(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5896907
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】動吸振器とねじり振動ダンパとを備えたハイドロダイナミック式のトルクコンバータ
(51)【国際特許分類】
F16H 45/02 20060101AFI20160317BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20160317BHJP
F16F 15/123 20060101ALI20160317BHJP
【FI】
F16H45/02 Y
F16F15/02 C
F16F15/123 Z
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-531235(P2012-531235)
(86)(22)【出願日】2010年8月23日
(65)【公表番号】特表2013-506100(P2013-506100A)
(43)【公表日】2013年2月21日
(86)【国際出願番号】DE2010000984
(87)【国際公開番号】WO2011035758
(87)【国際公開日】20110331
【審査請求日】2013年8月20日
【審判番号】不服2015-4635(P2015-4635/J1)
【審判請求日】2015年3月10日
(31)【優先権主張番号】102009043166.7
(32)【優先日】2009年9月28日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ヒューゲル
(72)【発明者】
【氏名】トアステン クラウゼ
【合議体】
【審判長】
冨岡 和人
【審判官】
中川 隆司
【審判官】
大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102008057648(DE,A1)
【文献】
特開平10−238611(JP,A)
【文献】
特開2001−116111(JP,A)
【文献】
特開2007−113661(JP,A)
【文献】
特開2004−278744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H45/02,F16F15/02,F16F15/123
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロダイナミック式のトルクコンバータ(10)であって、該トルクコンバータ(10)が、ハウジング内に収納されたポンプホイールと、該ポンプホイールによって駆動可能なタービンホイール(12)と、ねじり振動ダンパ(18)とを備えており、
該ねじり振動ダンパ(18)が、ダンパ入力部材(20)と、それぞれ少なくとも1つのエネルギ蓄えエレメント(26)を備えた直列に接続された少なくとも2つのダンパ段の作用に抗してダンパ入力部材(20)に対して制限されて回動可能なダンパ出力部材(22)とを有していて、前記ダンパ段の間に配置された、動吸振器(50)を間接的にまたは直接的に取り付けるダンパ中間部材(24)を有しており、
前記ダンパ段のエネルギ蓄えエレメント(26)が、トルクコンバータ(10)の回転軸線(100)に対して等しい半径方向の間隔を置いて且つ周方向に隣り合って配置されているハイドロダイナミック式のトルクコンバータにおいて、
動吸振器(50)が、ねじり振動ダンパ(18)に軸方向で隣り合って配置されていることを特徴とする、ハイドロダイナミック式のトルクコンバータ。
【請求項2】
動吸振器(50)が、回転数適応型である、請求項1記載のハイドロダイナミック式のトルクコンバータ。
【請求項3】
動吸振器(50)が、遠心振り子として形成されている、請求項2記載のハイドロダイナミック式のトルクコンバータ。
【請求項4】
タービンホイール(12)が、少なくとも1つのダンパ段の作用に抗してダンパ出力部材(22)に対して回動可能である、請求項1から3までのいずれか1項記載のハイドロダイナミック式のトルクコンバータ。
【請求項5】
タービンホイール(12)が、ダンパ中間部材(24)に相対回動不能に結合されている、請求項4記載のハイドロダイナミック式のトルクコンバータ。
