(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5896786
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/55 20110101AFI20160317BHJP
H01R 13/631 20060101ALI20160317BHJP
H01R 13/24 20060101ALI20160317BHJP
【FI】
H01R12/55
H01R13/631
H01R13/24
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-47410(P2012-47410)
(22)【出願日】2012年3月2日
(65)【公開番号】特開2013-182839(P2013-182839A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2015年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】田川 芳生
【審査官】
石川 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−092526(JP,A)
【文献】
特開2002−198113(JP,A)
【文献】
特表2001−502837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/55
H01R 13/631
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性のハウジングと、導電性のコンタクトとを備え、
実装対象の基板の存在する方向を下方としたとき、
前記コンタクトは、
前記ハウジングに固定される基部と、
前記基部から立ち上がり且つ接点部を有する接点側弾性部と、
先端側が互いに異なる位置で基板への実装部となる第1及び第2の接続脚部と、
前記基部と前記第1及び第2の接続脚部との間に設けられた実装側弾性部とを有し、
前記ハウジングの下面に凸部が形成され、前記ハウジングの下面と対面するカバー部が前記凸部から延長し、前記ハウジングの下面と前記カバー部との隙間に前記第1の接続脚部の一部が挿入されている、電気コネクタ。
【請求項2】
前記実装側弾性部は前記ハウジングの前記下面側に存在し、前記コンタクトは前記ハウジングの前記下面の外側にあって前記実装側弾性部の一端と前記基部とを接続する折返し部を有する、請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
絶縁性のハウジングと、導電性のコンタクトとを備え、
実装対象の基板の存在する方向を下方としたとき、
前記コンタクトは、
前記ハウジングに固定される基部と、
前記基部から立ち上がり且つ接点部を有する接点側弾性部と、
前記ハウジングの下面側に存在する実装側弾性部と、
前記ハウジングの前記下面の外側にあって前記実装側弾性部の一端と前記基部とを接続する折返し部と、
前記実装側弾性部の他端からそれぞれ下方に延びて先端側が互いに異なる位置で基板への実装部となる第1及び第2の接続脚部とを有し、
前記実装側弾性部は、前後方向及び左右方向に変位可能な構造である、電気コネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングの下面に凸部が形成され、前記ハウジングの下面と対面するカバー部が前記凸部から延長し、前記ハウジングの下面と前記カバー部との隙間に前記第1の接続脚部の一部が挿入されている、請求項3に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記実装側弾性部は、上下方向への変位を伴わずに前後方向及び左右方向に変位可能な構造である、請求項2から4のいずれか一項に記載の電気コネクタ。
【請求項6】
前記実装側弾性部は、前後方向に延びる第1のU字状部と、左右方向に延びる第2のU字状部とを含む、請求項2から5のいずれか一項に記載の電気コネクタ。
【請求項7】
絶縁性のハウジングと、導電性のコンタクトとを備え、
実装対象の基板の存在する方向を下方としたとき、
前記コンタクトは、
