(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の目的は、耐圧性に優れ、歩留まりよく製造できる半導体装置を提供することである。
また、この発明の他の目的は、ゲートオフの状態でソース−ドレイン間に電圧を長時間印加し続けても、オン抵抗の上昇を抑えることができる半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため
の一の局面に係る半導体装置は、所定のオフ角を有する第1導電型SiCからなる基板と、前記基板の表面に形成された第1導電型SiCからなるエピタキシャル層と、前記エピタキシャル層において前記基板のオフ方向に平行な第1ラインおよび当該第1ラインと交差した第2ラインを含む第1導電型エピラインによって区画されていて、それぞれが前記エピタキシャル層の表面の一部を形成する第1導電型のソース領域と、前記ソース領域に対して前記エピタキシャル層の裏面側に前記ソース領域に接するように形成され、前記エピタキシャル層の前記表面の一部を形成する第2導電型のチャネル領域とを有する複数の単位セルと、前記エピタキシャル層の前記表面に形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成され、前記ゲート絶縁膜を介して前記チャネル領域に対向するゲート電極と、前記エピタキシャル層において前記第1ラインに形成され、前記ゲート絶縁膜に生じる電界を緩和する電界緩和部とを含む。
【0006】
この出願の発明者は、従来の縦型のパワーMOSFETでは、耐圧に優れるデバイスを歩留まりよく製造することが困難であることを見出した。たとえば、品質保証試験の一つである高温逆バイアス(HTRB:High Temperature Reverse Bias)試験の後、互いに隣り合う単位セル間に配置されたゲート絶縁膜が絶縁破壊するケースが非常に多い。その結果、多くの製品が良品としての耐圧基準を満たすことができず、不良品と判定される場合がある。そこで、この出願の発明者は、HTRB試験や実使用等におけるゲート絶縁膜の絶縁破壊の要因について、鋭意検討した。そして、その要因が、ゲート絶縁膜に対する電界集中であることを見出した。なお、HTRB試験とは、ゲートオフの状態において、高温下、ソース−ドレイン間にデバイス耐圧ほどの電圧を長時間印加し続けることによってデバイスの耐圧を確認する試験である。
【0007】
そこで、
一の局面に係る半導体装置では、第1導電型のソース領域と第1導電型の基板(ドレイン)が第2導電型のチャネル領域を挟んで縦方向に配置された縦型構造において、互いに隣り合う単位セル間の第1導電型エピラインに、ゲート絶縁膜に生じる電界を緩和する電界緩和部が形成されている。そのため、ゲートオフの状態でソース−ドレイン間に電圧を長時間印加し続けても、ゲート絶縁膜の絶縁破壊を防止することができる。したがって、
一の局面に係る半導体装置あれば、耐圧に優れる半導体装置を歩留まりよく製造することができる。
【0008】
しかも、電界緩和部が、基板のオフ方向に平行な第1ラインに形成されている。この場合に、ゲートオフの状態でソース−ドレイン間に電圧を長時間印加し続けても、オン抵抗の上昇を抑えることができることを見出した。したがって、前記電界緩和部を、抵抗上昇防止部と呼ぶこともできる。
また、前記半導体装置では、前記電界緩和部は、前記第1ラインを幅方向に横切って前記第1ラインを選択的に分割するように形成されていることが好まし
い。この構成によって、オン抵抗の上昇を一層抑えることができる。その場合、分割された前記第1ラインの各長さが、前記第2ラインの長さ以下であることが好まし
い。
【0009】
また、前記半導体装置では、前記電界緩和部は、前記第1ラインと前記第2ラインとの交差部分に配置されていることが好まし
い。ゲート絶縁膜の絶縁破壊が特に発生しやすい第1ラインと第2ラインとの交差部分に電界緩和部が配置されているので、その交差部分でのゲート絶縁膜の絶縁破壊を効果的に防止することができる。この場合、前記交差部分に配置された前記電界緩和部は、平面視で前記チャネル領域と重なっていることがさらに好まし
い。
【0010】
また、前記半導体装置では、前記電界緩和部は、前記第1ラインの幅よりも狭い幅で前記第1ラインに沿って形成されていてもよ
い。
また、前記半導体装置では、前記電界緩和部は、第2導電型の不純物イオンを前記第1ラインに導入することによって形成された第2導電型緩和層であることが好まし
い。第1導電型エピラインの導電型とは異なる第2導電型緩和層によって、当該第2導電型緩和層と第1導電型エピラインとの接合(pn接合)から生じる空乏層を、第1導電型エピラインに発生させることができる。そして、この空乏層によって、ゲート電極を基準とする高い電位の等電位面をゲート絶縁膜から遠ざけることができる。その結果、ゲート絶縁膜にかかる電界を小さくすることができるので、絶縁破壊を防止することができる。この場合、前記第2導電型緩和層は、第2導電型の不純物イオンとして、アルミニウム(Al)またはホウ素(B)を含んでいてもよ
い。また、前記第2導電型緩和層は、高抵抗化されていてもよ
く、その場合、高抵抗化された前記第2導電型緩和層は、第2導電型の不純物イオンとして、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、アルゴン(Ar)またはバナジウム(V)を含んでいてもよ
い。
【0011】
また、前記半導体装置は、前記複数の単位セルを櫛歯状に一体的に結合することによって形成された第1櫛型ユニットと、前記複数の単位セルを櫛歯状に一体的に結合することによって形成され、前記第1櫛型ユニットに噛み合う第2櫛型ユニットとを含んでいてもよく、その場合、前記第1導電型エピラインは、前記第1櫛型ユニットと前記第2櫛型ユニットとの間を縫うように葛折状に形成されていることが好まし
い。
【0012】
また、前記半導体装置では、前記複数の単位セルは、互いに隣り合う単位セルを前記第2ラインに沿って互い違いにずらした千鳥状に配列されていることが好まし
い。
