(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
多くの電気通信配線キャビネットにおいて空間は貴重であるため、パッチパネルの前面においてジャック支持構造が占有する空間は最小限とされることが望ましい。本発明は、こうした要請に応えようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数のモジュラー電気通信ジャックをパッチパネル上に固定するためのジャック支持構造を提供し、このジャッキ支持構造は少なくとも2列のジャックキャビティの平行な列と、ジャック支持構造をパッチパネル上に固定するための固定手段とを有し、前記固定手段が隣り合う2列のジャック支持構造の間にのみ配置されることを特徴とする。
【0011】
本出願の文脈において、ジャックキャビティとは、1個のモジュラー電気通信ジャック又は複数のジャックを収容することが可能な、ジャック支持構造の1個の開口部のことである。ジャックキャビティは、収容されるジャックのすべての側面を包囲する必要はない。
【0012】
本発明に基づくジャック支持構造は、ジャックキャビティの隣り合う2列の間に配置された固定手段によって固定される。ジャックキャビティの列の横に固定手段はいっさい存在せず、ジャックキャビティの上列の上にも下列の下にも固定手段はいっさい存在しない。換言すれば、ジャックを配置するために使用することができない空間を占有する、各列の間に配置されない固定手段を必要としない。これにより、この構造は、構造が固定されるパッチパネルの前面において占有する空間が小さく、パッチパネルの前面におけるジャックキャビティの密度を高くすることができる。パッチパネル上のジャックの密度を高くすることができるため、所定のパッチパネルの前面により多くのモジュラー電気通信ジャックを固定することができる。
【0013】
本発明に基づくジャック支持構造では、パッチパネルからジャック支持構造を取り外せるように前記固定手段を開放可能なものとすることができる。この構成は、既に設置されているジャック支持構造の容易かつ速やかな交換、検査、又は再配置が可能となることから有益である。ジャック支持構造を簡単に開放及び取り外しできることにより、パッチパネルの最初の設置時には完全に埋まっていなかったジャック支持構造に新たなジャック(1乃至複数の)を設置することが可能である。新たなジャックの設置後、支持構造を再びパッチパネルに固定することができる。最初のパッチパネルの設置後にジャックを追加することが可能であるため、電気通信会社は、例えば、サービス接続が実際に必要となる時点までコストを先送りすることができる。
【0014】
固定手段は、例えば、1つ以上のクリップ、ネジ、フック、ステープル、リベット、ラッチ機構、ファスナー、ホルダー、ネジ機構、磁力機構、又はアタッチメントアセンブリとすることができる。
【0015】
本発明に基づくジャック支持構造では、1つの列のジャックキャビティを少なくとも1つの他の列のジャックキャビティと整列させることによって、特定の列に沿った方向で測った場合にそれらの縁部がほぼ同じ位置となるようにすることができる。この構成によればパッチパネル上のジャックの密度を高めることが可能であり、ジャック支持構造を同じサブモジュールから製造することが可能となるため、ジャック支持構造の製造及び組み立てのコスト効率が高められる。
【0016】
収容されたジャックのすべての側面を完全には包囲しないジャックキャビティでは、ジャックの設置が容易であり、既にワイアに接続されたパッチパネルの前面からジャックを容易に設置することができる。
【0017】
本発明の一態様に基づくジャック支持構造は、パッチパネルからジャック支持構造を開放するように機能する解放アクチュエータを備えてもよい。解放アクチュエータは、ジャック支持構造を速やか、かつ高い信頼性で解放することができるような設計とすることができる。解放アクチュエータの1つの例として、パッチパネルをジャック支持構造に固定する、例えば、弾性ラッチのような固定手段を手で外すためのボタンがある。
【0018】
本発明の更なる一態様に基づくジャック支持構造は、2本のアームを有しうる解放アクチュエータを備えてもよく、これにより両方のアームが互いの方向に動かされる際にジャック支持構造が解放される。この構成の利点の1つとして、2本のアームを互いの方向に押すことによってジャック支持構造を解放する際にジャック支持構造にそれによる力が実質上作用しない点がある。
【0019】
解放アクチュエータを備えるジャック支持構造は、支持構造上の第1の位置において解放アクチュエータの作動を阻止し、支持構造上の第2の位置において解放アクチュエータの作動を可能とする可動阻止部材を更に備えてもよい。2つの機能位置を有する可動阻止部材によって、例えば、小型の配線キャビネットにおいて解放アクチュエータが誤って不用意に作動することを防止し、これにより通信システムの完全性を保護することができる。作動を阻止する支持構造上の第1の位置と、作動を可能とする支持構造上の第2の位置とを有する可動阻止部材は、作動を阻止又は可能とするためにジャック支持構造から阻止部材を取り外す必要がないことから更に有益である。これにより、多くの配線キャビネットにおいて一般的である乱雑なケーブル及び機器の中で阻止部材がなくなるという問題が回避できる。
【0020】
可動阻止部材は、第1の位置から第2の位置へ、かつ/又は第2の位置から第1の位置へと手で回転させて動作させることができる。手による回転は、阻止部材の簡単でコスト効率が高い、省スペースの作動法である。
【0021】
阻止部材は、標示受承面を有してもよい。ジャック支持構造の要素に標示を設けるという選択肢は、このような貴重な空間の一部を占有しうる別の標示保有要素を設ける必要がないことからパッチパネルの前面の空間を節約するものである。これは、ジャック及びパッチケーブルの最初の設置後に標示を設けるだけでよいため、より効率的な設置をも可能とするものである。
【0022】
本発明の別の態様に基づくジャック支持構造は、モジュラー電気通信ジャックの導電性部分をパッチパネルの導電性部分に電気的に接続するための接点を有してもよい。このような接点は、各ジャックに電気的接地を与え、電気通信線並びにこれに付属するジャック及びプラグ間の望ましくない電気的クロストークの大幅な低減を実現するうえで有益でありうる。接点は、接地若しくは遮蔽又はその両方の目的で使用することができる。ジャック支持構造の接点は、ジャックの電圧を規定の0Vとすることができるために更に有益である。ジャック支持構造の各ジャックキャビティに対して1個の接点を設けてもよく、ジャック支持構造の複数のジャックキャビティに対して1個の接点を設けてもよく、あるいはジャック支持構造のすべてのジャックキャビティに対して1個の接点を設けてもよい。
