(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明に係るアース接続構造について説明する。具体的には、(1)第1実施形態、(2)第2実施形態、(3)第3実施形態、(4)その他の実施形態について説明する。
【0023】
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0024】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0025】
(1)第1実施形態
以下において、第1実施形態に係るアース接続構造について、(1.1)車両の概略構成、(1.2)アース接続構造の構成、(1.3)比較評価、(1.4)作用・効果、(1.5)変更例の順に説明する。
【0026】
(1.1)車両の概略構成
まず、第1実施形態に係るアース接続構造100が用いられる車両1の概略構成について、図面を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態に係る車両1に搭載される電装機器等を示す構成図である。なお、第1実施形態に係る車両1は、自動車(電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)等を含む)であるものとする。
【0027】
図1に示すように、車両1には、複数の電装機器10A〜10Hが搭載されている。これらの電装機器10A〜10Hには、芯線と被覆材とからなる複数本のアース電線20A〜20Hがそれぞれ接続されている。また、複数本のアース電線20A〜20Hは、第1実施形態に係るアース接続構造100によってボディアースされる。
【0028】
具体的には、電装機器10A〜10Dにそれぞれ接続される複数本のアース電線20A〜20Dは、ジョイント金具150Aで一括してまとめられ、電装機器10E〜10Hにそれぞれ接続される複数本のアース電線20E〜20Hは、ジョイント金具150Bで一括してまとめられる。そして、ジョイント金具150A,150Bから引き出された導通連結部130に接続されるアース端子部120が車両1のボディBD(車体)に接続される。これにより、複数の電装機器10A〜10Hは、ボディアースされる。
【0029】
ここで、上述した電装機器10A〜10Hやアース電線20A〜20H、ジョイント金具150A,150Bのそれぞれについては全て同様の構成であるため、以下においては、電装機器10A〜10Hを単に「電装機器10」と称し、アース電線20A〜20Hを単に「アース電線20」と称し、ジョイント金具150A,150Bを単に「ジョイント金具150」と称する。
【0030】
(1.2)アース接続構造の構成
次に、第1実施形態に係るアース接続構造100の構成について、図面を参照しながら説明する。
図2は、第1実施形態に係るアース接続構造100を示す斜視図である。
図3は、第1実施形態に係るアース接続構造100を示す平面図である。
図4は、第1実施形態に係るアース接続構造100を示す側面図である。
図5及び
図6は、第1実施形態に係るジョイント金具150を示す図である。
図7は、第1実施形態に係るワッシャー140を示す図である。
【0031】
図2〜
図4に示すように、アース接続構造100は、車両1に搭載される複数の電装機器10にそれぞれ接続される複数本のアース電線20を車両1のボディBDに接続するものである。このアース接続構造100は、複数本のアース電線20がそれぞれ接続されるジョイント金具150(被接続部)と、車両1のボディBDに導通状態で接続されるアース端子部120と、ジョイント金具150とアース端子部120とを導通接続する導通連結部130と、アース端子部120と車両1のボディBD(車体)との間に設けられる円盤状(板状)のワッシャー140(第1被締結材)とを備えている。
【0032】
(1.2.1)ジョイント金具
図5及び
図6に示すように、ジョイント金具150は、複数本のアース電線20と導通連結部130とを導通状態で接続する。このジョイント金具150は、長尺状の板材(金属材)が折曲中心線WLに沿って折り曲げられることによって形成されている。
【0033】
ジョイント金具150には、複数本のアース電線20のそれぞれの一端21と接続される電線接続溝151(電線接続部)と、導通連結部130の一端131と接続される連結接続溝152(連結接続部)とが形成されている。
【0034】
