特許第5896572号(P5896572)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5896572
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】基板プラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20160317BHJP
   C23C 16/507 20060101ALI20160317BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20160317BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20160317BHJP
【FI】
   H05H1/46 L
   H05H1/46 M
   C23C16/507
   H01L21/302 101C
   H01L21/265 F
【請求項の数】24
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2013-514413(P2013-514413)
(86)(22)【出願日】2011年6月13日
(65)【公表番号】特表2013-535074(P2013-535074A)
(43)【公表日】2013年9月9日
(86)【国際出願番号】US2011040206
(87)【国際公開番号】WO2011156813
(87)【国際公開日】20111215
【審査請求日】2014年2月24日
(31)【優先権主張番号】61/353,953
(32)【優先日】2010年6月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/157,005
(32)【優先日】2011年6月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500324750
【氏名又は名称】バリアン・セミコンダクター・エクイップメント・アソシエイツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】マイナード、ヘレン
(72)【発明者】
【氏名】ハディディ、カマル
(72)【発明者】
【氏名】シング、ビクラム
(72)【発明者】
【氏名】ミラー、ティモシー、ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ゴデット、ルドヴィック
(72)【発明者】
【氏名】パパソウリオティス、ジョージ、ディー.
(72)【発明者】
【氏名】リンゼイ、バーナード、ジー.
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−135192(JP,A)
【文献】 特表2003−507880(JP,A)
【文献】 米国特許第06051503(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0160125(US,A1)
【文献】 特開2008−205436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/24
H05H 1/46
H01L 21/3065
H01L 21/265
H01L 21/205
C23C 16/507
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にプラズマ処理を施す方法であって、
イオン化エネルギーが互いに異なる第1の種および第2の種を含む供給ガスをプラズマ源に近接して導入する段階と、
少なくとも、第1のパルス期間において第1の電力レベルを持ち、第2のパルス期間において第2の電力レベルを持つマルチレベルRF電力波形を前記プラズマ源に供給する段階と、
前記第1のパルス期間において前記供給ガスのうち前記第1の種をイオン化する段階と、
前記第2のパルス期間において前記第2の種をイオン化する段階と、
前記第1のパルス期間において前記基板にバイアスを供給する段階と
を備え、
前記第2の電力レベルは、前記第1の電力レベルよりも高く、
前記第1の電力レベルは、前記第1の種をイオン化するのに必要な電力レベルよりは高いが、前記第2の種をイオン化するために必要な別の電力レベルよりは低く、
前記供給ガスは、前記第1のパルス期間および前記第2のパルス期間の両方の期間に導入される
方法。
【請求項2】
前記第2のパルス期間において前記基板にバイアスを供給する段階をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の電力レベルは、前記基板にバイアスがかかっていない場合に印加される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の種は、処理種を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記処理種は、Se、および、P、B、Ge、Si、NおよびAsのうち少なくとも1つを含み、
前記第2の種は、H、C、O、He、NeおよびArのうち少なくとも1つを含む請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記処理種は、前記基板をエッチングするエッチャントである請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2のパルス期間のうち少なくとも一部において前記基板にバイアスをかける段階をさらに備える
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のパルス期間において前記処理種の第1のイオンを前記基板に対して選択的に方向付ける段階と、
前記第2のパルス期間において前記基板に向けて前記第2の種の不活性種の第2のイオンを方向付ける段階と
をさらに備える請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の電力レベルは、前記プラズマを安定化させるのに十分なRF電力レベルである請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記RF電力波形は、第3のパルス期間において、第3の電力レベルをさらに含み、
前記第3の電力レベルは、前記第1及び第2の電力レベルよりも低く、
前記第3のパルス期間は、前記第2のパルス期間より後であり、
前記基板は、前記第3のパルス期間においてバイアスされない
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
基板を処理する方法であって、
第1の種および第2の種を含む供給ガスをプラズマ源の近傍に導入する段階と、
第1の期間において第1の電力レベルを前記プラズマ源に印加して前記第1の種を選択的にイオン化する段階と、
第2の期間において前記プラズマ源に第2の電力レベルを印加して前記第2の種をイオン化する段階と、
前記第1の期間において基板に向けて前記第1の種のイオンを方向付ける段階とを備え、
前記第1の種は、前記第2の種よりもイオン化エネルギーが低く、
前記第1の電力レベルは、前記第1の種をイオン化するために必要な電力レベルよりは高いが、前記第2の種をイオン化するために必要な別の電力レベルよりは低く、
前記第2の電力レベルは、前記第2の種をイオン化するために必要な前記別の電力レベルよりも高く、
前記第1の種および前記第2の種を含む前記供給ガスが、前記第1の期間および前記第2の期間の両方の期間に導入される方法。
【請求項12】
前記第2の期間において前記基板に向けて前記第2の種のイオンを方向付ける段階をさらに備える請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の期間において前記第1の種のイオンを前記基板に注入する段階と、
前記第2の期間において前記第2の種のイオンを前記基板に注入する段階と
をさらに備える請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の種は、P、B、Ge、Si、N、Se、およびAsのうち少なくとも1つを含み、
前記第2の種は、H、C、O、He、NeおよびArのうち少なくとも1つを含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の期間において前記基板にバイアスをかける段階と、
前記第2の期間において前記基板にバイアスをかける段階と
をさらに備える請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の期間において前記基板にバイアスをかけることなく前記第1の期間において前記基板にバイアスをかける段階をさらに備える請求項11に記載の方法。
【請求項17】
第3の期間において、第3の電力レベルを供給する段階をさらに含み、
前記第3の電力レベルは、前記第1及び第2の電力レベルよりも低く、
前記第3の期間は、前記第2の期間より後であり、
前記第3の期間において、イオンが前記基板に向けられない
請求項11に記載の方法。
【請求項18】
基板に近接して配置されているプラズマ源と、前記プラズマ源に電気結合されているRF電源と、前記基板に電気結合されているバイアス電源とを備える装置で基板にプラズマ処理を施す方法であって、
少なくとも第1の種および第2の種を含む供給ガスを前記プラズマ源の近傍に導入する段階と、
第1の期間において第1の電力レベルを持ち、第2の期間において第2の電力レベルを持ち、第3の期間において第3の電力レベルを持つRF波形を前記RF電源で生成する段階と、
少なくとも前記第1の期間および前記第2の期間において前記プラズマ源に前記RF波形を印加してプラズマを生成する段階と、
第1のバイアスレベルおよび第2のバイアスレベルを持つバイアス波形を前記バイアス電源で生成する段階と、
前記バイアス波形を前記基板に印加して、前記プラズマから前記基板へ向けてイオンを方向付ける段階と
を備え、
前記第2の電力レベルは、前記第1の電力レベルよりも高く、前記第3の電力レベルは、前記第1の電力レベル及び第2の電力レベルよりも低く、
前記第2の期間は、前記第1の期間より後であり、前記第3の期間は、前記第2の期間より後であり、
前記第2のバイアスレベルは、前記第1のバイアスレベルよりも負の方向に高い方法。
【請求項19】
前記第1のバイアスレベルは、前記第1の期間において、前記基板に印加される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2のバイアスレベルは、前記第2の期間の後に、前記基板に印加される請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記第2のバイアスレベルは、前記第2の期間において、前記基板に印加される請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記第2のバイアスレベルは、前記第1の期間において、前記基板に印加される請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1のバイアスレベルは、前記第3の期間において、前記基板に印加される請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記プラズマは、前記第3の期間において、消滅させない請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、基板を処理する技術に関する。特に、プラズマを用いて基板を処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理は、半導体分野およびその他の産業において長年にわたって広く利用されている。プラズマ処理は、洗浄、エッチング、ミリングおよび蒸着等の作業に利用される。より最近では、プラズマ処理はドーピングに利用されている。プラズマドーピング(PLAD)またはプラズマ浸漬イオン注入(PIII)と呼ばれる方法は、一部の最新型の電子デバイスおよび光学デバイスのドーピング要件を満たすために利用される。プラズマドーピングは、電界を利用してイオンを加速して、質量電荷比に応じてイオンをフィルタリングして、注入する所望のイオンを選択する従来のビームラインイオン注入システムとは異なる。従来のビームラインイオン注入システムとは異なり、PLADシステムは、ドーパントイオンを含むプラズマに基板を浸漬させて、一連の負電圧パルスで基板にバイアスをかける。プラズマシース内の電界によって、イオンが基板に向けて加速され、基板表面にイオンを注入する。
【0003】
半導体産業で利用されているプラズマドーピングシステムは概して、要求される処理制御のレベルが非常に高い。半導体産業で広く利用されている従来のビームラインイオン注入システムは、処理制御に優れており、Run−to−Run均一性に優れている。従来のビームラインイオン注入システムは、現在の技術水準の半導体基板の全面にわたって非常に均一にドーピングを行う。
【0004】
一般的に、PLADシステムの処理制御は、従来のビームラインイオン注入システムほど高くない。多くのプラズマドーピングシステムでは、プラズマドーピングを行っている基板上に電荷が蓄積される傾向にある。このように電荷が蓄積されると、基板上に比較的高い電位電圧が形成される可能性があり、ドーピングの不均一性およびアーク放電が大きくなり受け入れ難いレベルに到達し、デバイスが損傷してしまう可能性がある。また、プラズマの組成が処理工程に影響を与える可能性がある。例えば、不活性ガスイオンの数が多いと、所望した程度よりも基板に対する損傷が大きくなる場合がある。さらに、電子温度によっても、プラズマに含まれるイオンの望ましい数が異なるとしてよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
基板プラズマ処理技術を開示する。一の特定の実施形態例によると、当該技術は、イオン化エネルギーが互いに異なる第1の種および第2の種を含む供給ガスをプラズマ源に近接して導入する段階と、少なくとも、第1のパルス期間において第1の電力レベルを持ち、第2のパルス期間において第2の電力レベルを持つマルチレベルRF電力波形をプラズマ源に供給する段階と、第1のパルス期間において供給ガスのうち第1の種をイオン化する段階と、第2のパルス期間において第2の種をイオン化する段階と、第1のパルス期間において基板にバイアスを供給する段階とを備える方法によって実現され得る。第1の電力レベルおよび第2の電力レベルは、互いに異なる。
【0006】
この実施形態例の他の側面によると、当該方法は、第2のパルス期間において基板にバイアスを供給する段階をさらに備えるとしてよい。
【0007】
この実施形態例の別の側面によると、第1の電力レベルは、第1の種をイオン化するのに必要な電力レベルよりは高いが、第2の種をイオン化するために必要な別の電力レベルよりは低いとしてよい。
【0008】
この実施形態例の他の側面によると、第2の電力レベルは、基板にバイアスがかかっていない場合に印加されるとしてよい。
【0009】
この実施形態例のさらに別の側面によると、第1の種は、処理種を含むとしてよい。
【0010】
この実施形態例のさらに別の側面によると、処理種は、B、P、Ge、AsおよびSeのうち少なくとも1つを含むとしてよく、第2の種は、C、O、He、NeおよびArのうち少なくとも1つを含むとしてよい。
【0011】
この実施形態例のさらに別の側面によると、処理種は、基板をエッチングするエッチャントであってよい。
【0012】
この実施形態例の別の側面によると、当該方法は、第2のパルス期間のうち少なくとも一部において基板にバイアスをかける段階をさらに備えるとしてよい。
【0013】
この実施形態例の他の側面によると、当該方法は、第1のパルス期間において処理種の第1のイオンを基板に対して選択的に方向付ける段階と、第2のパルス期間において基板に向けて不活性種の第2のイオンを方向付ける段階とをさらに備えるとしてよい。
【0014】
さらに、この実施形態例の別の側面によると、第2のRF電力レベルは、プラズマを安定化させるのに十分なRF電力レベルであるとしてよい。
【0015】
別の特定の実施形態例によると、この技術は、第1の種および第2の種を含む供給ガスをプラズマ源の近傍に導入する段階と、第1の期間において第1の電力レベルをプラズマ源に印加して第1の種を選択的にイオン化する段階と、第2の期間においてプラズマ源に第2の電力レベルを印加して第2の種をイオン化する段階と、第1の期間において基板に向けて第1の種のイオンを方向付ける段階とを備える方法によって実現され得る。第1の種は、第2の種よりもイオン化エネルギーが低い。第1の電力レベルは、第1の種をイオン化するために必要な電力レベルよりは高いが、第2の種をイオン化するために必要な別の電力レベルよりは低いとしてよい。第2の電力レベルは、第2の種をイオン化するために必要な別の電力レベルよりも高いとしてよい。
