(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5897009
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】排気過給機の軸受筐体
(51)【国際特許分類】
F02B 39/00 20060101AFI20160317BHJP
F01D 25/16 20060101ALI20160317BHJP
F01D 25/18 20060101ALI20160317BHJP
F01D 25/20 20060101ALI20160317BHJP
【FI】
F02B39/00 C
F01D25/16 D
F01D25/18 B
F01D25/20 B
F01D25/16 E
F01D25/16 H
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-526036(P2013-526036)
(86)(22)【出願日】2011年8月19日
(65)【公表番号】特表2013-536373(P2013-536373A)
(43)【公表日】2013年9月19日
(86)【国際出願番号】US2011048373
(87)【国際公開番号】WO2012027212
(87)【国際公開日】20120301
【審査請求日】2014年2月26日
(31)【優先権主張番号】102010035279.9
(32)【優先日】2010年8月24日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500124378
【氏名又は名称】ボーグワーナー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【弁理士】
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・ホルンバッハ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー・シュムニグ
【審査官】
寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−084591(JP,A)
【文献】
特開2009−121274(JP,A)
【文献】
特開2007−292041(JP,A)
【文献】
実開昭59−009127(JP,U)
【文献】
実開昭58−161131(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 33/00 − 41/10
F01D 13/00 − 15/12
23/00 − 25/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気過給機軸受筐体(1)であって、
圧縮機側筐体フランジ(2)を有し、
前記筐体フランジ(2)に一体的に接続され、油入口(20)および油出口(21)を有する油チャンバ(5)の第1の部分セクション(4)がその中に配設された中央筐体セクション(3)を有し、
タービン側筐体フランジ(7)を有し、前記油チャンバ(5)の第2の部分セクション(8)をその中に配設した、タービン側筐体セクション(6)を有し、
前記中央筐体セクション(3)および前記タービン側筐体セクション(6)は、油冷却ダクト(13)を備え、
前記油冷却ダクト(13)がオーバーフロー(10)を介して前記油チャンバ(5)に接続され、
前記油冷却ダクト(13)が、前記オーバーフロー(10)から前記油出口(21)へと蛇行する様式で通る3つのダクトセクション(13A、13B、13C)を有し、
油入口ダクト(11、12)が設けられた軸受スリーブ(9)が、軸受筐体(1)の中央筐体セクション(3)とタービン側筐体セクション(6)の中に挿入され、当該軸受スリーブ(9)並びに前記中央筐体セクション(3)及びタービン側筐体セクション(6)が、前記油チャンバを区切り、前記軸受スリーブ(9)は、前記油チャンバ(5)から前記油冷却ダクト(13)を分離させる、排気過給機軸受筐体(1)。
【請求項2】
前記油冷却ダクト(13)が前記油入口(20)から分岐して出て、前記油出口(21)内に開口する、請求項1に記載の軸受筐体(1)。
【請求項3】
前記油冷却ダクト(13)内の貫流速度が、前記油冷却ダクト(13)の断面積によって決定される、請求項1に記載の軸受筐体(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1のプリアンブルによる排気過給機の軸受筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
前記タイプの軸受筐体は、独国特許出願公開第4330380A1号明細書から既知である。この既知の軸受筐体は、軸受インサートと、軸受インサートを少なくとも部分的に包囲する軸受ディッシュとに分けられる。ここで、軸受筐体の軸受を冷却するための油チャンバは、鋳造部品である軸受インサート内に形成される。構成及び製造の単純化を達成するために前記配設の手段によって探し求められるとしても、結果的に鋳造によって容易に生産することができない比較的複雑な幾何学的形状となるので、油チャンバをともなう軸受インサートの設計は厄介である。さらに、軸受筐体およびその軸受の冷却には、改良の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、特許請求項1のプリアンブルによる、単純化された筐体設計を有しつつ改良された冷却特性を有する、排気過給機の軸受筐体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的は、特許請求項1の特徴の手段により達成される。
【0005】
油冷却ダクトの提供の結果として、油チャンバに入ってくる油を軸受筐体の軸受配列に供給するために最初に使用することが可能である。過剰の油は、油冷却ダクト内に導くことができ、その結果として、流速および軸受の配列による一貫性(油ミスト及び油泡)について影響されることなく、より多くの油がより大きい表面積の周りを流れる、改良された冷却動作が達成される。
【0006】
特に好適な実施形態では、油冷却ダクトを油チャンバから分離する軸受スリーブが提供された場合、前記軸受スリーブは、油冷却ダクトにより高温タービン側から効果的に密封することができる。さらに、軸受潤滑の機能と冷却の機能との間で、油量を分けることができ、さらに調節することができる。このようにして、より少ない油が動的密封へと回され、これは密封動作を改善する。
