(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、通常の恒温恒湿装置から、直接、検知器に試験室内の空気を送ると、検知器が正常に機能しない可能性があった。すなわち、検知器には、試験室内の空気が導入されるが、その空気が高湿状態の場合がある。つまり、検知器内に高湿状態の空気が導入された場合においては、当該検知器内部でその空気中の水蒸気が結露してしまう可能性があった。検知器内で結露が発生し、その際の水滴がセンサ等の電子部品に付着すると、故障や計測不良を起こすおそれがあった。
【0008】
そこで、結露を防止するために、試験室内が高湿状態となってしまう前に、強制的に除湿動作を実施する方策が勘案される。すなわち、試験室内を冷却する蒸発器を用いて除湿する方策である。しかしながら、高温試験を実施する場合において、蒸発器で除湿すれば、所望の温度に至るまでの時間を必要以上に要したり、あるいは、所望の温度に至らなかったりする可能性がある。そのため、この方策を採用する場合は、通常の高温試験におけるヒータの出力よりも高出力にした状態で、蒸発器を作動させる必要があった。
また、蒸発器によって除湿を行うと、当該蒸発器及びその周囲が過度に冷やされて過剰な霜付きを発生させるため、試験室内の温度が正常に制御されなくなってしまう場合があった。
【0009】
すなわち、高温試験において、除湿を行うべく、蒸発器を稼働させた場合、消費電力が飛躍的に増大してしまう不満があった。また、このようにして蒸発器による除湿を行った場合、低温試験中だけでなく、高温試験中においても蒸発器への霜付きが起き得るため、冷却能力が著しく低下してしまい、好ましい方策とは言えなかった。
【0010】
そこで、本発明では、従来技術の問題点に鑑み、電力消費を殆ど増加させることなく、検知器内部に取り込まれる気体の除湿が可能な環境試験装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するべく提供される請求項1に記載の発明は、試料体が配される試験空間を備え、試験空間内を所望の環境にすることが可能な環境試験装置であって、試験空間と直接的又は間接的に連通した除湿装置を備え、除湿装置は、試験空間内の気体を吸引可能な吸引手段と、吸引手段によって吸引された気体と外部の空気とを熱交換させる管状部材よりなる熱交換器と、熱交換器内において発生した凝縮水を排水する排水管を備え、吸引手段と熱交換器は、所定の配管を介して接続されるものであり、
気体の流れ方向に関しては、熱交換器を通過した気体は、その気体の流れ方向下流側に位置する吸引手段に向けて流れ、同時に、熱交換器で生成された凝縮水は、熱交換器よりも気体の流れ方向下流側に配された排水管を介して排出される
ものであり、上下方向に関しては、熱交換器内に導入された気体は、当該熱交換器を構成する管状部材の形状に沿って上方から下方に向けて流れ、さらに熱交換器を通過した気体は、上方に向けて流れて吸引手段を通過すると共に、熱交換器で生成された凝縮水は、熱交換器と吸引手段との間に配された排水管を介して下方に向けて排出されることを特徴とする環境試験装置である。
なお、ここで言う「試験空間と直接的又は間接的に連通した」とは、試験空間側に連通孔がある場合と、気体調整空間側に連通孔がある場合、のいずれかであることを意味している。
【0012】
本発明の環境試験装置は、試験空間を所望の環境にすることが可能な設備に加えて、試験空間から取り出した気体の除湿を可能とした除湿装置を備えた構成である。すなわち、除湿装置は、主に、試験空間から気体を取り出す吸引手段と、試験空間から取り出された気体(以下、単に吸引気体という)の熱エネルギーを外気と熱交換させる熱交換器と、熱交換によって生じた凝縮水を排水する排水管とを備えた構成である。つまり、本発明では、積極的に、試験空間を冷却する設備たる熱源(例えば蒸発器)等を用いて、試験空間から取り出す気体を除湿するものではない。
【0013】
具体的には、本発明の環境試験装置は、吸引手段の作用によって、試験空間内の気体を熱交換器内に導き、吸引気体が管状部材を通過する際に外気にその潜熱(状態変化する際に発生するエネルギー)を回収させて、当該吸引気体を冷却するものである。つまり、本発明によれば、除湿装置の熱交換器において、装置内の高い温度と外部の低い温度(常温に近い温度)との間に形成された温度差を利用し、吸引気体を外気で自然冷却することで、気体中の水蒸気を凝縮させ、それにより気体を除湿することが可能である。このように、除湿装置を通過した気体は、熱交換器によって余分な水蒸気が除去されるため、熱交換器の前後で絶対湿度が大幅に減少する。換言すれば、除湿装置を通過した気体は、試験空間内の気体よりも、絶対湿度が小さくなる。
【0014】
以上によれば、本発明では、環境試験装置に煙やガスを検知する検知器等を設け、その検知器等に除湿装置を通過した気体を通過させれば、装置内の高い温度と外部の低い温度(常温に近い温度)との間に形成された温度差を利用して、気体が検知器等の内部で結露することを防止できる。その結果、検知器等に結露に起因する故障等が引き起こされる可能性がなくなる。
また、本発明では、前記したように、装置内の高い温度と外部の低い温度(常温に近い温度)との間に形成された温度差を利用して、試験室内の気体を自然冷却して除湿するため、蒸発器を用いて除湿する場合に比べると、除湿動作に要する消費電力を小さくすることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、
内部に前記試験空間が設けられた恒温恒湿槽を有し、管状部材は、流路方向に螺旋状に成形したものであ
り、前記管状部材は恒温恒湿槽の上にあって外部に露出した状態に置かれていることを特徴とする請求項1に記載の環境試験装置である。
【0016】
かかる構成によれば、管状部材が螺旋状に成形したものであるため、熱交換器の設置スペースを省スペース化することができる。また、管状部材を螺旋状にすると、限られた領域(設置スペース)内に効率的に当該管状部材を配することができるため、結果的に熱交換効率の向上に繋げることができる。
【0017】
前記した請求項