【0016】
この実施形態例の別の側面によると、当該方法は、第2の期間において基板に向けて第2の種のイオンを方向付ける段階をさらに備えるとしてよい。
【0017】
この実施形態例の別の側面によると、当該方法は、第1の期間において第1の種のイオンを基板に注入する段階と、第2の期間において基板に第2の種のイオンを注入する段階とをさらに備えるとしてよい。
【0018】
この実施形態例の別の側面によると、第1の種は、P、BおよびAsのうち少なくとも1つを含むとしてよく、第2の種は、C、O、He、NeおよびArのうち少なくとも1つを含むとしてよい。
【0019】
この実施形態例のさらに別の側面によると、当該方法は、第1の期間において基板にバイアスをかける段階と、第2の期間において基板にバイアスをかける段階とをさらに備えるとしてよい。
【0020】
この実施形態例のさらに別の側面によると、当該方法は、第2の期間において基板にバイアスをかけることなく第1の期間において基板にバイアスをかける段階をさらに備えるとしてよい。
【0021】
別の特定の実施形態例によると、この技術は、基板に近接して配置されるプラズマ源と、プラズマ源に電気結合されているRF電源と、基板に電気結合されているバイアス電源とを備える装置において基板にプラズマ処理を施す方法によって実現され得る。本実施形態によると、当該方法は、少なくとも第1の種および第2の種を含む供給ガスをプラズマ源の近傍に導入する段階と、第1の期間において第1の電力レベルを持ち、第2の期間において第2の電力レベルを持つRF波形をRF電源で生成する段階と、第1の期間および第2の期間においてプラズマ源にRF波形を印加してプラズマを生成する段階と、第1のバイアスレベルおよび第2のバイアスレベルを持つバイアス波形をバイアス電源で生成する段階と、バイアス波形を基板に印加して、プラズマから基板へ向けてイオンを方向付ける段階とを備えるとしてよい。第2の期間は、第1の期間より後であるとしてよい。第1のバイアスレベルは、ゼロバイアスレベルである。
【0022】
この実施形態例の別の側面によると、第2の電力レベルは、第1の電力レベルよりも高いとしてよい。
【0023】
この実施形態例の別の側面によると、第1のバイアスレベルは、第1の期間において、基板に印加されるとしてよい。
【0024】
この実施形態例の別の側面によると、第2のバイアスレベルは、第2の期間の後に、基板に印加されるとしてよい。
【0025】
この実施形態例の別の側面によると、第2のバイアスレベルは、第2の期間において、基板に印加されるとしてよい。
【0026】
この実施形態例のさらに別の側面によると、第2のバイアスレベルは、第1の期間において、基板に印加されるとしてよい。
【0027】
この実施形態例のさらに別の側面によると、RF波形はさらに、第3の期間において第3の電力レベルを含むとしてよく、第3の電力レベルは、第1および第2の電力レベルよりも低いとしてよく、第3の期間は、第2の期間より後であり、第1のバイアスレベルは、第3の期間において、基板に印加されるとしてよい。
【0028】
この実施形態例のさらに別の側面によると、プラズマは、第3の期間において、消滅させない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本開示をさらに深く理解していただくべく、以下では添付図面を説明する。添付図面は、必ずしも実寸に即したものではない。また、添付図面は、本開示を限定するものと解釈されるべきではなく、一例に過ぎない。
図1A】本開示の一実施形態に係るプラズマ処理システムの一例を示す図である。
図1B】本開示の別の実施形態に係るプラズマ処理システムの別の一例を示す図である。
図2A】振幅が単一のRF源が生成する先行技術に係る波形を示す図である。
図2B】バイアス電源が生成する先行技術に係る波形を示す図である。
図3】(A)は、本開示の一実施形態に係るRF源が生成するRF電力波形を示す図であり、(B)は、本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形を示す図であり、(C)は、本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成する別のバイアス電圧波形を示す図である。
図4】(A)から(C)は、本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形およびRF源が生成するRF電力波形を示す図である。
図5】(A)から(C)は、本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形およびRF源が生成するRF電力波形を示す図である。
図6】本開示の別の実施形態に係るマルチセットポイントRF電力および制御信号波形を示す図である。
図7】本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形およびRF源が生成するRF電力波形を示す図である。
図8A】本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形およびRF源が生成するRF電力波形を示す図である。
図8B】本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形およびRF源が生成するRF電力波形を示す図である。
図9A】本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形およびRF源が生成するRF電力波形を示す図である。
図9B】本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形およびRF源が生成するRF電力波形を示す図である。
図10A】本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形およびRF源が生成するRF電力波形を示す図である。
図10B】本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形およびRF源が生成するRF電力波形を示す図である。
図10C】本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形およびRF源が生成するRF電力波形を示す図である。
図10D】本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形およびRF源が生成するRF電力波形を示す図である。
図11A】本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形およびRF源が生成するRF電力波形を示す図である。
図11B】本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形およびRF源が生成するRF電力波形を示す図である。
図11C】本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形およびRF源が生成するRF電力波形を示す図である。
図11D】本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形およびRF源が生成するRF電力波形を示す図である。
図11E】本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形およびRF源が生成するRF電力波形を示す図である。
図12A】本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形およびRF源が生成するRF電力波形を示す図である。
図12B】本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形およびRF源が生成するRF電力波形を示す図である。
図12C】本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形およびRF源が生成するRF電力波形を示す図である。
図12D】本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形およびRF源が生成するRF電力波形を示す図である。
図13A】本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形およびRF源が生成するRF電力波形を示す図である。
図13B】本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形およびRF源が生成するRF電力波形を示す図である。
図13C】本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形およびRF源が生成するRF電力波形を示す図である。
図13D】本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形およびRF源が生成するRF電力波形を示す図である。
図13E】本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形およびRF源が生成するRF電力波形を示す図である。
図14A】本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形およびRF源が生成するRF電力波形を示す図である。
図14B】本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形およびRF源が生成するRF電力波形を示す図である。
図14C】本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形およびRF源が生成するRF電力波形を示す図である。
図14D】本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形およびRF源が生成するRF電力波形を示す図である。
図14E】本開示の別の実施形態に係るバイアス電源が生成するバイアス電圧波形およびRF源が生成するRF電力波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書では、プラズマを利用するシステムで基板を処理する新しい技術の実施形態を幾つか紹介する。説明を明確且つ簡潔にするべく、基板に対して行われる処理は、ドーピング処理、エッチング処理および成膜処理に重点を置いて説明するとしてよい。しかし、本開示は、基板表面のパッシベーションを含む他の種類の処理を排除するものではない。したがって、本開示で説明するシステムは、特定の処理を実行する特定のシステム(例えば、ドーピングシステム、エッチングシステム、成膜システム等)に限定される必要はない。
【0031】
本明細書で開示するシステムは、プラズマを生成するプラズマ源を1以上の備えるとしてよい。説明を明確且つ簡潔にするべく、本開示では、誘導結合プラズマ(ICP)源に重点を置いて説明する。しかし、当業者であれば、容量結合プラズマ(CCP)源、ヘリコンプラズマ源、マイクロ波(MW)プラズマ源、グロー放電プラズマ源、および、その他の種類のプラズマ源を含む他のプラズマ源も、本開示で排除されるわけではないと理解されたい。プラズマ源は、基板を処理する領域の近くまたは当該領域に近接して設けられているとしてよい。これに代えて、プラズマ源は、リモートプラズマ源であってもよく、基板を処理する領域とは離れているとしてもよい。プラズマ源に供給される電力は、連続しているとしてもよいし、パルス状でもよく、正バイアスまたは負バイアスのDC電力またはRF電力であってもよい。説明を明確且つ簡潔にするべく、本開示は、パルス状のRF電力がICP源に供給される場合に重点を置いて説明する。
【0032】
本開示において「一実施形態」または「実施形態」という場合、当該実施形態に関連付けて説明している特定の特徴、構造または特性が、本開示の少なくとも一の実施形態に含まれていることを意味する。本明細書では「一実施形態において」という表現が何度も登場するが、必ずしも全てが同じ実施形態を意味しているものではない。
【0033】
本開示に係る方法を構成する各段階は任意の順序で実行されるとしてよく、および/または、本明細書で開示しているシステムまたは技術が利用可能である限りにおいて、同時に実行するとしてもよいことを理解されたい。さらに、本開示に係るシステムおよび方法は、本明細書で開示しているシステムまたは方法が利用可能である限りにおいて、説明した実施形態のうち任意のもの、または、全てを含むものと理解されたい。
【0034】
本教示内容は、添付図面に図示している実施形態例を参照しつつ、より詳細に後述される。本教示内容はさまざまな実施形態および例に基づいて説明するが、本教示内容はこのような実施形態に限定されないものとする。また、本教示内容は、当業者であれば想到するように、さまざまな代替例、変形例および均等例を含むものである。当業者であれば、本明細書の教示内容に基づき、さらに実施例、変形例および実施形態が存在することを認めるであろうし、また、他の利用分野についても想到するであろう。これらはすべて、本明細書に記載されている本開示の範囲内に含まれるものである。例えば、本発明に係るプラズマ処理システムで電荷を中性化する方法を任意の種類のプラズマ源と共に利用し得るものと理解されたい。
【0035】
多くのプラズマ処理システムは、一連のパルスをプラズマ源に印加してパルス状のプラズマを発生させるパルス状動作モードで動作する。また、プラズマ源のパルスのオン期間に、プラズマ処理中の基板に一連のパルスを印加するとしてもよい。これによって、基板にバイアスをかけて、イオンを誘引して、注入処理、エッチング処理または成膜処理を行う。パルス状動作モードでは、プラズマ源のパルスのオン期間において、プラズマ処理中の基板に電荷が蓄積される傾向がある。電荷は、プラズマ源のパルスのデューティーサイクルが比較的低い場合(つまり、約25%未満、場合によっては、2%未満、処理パラメータによる)、プラズマ内の電子によって効率的に中性化される傾向にあり、帯電効果は最小限に抑えられる。
【0036】
しかし、今日では、比較的高いデューティーサイクル(つまり、約2%を上回るデューティーサイクル)のパルス状動作モードでプラズマ処理を行うことが求められている。このように高いデューティーサイクルは、所望のスループットを実現し、一部の最新型デバイスで必要となるエッチングレート、成膜レートおよびドーピングレベルを維持するために必要である。例えば、一部の最新型デバイスについては、2%を超えるデューティーサイクルでプラズマドーピングを行うことによって、ポリシリコンゲートドーピングおよびカウンタドーピングを実行することが望ましい。また、処理スループットを許容可能な水準まで高めるためには、2%を超えるデューティーサイクルで多くのプラズマエッチング処理および成膜処理を実行することが望ましい。
【0037】
デューティーサイクルが高くなって約2%を超えると、プラズマ処理中の基板上にある電荷がプラズマ源のパルスのオフ期間で中性化される期間が比較的短くなる。この結果、プラズマ処理中の基板で電荷が蓄積または増大し、プラズマ処理中の基板上の電位電圧が比較的高くなり、プラズマ処理が不均一になったり、アーク放電が発生したり、基板が損傷したりしてしまう。例えば、薄いゲート誘電体を含む基板は、電荷の増大が過剰になると、容易に損傷してしまう。
【0038】
本発明は、プラズマ処理中に電荷を中性化する方法および装置に関する。本発明に係る方法および装置によれば、帯電効果によって発生する損傷の可能性を低減することによって、デューティーサイクルを高くしてもプラズマ処理が実行可能になる。特に、本発明に係るプラズマ処理装置は、プラズマ処理中の電荷蓄積を少なくとも部分的に中性化するべく、プラズマ源に印加されるRF電力を変化させるRF電源を備える。また、プラズマ処理中の基板に対するバイアス電圧は、少なくとも部分的に電荷蓄積を中性化するべく、変化させることが可能である。さらに、本発明の一部の実施形態によると、プラズマ源に印加されるRF電力パルスおよび基板に印加されるバイアス電圧は、タイミングが同期しており、プラズマ源に印加されるRF電力パルスと、プラズマ処理中の基板に印加されるバイアス電圧との間の相対タイミングは、基板上の電荷蓄積を少なくとも部分的に中性化するべく、および/または、特定の処理目標を実現するべく、変化させる。
【0039】
