特許第5896671号(P5896671)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5896671
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】車両搭載型クレーン装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/44 20060101AFI20160317BHJP
   B66D 1/28 20060101ALI20160317BHJP
【FI】
   B66C23/44 A
   B66D1/28 A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-215127(P2011-215127)
(22)【出願日】2011年9月29日
(65)【公開番号】特開2013-75729(P2013-75729A)
(43)【公開日】2013年4月25日
【審査請求日】2014年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫨林 幹夫
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−069066(JP,U)
【文献】 実開昭53−005966(JP,U)
【文献】 特開平09−302717(JP,A)
【文献】 特開2006−007897(JP,A)
【文献】 実開平05−037878(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00−23/94
B66D 1/00− 5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びるポストと、ポストの上端側に基端側が起伏自在に連結されたブームと、ポストに設けられ、ブームの先端から垂下するワイヤロープの巻き込みおよび繰り出しを行うウインチと、を備えた車両搭載型クレーン装置において、
ポストは、互いに間隔をおいて上下方向に延びる一対のポスト部材を有し、
一対のポスト部材の間には、ウインチの構成部品としてのドラムが配置され、
一対のポスト部材の間には、ブームが傾倒する側を前方とした場合における、ドラムの前面側を覆うドラムカバーを設けた
ことを特徴とする車両搭載型クレーン装置。
【請求項2】
ウインチは、構成部品として動力源の回転力を減速して伝達するする減速機を有し、
減速機は、ポストの外側面に配置され、
ポストの外側には、減速機全体を外側から覆う減速機カバーを設けた
ことを特徴とする請求項に記載の車両搭載型クレーン装置。
【請求項3】
ドラムカバー及び減速機カバーの内側面には、吸音材が設けられている
ことを特徴とする請求項に記載の車両搭載型クレーン装置。
【請求項4】
インチを構成する部品の近傍の部材には、制振材が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両搭載型クレーン装置。
【請求項5】
制振材の表面には、吸音材が設けられている
ことを特徴とする請求項に記載の車両搭載型クレーン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両搭載型クレーン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のクレーン装置としては、車両走行用のエンジンの動力によって油圧ユニットの油圧ポンプを駆動させるようにしたものが知られている(例えば、引用文献1参照)。
【0003】
近年のクレーン装置では、油圧ユニットの油圧ポンプを電動モータによって駆動させるようにすることで、作業場所における騒音を低減するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−42451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クレーン装置の作業では、ブームの旋回、起伏、伸縮およびウインチによるワイヤロープの巻き込みおよび繰り出しが繰り返し行われる。一般に、クレーン装置の作業では、ウインチによる作業が作業時間全体の中で大きな割合を占めている。
電動駆動のクレーン装置では、エンジン音が発生しない代わりに、ウインチによる作業時に発生する音が作業時の騒音として問題となるおそれがある。
【0006】
本発明の目的とするところは、ウインチの作動により生じる騒音を低減して、静音性を向上させることのできる車両搭載型クレーン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するために、上下方向に延びるポストと、ポストの上端側に基端側が起伏自在に連結されたブームと、ポストに設けられ、ブームの先端から垂下するワイヤロープの巻き込みおよび繰り出しを行うウインチと、を備えた車両搭載型クレーン装置において、ポストは、互いに間隔をおいて上下方向に延びる一対のポスト部材を有し、一対のポスト部材の間には、ウインチの構成部品としてのドラムが配置され、一対のポスト部材の間には、ブームが傾倒する側を前方とした場合における、ドラムの前面側を覆うドラムカバーを設けている。
【0008】