1に記載の発明は、熱交換器内に導入された気体は、当該熱交換器を構成する管状部材の形状に沿って上方から下方に向けて流れ、さらに熱交換器を通過した気体は、上方に向けて流れて吸引手段を通過すると共に、熱交換器で生成された凝縮水は、熱交換器と吸引手段との間に配された排水管を介して下方に向けて排出されることを特徴
の一つとしている。
【0018】
請求項1に記載の環境試験装置では、熱交換器を管状部材によって形成し、熱交換器に導入された吸引気体を、その管状部材の形状に沿って上方から下方に向けて流れる構造とした。このため、熱交換器を通過中の吸引気体が、冷却されて凝縮水を生じた場合であっても、その凝縮水が試験空間側に逆流することはない。すなわち、熱交換器で発生した凝縮水は、管状部材内を、吸引気体の流れ方向と同一方向(下方)に流れる。具体的には、熱交換器内を流れる凝縮水は、管状部材の形状と吸引気体の風圧の双方の作用によって、吸引気体の流れ方向下流側(下方)に向けて流される。
【0019】
より詳細に説明すると、熱交換器内で発生した凝縮水は、管状部材の内壁に付着した状態で発生する。このため、管状部材内を通過する吸引気体は、当該内壁に付着した凝縮水に流通が阻害されながら下流に流れる。換言すれば、管状部材内を通過する吸引気体は、凝縮水によって、不規則に入り乱れるようにして流れる(乱流)。また、凝縮水は、所定の方向(吸引気体の流れ方向)に流れつつも、時間の経過と共にその粒が大きく成長する。そして、これに乗ずるようにして、凝縮水における吸引気体の衝突が顕著になる。つまり、管状部材内で粒の大きさが成長した凝縮水は、吸引気体から受ける風圧の影響が大きくなり、より下流に向けて流れ易くなる。こうして、熱交換器内を流れる凝縮水は、管状部材の形状と吸引気体の風圧の双方の作用によって、より効率的に下流側に向けて流される。
【0020】
したがって、本発明の環境試験装置によれば、熱交換器において生じた凝縮水を、管状部材の形状のみに依存させて流すのではなく、吸引気体の風圧の作用も利用して流すため、管状部材の流れ方向に沿った下り方向の傾斜を、比較的緩勾配にすることができる。つまり、本発明によれば、熱交換器の大きさ(特に高さ)のコンパクト化が可能となり、装置の大きさの問題が少なく、またコストが嵩んでしまうおそれがない。
【0021】
また、本発明では、凝縮水が、吸引気体の流れ方向と同一方向に流れつつも、前記したように、吸引気体の抵抗体として機能するため、吸引気体の滞留時間を遅延させることができる。つまり、本発明によれば、熱交換器内部における吸引気体の滞留時間を増加させることによって、吸引気体が熱交換される機会を増やすことが可能となり、熱交換効率の向上を図ることができる。
【0022】
ここで、請求項
1に記載の発明からは除外されているが、除湿装置として、熱交換器に導入された吸引気体を、管状部材の形状に沿って下方から上方に向けて流す構造にしたものを採用することも勘案される。しかしながら、当該構造を採用した場合、熱交換器で発生した凝縮水が、試験空間側に逆流してしまうという問題が生じる。さらに、試験空間側に凝縮水が逆流した場合、その凝縮水が試験空間に載置された試料体に付着したり、再び試験空間内で加湿要素として作用してしまうおそれがある。また、凝縮水が逆流した場合、凝縮水と吸引気体は、互いに相反する方向に流れることとなる。つまり、この構成の場合、本発明のように、吸引気体の風圧によって、凝縮水を押し出すように流すことができなくなる。そのため、この構成を採用した場合、凝縮水の排出は、管状部材の形状のみに依存する。したがって、吸引気体を、管状部材の形状に沿って下方から上方に向けて流そうとした場合、凝縮水の排出効率を向上させるためには、管状部材の流れ方向に沿った下り方向の傾斜を、比較的急勾配にする必要がある。しかしながら、このようにして、凝縮水の排出効率を向上させれば、反比例的に、熱交換器の大きさ(特に高さ)は、必然的に大きくなってしまうため、装置自体が大型化し、コストの増大が避けられない。
このような事情に鑑みれば、本発明のように、吸引手段で吸引した気体を、熱交換器の上方から下方に流す構造を採用する方が、高い排出効率で凝縮水を排出できる上、高い冷却効率で吸引気体を冷却することができる。
【0023】
また、請求項
1に記載の環境試験装置は、熱交換器を通過した吸引気体を、吸引手段に至らせるべく、上方に向けて流すと共に、熱交換器で生成された凝縮水を、排水管を介して、下方に流す構成を備えている。すなわち、本発明では、基本的な気液分離の原則を利用した構成となっている。その結果、熱交換器で生成された凝縮水と、熱交換器で冷却されて除湿された気体の効率的な分離に成功している。このようにして、熱交換器で除湿された気体の流れ方向と、凝縮水の流れ方向を分離することで、除湿された気体が、凝縮水によって再び加湿されてしまうという不合理を防止できる。さらに、本発明では、凝縮水と分離した吸引気体を、先に説明した検知器に供給することができるため、既に熱交換器内で発生した凝縮水が前記検知器内に流入するおそれがなく、検知器に起き得る不具合をより効果的に防止することができる。
【0024】
請求項3に記載の発明は、排水管には逆止弁が設けられ、当該逆止弁の取り付け方向は、閉塞姿勢の状態では凝縮水を下流に向けて通過させることはなく、開放姿勢の状態に切り換わることで凝縮水が下流に向けて通過する方向であることを特徴とする請求項1又は2に記載の環境試験装置である。
【0025】
ところで、外気等によって冷却された吸引気体は、十分に冷却されたとしても、その温度は外気等が示す温度と同程度であり、またその湿度は前記温度における保持可能な水蒸気量に達した状態(相対湿度100%の飽和状態)である場合が多い。一般的には、この飽和状態の気体であっても、温度変化が殆どないとした状況下においては、物体の表面において小さな凝縮水を形成したり、あるいは、その凝縮水が蒸発する現象を繰り返すため、大量に凝縮水を発生することはない。しかしながら、熱交換器を通過した飽和状態の気体が、何らかの影響で、さらに冷却されるような場合は、熱交換器以外の場所(例えば吸引手段やその周辺)で容易に凝縮水を発生してしまうおそれがある。
