特許第5896811号(P5896811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5896811チタンまたはチタン合金からなる鋳塊の連続鋳造用の鋳型およびこれを備えた連続鋳造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5896811
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】チタンまたはチタン合金からなる鋳塊の連続鋳造用の鋳型およびこれを備えた連続鋳造装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/055 20060101AFI20160317BHJP
   B22D 11/00 20060101ALI20160317BHJP
   B22D 11/04 20060101ALI20160317BHJP
【FI】
   B22D11/055 A
   B22D11/00 D
   B22D11/04 311F
   B22D11/04 311G
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-83683(P2012-83683)
(22)【出願日】2012年4月2日
(65)【公開番号】特開2013-212518(P2013-212518A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2014年9月1日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 瑛介
(72)【発明者】
【氏名】中岡 威博
(72)【発明者】
【氏名】堤 一之
(72)【発明者】
【氏名】大山 英人
(72)【発明者】
【氏名】金橋 秀豪
(72)【発明者】
【氏名】石田 斉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大喜
(72)【発明者】
【氏名】松若 大介
【審査官】 田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−31401(JP,A)
【文献】 特開平3−99752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/055
B22D 11/00
B22D 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタンまたはチタン合金からなる鋳塊の連続鋳造に用いられて、チタンまたはチタン合金を溶融させた溶湯が内部に注入される無底で断面矩形状の鋳型であって、
前記鋳型の4つのコーナー部における熱流束を、前記コーナー部同士で挟まれている4つの面部における熱流束よりも小さくする冷却手段を有し、
前記冷却手段は、
前記鋳型の4つの面部のみにそれぞれ埋設されて冷却流体が流動する流路と、
前記鋳型の4つのコーナー部にそれぞれ埋設されて前記鋳型よりも熱伝導率が低い緩冷却層と、
を有していることを特徴とするチタンまたはチタン合金からなる鋳塊の連続鋳造用の鋳型。
【請求項2】
チタンまたはチタン合金からなる鋳塊の連続鋳造に用いられて、チタンまたはチタン合金を溶融させた溶湯が内部に注入される無底で断面矩形状の鋳型であって、
前記鋳型の4つのコーナー部における熱流束を、前記コーナー部同士で挟まれている4つの面部における熱流束よりも小さくする冷却手段を有し、
前記冷却手段は、
前記鋳型の4つのコーナー部にそれぞれ埋設されて冷却流体が流動する第1流路と、
前記鋳型の4つの面部にそれぞれ埋設されて冷却流体が流動する第2流路と、
前記鋳型の4つのコーナー部において前記第1流路よりも前記鋳型の内周面側にそれぞれ埋設されて前記鋳型よりも熱伝導率が低い緩冷却層と、
を有し、
前記鋳型の内周面から前記第1流路までの距離は、前記鋳型の内周面から前記第2流路までの距離よりも長いことを特徴とするチタンまたはチタン合金からなる鋳塊の連続鋳造用の鋳型。
【請求項3】
前記第1流路および前記第2流路は、水平方向に延設されており、
前記冷却手段は、前記第1流路と前記第2流路とを繋ぐバイパス流路を更に有していることを特徴とする請求項に記載のチタンまたはチタン合金からなる鋳塊の連続鋳造用の鋳型。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の鋳型と、
前記鋳型内に前記溶湯を注入する溶湯注入装置と、
前記溶湯が前記鋳型内で凝固した鋳塊を前記鋳型の下方に引抜く引抜装置と、