【請求項6】
タービンホイール(12)が、ダンパ入力部材(20)に相対回動不能に結合されている、請求項4記載のハイドロダイナミック式のトルクコンバータ。
【請求項7】
エネルギ蓄えエレメント(26)が、周方向に延びる位置決め部材(28)の半径方向内側に収容されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のハイドロダイナミック式のトルクコンバータ。
【請求項8】
1つのダンパ段が、少なくとも2つのエネルギ蓄えエレメント(26)を有している、請求項1から7までのいずれか1項記載のハイドロダイナミック式のトルクコンバータ。
【請求項9】
1つのダンパ段の1つのエネルギ蓄えエレメントが、別のエネルギ蓄えエレメントを収容している、請求項8記載のハイドロダイナミック式のトルクコンバータ。
【請求項10】
1つのダンパ段のエネルギ蓄えエレメント(26)が、並列に接続されている、請求項8または9記載のハイドロダイナミック式のトルクコンバータ。
【請求項11】
ねじり振動ダンパ(18)が、2つの前記ダンパ段を有しており、エネルギ蓄えエレメント(26)が、それぞれ1つのダンパ段における総剛性に作用する剛性を有しており、前記2つのダンパ段の一方のダンパ段の総剛性が、他方のダンパ段の総剛性と異なっている、請求項1から10までのいずれか1項記載のハイドロダイナミック式のトルクコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロダイナミック式のトルクコンバータであって、該トルクコンバータが、ハウジング内に収納されたポンプホイールと、該ポンプホイールによって駆動可能なタービンホイールと、ねじり振動ダンパとを備えており、該ねじり振動ダンパが、ダンパ入力部材と、それぞれ少なくとも1つのエネルギ蓄えエレメントを備えた有効に直列に接続された少なくとも2つのダンパ段の作用に抗してダンパ入力部材に対して制限されて回動可能なダンパ出力部材とを有していて、前記ダンパ段の間に有効に配置された、動吸振器を間接的にまたは直接的に取り付けるダンパ中間部材を有しており、前記ダンパ段のエネルギ蓄えエレメントが、主として、共通の半径において配置されているハイドロダイナミック式のトルクコンバータに関する。
【0002】
このようなハイドロダイナミック式のトルクコンバータは一般的に公知である。この公知のトルクコンバータは自動車のパワートレーンにおいて、有利には入力側と出力側との間に配置することができる。トルクコンバータのハウジングの内部には、入力側に結合されたポンプホイールが配置されている。このポンプホイールはタービンホイールを駆動することができる。このタービンホイールはねじり振動ダンパの作用を介して出力側に結合されている。ねじり振動ダンパは、入力側と出力側との間のねじり振動を減少させるための優先的な役割を有している。
【0003】
このためには、ねじり振動ダンパが、入力部材、たとえばロックアップクラッチに結合されたダンパ入力部材と、出力部材、たとえばダンパハブに結合された、それぞれ複数のエネルギ蓄えエレメントを備えた有効に直列に接続された2つのダンパ段の作用に抗してダンパ入力部材に対して制限されて回動可能なダンパ出力部材とを有している。両ダンパ段のエネルギ蓄えエレメントは共通の半径において配置されている。これによって、ねじり振動ダンパおよびハイドロダイナミック式のトルクコンバータの良好なねじり振動減衰を達成することができる。さらに、両ダンパ段のエネルギ蓄えエレメントは、有効にダンパ中間部材を介して互いに接続されている。このダンパ中間部材の半径方向の延長部には、たとえば遠心振り子の形の動吸振器が取り付けられている。この動吸振器はねじり振動ダンパのねじり振動減衰を改善する。
【0004】
本発明の課題は、可能な限り良好なねじり振動減衰でハイドロダイナミック式のトルクコンバータの構成スペースを減少させることである。
【0005】
この課題を解決するために本発明に係るハイドロダイナミック式のトルクコンバータによれば、動吸振器が、ねじり振動ダンパに軸方向で隣り合って配置されている。
【0006】