なお、通電される電子部品(基板等)が内蔵された電子機器(検知器等)は、通電により幾分発熱するため、一般的には結露を起こし難い。
そこで、そのような現象を解消するべく提供される請求項4に記載の発明は、除湿装置には、外気導入管が備えられ、当該外気導入管は、熱交換器よりも気体の流れ方向下流側に接続されて
いて、熱交換器を通過した気体に水蒸気が不飽和の外気を混入して熱交換器を通過した気体の相対湿度を低下させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0026】
かかる構成によれば、水蒸気量が飽和状態の吸引気体に、外気導入管を介して、水蒸気量が不飽和状態の外気を混入させることが可能であるため、吸引気体の相対湿度を下げることができる。つまり、吸引気体を飽和状態から不飽和状態に移行させることが可能となる。これにより、熱交換器以外の場所、具体的には熱交換器よりも下流側の場所であって、吸引手段内や検知器周辺で、気体中の水蒸気が凝縮してしまうことが抑制される。
【0027】
請求項5に記載の発明は、吸引手段を通過した吸引気体は、煙及び/又はガスを測定する検知器を通過することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0028】
かかる構成によれば、熱交換器によって除湿した吸引気体を、検知器に供給するため、当該検知器内部において、吸引気体に含有された水蒸気が結露してしまう可能性が低い。すなわち、本発明によれば、気体の水蒸気が結露して、検知器に故障等を引き起こす可能性がほぼない。
【0029】
請求項6に記載の発明は、除湿装置には、加熱手段が備えられ、当該加熱手段は、熱交換器を通過した気体を加熱することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0030】
かかる構成によれば、熱交換器において飽和状態となった吸引気体を、加熱手段によって昇温させることができるため、吸引気体の相対湿度を下げることができる。つまり、吸引気体を飽和状態から不飽和状態に移行させることが可能となる。これにより、熱交換器以外の場所、具体的には熱交換器よりも下流側の場所であって、吸引手段内や検知器周辺で、気体中の水蒸気が凝縮してしまうことが抑制される。また、本発明では、熱交換器で除湿された気体を不飽和状態にすることを主たる目的としているため、加熱に要する熱量は殆どない。そのため、加熱手段としては、例えば、熱交換器(除湿用熱交換器)に導入される前の試験空間から取り出した気体の熱量を利用するもの、つまり熱交換器(加熱用熱交換器)が好適に利用可能である。
【0031】
請求項7に記載の発明は、除湿装置には、電子冷却器が備えられ、当該電子冷却器は、熱交換器を通過した気体を冷却することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0032】
かかる構成によれば、熱交換器において飽和状態となった吸引気体を、電子冷却器によって常温以下に冷却させることができるため、さらなる吸引気体の除湿が可能である。また、電子冷却器を通過した気体は、外気によって自然に常温域に向けて昇温傾向となるため、結果的に相対湿度を下げることができる。これにより、熱交換器以外の場所、具体的には熱交換器よりも下流側の場所であって、吸引手段内や検知器周辺で、気体中の水蒸気が凝縮してしまうことが抑制される。また、本発明では、熱交換器で除湿された気体を不飽和状態にすることを主たる目的としているため、冷却に要する熱量は殆どない。そのため、電子冷却器における消費電力は僅かであり、ランニングコストを増大させるおそれはない。
【発明の効果】
【0033】
本発明の環境試験装置は、試験空間の環境を形成する空調設備とは別に、除湿装置を設けたため、検知器内部に取り込まれる気体を予め除湿しておくことが可能である。つまり、試験空間内の湿度が高いことに起因して起き得る、検知器等の機器の故障等を防ぐことができる。また、除湿装置は、気体の除湿を、自然冷却式の熱交換器によって行うため、除湿動作の際に要する電力消費を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明の実施形態に係る環境試験装置について説明する。
本実施形態の環境試験装置1は、所謂恒温恒湿装置であり、主な基本構成は公知のそれと同様である。すなわち、環境試験装置1は、
図1に示すように、恒温恒湿槽5を有する。恒温恒湿槽5は、
図2に示すように、内部が仕切壁8によって試験室(試験空間)6と空調用通路(気体調整空間)7とに区分されており、その仕切壁8の上下のそれぞれに、試験室6と空調用通路7とを連通する開口9、19が設けられている。
なお、本実施形態の環境試験装置1は、恒温恒湿槽5内が完全に気密された空間とはならず、部材同士の継ぎ目や配線用の開口等によって、当該恒温恒湿槽5の内外が連通した図示しない通気部が形成された構成である。すなわち、環境試験装置1は、通気部を介して、恒温恒湿槽5内外に空気が流通し、気圧調整が行われる。
【0036】
試験室(試験空間)6は、環境試験を行う際に、機器や部品等の試料体を配置し、所望の試験環境が形成される空間で、当該空間の温度を検知する室内温度検知手段24と、当該空間の相対湿度を検知する室内湿度検知装置25が設けられている。
なお、本実施形態では、室内温度検知手段24及び室内湿度検知装置25が、試験室6の上部側に配されている。
【0037】
空調用通路(気体調整空間)7は、所望の温度や湿度の気体を生成する部分であり、下部側(気体の流れ方向上流側)から順番に、加湿器10、蒸発器11、加熱ヒータ12、送風機13が配されている。
加湿器10は、所定の深さを有した蒸発皿30と、従来公知の電気ヒータ34を有し、電気ヒータ34によって蒸発皿30内に貯留された水を蒸発させるものである。
蒸発器(冷却器)11は、公知の冷却装置の一部であり、冷凍サイクルの一部を担うべく機能するものである。すなわち、蒸発器11は、内部に相変化する冷媒が流通し、冷却能力等を変化させて、空調用通路7を通過する気体を冷却するものである。
加熱ヒータ12は、従来公知の電気ヒータであり、空調用通路7を通過する空気を加熱するものである。
