【実施例】
【0031】
以下の実施例は、潤滑剤組成物中で粘度指数向上剤として使用することができるエチレン−プロピレン−ブチレンポリマーの調製を示す。
[実施例1]
撹拌翼を備え、窒素で十分にパージした310L容量の加圧した連続重合反応器の供給口の1つに、精製および脱水したn−ヘキサンを27.1L/時の流量で連続導入する。37.5mmol/Lの濃度でメチルアルミノキサン(TMAO−341:東ソー・ファインケム株式会社(TOSO FINECHEM CORPORATION));0.15mmol/Lの濃度でジフェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(2,7−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド;および15.0mmol/Lの濃度でトリイソブチルアルミニウム(TiBA:東ソー・ファインケム株式会社)を含むヘキサン溶液を、0.1L/時の流量で連続導入する。同時に、連続重合反応器の別の供給口に、0.8kg/時の流量でエチレン、11.1kg/時の流量でプロピレン、6.5kg/時の流量でブテン−1、および4.5NL/時(NL=標準状態におけるリットル、すなわち、1気圧および0℃でのリットル)の流量で水素を連続的に加える。連続溶液重合は、重合温度を60℃、全圧を1.0MPa−G(G=ゲージ圧)、および撹拌回転数を190rpmとする条件下で行う。重合反応器の外側に装備されたジャケットを介して冷却剤を循環させる。さらに、別途装着したガス送風機を使用して気相を強制循環させ、気相を熱交換器により冷却し、それにより重合熱を除去する。生成される重合生成物は、エチレン/プロピレン/ブテン−1ポリマーを含むヘキサン溶液である。この溶液を、重合反応器の底部に装備された出口を通してエチレン/プロピレン/ブテン−1コポリマーについて7.5kg/時の速度で抜き出して、重合反応器内の平均溶液量を100Lに維持する。得られた重合溶液をメタノールに注ぎ、エチレン/プロピレン/ブテン−1ポリマーを沈殿させる。エチレン/プロピレン/ブテン−1ポリマーを130℃、24時間減圧下で乾燥させる。ポリマーは、8.7mol%のエチレンに由来する構造単位、68mol%のプロピレンに由来する構造単位、および23.3mol%のブテン−1から誘導される構造単位を含む。ポリマーは、865kg/m
3の密度、47℃の融点、ポリスチレンを校正標準物質として使用したGPCにより測定される220,000のMwおよび2.2のMw/Mnを有する。
【0032】
過塩基性金属含有清浄剤
潤滑剤組成物は、1種または複数種の、過塩基性金属含有清浄剤を含んでもよい。他に過塩基性塩または超塩基性塩とも呼ばれる過塩基性材料は、金属含有量が、金属と、その金属と反応する特定の酸性有機化合物とを化学量論的に中和する含有量より過剰に存在するであろうことを特徴とする単相の均一なニュートン系である。過塩基性材料は、酸性材料(典型的には無機酸または低級カルボン酸、たとえば二酸化炭素など)を、酸性有機化合物と、前記酸性有機材料に適した少なくとも1種の不活性な有機溶剤(鉱油、ナフサ、トルエン、キシレン等)を含む反応媒体と、化学量論的に過剰な金属塩基と、促進剤、たとえば塩化カルシウム、酢酸、フェノールまたはアルコールとを含む混合物と反応させて調製することができる。酸性有機材料は、油に対して一定程度の溶解性を付与するのに十分な数の炭素原子を有してもよい。過剰金属の量は、一般に金属比によって表される。「金属比」という用語は、金属の総当量と酸性有機化合物の当量との比である。中性金属塩の金属比は1である。正塩に存在する金属の3.5倍を有する塩は、金属が3.5当量過剰であり、すなわち比は4.5である。「金属比」という用語は、「潤滑剤の化学および科学技術(Chemistry and Technology of Lubricants)」、第2版、R.M.モルティエ(Mortier)およびS.T.オルスズリク(Orszulik)編、著作権、1997年という書名の標準的な指導書にも説明されている。
【0033】