本発明に係るハイドロダイナミック式のトルクコンバータの有利な態様によれば、動吸振器が、回転数に適応するように有効であり、特に遠心振り子として形成されている。
【0007】
本発明に係るハイドロダイナミック式のトルクコンバータの有利な態様によれば、タービンホイールが、少なくとも1つのダンパ段の作用に抗してダンパ出力部材に対して回動可能である。
【0008】
本発明に係るハイドロダイナミック式のトルクコンバータの有利な態様によれば、タービンホイールが、ダンパ中間部材に相対回動不能に結合されている。
【0009】
本発明に係るハイドロダイナミック式のトルクコンバータの有利な態様によれば、タービンホイールが、ダンパ入力部材に相対回動不能に結合されている。
【0010】
本発明に係るハイドロダイナミック式のトルクコンバータの有利な態様によれば、エネルギ蓄えエレメントが、周方向に延びる位置決め部材の半径方向内側に収容されている。
【0011】
本発明に係るハイドロダイナミック式のトルクコンバータの有利な態様によれば、1つのダンパ段が、少なくとも2つのエネルギ蓄えエレメントを有している。
【0012】
本発明に係るハイドロダイナミック式のトルクコンバータの有利な態様によれば、1つのダンパ段の1つのエネルギ蓄えエレメントが、別のエネルギ蓄えエレメントを収容している。
【0013】
本発明に係るハイドロダイナミック式のトルクコンバータの有利な態様によれば、1つのダンパ段のエネルギ蓄えエレメントが、並列に有効に接続可能である。
【0014】
本発明に係るハイドロダイナミック式のトルクコンバータの有利な態様によれば、エネルギ蓄えエレメントが、それぞれ1つのダンパ段に対して総剛性として作用する剛性を有しており、1つのダンパ段の総剛性が、別のダンパ段の総剛性と異なっている。
【0015】
本発明によれば、ハイドロダイナミック式のトルクコンバータは、ハウジング内に収納されたポンプホイールと、このポンプホイールによって駆動可能なタービンホイールと、ねじり振動ダンパとを備えている。このねじり振動ダンパは、ダンパ入力部材と、それぞれ少なくとも1つのエネルギ蓄えエレメントを備えた有効に直列に接続された少なくとも2つのダンパ段の作用に抗してダンパ入力部材に対して制限されて回動可能なダンパ出力部材とを有している。エネルギ蓄えエレメントは、任意に形成されたばね弾性的なエレメント、特にコイルばね、たとえば円弧状ばねまたは圧縮ばねとして形成することができる。さらに、ねじり振動ダンパは、ダンパ段の間に有効に配置された、動吸振器を間接的にまたは直接的に取り付けるダンパ中間部材を有している。ダンパ段のエネルギ蓄えエレメントは、主として、共通の半径において配置されている。動吸振器は、軸方向でねじり振動ダンパに隣り合って配置されている。これによって、ハイドロダイナミック式のトルクコンバータの構成スペースを、特に半径方向の延在長さに関して減少させることができ、一方、良好なねじり振動減衰を達成することができる。ダンパ入力部材は、入力部材、たとえばロックアップクラッチに結合されていてよく、ダンパ出力部材は、出力部材、たとえば、伝動装置に結合可能なダンパハブに取り付けられていてよく、かつ/またはダンパハブに相対回動不能に結合されていてよい。
【0016】
「半径方向」という表現は、ハイドロダイナミック式のトルクコンバータの共通の回転軸線を基準としている。「半径方向」は、回転軸線に対して垂直な平面内での位置関係を表しており、「軸方向」は、回転軸線または回転軸線に対して平行な線に沿った位置関係を表している。
【0017】
有利には、動吸振器が、回転数に適応するように有効であり、特に遠心振り子として形成されている。回転数適応型の動吸振器は、たとえば多種の周波数の振動を吸振することができることによって、ねじり振動絶縁の改善された特性を有している。
【0018】
本発明の有利な態様では、タービンホイールが、少なくとも1つのダンパ段の作用に抗してダンパ出力部材に対して回動可能である。これによって、ねじり振動ダンパが、いわゆる「タービンダンパ」として作用する。タービンホイールは、有利にはダンパ中間部材に間接的にまたは直接的に、しかし、いずれにせよ、相対回動不能に結合されていてもよいし、ある程度の回動角の範囲内で回動可能であるものの、この回動角の範囲外では相対回動不能に結合されていてもよい。ねじり振動ダンパへのタービンホイールのこの結合によって、このタービンホイールがその振動技術的に有効な質量体で少なくとも2つのダンパ段の間に有効に挿入されている。これによって、ハイドロダイナミック式のトルクコンバータのねじり振動減衰に関する利点が得られる。