これにより、外部に露出するドラムの前面側ドラムカバーによって覆われることから、ドラムから直接外部に伝わる音が小さくなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ウインチの作動を要因として生じる外部に伝わる音を小さくすることができるので、静音性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態を示すクレーン装置を搭載した車両の斜視図である。
図2】クレーン装置の正面図である。
図3】旋回ポストの要部側面断面図である。
図4】旋回ポストの要部正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至図4は、本発明の一実施形態を示すものである。
【0014】
本発明のクレーン装置10は、図1に示すように、車両1に搭載されるものである。
【0015】
車両1は、シャシフレーム2の前側に設けられたキャブ3と、シャシフレーム2の後側に設けられた荷台4と、を備えており、キャブ3と荷台4との間のシャシフレーム2にクレーン装置10が搭載されている。
【0016】
クレーン装置10は、シャシフレーム2上に固定される基台20と、基台20の左右両側に設けられたアウトリガ30と、基台20の上面に旋回自在に設けられた旋回台40と、旋回台40に対して起伏自在に設けられたブーム50と、ブーム50の先端側から垂下されるワイヤロープ60と、ワイヤロープ60の巻き込みまたは繰り出しを行うためのウインチ70と、を備えている。
【0017】
各アウトリガ30は、基台20に対して幅方向外側に移動可能に設けられるとともに、油圧式のジャッキシリンダ(図示せず)によって下方に伸長可能である。アウトリガ30は、下端を接地させることにより車両1を地面に対して安定的に支持する。
【0018】
旋回台40は、ボールベアリング式やローラーベアリング式の旋回サークル(図示せず)によって基台20に対して旋回自在に設けられ、油圧式の旋回モータ(図示せず)によって旋回するように構成されている。また、旋回台40の上面には、上下方向に延びる旋回ポスト42が設けられ、旋回ポスト42の上端側にブーム50が起伏自在に連結されている。
【0019】
旋回ポスト42は、幅方向両側をそれぞれ上下方向に延びる一対のポスト部材42aと、各ポスト部材42aの間に設けられ、各ポスト部材42aを補強するための補強部材42bと、を有している。
【0020】
補強部材42bは、ブーム50が傾倒する側を前方とした場合に、一対のポスト部材42aの間の後側を上下方向に延びる後面補強部42cと、後面補強部42cの上下方向中央部のやや下側から前方に向かって延びる中央補強部42dと、中央補強部42dの前端側から一対のポスト部材42aの間の前面側を下方に延びる前面補強部42eと、を有している。
【0021】
ブーム50は、複数のブーム部材51〜54からなり、ブーム部材の内部に先端側に隣り合うブーム部材が収納可能な多段式に構成されている。最基端側のブーム部材51は、基端部が旋回ポスト42の上端側に上下方向に回転自在に連結されている。ブーム部材51の基端側と旋回台40との間には、油圧式の起伏シリンダ55が連結され、起伏シリンダ55の伸縮動作によってブーム50を起伏させる。また、最基端側のブーム部材51内には、油圧式の伸縮シリンダ(図示せず)が設けられ、伸縮シリンダの伸縮によってブーム50を伸縮させる。
【0022】
ワイヤロープ60は、先端側にフックブロック61設けられ、フックブロック61がブーム50から垂下される。フックブロック61には吊荷を係止可能であり、フックブロック61に係止された吊荷がブーム50の先端から吊り下げられる。
【0023】
ウインチ70は、ワイヤロープ60が巻き掛けられるドラム71と、ドラム71を正逆回転させるための油圧式のウインチモータ72と、ウインチモータ72の回転数およびトルクを変換してドラム71に伝達する減速機73と、を有している。
【0024】
ドラム71は、一対のポスト部材42aの間で、中央補強部42dの上方且つ後面補強部42cの前方に設けられている。ドラム71から延びるワイヤロープ60は、ブーム50の下側に沿って延びるとともに、先端側がブーム50の先端から垂下される。
【0025】
ウインチモータ72は、一対のポスト部材42aの間で、中央補強部42dの下方且つ後面補強部42cと前面補強部42eとの間に設けられている。
【0026】
減速機73は、一方のポスト部材42aの外側面のドラム71とウインチモータ72との間の高さ位置に設けられている。
【0027】
各ジャッキシリンダ、旋回モータ、起伏シリンダ55、伸縮シリンダおよびウインチモータ72等のアクチュエータは、作動油が供給されることによって作動する。各アクチュエータを作動させる作動油は、電動モータの回転によって駆動する油圧ポンプによって供給される。
【0028】
また、このクレーン装置10は、ウインチ70が作動する際に生じる音を低減するための騒音低減構造80を備えている。
【0029】
騒音低減構造80としては、外部に露出するドラム71の前面側を覆うドラムカバー81と、減速機73を外側から覆う減速機カバー82と、を備えている。
【0030】
ドラムカバー81は、補強部材42bの前面補強部42eの上部から上方に延びるとともに、一対のポスト部材42aの間を閉塞する板状部材である。ドラムカバー81の上端側は、ブーム50を最大限傾倒させた状態でブーム50の下側を位置するワイヤロープ60が接触しない高さとなっている。また、ドラムカバー81のドラム71側の面には、例えば、ポリウレタン系合成樹脂製のスポンジ状部材等からなる吸音材81aが全面に亘って貼り付けられている。