過塩基性金属含有清浄剤の金属は、亜鉛、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウムまたはこれらの2つ以上の混合物であってもよい。金属は、ナトリウム、カルシウムもしくはマグネシウムまたはこれらの混合物であってもよく、一実施形態では、金属は、ナトリウムとカルシウムとの混合物であってもよい。
【0034】
過塩基性金属含有清浄剤は、非硫黄含有フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、サリキサレート、サリチレートおよびこれらの混合物、またはこれらのホウ酸化された等価物から選択してもよい。一実施形態では、潤滑剤組成物は、フェノール系清浄剤(単数または複数)を含まなくても、または実質的に含まなくてもよい。「実質的に含まない」は、この文脈では、清浄剤(単数または複数)の10重量パーセント未満、または5重量パーセント未満もしくは1重量パーセント未満もしくは0.1重量パーセント未満がフェノール系であってもよいことを意味する。過塩基性清浄剤は、ホウ酸などのホウ酸化剤でホウ酸化されていてもよい。
【0035】
過塩基性金属含有清浄剤は、また、フェネートおよび/またはスルホネート成分、たとえば、米国特許第6,429,178号;同第6,429,179号;同第6,153,565号;および同第6,281,179号に記載されているようなフェネート−サリチレート、スルホネート−フェネート、スルホネート−サリチレート、スルホネート−フェネート−サリチレートを含む混合界面活性剤系で形成される「ハイブリッド」清浄剤を含んでもよい。たとえば、スルホネート−フェネートハイブリッド清浄剤を使用する場合、ハイブリッド清浄剤は、別々のフェネート清浄剤およびスルホネート清浄剤の各量と同等と見なされ、それぞれ対応する量のフェネート石鹸およびスルホネート石鹸を導入したのと同等と見なされるであろう。
【0036】
過塩基性金属含有清浄剤は、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、サリキサレートまたはサリチレートの、亜鉛塩、ナトリウム塩、カルシウム塩またはマグネシウム塩を含んでもよい。過塩基性サリキサレート、フェネートおよびサリチレートは、約180〜約450TBNの範囲の全塩基価(ASTM D3896)を有してもよい。過塩基性スルホネートは、約250〜約600の範囲の、または約300〜約500の範囲の全塩基価を有してもよい。過塩基性清浄剤は、当該技術分野において公知である。スルホネート清浄剤は、米国特許出願公開第2005/065045号の段落[0026]から[0037]に記載されているような少なくとも約8の金属比を有する大部分が直鎖のアルキルベンゼンまたはアルキルトルエンスルホネート清浄剤であってもよい。直鎖アルキル基は、直鎖アルキル鎖に沿って任意の位置で、たとえば2位、3位または4位でベンゼンに結合していても、またはトルエンに結合していてもよい。直鎖アルキルベンゼンスルホネート清浄剤は、燃料経済性の向上に有用であり得る。
【0037】
過塩基性金属含有清浄剤は、カルシウム過塩基性清浄剤でも、またはマグネシウム過塩基性清浄剤でもよい。潤滑剤組成物は、過塩基性カルシウムスルホネート、過塩基性カルシウムフェネートまたはこれらの混合物を含んでもよい。過塩基性清浄剤は、金属比が少なくとも約3.5、たとえば、約3.5〜約40の範囲、または約5〜約25の範囲、または約7〜約20の範囲のカルシウムスルホネートを含んでもよい。
【0038】
潤滑剤組成物は、低過塩基性清浄剤(金属比が約3.5未満、たとえば、約0〜約3.5の範囲、または約0.5〜約3.0の範囲、または約1〜約2.5の範囲、または約1.5〜約2の範囲のもの)、または中性清浄剤をさらに含んでもよい。
【0039】
過塩基性金属含有清浄剤は、潤滑剤組成物の約0.05重量%〜約5重量%の範囲の濃度で潤滑剤組成物中に存在してもよい。過塩基性清浄剤は、潤滑剤組成物の約0.1重量%、約0.3重量%または約0.5重量%から、約3.2重量%まで、または約1.7重量%まで、または約0.9重量%までの範囲の濃度で存在してもよい。同様に、過塩基性清浄剤は、潤滑剤組成物に約1〜約10の範囲のTBN(全塩基価)を与えるのに好適な量で存在してもよい。過塩基性清浄剤は、潤滑剤組成物に約1.5から約3まで、または約5まで、または約7までの範囲のTBNを与える量で存在してもよい。他の実施形態では、過塩基性清浄剤は、潤滑剤組成物に3〜7または4〜6のTBNなど少なくとも3のTBNを与えてもよい。