より具体的には、さまざまな実施形態によると、一または複数のRF電源を利用して、プラズマ処理中の基板に対するバイアスおよびプラズマ源に対する電力を個別に印加して、少なくとも部分的にプラズマ処理中に電荷を中性化する。また、さまざまな実施形態によると、プラズマ処理中に基板に印加されるバイアス電圧およびプラズマ源に印加されるRF電力は、プラズマ処理中に電荷を少なくとも部分的に中性化するべく、相対的なタイミングで印加される。
【0040】
本発明に係る方法および装置は、電荷を中性化することに加えて、特定の処理目標を実現するべく、プラズマ処理が終了した期間(つまり、パルスオフ期間)においてRF源に対する電力および基板に印加されるバイアスのうち少なくとも一方を正確に制御することができる。例えば、本発明に係る方法および装置は、基板表面上で化学反応を発生させるように、パルスオフ期間において、RF源に対する電力および基板に印加されるバイアス電圧のうち少なくとも一方を正確に制御することができる。このような機能によって、スループットが改善され、一部のエッチング処理および成膜処理では処理制御が良好になる。
【0041】
また、本発明に係るプラズマドーピングを行う方法および装置は、プラズマドーピング中に維持されるドーズ量を改善するべく、パルスオフ期間において、RF源に対する電力および基板に印加されるバイアス電圧のうち少なくとも1つを正確に制御することができる。この結果ドーズ量が改善され、注入時間が短縮されるので、プラズマドーピングのスループットが高くなる。本発明に係る方法および装置は、電荷を中性化することに加えて、本明細書で説明するように、側壁プラズマドーピングプロフィールおよび逆行性ドーピングプロフィールを改善するノックオン型のイオン注入メカニズムを実現するべく、プラズマドーピングが終了している期間において、RF源に対する電力および基板に印加されるバイアスのうち少なくとも1つを正確に制御することができる。
【0042】
図1Aを参照すると、本開示の一実施形態に係るプラズマ処理システム100が図示されている。これは、本開示にしたがって、イオン注入、成膜およびエッチング等のプラズマ処理を実行可能な装置の構成として可能な多くの例のうち1つに過ぎないと理解されたい。特に、本開示に係るプラズマ処理システムと共に利用可能なプラズマ源として多くのものが利用可能であると理解されたい。図1Aに示すプラズマ源は、平面RFコイルおよびらせん状RFコイルを備える。他の実施形態では、一の平面RFコイルまたはらせん状RFコイルを備える。更に他の実施形態では、容量結合プラズマ源または電子サイクロトロン共鳴プラズマ源を備える。当業者であれば、多くの種類の均等なプラズマ源があることに想到するであろう。
【0043】
プラズマ処理システム100は、導電性の上部、ならびに、平面RFコイルおよびらせん状RFコイルの両方を有する誘導結合プラズマ源101を備える。同様のRF誘導結合プラズマ源は、本願の譲受人に譲渡されている米国特許出願第10/905,172号(出願日:2004年12月20日、発明の名称:「導電性の上部を備えるRFプラズマ源」)に記載されている。米国特許出願第10/905,172号の明細書は全て、参照により本願に組み込まれる。プラズマ処理システム100に含まれるものとして図示されているプラズマ源101は、均一性が非常に高いイオン束を供給できるので、処理の均一性を非常に高める必要があるプラズマドーピングおよびその他の高精度プラズマ処理に非常に適している。また、プラズマ源101は、二次電子放出によって発生する熱を効果的に放熱するので、高電力プラズマ処理での有用性が高い。
【0044】
より具体的には、プラズマ処理システム100は、外部ガス供給源104が供給する処理ガスを含むプラズマチャンバ102を備える。外部ガス供給源104は、比例弁106を介してプラズマチャンバ102に結合されており、処理ガスをプラズマチャンバ102に供給する。一部の実施形態によると、ガスバッフルを利用して、プラズマ源101へとガスを分散させる。圧力ゲージ108は、プラズマチャンバ102内部の圧力を測定する。プラズマチャンバ102の排気口110は、プラズマチャンバ102から排気する真空ポンプ112に結合されている。排気バルブ114は、排気口110を通る排気コンダクタンスを制御する。
【0045】
ガス圧制御部116は、比例バルブ106、圧力ゲージ108、および、排気バルブ114に電気接続されている。ガス圧制御部116は、圧力ゲージ108に応じて排気コンダクタンスおよび処理ガスの流量をフィードバックループで制御することによってプラズマチャンバ102内の圧力を所望のレベルに維持する。排気コンダクタンスは、排気バルブ114によって制御される。処理ガスの流量は、比例バルブ106によって制御される。
【0046】
一部の実施形態によると、主要ドーパント種を供給する処理ガスに沿って結合されているマスフローメータによって微量ガス種の比率制御を処理ガスについて行う。また、一部の実施形態によると、別のガス注入手段を利用して、インサイチュで種を調整する。さらに、一部の実施形態によると、マルチポートガス注入手段を用いて、中性の化学効果が基板全体で変化するガスを供給する。
【0047】
プラズマチャンバ102は、略水平方向に延在する誘電体材料で形成された第1の部分120を含むチャンバ上部118を有する。チャンバ上部118の第2の部分122は、略垂直方向に第1の部分120から延在している誘電体材料で形成された部分である。第1の部分120および第2の部分122は、本明細書において、総称して誘電体ウィンドウと呼ぶ場合もある。チャンバ上部118については、多くの変更例があると理解されたい。例えば、第1の部分120は、略曲線状に延在した誘電体材料で構成されている部分であり、第1の部分120および第2の部分122は、米国特許出願第10/905,172号で説明されているように、直交していない。当該特許文献は、参照により本願に組み込まれる。他の実施形態によると、チャンバ上部118は、平面のみで構成される。
【0048】
第1の部分120および第2の部分122の形状および寸法は、特定の性能を実現するように選択され得る。例えば、当業者であれば理解されるであろうが、チャンバ上部118の第1の部分120および第2の部分122の寸法は、プラズマの均一性を高めるように選択され得る。一実施形態によると、垂直方向における第2の部分122の高さの、水平方向における第2の部分122の長さに対する比率は、プラズマを均一化するように調整される。例えば、一の特定の実施形態によると、垂直方向における第2の部分122の高さの、水平方向における第2の部分122の長さに対する比率は、1.5から5.5の範囲内である。
【0049】
第1の部分120および第2の部分122の誘電体材料は、RFアンテナからチャンバ102内のプラズマへとRF電力を伝達する媒体である。一実施形態によると、第1の部分120および第2の部分122を形成するために利用する誘電体材料は、処理ガスに対する化学的耐性が高く、熱特性が良好な、非常に純度の高いセラミック材料である。例えば、一部の実施形態によると、誘電体材料は、99.6%のAlまたはAlNである。他の実施形態によると、誘電体材料は、イットリア(Yittria)およびYAGである。
【0050】
チャンバ上部118の蓋部124は、導電材料で形成されており、水平方向に第2の部分122を横断するように延在する。多くの実施形態によると、蓋部124を形成するために用いられる材料の導電率は、熱負荷を放散し、且つ、二次電子放出に起因する帯電効果を最小限に抑えるために十分な高さとなる。通常は、蓋部124を形成するために用いられる導電材料は、処理ガスに対して化学的に耐性を持つ。一部の実施形態によると、導電材料は、アルミニウムまたはシリコンである。
【0051】
蓋部124は、フッ化炭素ポリマーから成るハロゲン耐性のOリング、例えば、ケムラッツ(Chemrz)(商標)および/またはカルレッツ(Kalrex)(商標)といった材料で形成されるOリングで第2の部分122に結合され得る。蓋部124は通常、第2の部分122に対する押圧を最小限に抑えるように、且つ、第2の部分に蓋部124を封着するために十分な押圧を加えるように、第2の部分122に取り付けられる。一部の動作モードでは、蓋部124は、図1Aに示すように、RF接地およびDC接地されている。
【0052】
一部の実施形態によると、チャンバ102は、金属汚染を防止または大幅に低減するために配置されているライナー125を含む。ライナー125は、プラズマ中のイオンがプラズマチャンバ102の金属内壁に衝突することによって金属がスパッタリングされるが、この金属からプラズマチャンバ102の内側を高低線上で保護する。このようなライナーは、米国特許出願第11623,739号(出願日:2007年1月16日、発明の名称:「金属汚染を低減するためのライナーを備えたプラズマ源」)に記載されている。当該出願は、本願の譲受人に譲渡されている。米国特許出願第11/623,739号の明細書は全て、参照により本願に組み込まれる。
【0053】
さまざまな実施形態によると、ライナーは、一体型のプラズマチャンバライナーであるか、または、別箇のプラズマチャンバライナーである。多くの実施形態によると、プラズマチャンバライナー125は、アルミニウム等の金属系材料で形成される。これらの実施形態では、プラズマチャンバライナー125の少なくとも内側の面125´が、プラズマチャンバライナーの構成材料のスパッタリングを防ぐハードコーティング材料を含む。
【0054】
一部のプラズマ処理、例えば、プラズマドーピング処理は、二次電子放出のために、プラズマ源101の内側の面に分布する熱が非常に不均一になる。一部の実施形態によると、プラズマチャンバライナー125は、温度制御されるプラズマチャンバライナー125である。また、一部の実施形態によると、蓋124は、処理中に発生する熱負荷を放散させるべく、蓋部124および周囲領域の温度を制御する冷却システムを有している。冷却システムは、冷却剤源から液体冷却剤を循環させる蓋124内に設けられた冷却路を含む流体冷却システムであってよい。
【0055】
RFアンテナは、チャンバ上部118の第1の部分120および第2の部分122のうち少なくとも一方に近接して配置される。図1Aのプラズマ源101では、互いに電気的に絶縁されている2つの別箇のRFアンテナが図示されている。しかし、他の実施形態によると、2つの別箇のRFアンテナは、電気接続されている。図1Aに示す実施形態では、複数回巻き回されている平面コイルRFアンテナ126(平面アンテナまたは水平アンテナとも呼ばれる)は、チャンバ上部118の第1の部分120に隣接して配置されている。さらに、複数回巻き回された、らせん状コイルRFアンテナ128(らせん状アンテナまたは垂直アンテナとも呼ばれる)は、チャンバ上部118の第2の部分122の周囲を取り囲むように設けられている。
【0056】
一部の実施形態によると、平面コイルRFアンテナ126およびらせん状コイルRFアンテナ128のうち少なくとも一方は、実効アンテナコイル電圧を低減するキャパシタ129で終端している。「実効アンテナコイル電圧」という用語は、本明細書では、RFアンテナ126、128における電圧降下を意味するものと定義される。言い換えると、「実効コイル電圧」は、プラズマ内のイオンにかかる電圧または「イオンから見た」電圧である。
【0057】
また、一部の実施形態によると、平面コイルRFアンテナ126およびらせん状コイルRFアンテナ128のうち少なくとも一方は、Alである誘電体ウィンドウの材料の誘電率と比べて、比較的低い誘電率を持つ誘電体層134を含む。比較的低い誘電率を持つ誘電体層134は、実効アンテナコイル電圧を低減する容量性分圧器を実質的に構成している。また、一部の実施形態によると、平面コイルRFアンテナ126およびらせん状コイルRFアンテナ128のうち少なくとも一方は、実効アンテナコイル電圧を低減するファラデーシールド136を含む。
【0058】
RF源130は、例えば、RF電源等であり、平面コイルRFアンテナ126およびらせん状コイルRFアンテナ128のうち少なくとも一方に電気接続されている。多くの実施形態によると、RF源130は、RF源130からRFアンテナ126、128に伝達される電力を最大限に大きくするべく、RF源130の出力インピーダンスをRFアンテナ126、128のインピーダンスに整合させるインピーダンス整合ネットワーク132によってRFアンテナ126、128に結合されている。インピーダンス整合ネットワーク132の出力から平面コイルRFアンテナ126およびらせん状コイルRFアンテナ128へと延びている点線は、インピーダンス整合ネットワーク132の出力から、平面コイルRFアンテナ126およびらせん状コイルRFアンテナ128のうち一方または両方に、電気接続が成されることを意味している。
【0059】
一部の実施形態によると、平面コイルRFアンテナ126およびらせん状コイルRFアンテナ128のうち少なくとも一方は、液体冷却が可能なように形成されている。平面コイルRFアンテナ126およびらせん状コイルRFアンテナ128のうち少なくとも一方を冷却することにより、RFアンテナ126、128で伝達されるRF電力によって発生する温度勾配を小さくする。
【0060】
一部の実施形態によると、プラズマ源101は、プラズマ点火器138を備える。プラズマ源101では、多くの種類のプラズマ点火器を利用することができる。一実施形態によると、プラズマ点火器138は、ストライクガスの貯蔵部140を有している。ストライクガスは、非常にイオン化傾向の高いアルゴン(Ar)等のガスであり、プラズマの点火を行い易くする。貯蔵部140は、コンダクタンスの高いガス接続でプラズマチャンバ102に結合されている。破裂弁142によって、処理チャンバ102と貯蔵部140とが分離している。別の実施形態によると、ストライクガス源は、コンダクタンスの低いガス接続を利用して、破裂弁142に直接導管されている。一部の実施形態によると、貯蔵部140の一部分は、最初の高流量での爆発的な流れの後はストライクガスの流量を安定化させる、制限コンダクタンスの開口部または絞り弁によって分離されている。
【0061】
プラテン144は、プラズマ源101の上側部分118の下方で、処理チャンバ102内に配置されている。プラテン144は、プラズマ処理を行うべく基板146を保持する。多くの実施形態によると、基板146は、プラテン144に電気接続される。図1Aに示す実施形態によると、プラテン144は、プラズマ源101に平行である。しかし、本発明の一実施形態によると、プラテン144をプラズマ源101に対して傾斜させて、さまざまな処理目標を実現する。
【0062】
プラテン144は、処理対象の基板146または他のワークピースを支持するために用いられる。一部の実施形態によると、プラテン144は、少なくとも一の方向において基板146を並進、走査、または、振動させる移動可能なステージに機械的に結合されている。一実施形態によると、移動可能なステージは、基板146を揺動または振動させる搖動生成器または振動生成器である。並進、搖動および/または振動といった運動は、シャドーイング効果を低減または消去させることができ、基板146の表面に当てるイオンビーム束の均一性を改善することができる。
【0063】
バイアス電圧電源148は、プラテン144に電気接続されている。バイアス電圧電源148は、プラテン144および基板146にバイアスを印加して、プラズマ内のイオンをプラズマから抽出して基板146に当てるべく利用される。さまざまな実施形態によると、イオンは、プラズマドーピング用のドーパントイオンであってもよいし、エッチングおよび成膜用の不活性イオンまたは反応性イオンであってもよい。さまざまな実施形態によると、バイアス電圧電源148は、DC電源、パルス状電源、または、RF電源である。本発明に係るプラズマ処理装置の一実施形態によると、バイアス電圧電源148の出力波形は、平面コイルRFアンテナ126およびらせん状コイルRFアンテナ128の少なくとも一方に電力を供給するRF源130の出力波形とは無関係に決定される。本発明に係るプラズマ処理装置の別の実施形態によると、バイアス電圧電源148の出力波形は、平面コイルRFアンテナ126およびらせん状コイルRFアンテナ128の少なくとも一方に電力を供給するRF源130の出力波形と同期するように決定される。バイアス電圧電源148およびRF源130は、2つの異なる出力を持つ物理的に同じ電源であってもよいし、複数の別箇の電源であってもよい。
【0064】
コントローラ152は、本発明に応じて、RF電源130およびバイアス電圧電源148を制御して、プラズマを生成するとともに基板146にバイアスをかけて、プラズマ処理中に少なくとも部分的に電荷蓄積を中性化するために利用される。コントローラ152は、電源130、148の一部であってもよいし、電源130、148の制御入力に電気接続されている別のコントローラであってもよい。コントローラ152は、RF電源130を制御して、平面コイルRFアンテナ126およびらせん状コイルRFアンテナ128の一方または両方に、少なくとも2つの異なる振幅を持つパルスを印加する。また、コントローラ152は、RF電源130およびバイアス電圧電源148を制御して、平面コイルRFアンテナ126およびらせん状コイルRFアンテナ128のうち少なくとも一方に、そして、基板146にも、プラズマ処理中に少なくとも部分的に電荷蓄積を中性化するような相対タイミングで、パルスを印加する。