【0031】
減速機カバー82は、減速機73の外形寸法よりやや大きく形成された箱状の部材である。減速機カバー82は、一方のポスト部材42aに取り付けることにより、減速機73全体を覆うように構成されている。また、減速機カバー82の内面には、ドラムカバー81と同様に、ポリウレタン系合成樹脂製のスポンジ状部材等からなる吸音材82aが全面に亘って貼り付けられている。
【0032】
また、騒音低減構造80としては、ドラム71を囲む部分である補強部材42bの後面補強部42cの前面、中央補強部42dの上面および一対のポスト部材42aの幅方向内側面に、例えば鉛入りのゴム板等からなる制振材83が貼り付けられている。
【0033】
さらに、騒音低減構造80としては、ウインチモータ72を囲む部分である補強部材42bの後面補強部42cの前面、中央補強部42dの下面、前面補強部42eの後面および一対のポスト部材42aの幅方向内側面に、例えば鉛入りのゴム板等からなる制振材84が貼り付けられている。
【0034】
また、制振材83のドラム71側の面および制振材84のウインチモータ72側の面には、ポリウレタン系合成樹脂製のスポンジ状部材等からなる吸音材83a,84aが貼り付けられている。
【0035】
制振材83,84は、それぞれ一対のポスト部材42aや補強部材42bの振動特性に応じた厚さ寸法を選択する。また、吸音材81a,82a,83a,84aにおいても、ドラム71、ウインチモータ72および減速機73から発せられる音の周波数特性に応じた厚さ寸法を選択する。
【0036】
以上のように構成された車両搭載型クレーン装置において、ウインチ70が作動する際には、ドラムカバー81、減速機カバー82、制振材83,84および吸音材81a,82a,83a,84aによって外部に直接伝わる音や各ポスト部材42aおよび補強部材42bの振動を抑制することができ、騒音を低減することが可能となる。
【0037】
このように、本実施形態の車両搭載型クレーン装置によれば、旋回ポスト42から外部に露出するウインチ70のドラム71および減速機73の少なくとも一部を外側から覆うようにしている。これにより、ドラム71や減速機73の作動を要因として生じる外部に伝わる音を小さくすることができるので、静音性を向上させることが可能となる。
【0038】
また、一対のポスト部材42aの間から外部に露出するドラム71の少なくとも一部を板状部材からなるドラムカバー81によって覆っている。これにより、簡単な構造でドラム71から外部に直接伝わる音を小さくすることができるので、製造コストの低減を図ることができる。
【0039】
また、一方のポスト部材42aの外側面に設けられた減速機全体を箱状の減速機カバー82よって外側から覆っている。これにより、簡単な構造で減速機73から外部に直接伝わる音を小さくすることができるので、製造コストの低減を図ることができる。
【0040】
また、ドラムカバー81および減速機カバー82の内面側には、吸音材81a,82aが設けられている。これにより、ドラムカバー81および減速機カバー82から外部に伝わる音を小さくすることができるので、騒音の低減の効果を向上させることが可能となる。
【0041】
また、ドラム71の近傍に位置する一対のポスト部材42aおよび補強部材42bに、制振材83,84を設けている。これにより、ウインチ70から一対のポスト部材42aおよび補強部材42bに伝わる振動を小さくすることができるので、ウインチ70の作動を要因として生じる外部に伝わる音を小さくすることができるので、静音性を向上させることが可能となる。
【0042】
制振材83,84の表面には、吸音材83a,84aが設けられている。これにより、一対のポスト部材42aおよび補強部材42bから外部に伝わる音を小さくすることができるので、騒音の低減の効果を向上させることが可能となる。
【0043】
尚、前記実施形態では、電動モータで駆動する油圧ポンプによって各アクチュエータを作動させるようにしたものを示したが、これに限られるものではなく、油圧ポンプを駆動可能であればあらゆる動力源に対して本発明を適用可能である。例えば、静音性の高いエンジンによって駆動する油圧ポンプによって各アクチュエータを作動させるようにしても前記実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0044】
また、前記実施形態では、制振材83,84および吸音材83a,84aを一対のポスト部材42aの幅方向内側および補強部材42bに貼り付けるようにしたものを示したが、ドラム71やウインチモータ72の近傍にポスト部材42aおよび補強部材42b以外の部材がある場合には、その部材に制振材83,84および吸音材83a,84aを貼り付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10…クレーン装置、42…旋回ポスト、42a…ポスト部材、42b…補強部材、42c…後面補強部、42d…中央補強部、42e…前面補強部、70…ウインチ、71…ドラム、72…ウインチモータ、73…減速機、80…騒音低減構造、81…ドラムカバー、81a…吸音材、82…減速機カバー、82a…吸音材、83…制振材、83a…吸音材、84…制振材、84a…吸音材。
図1
図2
図3
図4