前記ハウジングに固定される基部と、
前記基部から立ち上がり且つ接点部を有する接点側弾性部と、
前記ハウジングの下面側に存在する実装側弾性部と、
前記ハウジングの前記下面の外側にあって前記実装側弾性部の一端と前記基部とを接続する折返し部と、
前記実装側弾性部の他端からそれぞれ下方に延びて先端側が互いに異なる位置で基板への実装部となる第1及び第2の接続脚部とを有し、
前記実装側弾性部は、前後方向に延びる第1のU字状部と、左右方向に延びる第2のU字状部とを含む、電気コネクタ。
【請求項8】
1つのハウジングに対して複数の前記コンタクトが仕切り壁部を隔てて左右方向に並んで保持され、
各々の前記コンタクトの前記第2のU字状部は、前記第1のU字状部よりも短く、かつ前記ハウジングの前後方向の中心位置よりも後方に位置する、請求項6又は7に記載の電気コネクタ。
【請求項9】
前記第1及び第2の接続脚部と接して前記実装側弾性部の弾性変形量を規制する凸部が前記底面部の下面に形成されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の電気コネクタ。
【請求項10】
絶縁性のハウジングと、導電性のコンタクトとを備え、
実装対象の基板の存在する方向を下方としたとき、
前記コンタクトは、
前記ハウジングに固定される基部と、
前記基部から立ち上がり且つ接点部を有する接点側弾性部と、
前記ハウジングの下面側に存在する実装側弾性部と、
前記ハウジングの前記下面の外側にあって前記実装側弾性部の一端と前記基部とを接続する折返し部と、
前記実装側弾性部の他端からそれぞれ下方に延びて先端側が互いに異なる位置で基板への実装部となる第1及び第2の接続脚部とを有し、
前記第1及び第2の接続脚部と接して前記実装側弾性部の弾性変形量を規制する凸部が前記底面部の下面に形成されている、電気コネクタ。
【請求項11】
1つのハウジングに対して複数の前記コンタクトが仕切り壁部を隔てて左右方向に並んで保持され、各々の前記コンタクトの前記第1及び第2の接続脚部の基板への実装部が前後方向に分かれている、請求項1から10のいずれか一項に記載の電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯映像機器等の電池パック接続部に使用可能で、実装基板上でフローティング可能な電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気コネクタは、ハウジング及びコンタクトにより構成されて基板に実装され、例えばバッテリの端子との接点部を所定位置に弾性的に支持する。この種の電気コネクタにおいては、実装基板に対してハウジング及び接点部を基板面と平行に変位可能とするフローティング機能を持たせる技術が知られている(下記特許文献1参照)。このフローティング機能によれば、最終製品の組立工程における筐体と基板との位置ずれ公差を吸収することができる。また、例えば同一の電気コネクタを異なる機種に流用する場合等に、例えば接点部の位置を同じとしながら基板上での電気コネクタの実装位置をずらさなければならないときにも、ずらす量がフローティング機能による変位可能範囲内であれば同一の電気コネクタで対応可能となる。基板上での電気コネクタの実装位置を変えずに接点部の位置をずらさなければならないときにも同様のことがいえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−118314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電気コネクタは、「単一の部材からなるハウジング10と、ハウジング10に固定されたコンタクト20とを備え、コンタクト20が、回路基板に接続される半田接続部21と、半田接続部21から上方へ延びハウジング10側に折り返して下方へ延びる弾性部22と、一端231が、弾性部22の、下方へ延びた先端222に接続されると共に、水平方向に延びてハウジング10の底面近傍に固定された固定部23と、固定部23の一端231に対向する他端232から上方へ延びる接点部24とを有する」(特許文献1の[要約])との構成を有し、弾性部22によりフローティング機能を実現するものであるが、1つのコンタクトはハウジングの後方側の1箇所のみで基板に半田接続されており、コンタクトとは別に基板と半田接続される補強板(半田ペグ30)が実質的に必須要件で、部品点数や組立工数が増加する。また、フローティング機能のためには補強板にも弾性を持たせることが必要であり、一般的な補強板よりも形状が複雑かつ大型で、さらに補強板の変位スペースの確保も必要であるため、電気コネクタ全体としても大型化してしまう欠点があった。