送風機13は、従来公知のファンであり、恒温恒湿槽5内に空気の循環流を形成するものである。
【0038】
また、本実施形態の環境試験装置1は、特徴的構成として、
図1に示すように、試験室6内から取り出した空気(気体)の除湿を目的とした、除湿装置2が備えられている。この除湿装置2は、恒温恒湿槽5内の空気を、外気との熱交換によって冷却して除湿するものであり、主たる構成部品として、
図2、3に示すように、恒温恒湿槽5から空気を吸引するエアーポンプ(吸引手段)21と、エアーポンプ21によって吸引される空気(吸引空気)を冷却する熱交換器22を有している。そして、本実施形態では、エアーポンプ21と熱交換器22を1つの枠体23内に収容し、それらの機器を各種配管で接続している。
【0039】
エアーポンプ21は、公知のそれと同様のものであり、ダイアフラムを備えた電動式のポンプである。
【0040】
熱交換器22は、1本の管状部材31を有し、その管状部材31を螺旋状に成形したものである。具体的には、熱交換器22は、
図4に示すように、1本の管状部材31を所定数以上の巻き数(本実施形態では8巻き)となるよう巻回しており、螺旋の軸線方向に隣接する巻き部32同士が一定の距離s離間するように成形されている。また、本実施形態では、管状部材31を螺旋状にすることで、傾斜状の流路を形成している。つまり、熱交換器22は、
図4に示すように、管状部材31の巻き部32を上下方向に積み重なるような姿勢(管状部材31の螺旋の軸線が鉛直方向となる姿勢)にした場合に、当該管状部材31の一方の端部から他方の端部までが下り勾配あるいは上り勾配の傾斜状を呈する構造となる。
【0041】
また、エアーポンプ21及び熱交換器22を収容する枠体23は、平面視した形状がほぼ「コ」字状の側壁形成部35と、側壁形成部35の底面壁を形成する底壁形成部36とを有する。すなわち、枠体23は、側面壁の1面と、天面壁の1面が開放された構造である。そして、枠体23は、側壁形成部35と底壁形成部36とで囲繞して形成された収容空間37を有する。つまり、枠体23は、エアーポンプ21及び熱交換器22を、収容空間37内に収容する。
【0042】
側壁形成部35には、収容空間37の内外を連通する円形状の連通孔50が設けられている。この連通孔50は、後述する排水管45が挿通される排水管用孔である(以下、排水管用孔という)。また同様に、底壁形成部36にも、収容空間37の内外を連通する四角形状の連通孔51が設けられている。そして、本実施形態では、この連通孔51は、後述する気体導入管41を挿通する孔(以下、導入管用孔という)として利用される。
【0043】
また、前記したように、除湿装置2には、エアーポンプ21及び熱交換器22を繋ぐ各種配管が使用されている。そして、本実施形態では、
図1〜3に示すように、その各種配管として、恒温恒湿槽5内の空気を熱交換器22に導く気体導入管41と、熱交換器22を通過した空気をエアーポンプ21に導くポンプ導入管42と、エアーポンプ21から吐出した空気を再び恒温恒湿槽5内に導く気体戻り管43と、熱交換器22を通過した空気に外気を供給する外気導入管44と、熱交換器22において空気中の水蒸気が凝縮した液体(以下、単に凝縮水という)を外部に排水する排水管45が用意されている。
【0044】
気体導入管41は、恒温恒湿槽5内と熱交換器22内を連通させるための管であり、恒温恒湿槽5の試験室6と、除湿装置2の収容空間37とに跨るように配されている。より詳細には、気体導入管41は、その流路が上下方向に向くような姿勢にされ、一方の端部を熱交換器22に接続し、他方の端部を試験室6に開放している。すなわち、気体導入管41では、試験室6の空気が熱交換器22側に向かう場合、その空気は下方から上方に向かって流れる。また、気体導入管41には、その流路方向の一部(本実施形態では除湿装置2側のみ)の外周に、図示しない断熱材が巻き付けられている。
なお、本実施形態では、気体導入管41と熱交換器22との接続部に、「L」字形状を呈した継ぎ手を配している。
【0045】
ポンプ導入管42は、熱交換器22内とエアーポンプ21内を連通させるための管であり、複数の配管部材によって構成されている。そして、このポンプ導入管42は、流路の中途に分岐部が設けられ、その分岐部の前後で流路方向が変更されている。すなわち、ポンプ導入管42は、熱交換器22に接続された熱交側管55と、3方向の分岐路を有した分岐管56と、エアーポンプ21に接続されたポンプ側管57とで形成されている。
【0046】
熱交側管55は、下り勾配の姿勢で配された流路であり、一方の端部が熱交換器22に接続され、他方の端部が後述する分岐管56の1つの接続口61aに接続されている。
分岐管56は、外観が「Y」字形状を呈しており、3つの接続口61a〜61cを有する。そして、本実施形態では、分岐管56の3つの接続口61a〜61cのうち、2つの接続口61a、61bをポンプ導入管42の流路の一部として使用している。すなわち、ポンプ導入管42では、分岐管56に到達した空気が、一方の接続口61aから流入し、他方の接続口61bから流出する。そして、本実施形態では、そのような空気の流れを基準に、分岐管56を、空気流入側(一方の接続口61a側)の分岐路を下り勾配とし、且つ、空気流出側(他方の接続口61b側)の分岐路を上り勾配とした姿勢で固定している。
ポンプ側管57は、上り勾配の姿勢で配された流路であり、一方の端部が分岐管56の1つの接続口61bに接続され、他方の端部がエアーポンプ21に接続されている。
【0047】
気体戻り管43は、エアーポンプ21と恒温恒湿槽5内を連通させるための管であり、除湿装置2の収容空間37と、恒温恒湿槽5の試験室6とに跨るように配されている。より詳細には、気体戻り管43は、一方の端部をエアーポンプ21に接続し、他方の端部を試験室6に開放している。そして、気体戻り管43は、その流路の大部分が上下方向に向いた姿勢にされている。すなわち、気体戻り管43では、エアーポンプ21から吐出された空気が試験室6側に向かう場合、その空気は概ね上方から下方に向かって流れる。
【0048】