また、前記半導体装置では、前記単位セルは、正方形状に形成されていてもよい
し前記第2ラインに沿う長辺と前記第1ラインに沿う短辺を有する長方形状に形成されていてもよ
い。さらに、前記単位セルは、六角形
状、三角形
状等の多角形状(より好ましくは、正多角形)や円形
状に形成されていてもよい。
【0013】
また、上記目的を達成するため
の他の局面に係る半導体装置は、所定のオフ角を有する第1導電型SiCからなる基板と、前記基板の主面に形成された第1導電型SiCからなるエピタキシャル層と、前記エピタキシャル層において前記基板のオフ方向とそれぞれが交差し、かつ互いに交差した第1ラインおよび第2ラインを含む第1導電型エピラインによって区画されていて、それぞれが前記エピタキシャル層の表面の一部を形成する第1導電型のソース領域と、前記ソース領域に対して前記エピタキシャル層の裏面側に前記ソース領域に接するように形成され、前記エピタキシャル層の前記表面の一部を形成する第2導電型のチャネル領域とを有する複数の単位セルと、前記エピタキシャル層の前記表面に形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成され、前記ゲート絶縁膜を介して前記チャネル領域に対向するゲート電極と含む。
【0014】
この構成によれば、第1導電型のエピラインを形成する第1ラインおよび第2ラインの両方が基板のオフ方向に交差している。つまり、第1ラインおよび第2ラインが、基板のオフ方向に平行ではない。そのため、第1ラインおよび第2ラインに電界緩和部を形成しなくても、オン抵抗の上昇を抑えることができる。
この他の局面に係る半導体装置では、前記第1ラインおよび/または前記第2ラインを幅方向に横切って前記第1ラインおよび/または前記第2ラインを選択的に分割するように、前記ゲート絶縁膜に生じる電界を緩和する電界緩和部が形成されていてもよい。その場合、当該電界緩和部に関して、前記一の局面に係る半導体装置における好ましい構
成を採用することができる。
【0015】
また、この他の局面に係る半導体装置では、前記エピタキシャル層において前記第1ラインおよび/または前記第2ラインに沿って形成され、前記第1ラインおよび前記第2ラインの幅よりも狭い幅を有する第2電界緩和部をさらに含んでいてもよく、その場合、前記第2電界緩和部は、前記電界緩和部に一体的に繋がっていてもよい。
また、この他の局面に係る半導体装置では、前記単位セルに関して、前記一の局面に係る半導体装置における好ましい構
成を採用することができる。
【0016】
上記目的を達成するためのこの発明
の半導体装置は、所定のオフ角を有する第1導電型SiCからなる基板と、前記基板の表面に形成された第1導電型SiCからなるエピタキシャル層と、前記エピタキシャル層において前記基板のオフ方向に平行な第1ラインおよび当該第1ラインと交差した第2ラインを含む第1導電型エピラインによって区画されていて、それぞれが前記エピタキシャル層の表面の一部を形成する第1導電型のソース領域と、前記ソース領域に対して前記エピタキシャル層の裏面側に前記ソース領域に接するように形成され、前記エピタキシャル層の前記表面の一部を形成する第2導電型のチャネル領域とを有する複数の単位セルと、前記エピタキシャル層の前記表面に形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成され、前記ゲート絶縁膜を介して前記チャネル領域に対向するゲート電極と、前記エピタキシャル層において前記第1ラインを幅方向に横切って前記第1ラインを選択的に分割するように形成され、前記エピタキシャル層の他の部分とは異なる性質のダメージ層とを含む。
【0017】
この構成によれば、ダメージ層が、基板のオフ方向に平行な第1ラインを幅方向(オフ方向と交差する方向)に横切って第1ラインを選択的に分割するように形成されている。そのため
、第1ラインおよび第2ラインに電界緩和部を形成しなくても、オン抵抗の上昇を抑えることができる。
また、
この発明の半導体装置では、前記第1ラインおよび/または前記第2ラインを幅方向に横切って前記第1ラインおよび/または前記第2ラインを選択的に分割するように、前記ゲート絶縁膜に生じる電界を緩和する電界緩和部が形成されていてもよい。その場合、当該電界緩和部に関して、前記一の局面に係る半導体装置における好ましい構成を採用することができる。
【0018】
また、
この発明の半導体装置では、前記エピタキシャル層において前記第1ラインおよび/または前記第2ラインに沿って形成され、前記第1ラインおよび前記第2ラインの幅よりも狭い幅を有する第2電界緩和部をさらに含んでいてもよく、その場合、前記第2電界緩和部は、前記電界緩和部に一体的に繋がっていてもよい。
また、
この発明の半導体装置では、前記単位セルに関して、前記一の局面に係る半導体装置における好ましい構成を採用することができる。
【0019】
また、前記基板のオフ方向は、<11−20>方向であることが好まし
い。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1(a)(b)は、この発明の第1の実施形態に係る半導体装置の模式平面図であって、
図1(a)は全体図、
図1(b)は複数の単位セルのレイアウト図をそれぞれ示す。
図2(a)(b)はそれぞれ、
図1(b)の切断面線A−Aおよび切断面線B−Bから見た断面図である。なお、
図1(b)では、明瞭化のため、半導体装置1の一部を透視して表している。
【0022】
半導体装置1は、SiCが採用されたプレーナゲート型VDMISFET(vertical double-diffused Metal Insulator Field Effect Transistor)を含む。半導体装置1の外形は、たとえば、
図1(a)に示すように、平面視正方形のチップ状である。チップ状の半導体装置1のサイズは、
図1(a)の紙面における上下左右方向の長さがそれぞれ数mm程度である。半導体装置1の表面には、アクティブ領域2が設定されている。アクティブ領域2は、ガードリング3に取り囲まれることによって区画された領域である。
【0023】
