【実施例1】
【0038】
(本発明の順序に従った三層ニッケル:平滑なニッケル→半光沢ニッケル→リン-ニッケル)
銅片を陰極に接続するとともに、脱脂浴に浸漬する。電圧を5 - 10Vに設定し、約2分間の脱脂を行う。そして、脱イオン水で洗浄した後、10%の硫酸で浸漬して中和かつ活性化させる。再び脱イオン水で洗浄する。スルファミン酸ニッケル100g/L、塩化ニッケル30g/L、ホウ酸40g/L、
コーキング剤NHL56LE(市販、RamChem社製品)10mL/L、光沢剤NHL56BR(市販、RamChem社製品)6 mL/Lの成分を含むめっき液で、サンプルを浸漬して平滑なニッケルに電気めっきを施す。電解浴のpHが約3.8である。電流密度15ASDと温度60℃の条件下で、電気めっきを施す。50秒間の電気めっきを施した後、40〜60μインチの平滑なニッケル層が得られる。
それから、脱イオン水でサンプルを洗浄し、スルファミン酸ニッケル80g/L、塩化ニッケル13g/L、ホウ酸40g/L、湿潤剤WA31(市販、RamChem社製品)10mL/L、光沢剤BR311(市販、RamChem社製品)2mL/Lの成分を含む第二の電気めっき液で、サンプルを浸漬して半光沢ニッケルに電気めっきを施す。8ASDの条件下で90秒間電気めっきした後、
40〜60μインチの半光沢ニッケルが得られる。採用した電気めっき浴のPHが3.8であり、温度を58℃に維持させる。
【0039】
続きのステップは、最表層としてリン-ニッケルを電気めっきすることである。脱イオン水でサンプルを洗浄し、スルファミン酸ニッケル100g/L、塩化ニッケル15g/L、ホウ酸40g/L、酸化剤RamTech Nicka 1225 R2(市販、RamChem社製品)30mL/L、光沢剤RamTech Nicka 1225 BR(市販、RamChem社製品)11mL/L、リン補充剤RamTech Nicka 1225 SA(市販、RamChem社製品)15mL/Lの成分を含む第三の電気めっき液で、サンプルを浸漬し、10ASDの条件下で、16秒間電気めっきをした後、15〜30μインチのリン-ニッケルが得られる。採用した電気めっき浴の温度を60℃に、PHを1.5に維持させる。
【0040】
本実施例に得られる三層ニッケル電気めっきのサンプルに対して、電子顕微鏡(SEM)で分析し、
図1は、その断面図である。1は三層ニッケル電気めっきのサンプルにおける第一層の平滑なニッケルであり、3は前記表層のリン-ニッケルであり、該断面図により、中間の2、つまり第二層の半光沢ニッケルが相対的に疎なであるとともに、被めっき金属基材の表面とほぼ垂直になる柱状構造を有することが見られる。
【0041】
比較実施例1(二層ニッケル:半光沢ニッケル→リン-ニッケル):
実施例1に記載の手順に基づいて、銅片上に厚さ
40〜60μインチの半光沢ニッケルを電気めっきし、その後厚さ15〜30μインチのリン-ニッケルを電気めっきする。
【0042】
比較実施例2(二層ニッケル:平滑なニッケル→リン-ニッケル):
実施例1に記載の手順に基づいて、銅片上に厚さ
40〜60μインチの平滑なニッケルを電気めっきし、その後厚さ15〜30μインチのリン-ニッケルを電気めっきする。
【0043】
比較実施例3(順序を変更させた三層ニッケル:半光沢ニッケル→平滑なニッケル→リン-ニッケル):
実施例1に記載の手順に基づいて、銅片上に厚さ40〜80μインチの半光沢ニッケルを電気めっきし、その後基材に厚さ40〜60μインチの平滑なニッケルを電気めっきする。それから、厚さ15〜30μインチのリン-ニッケルを電気めっきする。
【0044】
実施例2(本発明の順序に従った三層ニッケル-貴金属電気めっき:平滑なニッケル→半光沢ニッケル→リン-ニッケル→パラジウム-ニッケル→金コバルト):
実施例1に記載の手順に基づいて、銅片上に三層のニッケルを電気めっきする。その後、Pd-Ni電気めっきを施す。それから、Au-Coを電気めっきし、厚さ4〜6μインチの金コバルト層が得られ、該金-コバルトめっき層は、サンプルの耐食性と溶接性をさらに向上させる。
【0045】
比較実施例4(二層ニッケル-貴金属電気めっき:半光沢ニッケル→リン-ニッケル→Pd-Ni→Au-Co):
実施例1に記載の手順に基づいて、銅片上に厚さ120〜140μインチの半光沢ニッケルおよび厚さ30μインチのリン-ニッケルを電気し、その後厚さ25〜30μインチのPd-Niを電気めっきする。最後に、厚さ4〜6μインチのAu-Coを電気めっきする。
【0046】
本発明の複合多層ニッケルの電気めっき方法による効果を検証するため、サンプルに対して耐コーラ電解試験、硝酸蒸気試験、塩水噴霧試験と内部応力試験を行う。以下に詳しく説明する。
【0047】
耐コーラ電解試験:
実施例1、2と比較実施例1〜4によりよって製造された全てのサンプルに耐コーラ電解試験を行う。耐コーラ電解試験の一般工程は下記のようになる。耐コーラ試験の浴液は、5%のNaClを混合した100%のコーラを含む。ステンレス鋼を陰極とする。室温で標準の洗浄と脱脂工程を経過したサンプルをコーラの混合溶液に10分間の電解を行い、電圧が5Vに設定される。次いて、サンプルを超音波液中に配置し、脱イオン水で洗浄し、かつ乾燥し、その後10倍の顕微鏡でサンプルに画像処理し、腐食面積と総面積との割合を推定し、評価は下記の基準で判断した。即ち、腐食面積と総面積の割合が、10%より小さい時に、「優」、10 〜 30 %の時に、「合格」、30%より大きい時に、「不合格」とする。