を有することを特徴とするチタンまたはチタン合金からなる鋳塊の連続鋳造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタンまたはチタン合金からなる鋳塊を連続的に鋳造する、チタンまたはチタン合金からなる鋳塊の連続鋳造装置、および、これに用いられる鋳型に関する。
【背景技術】
【0002】
真空アーク溶解や電子ビーム溶解によって溶融させた金属を無底の鋳型内に注入して凝固させながら下方に引抜くことで、鋳塊を連続的に鋳造することが行われている。
【0003】
また、特許文献1には、チタンまたはチタン合金を不活性ガス雰囲気中でプラズマ溶解し、引続き不活性ガス雰囲気中にて連続鋳造により薄肉スラブを鋳造し、これを圧延してストリップを製造し、このストリップを圧延する、チタンまたはチタン合金圧延材の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−118773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、チタンまたはチタン合金からなる鋳塊を連続鋳造した際に、鋳造された鋳塊の表面(鋳肌)に凹凸や傷があると、その後の圧延過程で表面欠陥となる。そのため、圧延する前に鋳塊表面の凹凸や傷を切削等で取り除く必要があり、歩留まりの低下や作業工程の増加など、コストアップの要因となる。そのため、表面に凹凸や傷が無い鋳塊を鋳造することが求められる。
【0006】
ここで、鋳塊の表面欠陥は、鋳型の壁面近傍において凝固シェルが成長しすぎて湯面に露出し、湯被りが発生したり、鋳塊を鋳型から引抜く際に、成長した凝固シェルと鋳型との界面に作用する摩擦力で凝固シェルが断裂したり、凝固収縮した凝固シェルと鋳型との間に生じた隙間に溶湯が流れ込んで凝固したりすることで生じるものと推測される。
【0007】
そこで、鋳型の壁面近傍において凝固シェルの成長を抑制するには、加熱装置の出力を上げて、湯面への入熱量を上昇させ、凝固シェルを再溶融させる必要がある。しかし、湯面近傍では、鋳型からの抜熱が大きく、またチタンは熱伝導率が低いため、初期の凝固シェルを十分に溶解できない可能性がある。ここで、プラズマアーク溶解の場合、断面矩形状の鋳型の2つの辺が接するコーナー部を狙って加熱するのが、電子ビーム溶解に比べて困難であることも、壁面近傍の凝固シェルを再溶融できない理由の一つである。
【0008】
そこで、鋳型と溶湯との接触熱伝達率を下げて溶湯からの抜熱量を小さくすることで、鋳型と溶湯との界面を緩冷却して、初期の凝固シェルを溶融させることが考えられる。
【0009】
しかしながら、断面矩形状の鋳型においては、2つの辺が接するコーナー部の方が面部よりも溶湯が冷却され易いので、面部よりもコーナー部の方が凝固シェルの成長速度が速く、コーナー部に表面欠陥が生じやすいという問題がある。ここで、面部とは、鋳型において2つのコーナー部で挟まれた部分である。
【0010】
本発明の目的は、表面に欠陥が少ない鋳塊を鋳造することが可能なチタンまたはチタン合金からなる鋳塊の連続鋳造用の鋳型およびこれを備えた連続鋳造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明におけるチタンまたはチタン合金からなる鋳塊の連続鋳造用の鋳型は、チタンまたはチタン合金からなる鋳塊の連続鋳造に用いられて、チタンまたはチタン合金を溶融させた溶湯が内部に注入される無底で断面矩形状の鋳型であって、前記鋳型の4つのコーナー部における熱流束を、前記コーナー部同士で挟まれている4つの面部における熱流束よりも小さくする冷却手段を有し、前記冷却手段は、前記鋳型の4つの面部のみにそれぞれ埋設されて冷却流体が流動する流路と、前記鋳型の4つのコーナー部にそれぞれ埋設されて前記鋳型よりも熱伝導率が低い緩冷却層と、を有していることを特徴とする。
【0012】
上記の構成によれば、鋳型の4つのコーナー部における熱流束を、鋳型の4つの面部における熱流束よりも小さくすることで、コーナー部における溶湯の冷却速度と、面部における溶湯の冷却速度とを均一にすることができる。これにより、凝固シェルの形状を鋳型内で均一にすることができるから、湯被りや凝固シェルの断裂、凝固シェルの凝固収縮に起因する溶湯差込等の発生を抑制することができる。よって、表面に欠陥が少ない鋳塊を鋳造することができる。ここで、熱流束とは、単位面積・単位時間当たりの熱量を示すものである。
【0013】
また、鋳型の4つの面部にそれぞれ埋設された流路を流動する冷却流体により、面部に接する溶湯が冷却される一方、鋳型の4つのコーナー部には流路が設けられていないので、鋳型の4つのコーナー部における熱流束は、鋳型の4つの面部における熱流束よりも小さくなる。これにより、コーナー部における溶湯の冷却速度と、面部における溶湯の冷却速度とを均一にすることができる。