【0023】
上記に述べたような接点は、ジャック支持構造内のジャックと接触するための第1のアームと、ジャック支持構造が固定されるパッチパネルと接触するための第2のアームとを有してモよい。この形状によれば、ジャック支持構造に1個のみの部品を固定するだけでよいため、本発明に基づくジャック支持構造の製造及び組み立てが容易となりうる。
【0024】
この接点は隣り合うジャックキャビティの列の間の中央壁内に収容されうる。ジャック支持構造の中央壁内に接点が収容されることにより、接点を収容するための更なる空間を必要としないことから、パッチパネル上のジャックの密度を高めることができる。
【0025】
ジャック支持構造が固定されるパッチパネルの内部に面するジャック支持構造の背面側からジャックをジャック支持構造に挿入することによって、モジュラー電気通信ジャックを本発明の別の態様に基づくジャック支持構造に固定することが可能である。この構成の利点の1つは、ジャックがその後端においてワイアに接続された状態でジャックをジャック支持構造に固定することが可能であることにより、保守及び修理がより速やかとなり、コスト効率が高められることである。
【0026】
本発明の更なる態様に基づくジャック支持構造は、ジャックキャビティの隣り合う2列の間に配置された2個の中央壁であって、互いに対して平行でありかつ前記列に対して平行な主面を有し、それらの間の空間に、ジャック支持構造が固定されるパッチパネルの平坦な支持要素を受容するような適当な間隔をおいて配置された中央壁を備えてもよく、これにより中央壁は、前記平坦な支持要素に対するジャック支持構造の、中央壁の前記主面に垂直な方向の運動を制限する。
【0027】
これにより中央壁は、パッチパネルに対するジャック支持構造の、省スペースであるが安定した固定を可能とする。そのため、中央壁は、それらの間の開放距離が、ジャック支持構造が固定されるパッチパネルの平坦な支持要素の厚さにほぼ等しくなるような間隔をおいて配置することができる。ジャック支持構造が固定される際、一方の中央壁は平坦な支持要素の一方の主面に隣接して配置され、他方の中央壁は平坦な支持要素の反対側の主面に隣接して配置される。この構成によれば、パッチパネルに対してジャック支持構造を緊密に嵌合し、しっかりと固定することが可能となり、パッチパネル上のジャックの高い密度の実現に寄与しうるものである。
【0028】
本発明に基づくジャック支持構造とパッチパネルとの組み合わせにおいては、パッチパネルは、ジャック支持構造のジャックキャビティの隣り合う2列の間に嵌合する平坦な支持要素を有しうる。これにより、ジャック支持構造をパッチパネルに固定するための手段が与えられる。この平坦な支持要素は、パッチパネルにジャック支持構造を固定するために用いられるパッチパネルの唯一の要素でありうることから、パッチパネルに更なる固定要素を設ける必要がなくなり、これによりパッチパネル上のジャックの密度を高めることが可能となり、必要とされる支持要素が1個だけであることからパッチパネルのコスト及び重量を節減することができる。
【0029】
平坦な支持要素は、支持要素に固定されるジャック支持構造の位置を規定する少なくとも1つの凹部を縁部に有しうる。平坦な支持要素は2種類の凹部を有しうる。一方の種類の凹部は、ジャック支持構造がパッチパネルに固定される際にジャック支持構造を案内するのに適したものでよく、他方の種類の凹部は、ジャック支持構造をパッチパネルにしっかりと固定するのに適したものとすることができる。代りに、1種類の凹部が、ジャック支持構造がパッチパネルに固定される際にジャック支持構造を案内することと、ジャック支持構造をパッチパネルにしっかりと固定することとの両方に適したものであってもよい。
【0030】
ジャック支持構造を、パッチパネルの内部に向かう方向にパッチパネルに挿入することによって、ジャック支持構造をパッチパネルに固定することができる。例えば、パッチパネルの前面側からのように、パッチパネルの内部に向かう方向にジャック支持構造を挿入することは、パッチパネルの前面側は、キャビネット壁とパッチパネルを収納したラックとの間にわずかな空間しか残っていないパッチパネルの背面側よりもしばしばアクセス性がよいことから、設置、修理、及びサービスを行ううえで有利である。
【0031】
更なる一態様では、本発明は、モジュラージャックのワイア編成部材内に保持された複数のワイアをジャックの各絶縁変位接点に固定するためのワイア成端ツールであって、モジュラージャックを受容するような形状を有するキャビティと、それらの反対側から前記キャビティ上に旋回可能に動かすことができる第1及び第2のレバーと、を備えることにより、ジャックがキャビティ内に配置され、レバーが互いの方向に旋回されると、レバーがワイア編成部材に力を作用させてこれをジャック本体内に押し込み、これにより前記ワイアを各絶縁変位接点内に押し込むワイア成端ツールを提供する。
【0032】
この成端ツールは、ジャック内におけるワイアの信頼性の高い、簡単かつ速やかな成端を可能とする。成端は、レバーを1つの動作で同時に押すことによって手で行うことができる。このツールは片手で操作することができる。ツールは何度も使用することができる。これは個々のジャック上での成端機構を旧式化するものであり、これにより製造コストを節減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、本発明に基づく2個のジャック支持構造10の斜視図であり、ジャック支持構造10はいずれもパッチパネル20に固定されている。各ジャック支持構造は、それぞれのモジュラージャック40を格納した4個のジャックキャビティ30を有している。使用時には、パッチパネル20は、当業界で今日使用されているラック(図に示されていない)上に設置される。本明細書に述べられるパッチパネルとともに使用することが可能な従来のラックには、標準的な19インチ(48.3cm)の機器ラック、標準的な23インチ(58.4cm)の機器ラック、ヨーロッパ規格のラック、又は世界的に使用されている他の標準的なラックが含まれる。複数のパッチパネル20を他の同様のパネルとラック内に積み重ねて置くことが可能であり、これによりパッチパネルの前面側50からジャック40にアクセスして、パッチパネルの背面側90からジャックに入るケーブルに対する接続を行うためにパッチコードを差し込むことができる。
【0035】