【0065】
当業者であれば、本発明の特徴に応じて利用可能なプラズマ源101の変形例には、多くの異なるものがあることに想到するであろう。例えば、米国特許出願第10/908,009号(出願日:2005年4月25日、発明の名称:「傾斜プラズマドーピング」)に記載されているプラズマ源の説明を参照されたい。また、米国特許出願第11/163,303号(出願日:2005年10月13日、発明の名称:「コンフォーマルドーピングの装置および方法」)に記載されているプラズマ源の説明を参照されたい。また、米国特許出願第11/163,307号(出願日:2005年10月13日、発明の名称:「コンフォーマルドーピングの装置および方法」)に記載されているプラズマ源の説明を参照されたい。また、米国特許出願第11/566,418号(出願日:2006年12月4日、発明の名称:「注入角度が電子的に制御可能なプラズマドーピング」)に記載されているプラズマ源の説明を参照されたい。米国特許出願第10/908,009号、第11/163,303号、第11/163,307号、第11/566,418号の全ての明細書は、参照により本願に組み込まれる。
【0066】
動作について説明すると、コントローラ152は、RFアンテナ126および128のうち少なくとも一方を伝搬するRF電流を生成するようRF源130に指示する。つまり、平面コイルRFアンテナ126およびらせん状コイルRFアンテナ128のうち少なくとも一方は、能動アンテナである。「能動アンテナ」という用語は、本明細書では、電源によって直接駆動されるアンテナと定義される。本発明に係るプラズマ処理装置の多くの実施形態によると、RF源130は、パルス状モードで動作する。しかし、RF源130はさらに、連続モードでも動作することができる。
【0067】
一部の実施形態によると、平面コイルアンテナ126およびらせん状コイルアンテナ128の一方は、寄生アンテナである。「寄生アンテナ」という用語は、本明細書では、能動アンテナと電磁的に結合しているが電源に直接接続されていないアンテナを意味するものとして定義される。言い換えると、寄生アンテナは、電源によって直接励起されるものではなく、近接して設けられている能動アンテナによって励起される。図1Aに示す装置では、能動アンテナは、RF源130から電力供給される平面コイルアンテナ126およびらせん状コイルアンテナ128のうち一方である。本発明の一部の実施形態によると、寄生アンテナの一端は、アンテナチューニング機能を実現するべく、接地電位に電気接続される。本実施形態によると、寄生アンテナは、寄生アンテナのコイルの有効巻き数を変更するために利用されるコイル調整部150を含む。金属短絡部等、多くのさまざまな種類のコイル調整部を利用することができる。
【0068】
RFアンテナ126、128内を流れるRF電流によって、チャンバ102内にRF電流を流す。チャンバ102内のRF電流は、処理ガスを励起およびイオン化して、チャンバ102内のプラズマを生成する。プラズマチャンバライナー125は、プラズマ内のイオンによってスパッタリングされた金属が、基板146に到達しないようにする。
【0069】
コントローラ152はさらに、プラズマ内のイオンを基板146に向けて誘引する負電圧パルスで、基板146にバイアスをかけるように、バイアス電圧電源148に指示する。負電圧パルスが印加されている間、プラズマシース内の電界は、プラズマ処理を行うべく、基板146に向けてイオンを加速する。例えば、プラズマシース内の電界は、基板146に向けてイオンを加速することで、基板146の表面内にイオンを注入するか、基板146の表面をエッチングするか、エッチングまたは成膜を行うべく基板146の表面で化学反応を発生させるか、または、基板146の表面上に薄膜を成長させるか、いずれかの処理を行う。一部の実施形態によると、イオンのエネルギーを増大させるべく、プラズマ内のイオンを基板146に向けて抽出する場合には、グリッドを利用する。
【0070】
図1Bは、本発明に係る、電荷中性化を行うプラズマ処理システム170の別の実施形態を示す図である。プラズマ処理システム170は、容量性RF放電システムである。容量性RF放電プラズマ処理システムは、関連産業分野で公知である。プラズマ処理システム170は、プラズマ放電領域を通るマスフローコントローラから供給ガスを受け取る処理ガス入口174を持つ処理チャンバ172を備える。処理チャンバ172はさらに、流出ガスを排出する真空ポンプに結合されている排気口175を備える。通常は、チャンバ172内の圧力を制御するべく真空ポンプに結合されている排気口175内にスロットルバルブを配置する。動作中の圧力は通常、10−1000mTの範囲内である。
【0071】
プラズマ処理システム170は、平行プレート電極176と呼ばれることが多い、2つの平面状の電極を備える。平行プレート電極176は、RF源178によって駆動される。平行プレート電極176は、互いに2−10cm内の間隙で離間させている。RF源178の出力と、平行プレート電極176との間には、遮蔽キャパシタ180が電気接続されている。遮蔽キャパシタ180は、駆動信号からDC信号および低周波数信号を除去するために用いられる。RF駆動信号は通常、100−1000Vの範囲内にある。平行プレート電極176は通常、13.56MHz信号で駆動されるが、他の周波数も適切である。
【0072】
従来の容量性RF放電プラズマ処理システムでは、基板は下側の平行プレート上に直接配置されていた。しかし、プラズマ処理システム170は、下側プレートと基板184との間に配置される絶縁体182を備える。絶縁体182によって、RF源178が駆動する平行プレート電極176とは無関係に、基板184にバイアスをかけることができるようになる。別個の基板バイアス電圧電源186を用いて、基板184にバイアスをかける。基板バイアス電圧電源186の出力は、絶縁体182内に配置される基板184に電気接続される。
【0073】
コントローラ188は、本発明に応じて、RF電源186およびバイアス電圧電源186を制御して、プラズマを生成するとともに基板184にバイアスをかけて、プラズマ処理中に少なくとも部分的に電荷蓄積を中性化するために利用される。コントローラ188は、電源178、186の一部であってもよいし、または、電源178、186の制御入力に電気接続されている別のコントローラであってもよい。コントローラ188は、RF電源178を制御して、少なくとも2つの異なる振幅を持つマルチレベルRFパルスを平行プレート電極176に印加する。また、コントローラ188は、本発明に応じて、RF電源178およびバイアス電圧電源186を制御して、プラズマ処理中に電荷蓄積を少なくとも部分的に中性化するような相対タイミングで、RFパルスを平行プレート電極176に印加する。
【0074】
プラズマ処理システム170の動作は、プラズマ処理システム100の動作と同様である。コントローラ188は、平行プレート電極176に伝搬するRF電流を生成して、供給ガスから平行プレート間でプラズマを生成するように、RF源178に指示する。コントローラ188はさらに、プラズマ内のイオンを基板184に向けて誘引する負電圧パルスで基板184にバイアスをかけるように、バイアス電圧電源186に指示する。負電圧パルスを印加している間、プラズマシース内の電界は、プラズマ処理を実行するべく基板184に向けてイオンを加速する。例えば、プラズマシース内の電界は、基板184に向けてイオンを加速することで、基板184の表面内にイオンを注入するか、基板184の表面をエッチングするか、エッチングまたは成膜を行うべく基板184の表面で化学反応を発生させるか、または、基板184の表面上に薄膜を成長させるか、いずれかの処理を行う。
【0075】
RF源178およびバイアス電圧電源186は所与の処理条件で動作する場合、基板184上に電荷が蓄積する可能性がある。基板184で電荷が蓄積すると、プラズマ処理中の基板184の電位電圧が比較的高くなり、処理が不均一になり、アーク放電が発生し、素子の損傷が発生し得る。基板184上での電荷の蓄積は、本発明によると、RF源178でマルチレベルRF波形を生成するとともに、基板184にバイアスをかけることによって、大きく低減され得る。また、処理速度および処理プロフィールといった処理目標は、本発明によると、RF源178でマルチレベルRF波形を生成するとともに、基板184にバイアスをかけることによって、実現することができる。
【0076】
本発明に係る方法および装置は、他にも多くの種類のプラズマ処理システムに適用され得る。例えば、本発明に係る方法および装置は、ECRプラズマ処理システム、ヘリコンプラズマ処理システム、および、ヘリコン共振プラズマ処理システムに適用され得る。こういったシステムではそれぞれ、RF源が、少なくとも2つのRF電力レベルを持つ多重振幅パルス状RF波形を生成する。また、多くの実施形態では、コントローラでプラズマ源を駆動するRF波形に同期しているバイアス電圧波形を生成するバイアス電圧電源によって基板にバイアスをかける。
【0077】
図2Aを参照すると、RF源130によって生成され、振幅が単一であり、条件によっては基板146(図1A)に電荷が蓄積される従来の波形200が図示されている。波形200は、電力レベルPRF202のパルスでプラズマが生成されるまで、接地電位である。電力レベルPRF202は、プラズマドーピング処理、および、多くのプラズマエッチング処理、および、プラズマ成膜処理に適切な電力レベルが選択される。パルスは、パルス期間T204が経過すると終了して、接地電位に戻る。その後、波形は周期的に繰り返す。
【0078】
図2Bを参照すると、プラズマ処理中にプラズマ内のイオンを誘引するべく負電圧252を基板146(図1A)に印加するバイアス電圧源148によって生成された従来の波形250が図示されている。負電圧252は、RF源130が生成する波形200が電力レベルPRF202に等しい電力を持つ期間T 254において印加される。負電圧252は、プラズマ処理を行うべく基板146にプラズマ内のイオンを誘引する。波形200は、プラズマ処理が終了する期間T 256では、接地電位となる。デューティーサイクルが比較的高い場合(つまり、約25%を超える場合、場合によっては、約2%を超える場合)、RF源130が生成した波形250の電力が電力レベルPRF202に等しい電力となるパルス期間T 254において基板146に電荷が蓄積する傾向がある。
【0079】
本発明に係る方法および装置によれば、帯電効果に起因して損傷が発生する確率を低減しつつ、プラズマドーピング、プラズマエッチングおよびプラズマ成膜等のプラズマ処理を、高いデューティーサイクルで実行することが可能になる。本発明に係る多くの方法では、基板146上の電荷の蓄積を少なくとも部分的に中性化するべく、プラズマ源101に電力を供給し、処理中の基板146にバイアスをかける。
【0080】
図3の(A)を参照すると、本発明に係るRF源130(図1A)が生成したRF電力波形300が図示されている。RF電力波形300は、基板146(図1A)上に蓄積された電荷を少なくとも部分的に中性化するべく複数の振幅を持つ。波形300は、パルス状波形であり、第1の電力レベル302および第2の電力レベル304を持つ。各電力レベルは、図中でPRF1およびPRF2として図示される。しかし、本発明に係る方法では基板146上の電荷蓄積を少なくとも部分的に中性化することを目的として3つ以上の振幅を持つ波形を用いてもよいと理解されたい。また、波形の振幅はそれぞれ離散値であってもよいし、そうでなくてもよいことも理解されたい。例えば、波形は連続して変化する波形であってもよい。つまり、一部の実施形態によると、波形は、正または負の傾斜を持つとしてよい。また、波形の傾きは線形であってもよいし、または、非線形であってもよい。
【0081】
第1の電力レベルPRF1 302は、基板146にプラズマ処理のためのバイアスがかかっていない間に、基板146上の電荷蓄積を少なくとも部分的に中性化するために十分なRF電力を供給するように選択されている。第2の電力レベルPRF2 304は、プラズマドーピング、プラズマエッチング、および、プラズマ成膜等のプラズマ処理に適切な値となるように選択される。さまざまな実施形態によると、RF源130が生成する波形300は、第1の電力レベルPRF1 302および第2の電力レベルPRF2 304を持ち、平面コイルRFアンテナ126およびらせん状コイルRFアンテナ128(図1Aを参照のこと)の一方または両方に印加される。一の特定の実施形態によると、RF源130が生成する波形300は、第1の電力レベルPRF1 302である場合には、平面コイルRFアンテナ126およびらせん状コイルRFアンテナ128のうち一方に印加され、第2の電力レベルPRF2 304である場合には、平面コイルRFアンテナ126およびらせん状コイルRFアンテナ128のうち他方に印加される。別の特定の実施形態によると、図5の(A)から(C)に関連付けて説明するように、RF源130が生成する波形300は、第1の周波数である場合には、平面コイルRFアンテナ126およびらせん状コイルRFアンテナ128のうち一方に印加され、第1の周波数とは異なる第2の周波数である場合には、平面コイルRFアンテナ126およびらせん状コイルRFアンテナ128のうち他方に印加される。
【0082】
図3の(A)に示す波形300によると、第1の電力レベルPRF1 302が第2の電力レベルPRF2 304よりも高いことが分かる。しかし、他の実施形態によると、第1の電力レベルPRF1 302は、第2の電力レベルPRF2 304未満である。また、一部の実施形態によると、図6に関連付けて説明しているように、波形300は、基板146にプラズマ処理のためのバイアスをかけていない場合に、ゼロまたは比較的低い電力レベルである第3の電力レベルとなる。
【0083】
波形300はさらに、波形300の電力が第1の電力レベルPRF1 302に等しい期間に対応する第1のパルス期間TP1 306と、波形の電力が第2の電力レベルPRF2 304に等しい期間に対応する第2のパルス期間TP2 308とを含む。波形300の合計多重振幅パルス期間TTotal310は、第1のパルス期間TP1 306と第2のパルス期間TP2 308との合計である。例えば、一実施形態によると、第1および第2のパルス期間TP1 306、TP2 308は共に、30−500μsの範囲内であり、合計多重振幅パルス期間TTotal310は、60μs−1msの範囲内である。他の実施形態によると、合計多重振幅パルス期間TTotal310は、1ms以上のオーダであってよい。
【0084】
図3の(A)からは、第1のパルス期間TP1 306における波形300の周波数が、第2のパルス期間TP2 308の間の波形300の周波数と同じであることが分かる。しかし、さまざまな実施形態によると、図5の(A)から(C)に関連付けて説明しているように、第1のパルス期間TP1 306における波形300の周波数は、第2のパルス期間TP2 308における波形300の周波数とは異なるとしてもよいと理解されたい。また、波形300の周波数は、第1のパルス期間TP1 306および第2のパルス期間TP2 308のうち少なくとも一方で変化させるとしてよい。
【0085】
このように、一部の実施形態によると、波形300は、周波数および振幅の両方について、プラズマ処理中の電荷蓄積を少なくとも部分的に中性化するように選択されている複数の値に設定する。また、一部の実施形態によると、波形300は、周波数および振幅の両方について、プラズマドーピング時に維持するドーズ量等の処理パラメータを改善するように選択される複数の値に設定する。さらに、一部の実施形態によると、波形300は、周波数および振幅の両方について、特定の処理目標を達成するべく選択される複数の値に設定する。例えば、波形300は、周波数および振幅の両方について、処理制御を改善し、処理レートを高めるように選択される複数の値に設定する。
【0086】
また、波形300は、周波数および振幅について、逆行性ドーピングプロフィールを形成するべくノックオンイオン注入を実現できるように選択される複数の値に設定するとしてよい。また、波形300は、周波数および振幅の両方について、高アスペクト比のエッチングプロフィールの実現等、所与のエッチングプロフィールおよびエッチング処理目標を達成するような複数の値に設定するとしてよい。また、波形300は、周波数および振幅の両方について、高アスペクト比構造に材料を成膜すること、コンフォーマルまたは略コンフォーマルなコーティングを成膜すること、および、トレンチおよびその他のデバイス構造の間隙を充填すること等、所与の成膜プロフィールおよび処理目標を実現するような複数の値に設定するとしてよい。