【0014】
また、鋳型の4つのコーナー部にそれぞれ埋設された緩冷却層により、鋳型の4つのコーナー部における熱流束は、鋳型の4つの面部における熱流束よりも小さくなる。これにより、コーナー部における溶湯の冷却速度と、面部における溶湯の冷却速度とを均一にすることができる。
【0015】
また、本発明におけるチタンまたはチタン合金からなる鋳塊の連続鋳造用の鋳型は、チタンまたはチタン合金からなる鋳塊の連続鋳造に用いられて、チタンまたはチタン合金を溶融させた溶湯が内部に注入される無底で断面矩形状の鋳型であって、前記鋳型の4つのコーナー部における熱流束を、前記コーナー部同士で挟まれている4つの面部における熱流束よりも小さくする冷却手段を有し、前記冷却手段は、前記鋳型の4つのコーナー部にそれぞれ埋設されて冷却流体が流動する第1流路と、前記鋳型の4つの面部にそれぞれ埋設されて冷却流体が流動する第2流路と、前記鋳型の4つのコーナー部において前記第1流路よりも前記鋳型の内周面側にそれぞれ埋設されて前記鋳型よりも熱伝導率が低い緩冷却層と、を有し、前記鋳型の内周面から前記第1流路までの距離は、前記鋳型の内周面から前記第2流路までの距離よりも長いことを特徴とする。上記の構成によれば、鋳型の4つのコーナー部にそれぞれ埋設された第1流路を流動する冷却流体により、コーナー部に接する溶湯が冷却されるとともに、鋳型の4つの面部にそれぞれ埋設された第2流路を流動する冷却流体により、面部に接する溶湯が冷却されるが、鋳型の内周面から第1流路までの距離が、鋳型の内周面から第2流路までの距離よりも長いので、鋳型の4つのコーナー部における熱流束は、鋳型の4つの面部における熱流束よりも小さくなる。これにより、コーナー部における溶湯の冷却速度と、面部における溶湯の冷却速度とを均一にすることができる。また、鋳型の4つのコーナー部にそれぞれ埋設された緩冷却層により、鋳型の4つのコーナー部における熱流束は、鋳型の4つの面部における熱流束よりも小さくなる。これにより、コーナー部における溶湯の冷却速度と、面部における溶湯の冷却速度とを均一にすることができる。
【0016】
また、本発明におけるチタンまたはチタン合金からなる鋳塊の連続鋳造用の鋳型において、前記第1流路および前記第2流路は、水平方向に延設されており、前記冷却手段は、前記第1流路と前記第2流路とを繋ぐバイパス流路を更に有していてよい。上記の構成によれば、水平方向に延設された第1流路および第2流路をバイパス流路で繋ぐことで、第1流路から第2流路にかけて冷却流体を流動させることができる。よって、流路の出入口の数を減らすことができて、冷却流体を流動させ易くできる。
【0018】
また、本発明におけるチタンまたはチタン合金からなる鋳塊の連続鋳造装置は、上記の鋳型と、前記鋳型内に前記溶湯を注入する溶湯注入装置と、前記溶湯が前記鋳型内で凝固した鋳塊を前記鋳型の下方に引抜く引抜装置と、を有することを特徴とする。
【0019】
上記の構成によれば、鋳型の4つのコーナー部における熱流束を、鋳型の4つの面部における熱流束よりも小さくすることで、コーナー部における溶湯の冷却速度と、面部における溶湯の冷却速度とを均一にすることができるから、凝固シェルの形状を鋳型内で均一にすることができて、表面に欠陥が少ない鋳塊を鋳造することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のチタンまたはチタン合金からなる鋳塊の連続鋳造用の鋳型およびこれを備えた連続鋳造装置によると、鋳型の4つのコーナー部における熱流束を、鋳型の4つの面部における熱流束よりも小さくすることで、コーナー部における溶湯の冷却速度と、面部における溶湯の冷却速度とを均一にすることができるから、凝固シェルの形状を鋳型内で均一にすることができて、表面に欠陥が少ない鋳塊を鋳造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】連続鋳造装置を示す斜視図である。
図2】連続鋳造装置を示す断面図である。
図3】表面欠陥の発生メカニズムを表す説明図である。
図4】表面欠陥の発生メカニズムを表す説明図である。
図5】表面欠陥の発生メカニズムを表す説明図である。
図6】鋳型を示す上面図である。
図7】要部Aの拡大断面図である。
図8】鋳型のB−B断面図である。
図9】鋳型のC−C断面図である。
図10】2次元伝熱凝固解析のモデルを示す上面図である。
図11】コーナー部付近の温度分布を示す図である。
図12】コーナー部付近の凝固界面分布を示す図である。