次にパッチパネル20及びジャック支持構造10についてより詳細に説明する。パッチパネル20は、その前面側50において、パッチパネル20の両側に配置された、ラック(図に示されていない)にパッチパネル20を取り付けるための2個のフランジ60を有している。側壁70がフランジ60をパッチパネルの背面側90に配置された後壁80に対して連結している。後壁80の開口部100により、ケーブル(図に示されていない)を背面側90からパッチパネル20に引き込むことができ、これによりケーブルをモジュラージャック40に接続することが可能である。パッチパネル20は、パッチパネル20の高さの中心で、側壁70の上縁部120と下縁部125との中間点に取り付けられた中央支持要素110を有している。支持要素110は、パッチパネル20の後壁80に対しても取り付けられている。フランジ60、側壁70、及び中央支持要素110はシートメタルから作製され、導電性であるために接地目的に適している。
【0036】
中央支持要素110は、その前縁部において、ジャック支持構造10の対応する固定手段と嵌合するような適当な形状を有する凹部130、140を有している。これらの固定手段について以下により詳しく説明する。本発明のこの実施形態では2種類の凹部があり、凹部130はそれぞれ第1の種類であり、その前端において2箇所の保持突起150を有している。各ジャック支持構造10上の対応する固定手段は、ジャック支持構造10がパッチパネル20に固定される際に平坦な支持要素の前縁部の保持突起150と係合する、
図3に見られるラッチ300からなる。保持突起150とラッチ300とは協働してジャック支持構造10がパッチパネル20の前面側50の方向に凹部130から偶発的に滑りでてしまうことを防止する。
【0037】
凹部140はそれぞれ第2の種類であり、その前端に保持突起はない。凹部140は、ジャック支持構造10がパッチパネル20の前面側50からパッチパネル20に挿入される際にジャック支持構造10を案内する。凹部140は、ジャック支持構造10内の支持支柱要素275(
図3に示される)と相互作用する。1個の凹部140は、第1のジャック支持構造10の1個の支柱要素275と、第1のジャック支持構造10の隣の第2のジャック支持構造10の1個の支柱要素275とを収容する。凹部140は、ほぼ長方形の形状を有している。凹部140は、その長手方向に、パッチパネル20の前面側50から背面側90に向かって延びている。その幅はその長さよりも小さく、その長軸は側壁70と平行である。凹部130及び140の深さ、すなわち背面側90に向かうそれぞれの延長長さによって、パッチパネル20の前/後方向におけるジャック支持構造10の位置が決まる。
【0038】
平坦な支持要素110は、ジャック支持構造10用の設置プラットフォームを形成する。平坦な支持要素110はパッチパネル20の側壁70及び後壁80に連結されているため、パッチパネル20全体に対して曲がりや捻れに対する機械的な安定性も与え、後壁80の開口部100がパッチパネルの強度に対して有しうる負の影響に抗するうえでの助けとなりうる。
【0039】
ジャック支持構造10はそれぞれ、上列が2個のキャビティ30を有し、下列が2個のキャビティ30を有するジャックキャビティ30の上列及び下列からなっている。2列のジャックキャビティ30は互いに平行である。1個のジャック支持構造10は、上壁160、下壁170、及び2個の平行な側壁180を有している。上壁160及び下壁170は、ジャック支持構造10がパッチパネル20に固定される際に互いに平行、かつ平坦な支持要素110に平行となる向きとなっている。ジャック支持構造10は更に、上壁160から下壁170へと延びる、側壁180と平行な分離壁190を有している。
【0040】
モジュラージャック40がジャックキャビティ30のそれぞれの内部に実装される。ジャックキャビティ30は、各モジュラージャック40がジャックキャビティ30の2つの列を分離する平面に対して対称的に実装されるような向きとなっている。すなわち、各ジャック支持構造の下列のジャック40は、上列のジャック40に対して「逆さま」に実装される。
【0041】
図に示されるジャックキャビティ30のそれぞれは、RJ45型のジャックを受容するような形状となっている。各ジャックキャビティ30は、実際にはRJ45型のジャック40を包囲する。右上のジャックキャビティ30内には、ジャック40の前面を含む約2/3が見えている。ジャックの約1/3は、ジャックキャビティ30の側壁180、上壁160、分離壁190及び上側中央壁200によって包囲されている。
【0042】
各ジャック支持構造10は、互いに平行かつジャック支持構造10の上壁160及び下壁170に対して平行な、水平に配置された2つの中央壁200、210を有している。上側中央壁200は、ジャック支持構造10のジャックキャビティ30の上列の2個のジャックキャビティ30の下壁を形成しており、同様に下側中央壁210は、ジャックキャビティ30の下列の2個のジャックキャビティ30の上壁を形成している。したがって、中央壁200及び210は、ジャックキャビティ30の上列と下列との間に配置され、ジャック支持構造10がパッチパネル20に固定される際にパッチパネル20の平坦な支持要素110の両側に1つずつ配置される。これにより、中央壁200、210は、平坦な支持要素110に対するジャック支持構造10の上下方向の運動を制限する。
【0043】
中央壁200と210との間には、パッチパネル20の中央支持要素110にジャック支持構造10を固定する、下記により詳しく述べる上記の固定手段が配置される。
【0044】
ジャック40は、それぞれのジャックラッチ220によってジャック支持構造10内に保持される。
図4に示されるように、上列のジャックキャビティ30については2個のジャックラッチ220がジャック支持構造10の上壁160から後方に延び、下列のジャックキャビティ30については2個のジャックラッチ220が下壁170から後方に延びている。ジャックラッチ220は平坦でかつ弾力性を有し、上壁及び下壁160に対してほぼ平行であり、それぞれが付属するジャックキャビティ30に対して中央に配置されている。ジャック40がジャック支持構造10の背面からジャックキャビティ30に挿入される際、ジャック40の切欠きが対応するジャックラッチ220のラッチフック315と係合し、ジャック40をジャックキャビティ30及びジャック支持構造10に対するその位置に固定する。各ジャックラッチ220は、ジャック40からジャックラッチ220が外れるようにわずかに撓ませることができるため、ジャック40を後方に引っ張りだすことによってジャック40をジャックキャビティ30から取り外すことができる。
【0045】
パッチパネル20にジャック支持構造10を固定するための固定手段は、各固定手段(及び下記に述べる付随する解放アクチュエータ)が可動阻止部材230によって覆われているために
図1では見えていない(