電線接続溝151にアース電線20が挿入されることによってアース電線20が位置決めされ、連結接続溝152に導通連結部130が挿入されることによって導通連結部130が位置決めされる。そして、
図6に示すように、アース電線20の一端21と電線接続溝151とは、抵抗溶接Sにより固定される。同様に、導通連結部130の一端131と連結接続溝152とは、抵抗溶接Sにより固定される。
【0035】
なお、抵抗溶接Sとは、溶接する母体(アース電線20や導通連結部130)に電流を流しジュール熱を発生させることによって、その母体を溶解させて同時に加圧することによって接続する方法である。
【0036】
ここで、導通連結部130の他端132とアース端子部120とについても、抵抗溶接Sにより固定されている(
図3参照)。また、アース用ボルトBとナットNとによってボディBDにアース電線20が接触した状態で、ボディBDとナットNとは、抵抗溶接Sにより固定されている(
図4参照)。つまり、アース接続構造100内の各接続部位(ジョイント部位)は、全て抵抗溶接Sにより固定される。
【0037】
(1.2.2)アース端子部
図2〜
図4に示すように、アース端子部120は、導通連結部130の他端132に接続される。このアース端子部120には、ボディBDに固定する際に用いられるアース用ボルトB(固定部材)が挿通する円形状のボルト挿通孔121が形成されている。なお、アース端子部120は、車両1のボディに導通状態で接続されればよく、大きさや形状等については適宜変更できる。
【0038】
ここで、アース用ボルトBは、導通性を有しており、車両1のボディBDに溶接固定されるナットNとともにボディBDにアース端子部120を固定するものである。
図2(b)に示すように、アース用ボルトBは、ナットNに螺合されるボルト部BBと、アース端子部120をボディBD側に押さえ付ける円盤状のフランジBFとを備えている。ボルト部BBには、ボディBDの塗装(カチオン塗装面)や錆止めなどのナットN内の外装を削り取る凹部B1が形成されている。
【0039】
(1.2.3)アース端子部
図2〜
図4に示すように、導通連結部130は、ジョイントコネクタ110とアース端子部120との間に設けられる。この導通連結部130の一端131は、ジョイントコネクタ110に接続され、導通連結部130の他端132は、アース端子部120に接続される。
【0040】
導通連結部130は、インダクタンスを低くすることが可能な低インダクタンス材130Aによって構成される。この低インダクタンス材130Aは、背景技術で説明した接続用電線(電流容量により設定される電線)よりもインダクタンスが低くなっている。
【0041】
具体的には、低インダクタンス材130Aは、可撓性(いわゆる、フレキシブル性)を有している。この低インダクタンス材130Aは、編組線によって形成される。また、低インダクタンス材130Aの延在方向に直交する断面形状は、平型状(楕円状や矩形状を含む)である。
【0042】
(1.2.4)ワッシャー
図2〜
図4に示すように、ワッシャー140は、鉄材によって形成されるものとして説明するが、これに限定されるものではなく、例えば、銅やアルミなどの金属材によって形成されていてもよい。
【0043】
図7に示すように、ワッシャー140には、アース用ボルトBが挿通する円形状のボルト挿通孔141が形成されている。また、ワッシャー140は、ボディBD側に向けて突出する複数(図面では6つ)の突起142を備えている。すなわち、突起142は、ワッシャー140のボディBDに当接する側の面に形成されている。
【0044】
この突起142は、ワッシャー140と別体に設けられている。具体的には、突起142は、ワッシャー140の溝部143に固定される基部142Aと、基部142Aに連続して先端に向かって鋭利状(円錐状)に形成される先端部142Bとによって構成されている。この先端部142Bとワッシャー140の溝部143との間には、ワッシャー140の表面から凹んだ凹部としての空隙144が形成されている。
【0045】
突起142は、アース用ボルトBとナットNとによってワッシャー140が締め付けられると、突起142がボディBDの塗装(カチオン塗装面)や錆止め等の外装E(
図4の太線)を削り取りながらボディBDに接触する。そして、削り取られたボディBDの外装Eは、空隙144に入り込むようになっている。また、ワッシャー140は、硬度を増大させるために、突起142が形成された後に焼き入れ加工が施されることが好ましい。
【0046】