【0019】
別の態様では、タービンホイールが、ダンパ入力部材に相対回動不能に結合されている。これによって、タービンホイールの質量体が入力側で、すなわち、ダンパ段の前方で作用する。このことは、特定の状況下で振動技術的な利点を提供する。
【0020】
本発明における態様では、エネルギ蓄えエレメントが、周方向に延びる位置決め部材の半径方向内側に収容されている。この位置決め部材は、たとえばリテーナとして形成することができる。このリテーナはエネルギ蓄えエレメントを部分的に取り囲んでいて、これによって、エネルギ蓄えエレメントの軸方向のかつ/または半径方向の変位に対して位置決めすることができる。
【0021】
本発明における別の態様では、1つのダンパ段が、少なくとも2つのエネルギ蓄えエレメントを有している。これらのエネルギ蓄えエレメントは、周方向に互いに間隔を置いて配置されていてよい。有利には、1つのダンパ段のエネルギ蓄えエレメントが、並列に有効に接続可能である。また、1つのダンパ段の1つのエネルギ蓄えエレメントが、別のエネルギ蓄えエレメントを収容しており、これら両エネルギ蓄えエレメントが、並列に有効に接続可能であることも可能である。たとえば、1つのエネルギ蓄えエレメントが、適切に寸法設定された内周を備えていてよく、相応により小さな外周を備えた別のエネルギ蓄えエレメントをより大きなエネルギ蓄えエレメント内に導入することができる。これら両エネルギ蓄えエレメントの周方向の長さは等しくてもよいし、異なっていてもよい。両エネルギ蓄えエレメントの長さが等しい場合には、これら両エネルギ蓄えエレメントが並列に作用するのに対して、たとえば、それぞれ異なる長さの場合の並列の有効性は、規定の回動角以降に初めて始まるようになっている。
【0022】
本発明における別の態様では、エネルギ蓄えエレメントが、それぞれ1つのダンパ段に対してダンパ段の総剛性として作用する剛性を有しており、1つのダンパ段の総剛性が、別のダンパ段の総剛性と異なっている。有利には、第1のダンパ段の総剛性、すなわち、ダンパ入力部材とダンパ中間部材との間の総剛性は、別のダンパ段の総剛性よりも低く設定されている。
【0023】
本発明の更なる利点および有利な態様は、以下の図面ならびに図面の説明部分の対象である。なお、図面では、理解しやすくするために、縮尺通りの再現が省略してある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の1つの実施の形態に係るハイドロダイナミック式のトルクコンバータの部分横断面図である。
【
図2】本発明の別の実施の形態に係るハイドロダイナミック式のトルクコンバータの部分横断面図である。
【0025】
図1には、回転軸線100に対して垂直な平面における、本発明の1つの実施の形態に係るハイドロダイナミック(流体力学)式のトルクコンバータ10の部分横断面図が示してある。このハイドロダイナミック式のトルクコンバータ10はタービンホイール12を有している。このタービンホイール12はポンプホイール(図示せず)によって駆動可能である。このポンプホイールは、たとえば内燃機関によって形成された入力側に結合されている。この入力側と、たとえば伝動装置によって形成された出力側との間での、ポンプホイールとタービンホイール12とを介したハイドロダイナミック的なトルク伝達の直結は、ロックアップクラッチの締結によって行うことができる。このためには、このロックアップクラッチの摩擦板支持体16が、結合エレメント34、たとえばリベットまたはスペーサピンを介してねじり振動ダンパ18のダンパ入力部材20に相対回動不能に結合されている。また、この結合は、択一的な形状接続的な固定方法、摩擦接続的な固定方法または材料接続的な固定方法、たとえば溶接、ねじ締結またはかしめ加工によって行われてもよい。
【0026】