図3において述べる)。阻止部材230は、ジャック支持構造10の幅全体にわたって延びている。阻止部材230は、中央及びそれぞれの側端部において、それぞれがジャック支持構造10のそれぞれの壁180、190にヒンジ250によって回転可能に取り付けられた3本のアーム240を有している。阻止部材230の外側端部のアーム240は、ジャック支持構造10の側壁180に回転可能に取り付けられており、阻止部材230の中央のアーム240は、取り付けを目的としたヒンジ穴を与える分離壁190に回転可能に取り付けられている。阻止部材230は
図1にその第1の位置で示されており、この位置から
図4に示される第2の位置へとヒンジ250を中心として手で上側に回転させることができ、第2の位置において、解放アクチュエータアーム270を作動することが可能となる。
【0046】
阻止部材230の第1の位置では、その前面235は、ジャック支持構造10がパッチパネル20に取り付けられる際にパッチパネル20の各フランジ60によって規定される平面に対して平行な平面内に位置する。阻止部材230の第2の位置では、その前面は、ヒンジ250を中心とした回転によって規定される、フランジ60によって規定される平面に対して約45°の角度にほぼ位置する。
【0047】
阻止部材230の前面235は、
図4において標示が設けられている状態が示されている標示受承面である。通常、実際の使用では、こうした標示は、何らかの文字及び各ジャックキャビティ30を個別に識別しうる番号を含んでいる。阻止部材230の標示受承面235は、普通のペン又は鉛筆による書き込みに適したものとすることができる。これに代えるか、又はこれに加えて、標示受承面235は、例えば、インクジェット、スクリーン印刷、又はパッド印刷技術及び材料によって印刷するのに適したものとしてもよく、あるいは標示受承面235は接着ラベルを貼るのに適したものであってもよい。
【0048】
図2に、パッチパネル20に固定された本発明にしたがうジャック支持構造10をより詳細に示す。分かりやすくするため、阻止部材230は取り除いてある。ここではヒンジ穴260が見えているが、これは
図1では阻止部材230のヒンジ250を収容している。ここでは解放アクチュエータの2本のアーム270が部分的に見えており、各アーム270はそれぞれの前端において下記に述べるようなアクチュエータの簡単かつ信頼性の高い手動操作を可能とする摘み280を有する。
図3の断面図に示されるように、アーム270はジャック支持構造10の背面に向かって前面から延びる。
【0049】
解放アクチュエータアーム270は、ジャック支持構造10の固定手段の一部を形成する。解放アクチュエータアーム270は、支持構造の中央壁200と210との間に配置され、したがって、ジャックキャビティ30の上列と下列との間に配置されている。アーム270のそれぞれは、ジャック支持構造10の前面から突出しているために容易にアクセス可能である。
【0050】
解放アクチュエータアームのそれぞれは、パッチパネル20の中央の平坦な支持要素110のそれぞれの凹部130の保持突起150の一方と係合するラッチ300(
図3に見られる)を有している。両方の解放アクチュエータアーム270が、それぞれの摘み280を互いの方向に手で押すことによって互いの方向に押されると、各ラッチ300が保持突起150から外れ、次いで同じ摘み280を使用して、
図2に矢印290によって示される前方にパッチパネル20からジャック支持構造10を引き出すことができる。解放アクチュエータアーム270は弾性を有しているため、解放されると元の位置に復帰する。アーム270は、例えば、弾性ポリマー材料で形成することができる。
【0051】
ジャック支持構造10の各側壁180は、その内面において長手方向の支持支柱要素275を有している。支持支柱要素275は、ジャック支持構造10の前面から背面に向かって延びている。支持支柱構造275は、各側壁180が中央の平坦な支持要素110の凹部140と係合する各側壁180の部分に配置されている。支持支柱構造275は、ジャック支持構造10が中央の平坦な支持要素110に挿入される際にジャック支持構造10を案内する働きも有する。中央支持要素110上の凹部140の間隔は、ジャック支持構造10の一方の側の支持支柱構造275が第1の凹部140内にぴったりと嵌まるのと同時にジャック支持構造10の反対側の支持支柱構造275が第2の凹部140内に嵌まるように選択されている。支持支柱構造275は、ジャック支持構造10がパッチパネル20に固定される際にパッチパネル20の中央の平坦な支持要素110に対してジャック支持構造10が左右に動く量を制限する。
【0052】
パッチパネル20の平坦な支持要素110に固定されたジャック支持構造10及びその固定手段の中心面における断面が
図3に示されている。解放アクチュエータアーム270の正常な位置、すなわち解放アクチュエータアーム270が互いの方向に押されていない場合には、それぞれアームのラッチ300は既に述べたようにパッチパネル20の中央支持要素110の凹部130の保持突起150と係合する。各ラッチ300の断面は、例えば、各保持突起150間の凹部130内への解放アクチュエータアーム270の挿入を容易とするために三角形の形状となっている。特定の挿入深さにおいて、解放アクチュエータアーム270の弾性のために、ラッチ300は各保持突起150の後ろで係合する。ラッチ300の三角形の形状のため、解放アクチュエータアーム270はこれらを凹部130の中心線の方向に押すことによって保持突起150からラッチ300を外さないかぎりは凹部130から引き出すことはできない。
【0053】
解放アクチュエータアームはいずれも、それぞれの後部310においてジャック支持構造10の支持壁190に取り付けられている。分離壁190は、中央壁200、210の間の領域においてテーパした前縁部を有しているため、ジャック支持構造10をパッチパネル20から取り外そうとする際に解放アクチュエータアーム270を互いに押すための更なる空間が与えられる。
【0054】
この例示的な実施形態では、固定手段は、2個の後部310、2個の解放アクチュエータ270、2個のラッチ300、及び2個の摘み280から構成される構造を有している。固定手段は各要素の他の組み合わせを有してもよい。
【0055】
図4は、
図1及び2に示されるジャック支持構造10の立体図であるが、1個のみのジャック40がジャック支持構造10に実装されている。ジャック支持構造10は各列が2個のジャックキャビティ30からなる2列のジャックキャビティ30を有しており、右上のジャックキャビティ30に1個のモジュラージャック40が固定され、阻止部材230は解放アクチュエータ270の作動を可能とする第2の位置にある。
【0056】