図13】鋳型を示す上面図である。
図14】鋳型を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
[第1実施形態]
(連続鋳造装置の構成)
本実施形態によるチタンまたはチタン合金からなる鋳塊の連続鋳造用の鋳型(鋳型)2は、チタンまたはチタン合金からなる鋳塊の連続鋳造装置(連続鋳造装置)1に設けられている。連続鋳造装置1は、斜視図である図1、および、断面図である図2に示すように、鋳型2と、コールドハース(溶湯注入装置)3と、原料投入装置4と、プラズマトーチ5と、スターティングブロック(引抜装置)6と、プラズマトーチ7と、を有している。連続鋳造装置1のまわりは、アルゴンガスやヘリウムガス等からなる不活性ガス雰囲気にされている。
【0024】
原料投入装置4は、コールドハース3内にスポンジチタンやスクラップ等のチタンまたはチタン合金の原料を投入する。プラズマトーチ5は、コールドハース3の上方に設けられており、プラズマアークを発生させてコールドハース3内の原料を溶融させる。コールドハース3は、原料が溶融した溶湯12を注湯部3aから鋳型2内に注入する。鋳型2は、銅製であって、無底で断面長方形状に形成されており、四辺をなす壁部の少なくとも一部の内部を循環する水によって冷却されるようになっている。スターティングブロック6は、図示しない駆動部によって上下動され、鋳型2の下側開口部を塞ぐことが可能である。プラズマトーチ7は、鋳型2の上方に設けられており、鋳型2内に注入された溶湯12の湯面をプラズマアークで加熱する。
【0025】
以上の構成において、鋳型2内に注入された溶湯12は、水冷式の鋳型2との接触面から凝固していく。そして、鋳型2の下側開口部を塞いでいたスターティングブロック6を所定の速度で下方に引き下ろしていくことで、溶湯12が凝固したスラブ11が下方に引抜かれながら連続的に鋳造される。なお、連続鋳造される鋳塊はスラブ11に限定されない。
【0026】
なお、真空雰囲気での電子ビーム溶解では微少成分が蒸発するために、チタン合金の鋳造は困難であるが、不活性ガス雰囲気でのプラズマアーク溶解では、純チタンだけでなく、チタン合金も鋳造することが可能である。また、溶湯12を緩冷却する目的で、溶湯12の湯面上にフラックスを散布することも好ましい態様ではあるが、真空雰囲気での電子ビーム溶解では、フラックスが飛散するのでフラックスを鋳型2内の溶湯12に投入するのが困難である。これに対して、不活性ガス雰囲気でのプラズマアーク溶解では、フラックスを鋳型2内の溶湯12に投入することができるという利点を有する。
【0027】
(表面欠陥の発生メカニズム)
ところで、チタンまたはチタン合金からなるスラブ11を連続鋳造した際に、スラブ11の表面(鋳肌)に凹凸や傷があると、次工程である圧延過程で表面欠陥となる。そのため、圧延する前にスラブ11表面の凹凸や傷を切削等で取り除く必要があり、歩留まりの低下や作業工程の増加など、コストアップの要因となる。そのため、表面に凹凸や傷が無いスラブ11を鋳造することが求められる。
【0028】
ここで、スラブ11の表面に生じる欠陥の中には、鋳型2の壁面近傍において凝固シェルが成長しすぎて湯面に露出し、湯被りが発生することで生じるものがあると推測される。そのメカニズムについて図3を用いて説明する。まず、図3(a)に示すように、鋳型2の壁面近傍において凝固シェル13が成長する。次に、図3(b)に示すように、鋳型2の壁面近傍に溶湯12が供給されない状態で、引抜きにより凝固シェル13が下降する。すると、図3(c)に示すように、凝固シェル13の上端が溶湯12の液面よりも低くなることで、凝固シェル13の上に溶湯12が流れ込む。そして、図3(d)に示すように、凝固シェル13の上に流れ込んだ溶湯12が凝固して凝固シェル13になることで、凝固シェル13に表面欠陥が生じ、これがスラブ11の表面欠陥となる。
【0029】
また、スラブ11の表面に生じる欠陥の中には、凝固シェル13の断裂により生じるものがあると推測される。そのメカニズムについて図4を用いて説明する。鋳型2の壁面近傍において成長した凝固シェル13が、引抜きにより下降する。このとき、成長した凝固シェル13と鋳型2との界面に作用する摩擦力で凝固シェル13が断裂し、この断裂がスラブ11の表面欠陥となる。
【0030】
また、スラブ11の表面に生じる欠陥の中には、凝固シェル13の凝固収縮に起因する溶湯差込により生じるものがあると推測される。そのメカニズムについて図5を用いて説明する。まず、図5(a)に示すように、過度に冷却された凝固シェル13が凝固収縮することで鋳型2の壁面から離れる方向に凝固シェル13が変形する。次に、図5(b)に示すように、鋳型2と凝固シェル13との間に生じた隙間に溶湯12が流れ込む。そして、図5(c)に示すように、隙間に流れ込んだ溶湯12が凝固して凝固シェル13になることで、凝固シェル13に表面欠陥が生じ、これがスラブ11の表面欠陥となる。