【0005】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、コンタクトとは別に補強板を設けなくても実装基板に対してハウジング及び接点部を基板面と平行に変位可能な電気コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、電気コネクタである。この電気コネクタは、
絶縁性のハウジングと、導電性のコンタクトとを備え、
実装対象の基板の存在する方向を下方としたとき、
前記コンタクトは、
前記ハウジングに固定される基部と、
前記基部から立ち上がり且つ接点部を有する接点側弾性部と、
先端側が互いに異なる位置で基板への実装部となる第1及び第2の接続脚部と、
前記基部と前記第1及び第2の接続脚部との間に設けられた実装側弾性部とを有し、
前記ハウジングの下面に凸部が形成され、前記ハウジングの下面と対面するカバー部が前記凸部から延長し、前記ハウジングの下面と前記カバー部との隙間に前記第1の接続脚部の一部が挿入されている。
【0007】
前記実装側弾性部は前記ハウジングの前記下面側に存在し、前記コンタクトは前記ハウジングの前記下面の外側にあって前記実装側弾性部の一端と前記基部とを接続する折返し部を有してもよい。
【0008】
本発明のもう1つの態様は、電気コネクタである。この電気コネクタは、
絶縁性のハウジングと、導電性のコンタクトとを備え、
実装対象の基板の存在する方向を下方としたとき、
前記コンタクトは、
前記ハウジングに固定される基部と、
前記基部から立ち上がり且つ接点部を有する接点側弾性部と、
前記ハウジングの下面側に存在する実装側弾性部と、
前記ハウジングの前記下面の外側にあって前記実装側弾性部の一端と前記基部とを接続する折返し部と、
前記実装側弾性部の他端からそれぞれ下方に延びて先端側が互いに異なる位置で基板への実装部となる第1及び第2の接続脚部とを有
し、
前記実装側弾性部は、前後方向及び左右方向に変位可能な構造である。
前記ハウジングの下面に凸部が形成され、前記ハウジングの下面と対面するカバー部が前記凸部から延長し、前記ハウジングの下面と前記カバー部との隙間に前記第1の接続脚部の一部が挿入されていてもよい。
【0009】
前記実装側弾性部は、上下方向への変位を伴わずに前後方向及び左右方向に変位可能な構造であってもよい。
【0010】
前記実装側弾性部は、前後方向に延びる第1のU字状部と、左右方向に延びる第2のU字状部とを含んでもよい。
【0011】
本発明のもう1つの態様は、電気コネクタである。この電気コネクタは、
絶縁性のハウジングと、導電性のコンタクトとを備え、
実装対象の基板の存在する方向を下方としたとき、
前記コンタクトは、
前記ハウジングに固定される基部と、
前記基部から立ち上がり且つ接点部を有する接点側弾性部と、
前記ハウジングの下面側に存在する実装側弾性部と、
前記ハウジングの前記下面の外側にあって前記実装側弾性部の一端と前記基部とを接続する折返し部と、
前記実装側弾性部の他端からそれぞれ下方に延びて先端側が互いに異なる位置で基板への実装部となる第1及び第2の接続脚部とを有し、
前記実装側弾性部は、前後方向に延びる第1のU字状部と、左右方向に延びる第2のU字状部とを含む。
1つのハウジングに対して複数の前記コンタクトが仕切り壁部を隔てて左右方向に並んで保持され、
各々の前記コンタクトの前記第2のU字状部は、前記第1のU字状部よりも短く、かつ前記ハウジングの前後方向の中心位置よりも後方に位置してもよい。
【0012】
前記第1及び第2の接続脚部と接して前記実装側弾性部の弾性変形量を規制する凸部が前記底面部の下面に形成されていてもよい。
本発明のもう1つの態様は、電気コネクタである。この電気コネクタは、
絶縁性のハウジングと、導電性のコンタクトとを備え、
実装対象の基板の存在する方向を下方としたとき、