摩擦板支持体16の半径方向外側には、ねじり振動ダンパ18が、周方向に(円周上に)配置されたエネルギ蓄えエレメント26を有している。これによって、ダンパ入力部材20が、第1のダンパ段とエネルギ蓄えエレメント26とを介して、このエネルギ蓄えエレメント26の作用に抗してダンパ中間部材24、たとえば中間フランジに対して回動可能となる。このダンパ中間部材24は、回転軸線100に対して等しい半径で周方向に第1のダンパ段のエネルギ蓄えエレメント26に隣り合って配置された別の第2のダンパ段の別のエネルギ蓄えエレメント26の作用を介して、ねじり振動ダンパ18のダンパ出力部材22に対して回動可能となる。第1のダンパ段と第2のダンパ段とは、有効に直列に接続されている。これによって、ダンパ入力部材20から到来したねじり振動が、まず、第1のダンパ段によって吸収され、次いで、第2のダンパ段によって吸収される。
【0027】
エネルギ蓄えエレメント26に均等に荷重を加えるためには、ダンパ入力部材20が、主として、曲げ加工されたS字形の構成を有する区分30を有している。ダンパ出力部材22もダンパ中間部材24も、各ダンパ段のエネルギ蓄えエレメント26に荷重を加えかつ/または各ダンパ段のエネルギ蓄えエレメント26に有効に結合するための適切な区分31,32を有している。エネルギ蓄えエレメント26は円弧状ばねまたは圧縮ばねとして形成することができ、周方向に延びる位置決め部材28、たとえば、いわゆる「リテーナ」を介して軸方向のかつ半径方向の変位に対して位置決めされている。位置決め部材28は周方向でダンパ入力部材20の区分30の箇所で部分的に中断されている。
【0028】
ダンパ出力部材22は半径方向内側で出力部材、たとえばダンパハブ36に適切な固定方法、たとえば溶接によって相対回動不能に結合されている。したがって、ロックアップクラッチから摩擦板支持体16を介してねじり振動ダンパ18に導入されたねじり振動が、ダンパ入力部材20と、直列に接続された2つのダンパ段とを介してダンパ出力部材22に伝達され、そして、導入されたねじり振動にねじり振動ダンパ18の振動特性によって影響が与えられる。
【0029】
タービンホイール12はそのタービンシェル14で半径方向内側の周範囲40において、ダンパハブ36に対して回動可能なかつダンパハブ36によってセンタリング可能なタービンハブ38に相対回動不能に結合されている。軸方向でこのタービンハブ38とタービンシェル14との間には、これら両エレメントに相対回動不能にディスク部材42が取り付けられている。このディスク部材42は半径方向外側の区分に回転数適応型の動吸振器の形の動吸振器50、たとえば遠心振り子を有している。この動吸振器50の半径方向内側では、ディスク部材42がダンパ中間部材24に結合エレメント44、たとえばスペーサピンまたはリベットを介して相対回動不能に結合されていて、ひいては、第2のダンパ段の作用に抗してダンパ出力部材22に対して回動可能である。タービンホイール12から到来した過大トルクが第2のダンパ段のエネルギ蓄えエレメント26に、規定された最大のトルクを上回る荷重を加えないようにするためには、ダンパ出力部材22に対するダンパ中間部材24のねじり運動の制限部材が、たとえばストッパの形で設けられていてよい。
【0030】
動吸振器50とディスク部材42とは、軸方向でねじり振動ダンパ18に隣り合ってダンパ中間部材24とタービンシェル14との間に配置されている。動吸振器50は、軸方向に間隔を置いて配置された、ディスク部材42によって分離された2つの動吸振器質量体46を有している。両動吸振器質量体46は結合エレメント、たとえばスペーサピンによって互いに取り付けられていて、振り子質量体46の切抜き部52とディスク部材42の切抜き部54とに設けられた支承エレメント48、たとえば転動体、ローラ支承部材、滑り支承部材または類似のエレメントを介して、両切抜き部52,54によって規定された運動クリアランスの範囲内でディスク部材42に対して運動可能である。動吸振器50を軸方向でねじり振動ダンパ18に隣り合わせて、特にタービンシェル14とねじり振動ダンパ18との間に配置することによって、ハイドロダイナミック式のトルクコンバータ10の構成スペースを減少させることができる。
【0031】