【0031】
(鋳型)
上述したように、鋳型2は、銅製で水冷式の水冷銅鋳型である。なお、鋳型2は銅製に限定されず、冷却流体は水に限定されない。鋳型2は、上面図である図6に示すように、断面長方形状であって、短辺の長さがL1で、長辺の長さがL2であり、4つのコーナー部2aと、4つの面部2bとからなる。ここで、面部2bとは、2つのコーナー部2aで挟まれた部分であり、面部2bにおける鋳型2の内周面および外周面は平面である。なお、面部2bにおける鋳型2の内周面および外周面は、熱変形を考慮に入れて若干湾曲されていてもよい。
【0032】
図6の要部Aの拡大断面図である図7に示すように、コーナー部2aの短辺および長辺に沿った水平方向の長さaは、面部2bの厚みlよりも長く、鋳型2の短辺の長さL1(図6参照)の半分よりも長い。即ち、コーナー部2aの水平方向の長さaと、面部2bの厚みlと、鋳型2の短辺の長さL1とは、l<a<L1/2の関係を満足している。
【0033】
なお、鋳型2の垂直方向の長さは200〜300mmである。これに対して、鋼を連続鋳造するのに使用される鋳型の垂直方向の長さは600mm以上である。これは、チタンやチタン合金は鋼に比べて速く凝固するので、垂直方向の冷却範囲を長くする必要がないからである。
【0034】
ここで、鋼の連続鋳造においては、2つの辺が接するコーナー部2aに溶鋼からの熱が集中するので、コーナー部2aに接する溶鋼の冷却速度が、面部2bに接する溶鋼の冷却速度よりも遅くなり、凝固組織が不均一になるという問題が生じる。そこで、鋼の連続鋳造においては、コーナー部2aにおける冷却能を向上させて、鋳型の表面温度を均一化する必要がある。一方、本実施形態のように、チタンまたはチタン合金の連続鋳造においては、鋼の場合と異なり、2つの辺が接するコーナー部2aの方が面部2bよりも溶湯12が冷却され易いので、面部2bよりもコーナー部2aの方が凝固シェル13の成長速度が速く、図3図5を用いて説明したメカニズムにより、コーナー部2aに表面欠陥が生じやすい。そこで、チタンまたはチタン合金の連続鋳造においては、コーナー部2aにおける冷却能を低減させて、コーナー部2aに接する溶湯12の冷却速度を減ずる必要がある。そのため、図6に示すように、鋳型2は、4つのコーナー部2aにおける熱流束を、4つの面部2bにおける熱流束よりも小さくする冷却手段21を有している。ここで、熱流束とは、単位面積・単位時間当たりの熱量を示すものである。
【0035】
冷却手段21は、図6および図7に示すように、鋳型2の4つのコーナー部2aにそれぞれ埋設されて水平方向に延設された、冷却水が流動する第1流路22aと、鋳型2の4つの面部2bにそれぞれ埋設されて水平方向に延設された、冷却水が流動する第2流路22bと、水平方向に延設されて第1流路22aと第2流路22bとを繋ぐバイパス流路22cと、を有している。
【0036】
第2流路22bは、図6のB−B断面図である図8(a)および図6のC−C断面図である図9(a)に示すように、上下方向に幅広な流路として鋳型2の上部から下部にわたって形成されていてもよいし、図6のB−B断面図である図8(b)および図6のC−C断面図である図9(b)に示すように、鋳型2の上部から下部にかけて等間隔に複数形成されていてもよい。なお、第2流路22bは、その一部が溶湯12の湯面と同じ高さ位置に設けられていることが好ましい。そして、鋳型2を作製するに当たり、外周面に溝が形成された内枠の外周に外枠を嵌めて鋳型2とすることで、内枠の溝を第2流路22bとする構成であってもよいし、銅を銅の溶湯に溶けない材料とともに鋳込んで鋳型2を作製し、その後、銅の溶湯に溶けない材料を取り除いてできた空間を第2流路22bとする構成であってもよい。第1流路22aおよびバイパス流路22cについても同様である。上述したように、鋳型2の垂直方向の長さは、鉄や鋼の連続鋳造用の鋳型よりも短いので、垂直方向に流路を形成するよりも、水平方向に流路を形成する方が、流路の数や、鋳型2の外周面において一の流路の出口と他の流路の入口とをつなぐ配管の数を少なくすることができて好適である。
【0037】
ここで、図7に示すように、鋳型2の内周面から第1流路22aまでの距離dは、鋳型2の内周面から第2流路22bまでの距離dよりも長い。そのため、鋳型2の4つのコーナー部2aにおける熱流束は、鋳型2の4つの面部2bにおける熱流束よりも小さくなる。
【0038】