(1.3)比較評価
次に、導通連結部として、上述した低インダクタンス材130Aと公知の電線とをそれぞれ使用した場合の比較評価について、表1を参照しながら説明する。なお、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【表1】
【0047】
まず、導通連結部(1)に、断面形状が丸型状で且つ芯線及び被覆材からなる公知の電線(以下、丸型電線)を使用し、導通連結部(2)に、断面形状が平型状で且つ編組線からなる低インダクタンス材130A(以下、平型編組線)を使用し、これらのインダクタンス及びインピーダンスを比較評価した。
【0048】
表1に示すように、平型編組線と丸型電線とを比較すると、インダクタンス及びインピーダンス(100kHz、1MHz及び10MHz)が低下していることが分かった。具体的には、平型編組線は、丸型電線と比較して約2/3の低インピーダンス化を図ることができると分かった。なお、インピーダンスを‘Z’とし、周波数を‘f’とし、インダクタンスを‘L’とした場合、Z=2πfLで表される。つまり、平型編組線と丸型電線とを比較して分かるように、インダクタンス(L)が小さくなれば、インピーダンス(Z)が低下することが分かる。
【0049】
次に、平型編組線と丸型電線とのそれぞれに対してのワッシャー140の有無(比較例1,2及び実施例1,2)におけるインダクタンス及びインピーダンスを比較評価した。
【0050】
比較例1は、丸型電線及びアース端子部120を用いており、ワッシャー140が設けられていないものである。また、比較例2は、平型編組線及びアース端子部120を用いており、ワッシャー140が設けられていないものである。
【0051】
一方、実施例1は、丸型電線及びアース端子部120を用いており、ワッシャー140が設けられているものである。また、実施例2では、平型編組線及びアース端子部120を用いており、ワッシャー140が設けられているものである。
【0052】
表1に示すように、実施例1については、比較例1と比較すると、ワッシャー140が用いられているため、インダクタンス及びインピーダンス(100kHz、1MHz及び10MHz)が低下していることが分かった。また、実施例2についても、比較例2と比較すると、ワッシャー140が用いられていため、インダクタンス及びインピーダンス(100kHz、1MHz及び10MHz)が低下していることが分かった。
【0053】
(1.4)作用・効果
以上説明した第1実施形態では、ワッシャー140は、ボディBD側に向けて突出する突起142を備えている。これにより、突起142がボディBDの塗装(カチオン塗装面)や錆止め等の外装Eを削り取るため、ワッシャー140とボディBDとの導通性が向上する。このため、ボディBDの外装Eが削られない場合と比較して、ワッシャー140とボディBD(地金)との間(いわゆる、アース用ボルトB周辺)おける電気抵抗が小さくなり、特に、高周波電流における直流成分に対する電気抵抗が小さくなる。このため、アース用ボルトB周辺で生じる電圧降下の作用によってノイズ電圧が上昇してしまうことを抑制でき、電圧上昇に起因するノイズを抑制することができる。
【0054】
例えば、幅20mm、長さ200mm、太さ14sqの条件の低インダクタンス材130Aを使用した場合、低インダクタンス材130Aの電気抵抗が約0.33mΩであり、ワッシャー140とボディBDとの間の電気抵抗が約0.4〜0.6mΩとなった。つまり、アース用ボルトB周りの電気抵抗を0.5mΩ程度に小さくなってボディBDの電圧により近づいた電圧にすること(すなわち、ジョイント金具150とボディBDとの間を等電位化すること)ができる。従って、電圧上昇に起因するノイズを抑制することができる。
【0055】
また、ジョイント金具150には、複数の電装機器10からのアース電線20が接続される。これにより、ジョイント金具150内でアース電線20をまとめてアース端子部120をボディBDに接続することができる。このため、車両1に複数のアースポイントを形成する必要が無くなり、アースポイント数を減少させることもできる。
【0056】
第1実施形態では、ワッシャー140の突起142の周囲には、空隙144が形成される。これにより、突起142によって削り取られたボディBDの外装が凹部に入り込む(逃げ込む)ため、ワッシャー140とボディBDとの導通性を向上させることができる。
【0057】