外気導入管44は、ポンプ導入管42と外気とを連通させるための管であり、ポンプ導入管42の中途に接続されている。具体的には、外気導入管44は、その一方の端部がポンプ側管57に接続されており、他方の端部が外部に開放されている。
なお、本実施形態では、外気導入管44の内径が、ポンプ導入管42の内径よりも十分に小さくされている。
【0049】
排水管45は、分岐管56と外部あるいは所定の排水系統とを連通させるための管であり、分岐管56側を始点に外部に向けて下り勾配の姿勢で配されている。また、排水管45には、その中途に、「U」字形状のトラップ(以下、Uトラップという)62と、リフト式の逆止弁63が設けられている。
なお、本実施形態では、Uトラップ62の下流側に逆止弁63を配している。
【0050】
Uトラップ62は、公知のそれと同様のものであり、
図5に示すように、排水管45の外観形状を「U」字状に屈曲した部分である。すなわち、Uトラップ62では、凝縮水が上方から下方に流れるようにして流入し、下方から上方に押し出されるようにして流出する。
【0051】
逆止弁63は、公知のリフト式逆止弁と同様のものであり、
図5に示すように、自重により流路を開閉可能な弁体65を有する。すなわち、この逆止弁63は、弁体65に自重以外の力が作用しない、あるいは、弁体65の自重に抗する力の作用が一定未満である場合においては、流路を閉塞する閉塞姿勢をとり、また弁体65の自重に抗する力の作用が一定値以上となった場合に、流路を開放する開放姿勢をとる。つまり、逆止弁63は、閉塞姿勢の状態では凝縮水を下流に向けて通過させることはなく、開放姿勢の状態に切り換わることで凝縮水が下流に向けて通過する。より詳細に説明すると、本実施形態において採用された逆止弁63は、エアーポンプ21が駆動している間は、当該エアーポンプ21の吸引力によって弁体65が流路の上流側に引っ張られて強く閉塞し、水流が発生したりあるいは滞留した水によって水位差が発生すると、その水によって弁体65が持ち上げられて水の下流側への流出を許すか、弁体65と流路との隙間から水の下流側への漏出を許す。
【0052】
続いて、環境試験装置1における除湿装置2の位置関係と、その除湿装置2を構成する各部材の位置関係について説明する。
本実施形態の環境試験装置1では、除湿装置2を恒温恒湿槽5の外側上部に載置している(
図1)。具体的には、除湿装置2は、
図2に示すように、試験室6の真上に配され、その位置で、枠体23の底壁形成部36を恒温恒湿槽5の天面に当接させた状態で、ビス等の締結要素を用いて固定されている。より詳細には、試験室6の真上には、外部と連通した貫通孔46が設けられており、除湿装置2は、底壁形成部36の導入管用孔51を当該貫通孔46に連通させた姿勢で設置されている。そして、連通した貫通孔46及び導入管用孔51に、除湿装置2の気体導入管41を挿通した状態で配している。
【0053】
また、恒温恒湿槽5には、試験室6の真上であって、枠体23が固定された近傍の位置に、さらに別の貫通孔47が設けられており、当該貫通孔47に、除湿装置2の気体戻り管43が挿通されている。つまり、気体戻り管43は、エアーポンプ21と試験室6とを結ぶ中途の位置において、貫通孔47に挿通されている。また、本実施形態では、
図1〜3に示すように、この気体戻り管43の中途の位置に、空気の通気量を計測する流量計70と、煙を検知する検知器71が設けられている。そして、この流量計70及び検知器71は、枠体23の側壁形成部35に固定されている。
なお、検知器71は、公知のそれと同様のものであり、光電式、イオン化式等いずれの方式のものであっても構わない。
【0054】
また、排水管45は、前記したように、その一方の端部が、ポンプ導入管42の一部を構成する分岐管56に接続されており、他方の端部は、環境試験装置1の図示しない排水系統に接続されている。そして、排水管45は、その中途における部分が、枠体23の排水管用孔50に挿通されると共に、環境試験装置1の外殻に沿うような形状にされている。具体的には、排水管45は、環境試験装置1の天面から背面に渡って沿わした形状であり、概ね「L」字状となっている。そして、本実施形態では、排水管45に設けられたUトラップ62及び逆止弁63を、環境試験装置1の背面側に配している。
なお、排水管45は、環境試験装置1の天面側の部分が、下流側に向けて(背面側に向けて)下り勾配とされている。
【0055】
一方、除湿装置2の枠体23内においては、エアーポンプ21と熱交換器22が所定の位置に設置されている。具体的には、エアーポンプ21と熱交換器22は、枠体23の上部側に配され、互いに若干の距離が形成される位置関係にされている。そして、それらの各機器は、適宜の方法で枠体23に固定されている。すなわち、本実施形態では、エアーポンプ21及び熱交換器22は、図示しない固定金具を用いて枠体23の内側に固定されている。そして、その状態のエアーポンプ21と熱交換器22を繋ぐように、ポンプ導入管42が配されている。
なお、前記したように、ポンプ導入管42のポンプ側管57に外気導入管44が接続されている。
【0056】
次に、環境試験装置1の基本動作について説明する。
本実施形態の環境試験装置1は、試験室6内を所定値以上の高温環境にしたり(高温試験)、また逆に所定値以下の低温環境にして(低温試験)、試験室6内に載置された試料体に冷熱サイクルを与え、その試料体の耐熱性等を測定する環境試験運転の実施が可能である。
以下においては、低温試験、高温試験の順番で実施する環境試験運転を例に説明する。
【0057】
環境試験運転が開始されると、上記に従い、まず低温試験が実施される。すなわち、本実施形態の環境試験装置1では、低温試験が開始されると、送風機13によって恒温恒湿槽5内の空気を循環させると共に、試験室6内を所望の雰囲気温度まで冷却する。具体的には、恒温恒湿槽5内の空気は、送風機13によって仕切壁8の下部側の開口19から空調用通路7側に吸入され、空調用通路7を鉛直上方に向けて通過しつつ温度が降下する。そして、所定温度まで降下した空気が、仕切壁8の上部側の開口9から試験室6側に送り出される。
【0058】
