタ16およびクロック選択部18を含み、入力したクロックclock1に基づいて、間欠的に位相シフトを与えられたクロックclock2を生成し、このクロックclock2を送出することができる。
【0044】
PLL15は、送信データ生成部11から出力されたクロックclock1を入力し、この入力クロックclock1の周波数を一定値倍した周波数を有する多相クロックclock3を生成して、この多相クロックclock3を出力する。カウンタ16は、PLL15から出力された多相クロックclock3のうちの何れかのクロックを入力し、この入力したクロックのパルスを計数して、一定パルス数毎にクロック選択制御信号を出力する。
【0045】
クロック選択部18は、PLL15から出力された多相クロックclock3を入力するとともに、カウンタ15から出力されたクロック選択制御信号を入力して、多相クロックclock3のうちクロック選択制御信号が指示する何れかのクロックを選択してクロックclock2として出力する。データ送信部13は、クロック送信部14Bのクロック選択部18から出力されるクロックclock2に同期してデータ data2を送出する。
【0046】
第1実施形態の場合と比べて、この第2実施形態では、多相クロックのうちから選択するクロックを切り替えることで、位相シフトを与えられたクロックを生成して送出することにより、より複雑なスペクトラムを有するクロックclock2を出力することができるので、更にスペクトラムのピーク強度を低減することができ、EMIノイズの更なる低減を図ることができる。
【0048】
これまでに説明した第1実施形態および第2実施形態それぞれでは、受信装置へ送信したデータを該受信装置において欠落なく受信することができる。一方、実際の応用においてはデータ欠落が許容される場合がある。例えば、ビデオ信号におけるブランキング期間のデータは欠落してもよい。また、このブランキング期間は一定周期で発生する。このような場合にはクロック送信部はPLLを含まなくてもよい。第3実施形態の送信装置10Cは、ブランキング期間を示すブランキングインジケート信号を用いて、間欠的にクロックに位相シフトを付与するものである。
【0049】
図14は、第3実施形態の送信装置10Cの構成を示す図である。第3実施形態の送信装置10Cは、送信データ生成部11および出力バッファ部12Cを備える。送信データ生成部11は、受信装置へ送出すべきデータdata1およびクロックclock1を生成し、これらを出力バッファ部12Cへ出力する。出力バッファ部12Cは、データ送信部13およびクロック送信部14Cを含む。
【0050】
図5に示された第1実施形態の送信装置10Aの構成と比較すると、
図14に示される第3実施形態の送信装置10Cは、出力バッファ部12Aに替えて出力バッファ部12Cを備える点で相違し、また、クロック送信部14Aに替えてクロック送信部14Cを備える点で相違する。クロック送信部14Cは、カウンタ16およびクロック反転部17を含み、入力したクロックclock1に基づいて、間欠的に位相シフトを与えられたクロックclock2を生成し、このクロックclock2を送出することができる。
【0051】
カウンタ16は、ビデオ信号データdata1中のブランキング期間を示すブランキングインジケート信号を入力し、このブランキングインジケート信号が有意値となる事象を計数して、一定計数値毎に一定期間だけ有意値となるクロック反転制御信号を出力する。
【0052】
クロック反転部17は、送信データ生成部11から出力されたクロックclock1を入力するとともに、カウンタ15から出力されたクロック反転制御信号を入力して、クロック反転制御信号が有意値となる度にクロックclock1の正相と逆相とを切り替えてクロックclock2として出力する。データ送信部13は、クロック送信部14Cのクロック反転部17から出力されるクロックclock2に同期してデータ data2を送出する。
【0053】
図15は、第3実施形態の送信装置10Cにおけるクロックclock1およびclock2等のタイミングチャートである。この図には、上から順に、クロック反転部17に入力されるクロックclock1、クロックclock1を反転した信号、ブランキングインジケート信号、および、クロック反転部17から出力されるクロックclock2、が示されている。
【0054】
同図に示されるように、第3実施形態では、クロック反転部17において、ブランキング期間を示すブランキングインジケート信号により、クロックclock1の正相と逆相とを切り替えてクロックclock2として出力する。出力されるクロックclock2においてパルス#10が欠落するので、このパルスエッチに同期したデータも欠落する。ただし、この欠落するタイミングはブランキング期間であるので、ビデオデータとしては、何ら影響を及ぼさない。