第1実施形態では、導通連結部130は、インダクタンスを低くすることが可能な低インダクタンス材130A、すなわち、背景技術で説明した接続用電線(電流容量により設定される電線)よりもインダクタンスが低い低インダクタンス材130Aによって構成される。これにより、低インダクタンス材130Aよりインダクタンスを低下させてインピーダンスを小さくすることができ、特に、高周波電流における交流成分に対する低インピーダンス化を実現できる。このため、低インピーダンス化によって電圧降下が生じ難く、この電圧降下の作用によるノイズ電圧が上昇してしまうことを抑制でき、電圧上昇に起因するノイズを抑制することができる。この結果、車両に搭載される電装機器への悪影響(電装機器が不安定になることや機能しないこと)を防止することができる。
【0058】
第1実施形態では、低インダクタンス材130Aの断面形状は、平型状である。これにより、低インダクタンス材130Aの断面積が同一でかつ断面形状が円型状である場合と比較して、低インダクタンス材130Aよりインダクタンスをさらに小さくしてインピーダンスをより小さくすることができるため、特に、高周波電流における交流成分に対して低インピーダンスを実現できる。
【0059】
第1実施形態では、低インダクタンス材130Aは、編組線によって形成される。これにより、フレキシブル性に優れているため、導通連結部130の配索性能を向上させることができる。
【0060】
第1実施形態では、電流が通過するアース接続構造100内の各接続部位(ジョイント部位)は、抵抗溶接Sにより固定される。これにより、電流が通過するアース接続構造100内の各接続部位(ジョイント部位)での電位差が低減され、アース電線20から導通連結部130までの電流干渉を小さくできる。このため、ジョイント金具150とボディBDとの間を等電位化することができ、背景技術で説明した第1のアース接続構造のような複数本のアース電線をボディBDに直接接続する場合とほぼ同等のアース性能を得ることができる。
【0061】
また、ジョイント金具150とアース端子部120とを導通接続する導通連結部130が設けられている。これにより、アース電線20をジョイント金具150まで配索すれば、ジョイント金具150からボディBDまでは導通連結部130のみの配索で済むため、導通連結部130の配索性能をも向上させることができる。
【0062】
(1.5)変更例
次に、上述した第1実施形態に係るアース接続構造100Aの変更例について、図面を参照しながら説明する。
図8は、第1実施形態の変更例に係るアース接続構造100Aを示す側面図である。なお、上述した第1実施形態に係るアース接続構造100と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0063】
上述した第1実施形態では、ワッシャー140は、アース端子部120と車両1のボディBD(車体)との間に設けられる。これに対して、変更例では、
図8に示すように、アース接続構造100Aは、上述したワッシャー140に加えて、アース用ボルトB(固定部材)とアース端子部120との間に設けられる円盤状のワッシャー160(第2被締結材)をさらに備えている。なお、ワッシャー160の構成については、ワッシャー140の構成と同様である。
【0064】
このような変更例では、ワッシャー140に加えてワッシャー160が設けられることによって、ワッシャー160とアース端子部120との導通性を確保でき、より確実にボディアースを実現することができる。
【0065】
(2)第2実施形態
以下において、第2実施形態に係るアース接続構造について、(2.1)アース接続構造の構成、(2.2)作用・効果の順に説明する。なお、上述した第1実施形態に係るアース接続構造100(100A)と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0066】
(2.1)アース接続構造の構成
まず、第2実施形態に係るアース接続構造100Bの構成について、図面を参照しながら説明する。
図9は、第2実施形態に係るアース接続構造100Bを示す平面図である。
図10は、第2実施形態に係るアース接続構造100Bを示す側面図である。
図11は、第2実施形態に係るワッシャー140を示す図である。
図12は、第2実施形態に係るジョイント金具150を示す図である。
【0067】
図9及び
図10に示すように、アース接続構造100Bは、ワッシャー140,160を備えている。