【0087】
図3の(B)を参照すると、本発明にしたがって、イオンを誘引するべくプラズマ処理時に基板146に負電圧352を印加するバイアス電圧源148(図1A)が生成するバイアス電圧波形350が図示されている。バイアス電圧波形350は、RF電力波形300と同期している。しかし、バイアス電圧波形350のパルスは、RF電力波形300のパルスと必ずしもそろっている必要はないと理解されたい。負電圧352は、RF源130が生成する波形350が第2の電力レベルPRF2 304に等しい電力を持つ第2のパルス期間TP2 308において印加される。波形350は、プラズマ処理が終了し、波形300が第1の電力レベルPRF1 302に等しい電力となる第1のパルス期間TP1 306において接地電位となる。
【0088】
バイアス電圧源148(図1A)が生成する波形350が接地電位である期間TP1 306においてRF源130が第1の電力レベルPRF1 302を印加するように、2つの異なる電力レベルを含む波形をプラズマ源101(図1A)に印加することによって、基板146(図1A)に蓄積される電荷を中性化し易くなる。対応するプラズマに含まれる電子が、基板146に蓄積された電荷のうち少なくとも一部を中性化する。
【0089】
図3の(C)は、本発明に係るバイアス電圧源148(図1A)が生成する波形で、プラズマ処理中にイオンを誘引するべく負電圧362を基板146に印加して、プラズマ処理が終了した後に基板146上の電荷を中性化するべく基板146に正電圧364を印加する波形360を示す図である。負電圧362は、RF源130が生成する波形300が第2の電力レベルPRF2 304に等しい電力を持つ第2のパルス期間TP2 308において印加される。波形360は、RF源130が生成する波形300の電力が第1の電力レベルPRF1 302に等しい第1のパルス期間TP1 306において正電位364である。
【0090】
バイアス電圧源148(図1A)が生成する波形360が正電位364である第1の期間TP1 306においてRF源130(図1A)によって第1の電力レベルPRF1 302が印加されるように、2つの異なる電力レベルを持つ波形をプラズマ源101(図1A)に印加することによって、基板146(図1A)に蓄積される電荷が中性化される。対応するプラズマに含まれる電子が、基板146に蓄積される電荷の少なくとも一部を中性化する。また、基板146に印加する正電圧364によって、基板146上に蓄積される電荷の少なくとも一部を中性化する。
【0091】
図4の(A)から(C)は、本発明に係る、RF源130(図1A)が生成するRF電力波形400、および、バイアス電圧源148(図1A)が生成するバイアス電圧波形402、404を示す図である。これらの波形は、図3の(A)から(C)を参照しつつ説明した波形300、350、および、360と同様であるが、波形300、350、および360と相対的にタイミングを変えており、第1の電力レベルPRF1 302および第2の電力レベルPRF2 304の両方でプラズマ処理を実行するようにしている。本実施形態によると、RF電力波形400およびバイアス電圧波形402、404は、同期しているが、RF電力波形400のパルスは、バイアス電圧波形402、404のパルスとはそろっていない。
【0092】
プラズマ処理中にRF源130が生成する電力を変化させることによって、ユーザは、プラズマ処理中に所与の処理目標および効果を実現するべく基板146の表面に蓄積されている電荷量をより正確に制御することができるようになる。例えば、第2のパルス期間TP2 308の終了近くで電力を高くすることによって、基板146に蓄積されている電荷の中性化処理を高めることができる。
【0093】
図5の(A)から(C)を参照すると、本発明の別の実施形態に係る、RF源130(図1A)が生成する波形であって、周波数が可変のRF電力波形500と、バイアス電圧源148(図1A)が生成する対応するバイアス電圧波形502、504とが図示されている。波形500は、図3および図4と関連付けて説明した波形300、400と同様である。しかし、第1のパルス期間TP1 306および第2のパルス期間TP2 308のRF電力は、同じであり、第1のパルス期間TP1 306および第2のパルス期間TP2 308の周波数は、異なる。波形500の周波数が変化すると、イオン/電子の密度が変化するので、電荷中性化効率が変わる。
【0094】
このように、一実施形態によると、第1のパルス期間TP1 306における波形500の周波数は、第2のパルス期間TP2 308における波形500の周波数とは異なり、これらの周波数は、プラズマ処理中の電荷蓄積を少なくとも部分的に中性化するように選択される。波形502、504は、図3に関連付けて説明した波形350および360と同様である。他の実施形態によると、波形502、504は、図4に関連付けて説明した波形402、404の変更と同様に、波形500と相対的にタイミングを変更する。
【0095】
また、本発明の一の側面によると、RF源130が生成する複数の電力レベル、第1のパルス期間TP1 306および第2のパルス期間TP2 308における波形500の周波数、および、バイアス電圧源148(図1A)が生成する波形に対する波形500の相対タイミング等のパラメータは、所定の処理目標を実現するように選択される。例えば、バイアス電圧が接地電位である場合にRF源130が一の電力レベルを生成するようにRF源130で複数の電力レベルを生成することによって、ユーザは、プラズマ処理中に利用する電力を減らすことができ、および/または、処理時間を短縮することができるようになる。これは、一部のプラズマ処理は、バイアス電圧が接地電位である場合に実行されるためである。
【0096】
また、本発明の一実施形態によると、RF源130(図1A)が生成する複数の電力レベルのうち少なくとも1つ、第1のパルス期間TP1 306および第2のパルス期間TP2 308のうち少なくとも一方の期間における波形500の周波数、および、バイアス電圧源148(図1A)が生成する波形に対する波形500の相対的タイミングは、プラズマドーピングを実行する際に基板146(図1A)上で維持されるドーズ量を改善するように選択される。例えば、プラズマ処理時に利用する電力を低減することによって、成膜量が少なくなるので、基板内で維持されるドーズ量は多くなる。動作圧力、ガス流量、希釈ガスの種類、および、プラズマ源の電力もまた、本方法では、維持されるドーズ量をさらに改善するように選択することができる。
【0097】
また、本発明の別の実施形態によると、RF源130(図1A)が生成する複数の電力レベルのうち少なくとも1つ、第1のパルス期間TP1 306および第2のパルス期間TP2 308のうち少なくとも一方における波形500の周波数、および、バイアス電圧源148が生成する波形に対する波形500の相対タイミングは、プラズマ処理中の側壁被覆率を改善するように選択される。「側壁の被覆率を改善する」という表現は、本明細書において、側壁への材料成膜速度の、イオン束に垂直な基板表面への材料成膜速度に対する比率を高くすることを意味するものとする。側壁被覆率を改善することは、コンフォーマルドーピングおよびコンフォーマル成膜等、多くの用途において重要である。例えば、多くの3次元デバイスおよびその他の最先端デバイスでは、コンフォーマルドーピングおよびコンフォーマル成膜が必要となる。
【0098】
また、本発明の別の実施形態によると、プラズマドーピングを実施するべくノックオンイオン注入を実現するように、RF源130(図1A)は、特定の複数の電力レベル、複数の周波数、および、バイアス電圧源148(図1A)が生成する波形に対する相対タイミングを持つ波形を生成する。「ノックオンイオン注入」という用語は、本明細書において、基板146の表面層を通過するようにイオンを注入して、ドーパント材料を基板146に入れ込む反跳イオン注入と定義される。
【0099】
ノックオンイオン注入で利用されるイオンは、He、Ne、Ar、KrおよびXe等の、不活性イオン種であってよく、不活性供給ガスから得られるとしてよい。一部の実施形態によると、ノックオンイオンの質量は、所望のドーパントイオンの質量と同等になるように選択する。RF源130(図1A)は、十分なエネルギーでノックオンイオンを基板146(図1A)に向けて、衝突の際に基板146(図1A)の平面部分および非平面部分の両方に成膜されたドーパント材料を物理的に打ち込むために十分なRF電力を生成する。また、チャンバ圧、ガス流量、プラズマ源の電力、ガスの希釈、および、パルス状のバイアス印加のデューティーサイクル等の動作パラメータは、ノックオンイオン注入を改善するように選択され得る。
【0100】
ノックオンイオン注入は、逆行性ドーピングプロフィールを形成するために利用できる。逆行性ドーピングプロフィールまたは逆行性成膜プロフィール等、逆行性プロフィールを形成するための所定の複数の電力レベル、複数の周波数、および、バイアス電圧源148が生成する波形に対する相対タイミングを持つ波形は、RF源130(図1A)によって生成される。「逆行性プロフィール」という用語は、本明細書において、当該プロフィールのピーク濃度が基板の表面より下方に位置するプロフィールと定義される。例えば、米国特許出願第12/044,619号(発明の名称:「イオン注入を用いて逆行性材料プロフィールを形成する方法」)を参照されたい。当該特許出願は、本願の譲受人に譲渡されている。米国特許出願第12/044,619号の明細書は全て、参照により本願に組み込まれる。
【0101】
プラズマドーピングについて、逆行性イオン注入ドーパントプロフィールを形成することが望ましい場合もある。これは、多くの理由からイオン注入層の深さを正確に制御するのは難しいためである。例えば、プラズマドーピング中、物理的なスパッタリングおよび化学的なエッチングによって、意図に反して基板表面がエッチングされる可能性がある。また、意図に反して基板表面に成膜される可能性もある。さらに、複数のイオン種が存在すること、イオン同士が衝突すること、プラズマシースが不均一であること、二次電子放出が存在すること、寄生インピーダンスによって変位電流が発生すること、および、印加されるバイアスパルスが望ましくないこと等、多くの要因に基づいてイオン注入エネルギーのバラツキが大きくなる可能性がある。
【0102】
また、表面にピークが存在するドーパントプロフィールは、成膜または注入された材料の最大ピーク濃度の大半が、基板表面または基板表面近傍に位置していることから、成膜後処理または注入後処理に対して反応し易いので、逆行性イオン注入ドーパントプロフィールを形成することが望ましい場合もある。特に、フォトレジストストリップ処理は、注入処理後に行われるのが通常であるが、表面近傍のドーパント材料を多量に除去してしまう。
【0103】
他の実施形態によると、特定の処理目標または処理プロフィール、例えば、エッチングプロフィールを実現するような特定の複数の電力レベル、複数の周波数、および、バイアス電圧源148が生成する波形に対する相対タイミングを持つ波形は、RF源130によって生成される。例えば、複数の電力レベル、複数の周波数およびバイアス電圧源148が生成する波形に対する相対タイミングは、高アスペクト比エッチングプロフィールまたは特定の種類の成膜プロフィールを実現するように選択され得る。
【0104】
当業者であれば、本発明に係るRF源130(図1A)が生成する波形は、振幅および周波数の両方について、複数の値に設定されており、バイアス電圧源148(図1A)が生成する波形に対する相対タイミングも、さまざまな値に設定されていることに想到するであろう。実際には、本明細書で説明したような処理目標を実現し、および/または、少なくとも部分的に電荷を中性化するような、RF源130(図1A)が生成し得る電力レベルおよび周波数が複数の値に設定される波形、および、バイアス電圧源148(図1A)が生成する波形に対する相対タイミングは略無限にある。
【0105】
図6を参照すると、本発明の一実施形態に係る、マルチセットポイントRF電力および制御信号の波形600の測定結果が図示されている。波形600は、タイミングt0から始まる時間の関数であるRF電力および制御信号の波形を含む。波形600は、イオン注入期間602、電荷中性化期間604、および、電力オフ期間606を示す。
【0106】
図1Aおよび図6を参照すると、タイミングt0において、コントローラ152(図1A)は、プラズマ中のイオンを基板146に誘引する負電圧パルスで基板146(図1A)にバイアスをかけるようにバイアス電圧電源148(図1A)に指示する注入パルス608を生成する。注入パルス602の立ち上がり時間は、約30マイクロ秒である。また、タイミングt0において、コントローラ152は、第1の電力レベルを持つRF電力波形610を開始するRFパルス制御信号を生成する。イオン注入期間602において、コントローラ152は、RFアンテナ126および128(図1A)のうち少なくとも一方にRF電流を流してプラズマを発生させるための第1のRFパルス制御信号612を生成する。第1のRFパルス制御信号612の立ち上がり時間は、約30マイクロ秒である。
【0107】
電荷中性化期間604は、第1のRFパルス制御信号612および注入パルス信号608の両方がゼロに戻ったタイミングで開始される。第1のRFパルス制御信号および注入パルス制御信号の立ち下がり時間は、約20マイクロ秒である。電荷中性化期間604では、コントローラ152は、RF電力波形610を第2の電力レベルまで変化させる第2のRFパルス制御信号614を生成する。多くの実施形態では、図6に示すように、第2の電力レベルは、第1の電力レベルよりも高い。しかし、他の実施形態によると、第2の電力レベルは、第1の電力レベルより低い電力レベルを含む、任意の電力レベルであってよい。第2のRFパルス制御信号の立ち上がり時間も同様に、約30マイクロ秒である。電荷中性化期間604では、基板146上の電荷のうち少なくとも一部が、プラズマ内の電子によって中性化されるという効果が得られる。このように電荷を部分的または完全に中性化することによって、基板146上の望ましくない帯電効果を低減する。
【0108】
電力オフ期間606は、第2のRFパルス制御信号614がゼロに戻ったタイミングで開始される。第2のRFパルス制御信号614の立ち下がり期間は、約20マイクロ秒である。電力オフ期間606では、RF電力を止めて、プラズマを消滅させる。本発明に係る電荷中性化が改善されたプラズマ処理方法は、多くのさまざまなマルチセットポイントRF電力および制御信号波形600と共に利用することができる。
【0109】
本発明に係る電荷中性化方法は、多くのその他の種類のプラズマ処理装置と共に利用することができると理解されたい。例えば、電荷中性化方法は、誘電結合プラズマ(ICP)源、ヘリコン共振プラズマ源、マイクロ波プラズマ源、ECRプラズマ源、および、容量結合プラズマ源を含むプラズマ処理装置と共に利用することができる。実際、パルス状モードで動作可能な任意の種類のプラズマ源を利用して、本開示に係る方法を実行することができる。
【0110】
イオンを注入するためにパルス状のRF波形200およびバイアス波形250を利用する場合、注入するイオンの組成を正確に制御することが難しい。例えば、Bおよびヘリウムの混合物を用いてプラズマを生成するとしてよい。この混合物は、ヘリウムイオンと共に、P型ドーパントのイオンを生成するとしてよい。基板に負のバイアスをかけると、プラズマ内で生成される正のイオンは基板に向けて加速される。ヘリウムイオンは、基板内で発生する損傷が大きくなり、アニーリングプロセス中の基板の再成長速度を遅くしてしまう可能性がある。このため、ヘリウムイオンの生成を最小限に抑えることが有益である。しかし、従来のプラズマ浸漬注入技術では、イオンは平等に生成されるので、ドーパントイオンおよびヘリウムイオンの両方が注入される。
【0111】
以下では、さまざまな実施形態に係るプラズマ処理を開示する。上述したように、当該プラズマ処理は、プラズマを利用するイオン注入処理、プラズマを利用するエッチング処理、プラズマを利用する成膜処理、または、その他の任意のプラズマを利用する処理であってよい。説明を明確且つ簡潔にするべく、プラズマを生成および維持するべくプラズマ源に印加されるRF波形、および、RF波形を用いて生成されるプラズマまたはプラズマに含まれる粒子で基板を処理するべく基板に印加するバイアス波形に重点を置いて説明するとしてよい。以下で説明するように、RF波形およびバイアス波形はさまざまな構成を持つとしてよい。
【0112】