【0055】
なお、ブランキングインジケート信号がある度に位相シフトを行ってもよく、この場合には、カウンタ16は不要である。ただし、ブランキングインジケート信号のうち数回に1回の割合で位相シフトを行う場合は、図の様にカウンタ16を設ければ良い。また、ブランキングインジケート信号に替えて、データの欠落を許容できるタイミングを示す他の特定信号が用いられてもよい。
【0057】
これまでに説明した各実施形態の説明では、送信装置から受信装置までのデータとクロックとの間の遅延時間差を問題にしなかった。しかし、実際には、
図16(a)に示されるように送信装置10から受信装置30までのデータ用信号線とクロック用信号線とは互いに長さが等しいとは限らず、
図16(b)に示されるようにデータ用信号線と比較してクロック用信号線が長い場合がある。
図16(c)に示されるようにクロック用信号線の途中にバッファが挿入される場合もある。また、1つの送信装置から複数の受信装置へ共通のクロックが伝送される場合に、送信装置から各々の受信装置までのクロック信号線の途中に挿入されるバッファの数が異なることもある。これらの場合には、送信装置から受信装置までのデータとクロックとの間に遅延時間差が生じる。
【0058】
送信装置から受信装置までのデータとクロックとの間に遅延時間差が存在する場合、SS印加を行わないときには、その遅延時間差を補償することで、送信装置から出力されたデータを受信装置においてエラー無く受信することができる。なお、この遅延時間差の補償は、送信装置側で行われてもよいし、受信装置側で行われてもよいし、或いは、補償用に挿入した他の装置で行われてもよい。
【0059】
図17は、SS印加を行っていない場合の遅延時間差を説明する図である。同図(a)に示されるクロックclockは一定周期のものである。同図(a)に示されるクロックclockに対して、同図(b)に示されるクロックclock2は僅かに遅延時間差を有している。また、同図(b)に示されるクロックclock2に対して、同図(c)に示されるクロックclock2は1周期分の遅延時間差を有している。何れの場合にも、遅延時間差は時間的に一定であるので、一旦、遅延時間差を補償すれば、その効果は以降も維持される。
【0060】
図18は、比較例のSS印加を行う場合の遅延時間差を説明する図である。同図(a)に示されるクロックclockの周期は次第に長くなっていっている。同図(a)に示されるクロックclockに対して、同図(b)に示されるクロックclock2は僅かに遅延時間差を有している。同図(b)に示されるクロックclock2に対して、同図(c)に示されるクロックclock2は1周期分の遅延時間差を有している。また、同図(c)に示されるクロックclock2に対して、同図(d)に示されるクロックclock2は更に1周期分の遅延時間差を有している。
【0061】
同図(b)の場合のように遅延時間差が1周期分以下であれば、遅延時間差は時間的に一定であるので、一旦、遅延時間差を補償すれば、その効果は以降も維持される。しかし、同図(c)の場合のように遅延時間差が1周期分以上であると、遅延時間差は時間とともに変動するので、どこかの時点で遅延時間差を補償しても、その効果は維持されることはなく、常に遅延時間差を補償しなくてはならない。同図(d)の場合のように遅延時間差が更に大きくなると、遅延時間差の変動が大きくなって、調整が更に困難になる。
【0062】
以下に説明する第4実施形態の送信装置および受信装置を備える送受信システムは、送信装置から受信装置までのデータとクロックとの間に遅延時間差がある場合にも好適なものである。
図19は、第4実施形態の送信装置10Dの構成を示す図である。
図20は、第4実施形態の送信装置10Dにおける各データのタイミングチャートである。第4実施形態の送信装置10Dは、送信データ生成部21、告知コマンド生成部22およびパラレル-シリアル変換部23を備える。
【0063】
送信データ生成部21は、受信装置へ送出すべきデータdata1およびクロックclock1を生成し、これらを告知コマンド生成部22へ出力する。送信データ生成部21は、受信装置へ本来送信すべきデータ(Normal Data)の途中に間欠的にダミーデータ(dummy data)を挿入する。この挿入されるダミーデータは、クロックに位相シフトを与えるタイミングで挿入され、送信データのデコード最小単位の少なくとも2単位分を占める。
【0064】