また、半導体装置1の表面には、ソースパッド4が形成されている。ソースパッド4は、四隅が外方へ湾曲した平面視略正方形状であり、半導体装置1の表面のほぼ全域を覆うように形成されている。このソースパッド4には、その一辺の中央付近に除去領域5が形成されている。除去領域5は、ソースパッド4が形成されていない領域である。
除去領域5には、ゲートパッド6が配置されている。ゲートパッド6とソースパッド4との間には間隔が設けられており、これらは互いに絶縁されている。
【0024】
次に、半導体装置1の内部構造について説明する。
半導体装置1は、n
+型SiCからなる基板7と、基板7の表面7Aに積層されたn
−型SiCからなるドリフト層8(ドレイン層)とを含む。ドリフト層8は、基板7の表面7AにSiCをエピタキシャル成長させることによって形成されたエピタキシャル層である。また、基板7の裏面7Bには、その全域を覆うようにドレイン電極9が形成されている。
【0025】
ドリフト層8の表面8A付近(表面部)には、複数の単位セル10が配列されている。複数の単位セル10は、互いに交差した第1ライン11および第2ライン12を含むn
−型エピライン13によって区画されている。n
−型エピライン13は、ドリフト層8のn
−型の部分が表面8Aにおいてライン状に選択的に露出した部分である。この実施形態では、n
−型エピライン13は、第1ライン11および第2ライン12が互いに直交することによって形成された格子状であり、互いに隣り合う単位セル10の境界は、n
−型エピライン13の幅方向中央に沿って設定されている。これにより、複数の単位セル10は、行列状に配列されている。また、n
−型エピライン13は、互いに隣り合う単位セル10間に跨っている。また、この実施形態では、n
−型エピライン13によって区画された格子の窓部分が正方形状に形成されることによって、各単位セル10は、正方形状に形成されている。
【0026】
各単位セル10は、n
+型のソース領域14と、p型のチャネル領域(ウェル領域)15と、p
+型のチャネルコンタクト領域16とを含む。半導体装置1のドレインは、ドリフト層8において複数の単位セル10の下方に広がる部分からなり、複数の単位セル10によって共有されている。この実施形態では、ソース領域14は、ドリフト層8の表面8Aの一部を形成するように形成され、チャネル領域15は、ソース領域14の下方および側方を取り囲むように形成されている。これによりチャネル領域15は、ソース領域14に対してドリフト層8の裏面8B側にソース領域14に接するとともに、ドリフト層8の表面8Aの一部を形成している。チャネルコンタクト領域16は、ソース領域14の一部(たとえば中央部)を貫通してチャネル領域15に接している。
【0027】
また、チャネル領域15の側方に、第1ライン11および第2ライン12を含むn
−型エピライン13が配置されている。そして、ソース領域14とチャネル領域15とを有する単位セル10の一辺が第1ライン11となり、他辺が第2ライン12となっている。第1ライン11、第2ライン12に沿って単位分移動すると、隣の単位セル10となる。また、第1ライン11、第2ライン12に沿って単位分の整数倍移動した場合も、隣の単位セル10となる。
【0028】
ドリフト層8の表面8Aには、n
−型エピライン13に沿ってゲート絶縁膜17が形成されている。ゲート絶縁膜17は、隣り合う単位セル10間に跨っていて、チャネル領域15におけるソース領域14を取り囲む部分(チャネル領域15の周縁部)およびソース領域14の外周縁を覆っている。ゲート絶縁膜17上には、ゲート電極18が形成されている。ゲート電極18は、ゲート絶縁膜17を介してチャネル領域15の周縁部に対向している。各単位セル10では、ゲート電極18に印加する電圧を制御することによって、チャネル領域15の周縁部に環状のチャネルが形成される。これにより、チャネル領域15の側面に沿ってn
−型エピライン13を表面8Aへ向かって流れるドレイン電流を、このチャネルを介してソース領域14に流すことができる。
【0029】
また、ドリフト層8の表面8Aには、ゲート電極18を覆うように層間絶縁膜19が形成されている。層間絶縁膜19には、ソース領域14およびチャネルコンタクト領域16を選択的に露出させるコンタクトホール20が形成されている。
層間絶縁膜19上には、ソース電極21が形成されている。ソース電極21は、各コンタクトホール20を介して、すべての単位セル10のチャネルコンタクト領域16およびソース領域14に一括して接触している。つまり、ソース電極21は、すべての単位セル10に対して共通の電極となっている。そして、ソース電極21は、図示しないソース配線等を介してソースパッド4(
図1(a)参照)に電気的に接続されている。一方、ゲートパッド6(
図1(a)参照)は、図示しないゲート配線等を介してゲート電極18に電気的に接続されている。
【0030】
ソース電極21は、ドリフト層8との接触側から順にコンタクトメタル22と、表面メタル23とが積層された構造を有している。
半導体装置1においてn
−型エピライン13には、電界緩和部(第2導電型緩和層)としてのp
−型緩和層24が形成されている。p
−型緩和層24は、第1ライン11と第2ライン12との交差部分27に配置された第1部分25と、第1ライン11および第2ライン12の線状部分(交差部分27以外の部分)に配置された第2部分26とを一体的に含む。
【0031】
p
−型緩和層24の第1部分25は、第1ライン11および第2ライン12の幅よりも広い幅で、第1ライン11および第2ライン12を幅方向に横切るように形成されている。この実施形態では、第1部分25は、平面視において、当該交差部分27を取り囲む単位セル10(チャネル領域15)と重なるように、交差部分27よりも大きい形状に形成されている。これにより、複数の単位セル10に跨る第1ライン11は、各交差部分27を境にして、それぞれの長さが全体の長さよりも短くなるように複数本に分割されている。一方、複数の単位セル10に跨る第2ライン12も同様に、各交差部分27を境にして、それぞれの長さが全体の長さよりも短くなるように複数本に分割されている。この実施形態では、単位セル10が正方形状に形成されているので、分割された第1ライン11の各長さL
