【実施例】
【0030】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。なお、実験に際して当該技術分野の教科書等(例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual (3 Vol. Set) ;Cold Spring Harbor Laboratory Press)を適宜参照してもよい。
不織布の製造
ポリ乳酸(フナコシ、Poly (L−Lactic Acid) 重量平均分子量300,000)を、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール(HFIP):ジクロロメタン(DM)=8:2の混合溶液に溶解し、表1に示す各ポリ乳酸溶液を10gずつ調製した。調製したポリ乳酸溶液をシリンジ(Henke SASS WOLF、5mL)に充填し、針(テルモ、ノンベベル針21G1.1/2)をシリンジに装着して、エレクトロスピニング装置にセットした。シリンジからターゲットとなるアースとの距離を10cmとし、印加電圧10kVにて、アースに向けポリ乳酸を噴霧し(噴霧量0.6μL/sec、噴霧時間3時間)、各不織布を作成した。表1の通り、ポリ乳酸溶液濃度を変えて各不織布(不織布A〜D)を作成した。
【0031】
【表1】
【0032】
不織布の物性評価
以下の手順により、上記4種の不織布(不織布A〜D)の厚み、見かけ密度、空隙率(%)、ポアサイズ及び各不織布を構成する繊維の繊維径を測定した。
<厚み、見かけ密度、空隙率>
各不織布をそれぞれ長方形に切断(約4cm
2程度)し、測定サンプルとした。当該測定サンプルの重量を測定した。さらに当該測定サンプルの縦及び横の長さをノギスで測定した。また、当該測定サンプルの厚みを、当該サンプルの切断面の電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジー、S−3200N,S−3000N)画像から求めた。そして、縦、横、厚みの長さを乗じて体積(cm
3)を求めた。なお、厚みは、20箇所の測定値の平均値を用いた。
【0033】
サンプル重量と体積から、かさ密度を次の式により求めた。
【0034】
見かけ密度(g/cm
3)=サンプル重量(g)/サンプル体積(cm
3)
【0035】
さらに、求めた見かけ密度値から、次の式により空隙率を求めた。なお、次式の“原料密度”は、用いたポリ乳酸の密度(JIS R1620で測定)であり、具体的には1.26g/cm
3である。
【0036】
空隙率(%)={1−(見かけ密度/原料密度)}×100
【0037】
<平均ポアサイズ>
各不織布を直径2.5cmにカットし、プロピレン,1,1,2,3,3,3酸化ヘキサフッ素(商品名「Galwick」)に浸した。そして、ポアサイズをcapillary flow porometer(Porous Materials Inc、CFP-1200-AEL)を用いてハーフドライ法(ASTM E1294−89)により測定した。
【0038】
<平均繊維径>
走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジー、S−3400N)を用いて各不織布断面を撮影し、500倍の電顕撮影映像からImage J(ver.1.43u)(NIH開発の画像処理ソフトフェア)により繊維径を測定した。繊維50本の繊維径の平均値を、各不織布の平均繊維径とした。
【0039】
以上の物性評価の結果を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
不織布の細胞増殖性評価
<細胞培養>
各評価サンプル(上記不織布A〜D)を、48穴シャーレ(住友ベークライト(株)、SUMILON、MS−80480)の底面と同じ大きさにカットし、48穴シャーレの底に設置した。評価サンプルをペニシリンカップ(ステンレス管)で押さえ、10%FBS/MEM培地(抗生物質とグルタミン酸を加えた10%FBS/MEM培地、以下10%FBS/MEM培地)を500μL加え湿らせた。プレート遠心機にて5min遠心した(2500rpm、室温)。減圧脱気し、5min遠心(2500rpm、室温)した。さらに200μLの10%FBS/MEM培地を加え、37℃、5%CO
2インキュベーター内で、1hr以上インキュベートした。培地を500μL吸い取り廃棄した。事前に培養したMG−63(由来:ヒト骨肉腫、ヒューマンサイエンス研究資源バンク、Lot.05262004)を1.6×10
5cells/mLとなるように10%FBS/MEM培地に懸濁し、100μLずつ各wellに播種した(1.6×10
4cells/well)。5時間放置した後、200μLの10%FBS/MEM培地を加え、培養を開始した。培養5時間後、3日後、8日後のサンプルを細胞増殖性評価に使用した。細胞浸潤性評価には、5時間後のサンプルを取り出したシャーレを用いた。
【0042】
<細胞増殖性評価>