告知コマンド生成部22は、送信データ生成部21から出力されるデータdata1を入力して、このデータdata1中のダミーデータを検出し、そのダミーデータのうちの最初の単位を位相シフト告知コマンドに置き換える。ダミーデータのうちの第2単位以降のデータは、受信装置へ送っても問題ない場合は、そのまま受信装置へ送られてもよい。しかし、ダミーデータのうちの第2単位以降のデータをそのまま受信装置へ送った場合に受信装置側で不具合が発生する場合には、告知コマンド生成部22は、そのダミーデータを、不具合が発生しない他のダミーデータ(dummy data2)に置き換える。
【0065】
告知コマンド生成部22は、このような置き換えを行った後のデータdata2をパラレル-シリアル変換部23へ出力する。また、告知コマンド生成部22は、このデータdata2中のダミーデータ(dummy data またはdummy data2)のタイミングにおいてクロックに位相シフトを与えることを指示するための位相シフト開始信号(phase shift start 信号)をパラレル-シリアル変換部23へ出力する。
【0066】
パラレル-シリアル変換部23は、告知コマンド生成部22から出力されたデータdata2および位相シフト開始信号を入力する。そして、パラレル-シリアル変換部23は、第1から第3の実施形態における出力バッファ14A〜14Cと同様にして、位相シフト開始信号が指示するタイミングで位相シフトを与えられたクロック(serial clock0)を送出するとともに、データdata2から変換されたシリアルデータ(serial data0)をクロックに同期して送出する。シリアルデータ(serial data0)には、クロック(serial clock0)に位相シフトが与えられるタイミングを告知する位相シフト告知コマンドが含まれており、また、この位相シフト告知コマンドに続いてダミーデータ(dummy data またはdummy data2)が含まれている。
【0067】
図21は、第4実施形態の受信装置30の構成を示す図である。
図22は、第4実施形態の受信装置30における各データのタイミングチャートである。第4実施形態の受信装置30は、シリアル-パラレル変換部31およびデータ処理部32を備える。データ処理部32は、告知コマンド検出部33、データ入替部34およびデコード部35を含む。
【0068】
シリアル-パラレル変換部31は、送信装置10Dから互いに同期して送出されたシリアルデータ(serial data0)およびクロック(serial clock0)を受信する。シリアル-パラレル変換部31は、クロック(serial clock0)を受信するクロック受信部と、このクロックに同期してシリアルデータ(serial data0)をサンプリングして受信するデータ受信部とを含む。また、シリアル-パラレル変換部31は、シリアルデータ(serial data0)から変換されたパラレルデータdata1を告知コマンド検出部33へ出力する。
【0069】
告知コマンド検出部33は、シリアル-パラレル変換部31から出力されたデータdata1を入力して、このデータdata1中の位相シフト告知コマンドを検出する。そして、告知コマンド検出部33は、位相シフト告知コマンドを検出したときに、その旨を示す告知コマンド検出信号をデータ入替部34へ出力する。また、告知コマンド検出部33は、入力したデータdata1をデータdagta2としてデータ入替部34へ出力する。
【0070】
データ入替部34は、告知コマンド検出部33から出力されたデータdagta2および告知コマンド検出信号を入力する。そして、データ入替部34は、告知コマンド検出信号に基づいて、データdagta2中の位相シフト告知コマンドに続くデータがダミーデータすなわち無効データ(Invalid data)であると認識する。そして、データ入替部34は、これら本来は不要な位相シフト告知コマンドおよび無効データ(Invalid data)の期間、Valid信号をローレベルとしてデコード部35へ出力する。データ入替部34からデコード部35へ与えられるValid信号は、データ入替部34からデコード部35へ与えられるデータdata3が本来のデータ(Normal Data)であるときにハイレベルとなり、データdata3が無効データであるときにローレベルとなる。さらに、データ入替部34は、位相シフト告知コマンドおよび無効データ(Invalid data)が後段において不都合を生じさせる場合には、不都合を生じさせない値(例えば0)に置き換えて、その置き換え後のデータdata3をデコード部35へ出力する。
【0071】