1は、分割された第2ライン12の各長さL
2と等しくなっているが、単位セル10を、第2ライン12に沿う長辺と第1ライン11に沿う短辺を有する長方形状にすることによって、L
1<L
2としてもよい。
【0032】
p
−型緩和層24の第2部分26は、第1ライン11および第2ライン12の幅よりも狭い幅で、第1ライン11および第2ライン12に沿って形成されている。この実施形態では、第2部分26は、互いに隣り合う複数の単位セル10の各チャネル領域15に対して間隔を隔てて形成されている。第2部分26とチャネル領域15との間に間隔を設けることによって、半導体装置1のオン時に各チャネル領域15の側面に沿ってn
−型エピライン13を流れるドレイン電流の経路を確保することができる。よって、オン抵抗の増加を抑制でき、良好なトランジスタ動作を行うことができる。なお、ドレイン電流の経路を確保できる構成であれば、第1部分25が第1ライン11および第2ライン12の幅よりも狭い幅で形成され、第2部分26が第1ライン11および第2ライン12の幅よりも広い幅で形成されていてもよい。また、第1部分25および第2部分26の両方が、第1ライン11および第2ライン12の幅よりも狭い幅もしくは広い幅で形成されていてもよい。さらに、第1部分25と第2部分26とは、一体的に形成されている必要はなく、たとえば、互いに離れて形成されていてもよい。
【0033】
半導体装置1の各部の詳細について以下に説明を加える。
半導体装置1において各導電型の不純物濃度は、以下の通りである。具体的には、n
+型SiCの濃度は1×10
18〜1×10
21cm
−3であり、n
−型SiCの濃度は1×10
15〜1×10
17cm
−3である。また、p
+型SiCの濃度は1×10
18〜1×10
21cm
−3であり、p型SiCの濃度は1×10
16〜1×10
19cm
−3であり、p
−型SiCの濃度は、1×10
13〜1×10
18cm
−3である。
【0034】
各単位セル10の大きさは、たとえば、
図1(b)の紙面上下左右方向の長さがそれぞれ10μm程度である。
n
−型エピライン13の幅は、第1ライン11および第2ライン12ともに、2.8μm程度で一定である。
ソース領域14の大きさは、たとえば、
図1(b)の紙面上下左右方向の長さがそれぞれ5.7μm程度であり、コンタクト部分の大きさ(コンタクトホール20の開口幅)が4.5μm程度である。また、ソース領域14の深さは、たとえば、0.25μm程度である。
【0035】
チャネル領域15の大きさは、たとえば、
図1(b)の紙面上下左右方向の長さがそれぞれ7.2μm程度である。また、チャネル領域15の深さは、たとえば、0.65μm程度である。
チャネルコンタクト領域16の大きさは、たとえば、
図1(b)の紙面上下左右方向の長さがそれぞれ2.2μm程度である。また、チャネルコンタクト領域16の深さは、たとえば、0.35μm程度である。
【0036】
ゲート絶縁膜17は、酸化シリコン(SiO
2)、窒化シリコン(SiN)、窒化酸化シリコン(SiON)等の絶縁物からなる。また、ゲート絶縁膜17の暑さは、たとえば、400Å程度である。
ゲート電極18は、ポリシリコン等の導電物からなる。その場合、当該ポリシリコンには、不純物イオンが高濃度に導入されていることが好ましい。また、ゲート電極18の厚さは、たとえば、6000Å程度である。
【0037】
層間絶縁膜19は、たとえば、酸化シリコン(SiO
2)等の絶縁物からなる。
ソース電極21のコンタクトメタル22は、たとえば、チタン(Ti)および窒化チタン(TiN)の積層構造(Ti/TiN)からなり、表面メタル23は、たとえば、アルミニウム(Al)からなる。
ドレイン電極9は、たとえば、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、金(Au)および銀(Ag)の積層構造(Ti/Ni/Au/Ag)からなる。
【0038】
p
−型緩和層24の深さは、チャネル領域15よりも浅く、たとえば、0.6μm程度である。また、p
−型緩和層24は、この実施形態では、p型の不純物イオンをn
−型エピライン13に導入することによって形成されている。p型の不純物イオンとしては、アルミニウム(Al)またはホウ素(B)を適用できる。なお、n
−型エピライン13における電界を緩和するための層として、1×10
−16cm
−3以下の濃度を有するi型(真性半導体)緩和層や、100MΩ/□以上のシート抵抗を有する高抵抗緩和層を、p
−型緩和層24に代えて設けてもよい。高抵抗緩和層を設ける場合、不純物としては、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、アルゴン(Ar)またはバナジウム(V)を適用できる。また、電界緩和部としてのp
−型緩和層24によって、オン抵抗の上昇を抑えることができるため、p
−型緩和層24を抵抗上昇防止部と呼ぶこともできる。
【0039】
次に、
図3〜
図6を参照して、基板7のオフ方向とn
−型エピライン13との関係について説明する。
図3は、ウエハ状態における前記基板および前記ドリフト層(エピタキシャル層)の概略図である。
半導体装置1の基板7およびドリフト層8(エピタキシャル層)を構成するSiCは、同一の組成で様々な積層構造をとる結晶多形(ポリタイプ)を示す材料であり、数100種類以上のポリタイプが存在する。ポリタイプとして、たとえば、4H−SiC、3C−SiC、6H−SiC、15R−SiC等が存在する。これらの中では、4H−SiCが好ましい。以下の説明では、基板7およびドリフト層8が4H−SiCであることを前提に説明する。
【0040】
基板7の厚さt
1は、たとえば、200μm〜500μmであり、ドリフト層8の厚さt
2は、基板7よりも薄く、たとえば、5μm〜100μm(一例として10μm程度)である。
基板7は、この実施形態では、2°〜8°(好ましくは、4°程度)のオフ角θを有している。たとえば、基板7の表面7A(基板主面)は、(0001)面に対して<11−20>方向(オフ方向)にオフ角θで傾斜した面となっている。