この図では、左下のジャックキャビティ30のジャックラッチ220が見えている。ラッチフック315が三角形の断面を有しており、下壁170の前縁部に対して平行な向きの頂点を有する傾斜状の形状となっている様子を見ることができる。既に述べたように、ラッチフック315は、モジュラージャック40がジャック支持構造10の背面側からジャックキャビティ30に挿入される際にこのジャック40の対応する切欠き(図では見えない)と係合する。ラッチ220及びラッチフック315は、いったん係合すると、モジュラージャック40をジャック支持構造10に対するその定位置に保持し、モジュラージャック40がそのジャックキャビティ30から背面側に滑り出ることを防止する。
【0057】
分離壁190には、長手方向の溝320が壁190の後端から分離壁190の前面側に向かって延びているが、溝320は壁190の前面からわずかに後方で終端している。溝320の目的は、分離壁190に一定の弾性を与えることにある。
【0058】
各ジャックキャビティ30はプラグラッチ溝330を有している。上列のジャックキャビティ30では、ラッチ溝330は上壁160の前面からジャックキャビティ30の後端に向かって延びている。上列のジャックキャビティ30では、ラッチ溝330は下壁170の前面からジャックキャビティ30の後端に向かって延びている。各ラッチ溝330は、標準的なRJ45プラグ(図に示されていない)がジャック40に挿入される際に、RJ45プラグの一部を形成するラッチを収容するだけの充分な幅を有している。
【0059】
阻止部材230は、阻止部材230が解放アクチュエータアーム270の作動を阻止する所定の角度位置へと、更に、阻止部材230が解放アクチュエータアーム270の作動を可能とする別の角度位置へと、その幅方向に平行な軸を中心として旋回させることができる。
図4は、解放アクチュエータアーム270の作動を可能とする位置にある阻止部材230を示している。この位置では、摘み280は、ジャック支持構造10の前面側からアクセス可能であり、手で操作することができる。阻止部材230が作動を防止する他の位置では、阻止部材230が摘み280の前面に配置されるため、摘み280にジャック支持構造10の前面側からアクセスすることはできず、手で操作することはできない。
【0060】
阻止部材のアーム240及びヒンジ250は通常、弾性ポリマー材料で形成される。各側部アーム240はそれぞれの側壁180よりも薄いため、アーム240は、阻止部材230の第1及び第2の位置の両方において、更にこれらの位置の間の移行位置において、側壁180に形成された凹部340内に収容されうる。ヒンジ凹部340内の領域では、各側壁180は薄くなっている。これは、阻止部材230を含むジャック支持構造10の横方向に測定した全体の幅が小さく保たれ、ジャック支持構造10の水平方向のサイズを小さく保つうえで寄与することにより、パッチパネル20のこの方向におけるジャックキャビティ30の密度、ひいてはジャック40の密度をより高くすることが可能となることから有益である。
【0061】
図5aは、ジャック支持構造が接点350(
図5bに別に示されている)を有する本発明の一実施形態における、パッチパネルに実装されたジャック支持構造10の背面側の斜視図である。接点350は、支持棒状部380から突出する2本のアーム360、361を有している。接点350は、接点350の一方のアーム360が上側中央壁200の上に配置され、他方のアーム361(
図5aでは見えない)が上側中央壁200の下で、かつパッチパネル20の中央支持要素110と上側中央壁200との間に配置されるようにしてジャック支持構造10の後端に取り付けられる。接点350は、
図5cにより更に詳細に示されるように、上側中央壁200の適当な形状を有する凹部370内にクリップ嵌めされる。
【0062】
接点350は、ジャック40がジャックキャビティ30に挿入される際に、パッチパネル20の中央支持要素110とジャック40との間の導電接続を与える。この導電接続は、その全体若しくは一部が導電性を有するか又は導電性表面を有する接点350によって与えられ、更に、そのアーム360、361の一方が中央支持要素110と電気的に接触し、かつ他方のアーム361、360がジャック40と電気的に接触し、これらのアームが支持棒状部380によって導電接続された接点350によって与えられる。
【0063】
図5aでは分かりやすくするために、1個の空のジャックキャビティ30、及び、中央支持要素110とこのジャックキャビティ30に挿入されるジャック40との間の電気的接触を与える1個の接点350のみを示している。しかしながら、ジャック支持構造10のすべてのジャックキャビティ30は、それぞれ接点350を備えている。本発明の他の実施形態では、ジャックキャビティ30の一部のもののみが接点350を有してもよい。
【0064】
図5bは、接点350が、その2本のアーム360、361がその支持棒状部380からほぼ垂直に突出したほぼU字形状を有している様子を示している。第1のアーム360が平坦な支持棒状部380によって規定される平面から一方の方向に延出するような形状を有しているのに対して、第2のアーム361は平坦な支持棒状部380によって規定される平面から反対の方向に延出するような形状を有している。
【0065】
接点350は弾性を有しているため、一方のアーム360、361が支持棒状部380によって規定される平面の方向に押されると、アームはその元の位置に戻ろうとする。接点350を備えたジャックキャビティ30にジャック40が挿入されると、第1のアーム360の一部がジャック40と接触するが、その部分は第1のアーム360及び接点350の接触領域390である。同様に、接点350を備えたジャックキャビティ30にジャック40が挿入されると、第2のアーム361及び接点350の接触領域391がパッチパネル20の中央支持要素110と接触する。接点350の接触領域390、391は、接点350の全体が導電性であるために互いに導電接続されている。接点350は、例えば、青銅から作製され、スズの表面メッキを施したものとすることができる。
【0066】
図5cは、接点350が上側中央壁200及び下側中央壁210にそれぞれ取り付けられたジャック支持構造10の背面側の拡大斜視図である。上側中央壁200には、接点350が背面側から挿入され、接点350を定位置に保持する凹部370が設けられている。ラッチ372が、接点350が不用意に脱落することを防止する。ラッチ372はジャック支持構造10に形成されている。ラッチ372は弾性を有し、接点350が凹部370に完全に挿入されると接点350と機械的に係合する。
【0067】
各接点350は、それぞれ壁200及び壁210にほぼ完全に収容されている。ジャック40が各ジャックキャビティ30に挿入されていなければ、各接触領域390、391に隣接した隆起部分のみが突出する。ジャック40がジャックキャビティ30に挿入されると、ジャックの外表面の一部が接触領域390又は391上に滑り込むことによってジャック40と接点350との間に電気的接触を確立し、ジャックが接触する各アーム360、361をジャック支持構造10の各中央壁200、210のそれぞれの凹部370内へと押し込む。