図11に示すように、ワッシャー140の外周縁には、該ワッシャー140の内周側(すなわち、ボルト挿通孔141や突起142側)に向かう液体の侵入を防止する防水パッキン140A(第1防水部材)が設けられている。この防水パッキン140Aは、シリコンゴム等によって形成されている。
【0068】
また、ワッシャー160の構成については、ワッシャー140と同様である。すなわち、
図10に示すように、ワッシャー160の外周縁にも、該ワッシャー160の内周側に向かう液体の侵入を防止する防水パッキン160A(第2防水部材)が設けられている。
【0069】
このようなアース接続構造100Bでは、ジョイント金具150が樹脂からなる封止材170によって被覆される。具体的には、
図9、
図10及び
図12に示すように、電線接続溝151に抵抗溶接Sによりアース電線20が固定され、かつ連結接続溝152に抵抗溶接Sにより導通連結部130が固定されている状態において、ジョイント金具150近傍が封止材170によって被覆され、ジョイント金具150が封止される。
【0070】
(2.2)作用・効果
以上説明した第2実施形態では、ワッシャー140には、防水パッキン140Aが設けられる。これにより、ワッシャー140の内周側に液体(水など)が侵入することなく、突起142によってボディBDの塗装(カチオン塗装面)や錆止め等の外装Eが削り取られた箇所へ液体が付着することを防止できる。このため、ボディBDの外装Eの耐久性を向上させることができる。
【0071】
第2実施形態では、ワッシャー160には、防水パッキン160Aが設けられる。これにより、ワッシャー160の内周側に液体が侵入することなく、アース用ボルトBとアース端子部120との接触部分に液体が付着することを防止できる。このため、アース用ボルトBやアース端子部120に電位差が生じても、電食(イオン酸化)が発生することを抑制することができる。この結果、腐食によるアース用ボルトBの緩みや電極浮きが生じにくく、アース用ボルトBの脱落を防止することができる。また、アース用ボルトBが腐食しないため、アース用ボルトBの経年劣化が生じることなく、導通連結部130とボディBDとの間の等電位化(同電位のアース)を実現することができる。
【0072】
第2実施形態では、ジョイント金具150は、封止材170によって被覆される。これにより、ジョイント金具150の内部は勿論、アース電線20の内部(被覆材の内周に位置する芯線)への液体が侵入することを防止でき、ジョイント金具150やアース電線20の内部での電食(イオン酸化)が生じることを抑制することができる。
【0073】
ここで、第2実施形態では、アース接続構造100Bは、ワッシャー140,160を備えているものとして説明したが、これに限定されるものではなく、ワッシャー140のみを備えていてもよい。また、ジョイント金具150は、必ずしも封止材170によって被覆される必要もない。
【0074】
(3)第3実施形態
以下において、第3実施形態に係るアース接続構造について、(3.1)アース接続構造の構成、(3.2)作用・効果の順に説明する。なお、上述した第1実施形態に係るアース接続構造100(100A)と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0075】
(3.1)アース接続構造の構成
まず、第3実施形態に係るアース接続構造100Cの構成について、図面を参照しながら説明する。
図13は、第3実施形態に係るアース接続構造100Cを示す平面図である。
図14は、第3実施形態に係るアース接続構造100Cを示す側面図である。
【0076】
図13及び
図14に示すように、アース接続構造100Cは、複数本のアース電線20のうち、少なくとも1つのアース電線20(
図13では最も上側のアース電線20)に取り付けるフェライト180(磁性体)を備えている。
【0077】
フェライト180は、高周波電流のノイズを吸収するものである。このフェライト180は、複数本のアース電線20のうちのノイズ発生源とされるアース電線20の一端21側に取り付けられる。なお、ノイズ発生源とは、高周波電流のノイズが最も生じることや、ノイズの発生頻度が最も多いこと、最も高電圧で使用される電装機器10に接続されることなどを示す。
【0078】
ここで、第3実施形態では、フェライト180は、ノイズ発生源とされるアース電線20のみに取り付けられるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、全てのアース電線20に取り付けられていてもよい。