デコード部35は、データ入替部34から出力されたデータdata3およびValid信号を入力して、これらに基づいて所要の処理を行ってデータdata4を後段へ出力する。このように、告知コマンド検出部33,データ入替部34およびデコード部35を含むデータ処理部32は、受信されたデータが位相シフト告知コマンドであるときに、その位相シフト告知コマンドが告知するタイミングでのデータ受信を無効とすることができる。
【0072】
図23は、第4実施形態の送信装置10Dおよび受信装置30を備える送受信システムにおけるデータおよびクロックのタイミングチャートである。送信装置10Dからデータdata1およびクロックclock1が送出される時点では、データdata1はクロックclock1に同期しており、クロックclock1が位相シフトしたときには、データdata1も同じシフト量だけ位相シフトする。
【0073】
受信装置30によりデータdata1およびクロックclock2が受信される時点では、データdata1とクロックclock2との間に遅延時間差が生じており、同図では当該遅延時間差はクロックの2周期分とされている。この場合、受信装置30において、クロックclock2における位相シフト付与直前のパルス#3のエッジでデータdata1をサンプリングしても、そのサンプリングは不正確なものとなる。
【0074】
第4実施形態では、クロックに位相シフトが与えられる際に当該位相シフトタイミングを告知する位相シフト告知コマンドが送信装置10Dから受信装置30へ送られる。そして、受信装置30においては、受信されたデータが位相シフト告知コマンドであるときに、その位相シフト告知コマンドが告知するタイミングでのデータ受信を無効とする。このとき、無効とされるデータをダミーデータとしておけば、送信装置10Dから受信装置30へ問題なくデータ伝送を行うことができる。
【0075】
第4実施形態の送信装置10Dおよび受信装置30を含む送受信システム1の具体的な動作例について、
図24および
図25を用いて説明する。
図24は、第4実施形態の送受信システム1の構成例を示す図である。この図に示される送受信システム1は、送信装置10Dおよび受信装置30
1〜30
6を備える。
【0076】
送信装置10Dは、前述の送信装置10Dと略同様のものであるが、6個の受信装置30
1〜30
6に対して共通のクロックclockを送出し、受信装置30
1に対してデータdata1を送出し、受信装置30
2に対してデータdata2を送出し、受信装置30
3に対してデータdata3を送出し、受信装置30
4に対してデータdata4を送出し、受信装置30
5に対してデータdata5を送出し、受信装置30
6に対してデータdata6を送出する。
【0077】
受信装置30
1〜30
6それぞれは、前述の受信装置30と略同様のものであるが、入力したクロックclockをバッファリングして次段の受信装置へ送出する。すなわち、受信装置30
1は、送信装置10Dから出力されたデータdata1およびクロックclockを入力して、その入力したクロックclockをバッファリングして次段の受信装置30
2へ送出する。受信装置30
2は、送信装置10Dから出力されたデータdata2を入力するとともに、前段の受信装置30
1から出力されたクロックclockを入力して、その入力したクロックclockをバッファリングして次段の受信装置30
3へ送出する。
【0078】
受信装置30
3は、送信装置10Dから出力されたデータdata3を入力するとともに、前段の受信装置30
2から出力されたクロックclockを入力して、その入力したクロックclockをバッファリングして次段の受信装置30
4へ送出する。受信装置30
4は、送信装置10Dから出力されたデータdata4を入力するとともに、前段の受信装置30
3から出力されたクロックclockを入力して、その入力したクロックclockをバッファリングして次段の受信装置30
5へ送出する。
【0079】
受信装置30
5は、送信装置10Dから出力されたデータdata5を入力するとともに、前段の受信装置30
4から出力されたクロックclockを入力して、その入力したクロックclockをバッファリングして次段の受信装置30
6へ送出する。また、受信装置30
6は、送信装置10Dから出力されたデータdata6を入力するとともに、前段の受信装置30
5から出力されたクロックclockを入力する。
【0080】
このように構成される送受信システム1では、受信装置30
1〜30
6それぞれに入力されるデータとクロックとの間の遅延時間差が異なる。すなわち、後段になるほど、遅延時間差が大きい。初段の受信装置30