【0041】
(0001)、<11−20>などの表現は、いわゆるミラー指数であり、SiC結晶の格子面および格子方向を記述する際に用いられる。ミラー指数については、
図4および
図5を参照して説明することができる。また、この実施形態では、オフ方向の一例として<11−20>方向を挙げて説明するが、オフ方向は、半導体装置1に要求される機能に応じて適宜変更することができる。
【0042】
図4は、4H−SiCの結晶構造のユニットセルを表した模式図である。
図5は、前記ユニットセルを(0001)面の真上から見た図である。なお、
図4の下部に示したSiC結晶構造の斜視図については、その横に示したSiC積層構造の4層のうち2層のみを抜き出して示している。
図4に示すように、4H−SiCの結晶構造は、六方晶系で近似することができ、1つのシリコン原子に対して4つの炭素原子が結合している。4つの炭素原子は、シリコン原子を中央に配置した正四面体の4つの頂点に位置している。これらの4つの炭素原子は、1つのシリコン原子が炭素原子に対して<0001>方向に位置し、他の3つの炭素原子がシリコン原子に対して<000−1>側に位置している。
【0043】
<0001>および<000−1>は六角柱の軸方向に沿い、この<0001>を法線とする面(六角柱の頂面)が(0001)面(Si面)である。一方、<000−1>を法線とする面(六角柱の下面)が(000−1)面(C面)である。
また、<0001>に垂直であり、かつ(0001)面の真上から見た場合において六角注の互いに隣り合わない頂点を通る方向がそれぞれ、a
1軸<2−1−10>、a
2軸<−12−10>およびa
3軸<−1−120>である。
【0044】
図5に示すように、a
1軸とa
2軸との間の頂点を通る方向が<11−20>であり、a
2軸とa
3軸との間の頂点を通る方向が<−2110>であり、a
3軸とa
1軸との間の頂点を通る方向が<1−210>である。
六角注の各頂点を通る上記6本の軸の各間において、その両側の各軸に対して30°の角度で傾斜していて、六角注の各側面の法線となる軸がそれぞれ、a
1軸と<11−20>との間から時計回りに順に、<10−10>、<1−100>、<0−110>、<−1010>、<−1100>および<01−10>である。これらの軸を法線とする各面(六角柱の側面)は、(0001)面および(000−1)面に対して直角な結晶面である。
【0045】
そして、この実施形態では、基板7の表面7A(主面)は、
図6(a)(b)に示すように、(0001)面に対して<11−20>方向にオフ角θで傾斜した面となっている。
図6は、前記基板および前記ドリフト層の要部拡大図であり、
図6(a)は平面図、
図6(b)は
図6(a)の切断面線C−Cから見た断面図である。
【0046】
図6(b)に示すように、基板7の表面7Aは、その法線nの方向が<0001>方向と一致しておらず、(0001)面に対して<11−20>のオフ方向に4°以下のオフ角θで傾斜している。オフ方向とは、
図4に示すように、<0001>に対する基板7の法線nの傾斜する方向を指し、<0001>から法線nを(0001)面に投影(射影)したベクトルの向きで示されるものである。すなわち、この実施形態では、法線nの投影ベクトルの向きが、<11−20>に一致している。
【0047】
これにより、基板7は、<11−20>に沿って規則的に配列され、面方位が(0001)面である平坦なテラス面28と、表面7Aが(0001)面に対して傾斜することによって生じるテラス面28の段差部分に形成され、面方位が<11−20>に垂直な(11−20)面であるステップ面29とを有する複数のレイヤ30(bi-layer)により構成されており、テラス面28およびステップ面29が表面7Aを形成している。各レイヤ30は、1つのシリコン原子に対して4つの炭素原子が結合して形成された正四面体からなる原子層1層分で構成されており、その高さ(ステップ高さh)は、0.25nmである。
【0048】
図6(a)に示すように、各レイヤ30のステップ面29は、<11−20>方向にテラス面28の幅を保ちながら、規則的に並ぶことになる。また、ステップ面29のステップエッジとなるステップライン31は、<11−20>方向と垂直の関係を保ちながら(言い換えれば、<1−100>方向と平行の関係を保ちながら)、テラス面28の幅を取りながら平行に並ぶようになる。
【0049】
ドリフト層8は、基板7のテラス面28およびステップ面29を保ちながら、各レイヤ30が<11−20>方向(オフ方向)に沿って横方向に結晶成長することによって形成されている。各レイヤ30の成長方向の幅(ステップ成長幅S
1)は、ドリフト層8の厚さt
2を用いて、t
2/sinθで表すことができる。また、ドリフト層8の表面8A(エピ表面)での、各レイヤ30の成長方向の幅(ステップ進行幅L
3)は、t
2/tanθで表すことができる。
【0050】
そして、この実施形態では、エピタキシャル成長によって形成されたドリフト層8のn
−型エピライン13と、基板7のオフ方向との間に、所定の関係が設定されている。具体的には、n
−型エピライン13を構成するラインのうち、第1ライン11が基板7のオフ方向に平行に形成され、第2ライン12が基板7のオフ方向に直交するように形成されている。つまり、第1ライン11が<11−20>方向に沿って延び、第2ライン12が<1−100>方向に沿って延びている。
【0051】
以上、この半導体装置1によれば、ソース電極21を接地した状態で、ソース電極21とドレイン電極9との間(ソース−ドレイン間)にドレイン電圧を印加し、ゲート電極18に所定の電圧を印加することによって、各単位セル10のチャネル領域15の周縁部に環状のチャネルを形成する。これにより、ドレイン電極9からソース電極21へ電流が流れ、各単位セル10がオン状態となる。
【0052】