具体的には、コーナー部2aの内周側の角を原点として、長辺方向をx軸方向、短辺方向をy軸方向とし、原点からコーナー部2aのx軸方向およびy軸方向の端までの距離をbとし、銅の熱伝導率をλCu、水温をTw、スラブ11の表面温度をTsとすると、面部2bにおけるx軸方向およびy軸方向の熱流束は、q=−λCu(Tw−Ts)/d、q≒0、または、q≒0、q=−λCu(Tw−Ts)/dで表わせる。一方、コーナー部2aにおけるx軸方向およびy軸方向の熱流束は、q=−λCu(Tw−Ts)/αd、q=−λCu(Tw−Ts)/αdで表わせる。ここで、d=αd(α>1)である。そのため、鋳型2の4つのコーナー部2aにおける熱流束は、鋳型2の4つの面部2bにおける熱流束よりも小さくなる。
【0039】
また、鋳型2の内周面からバイパス流路22cまでの距離dは、0≦y≦bのときに、d=αd−(α―1)dy/bとなり、b<yのときに、d=dとなる。また、鋳型2の内周面からバイパス流路22cまでの距離dは、0≦x≦bのときに、d=αd−(α―1)dx/bとなり、b<xのときに、d=dとなる。よって、x軸方向の熱流束は、q=−λCu(Tw−Ts)/dとなり、y軸方向の熱流束は、q=−λCu(Tw−Ts)/dとなる。
【0040】
そして、伝熱凝固計算によって、コーナー部2aと面部2bとで抜熱量が同程度となるb、αの範囲を限定していくことで、コーナー部2aにおける溶湯12の冷却速度と、面部2bにおける溶湯12の冷却速度とを均一にすることができる。これにより、凝固シェル13の形状を鋳型2内で均一にすることができるから、湯被りや凝固シェル13の断裂、凝固シェル13の凝固収縮に起因する溶湯差込等の発生を抑制することができる。
【0041】
また、冷却手段21は、鋳型2の4つのコーナー部2aにそれぞれ埋設された緩冷却層23を有している。この緩冷却層23は空気層であり、第1流路22aよりも鋳型2の内周面側に埋設されており、銅製の鋳型2よりも熱伝導率が低い。そのため、鋳型2の4つのコーナー部2aにおける熱流束は、鋳型2の4つの面部2bにおける熱流束よりも小さくなる。
【0042】
具体的には、銅の熱伝導率をλCu、緩冷却層23の熱伝導率をλ’、水温をTw、スラブ11の表面温度をTsとし、コーナー部2aの内周側の角と外周側の角とをむすぶ直線c上において、鋳型2の内周面から緩冷却層23までの距離をd、緩冷却層23の厚みをd、緩冷却層23から第1流路22aまでの距離をdとすると、緩冷却層23がない場合の熱流束は、q=−λCu(Tw−Ts)/(d+d+d)で表わせるのに対し、緩冷却層23がある場合の熱流束は、q’=−λCu(Tw−Ts)/(d+λCu/λ’+d)で表わせる。ここで、λ’<λCuであるので、q’<qとなり、緩冷却層23がある4つのコーナー部2aにおける熱流束は、緩冷却層23がない4つの面部2bにおける熱流束よりも小さくなる。よって、コーナー部2aにおける溶湯12の冷却速度と、面部2bにおける溶湯12の冷却速度とを均一にすることができる。
【0043】
なお、緩冷却層23は空気層に限定されず、銅よりも熱伝導率が低いチタン(Ti)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)などの金属からなるものであってもよい。
【0044】
(2次元伝熱凝固解析)
次に、図10に示すモデルを用いて2次元伝熱凝固解析を行った。上面図である図10(a)に示すように、長辺の長さが1500mmで短辺の長さが250mmの鋳型を用いて、均一加熱領域31の温度を2000℃で一定とした。また、図10(a)の要部Dの拡大図である図10(b)に示すように、コーナー部の長辺方向および短辺方向の長さをd(mm)とし、面部側外周面32における接触熱伝達条件として、熱伝達率をh=1500W/m/K、外部温度を200℃に設定するとともに、コーナー部側外周面33における接触熱伝達条件として、熱伝達率をh’=βh、外部温度を200℃に設定した。ここで、β<1である。そして、コーナー部の長さdとβとを表1のようにCase1〜6で異ならせて、コーナー部付近の温度分布を調べた。その結果を図11に示す。また、同様にしてコーナー部付近の凝固界面分布を調べた。その結果を図12に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
図11図12に示すように、Case1〜3ではコーナー部での冷却能が高すぎて、コーナー部での温度勾配が急になりすぎ、コーナー部において凝固シェルが成長しすぎている。逆に、Case4,5ではコーナー部での冷却能が低すぎて、コーナー部での温度勾配が緩くなりすぎ、コーナー部において凝固シェルの成長が遅れている。その点、Case6では、コーナー部での温度勾配が緩やかで、コーナー部における凝固シェルの成長が好適に抑制されている。このように、コーナー部における凝固シェルの成長を好適に抑制することで、凝固シェルの形状を鋳型内で均一にすることができる。