【0068】
同様に、ジャック支持構造10がパッチパネル20の中央支持要素110に挿入されると、接点350のアーム360、361の各接触面390、391が中央支持要素110の表面上に滑り込むことによって中央支持要素110と接点350との間に電気的接触を確立し、中央支持要素110が、支持要素が接触する各アーム360、361をジャック支持構造10の各中央壁200、210のそれぞれの凹部370内へと押し込む。
【0069】
ジャック40が上側ジャックキャビティ30に挿入されると、上側中央壁200に取り付けられた上側接点350の上側アーム360の図に見える接触領域390がジャック40(図に示されていない)と接触する一方で、上側接点350の下側アーム361の接触領域391(この図では見えない)がパッチパネル20の中央支持要素110(図に示されていない)と接触する。同様に、ジャック40が下側ジャックキャビティ30に挿入されると、下側中央壁210に取り付けられた下側接点350の上側アーム360の図に見える接触領域390がパッチパネル20の中央支持要素110(図に示されていない)と接触する一方で、下側接点350の下側アーム361の接触領域391(この図では見えない)がジャック40(図に示されていない)と接触する。
【0070】
図5aに示される実施形態は、2列のジャックキャビティ30の間の空間内にのみ配置される固定手段を有することにより、パッチパネル20の前面においてジャック支持構造10が必要とする空間を最小限に抑える助けとなる。ジャックキャビティ30の上列の上にもジャックキャビティ30の下列の下にも固定手段が配置されないため、パッチパネル20の前面で垂直方向に必要とされる空間の量が低減される。ジャックラッチ220及び接点350などのジャック支持構造10の更なる要素を、これらの要素がジャック支持構造の壁160、170、180によって規定されるジャック支持構造10の輪郭から突出しないように収納することによってこの目的が支持される。
【0071】
本発明に基づけば、ジャックキャビティ30は、ジャック支持構造10内に異なる形態で配置することができる。
図6aは、ジャック支持構造10がジャックキャビティ30の2つの列400a、400bを有し、各列400a、400bが2個のジャックキャビティ30を有する、本発明の好ましい一実施形態の概略図である。上列400aはジャックキャビティ30a及び30bを有し、下列400bはジャックキャビティ30c及び30dを有している。固定手段410が、ジャックキャビティ30の上列400aと下列400bとの間に配置されている。固定手段410は、例えば、
図2に示される解放アクチュエータアーム270からなるものでもよい。上列400aのジャックキャビティ30a、30bは、下列400bのジャックキャビティ30c、30dと整列している。
【0072】
図6bは、前面から見た、ジャックキャビティ30の4つの列401a、401b、401c及び401dを有する本発明に基づく1個のジャック支持構造10の一例を示している。これら4つの列401a、401b、401c及び401dは垂直方向を向いている。固定手段410は、隣り合う2つの列401bと401cとの間にのみ配置されている。
【0073】
図6a及び6bに示される実施形態は、ジャックキャビティ30の特定の2列400、401の間にのみ配置された固定手段410を有することにより、このような配置は他の列400、401の間の空間が小さく保たれ、これらの他の列400、401の間に固定手段を収容する必要がないことから、パッチパネル20の前面においてジャック支持構造10が必要とする空間を最小限に抑える助けとなる。
【0074】
パッチパネル20に対してジャック支持構造10の固定を強化するために、複数の固定手段をジャックキャビティ30の特定の2列400、401の間に収容することができるが、これによりパッチパネル20の前面に更なる空間を必要としない。
【0075】
図7aは、パッチパネル20の中央支持要素110の凹部130及び140の詳細図である。これらの凹部130、140の基本的な機能は、上記に
図1及び3との関連で考察したとおりである。ジャック支持構造10の両側が第1の種類の凹部140によって案内されることにより、ジャック支持構造10は1個の第1の種類、2個の第2の種類の全部で3個の凹部において平坦な支持要素110に取り付けられる。本発明の他の実施形態では、ジャック支持構造10を3個よりも少ない平坦な支持要素110に取り付けることができる。
【0076】
第2の例示的な種類の凹部460が
図7bに示されている。凹部460は、上記に
図3に関連して説明したように、ジャック支持構造10の解放アクチュエータアーム270のラッチ300と相互作用することが可能な2個の保持突起470を有している。後方部分480においては、凹部460はジャック支持構造10がパッチパネル20に固定される際にジャック支持構造10を案内するように直線状の形状をなしている。この実施形態では、ジャック支持構造10は、長手方向の案内及び解放可能な固定機能を与える1個の凹部460においてパッチパネル20に取り付けられる。当業者であれば理解されるように、ジャック支持構造10は凹部460と嵌合するような適当な形状に形成される。
【0077】
図7a及び
図7bの両方において、中央支持要素110の凹部130、140、460、480が、ジャック支持構造10がパッチパネル20に挿入される際にジャック支持構造10を案内する。矢印Cによって示される上下方向への案内は、同じ凹部130、140、460及びジャック支持構造10の中央壁200、210とそれらとの相互作用によって与えられる。上側中央壁200と下側中央壁210との間の開放空間の高さは、平坦な中央支持要素110の厚さとほぼ一致している。中央壁200、210の間の開放空間が要素110の厚さよりもわずかに高いだけである場合、ジャック支持構造10は、上下方向において平坦な支持要素110と緊密に嵌まる。
【0078】
パッチパネル20の前面におけるモジュラージャック40の密度を高めるためには、上側中央壁200と下側中央壁210との間の空間を最小化することが望ましい。しかしながら、そのためにはパッチパネル20の平坦な支持要素110がより薄いものであることが求められる。より薄い支持要素110が、これに固定されるジャック支持構造10に対して、また、平坦な支持要素110に直接的又は間接的に固定されるジャック40、プラグ及びケーブルに対して与える機械的な支持はより低い。したがって、平坦な支持要素110の厚さ及び支持要素110を形成する材料は当業者によって慎重に選択される。
【0079】