一方、各単位セル10がオフ状態(つまり、ゲート電圧が0Vの状態)にされ、ソース−ドレイン間に電圧が印加されたままであると、ゲート電極18とドリフト層8との間に介在するゲート絶縁膜17に電界がかかる。この電界は、ゲート電極18とドリフト層8との電位差に起因して生じるものである。そして、ドリフト層8の導電型(n
−型)が維持されたn
−型エピライン13においては、ゲート電極18を基準(0V)として非常に高い電位の等電位面が分布し、しかも等電位面の間隔が小さいため、非常に大きな電界が生じる。たとえば、ドレイン電圧が900Vであれば、ドレイン電極9に接する基板7の裏面7B付近では900Vの等電位面が分布しており、基板7の裏面7Bからドリフト層8の表面8A側へ向かうにつれて電圧降下を生じるが、n
−型エピライン13では、数十V程度の等電位面が分布する。そのため、n
−型エピライン13では、ゲート電極18側へ向かう非常に大きな電界が生じる。
【0053】
そこで、この半導体装置1では、ドリフト層8とは反対導電型(p
−型)のp
−型緩和層24が、n
−型エピライン13の全域にわたって形成されている。そのため、p
−型緩和層24とn
−型エピライン13との接合(pn接合)から生じる空乏層を、n
−型エピライン13の全域に発生させることができる。そして、この空乏層によって、ゲート電極18を基準とする高い電位の等電位面を基板7側へ押し下げて、ゲート絶縁膜17から遠ざけることができる。その結果、ゲート絶縁膜17にかかる電界を小さくすることができる。そのため、ソース−ドレイン間にデバイス耐圧ほどの電圧が印加され続けるHTRB試験時、さらには実使用において、ゲート絶縁膜17の絶縁破壊を防止することができる。したがって、耐圧に優れる半導体装置1を歩留まりよく製造することができる。
【0054】
また、この実施形態のように、n
−型エピライン13が格子状に形成される構成では、2行2列で配列された4つの単位セル10の各角に取り囲まれる交差部分27に、特に強力な電界が発生しやすい。しかし、この半導体装置1では、その交差部分27には、交差部分27よりも大きいp
−型緩和層24(第1部分25)が形成されており、しかもその第1部分25が単位セル10の各角に入り込んでいる。そのため、ゲート絶縁膜17における交差部分27に対向する部分の絶縁破壊を効果的に防止することができる。また、交差部分27だけではなく、交差部分27以外の部分にもp
−型緩和層24(第2部分26)が形成されているので、ゲート絶縁膜17にかかる電界を、満遍なく緩和することができる。
【0055】
また、p
−型緩和層24(第1部分25)が、基板7のオフ方向に平行な第1ライン11に形成されている。しかも、この第1部分25によって、複数の単位セル10に跨る第1ライン11は、それぞれの長さが全体の長さよりも短くなるように分割されている。このとき、ゲートオフの状態でソース−ドレイン間に電圧を長時間印加し続けても、オン抵抗の上昇を抑えることができることを見出した。
<第1の実施形態における単位セルの他のレイアウト>
次に、
図7〜
図12を参照して、半導体装置1の複数の単位セルの他のレイアウトを複数例示するが、複数の単位セルのレイアウトはこれらに限られない。なお、
図7〜
図12において、前述の
図1に示された各部と対応する部分には同一の参照符号を付して示す。また、
図7〜
図12においても、基板7のオフ方向は、たとえば、<11−20>方向である。
【0056】
前述の説明では、複数の単位セル10は、行列状に配列されているとしたが、
図7に示すように、複数の単位セルを用いて複数の櫛型ユニットを形成し、当該複数の櫛型ユニットを互いに噛み合わせてもよい。具体的には、複数の単位セル32をベース部33に櫛歯状に一体的に結合することによって形成された第1櫛型ユニット34と、複数の単位セル35をベース部36に櫛歯状に一体的に結合することによって形成された第2櫛型ユニット37とを、互いに噛み合わせてもよい。この場合、複数の単位セル32,35は、基板7のオフ方向に沿って並べられていてもよい。つまり、複数の単位セル32,35を横切る方向が、オフ方向に一致していてもよい。
【0057】
この構成を採用することによって、n
−型エピライン40は、第1櫛型ユニット34と第2櫛型ユニット37との間を縫うように葛折状に形成されることとなる。具体的には、n
−型エピライン40は、基板7のオフ方向と交差する方向に互いに平行な複数の第2ライン39を、単位セル32,35の各端部(他方のベース部33,36に対向する端部)において基板7のオフ方向に平行な第1ライン38を介して折り返して連続させた葛折状に形成されることとなる。すなわち、複数の単位セル32,35が、第1ライン38および第2ライン39を有するn
−型エピライン40によって区画されている。そして、n
−型エピライン40は、チャネル領域15の側方に配置されている。
【0058】
また、各単位セル32,35は、第2ライン39に沿う長辺と第1ライン38に沿う短辺を有する長方形状に形成されていてもよい。
また、p
−型電界緩和層41は、第1ライン38において第1ライン38を幅方向に横切るように形成されている。p
−型電界緩和層41は、第2櫛型ユニット37の各単位セル35の端部と第1櫛型ユニット34のベース部33との間、および第1櫛型ユニット34の各単位セル32の端部と第2櫛型ユニット37のベース部36との間に跨っていてもよい。
【0059】
また、
図8に示すように、複数の単位セル10は、互いに隣り合う単位セル10を第2ライン12に沿って(基板7のオフ方向と交差する方向に沿って)互い違いにずらした千鳥状に配列されていてもよい。具体的には、基板7のオフ方向と交差する方向に沿って互いに間隔を空けて配列された複数の単位セル10からなる列が、当該列と隣り合う列に対して、基板7のオフ方向と交差する方向に沿って単位セル10のピッチの半分(半ピッチ)ずれていてもよい。この場合、p
−型緩和層24は、第1ライン11を幅方向に横切って第1ライン11を分割するように形成されていてもよい。
【0060】
また、
図9に示すように、各単位セル10は、第2ライン12に沿う長辺と第1ライン11に沿う短辺を有する長方形状にされていてもよい。また、p