より詳細に説明すると、送風機13が起動されると、当該送風機13から空気が吐出され、試験室6側に送風される。これにより、試験室6内の壁面に沿うように空気の流れが形成される。そして、仕切壁8の下部側の開口19に到達した空気が、再び空調用通路7内に導入される。空調用通路7に導入された空気は、低温に制御された蒸発器(冷却器)11を通過し、その際に冷却される。そして、冷却された空気が送風機13に至れば、再び送風機13によって試験室6側に送り込まれる。こうして、試験室6は、低温の空気が送り込まれることで、所望の低温環境に調節される。
なお、低温試験においては、必要に応じて、加熱ヒータ12を起動して試験室6内の温度を昇温側に調整したり、加湿器10を作動して試験室6内の湿度を加湿側に調整することが可能である。
【0059】
一方、このときの試験室6内の圧力環境に注目すると、低温試験が開始されて室内温度が低下すると、それに伴って、室内圧力(静圧)は低くなる。具体的には、試験室6内は、空気が冷却されることによって分子の運動エネルギーが減少し、その分子の行動範囲が狭小範囲(収縮)となるため、室内圧力は下降傾向となる。換言すれば、低温試験では、試験室6内の圧力が下降傾向となるため、恒温恒湿槽5内は空気が流入し易い状態となる。すなわち、低温試験においては、図示しないケーブル孔や部材等の継ぎ目等(通気部)を介して、試験室6内に外部の空気が流入する。こうして、試験室6は、前記通気部から空気が導入されることによって、圧力降下が緩和される(気圧調整機能)。
【0060】
そして、低温試験が開始されてから所定の時間が経過すると、当該試験が終了し、高温試験に移行する。高温試験が開始されると、送風機13による空気循環を維持しつつ、試験室6内を所望の温度環境まで加熱する。すなわち、恒温恒湿槽5内の空気は、送風機13によって仕切壁8の下部側の開口19から空調用通路7側に吸入され、空調用通路7を鉛直上方に向けて通過しつつ昇温する。そして、所定の温度まで昇温した空気が、仕切壁8の上部側の開口9から試験室6側に送り出される。
【0061】
より詳細に説明すると、前記低温試験と同様、送風機13の駆動によって、試験室6内の壁面に沿うような空気の流れが形成される。そして、仕切壁8の下部側の開口19に到達した空気を、空調用通路7内に導き入れる。空調用通路7に導入された空気は、高温に制御された加熱ヒータ12を通過し、その際に加熱される。そして、加熱された空気が送風機13に至れば、再び送風機13によって試験室6側に送り込まれる。こうして、試験室6は、高温の空気が送り込まれることで、所望の高温環境に調節される。
なお、高温試験においては、必要に応じて、蒸発器11を作動して試験室6内の温度を低温側に調整したり、加湿器10を作動して試験室6内の湿度を加湿側に調整することが可能である。
【0062】
一方、このときの試験室6内の圧力環境に注目すると、高温試験が開始されて室内温度が上昇すると、それに伴って、室内圧力(静圧)は高くなる。具体的には、試験室6内は、空気が加熱されることによって分子の運動エネルギーが増加し、その分子の運動範囲が広範囲(空気が膨張)となるため、室内圧力は上昇傾向となる。換言すれば、高温試験では、試験室6内の圧力が上昇傾向となるため、試験室6内の空気は気圧の低い側に移動を始める。すなわち、試験室6内の空気は、図示しない通気部を介して、外部に流出する。こうして、試験室6は、前記通気部から空気が吐出されることによって、圧力上昇が緩和される(気圧調整機能)。
【0063】
そして、高温試験が開始されてから所定の時間が経過すると、当該試験が終了し、2サイクル目の試験運転に移行、あるいは、環境試験運転自体を終了する。
【0064】
なお、環境試験装置1は、室内温度検知手段24と室内湿度検知装置25によって、試験室6内の現状の温度(現状気温)と現状の相対湿度(現状相対湿度)が監視されており、それらによって得られる現在の情報と、予め設定された所定の設定条件(環境試験運転における試験室内の目標温度や目標湿度等)とに基づいて、各機器(加湿器10、蒸発器11、加熱ヒータ12、送風機13等)が制御される。
【0065】
続いて、環境試験装置1の特徴的機能について説明する。
本実施形態の環境試験装置1には、前記したように、環境試験運転の際において、恒温恒湿槽5内に外部の空気が流入したり、逆に恒温恒湿槽5外に槽内の空気が流出したりして、槽内の気圧を調整する気圧調整機能が備えられている。つまり、環境試験装置1は、この気圧調整機能によって、恒温恒湿槽5内の気圧をほぼ一定に維持しながら、環境試験運転を実施することが可能である。これにより、試験室6内が、温度差によって気圧差を殆ど生じなくなるため、当該気圧差に起因した試験精度の低下は起き得なくなる。
【0066】
ところがその反面、恒温恒湿槽5内は、流入する外気の水分の影響を受け易いという不満を抱えていた。すなわち、環境試験装置1では、前記したように、低温試験と高温試験を所定のサイクルで繰り返し行う。そのため、恒温恒湿槽5内においては、低温試験の度に吸い込まれた外気の水分が、蒸発器11において着霜する。また、蒸発器11に付いた霜は、高温試験になる度に溶けるため、恒温恒湿槽5内の加湿因子となる。こうして、高温試験では、低温試験において恒温恒湿槽5内に取り込まれた外気の水分によって、恒温恒湿槽5内の湿度が過剰に上昇してしまう問題が発生していた。そして、これに伴い、煙等を検知する検知器71に対して、高湿の空気が流れ込み、当該検知器71に作動不良や故障等を引き起こしてしまうおそれがあった。
【0067】
そこで、本実施形態では、そのような不具合を解消するべく、恒温恒湿槽5から取り出した空気を検知器71に導入する際において、新たに設けた除湿装置2によって除湿可能な特別除湿機能が付与されている。そして、本実施形態は、環境試験装置1に電源供給された時点から、特別除湿機能が働く(以下、特別除湿動作という)設定である。
以下、特別除湿機能について詳述する。
【0068】
特別除湿動作が実施されると、エアーポンプ21が起動し、当該ポンプ21による空気の吸引が開始される。すなわち、除湿装置2では、エアーポンプ21よりも空気の流れ方向上流側が負圧となり、その上流側の流路を形成する端部側から、恒温恒湿槽5内の空気が吸引される。具体的には、気体導入管41の試験室6に開放された端部から、除湿装置2内に空気が取り込まれる。そして、気体導入管41に流入した空気(以下、単に吸引空気ともいう)は、当該管41内を下方から上方に向かって流れ、その管41の最頂部に至ると熱交換器22側に導入される。