前記コンタクトは、
前記ハウジングに固定される基部と、
前記基部から立ち上がり且つ接点部を有する接点側弾性部と、
前記ハウジングの下面側に存在する実装側弾性部と、
前記ハウジングの前記下面の外側にあって前記実装側弾性部の一端と前記基部とを接続する折返し部と、
前記実装側弾性部の他端からそれぞれ下方に延びて先端側が互いに異なる位置で基板への実装部となる第1及び第2の接続脚部とを有し、
前記第1及び第2の接続脚部と接して前記実装側弾性部の弾性変形量を規制する凸部が前記底面部の下面に形成されている。
1つのハウジングに対して複数の前記コンタクトが仕切り壁部を隔てて左右方向に並んで保持され、各々の前記コンタクトの前記第1及び第2の接続脚部の基板への実装部が前後方向に分かれていてもよい。
【0014】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、先端側が互いに異なる位置で基板への実装部となる第1及び第2の接続脚部をコンタクトが有することで、コンタクトとは別に補強板を設けなくても実装基板に対してハウジング及び接点部を基板面と平行に変位可能な電気コネクタを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る電気コネクタ1を回路基板9に実装した状態の右側断面図。
【
図10】ハウジング3に右方向への力が加わった場合の電気コネクタ1の底面図。
【
図11】ハウジング3に左方向への力が加わった場合の電気コネクタ1の底面図。
【
図12】ハウジング3に後方向への力が加わった場合の電気コネクタ1の底面図。
【
図13】ハウジング3に前方向への力が加わった場合の電気コネクタ1の底面図。
【
図14】本発明の実施の形態2に係る電気コネクタ1Aの右側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態1に係る電気コネクタ1を回路基板9に実装した状態の右側断面図である。
図2〜
図4は、電気コネクタ1の斜視図である。
図5は、電気コネクタ1の正面図である。
図6は、電気コネクタ1の底面図である。
図7は、電気コネクタ1の右側断面図である。
図8及び
図9は、電気コネクタ1の分解斜視図である。これらの図により、直交する3方向である前後、上下、左右の各方向を定義する。
【0019】
電気コネクタ1は、導電性のコンタクト2と、絶縁性のハウジング3とを備える。ハウジング3は例えば一体の樹脂成型品であり、コンタクト2は一体の金属部品である。
図1に示すように、コンタクト2は、回路基板9上の2箇所の半田接続部91,92に半田付けにより表面実装される。また、接続対象物である例えばバッテリ7は、本実施の形態では前方から電気コネクタ1に接続される。これにより、バッテリ7の電極(不図示)と回路基板9の導電パターン(不図示)とが電気コネクタ1を介して電気的に接続される。
【0020】
まず、主として
図8及び
図9を参照し、コンタクト2及びハウジング3の単体構造について説明する。
【0021】
ハウジング3は、ベース部31と、側壁部32,33と、仕切り壁部34,35と、天井部36とを有し、それらが3つの孔部38を形成し、各々の孔部38にコンタクト2の一部を収容する。側壁部32,33は、ベース部31の左右両端から立ち上がる。仕切り壁部34,35は、側壁部32,33の間においてベース部31から立ち上がる。天井部36は、側壁部32,33の上端同士を、仕切り壁部34,35の上端を経由して渡す。ベース部31の下面には下方に突出する凸部311〜314が形成される。凸部311〜313の先端部からはベース部31の下面と対面するカバー部315がそれぞれ延長する。凸部312〜314の右側面前端部は段差壁部317(
図9)となっている。段差壁部317は後述のようにハウジング3の右方向への変位許容最大距離d11(
図5)を規定する。
【0022】