【0040】
金属を含む清浄剤は、TBNだけでなく、潤滑剤組成物に灰分も与える。硫酸灰分(ASTM D874)は、過塩基性清浄剤および潤滑剤組成物を特徴付けるために頻繁に使用されるもう1つのパラメーターである。潤滑剤組成物は、約0.3〜約1.2重量%、または約0.3〜約1.0重量%、または約0.5〜約1.0重量%、または約0.6重量%超の硫酸灰分レベルを有してもよい。他の実施形態(たとえば、船舶用ディーゼル機関用シリンダー潤滑剤に関する)では、灰分レベルは、約1〜約15重量%、または約2〜約12重量%、または約4〜約10重量%でもよい。過塩基性清浄剤は、硫酸灰分の約50%〜約100%、または灰分の少なくとも約70%、または灰分の少なくとも約80%、または灰分の100%を占めてもよい。過塩基性清浄剤は、約95%以下の硫酸灰分、または約98%以下の硫酸灰分を与えてもよい。
【0041】
潤滑剤組成物は、船舶用ディーゼル機関用シリンダー潤滑剤(MDCL)であってもよい。この種の潤滑剤は、金属含有過塩基性清浄剤により主としてもたらされる高いTBNレベルを特徴としてもよい。いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物は、TBNが少なくとも約10、または少なくとも約20、たとえば、10〜100、20〜100、30〜100、40〜80、30〜75、または40〜70であってもよい。MDCL組成物の塩基性の大部分は、清浄剤成分により得ることができるが、典型的にはTBNの比較的少量(たとえば、約5%未満)は、窒素含有分散剤など他の種により得てもよい。
【0042】
他の性能添加剤
潤滑剤組成物は、他の性能添加剤を含んでもよい。性能添加剤は、1種または複数種の金属活性低下剤、粘度調整助剤、補助清浄剤、摩擦調整剤、摩耗防止剤、腐食抑制剤、分散剤、分散剤粘度調整剤、極圧剤、酸化防止剤、抑泡剤、抗乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤、これらの2つ以上の混合物を含んでもよい。
【0043】
酸化防止剤は、硫化オレフィン、ジアリールアミン、アルキル化ジアリールアミン、ヒンダードフェノール、モリブデン化合物(ジチオカルバミン酸モリブデンなど)、ヒドロキシルチオエーテル、またはこれらの混合物を含んでもよい。酸化防止剤は、潤滑剤組成物の約0wt%〜約15wt%、または約0.1wt%〜約10wt%、または約0.5wt%〜約5wt%、または約0.5wt%〜約3wt%の範囲の濃度で存在してもよい。
【0044】
ジアリールアミンまたはアルキル化ジアリールアミンは、フェニルα−ナフチルアミン(PANA)、アルキル化ジフェニルアミン、もしくはアルキル化フェニルナフチルアミン(phenylnapthylamine)、またはこれらの混合物であってもよい。アルキル化ジフェニルアミンは、ジ−ノニル化ジフェニルアミン、ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジ−オクチル化ジフェニルアミン、ジ−デシル化ジフェニルアミン、デシルジフェニルアミンおよびこれらの混合物を含んでもよい。一実施形態では、ジフェニルアミンは、ノニルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジオクチルジフェニルアミン、またはこれらの混合物を含んでもよい。一実施形態では、ジフェニルアミンは、ノニルジフェニルアミンまたはジノニルジフェニルアミンを含んでもよい。アルキル化ジアリールアミンは、オクチル、ジ−オクチル、ノニル、ジ−ノニル、デシルまたはジ−デシル フェニルナフチルアミン(phenylnapthylamine)を含んでもよい。