図7を参照すると、本開示の別の実施形態に係るRF電力波形700および対応するバイアス電圧波形701が図示されている。図示しているように、RF電力波形700およびバイアス電圧波形701は、さまざまな振幅を持つ複数のパルスを含むとしてよい。先に述べた実施形態と同様に、RF電力波形700は、平面コイルRFアンテナ126およびらせん状コイルRFアンテナ128(図1A)のうち1以上に印加されるとしてよく、バイアス電圧701は基板146(図1A)に印加されるとしてよい。
【0113】
RF電力波形700は、対応する3つのRF電力期間tp1、tp2およびtp3において印加される第1から第3のRF電力パルス702、704および706を含むとしてよい。図示されているように、第1のRF電力パルス702は、第2のRF電力パルス704より前であり、第2の電力パルス704は、第3のRF電力パルス706より前であるとしてよい。所望の場合には、追加で第1から第3のRF電力パルス702、704および706をこの順序で供給するとしてもよいし、別の順序で供給するとしてもよい。
【0114】
第1のRFパルス702は、第1の電力レベルPRF1を持つとしてよく、第2のRF電力パルス704は、第2の電力レベルPRF2を持つとしてよく、第3のパルス706は、第3の電力レベルPRF3を持つとしてよい。本実施形態によると、第1の電力レベルPRF1は、略0であってよい。これに代えて、第1の電力レベルPRF1は、0より大きいとしてよい。一方、第2の電力レベルPRF2は、第1の電力レベルPRF1よりも高いが、第3の電力レベルPRF3よりも低いとしてよい。例えば、第2のRF電力レベルPRF2の値は、約200ワットであってよく、第3の電力レベルPRF3の値は、第2の電力レベルPRF2の150%から600%、つまり、約600ワットであってよい。第2のRF電力期間tp2および第3のRF電力期間tp3において、第2および第3のRF電力パルス704および706が印加されると、プラズマが生成されるとしてよい。第2のRF電力パルス704の印加によって生成されたプラズマに比べ、第3のRF電力パルス706の印加によって生成されるプラズマは、性質が異なるとしてよい。例えば、第3のRF電力パルス706で生成されるプラズマの方が、イオンおよび/または電子の密度が高いとしてよい。
【0115】
第3のRF電力パルス706の幅(または第3のRF電力期間tp3の長さ)は、デューティーサイクルの約20%から50%であるとしてよい。一方、第2のRF電力パルス704の幅(または、第2のRF電力期間tp2の長さ)は、上限がデューティーサイクルの約60%であるとしてよい。具体例によると、第2のRF電力パルス704の幅は、約30−100μsであってよいが、約90μsであることが好ましい。一方、第3のRF電力パルス706の幅は、約10−50μsであってよいが、30μsであることが好ましい。当業者であれば、第2のRF電力パルス704および第3のRF電力パルス706の幅のうち少なくとも一方がプラズマおよび/または基板146の特性または所望の条件に応じて変化し得ることを認めるであろう。
【0116】
バイアス電圧波形701は、一方、第1のバイアスパルス703および第2のバイアスパルス705を含むとしてよい。第1のバイアスパルス703は、第1のバイアスレベルVであるとしてよく、第1のバイアス期間tb1で印加されるとしてよい。一方、第2のバイアスパルス705は、第2のバイアスレベルVであるとしてよく、第2のバイアス期間tb2で印加されるとしてよい。本実施形態によると、第2のバイアスレベルVは、絶対値が第1のバイアスレベルVよりも大きいとしてよい(つまり、正または負の方向により大きい)。一方、第1のバイアスレベルVは、基板146(図1A)に供給されるバイアスをオフにすることによって実現されるように約0であるとしてよい。これに代えて、第1のバイアスレベルVは、0よりも絶対値が大きいとしてよい(つまり、正または負の方向により大きい)。イオンが基板146(図1A)に近接している間に第2のバイアスパルス705が供給されると、これらのイオンは基板146に誘引されて注入されるとしてよい。
【0117】
図示しているように、第1および第3のRF電力期間tp1およびtp3は、第1のバイアス期間tb1と一致するとしてよい。一方、第2のRF電力期間tp2は、第1のバイアス期間tb1および第2のバイアス期間tb2の両方と一致するとしてよい。言い換えると、第2のRF電力パルス704が平面コイルRFアンテナ126およびらせん状コイルRFアンテナ128(図1A)のうち1以上に印加されている間、第2のバイアス電圧パルス705は基板146(図1A)に印加される。図中では、第3のRF電力パルス706および第1のバイアス電圧703が同時に印加されている様子が図示されている。しかし、当業者であれば、ある程度の遅延が発生し得るもの、第3のRF電力パルス706および第1のバイアス電圧703のうち一方を、第3のRF電力パルス706および第1のバイアス電圧703のうち他方よりも後に印加し得るものと認めるであろう。
【0118】
第2のRF電力パルス704によって第2のRF電力期間tp2においてプラズマが生成されると、第2のバイアスパルス705を基板146(図1A)に印加することによって、このプラズマから基板146へとイオンが誘引される。例えば、負のバイアスVを印加することによって、正電荷イオンが誘引され、正電荷イオンが基板146に注入される。この結果、基板146および、当該基板146上に配置または成膜されている任意のその他の材料もまた、正に帯電するとしてよい。このため、アーク放電が発生するとしてよい。アーク放電は、デューティーサイクルまたは処理システム内の圧力が大きくなると、悪化するとしてよい。RF電力波形700およびバイアス電圧波形701を印加することによって、デューティーサイクルまたは圧力が大きくなったとしても、アーク放電が回避されるとしてよい。具体例を挙げると、300ワットの第2のパルス704と、600ワットの第3のパルス706とを含むRF電力波形700がアンテナ126および128(図1A)に印加され、基板146にイオンが注入される。システム100内では圧力が6mTorrとなっている。注入時間(つまり、tb2)を30μsから80μsへと大きくしたにもかかわらず、アーク放電は観察されなかった。別の例を挙げると、基板146を、システム100内の圧力が約10mTorrであるシステム内で処理した。この例では、スループットをさらに高めるべく圧力を高くした。第2および第3のパルス704および706を持つRF電力波形700は、アンテナ126および128の少なくとも一方に印加された。第2のパルス704は、電力レベルが200ワットであり、第3のパルス706は、30μsの間にわたって電力レベルが600ワットであった。注入時間が(つまり、tb2)90μsと長くなったにもかかわらず、アーク放電は観察されなかった。
【0119】
図8Aを参照すると、本開示の別の実施形態に係る、RF電力波形800および対応するバイアス電圧波形801が図示されている。本実施形態では、RF電力波形800および対応するバイアス電圧波形801が、平面コイルRFアンテナ126およびらせん状コイルRFアンテナ128のうち1以上、ならびに、基板146(図1Aを参照のこと)にそれぞれ印加され、PLAD処理で発生する損傷および欠陥を低減するとしてよい。図示しているように、RF電力波形800およびバイアス電圧波形801に含まれる複数のパルスは、振幅がさまざまな離散値を取る。しかし、利用するRF電力波形は4つ以上のパルスを持ち、振幅が離散値を取ってもよいし、取らなくてもよいと理解されたい。例えば、連続して変化する振幅を持つ波形を利用するとしてもよい。また、波形の傾斜は、線形であってもよいし、非線形であってもよい。さらに、波形が示しているのはRF電力信号の周波数ではなく、振幅であることに留意されたい。任意の適切な一の周波数または周波数群を利用して、アンテナ126および128(図1A)に電力を供給するとしてもよい。
【0120】
本実施形態では、RF電力波形800は、3つの対応するRF電力期間tp1、tp2およびtp3に印加される第1から第3のRF電力パルス802、804および806を含むとしてよい。図示されているように、第1のRF電力パルス802は、第2のRF電力パルス804より前であるとしてよく、第2の電力パルス804は、第3のRF電力パルス806より前であるとしてよい。所望の場合には、追加で第1から第3のRF電力パルス802、804および806は、この順序で供給されるとしてもよいし、または、別の順序で供給されるとしてもよい。
【0121】
第1のRFパルス802は、第1の電力レベルPRF1を持つとしてよく、第2のRF電力パルス804は、第2の電力レベルPRF2を持つとしてよく、第3のパルス806は、第3の電力レベルPRF3を持つとしてよい。本実施形態によると、第1の電力レベルPRF1は、略0であってよい。これに代えて、第1の電力レベルPRF1は、0より大きいとしてもよい。一方、第2の電力レベルPRF2は、第1の電力レベルPRF1よりも高いが、第3の電力レベルPRF3よりも低い。
【0122】
バイアス電圧波形801は、一方、第1のバイアスパルス803および第2のバイアスパルス805を含むとしてよい。第1のバイアスパルス803は、第1のバイアスレベルVであるとしてよく、第1のバイアス期間tb1で印加するとしてよい。一方、第2のバイアスパルス805は、第2のバイアスレベルVを持つとしてよく、第2のバイアス期間tb2において印加するとしてよい。本実施形態によると、第2のバイアスレベルVは、第1のバイアスレベルVよりも絶対値が大きいとしてよい(つまり、正または負の方向により大きい)。一方、第1のバイアスレベルVは、約0であるとしてよく、基板146(図1A)に供給されるバイアスをオフにすることで実現するとしてよい。これに代えて、第1のバイアスレベルVは、0よりも絶対値が大きくなるとしてよい(つまり、正または負の方向により大きい)。イオンが基板146(図1A)に近接している間に第2のバイアスパルス805が供給されると、イオンが基板146に誘引されて注入されるとしてよい。
【0123】
図示されているように、第1のRF電力期間tp1および第3のRF電力期間tp3は、第1のバイアス期間tb1と一致しているとしてよい。一方、第2のRF電力期間tp2は、第2のバイアス期間tb2と一致するとしてよい。言い換えると、第2のバイアス電圧パルス805は、第2のRF電力パルス804と同期している。第2のバイアス電圧パルス805と共に、第2のRF電力パルス804を印加した後しばらく経過すると、第1のバイアス電圧パルス803と共に、第3のRF電力パルス806が印加される。図中では、第3のRF電力パルス806および第1のバイアス電圧803を同時に印加する様子が図示されている。しかし、当業者であれば、ある程度の遅延が発生し得ること、および、第3のRF電力パルス806および第1のバイアスパルス803の一方が、第3のRF電力パルス806および第1のバイアスパルス803の他方が印加された後で印加され得ることを認めるであろう。
【0124】
動作について説明すると、基板146(図1Aを参照のこと)を、プラズマを利用するシステム100の内部に載置する。この後、供給ガスをシステム100内に導入するとしてよい。供給ガスは、1以上のドーパントガスおよび1以上の不活性ガスの混合ガスであってよい。ドーパントガスは、ホウ素(B)、リン(P)、ヒ素(As)、ゲルマニウム(Ge)、シリコン(Si)、セレン(Se)または窒素(N)を含むドーパント種、または、基板146の特性を変化させる任意のその他の種を含むとしてよい。不活性ガスは、水素(H)、酸素(O)、炭素(C)、または、任意の希ガスの種を含む不活性種を含むとしてよい。本実施形態によると、ドーパントガスは、ジボラン(B)であってよく、不活性ガスは、ヘリウム(He)であってよい。
【0125】
供給ガスをシステム100内に導入した後、第2のRF電力レベルPRF2を持つ第2のRF電力パルスを、アンテナ126および128のうち少なくとも一方に印加する(図1Aを参照のこと)。本実施形態によると、第2のRF電力レベルPRF2の振幅は、Bのイオン化エネルギーよりも高いが、Heのイオン化エネルギーよりも低いとしてよい。イオン化エネルギーは、中性分子が電子を失ってイオンになるために必要なエネルギーである。He等の不活性ガスは、Bを含むその他の種よりもイオン化エネルギーが高い。Bのイオン化エネルギーより高いがHeのイオン化エネルギーよりも低い振幅の第2のRFパルス804を印加することによって、ホウ素ベースのイオンが形成されるとしてよい。一方、生成されるHeイオンの量は、非常に少ないとしてよい。
【0126】
基板146に印加される第2のバイアスパルス805が負電圧である場合、第2のバイアスパルス805を印加することによって、正電荷のホウ素イオン、および、他のホウ素ベースの分子イオンが注入されるとしてよい。しかし、生成されるHeイオンの量は非常に少ないので、基板146に注入されるHeイオンの量もわずかに過ぎないとしてよい。
【0127】
この後、相対的に高いRF電力レベルPRF3を持つ第3のRF電力パルス806は、平面コイルRFアンテナ126およびらせん状コイルRFアンテナ128(図1Aを参照のこと)のうち1以上に印加されるとしてよい。同時に、または、略同時に、第1のバイアスパルス803を基板146に印加する。本実施形態によると、第3のRF電力パルス806の第3の電力レベルPRF3は、Heのイオン化エネルギーよりも大きいとしてよい。この期間において、追加でBがイオン化して、追加で正電荷のホウ素ベースのイオンを形成するとしてよい。また、正電荷のHeイオンが形成されるとしてよい。この結果、生成されるイオンおよび電子の量が増加するとしてよい。このように高くなった電力レベルによっても、プラズマの安定性が維持されるとしてよい。
【0128】
上述したように、正電荷イオンを基板に注入することで、基板146が正に帯電するとしてよい。バイアスがオフに制御されると(例えば、第1のバイアスパルス803の振幅が0電圧になると)、追加の正電荷イオンが基板146に注入されなくなる。これに代えて、プラズマ内の電子が基板146に誘引されて基板146に注入される。電子は、基板146を電気的に中性化する。同時に、正電荷イオンを注入する際に発生した基板146上に残っている一部の損傷を修復するとしてよい。このサイクルは、所望に応じて、繰り返し行われるとしてよい。
【0129】
P、AsおよびBを含む特定のドーパント種は、イオン注入処理後に実行されるアニーリング工程において、基板再結晶化速度を高くするとしてよい。場合によっては、最高で一桁分も高くなる効果が得られるとしてよい。しかし、O、Cおよび不活性ガス等の他の種によって、再結晶化速度が遅くなるとしてよい。Bベースのイオンを注入する際に基板146に注入されるHeイオンの量を最小限に抑えることによって、本実施形態に係る方法は、後続のアニーリング処理で発生し得る再結晶化速度を高くすることができる。また、注入処理中に発生して残った損傷は、減るとしてよい。この明細書では、注入するものとして不活性物質ではなくドーパントを選択することを開示しているが、本開示はこの実施形態に限定されない。本方法は、一の種のイオンを選択的に導入するために利用することができる。
【0130】
選択イオン注入および基板再結晶化の促進は、波形800および801を修正することによって実現されるとしてもよい。図8Bを参照すると、本開示の別の実施形態に係るRF電力波形810および対応するバイアス電圧波形811が図示されている。本実施形態では、RF電力波形810およびバイアス電圧波形811はそれぞれ、図8Aに示すRF電力波形800およびバイアス電圧波形801と同様であるとしてよい。しかし、第2のRF電力パルス814および第3のRF電力パルス816は、第2のバイアスパルス815と同期している。言い換えると、第2のRF電力パルス814および第3のRF電力パルス816は、第2のバイアスパルス815が基板146(図1Aを参照のこと)に印加されると、平面コイルRFアンテナ126およびらせん状コイルRFアンテナ128のうち1以上に順次印加される。
【0131】
本実施形態によると、図8Aに示した実施形態と比べて、第3のRF電力パルス816によってより多くのHeイオンが生成され、基板146に注入されるとしてよい。しかし、従来の一のRFパルスを利用する場合に基板に注入される量よりは少なくなるとしてよい。図8Bでは特定の波形構成を図示しているが、本開示はこれに限定されない。パルスの長さは、注入されるべき種およびその他のパラメータに基づいて、選択が可能であるとしてよい。別の実施形態によると、RF電力は、第2のバイアスパルス815の一部の間において、ディセーブルされるとしてよい。また、RF電力波形810は、第1のバイアスパルス803を印加している間はより高いRF電力レベル(PRF3)の印加が継続するように修正するとしてもよい。
【0132】