図2には、別の実施の形態に係るハイドロダイナミック式のトルクコンバータ10の部分横断面図が示してある。ロックアップクラッチの摩擦板支持体16には、ねじり振動ダンパ18がダンパ入力部材20を介して相対回動不能に結合されている。このダンパ入力部材20は区分30によって適切に第1のダンパ段のエネルギ蓄えエレメント26に荷重を加えることができる。このエネルギ蓄えエレメント26は有効にダンパ入力部材20とダンパ中間部材24との間で、特に半径方向外側に配置されている。このダンパ中間部材24は区分31によって、有効にダンパ中間部材24とダンパ出力部材22との間に配置された、第1のダンパ段に直列に有効に接続された第2のダンパ段の別のエネルギ蓄えエレメント26に荷重を加えることができる。
【0032】
エネルギ蓄えエレメント26は円弧状ばねまたは圧縮ばねとして形成することができ、周方向に延びる位置決め部材28、たとえば、いわゆる「リテーナ」を介して軸方向のかつ半径方向の変位に対して位置決めされている。位置決め部材28は周方向でダンパ入力部材20の軸方向に延びる区分30の箇所、更には、結合エレメント34の箇所で部分的に中断されている。位置決め部材28は、半径方向内向きに延びる延長部56を有している。これによって、位置決め部材28は、ダンパ出力部材22の切抜き部70を通って延びる結合エレメント58、たとえばピン、スペーサまたはリベットを介してディスク部材66に相対回動不能に結合されている。このディスク部材66は軸方向においてタービンホイール12のタービンシェル14とタービンハブ38との間でこれら両エレメントに相対回動不能に、特に形状接続的な結合または材料接続的な結合によって取り付けられている。
【0033】
これによって、タービンホイール12がダンパ入力部材20に結合されている。タービンホイール12から到来した過大トルクが一方または両方のダンパ段のエネルギ蓄えエレメント26に、規定された最大のトルクを上回る荷重を加えないようにするためには、ダンパ中間部材24および/またはダンパ出力部材22に対するダンパ入力部材20のねじり運動の制限部材が、たとえばストッパの形で設けられていてよい。また、ねじり運動の制限部材は結合エレメント58によって形成されてもよい。このためには、この結合エレメント58が、ダンパ出力部材22の切抜き部70内に所定の自由角にわたって規定された運動クリアランスを有していて、自由角の超過時にダンパ出力部材22を回動させ、ひいては、ダンパ入力部材20とダンパ出力部材22との間のエネルギ蓄えエレメント26を迂回する。
【0034】
ディスク部材66の、半径方向で取付けエレメント58と同じ高さに位置する区分60では、ディスク部材66に周方向に結合エレメント62が装着されている。この結合エレメント62は、ディスク部材66に対して軸方向の間隔を置いて位置決めディスク64を取り付けている。位置決めディスク64とディスク部材66との間には、これら両エレメントに対して回動可能にならびに結合エレメント62を介して半径方向でかつ軸方向でセンタリングされて、別のディスク部材68が取り付けられている。このディスク部材68には、回転数適応型の動吸振器50の形の動吸振器50、たとえば遠心振り子が配置されている。この動吸振器50は軸方向でねじり振動ダンパ18に隣り合って位置している。ディスク部材68はダンパ中間部材24に結合エレメント44を介して相対回動不能に結合されている。これによって、動吸振器50がダンパ中間部材24に間接的に結合されていて、ねじり振動ダンパ18の第1のダンパ段と第2のダンパ段との間に有効に配置されている。
【符号の説明】
【0035】
10 トルクコンバータ
12 タービンホイール
14 タービンシェル
16 摩擦板支持体
18 ねじり振動ダンパ
20 ダンパ入力部材
22 ダンパ出力部材
24 ダンパ中間部材
26 エネルギ蓄えエレメント
28 位置決め部材
30 区分
31 区分
32 区分
34 結合エレメント
36 ダンパハブ
38 タービンハブ
40 周範囲
42 ディスク部材
44 結合エレメント
46 動吸振器質量体
48 支承エレメント
50 動吸振器
52 切抜き部
54 切抜き部
56 延長部
58 結合エレメント
60 区分
62 結合エレメント
64 位置決め部材
66 ディスク部材
68 ディスク部材
70 切抜き部
100 回転軸線