−型緩和層24は、第1ライン11と第2ライン12との交差部分27のみに形成し、それ以外の部分は省略してもよい。つまり、p
−型緩和層24の第1部分25のみが形成されていてもよい。
また、
図10に示すように、各単位セル10は、三角形状(たとえば、正三角形状)に形成されていてもよい。複数の単位セル10の配列パターンは、三角形状の単位セル10を基板7のオフ方向に沿って互い違いに組み合わせることによってトラス列42を形成し、当該トラス列42を、基板7のオフ方向に交差する方向に沿って並べることによって構成されていてもよい。
【0061】
この場合、互いに隣り合うトラス列42の間の部分がn
−型エピライン13の第1ライン11となり、各トラス列42において隣り合う単位セル10の間の部分がn
−型エピライン13の第2ライン12となる。また、p
−型緩和層24は、第1ライン11と第2ライン12との交差部分27のみに形成し、それ以外の部分は省略してもよい。つまり、p
−型緩和層24の第1部分25のみが形成されていてもよい。
【0062】
また、
図11に示すように、各単位セル10は、六角形状(たとえば、正六角形状)に形成されていてもよい。複数の単位セル10の配列パターンは、ハニカム状であってもよい。言い換えれば、複数の単位セル10は、互いに隣り合う単位セル10を第2ライン12に沿って(基板7のオフ方向と交差する方向に沿って)互い違いにずらした千鳥状に配列されていてもよい。この場合、p
−型緩和層24は、第1ライン11全域にわたって(交差部分27を除く)、第1ライン11を幅方向に横切って第1ライン11を覆うように形成されていてもよい。
【0063】
また、
図12に示すように、各単位セル10は、円形状に形成されていてもよい。また、p
−型緩和層24は、第1ライン11と第2ライン12との交差部分27のみに形成し、それ以外の部分は省略してもよい。つまり、p
−型緩和層24の第1部分25のみが形成されていてもよい。
また、各単位セル10から、第1ライン11または第2ライン12の単位分、または単位分の整数倍移動すると、次の単位セル10となる。
<第2の実施形態>
図13(a)(b)は、この発明の第2の実施形態に係る半導体装置の模式平面図であって、
図13(a)は全体図、
図13(b)は複数の単位セルのレイアウト図をそれぞれ示す。
図14は、
図13(b)の切断面線D−Dから見た断面図である。なお、
図13(b)では、明瞭化のため、半導体装置51の一部を透視して表している。また、
図13および
図14において、前述の
図1および
図2に示された各部と対応する部分には同一の参照符号を付して示す。また、
図13および
図14においても、基板7のオフ方向は、たとえば、<11−20>方向である。
【0064】
前述の第1の実施形態では、n
−型エピライン13は、基板7のオフ方向に平行な第1ライン11と第1ライン11と交差した第2ライン12によって構成されていたが、n
−型エピラインは、それぞれが基板7のオフ方向と交差する第1ラインと第2ラインによって構成されていてもよい。
具体的には、この半導体装置51のn
−型エピライン54は、基板7のオフ方向と交差する第1ライン52と第2ライン53とを含む。たとえば、第1ライン52および第2ライン53は、基板7のオフ方向に対して45°で傾斜して、互いに直交している。
【0065】
このような構成によれば、n
−型エピライン54を形成する第1ライン52および第2ライン53の両方が基板7のオフ方向に交差している。つまり、第1ライン52および第2ライン53が、基板7のオフ方向に平行ではない。そのため、第1ライン52および第2ライン53においてp
−型緩和層24を省略することができる。つまり、この半導体装置51によれば、p
−型緩和層24を形成しなくても、ゲートオフの状態でソース−ドレイン間に電圧を長時間印加し続けた後のオン抵抗の上昇を抑えることができることを見出した。また、オフ方向に対する第2ライン53の傾斜角度は、この実施形態の45°が最も好ましいが、これに限るものではなく、30°〜60°の範囲も好ましい。
<第2の実施形態における単位セルの他のレイアウト>
また、この第2の実施形態においても、
図15〜
図20に示すように、前述の第1の実施形態の
図7〜
図12を参照して説明した複数の単位セルのレイアウトを適用することができる。
図15〜
図20の複数の単位セルのレイアウトは、それぞれ
図7〜12の複数の単位セルのレイアウトを基板7の表面7Aに沿って所定の角度回転させたものである。これによって、それぞれのn
−型エピライン54の第1ライン52および第2ライン53の両方が、基板7のオフ方向に交差している。なお、
図15では、
図7の第1ライン38、第2ライン39およびn
−型エピライン40に対応する構成を、それぞれ第1ライン55、第2ライン56およびn
−型エピライン57として表している。
<第3の実施形態>
図21(a)(b)は、この発明の第3の実施形態に係る半導体装置の模式平面図であって、
図21(a)は全体図、
図21(b)は複数の単位セルのレイアウト図をそれぞれ示す。
図22(a)(b)はそれぞれ、
図22(b)の切断面線E−Eおよび切断面線F−Fから見た断面図である。なお、
図22(b)では、明瞭化のため、半導体装置61の一部を透視して表している。また、
図21および
図22において、前述の
図1および
図2に示された各部と対応する部分には同一の参照符号を付して示す。また、
図21および
図22においても、基板7のオフ方向は、たとえば、<11−20>方向である。
前述の第1の実施形態では、半導体装置1のオン抵抗の上昇を抑えるための構造として、基板7のオフ方向に平行な第1ライン11にp
−型緩和層24が形成された構造を採用していたが、半導体装置のオン抵抗の上昇を抑える構造として、他の構造を採用することができる。
【0066】
具体的には、半導体装置61は、n
−型エピライン13において、ドリフト層8とは異なる性質のダメージ層62を含んでいる。ダメージ層62は、前述の第1の実施形態のp
−型緩和層24と同様に、第1ライン11と第2ライン12との交差部分27に配置された第1部分63と、第1ライン11および第2ライン12の線状部分(交差部分27以外の部分)に配置された第2部分64とを一体的に含む。