図8aは、電気通信ジャック40の電気接点に電線を速やか、かつ高い信頼性で接続することを可能とする成端ツール700の背面側の立体図である。ツール700は、ジャック40によってワイアを成端する、すなわち、ワイアをジャック40内の接点と機械的かつ電気的にしっかりと接続するのに繰り返し使用することができる。
【0080】
ツール700は、本体710及び2個のアクチュエータ800、800’を有している。本体710は、側壁720、上壁730及び下壁740を有している。これらの壁720、730、740は、例えば、一般的なRJ45型のジャックなどの電気通信ジャック40を収容するのに適した形状のキャビティ750を形成する。この図に示されるツール700は、RJ45型のジャックを収容するためのほぼ長方形のキャビティ750を有しているが、キャビティ750は他の種類のジャック40を収容するための、例えば、丸形又は卵形などの他の形状を有してもよい。
【0081】
壁720、730、740は、前後に測った場合に、例えば、ジャック40の長さの半分よりも大きい、ジャック40の長さのかなりの部分までジャック40を包囲するのに充分な距離だけそれぞれの前端760から後端770にまで延びている。壁720、730、740によって形成されるキャビティ750は適当な形状に形成され、ジャック40を緊密に包囲するが、矢印780によって示される前後方向のジャック40の運動は制限しないような適当な寸法を有している。
【0082】
壁720、730、740は、キャビティ750内にジャック40を手で容易に導入することができるようにそれぞれの後端770においてテーパ状の縁部を有している。キャビティ750の前面は開放していてもよく、壁(図に示されていない)によって閉鎖されていてもよい。ツールは、キャビティ750がその前面側において壁によって閉鎖されていれば、ジャック40をツール700のキャビティ750にツールの背面側から、ジャック40の前面がキャビティ750の前壁に当接するまで挿入すればよいことから有利である。この位置では、ジャック40は、ツール700及びその要素に対して明確な位置にあるため、ツール700の操作がより便宜よくより信頼性が高くなる。
【0083】
各側壁720は、ツール700の本体710に2個のアクチュエータ800、800’を旋回可能に取り付けるための2個のヒンジスタッド790を与える。
【0084】
図8aに示される実施形態では、アクチュエータ800とアクチュエータ800’とは同じ形状を有している。したがって、アクチュエータ800のみについて詳細に説明する。
【0085】
アクチュエータ800は、各ヒンジスタッド790と係合する各円形穴840をそれぞれが有する側壁820、830を有しているため、アクチュエータ800はアクチュエータが係合するヒンジスタット790によって規定される軸を中心として旋回することができる。アクチュエータ800は、ツール700の背面側からジャック40をキャビティ750に挿入できるように充分に旋回させることができる。アクチュエータ800は、側壁820及び830に取り付けられた後壁850を更に有する。後壁850は、ジャック40の接点に接続しようとするワイア(図に示されていない)をそこからツールに導入することができる半円形の凹部860を与える。
【0086】
アクチュエータ800は、壁820、830及び850に取り付けられた下壁870(
図8aでは見えない)を有している。
図8aに示されるツールの開位置では、アクチュエータ800の壁820、830、850、及び870は開いた舟状容器を形成する。この舟状容器の内部には、壁870から垂直に突出する長手方向に延びるレバー880が配置されている。このレバーは、設置後にジャック40の一部となり、ジャック40の接点内にワイアを押し込む機能を有する(
図8b及び8cにこの機構についてより詳しく説明されている)ワイア編成部材950の特定の表面の幅と一致する横幅を有している。レバー880の前面890は平坦かつ滑らかであるため、レバー880はワイア編成部材950の対応する摺動面980、980’上を容易に滑ることができる。レバー880は、その一端において壁870にしっかりと取り付けられている。レバー880は、その裏側において、側壁820から側壁830に延びる、後壁850と平行な内壁900によって支持されている。内壁900は、凹部860と整列した中央凹部905を有しているため、ツール700の開位置及び閉位置の両方において、ジャック40の接点に接続しようとするワイア965をツール700及びジャック40に導入することができる。
【0087】
レバー880及び880’はそれぞれ、内壁900の中央から横方向に変位しており、レバーのそれぞれは以下に詳しく述べるワイア編成部材950のそれぞれの対応する摺動面980、980’と整列している。
【0088】
内壁900と旋回ヒンジ穴840との間の距離は、ワイア965がジャック40の接点にしっかりと接続されるようにワイア編成部材950がジャック40の本体960内に充分に深く押し込まれた場合にのみ、ツール700をその閉位置とすることができるように選択される。ワイア編成部材950がジャック40の本体960内に充分に深く挿入されると、内壁900及びレバー880がツール700が完全に閉じることを防止する。
【0089】
ツール700は、
図8aに示される実施形態では、その開位置からその閉位置へと手で移行させるものとなっている。操作者、技術者などは、ワイア965をワイア編成部材950に挿入し、ツール700がその開位置にある状態でジャック40の本体960をツール700に挿入し、ワイア編成部材950をジャック40の本体960に部分的に手で挿入し、更にアクチュエータ800及び800’を同時に互いに向かって手で旋回させることによってツール700をその閉位置に移行させ、これによりワイア編成部材950をジャック40の本体960に挿入することが求められ、これによりワイア965がジャック40の各接点にしっかりと接続される。
【0090】
アクチュエータ800の旋回、ひいてはツール700の閉鎖を促すため、アクチュエータ800は、アクチュエータ800の、ヒンジとなっている端部とは反対側の端部の近くに配置されたグリップ要素910を備えている。グリップ要素910は、下壁870に連結されるか又はその一部を形成し、下壁870の、レバー880が取り付けられた側面とは反対側の側面に配置されるほぼ板上の平坦な要素である。グリップ要素910はレバー880上の中心に配置すると、この配置によってツール700を閉じるためにグリップ要素910に圧力が加えられる際のツール700の歪みが防止されることから有利となりうる。グリップ要素910はその平面内において、アクチュエータ800の壁820、830、850、及び870によって形成される舟状容器を越えて1以上の方向に延びてよい。
【0091】