上述したように、第3のRF電力パルス806および816を印加することによってプラズマ状態を維持している間、第2のRF電力パルス804および814を印加することによって、イオンを選択的に導入するとしてよい。第2のRF電力パルス804および814の振幅は、供給ガスに含まれている種の一部分のみをイオン化するように選択されるとしてよい。一方、第3のRF電力パルス806および816はさらに、基板146内に残っている損傷の修復を支援するとしてよい。電力レベルは、プラズマに含まれるさまざまな種のイオン化エネルギーに基づいて選択することができる。このように、各電力レベルの振幅および長さは、プラズマの安定性を保証しつつ任意のタイミングにおけるプラズマ内のイオン組成を修正するように変更することができる。RF電力パルスとバイアスパルスとを同期させることによって、注入される種の選択および濃度を修正するとしてよい。こうすることで、基板内で発生する損傷を軽減することができる。他の実施形態によると、追加で電力レベルを利用することができる。この場合には、各電力レベルは、プラズマ内の一の特定の種をイオン化するとしてよい。
【0133】
尚、図8Aおよび図8Bは、相対的に低い電力レベルが、相対的に高い電力レベルの直前にある様子を示していることに留意されたい。これは、要件ではない。例えば、相対的に高い電力レベルが相対的に低い電力レベルより先にあり、安定したプラズマを生成するとしてもよい。他の実施形態によると、電力は、相対的に低い電力レベルと相対的に高い電力レベルとの間では、ディセーブルされるとしてもよい。
【0134】
図9Aおよび図9Bを参照すると、本開示の別の実施形態に係るRF電力波形900および910、ならびに、対応するバイアス電圧波形901および911が図示されている。本実施形態によると、RF電力波形900および910は、平面コイルRFアンテナ126およびらせん状コイルRFアンテナ128(図1Aを参照のこと)のうち1以上に印加されるとしてよい。一方、対応するバイアス電圧波形901は、基板146(図1Aを参照のこと)に印加されるとしてよい。この処理において、プラズマ内の電子温度を制御するとしてよい。
【0135】
図9Aを参照すると、RF波形900は、第1および第2のRF電力期間tp1およびtp2において印加される第1および第2のRF電力パルス902および904を含むとしてよい。図示されているように、第1のRF電力パルス902は、第2のRF電力パルス904より前であるとしてよい。所望される場合には、追加で第1および第2のRF電力パルス902および904を、この順序、または、別の順序で供給するとしてよい。
【0136】
第1のRFパルス902は、第1の電力レベルPRF1であるとしてよく、第2のRF電力パルス904は、第2の電力レベルPRF2であるとしてよい。本実施形態によると、第1の電力レベルPRF1は、0より大きいとしてよい。一方、第2の電力レベルPRF2は、第1の電力レベルPRF1よりも大きいとしてよい。第1のRF電力パルス902で生成するプラズマと比較すると、第2のRF電力パルス904で生成するプラズマは、特性が異なるとしてよい。例えば、第2のRF電力パルス904で生成するプラズマは、イオン密度Ni1および電子密度Ne1という特性を持つとしてよく、イオン密度Ni1および電子密度Ne1は、第1のRF電力パルス902で生成されるプラズマのNi2およびNe2よりも高いとしてよい。また、第2のRF電力パルス904で生成するプラズマの電子温度Te1が、第1のRF電力パルス902で生成するプラズマの電子温度Te1よりも高いとしてよい。
【0137】
バイアス電圧波形901は、一方、第1および第2のバイアスパルス903および905を含むとしてよい。第1のバイアスパルス903は、第1のバイアスレベルVであるとしてよく、第1のバイアス期間tb1において印加される。一方、第2のバイアスパルス905は、第2のバイアスレベルVであるとしてよく、第2のバイアス期間tb2において印加される。本実施形態によると、第2のバイアスレベルVは、第1のバイアスレベルVよりも絶対値が高いとしてよい(つまり、正または負の方向により大きい)。一方、第1のバイアスレベルVは、約0であるとしてよく、または、基板146(図1A)に供給されるバイアスをオフに制御することによって実現される接地電圧であるとしてもよい。これに代えて、第1のバイアスレベルVは、0よりも高い絶対値であるとしてよい(つまり、正または負の方向により大きい)。イオンが基板146(図1A)に近接している間に第2のバイアスパルス905が供給されると、当該イオンは基板146に誘引されて注入されるとしてよい。
【0138】
図示しているように、第2のRF電力パルス904は、第1のバイアス期間tb1において印加されるとしてよい。一方、第1のRF電力パルス902は、第2のバイアス期間tp2において印加されるとしてよい。言い換えると、第2のRF電力パルス904は、基板146に第1の電圧レベルVで印加されると、印加される。一方、第1のRF電力パルス902は、基板146に第2の電圧レベルVが印加されると、印加される。

【0139】
本実施形態では、波形900および901は、プラズマ内の粒子(例えば、イオン、電子、中性子、ラジカル等)の組成を最適化するように印加されるとしてよい。例えば、第1の電子密度Ne1およびイオン密度Ni1、ならびに、第1の電子温度Te1を持つプラズマは、第1のRF電力パルス902を印加している期間において、実現するとしてよい。第2のRF電力パルス904を印加している間、イオン密度N、電子密度Nの値は、イオン密度Ni2、電子密度Ne2および電子温度Te2よりも高く値まで増加するとしてよい。一方、ラジカルの密度は小さくなるとしてよい。追加で第1のRF電力パルス902を印加すると、電子密度Nおよびイオン密度Nの値、ならびに、電子温度Tは、第1の電子密度Ne1および第1のイオン密度Ni1、ならびに、第1の電子温度Te1に戻ってしまう場合がある。第1のRF電力パルス902および第2のRF電力パルス904の電力レベルを最適化し、第1のRF電力パルス902および第2のRF電力パルス904を連続して印加することによって、N、N、およびTの値、そして、イオンおよび中性子の組成も最適化されるとしてよい。
【0140】
動作について説明すると、基板146(図1Aを参照のこと)をプラズマを利用するシステム100の内部に載置する。この後、供給ガスをシステム100内に導入するとしてよい。供給ガスは、1以上のドーパントガスおよび1以上の不活性ガスの混合ガスであってよい。ドーパントガスは、ホウ素(B)、リン(P)、ヒ素(As)、または、基板146の電気的特性を変化させる任意のその他の種を含むドーパント種を含むとしてよい。不活性ガスは、酸素(O)、炭素(C)、または、任意のその他の種の希ガスを含む不活性種を含むとしてよい。本実施形態では、ドーパントガスはジボラン(BF)であるとしてよい。
【0141】
p1において、一価の非解離の分子イオン(例えば、BF)を優先的にプラズマ内で生成するとしてよい。一方、より多くのフラグメント化された分子イオン(例えば、BF++、BF+++等)をtp2で生成するとしてよい。tp1において第2のバイアスパルス905を印加することによって、第1のRFパルス902を印加すると、基板146は、より多くの一価の非解離の分子イオンで注入または処理が行なわれるとしてよい。この結果、処理が最適化されるとしてよい。例えば、注入イオンの深さプロフィールを、改善およびより良く制御することができるとしてよい。図示されていないが、本開示は、所望されるのであれば、相対的に高い電力RFレベルPRF2の間にバイアス電圧を印加することによって、より多くのフラグメント化した分子イオンで基板を処理するというケースを除外するものではない。イオン注入を最適化することに加え、波形900および901は、エッチング処理の期間に印加されると、エッチング選択性を向上させるとしてよい。成膜処理を行うと、成膜速度も最適化されるとしてよい。
【0142】
また、2つの第2のRF電力パルス904の間で第1のRF電力パルス902を印加すると、プラズマがより均一化および安定化するとしてよい。従来のパルス状RF電力波形では、振幅が0または電力を持たない電力パルスを2つのRF電力パルスの間で印加する場合があった。振幅が0のRFパルスを印加している間、プラズマの「残光」が発生する可能性があるとしてよい。この残光の間、電子温度Tは、はるかに低いレベルまで低減するとしてよく、プラズマシースは崩壊するとしてよい。したがって、電子密度およびイオン密度、ならびに、電子温度が急激に増減し、プラズマの安定性および均一性が劣化することがある。0よりも大きい電力レベルの第1のRF電力パルス902を、相対的に高い電力レベルの2つの第2のRF電力パルス904の間において印加することによって、より安定したプラズマが維持され得る。また、イオンおよび中性子の組成は、プラズマ内のイオンの濃度を減らすことなく最適化され得る。
【0143】
電子温度Tを制御する方法として他の方法も考えられる。図9Bを参照すると、RF波形910は、対応する第1から第4のRF電力期間tp1、tp2、tp3およびtp4において印加される第1から第4のRF電力パルス912、914、916および918を含むとしてよい。図示しているように、第1のRF電力パルス912が第2のRF電力パルス914より前であり、第2のRF電力パルス914が第3のRF電力パルス916より前であり、第3のRF電力916が第4のRF電力パルス918より前であるとしてよい。
【0144】
本実施形態において、第1のRF電力パルス912の電力レベルは、アンテナ126および128に結合されている電源130をオフに制御することによって実現されるように、0であってよい。一方、第2のRF電力パルス914は、第2の電力レベルPRF2であってよく、第3のRF電力パルス916は、第3の電力レベルPRF3であってよく、第4のRF電力パルス918は、第4の電力PRF4であってよい。第2の電力レベルPRF2は、第3の電力レベルPRF3よりも低いとしてよく、第3の電力レベルPRF3は、第4のRF電力パルス918よりも低いとしてよい。第1の電力パルス912を非常に短時間だけ印加することによって、プラズマを不安定化することなく電子温度Tを制御するとしてよい。電子温度を昇降させるべくさまざまな電力レベルが利用される他のケースも考えられ、本開示の範囲内であると理解されたい。
【0145】
以下では、アンテナ126および128のうち少なくとも一方および基板146に印加される波形の他の例を説明する。上述した実施形態では主に、イオン注入を実行するためにさまざまな波形を印加する方法を中心に説明していたが、以下で説明する方法は、他のプラズマ処理に関連する。具体的には、以下の説明では、説明を明確且つ簡潔にするべく、エッチングおよび/または成膜に重点を置く。しかし、本開示は、以下で説明する方法をイオン注入に適用することも除外しない。
【0146】
多くのプラズマ処理動作において、低温で基板をコンフォーマルに処理することが好ましい。コンフォーマル処理は、基板の表面であって角度または向きが異なる複数の表面を均一に処理することと定義されるとしてよい。向きが異なる複数の表面を持つ基板の例として、水平方向および垂直方向に延伸する表面を持つFinFET構造およびデュアルダマシン構造がある。このような構造に対してイオン注入、エッチングまたは成膜を行う場合、向きが異なる複数の面に均一に注入、エッチングまたは成膜を行うことが望ましい。
【0147】
PECVD処理のコンフォーマル性は、低いRF電力/低いプラズマ密度の動作点で動作することによって、改善され得る。低イオン束および低成膜速度を組み合わせることによって、膜の形成は3D構造での拡散速度と同等の速度で進行するので、コンフォーマル性が改善する。しかし、RF電力を低くすると通常、プラズマおよび処理が不安定になってしまう。複数のRF電力レベルを利用することによって、相対的に高い電力レベルのパルスを利用してプラズマを安定化させることができる。これによって、プロセスウィンドウが広くなる。
【0148】
また、コンフォーマル成膜処理は、基板上にイオンを集束させるプラズマシースがない場合の方が、うまくいく。このように集束すると、全てのイオンが基板に向って同一角度で方向付けられるので、コンフォーマル成膜が難しくなる。解決方法の1つとしては、プラズマシースが無い中で成膜を実行する方法がある。言い換えると、RFアンテナに電力が印加されていない間に基板にバイアスをかける。上述したように、この期間は、プラズマ残光と呼ばれる。この方法の主な欠点は、プラズマ残光の間で、イオン密度および電子密度が低減し、処理速度が遅くなるので、処理が実用的でなくなってしまうことである。
【0149】
一実施形態によると、複数のRF電力レベルを持つRF電力波形を利用して、上述した処理速度を改善することができる。高い電力レベルを利用することで、生成するイオンおよび電子を多くなる。一部のイオンおよび電子は、プラズマ残光でも残る。
【0150】
図10Aから図10Dを参照すると、本開示の別の実施形態に係るRF電力波形1000および対応するバイアス電圧波形1001が図示されている。本実施形態によると、RF電力波形1000および対応するバイアス電圧波形1001は、平面コイルRFアンテナ126およびらせん状コイルRFアンテナ128のうち1以上、ならびに、基板146に印加されるとしてよい。
【0151】
図10Aを参照すると、RF電力波形1000は、RFアンテナ126および128のうち少なくとも一方に、tp1、tp2およびtp3において、印加される第1から第3のRF電力パルス1002、1004および1006を含む。第1のRF電力パルス1002は、第2のRF電力パルス1004より前であり、第2のRF電力パルス1004は、第3のRF電力パルス1006より前である。所望される場合には、追加で第1から第3のRF電力パルス1002、1004および1006をこの順序で供給するとしてよい。
【0152】
第1のRFパルス1002は、第1の電力レベルPであり、第2のRF電力パルス1004は、第2の電力レベルPであり、第3のパルス1006は、第3の電力レベルPであるとしてよい。本実施形態によると、第1の電力レベルPの値は、ゼロであってもよいし、ゼロより大きくてもよい。一方、第2の電力レベルPは、第1の電力レベルPよりも高いが、第3の電力レベルPよりも低いとしてよい。
【0153】
第2および第3のRF電力期間tp2およびtp3において、第2および第3のRF電力パルス1004および1006が印加されると、プラズマが生成されるとしてよい。第2のRF電力パルス1004を印加して生成したプラズマに比べると、第3のRF電力パルス1006を印加して生成したプラズマは、特性が異なるとしてよい。例えば、第3のRF電力パルス706で生成したプラズマは、イオンおよび/または電子の密度が大きいとしてよい。したがって、第1から第3のパルス1002、1004および1006を印加すると、波形の電力レベルは、P、P、Pの順序で増加する。パルスをこの順序で繰り返し印加すると、電力レベルは、第3の電力レベルPから第1の電力レベルPへと低減するとしてよい。
【0154】
バイアス電圧波形1001は、一方、第1および第2のパルス1003および1005を含むとしてよい。第1のバイアスパルス1003は、第1のバイアスレベルVであるとしてよく、第1のバイアス期間tb1において基板146(図1Aを参照のこと)に印加する。第2のバイアスパルス1005は、第2のバイアスレベルVであるとしてよく、第2のバイアス期間tb2において基板146に印加される。本実施形態によると、第2のバイアスレベルVの絶対値は、第1のバイアスレベルVの絶対値よりも高いとしてよい。図示しているように、第2のバイアスパルス1005のパルス幅tb2は、第3のRF電力パルス1006のパルス幅tp3よりも大きいとしてよい。
【0155】
図10Aに図示しているように、第2および第3のRF電力パルス1004および1006は、プラズマを生成するべく、コイル126および128のうち少なくとも一方に印加されている。tp3において、第3のRF電力パルス1006が印加されると、電力レベルがPからPに増加すると、プラズマ密度は増加するとしてよい。この後、第1のRFパルス1002が印加され、電力レベルがP3からP1へと低減する。tp1において、P1が略ゼロであり、印加されるRF電力がゼロまたは最小限である場合、プラズマ内のプラズマシースは、少なくなるか、または、無くなるとしてよい。このタイミングで、第2のバイアスパルス1005を基板146(図1A)に印加する。プラズマ「残光」で残っているイオンは、基板に誘引されるとしてよい。第2のバイアスパルス1005が負電荷である場合、第2および第3のRF電力パルス1004および1006を印加することによってプラズマ内に残った正電荷粒子は、基板146に向って誘引されるとしてよい。第2のバイアスパルス1005が正電荷である場合、プラズマ内に残っている負電荷のイオンおよび電子を含む負電荷粒子が基板146に向って誘引されるとしてよい。第2および第3のRF電力パルス1004および1006の後で第2のバイアスパルス1005を印加することによって、プラズマシースは無くなるとしてよい。基板146近傍のイオンは、集束されなくなり、よりランダムに分散することになる。このサイクルは、必要に応じて、繰り返すことができる。