コンタクト2は、基部21と、接点側弾性部22と、実装側弾性部23と、折返し部24と、第1及び第2の接続脚部25,26とを有する。基部21は、水平面内(上下方向位置が同じ平面内)に延在する平面形状である。コンタクト2において基部21から上の構造は公知であるため、ここでは簡単に説明する。接点側弾性部22は、基部21の前端の折曲げ部221から後方上側に延び、後方の折曲げ部222で折り返されて前方上側に延び、さらに前方の折曲げ部223で後方に折り返された形状である。折曲げ部223には前方側に凸となって前方に臨む接点部224が例えばプレス加工にて形成されている。接続対象物の電極が前方から接点部224に押し付けられると、接点側弾性部22の弾性変形により接点部224は後退する。
【0023】
コンタクト2において、実装側弾性部23は、基部21の下方において基部21と平行に延在する。実装側弾性部23の一端と基部21の後端とが折返し部24(折曲げ部)によって接続される。第1及び第2の接続脚部25,26は、実装側弾性部23の他端からそれぞれ下方に延びて、先端側が互いに異なる位置、ここでは前後方向に分かれた位置で回路基板9(
図1)への実装部となる。
【0024】
実装側弾性部23は、前後方向に延びる第1のU字状部231と、左右方向に延びる第2のU字状部232とを含む。折返し部24に第2のU字状部232の一端が接続され、第2のU字状部232の他端に第1のU字状部231の一端が接続され、第1のU字状部231の他端から第1及び第2の接続脚部25,26がそれぞれ前後方向に分かれて延びる。第1のU字状部231の前後方向の長さは、第2のU字状部232の左右方向の長さよりも長い。
【0025】
第1の接続脚部25は、第1のU字状部231の他端から前方に延びる脚部であり、被格納部251と、第1の曲げ起こし部252と、第1の表面実装部253とを有する。被格納部251は、第1のU字状部231の他端から延び、第1のU字状部231の側方(右方)において前方に延びる。第1の表面実装部253は、第1の接続脚部25の先端部であって回路基板9(
図1)に例えば半田付けにより表面実装される。第1の表面実装部253は、表面実装で十分な半田接合強度を確保できる面積とする。第1の曲げ起こし部252は、第1の表面実装部253の右端を曲げ起こして被格納部251の前端側と接続する部分である。
【0026】
第2の接続脚部26は、第1のU字状部231の他端から後方に延びる脚部であり、第2の曲げ起こし部262と、第2の表面実装部263とを有する。第2の表面実装部263は、第2の接続脚部26の先端部であって回路基板9(
図1)に例えば半田付けにより表面実装される。第2の表面実装部263は、表面実装で十分な半田接合強度を確保できる面積とする。第2の曲げ起こし部262は、第2の表面実装部263の前端を曲げ起こして第1のU字状部231の他端と接続する部分である。
【0027】
続いて、主として
図2〜
図7を参照し、コンタクト2及びハウジング3の組合せ構造について説明する。
【0028】
コンタクト2は、基部21と実装側弾性部23とでハウジング3のベース部31を挟み、かつ基部21と接点側弾性部22をハウジング3の孔部38に通すように、ハウジング3の後方からハウジング3に組み付けられる。このとき、基部21の側縁(両縁)に形成された固定爪211(
図8,9)が孔部38の内壁を削るようにして孔部38に入り込み、固定爪211が孔部38の内壁に食い込むため、組み付け後には基部21はハウジング3に対して固定状態となる。なお、1つのハウジング3に対して複数(ここでは3つ)の同形状のコンタクト2が組み付けられる。
【0029】
コンタクト2の基部21は、ハウジング3のベース部31の上面に沿って存在する。コンタクト2の実装側弾性部23は、ハウジング3のベース部31の下面に沿って存在する。コンタクト2の折返し部24は、ハウジング3のベース部31の後方にあって基部21と実装側弾性部23とを接続する。コンタクト2の第1の接続脚部25の被格納部251及び第1のU字状部231の右側の一部は、ハウジング3のベース部31の下面とカバー部315との隙間(端子格納スリット)に位置する(挿入される)。
【0030】
コンタクト2の第1の表面実装部253の側縁(左縁)と、その左側の対面する凸部(ハウジング3の凸部312〜314の段差壁部317)との間の距離d11(
図5)は、第1の表面実装部253(すなわち実装先の回路基板)に対するハウジング3の右方向への変位許容最大距離である。すなわち、第1の表面実装部253に対してハウジング3が右方向へ距離d11移動すると、第1の表面実装部253の側縁(左縁)とハウジング3の凸部312〜314の段差壁部317とが接触し、右方向への距離d11以上のハウジング3の変位を規制する。