【0045】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、立体障害基として第二ブチル基および/または第三ブチル基を含んでもよい。フェノール基は、ヒドロカルビル基(典型的には直鎖または分岐アルキル)および/または第2の芳香族基に結合した架橋基でさらに置換されていてもよい。好適なヒンダードフェノール酸化防止剤の例として、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−エチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−プロピル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノールもしくは4−ブチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、または4−ドデシル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノールがある。ヒンダードフェノール酸化防止剤は、Irganox(商標)L−135という商品名でチバ(Ciba)社から入手できるエステルなどのエステルであってもよい。こうした材料は、下記一般式で表すことができる。
【0046】
【化1】
【0047】
式中、R
3は、たとえば、1〜約18個、または2〜約12個、または2〜約8個、または2〜約6個の炭素原子を含むアルキル基などのヒドロカルビル基であり、t−アルキルはt−ブチルであってもよい。使用してもよいエステルを含むヒンダードフェノール酸化防止剤の詳細な説明は、米国特許第6,559,105号で確認することができる。
【0048】
酸化防止剤として使用してもよいジチオカルバミン酸モリブデンの例として、アール・ティー・ヴァンダービルト社(R.T.Vanderbilt Co.,Ltd.)からVanlube 822(商標)、およびMolyvan(商標)A、さらに旭電化工業株式会社(Asahi Denka Kogyo K.K,)からAdeka Sakura−Lube(商標)S−100、S−165、S−525およびS−600などの商品名で販売されている市販の材料およびこれらの混合物がある。
【0049】
潤滑剤組成物は、さらに1種または複数種の粘度調整助剤を含んでもよい。粘度調整助剤は、水素添加スチレンブタジエンゴム、エチレン−プロピレンコポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、水素添加スチレン−イソプレンポリマー、水素添加ジエンポリマー、ポリ(アルキルスチレン)、ポリオレフィン、無水マレイン酸−オレフィンコポリマーのエステル(国際公開第2010/014655号に記載されているものなど)、無水マレイン酸−スチレンコポリマーのエステル、または混合物またはこれらの2つ以上を含んでもよい。
【0050】
分散剤粘度調整剤は、官能化ポリオレフィン、たとえば、無水マレイン酸およびアミンなどのアシル化剤で官能化されたエチレン−プロピレンコポリマー;アミンで官能化されたポリメタクリレート;またはアミンと反応させたエステル化スチレン−無水マレイン酸コポリマーを含んでもよい。分散剤粘度調整剤のより詳細な説明は、国際公開第2006/015130号または米国特許第4,863,623号;同第6,107,257号;同第6,107,258号;および同第6,117,825号に開示されている。分散剤粘度調整剤は、米国特許第4,863,623号(第2欄15行目から第3欄52行目を参照)または国際公開第2006/015130号(2ページの段落[0008]および段落[0065]〜[0073]に記載された調製例を参照)に記載されているものを含んでもよい。分散剤粘度調整剤は、潤滑剤組成物の最大約15wt%もしくは最大約10wt%、または約0.05wt%〜約5wt%もしくは約0.2wt%〜約2wt%の範囲の濃度で存在してもよい。
【0051】
潤滑剤組成物は、さらに1種または複数種の分散剤を含んでもよい。分散剤は、スクシンイミド分散剤、マンニッヒ分散剤、スクシンアミド分散剤、ポリオレフィンコハク酸エステル、アミド、もしくはエステル−アミド、またはこれらの混合物でもよい。分散剤は単一の分散剤として存在してもよいし、または少なくとも1種がスクシンイミド分散剤であってもよい2種以上(たとえば、3種)の異なる分散剤の混合物として存在してもよい。
【0052】