【0156】
本開示では、RF電力パルス波形およびバイアス電圧波形を、さまざまな方法で修正するとしてよい。例えば、複数の波形の同期を修正するとしてよい。図10Bから図10Dを参照すると、図10Aに図示したRF電力波形1000およびバイアス電圧波形1001の同期をどのように修正するかが図示されている。図10Bから図10Dに図示した各RF電力波形は、互いに同一であり、図10Aに図示した波形と同一である。また、図10Bから図10Dに図示した各バイアス電圧波形も、互いに同一であり、図10Aに図示した波形と同一である。しかし、RF電力波形およびバイアス電圧波形の同期が異なるとしてよい。
【0157】
図10Bにおいて、バイアス電圧波形1001の第2のバイアスパルス1005は、第3のRF電力パルス1006と同期している。しかし、第2のバイアスパルス1005は、第2のRF電力パルス1004とは同期していない。このように、第2のバイアス電圧パルス1005は、最も高いRF電力P3の第3のRF電力パルス1006が印加されている間、印加される。第2のバイアス電圧パルス1005は、第2のRF電力パルス1004が印加されると、印加されない。
【0158】
図10Cでは、第2のバイアス電圧パルス1005は、第2および第3のRF電力パルス1004および1006と同期している。図10Dにおいて、第2のバイアス電圧パルス1005は、第2のRF電力パルス1004とのみ同期している。
【0159】
図11Aから図11Eを参照すると、本開示の別の実施形態に係るRF電力波形1100および対応するバイアス電圧波形1101が図示されている。この実施形態によると、RF電力波形1100は、第1から第3のRF電力パルス1102、1104および1106を含むとしてよい。第1から第3のRF電力パルス1102、1104および1106を追加で、この順序で、波形1100において供給するものと理解されたい。一方、バイアス電圧波形1101は、第1および第2のバイアスパルス1103および1105を含むとしてよい。第1および第2のバイアスパルス1103および1105を追加で、この順序で、波形1101で供給するとしてよいと理解されたい。
【0160】
図10Aに示すRF電力波形1000に比べると、本実施形態に係るRF電力波形は、多くの点で類似している。例えば、パルスの順序は、図10Aに図示したRF電力波形1000におけるパルスの順序と同一であるとしてよい。また、パルス1102、1104および1106の相対的な電力レベルも、図10Aに図示したパルス1002、1004および1006の相対的な電力レベルと同様であるとしてよい。一方、バイアス波形1101のバイアスパルス1003および1005の相対的な電力レベルおよび順序は、図10Aに示したバイアスパルス1003および1005の相対的な電力レベルと同様であるとしてよい。
【0161】
しかし、第3のRF電力パルス1106のパルス幅は、異なるとしてよい。例えば、第3のRF電力パルス1106のパルス幅tb3は、図10Aに示した第3のRF電力パルス1006のパルス幅よりも大きいとしてよい。第2のバイアス電圧パルス1105のパルス幅tb2に比べると、本実施形態に係る第3のRF電力パルス1106のパルス幅tp3の方が大きいとしてよい。
【0162】
図11Bから図11Dでは、同一のRF電力波形および同一のバイアス電圧波形を図示している。図11Bから図11Dに図示している各RF電力波形は、互いに同一であり、図11Aに図示しているRF波形とも同一である。図11Bから図11Dに図示している各バイアス電圧波形は、互いに同一であり、図11Aに図示しているバイアス電圧波形と同一である。一点異なるのは、バイアス電圧パルス1103および1105と相対的に決まる、RF電力パルス1102、1104および1106の同期であるとしてよい。
【0163】
図11Bでは、第3のRF電力パルス1106が、第2のバイアスパルス1105と同期しており、両方のパルスが同時または略同時に印加されている。図11Cでは、第2のバイアスパルス1105が、第2のRF電力パルス1104、および、第3のRF電力パルス1106の一部と同期している。図11Dでは、第2のバイアスパルス1105が、第2のRF電力パルス1104と同期しているが、第3のRF電力パルス1106とは同期していない。図11Eでは、第2のバイアスパルス1105は、第1のRF電力パルス1102と同期している。図示していないが、第1のRF電力パルス1102と同期している第1のRF電力パルス1102は、第3のRF電力パルス1106の後に印加されていると理解されたい。これらの波形を利用することで、プラズマ残光中のイオンは、基板(図1Aを参照のこと)を処理するために利用されるとしてよい。
【0164】
図12Aから図12Dを参照すると、本開示の別の実施形態に係るRF電力波形1200および対応するバイアス電圧波形1201が図示されている。本実施形態によると、RF電力波形1200は、第1から第3のRF電力パルス1202、1204および1206を含むとしてよい。追加で、第1から第3のRF電力パルス1202、1204および1206は、この順序で、波形1200において供給され得ると理解されたい。一方で、バイアス電圧波形1201は、第1および第2のバイアスパルス1203および1205を含むとしてよい。追加で、第1および第2のバイアスパルス1203および1205は、この順序で、波形1101において供給され得ると理解されたい。
【0165】
本実施形態によると、第1のRF電力パルス1202の電力レベルは、第2および第3の電力パルス1204および1206の電力レベルよりも高い。また、第2のRF電力パルス1204の電力レベルは、第3のRF電力パルス1206の電力レベルよりも高い。このように、第2のRF電力パルス1204は、最も高い電力レベルP3の第1のRF電力パルス1206よりも後に印加される。第2のRF電力パルス1204は、一方で、最も低い電力レベルP3の第3のRF電力パルス1206よりも前に印加される。
【0166】
電圧波形1201の第2の電圧パルス1205は、パルス幅がtb2であり、電圧レベルがVである。先に述べた実施形態の第1のバイアスパルスと同様に、第1のバイアスパルス1203の電圧レベルの絶対値は、0であってもよいし、0より大きいとしてもよい(例えば、正または負の方向により大きい)。
【0167】
図12Aに図示しているように、第2のバイアスパルス1205は、最も低い電力レベルPの第3のRF電力パルス1206と同期している。一方で、相対的に高いRF電力レベルPおよびPの第1および第2のRF電力パルス1202および1204は、第1のバイアスパルス1203と一致しているとしてよい。
【0168】
図12Bから図12Dでは、同一のRF電力波形および同一のバイアス電圧波形を図示している。図12Bから図12Dに示す各RF電力波形は、互いに同一であり、図12Aに図示したRF波形と同一である。図12Bから図12Dに図示した各バイアス電圧波形は、互いに同一であり、図12Aに図示したバイアス電圧波形と同一である。図12Aから図12Dに示す波形の相違点として一つ挙げられるのは、バイアス電圧パルス1203および1205と相対的に決まる、RF電力パルス1202、1204および1206の同期に関して見られる相違点である。
【0169】
図12Bでは、第2のバイアスパルス1205は、第2のRF電力パルス1204、および、第3のRF電力パルス1206の一部分と同期している。図12Cでは、第2のバイアスパルス1205は、第2のRF電力パルス1204、および、第1のRF電力パルス1202の一部分と同期している。図12Dでは、第2のバイアスパルス1205は、第1のRF電力パルス1202と同期している。
【0170】
図13Aから図13Eを参照すると、本開示の別の実施形態に係るRF電力波形1300および対応するバイアス電圧波形1301が図示されている。本実施形態によると、RF電力波形1300は、第1から第3のRF電力パルス1302、1304および1306を含むとしてよい。追加で第1から第3のRF電力パルス1302、1304および1306を、この順序で、波形1300で供給し得ると理解されたい。一方、バイアス電圧波形1301は、第1および第2のバイアスパルス1303および1305を含むとしてよい。追加で、第1および第2のバイアスパルス1303および1305は、この順序で、波形1301において供給され得ると理解されたい。
【0171】
本実施形態によると、第1のRF電力パルス1302の電力レベルは、第2および第3の電力パルス1304および1306の電力レベルよりも高い。また、第2のRF電力パルス1304の電力レベルは、第3のRF電力パルス1306の電力レベルより低い。このように、電力レベルが最も低いRF電力パルスは、最も高い電力レベルP3の第1の電力パルス1302と、中間の電力レベルPの第3のRF電力パルス1306との間に配置される。図10Aから図10D図11Aから図11Eおよび図12Aから図12Dに示すRF電力波形の電力レベルと同様に、最も低い電力レベルのRFパルスの電力レベルは、ゼロ以上であるとしてよい。
【0172】
電圧波形1301の第2の電圧パルス1305は、パルス幅がtb2で、電圧レベルはVである。先に述べた実施形態の第1のバイアスパルスと同様に、第1のバイアスパルス1203の電圧レベルの絶対値は、0以上であってよい(例えば、正または負の方向により大きい)。
【0173】
図13Aに示すように、第2のバイアスパルス1305は、中間電力レベルPの第3のRF電力パルス1306と同期している。一方で、RF電力レベルがP3である第1のRF電力パルス1302およびP1である第2のRF電力パルス1304はそれぞれ、第1のバイアスパルス1303と一致するとしてよい。
【0174】
図13Bから図13Eでは、同一のRF電力波形および同一のバイアス電圧波形を図示している。図13Bから図13Eに示す各RF電力波形は、互いに同一であり、図13Aに示すRF波形と同一である。図13Bから図13Dに示す各バイアス電圧波形は、互いに同一であり、図13Aに示すバイアス電圧波形と同一である。図13Aから図13Eに示す波形に見られる相違点の1つとしては、バイアス電圧パルス1303および1305と相対的に決まる、RF電力パルス1302、1304および1306の同期に見られる相違点が挙げられるとしてよい。
【0175】
図13Bでは、第2のバイアスパルス1305はそれぞれ、最も低いRF電力P1の第2のRF電力パルス1204、および、中間RF電力Pの第3のRF電力パルス1206の一部分と一致している。図13Cにおいて、第2のバイアスパルス1305は、第2のRF電力パルス1304、および、第1のRF電力パルス1302の一部と一致している。図13Dおよび図13Eにおいて、第2のバイアスパルス1305は、第1のRF電力パルス1302と一致している。
【0176】
図14Aから図14Eを参照すると、本開示の別の実施形態に係るRF電力波形1400および対応するバイアス電圧波形1401が図示されている。この実施形態によると、RF電力波形1400は、第1から第3のRF電力パルス1402、1404および1406を含むとしてよい。追加で第1から第3のRF電力パルス1402、1404および1406は、この順序で、波形1400において供給され得ると理解されている。一方で、バイアス電圧波形1401は、第1および第2のバイアスパルス1403および1405を含むとしてよい。追加で第1および第2のバイアスパルス1403および1405を、この順序で、波形1301において供給され得ると理解されたい。
【0177】
図13Aに示したRF電力波形1300のRF電力パルス1302、1304、1306に比べて、パルス1402、1404および1406はそれぞれ、相対的に同じ電力レベルであるとしてよい。このように、第1のRF電力パルス1402の電力レベルは、第2および第3の電力パルス1404および1406の電力レベルよりも高い。また、第2のRF電力パルス1404の電力レベルは、第3のRF電力パルス1406の電力レベルより低い。このように、最も低い電力レベルのRF電力パルスは、最も高い電力レベルP3の第1の電力パルス1402と、中間電力レベルPの第3のRF電力パルス1306との間に配置される。図10Aから図10D図11Aから図11Eおよび図12Aから図12Dに示すRF電力波形の電力レベルと同様に、最も低い電力レベルのRFパルスの電力レベルは、ゼロ以上であってよい。
【0178】
電圧波形1301の第2の電圧パルス1305は、パルス幅がtb2であり、電圧レベルがVである。先に述べた実施形態の第1のバイアスパルスと同様に、第1のバイアスパルス1203の電圧レベルの絶対値は、0以上であるとしてよい(例えば、正または負の方向により大きい)。
【0179】
図14Aに示すRF電力波形1400のパルスと、図13Aに示すRF電力波形のパルスとの相違点として1つ挙げられるのは、第2のRFパルス1404のパルス幅tp2は、第2のバイアスパルス1405のパルス幅tb2よりも大きい点である。
【0180】
図14Aに示すように、第2のバイアスパルス1405は、最も低い電力レベルPの第2のRF電力パルス1404と一致する。一方で、RF電力レベルがPである第1のRF電力パルス1402およびPである第3のRF電力パルス1406はそれぞれ、第1のバイアスパルス1403と一致するとしてよい。
【0181】
図14Bから図14Eでは、同一のRF電力波形および同一のバイアス電圧波形を図示している。図14Bから図14Eに示す各RF電力波形は、互いに同一であり、図14Aに示すRF波形と同一である。図14Bから図14Dに示す各バイアス電圧波形は、互いに同一であり、図14Aに示すバイアス電圧波形と同一である。図14Aから図14Eに示す波形にみられる相違点の1つとして挙げられるのが、バイアス電圧パルス1403および1405と相対的に決まる、RF電力パルス1402、1404および1406の同期で見られる相違点である。
【0182】
図14Bでは、第2のバイアスパルス1405は、第2のRF電力パルス1404と一致している。図14Cでは、第2のバイアスパルス1405は、第1のRF電力パルス1402の一部分、および、第2のRF電力パルス1404の一部分と一致している。図14Dにおいて、第2のバイアスパルス1405は、第1のRF電力パルス1402と一致している。そして、図14Eでは、第2のバイアスパルス1405は、第3のRF電力パルス1406、および、第1のRF電力パルス1402の一部分と同期しているとしてよい。
【0183】
本明細書で示す波形構成は、ドーピングに加えて、エッチング処理にも利用され得る。例えば、エッチング速度は通常、プラズマの化学成分によって制御される。このため、アクティブなラジカル種の濃度、圧力、電子温度、および、プラズマ密度を変化させて、エッチングの速度、選択性、均一性、および/または、エッチングで形成されるフィーチャのプロフィールを変化させることが有益であるとしてよい。上述したように、RFアンテナに印加される電力レベルを変更することで、イオン化される種、イオンおよび電子の数、電子温度およびプラズマ密度に影響が出る。このため、上述したマルチセットポイントRF生成器を利用して、化学エッチング処理に関連付けられているさまざまなパラメータを制御するとしてよい。
【0184】
<均等例>
本開示は、添付図面に図示する実施形態例を参照しつつ詳細に説明した。本開示はさまざまな実施形態および例に基づき説明したが、本教示内容は開示した実施形態に限定されるものではない。逆に、本開示は、当業者が想到するであろうさまざまな変更例、変形例および均等例を含むものである。当業者であれば、本明細書の教示内容に基づき、他の利用分野と同様に、さらなる実施例、変形例および実施形態が存在することを認めるであろう。これらについても、本明細書で説明する本開示の範囲内であるとする。例えば、本開示に係るプラズマ処理方法は任意の種類のプラズマ源と共に利用され得るものと理解されたい。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A-3B】
図3C
図4A-4B】
図4C
図5A-5B】
図5C
図6
図7
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b
図10c
図10d
図11a
図11b
図11c
図11d
図11e
図12a
図12b
図12c
図12d
図13a
図13b
図13c
図13d
図13e
図14a
図14b
図14c
図14d
図14e