【0031】
コンタクト2の被格納部251の側縁(右縁)と、その右側の対面する凸部(ハウジング3の凸部311〜313、すなわち端子格納スリットの底面319)との間の距離d12(
図5)は、第1の表面実装部253(すなわち実装先の回路基板)に対するハウジング3の左方向への変位許容最大距離である。すなわち、第1の表面実装部253に対してハウジング3が左方向へ距離d12移動すると、被格納部251の側縁(右縁)とハウジング3の凸部311〜313、すなわち端子格納スリットの底面319とが接触し、左方向への距離d12以上のハウジング3の変位を規制する。
【0032】
コンタクト2の第2の曲げ起こし部262の前面(第2の表面実装部263から前方斜め上方向に延びる部分の前面)とハウジング3のカバー部315の後端面との間の距離d21は、第2の表面実装部263(すなわち実装先の回路基板)に対するハウジング3の後方向への変位許容最大距離である。すなわち、第2の表面実装部263に対してハウジング3が後方向へ距離d21移動すると、第2の曲げ起こし部262の前面とカバー部315の後端面とが接触し、後方向への距離d21以上のハウジング3の変位を規制する。
【0033】
実装先の回路基板に対するハウジング3の前方向への変位については、コンタクト2との接触による規制は無い。しかし、ハウジング3の前方向への変位により第2のU字状部232が最大収縮距離d22(
図6)縮むと、以降は弾性部22の弾性抵抗が増して更なるハウジング3の前方向への変位は実質的に規制される。
【0034】
以下、電気コネクタ1におけるフローティング機能の動作を説明する。
【0035】
図10〜
図13は、ハウジング3に前後左右方向の力が加わった場合の電気コネクタ1の底面図であり、
図10は右方向への力が加わった場合、
図11は左方向への力が加わった場合、
図12は後方向への力が加わった場合、
図13は前方向への力が加わった場合をそれぞれ示す。これらの図において、第1及び第2の表面実装部253,263は不図示の回路基板に固定されて当該回路基板に対して動かないものとしている。
【0036】
図10に示すように、ハウジング3に右方向への力が加わった場合、第1のU字状部231が縮む(閉じる)ことでハウジング3は第1及び第2の表面実装部253,263(すなわち実装先の回路基板)に対して右方向に変位できる。
図11に示すように、ハウジング3に左方向への力が加わった場合、第1のU字状部231が伸びる(開く)ことでハウジング3は第1及び第2の表面実装部253,263に対して左方向に変位できる。
図12に示すように、ハウジング3に後方向への力が加わった場合、第2のU字状部232が伸びる(開く)ことでハウジング3は第1及び第2の表面実装部253,263に対して後方向に変位できる。このとき、第2のU字状部232は第1のU字状部231よりも短いため、第2のU字状部232の伸縮だけでは、ハウジング3の前後方向への変位は左右方向への変位と比較して抵抗が強い(変位しにくい)。しかし、第2のU字状部232が開くことに加えて第2のU字状部232よりも長い第1のU字状部231が首振り(左方向に傾動)することによってもハウジング3を後方向に変位させることができ、後方向への変位時の抵抗が減じられる。
図13に示すように、ハウジング3に前方向への力が加わった場合、第2のU字状部232が縮む(閉じる)ことでハウジング3は第1及び第2の表面実装部253,263に対して前方向に変位できる。このとき、第2のU字状部232が閉じることに加えて第2のU字状部232よりも長い第1のU字状部231が首振り(右方向に傾動)することによってもハウジング3を前方向に変位させることができ、前方向への変位時の抵抗が減じられる。また、2方向への変位を組み合わせることで、斜め方向と回転方向での変位も可能である。
【0037】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0038】