【0007】
油冷却ダクトの音響遮蔽効果の結果として、および軸受スリーブの減衰の結果として、もたらされる音響における改善がある。
【0008】
製造のために、対応して設計された内側中子が提供されてもよい。前記大きい、容易にアクセスできる内側中子の結果として、軸受筐体上部からの砂除去が容易である。
【0009】
代替的な実施形態では、単一片の軸受筐体の場合、すなわち挿入可能な軸受スリーブ無しに、対応する中子形成の手段により油冷却ダクトが製造される。ここで、油冷却ダクトは、油入口から分岐して出て、タービン側において直接油出口へと導かれる。
【0010】
第1の実施形態のように、結果的に有利点がある。第1に、水冷却の配設の必要が除去され、一方で、軸受領域への、油の過剰な量をともなわずに(跳ね損失の減少)、油供給を確実にするために、潤滑および冷却のために使用される油ダクトまたは油チャンバを分離するべきであり、不浸透性は、軸受筐体の故障をもたらすことにならないので、ダクト(油冷却ダクトと油潤滑ダクトとの)間の壁厚さは、費用を低減するために小さくてもよい。
【0011】
したがって、第1の実施形態および第2の実施形態の特定の際立った有利点は、構成要素の単純化、より小さい接地空間、およびより少ない動力損失および改善された油の漏れをもたらす軸受配列コア内での油処理量の低減の結果としての費用の低減である。
【0012】
従属請求項は、本発明の有利な改良に関する。
【0013】
本発明のさらなる詳細、有利点、および特徴は、図面に基づく以下の例示的な実施形態の記述から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明による、軸受筐体をともなって提供される過給機本体グループの概略的に若干単純化した図を示す。
【
図2】本発明による、軸受スリーブの挿入の前の、軸受筐体の断面図を示す。
【
図3】本発明による、軸受スリーブの挿入およびロータ組み立て後の、軸受筐体の斜視図を示す。
【
図4】本発明による、軸受筐体を生産するための中子の斜視図を示す。
【
図5】
図1に対応する代替的な軸受筐体の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明による、軸受筐体1を有する排気過給機本体グループを図示する。本体グループは、ロータを形成するように、一端に圧縮機ホイール15が取り付けられ、もう一方の側にタービンホイール19が取り付けられた、シャフト16も含む。シャフト16は、圧縮機側軸受配列17およびタービン側軸受配列18の手段により、アキシャル軸受22とともに軸受筐体1内に取り付けられる。
図1に示されていない圧縮機筐体およびタービン筐体が前記本体グループに加えられる場合、本発明を以下に詳細に記述する軸受筐体1をともなう排気過給機として、記述することもできるように、これは排気過給機を生み出す。
【0016】
図2は、軸受スリーブ9の挿入前の、本発明による軸受筐体1を図示する。軸受筐体1は、圧縮機側筐体フランジ2と、筐体フランジ2に一体的に接続され、油チャンバ5の第1の部分セクション4(
図1を参照のこと)がその中に配設される中央筐体セクション3と、タービン側筐体フランジ7を有し、油チャンバ5の第2の部分セクション8(
図1を参照のこと)がその中に配設されるタービン側筐体セクション6とを備える。油入口20および油出口21は、前記図から見ることができる。
【0017】
中央筐体セクション3およびタービン側筐体セクション6は、一体で形成され、別個の構成要素を形成する軸受スリーブ9は、中央筐体セクション3およびタービン側筐体セクション6内に挿入される。前述の配設の有利点は、軸受スリーブ9ならびに2つの筐体セクション3および6がともに油チャンバ5を区切る点である。
【0018】
前記実施形態では、油チャンバ5はオーバーフロー10を介して油冷却ダクト13に接続されることを、
図1〜
図3から見ることができる。
図1にも示されるように、軸受スリーブ9は油入口ダクト11、12を備える。
【0019】
図1〜
図3の軸受筐体の実施形態は、油チャンバ5から分岐して出て油冷却ダクト13へと導くオーバーフロー10を有する。図に示した例示的な実施形態では、前記油冷却ダクト13は、3つのダクトセクション13A、13B、および13Cを有し、軸受筐体9を高温のタービン側から遮蔽することができるように、主としてタービン側筐体セクション6内を蛇行した様式で通る。これは、特に
図3から見ることができる。
【0020】
図2および
図3は、油出口21内に開口する、最終的なダクトセクション13Cも示す。
【0021】
図4は、軸受筐体1の製造のための中子Kを斜視図で示し、この中子は、油中子(OK)と冷却ダクト中子KKとに分けられる油チャンバ中子(OR)を有し、
図4の図から直接的に見ることができるように、全体を鋳造された軸受筐体1内で、油チャンバ5および油冷却ダクト13の上述の設計を生み出す。
【0022】
図5は、軸受筐体1の代替的な実施形態を図示し、ここで
図1〜
図3のものに対応する全ての部品は、同一の参照記号を備える。
図1〜
図3の2部品の実施形態とは対照的に、ここで、単一部品軸受筐体1が提供され、これは、
図5に示されるように、この場合も、高温のタービン側からの熱的な遮蔽を可能にするために、油入口20から分岐して出て主としてタービン側筐体セクション6内を通る油冷却ダクト13’を有する。油冷却ダクト13’は、
図5から直接的に見ることができるように、油出口21内に開口する。
【0023】
上記の開示を補足するために、
図1〜
図5において本発明の図式的な図示の参照が明示的に行われる。
【符号の説明】
【0024】
1 軸受筐体
2 圧縮機側筐体フランジ
3 中央筐体セクション
4 第1の部分セクション
5 油チャンバ
6 タービン側筐体セクション
7 タービン側筐体フランジ
8 第2の部分セクション
9 軸受スリーブ
10 オーバーフロー
11 油流入ダクト
12 油流入ダクト
13 油冷却ダクト
13’ 油冷却ダクト
13A ダクトセクション
13B ダクトセクション
13C ダクトセクション
15 圧縮機ホイール
16 シャフト
17 軸受配列
18 タービン側 軸受配列
19 タービンホイール
20 油入口
21 油出口
22 アキシャル軸受
K 中子
OK 油中子
OR 油チャンバ
KK 冷却ダクト中子