【0069】
なお、気体導入管41は、前記したように、その外周に断熱材が設けられることによって保温されており、また恒温恒湿槽5の天面から熱交換器22に至るまでの距離はごく短いため、気体導入管41を通過する吸引空気が外気から受ける影響は小さい。つまり、気体導入管41においては、吸引空気は殆ど冷却されない。
【0070】
そして、吸引空気が、熱交換器22に導入されると、管状部材31内を上方から下方に向かって螺旋状に流れる。このとき、吸引空気は、管状部材31の外側に対流する空気(以下、単に外気という)と熱交換して冷却される。すなわち、吸引空気は、管状部材31を下流に向けて流れるにつれて、その温度が降下する。また同時に、吸引空気は、管状部材31を下流に向けて流れるに従い、相対湿度が上昇する。そして、吸引空気は、温度が所定値まで降下することで水蒸気が飽和した状態となる。
【0071】
そして、熱交換器22では、飽和状態となった吸引空気がさらに冷却される。すなわち、熱交換器22では、吸引空気は外気との熱交換によって自然冷却され、同時に、吸引空気に保持された水蒸気が結露する。つまり、除湿装置2では、熱交換器22によって、吸引空気の絶対湿度を低下させることが可能である。
以下、熱交換器22によって絶対湿度が下げられた吸引空気を、除湿飽和空気という。
【0072】
このようにして、絶対湿度が低下した除湿飽和空気は、ポンプ導入管42に流出し、エアーポンプ21に導入される。具体的には、除湿飽和空気は、ポンプ導入管42を通過する過程で、外気導入管44を介して流入した外気と混合して、相対湿度が下げられた状態(除湿不飽和空気)となり、その状態でエアーポンプ21内に導入される。そして、除湿不飽和空気となった吸引空気が、エアーポンプ21を通過すると、気体戻り管43に流出する。そして、気体戻り管43に流出した除湿不飽和空気は、その流路の中途に配された流量計70及び検知器71を経由して、試験室6に戻される。すなわち、流量計70及び検知器71には、熱交換器22で除湿され、さらに外気によって不飽和状態にされた除湿不飽和空気が導入される。そして、これらの機器を経由した除湿不飽和空気が、試験室6内に戻される。
【0073】
このように、本実施形態では、検知器71等に導入される試験室6内の空気を、自然冷却方式を用いた熱交換器22で冷却して除湿することができるため、当該検知器71内において、吸引空気に含有された水蒸気が結露する可能性が低い。またさらに、本実施形態では、熱交換器22で冷却した除湿飽和空気に、外気を混ぜて、除湿不飽和空気にしてから、検知器71内に導入するため、検知器71内で結露を発生する可能性は限りなく低い。その結果、試験室6内の空気が高湿状態であろうとなかろうと、検知器71に、結露が原因となる故障等が引き起こされてしまうおそれはほぼない。
【0074】
また、本実施形態では、除湿装置2によって除湿した空気を、再び試験室6内に戻す構成であるため、恒温恒湿槽5内の湿度を下げることが可能である。その結果、低温試験等において蒸発器11に着霜する水分量を大幅に減らすことができるため、蒸発器11の冷却能力が低下してしまう不具合を抑えることができる。
【0075】
最後に、除湿装置2の熱交換器22による除湿能力について簡易的に説明しておく。
以下においては、高温試験によって、恒温恒湿槽5内の温度が摂氏85度(℃)となり、さらにそのときの恒温恒湿槽5内の相対湿度が40パーセント(%)となった状況下において、除湿装置2の熱交換器22で除湿された場合を例に説明する。
なお、このとき、外気は摂氏25度(℃)であったと仮定する。
また、エアーポンプ21は、その容量が5(L/分)のものが採用されているものとする。
【0076】
ここで、摂氏0度(℃)、1気圧(atm)の条件下における空気密度ρ
0 は、1.293(g/L)である。つまり、摂氏t度、P気圧の条件下における空気密度ρ
t (g/L)は、以下の数式(1)から算出することが可能である。
ρ
t =1.293/(1+0.00367t)・・・数式(1)
【0077】
すなわち、摂氏25度(℃)、1気圧(atm)の条件下における空気密度ρ
25は、前記数式(1)により、1.184(g/L)となる。
【0078】
また、前記したように、エアーポンプ21の容量が5(L/分)であるから、実際に流れる空気量q(g/分)は、前記した摂氏25度(℃)等の条件下では、以下の通りとなる。
空気量q(g/分)=1.184(g/L)*5(L/分)≒6.00(g/分)
なお、便宜上、この6.00(g/分)の単位を変換すると、空気量Q(kg/hr)は0.36(kg/hr)となる。
【0079】
そして、このような条件の下、恒温恒湿槽5内の空気が除湿装置2側に吸引された場合、その吸引空気は、熱交換器22において外気に熱回収されて冷却される。すなわち、恒温恒湿槽5内の空気は、熱交換器22を通過することで、摂氏85度(℃)から摂氏25度(℃)に向けて降温する。これにより、熱交換器22を通過した吸引空気は、摂氏25度(℃)における飽和状態の空気となる。
【0080】
そして、このとき除湿される水蒸気量v(g/kg)は、以下に表す数式(2)から算出できる。
v=試験室6内の重量絶対湿度SH
in−外気温度における飽和状態の重量絶対湿度SH
out ・・・数式(2)
なお、空気の重量絶対湿度SH等の物性値を示した表を、以下の表1に表す。
【0082】
すなわち、前記条件の下、熱交換器22内において、吸引空気の温度が摂氏85度(℃)から摂氏25度(℃)に向けて降温した場合、前記数式(2)及び表1により、除湿される水蒸気量v(g/kg)は、以下の通りとなる。
水蒸気量v(g/kg)=184.16−20.09=164.07(g/kg)
【0083】
また、この算出された水蒸気量v(g/kg)を、1時間当たりの水蒸気量V(g/hr)に換算すると、164.07*0.36=59.06(g/hr)となる。