(1) 実装側弾性部23の他端からそれぞれ下方に延びて先端側が前後方向に分かれた位置で回路基板への実装部となる第1及び第2の接続脚部25,26をコンタクト2が有するため、従来のようにコンタクトがハウジングの後方側の1箇所のみで基板に半田接続される場合と異なり、コンタクト2の他に別途補強板を設ける必要がない。このため、補強板を設けることによる部品点数や組立工数の増加が無い。また、補強板を用いながらフローティング機能を確保するためには、補強板にも弾性を持たせることが必要で一般的な補強板よりも形状が複雑かつ大型となり、さらに補強板の変位スペースの確保も必要であるが、本実施の形態では補強板が不要なため、従来のように補強板を用いる場合と比較して電気コネクタ全体として小型かつ低コストとなる。
【0039】
(2) コンタクト2の第1の接続脚部25の被格納部251が常にハウジング3のベース部31の下面とカバー部315との隙間(端子格納スリット)に収納されるため、ハウジング3に基板から剥離する方向の力が働いた際、カバー部315がコンタクト2の第1接続脚部25の被格納部251に引っ掛かってハウジング3がコンタクト2から分離して基板から剥離されることを別部品によらず防止可能である。なお、この剥離防止の役割を従来は補強板が担っていたが、本実施の形態では補強板を用いなくてもハウジング3の剥離を防止できる。
【0040】
(3) コンタクト2及びハウジング3が自身で前後左右各方向への過剰変位防止機能を有しており、過剰変位によるコンタクト2(特に実装側弾性部23)の過剰変形や破断を別部品によらず防止できる。なお、この過剰変位防止の役割を従来は補強板が担っていたが、本実施の形態では補強板を用いなくても過剰変位を防止できる。
【0041】
(4) コンタクト2の実装側弾性部23をハウジング3のベース部31の下面側に設けているため、前後方向に延びる第1のU字状部231と左右方向に延びる第2のU字状部232とが実装側弾性部23を構成できる。ここで、第1及び第2のU字状部231,232はねじれを伴わずに弾性変形可能であり、従来のように弾性部のねじれ変形で左右方向に変位する構成と異なり、上下方向への変位を伴わずに前後左右方向に変位させることが容易に可能である。また、左右方向に延びる第2のU字状部232を前後方向に延びる第1のU字状部231よりも短くすることで左右方向に並ぶコンタクト2の配列間隔を小さくしつつ、第2のU字状部232の弾性変形だけでは長さが短いために抵抗の大きい前後方向への変位を長さのある第1のU字状部231の首振りで補うことができ、前後方向への変位時の抵抗を減じることができる。
【0042】
図14は、本発明の実施の形態2に係る電気コネクタ1Aの右側断面図である。
図15及び
図16は、電気コネクタ1Aの斜視図である。この電気コネクタ1Aは、実施の形態1のものと比較して、コンタクト2の接点部226が上方に臨む点で相違し、その他の点は同様である。具体的には、接点側弾性部22は、基部21の前端の折曲げ部221から後方上側に延び、後方の折曲げ部225で下方に折り返された形状である。折曲げ部225には上方側に凸となって上方に臨む接点部226が例えばプレス加工にて形成されている。接続対象物の電極が上方から接点部226に押し付けられると、接点側弾性部22の弾性変形により接点部226は後退する。ハウジング3は、接点部226を突出させる溝部39を天井部36に有する。本実施の形態も、実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。
【0043】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0044】
電気コネクタの実装方式は表面実装に限らず、スルーホール実装としてもよい。
【0045】
1つのハウジング3に対するコンタクト2の装着数は3つに限らず、要求される仕様等に応じて適宜設定すればよい。
【符号の説明】
【0046】
1 電気コネクタ
2 コンタクト
21 基部
22 接点側弾性部
224 接点部
23 実装側弾性部
24 折返し部
25 第1の接続脚部
251 被格納部
252 第1の曲げ起こし部
253 第1の表面実装部
26 第2の接続脚部
262 第2の曲げ起こし部
263 第2の表面実装部
3 ハウジング
31 底面部
32,33 側壁部
34,35 仕切り壁部
36 天井部
38 孔部