スクシンイミド分散剤は、1種または複数種の脂肪族ポリアミンから得ることができる。脂肪族ポリアミンは、エチレンポリアミン(すなわち、ポリ(エチレンアミン))、プロピレンポリアミン、ブチレンポリアミンなどの脂肪族ポリアミンでも、またはこれらの2種以上の混合物でもよい。脂肪族ポリアミンはエチレンポリアミンであってもよい。脂肪族ポリアミンは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレン−ペンタアミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリアミン残油、またはこれらの2種以上の混合物から選択してもよい。
【0053】
スクシンイミド分散剤は、芳香族アミン、芳香族ポリアミンまたはこれらの混合物から得てもよい。芳香族アミンは、4−アミノジフェニルアミンなどのヒドロカルビレン基および/またはヘテロ原子により結合された1つまたは複数の芳香族部分を有してもよい。芳香族アミンは、ニトロ置換芳香族アミンであってもよい。ニトロ置換芳香族アミンの例として、2−ニトロアニリン、3−ニトロアニリンおよび4−ニトロアニリンを挙げることができる。3−ニトロアニリンは特に有用である。ニトロアニリンと共に他の芳香族アミンが存在してもよい。ニトロアニリンとの、さらに任意にディスパースオレンジ3(すなわち、4−(4−ニトロフェニルアゾ)アニリン)との縮合生成物が米国特許出願公開第2006/0025316号に開示されている。
【0054】
分散剤は、アミンで官能化されたポリマーを含んでもよく、たとえば、スクシンイミド分散剤を含んでもよい。アミンは、少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つの芳香族基、たとえば、約4〜約10、または約4〜約8、または約4〜約6の芳香族基、および少なくとも1つの第一級または第二級アミノ基、あるいは、少なくとも1つの第二級アミノ基を有するアミンであってもよい。アミンは、第一級アミノ基および少なくとも1つの第二級アミノ基の両方を含んでもよい。アミンは、少なくとも約4つの芳香族基、および第二級または第三級アミノ基の任意の組み合わせの少なくとも2つを含んでもよい。
【0055】
2つの芳香族基を有するアミンの例として、N−フェニル−p−フェニレンジアミンがある。少なくとも3または4つの芳香族基を有するアミンの例は、下記式(1)で表すことができる。
【0056】
【化2】
【0057】
式中、各可変基は、独立に以下の通りである:R
1は水素でも、またはC
1〜
5アルキル基でもよく(典型的には水素);R
2は水素でも、またはC
1〜
5アルキル基(でもよく典型的には水素);Uは脂肪族基でも、脂環式基でも、または芳香族基でもよく(Uが脂肪族である場合、脂肪族基は、1〜約5個または1〜約2個の炭素原子を含む直鎖アルキレン基でも、または分岐アルキレン基でもよい);wは1〜約10でも、または1〜約4でも、または1〜2でもよい(典型的には1)。Uが脂肪族基である場合、Uは1〜約5個の炭素原子を含むアルキレン基でもよい。あるいは、アミンは式(1a)で表すこともできる。
【0058】
【化3】
【0059】
式中、可変基U、R
1およびR
2はそれぞれ上記と同じであり、wは0〜約9、または0〜約3、または0〜約1である(典型的には0)。
【0060】
分散剤は、ポリオレフィンコハク酸のエステルでも、アミドでも、またはエステル−アミドでもよい。たとえば、ポリオレフィンコハク酸エステルはペンタエリトリトールのポリイソブチレンコハク酸エステルまたはその混合物でもよい。ポリオレフィンコハク酸エステル−アミドは、ポリイソブチレンコハク酸をアルコール(ペンタエリトリトールなど)およびアミン(ポリアミン、典型的にはジエチレントリアミン、ポリアミン残油、テトラエチレンペンタミン(TEPA)および同種のもの)と反応させたものでもよい。
【0061】