【0084】
このように、熱交換器22によって自然冷却する方式であっても、十分な程除湿ができることが分かる。つまり、本実施形態では、高価でエネルギー消費の大きな冷凍機等の装置を使用することなく、空気の除湿を行うことが可能である。
【0085】
上記実施形態では、熱交換器22において自然冷却された空気を、そのまま検知器71に導入する構成を示したが、本発明はこれに限定されず、熱交換器22を通過した空気を、検知器71に至るまでに、何らかの方法で昇温させる加熱手段を備えた構成であっても構わない。例えば、その加熱手段としては、気体導入管41を通過する空気と熱交換させる熱交換器や、電気ヒータ等で直接的に加熱するものが挙げられる。これにより、より効果的に、検知器71における結露の発生を防止することができる。
【0086】
上記実施形態では、熱交換器22とエアーポンプ21との間に分岐管56を配し、当該分岐管56において気液分離した空気のみを検知器71側に導く構成を示したが、本発明はこれに限定されず、分岐管56に替えて、あるいは、加えて、熱交換器22よりも下流側であって検知器71に至るまでに、ペルチェ素子を備えた電子冷却器75を設けた構成であっても構わない。この構成によれば、より効果的に除湿された空気を検知器71側に導くことができる。そして、この具体的な構成は、例えば
図6、7に示す通りである。
【0087】
すなわち、
図6に示すように、分岐管56に替えて電子冷却器75を設けた場合は、電子冷却器75に、熱交側管55とポンプ側管57と排水管45が接続される。これにより、電子冷却器75において、熱交換器22を通過した空気がさらに若干除湿されて不飽和空気となるため、さらなる結露防止を期待できる。
一方、
図7に示すように、分岐管56に加えて電子冷却器75を設けた場合は、電子冷却器75に、分岐管56の1つの接続口61a側(直接的であっても、別の配管を介して間接的であっても良い)とポンプ側管57と排水管45に接続される補助排水管76が接続される。そして、この構成の場合、分岐管56で気液分離すると共に、電子冷却器75において除湿による不飽和空気の生成が可能であるため、分岐管56あるいは電子冷却器75のみの場合よりも、より結露防止効果の高い空気を検知器71側に導くことができる。またさらに、本構成の場合は、電子冷却器75のみを設けた場合に比べると、水分付着に起因した冷却能力の損失を小さくできるため、比較的小型のものを採用することができる。
【0088】
上記実施形態では、排水管45にUトラップ62を設けた構成を示したが、本発明はこれに限定されず、他の方式のものを採用しても構わない。例えば、
図8に示すように、水封式のトラップ77を設けた構成であっても構わない。
【0089】
上記実施形態では、熱交換器22において、エアーポンプ21で吸引された空気を上方から下方に流す構成を採用したが、本発明はこれに限定されず、下方から上方に流す構成の熱交換器を採用しても構わない。
【0090】
上記実施形態では、排水管45を、エアーポンプ21の上流側に位置する分岐管56(ポンプ導入管42の一部)に配した構成を示したが、本発明はこれに限定されず、熱交側管55又はポンプ側管57に配した構成であっても構わない。ただし、この場合、熱交換器22で生成された凝縮水が流れ込むように、流路の勾配を下流に向けて下り勾配にしておく必要がある。
【0091】
また、前記構成の他、排水管45を、エアーポンプ21の下流側に位置する気体戻り管43に配した構成を採用しても構わない。なお、この構成を採用した場合、熱交換器22で生成された凝縮水が、エアーポンプ21に流入する可能性があるため、機器等の保護の観点からすれば、上記実施形態のように、エアーポンプ21の上流側に排水管45を配する構成が好適である。
【0092】
ところで、環境試験装置1では、試験室6と空調用通路7との間で循環する空気に、外部環境に悪影響を及ぼすおそれがある成分等が含まれている場合がある。このような場合、除湿装置2で除湿した吸引空気は、試験室6側に戻すことが望ましい。しかしながら、環境試験装置1内を循環する気体の成分のいずれも、外部環境に悪影響を及ぼすおそれがないならば、必ずしも試験空間側に戻す必要はない。
そこで、そのような事情に鑑み、本発明においては、気体戻り管43を設けることなく、検知器71を通過した空気を、試験室6内に戻さない構成であっても構わない。すなわち、検知器71を通過した空気が、大気中に放出される構成であっても構わない。この構成によれば、試験室6側に空気を戻すための気体戻り管43を用意する必要がなくなったり、また恒温恒湿槽5を形成する筐体に気体戻り管43を挿通する孔を設ける必要がなくなるため、不要なコストアップを防ぐことができる。
なお、上記実施形態のように、気体戻り管43を設けた場合であっても、弁等の流路切替手段を設け、吸引空気を試験室6側に戻すか、あるいは大気に放出するかを選択的に変更できる構成にしても構わない。
【0093】
上記実施形態では、排水管45にUトラップ62を設けた構成を示したが、本発明はこれに限定されず、Uトラップ62を設けない構成であっても構わない。また同様に、逆止弁63を設けない構成であっても構わない。
【0094】
上記実施形態では、リフト式の逆止弁63を設けた構成を示したが、本発明はこれに限定されず、その他の方式の逆止弁であっても構わない。例えば、スイング式の逆止弁等である。
【0095】
上記実施形態では、除湿装置2に、煙を検知する検知器71を取り付けた構成を示したが、本発明はこれに限定されず、水素、一酸化炭素、メタン等のガスを検知する検知器を取り付けた構成であっても構わない。なお、ガスを検知する検知器には、例えば、一酸化炭素を検知する接触式のセンサを備えたものがある。この接触式センサは、センサ部の一部が一酸化炭素に反応して発熱する物質よりなり、センサ部の残部との温度差を監視してガス検知を行うものである。
【0096】
上記実施形態では、熱交換器22を通過した空気に外気を混入させて検知器71に導入可能な構成を示したが、本発明はこれに限定されず、外気を混入させずに検知器71に空気を導く構成であっても構わない。すなわち、外気導入管44を設けない構成であっても構わない。