【0067】
ダメージ層62は、たとえば、第1ライン11および第2ライン12におけるダメージ層62を形成すべき位置に、エッチング(たとえば、ハロゲン系ガス等を使用)、プラズマCVD(たとえば、絶縁膜を形成するためのプラズマCVD等)、スパッタ(たとえば、O
2、Ar、N
2ガス等を使用)等の処理を施して、ドリフト層8の表面に物理的なダメージを与えることによって形成することができる。また、ドリフト層8をエピタキシャル成長させる際、ダメージ層62を形成すべき深さ位置からエピタキシャル条件(たとえばSi/C)を変えれば、ドリフト層8の表面8A付近(表面部)の全体にわたってダメージ層62を形成することができる。
【0068】
このような構成によれば、ダメージ層62(第1部分63)が、基板7のオフ方向に平行な第1ライン11に形成されている。しかも、この第1部分63によって、複数の単位セル10に跨る第1ライン11は、それぞれの長さが全体の長さよりも短くなるように分割されている。このとき、ゲートオフの状態でソース−ドレイン間に電圧を長時間印加し続けても、オン抵抗の上昇を抑えることができることを見出した。
<第3の実施形態における単位セルの他のレイアウト>
また、この第3の実施形態においても、図示はしないが、前述の第1の実施形態の
図7〜
図12を参照して説明した複数の単位セルのレイアウトを適用することができる。
<第4の実施形態>
図23(a)(b)は、この発明の第4の実施形態に係る半導体装置の模式平面図であって、
図23(a)は全体図、
図23(b)は複数の単位セルのレイアウト図をそれぞれ示す。
図24(a)(b)はそれぞれ、
図24(b)の切断面線G−Gおよび切断面線H−Hから見た断面図である。なお、
図24(b)では、明瞭化のため、半導体装置71の一部を透視して表している。また、
図23および
図24において、前述の
図1および
図2に示された各部と対応する部分には同一の参照符号を付して示す。また、
図23および
図24においても、基板7のオフ方向は、たとえば、<11−20>方向である。
【0069】
前述の第3の実施形態では、ダメージ層62は、第1ライン11と第2ライン12との交差部分27に配置された第1部分63と、第1ライン11および第2ライン12の線状部分(交差部分27以外の部分)に配置された第2部分64とを含んでいたが、この半導体装置71では、ダメージ層72は、交差部分27のみに配置されている。すなわち、第2ライン12にはダメージ層が形成されていなくてもよい。
【0070】
この構成によっても、ダメージ層72が、基板7のオフ方向に平行な第1ライン11に形成されている。しかも、このダメージ層72によって、複数の単位セル10に跨る第1ライン11は、それぞれの長さが全体の長さよりも短くなるように分割されている。このとき、ゲートオフの状態でソース−ドレイン間に電圧を長時間印加し続けても、オン抵抗の上昇を抑えることができることを見出した。
<第4の実施形態における単位セルの他のレイアウト>
また、この第4の実施形態においても、図示はしないが、前述の第1の実施形態の
図7〜
図12を参照して説明した複数の単位セルのレイアウトを適用することができる。
【0071】
以上、この発明の実施形態を説明したが、この発明は、他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の各半導体装置(1,51,61)の各半導体部分の導電型を反転した構成が採用されてもよい。たとえば、半導体装置1において、p型の部分がn型であり、n型の部分がp型であってもよい。
【0072】
また、p
−型緩和層24やダメージ層62は、チャネル領域15よりも深くてもよい。
また、この発明は、トレンチゲート構造のMISFETに適用することもできる。
この発明の半導体装置は、たとえば、電気自動車(ハイブリッド車を含む)、電車、産業用ロボットなどの動力源として利用される電動モータを駆動するための駆動回路を構成するインバータ回路に用いられるパワーモジュールに組み込むことができる。また、太陽電池、風力発電機その他の発電装置(とくに自家発電装置)が発生する電力を商用電源の電力と整合するように変換するインバータ回路に用いられるパワーモジュールにも組み込むことができる。
【0073】
また、前述の実施形態の開示から把握される特徴は、異なる実施形態間でも互いに組み合わせることができる。また、各実施形態において表した構成要素は、この発明の範囲で組み合わせることができる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【実施例】
【0074】
次に、この発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、この発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
<実施例1および比較例1>
第1の実施形態と同じ構造の半導体装置を作製した(実施例1)。一方、p
−型緩和層24を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法によって、半導体装置を作製した(比較例1)。
【0075】
比較例1の半導体装置に対して、ゲートオフ(V
gs=0V)の状態で、15Wのパワー(I
sd=3A、V
sd=5V)を60時間印加し続けた。その後、オン抵抗を測定すると、パワーを印加する前に比べて、オン抵抗が1.6倍まで上昇していた。
これに対し、実施例1の半導体装置に対しては、ゲートオフ(V
gs=0V)の状態で、48Wのパワー(I
sd=8A、V
sd=6V)を1000時間印加し続けた。その後、オン抵抗を測定すると、パワーを印加する前に比べて、オン抵抗が1.1倍までしか上昇していなかった。
【0076】
以上より、基板7のオフ方向に平行な第1ライン11にp
−型緩和層24を形成した構成では、ゲートオフの状態でソース−ドレイン間に電圧を長時間印加し続けても、オン抵抗の上昇を抑えることができることがわかった。