【0047】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係る鋳型2および連続鋳造装置1によると、鋳型2の4つのコーナー部2aにおける熱流束を、鋳型2の4つの面部2bにおける熱流束よりも小さくすることで、コーナー部2aにおける溶湯12の冷却速度と、面部2bにおける溶湯12の冷却速度とを均一にすることができる。これにより、凝固シェル13の形状を鋳型2内で均一にすることができるから、湯被りや凝固シェル13の断裂、凝固シェル13の凝固収縮に起因する溶湯差込等の発生を抑制することができる。よって、表面に欠陥が少ないスラブ11を鋳造することができる。
【0048】
また、鋳型2の4つのコーナー部2aにそれぞれ埋設された第1流路22aを流動する冷却水により、コーナー部2aに接する溶湯12が冷却されるとともに、鋳型2の4つの面部2bにそれぞれ埋設された第2流路22bを流動する冷却水により、面部2bに接する溶湯12が冷却されるが、鋳型2の内周面から第1流路22aまでの距離が、鋳型2の内周面から第2流路22bまでの距離よりも長いので、鋳型2の4つのコーナー部2aにおける熱流束は、鋳型2の4つの面部2bにおける熱流束よりも小さくなる。これにより、コーナー部2aにおける溶湯12の冷却速度と、面部2bにおける溶湯12の冷却速度とを均一にすることができる。
【0049】
また、水平方向に延設された第1流路22aおよび第2流路22bをバイパス流路22cで繋ぐことで、第1流路22aから第2流路22bにかけて冷却水を流動させることができる。よって、流路の出入口の数を減らすことができて、冷却水を流動させ易くできる。
【0050】
また、鋳型2の4つのコーナー部2aにそれぞれ埋設された緩冷却層23により、鋳型2の4つのコーナー部2aにおける熱流束は、鋳型2の4つの面部2bにおける熱流束よりも小さくなる。これにより、コーナー部2aにおける溶湯12の冷却速度と、面部2bにおける溶湯12の冷却速度とを均一にすることができる。
【0051】
(変形例)
なお、第1実施形態の鋳型2の第1の変形例として、鋳型2が有する冷却手段21は、第1流路22a、第2流路22b、および、バイパス流路22cのみを有していてもよい。即ち、冷却手段21は、緩冷却層23を有していなくてもよい。このような構成であっても、鋳型2の4つのコーナー部2aにおける熱流束を、鋳型2の4つの面部2bにおける熱流束よりも小さくすることができる。
【0052】
また、第1実施形態の鋳型2の第2の変形例として、鋳型2が有する冷却手段21は、緩冷却層23のみを有していてもよい。即ち、冷却手段21は、第1流路22a、第2流路22b、および、バイパス流路22cを有していなくてもよい。このような構成であっても、鋳型2の4つのコーナー部2aにおける熱流束を、鋳型2の4つの面部2bにおける熱流束よりも小さくすることができる。
【0053】
[第2実施形態]
(鋳型)
次に、本発明の第2実施形態に係る連続鋳造装置201について説明する。なお、上述した構成要素と同じ構成要素については、同じ参照番号を付してその説明を省略する。本実施形態の連続鋳造装置201が第1実施形態の連続鋳造装置1と異なる点は、上面図である図13に示すように、鋳型202が、4つのコーナー部2aにおける熱流束を、4つの面部2bにおける熱流束よりも小さくする冷却手段221を有している点である。
【0054】
冷却手段221は、鋳型202の4つの面部2bにそれぞれ埋設されて水平方向に延設された、冷却水が流動する流路222を有している。これら流路222には、流路222内に冷却水を導入する導入路223、および、流路222内から冷却水を排出する排出路224がそれぞれ接続されている。
【0055】
このように、冷却手段221は、4つのコーナー部2aに流路を備えていない。そのため、鋳型202の4つのコーナー部2aにおける熱流束は、鋳型202の4つの面部2bにおける熱流束よりも小さくなる。これにより、コーナー部2aにおける溶湯12の冷却速度と、面部2bにおける溶湯12の冷却速度とを均一にすることができる。
【0056】
なお、冷却手段221は、第1実施形態と同様に、4つのコーナー部2aにそれぞれ埋設された緩冷却層23を有していてもよい。