【0079】
このようなアース接続構造100Cは、ジョイント金具150及びフェライト180を含む複数本のアース電線20を覆う樹脂性のジョイントケース190をさらに備えている。なお、アース接続構造100Cは、必ずしもジョイントケース190を備える必要はなく、ジョイントケース190を備えていなくてもよい。
【0080】
(3.2)作用・効果
以上説明した第3実施形態では、複数本のアース電線20のうちのノイズ発生源とされるアース電線20に取り付けられる磁性体のフェライト180を備える。これにより、高周波電流がジョイント金具150に流入することを阻止でき、ジョイント金具150内の電位差を抑制することができる。このため、ジョイント金具150内での電位上昇を抑制でき、ボディBDの電圧により近づいた電圧にすること(すなわち、ジョイント金具150とボディBDとの間を等電位化すること)ができる。従って、電圧上昇に起因するノイズを抑制することができる。
【0081】
第3実施形態では、ジョイントケース190は、ジョイント金具150及びフェライト180を含む複数本のアース電線20を覆う。これにより、ジョイント金具150及びフェライト180の内部は勿論、アース電線20の内部(被覆材の内周に位置する芯線)への液体が侵入することを防止し易くなり、ジョイント金具150やフェライト180、アース電線20の内部での電食(イオン酸化)が生じることを抑制できる。
【0082】
(4)その他の実施形態
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0083】
例えば、本発明の実施形態は、次のように変更することができる。具体的には、被接続部としては、ジョイント金具150であるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、
図15に示すように、アース電線20と導通連結部130とが導通状態で接続されるジョイントコネクタ110であってもよい。なお、被接続部としては、必ずしもジョイントコネクタ110やジョイント金具150である必要はなく、複数本のアース電線20を一括してまとめられる構成であればよい。
【0084】
また、導通連結部130は、低インダクタンス材130Aのみによって構成されるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、
図16に示すように、低インダクタンス材130Aと、低インダクタンス材130Aを被覆する被覆部材130Bとによって構成されていてもよい。この場合、低インダクタンス材130Aを保護でき、低インダクタンス材130Aの劣化が防止することができるため、低インダクタンス材130Aの耐久性を向上させることができる。
【0085】
また、低インダクタンス材130Aの断面形状は、平型状であるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、平型状以外の形状であってもよい。
【0086】
また、導通連結部130は、低インダクタンス材130Aによって構成されるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、インダクタンスを低くすることが可能なもの、すなわち、背景技術で説明した接続用電線(電流容量により設定される電線)よりもインダクタンスが低くなるものであればよい。
【0087】
また、導通連結部130は、必ずしも設けられる必要はなく、背景技術のような構成のように導通連結部130が設けられていなくてもよく、例えば、アース端子部120がジョイントコネクタ110やジョイント金具150に直接接続されていてもよい。
【0088】
また、アース端子部120としては、ボディBDに導通状態で接続されればよく、各実施形態で説明した構成や形状以外であってもよいことは勿論である。さらに、アース端子部120をボディBDに固定する手段として、アース用ボルトB及びナットNであるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、アース端子部120をボディBDに固定できればよい。
【0089】
なお、本発明のアース接続構造としては、第1実施形態〜第3実施形態で説明した様々な構成を組み合わせてもよいことは勿論である。
【0090】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められる。