既定の日数培養した細胞が付着した各評価サンプルを取り出し、それぞれPBS(リン酸緩衝生理食塩水)の入ったシャーレに加えた。PBSを含んだ状態の重量を測定し、乾燥重量とPBSを含んだ状態の評価サンプル重量から吸水量(PBSを含んだ状態の評価サンプル重量から、評価サンプルの実験に供される前の乾燥重量(シャーレ底面と同じ大きさにカットした時点で測定)を減じた量)を求めた。
【0043】
サンプルの吸水量とTE緩衝液(Tris/Tris-HCl 10 mM、 EDTA 1mM)を合わせた溶液量が700μLとなるようにTE緩衝液を各シャーレに加えた。2回凍結融解(−80℃で凍結させ、室温で融解させる操作を2回繰り返した)を行い、その後超音波処理を30分行って、細胞を破砕した。TE緩衝液中にDNAを溶出させた100μLの細胞溶解液(凍結融解及び超音波処理を行って得た細胞破砕液)を96穴蛍光測定用プレート(Nunc black microwell、cat.137101)に加え測定サンプルとした。
【0044】
ピコグリーン(インビトロジェン)をTE緩衝液で希釈(100μLを20mLに希釈)し、測定サンプルに100μL加え、5分間、室温でインキュベートした。蛍光プレートリーダー(Molecular devices spectra Max gemin XPS)を用い、励起光480nm・測定波長520nmで、蛍光強度を測定した。ピコグリーンは、2本鎖DNA特異的染色剤であるため、得られた蛍光強度はDNA量(ひいては細胞数)を反映する。そして、DNA量は細胞増殖量を反映する。従って、得られた蛍光強度は、細胞増殖量を反映する。結果を
図2に示す。
【0045】
<細胞浸潤性(通過性)評価>
細胞の浸潤性の評価として、培養5時間後の不織布を取り出した後のシャーレに付着する細胞数をDNAの蛍光強度として定量した。具体的には、次のようにして行った。すなわち、不織布を取り出した後のシャーレを500μLのPBSにて洗浄した。50μLの0.25%EDTA−トリプシン液(0.25%トリプシン、1mM EDTA)を加え、細胞をシャーレより剥がした。得られた細胞にPBS150μLとTE緩衝液を500μLとを加え細胞回収液とした。2回凍結融解(−80℃で凍結させ、室温で融解させる操作を2回繰り返した)を行い、その後超音波処理を30分行って、細胞を破砕した。TE緩衝液中にDNAを溶出させた100μLの細胞溶解液(凍結融解及び超音波処理を行って得た細胞破砕液)を96穴蛍光測定用プレート(Nunc black microwell、cat.137101)に加え、5分間室温でインキュベートして測定サンプルとした。
【0046】
ピコグリーン(インビトロジェン)をTE緩衝液で希釈(100μLを20mLに希釈)し、測定サンプルに100μL加え、5分間、室温でインキュベートした。蛍光プレートリーダー(Molecular devices spectra Max gemin XPS)を用い、励起光480nm・測定波長520nmで、蛍光強度を測定した。結果を
図3に示す。
【0047】
また、さらに、以下のようにしてギムザ染色を行うことによっても、細胞の浸潤性を検討した。
【0048】
各評価サンプル(不織布A〜D)を48穴シャーレ(住友ベークライト(株)、SUMILON、MS−80480)の底面と同じ大きさにカットし、48穴シャーレの底に置いた。評価サンプルの上にペニシリンカップ(ステンレス管)を置き、10%FBS/Osteoblast Medium(抗生物質とアスコルビン酸を加えた10%FBS/Osteoblast Medium、以下10%FBS/Osteoblast Medium)を600μL加えた。プレート遠心機にて5min遠心した(2500rpm、室温)。減圧脱気し、さらに5min遠心(2500rpm、室温)した。37℃、5%CO
2インキュベーター内で、1hr以上インキュベートした。培地を200μL吸い取り廃棄した。事前に培養した正常ヒト骨芽細胞(LONZA社、Lot.6F4360)を1.1×10
5cells/mLとなるように10%FBS/Osteoblast Mediumに懸濁し、150μLずつ各wellに播種した(1.65×10
4cells/well)。播種翌日のサンプルに対し、ギムザ染色を行った。
【0049】
ギムザ染色は、具体的には次のように行った。培養後、培養上清を捨て、600μLのPBSにて洗浄した(2回)。10%中性ホルムアミド600mLを用いた30分固定した。固定したサンプルをPBSで洗浄した(3回)。4%ギムザ染色液/PBS(pH6.4)を600μL加え、30分間染色した。ギムザ液を廃棄し、蒸留水800μLで洗浄した(3回)。サンプルを乾燥しデジタルマイクロスコープ((株)キーエンス、VHX−500F)にて観察した。結果を
図4に示す。
【0050】
以上の結果から、細胞の湿潤性は平均ポアサイズが大きい程向上することがわかった(
図3及び
図4)。しかし、細胞の増殖性については、ポアサイズが大きいほど良好な訳ではなく、平均ポアサイズが6〜50μm程度、平均繊維径が0.1〜3μm程度の特定の不織布が好ましいことがわかった(
図2)。