【0057】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係る鋳型202および連続鋳造装置201によると、鋳型2の4つの面部2bにそれぞれ埋設された流路222を流動する冷却水により、面部2bに接する溶湯12が冷却される一方、鋳型2の4つのコーナー部2aには流路が設けられていないので、鋳型2の4つのコーナー部2aにおける熱流束は、鋳型2の4つの面部2bにおける熱流束よりも小さくなる。これにより、コーナー部2aにおける溶湯12の冷却速度と、面部2bにおける溶湯12の冷却速度とを均一にすることができる。
【0058】
[第3実施形態]
(鋳型)
次に、本発明の第3実施形態に係る連続鋳造装置301について説明する。なお、上述した構成要素と同じ構成要素については、同じ参照番号を付してその説明を省略する。本実施形態の連続鋳造装置301が第1実施形態の連続鋳造装置1と異なる点は、上面図である図14に示すように、鋳型302が、4つのコーナー部2aにおける熱流束を、4つの面部2bにおける熱流束よりも小さくする冷却手段321を有している点である。
【0059】
冷却手段321は、鋳型302の4つのコーナー部2aにそれぞれ埋設されて水平方向に延設された、冷却水が流動する第1流路322aと、鋳型302の4つの面部2bにそれぞれ埋設されて水平方向に延設された、冷却水が流動する第2流路322bと、を有している。これら流路322a,322bには、流路322a,322b内に冷却水を導入する導入路323、および、流路322a,322b内から冷却水を排出する排出路324がそれぞれ接続されている。つまり、第1流路322aと第2流路322bとは連通していない。
【0060】
ここで、鋳型302の内周面から第1流路322aまでの距離dは、鋳型302の内周面から第2流路322bまでの距離dよりも長い。そのため、鋳型302の4つのコーナー部2aにおける熱流束は、鋳型302の4つの面部2bにおける熱流束よりも小さくなる。これにより、コーナー部2aにおける溶湯12の冷却速度と、面部2bにおける溶湯12の冷却速度とを均一にすることができる。
【0061】
また、第1流路322aを流れる冷却水の流速は、第2流路322bを流れる冷却水の流速よりも遅くされている。これにより、4つのコーナー部2aにおける熱流束を、4つの面部2bにおける熱流束よりも好適に小さくすることができる。なお、流路の断面形状が円の場合、冷却水の流速をu、流量をQ、流路断面積をE、流路径をeとすると、u=Q/E、E=πe/4の関係を満たす。よって、第1流路322aと第2流路322bとで冷却水の流量Qが一定の場合、コーナー部2aと面部2bとで流路径eを調整することで、冷却水の流速uを制御することができる。また、第1流路322aと第2流路322bとで流路径eが同じ場合、コーナー部2aと面部2bとで流量Qを調整することで、冷却水の流速uを制御することができる。また、第1流路322aを流れる冷却水の温度が、第2流路322bを流れる冷却水の温度よりも高くされていてもよい。
【0062】
なお、冷却手段321は、第1実施形態と同様に、4つのコーナー部2aにそれぞれ埋設された緩冷却層23を有していてもよい。
【0063】
(本実施形態の変形例)
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0064】
例えば、プラズマトーチ7からのプラズマアークで溶湯12の湯面を加熱する構成が好適ではあるが、これに限定されず、電子ビームや非消耗電極式アーク、高周波誘導加熱により溶湯12の湯面を加熱する構成であってもよい。
【0065】
また、第1実施形態の第1流路22a、第2流路22b、バイパス流路22c、第2実施形態の流路222、および、第3実施形態の第1流路322a、第2流路322bは、いずれも水平方向に延設されているが、上下方向に延設されていてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1,201,301 連続鋳造装置
2,202,302 鋳型
2a コーナー部
2b 面部
3 コールドハース(溶湯注入装置)
3a 注湯部
4 原料投入装置
5 プラズマトーチ
6 スターティングブロック(引抜装置)
7 プラズマトーチ
11 スラブ
12 溶湯
13 凝固シェル
21,221,321 冷却手段
22a,322a 第1流路
22b,322b 第2流路
22c バイパス流路
23 緩冷却層
31 均一加熱領域
32 面部側外周面
33 コーナー部側外周面
222 流路
223,323 導入路
224,324 排出路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図11
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