1に入力されるデータdata1とクロックclockとの間に遅延時間差がない場合であっても、第2段の受信装置30
2に入力されるデータdata2とクロックclockとの間に遅延時間差が存在し、第3段の受信装置30
3に入力されるデータdata3とクロックclockとの間に更に大きい遅延時間差が存在する。
【0081】
図25は、第4実施形態の送受信システム1におけるデータおよびクロックのタイミングチャートである。なお、ここでは、送信装置10Dは、5ビットの位相シフト告知コマンドa〜eに続いて5ビットのダミーデータf〜jを送出するものとする。位相シフト告知コマンドeの部分において位相シフトを生じさせるものとする。また、受信装置30
1〜30
6それぞれは、クロックの立上り及び立下りの双方のタイミングでデータをサンプリングするものとする。
【0082】
同図(a)は、位相シフトを行っておらずデータとクロックとの間に遅延時間差がない場合のタイミングを示す。同図(b)〜(g)は、位相シフトを行う場合に、各受信装置30
nに入力されるデータおよびクロック、ならびに、各受信装置30
nによりサンプリングされるデータ、のタイミングを示す。
【0083】
同図(b)に示される例では、初段の受信装置30
1に入力されるデータdata1とクロックclockとの間に遅延時間差はない。クロックclockの位相シフトと同じタイミングでデータdata1も位相シフトし、位相シフト告知コマンドeの期間が長くなっている。したがって、受信装置30
1では、先ず受信されたデータが位相シフト告知コマンドa〜eであることから、これに続くデータf〜jがダミーデータであると認識され得る。
【0084】
同図(c)に示される例では、第2段の受信装置30
2に入力されるデータdata2とクロックclockとの間にクロック半周期分(データ1ビット分)の遅延時間差が生じている。この場合も、受信装置30
2では、先ず受信されたデータが位相シフト告知コマンドa〜eであることから、これに続くデータf〜jがダミーデータであると認識され得る。
【0085】
同図(d)に示される例では、第3段の受信装置30
3に入力されるデータdata3とクロックclockとの間にクロック1周期分(データ2ビット分)の遅延時間差が生じている。同図(e)に示される例では、第4段の受信装置30
4に入力されるデータdata4とクロックclockとの間にクロック1.5周期分(データ3ビット分)の遅延時間差が生じている。同図(f)に示される例では、第5段の受信装置30
6に入力されるデータdata5とクロックclockとの間にクロック2周期分(データ4ビット分)の遅延時間差が生じている。また、同図(g)に示される例では、第5段の受信装置30
6に入力されるデータdata6とクロックclockとの間にクロック2.5周期分(データ5ビット分)の遅延時間差が生じている。
【0086】
同図(d)〜(g)に示される例では、受信回路30
3〜30
6それぞれにおいて、位相シフト告知コマンドa〜eが受信されるが、これに続いて受信されるデータは必ずしもダミーデータf〜jではなく、何れかのダミーデータが欠落する。受信回路30
3ではダミーデータfが欠落し、受信回路30
4ではダミーデータgが欠落し、受信回路30
5ではダミーデータhが欠落し、また、受信回路30
6ではダミーデータiが欠落する。
【0087】
しかし、位相シフト告知コマンドa〜eの受信の直後にデータeが受信され、このデータeを含めれば5ビットのダミーデータが受信されることになる。したがって、同図(b)〜(g)の何れでも、5ビットの位相シフト告知コマンドa〜eの受信の後に受信される5ビットのデータをダミーデータとして認識すればよい、
【0088】
なお、以上の例においては、位相シフト告知コマンドの後のダミーデータが1つの場合を示したが、ダミーデータが複数あれば、より大きなクロックとデータとの間の遅延時間差に対応できるようになる。
【0089】
図24や
図25のような構成は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:liquid crystal display)やプラズマディスプレイパネル(PDP:plasma display panel)などの一般的にフラットパネルディスプレイと言われる画像表示装置におけるタイミングコントローラとドライバとの間のデータ伝送やメモリシステムにおけるデータ伝送に用いてもよい。このような構成を用いることにより、前述したような画像表示装置の通信ケーブルの本数やメモリシステムにおけるクロックラインを低減させて低コスト化に寄与すると共に低EMI化に寄与することが可能となる。