図8bは、開位置にあるツール700を示したものであり、電気通信ジャック40の本体960がツール700のキャビティ750に挿入されている。ワイア965がワイア編成部材950に挿入されている。ワイア編成部材950はジャック40の本体960には挿入されていない。ワイア編成部材950は、ワイア編成部材950の両側に配置されたラッチ突起990、990’を有している。ラッチ突起990、990’は、ジャック本体960の対応する弾性ラッチ1000、1000’との固く不可逆な係合を可能とする三角形の断面を有している。矢印780によって示される方向におけるラッチ突起990、990’の位置は、ワイア編成部材950がジャック40の本体960に完全に挿入された場合にのみ、ラッチ突起990、990’がそれぞれのラッチ1000、1000’と係合できるように選択される。
【0092】
図8cは、開位置にある成端ツール700を示したものであり、電気通信ジャック40がツール700のキャビティ750に挿入されている。分かりやすくするため、アクチュエータ800’は1個のみが示されている。この図はジャック40の後部の詳細を示している。ワイア編成部材950はジャック40の本体960に部分的に挿入されている。ワイア965はジャック40の背面の円形のワイア開口部970からジャック40に導入される。ワイア編成部材950は、一方が開口部970の一方の側に配置され、他方が開口部970の反対側に配置された2個の摺動面980、980’を有している(
図8cでは摺動面980’のみが見える)。摺動面980、980’は、開口部970の中心を通る矢印780の向きの軸に対して互いに対称的に配置されている。アクチュエータ800及び800’がツール700の閉位置へと互いに向かって旋回する際、摺動面980’にレバー880’の前面890’が機械的に接触する一方で、摺動面980にはレバー880の前面890が機械的に接触する(この図では見えない)。
【0093】
摺動面980、980’と対応するレバー前面890、890’との間の相互作用は、摺動と押す相互作用の両方である。ツール700がその開位置からその閉位置へと移行する際、レバー880’の、壁870に取り付けられた一方の端部とレバー880’の他方の端部との間のレバー880’に沿って概ね中間の位置に位置するレバー880’の中央部が、摺動面980’と最初に接触し、ワイア編成部材950をジャック40の本体960内にわずかに深く押し込む。ツール700が更に閉じられるのにしたがって、レバー880’と摺動面980’との接点が壁870に接近し、ワイア編成部材950がジャック40の本体960内により深く入り込む。ツール700が完全に閉じた位置となる(
図8dに示される)と、ワイア編成部材950はジャック40の本体960に充分に深く挿入され、ラッチ突起990’が弾性ラッチ1000’と係合し、他方のラッチ突起990(見えていない)が他方の弾性ラッチ1000と係合することによって、ワイア編成部材950がその完全に挿入された位置に固定される。
【0094】
図8a〜8dに示される実施形態では、ツール700のアクチュエータ800と800’とが同じ形状を有していることは上記に述べた。アクチュエータ800がアクチュエータ800’と対向して配置され、それぞれの旋回軸が平行で互いに近接して配置されているため、レバー880及び880’の位置が横方向にオフセットしていることは、これらがワイア編成部材950を、ジャック40の中心軸を中心として対称的に配置された異なる摺動面980、980’においてそれぞれジャック40の本体内に押し込むことを意味する。これにより、ワイア編成部材950はジャック40の本体内に均等に押し込まれ、斜めになったり詰まったりすることが防止される。
【0095】
アクチュエータ800及び800’を互いの方向に完全に旋回させることにより、すなわちツール700を開位置から閉位置に移行させることによって、レバー880、880’がそれぞれの前面890、890’によって各摺動面980、980’と接触し、更にツール700が完全に閉じると、レバー880、880’がワイア編成部材950をジャック40の本体960内に押し込み、更にこれによりワイア965を絶縁変位接点(図に示されていない)の各スリット内に押し込むことによって、ジャック40との安定した接続が確立される。
【0096】
図8dは、ツール700及びツールの作動後にワイア965と接続されたジャック40を示している。図を分かりやすくするため、アクチュエータ800、800’は再び開かれている。ワイア編成部材950がジャック40の本体960内に完全に押し込まれており、弾性ラッチ1000、1000’がラッチ突起990、990’とそれぞれ係合していることにより、ジャック40の本体960に対してワイア編成部材950がしっかりと固定されている。この状態で、ワイア965はジャック40内の各絶縁変位接点1150(見えていない)としっかりと接続される。
【0097】
図9は、ワイア965を定位置に保持しているモジュラージャック40のワイア編成部材950の斜視図である。ワイア965は、ワイア開口部970(この図では見えていない)からワイア編成部材950内に導入されている。各ワイアは、絶縁シース1050及び導電ストランド1060を有している。ワイア編成部材950の内部空間は壁1080によって包囲されている。壁1080の内の2つは凹部1100を有し、そのそれぞれが、ワイア965の絶縁シース1050と係合することによって1本のワイア965の端部を定位置に保持している。ワイア編成部材950が、その内部で定位置に保持されたワイア965とともにジャック40の本体960内に押し込まれると、各ワイア965の、ワイアを定位置に保持している凹部1100に隣接した部分が、モジュラージャック40の絶縁変位接点1150内に押し込まれ、これにより各ワイア965が各絶縁変位接点1150に固定され、ワイア965の導電ストランド1060と絶縁変位接点1150との間に電気的接触が確立される。
【0098】
ワイア編成部材950は、ポリマー性の非導電性材料から作製される。ワイア965を定位置に保持するための凹部1100を有するこれらの壁1080には、異なるワイア位置を示す機能を有する標示1110が設けられている。
【0099】
図10は、ワイア成端ツール700がワイア編成部材950をジャック40の本体960内に押し込む際にワイア965が固定されるジャック40の本体960内の絶縁変位接点1150を示す、ジャック40の一部の斜視図である。ツール700のレバー880、880’がワイア編成部材950をジャック40の本体960内に完全に押し込むことによってワイア965が各絶縁変位接点1150に固定されると、ジャック40の2個のラッチ1000、1000’がワイア編成部材950の各ラッチ突起990、990’と係合して本体960に対してワイア編成部材950を固定する。