【0048】
結果としては、比較実施例4>実施例2>実施例1>比較実施例3>比較実施例1≒比較実施例2となる。
【0049】
硝酸蒸気試験:
実施例1、2と比較実施例1〜4によって製造された全てのサンプルに、米国試験材料協会基準ASTM B735-2000により硝酸蒸気実験を行い、異なるニッケルでベースにする貴金属層を比較する。操作後のサンプルを10倍の顕微鏡で観察し、顕微鏡下で直径が0.5mm以上の腐食点の数を記録するとともに、評価は下記の基準で判断した。即ち、腐食点の数が5以下である時に、「合格」、腐食点の数が5より大きい時に、「不合格」とする。
結果としては、実施例2>比較実施例4となる。
説明:実施例1と比較実施例1〜3によって製造されたサンプルは、いずれも硝酸蒸気試験に不合格し、貴金属をめっきした材料のみ硝酸蒸気試験に合格する。硝酸試験により、異なるニッケルでベースにする貴金属層における硝酸に対する抵抗性を比較する。結果としては、実施例1の順序による三層ニッケルを貴金属の下地層とするのは好ましい。
【0050】
塩水噴霧試験:
実施例1と比較実施例1〜3によって製造されたサンプルに、米国試験材料協会基準ASTM B799により塩水噴霧試験を行う。その結果を下記表に示す。
【0051】
表4 塩水噴霧試験結果
【0052】
表4に示す試験結果に示すように、24時間の塩水噴霧試験を経過した後、二層ニッケルをめっきしたサンプルおよび変更した順序でめっきした三層ニッケルのサンプルより、本発明の実施例1の順序(平滑なニッケル/半光沢ニッケル/リン-ニッケル)に基づいてめっきした三層ニッケルのサンプル表面上には、腐食することなく変色も最小である。
【0053】
内部応力試験:
めっき層応力分析装置(SpecialityTesting & DevelopmentCo.社製造)で、多層ニッケル電気めっきを該会社に製造された特定のストリップ状試験片に電気めっきし、その後内部応力を測定する。以下のサンプルに測定を行った。全ての試験サンプルにほぼ同じ厚さのニッケルをめっきした。
(1)平滑なニッケル(15 ASD, 150 sec)
(2)半光沢ニッケル(8 ASD, 180 sec)
(3)リン-ニッケル(15 ASD, 300 sec)
(4)平滑なニッケル(15 ASD, 75 sec)→リン-ニッケル(10 ASD, 60 sec)
(5)平滑なニッケル(15 ASD, 75 sec)→半光沢ニッケル(8 ASD, 60 sec)→リン-ニッケル(10 ASD, 60 sec)
(6)半光沢ニッケル(8 ASD、 90 sec)→平滑なニッケル(15ASD, 15sec)→半光沢ニッケル(8 ASD、 90sec)リン-ニッケル(10 ASD, 30 sec)
(7)平滑なニッケル(15ASD、15sec)→半光沢ニッケル(8 ASD、 90 sec)→平滑なニッケル(15ASD、15sec)→半光沢ニッケル(8 ASD、 60 sec)→リン-ニッケル(10 ASD, 30 sec)
【0054】
めっき浴条件:双陽極とし、陽極とテストサンプルの間の距離を3インチとし、テストサンプルの表面積を0.0774dm
2までとした。
【0055】
計算式
ニッケルめっき層厚さ(インチ):T =[(めっき後重量-元の重量)/特定金属密度]×0.0509
内部応力(パウンド/平方インチ)=[陽極から陰極までの距離/(3×厚さ)]×テスト定数
ここで、テスト常数は、特定ストリップ状試験片の校正常数であり、メーカーに提供されるものである。
【0056】
それ以外、端子偏り方向は、めっき層における応力の方向に示すものである。テスト領域の端子が外へ向かって被電気めっき側まで張り出せれば(電気めっき面が外、耐食面が内である)、前記めっき層の応力属性が引張応力である。テスト領域の端子が内へ向かって被電気めっき側まで張り出せれば(電気めっき面が外、耐食面が内である)、前記めっき層の応力属性が圧縮応力である。
【0057】
表5 内部応力試験結果
*psi:パウンド/平方インチ(poundsper squareinch)。
【0058】
上記結果からは、下記のことが明らかに分かる。
(1) 半光沢ニッケルは、圧縮内部応力を有するが、平滑なニッケルとリン-ニッケルには、引張内部応力が存在する。
(2) 内部応力の異なる方向で、平滑なニッケルとリン-ニッケルとの間に半光沢ニッケルをめっきする時に、例えば、サンプルDとサンプルEとを比較し、内部応力は、11124.67psi(サンプルD)から2566.97psi(サンプルE)まで大幅に減少し、内部応力の数値は77%減少する。
【0059】
溶接性試験:
実施例1、2と比較実施例1〜4によって製造された全てのサンプルに、溶接性試験を行う。米国電子回路協会のプリント基板溶接性試験基準IPC/EIAJ-STD-003Aに記載の湿潤平衡試験装置により溶接性を評価した。
【0060】
結果:実施例2≒比較実施例4>実施例1≒比較実施例3>比較実施例1≒比較実施例2
説明:本発明の順序でのニッケル電気めっき層は、溶接性に優れ、貴金属をめっきした表層によってさらに溶接性を向上させる。