分散剤は、N置換長鎖アルケニルスクシンイミドであってもよい。N置換長鎖アルケニルスクシンイミドの例には、ポリイソブチレンスクシンイミド、すなわち、ポリイソブテン置換スクシンイミド分散剤がある。典型的には、ポリイソブチレンコハク酸無水物を誘導するポリイソブチレンは、約350〜約5000、または約550〜約3000または約750〜約2500の数平均分子量を有する。スクシンイミド分散剤およびその調製については、たとえば米国特許第3,172,892号、同第3,219,666号、同第3,316,177号、同第3,340,281号、同第3,351,552号、同第3,381,022号、同第3,433,744号、同第3,444,170号、同第3,467,668号、同第3,501,405号、同第3,542,680号、同第3,576,743号、同第3,632,511号、同第4,234,435号、米国再発行特許第26,433号、および米国特許第6,165,235号、同第7,238,650号および欧州特許出願公開第0 355 895 A号に開示されている。
【0062】
分散剤はさらに、種々の作用物質のいずれかと反応させて、従来の方法により後処理してもよい。中でも、ホウ素化合物(ホウ酸など)、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、たとえばテレフタル酸などのカルボン酸、炭化水素置換コハク酸無水物、無水マレイン酸、ニトリル、エポキシドおよびリン化合物が挙げられる。後処理分散剤は、ホウ酸化されていてもよい。後処理分散剤は、分散剤とジメルカプトチアジアゾールとの反応から得てもよい。後処理分散剤は、分散剤とリン酸または亜リン酸との反応から得てもよい。
【0063】
分散剤は、潤滑用組成物の約0.01wt%〜約20wt%、または約0.1wt%〜約15wt%、または約0.1wt%〜約10wt%、または約1wt%〜約6wt%、または約1〜約3wt%の範囲の濃度で潤滑剤組成物中に存在してもよい。
【0064】
分散剤が塩基性窒素原子を含む場合、そうした塩基性は、分散剤のTBNで測定してもよい。一実施形態では、有用なスクシンイミド分散剤のTBNは、オイルフリー(補正)ベースで約10〜約30であってもよく、これは、50%油を含む分散剤サンプルで測定した場合、約5〜約15に相当すると考えられる。
【0065】
一実施形態では、ポリマーの粘度指数を向上させる量(すなわち、VIポリマーの量)は、約0.5〜約2重量パーセントであり、分散剤の量は、約0.01〜約20重量パーセント、および過塩基性スルホネートの量は約0.05〜約5重量パーセントである。
【0066】
摩擦調整剤は、アミンの長鎖脂肪酸誘導体、長鎖脂肪酸エステル、または長鎖脂肪族エポキシドの誘導体;脂肪酸イミダゾリン;アルキルリン酸のアミン塩;脂肪酸アルキルタルトレート;脂肪酸アルキルタルトリミド;脂肪酸アルキルタルトラミド;脂肪酸グリコレート;および脂肪酸グリコールアミドから選択してもよい。本明細書で使用する場合、摩擦調整剤に関する「脂肪酸アルキルまたは脂肪酸」という用語は、約10〜約22個の炭素原子を有する炭素鎖、典型的には直鎖炭素鎖を意味する。あるいは、脂肪酸アルキル基の代わりに単分岐アルキル基を使用してもよい。典型的な単分岐アルキル基は、β分岐基、たとえば2−エチルヘキシル、2−プロピルヘプチルおよび同様のものを含んでもよい。摩擦調整剤は、潤滑剤組成物の0wt%〜約6wt%、または約0.01wt%〜約4wt%、または約0.05wt%〜約2wt%、または約0.1wt%〜約2wt%の範囲の濃度で潤滑剤組成物中に存在してもよい。
【0067】
使用してもよい摩擦調整剤の例として、アミンの長鎖脂肪酸誘導体、脂肪酸エステルまたは脂肪族エポキシド;脂肪酸イミダゾリン、たとえばカルボン酸とポリアルキレン−ポリアミンとの縮合生成物;アルキルリン酸のアミン塩;脂肪酸アルキルタルトレート;脂肪酸アルキルタルトリミド;脂肪酸アルキルタルトラミド;脂肪族ホスホネート;脂肪族ホスファイト;ホウ酸化されたリン脂質、ホウ酸化された脂肪族エポキシド;グリセロールエステル;ホウ酸化されたグリセロールエステル;脂肪族アミン;アルコキシル化脂肪族アミン;ホウ酸化されたアルコキシル化脂肪族アミン;ヒドロキシアルキルおよびポリヒドロキシアルキル脂肪族アミン、たとえば第三級ヒドロキシアルキル脂肪族アミン;ヒドロキシアルキルアミド;脂肪酸の金属塩;アルキルサリチレートの金属塩;脂肪族オキサゾリン;脂肪族エトキシル化アルコール;カルボン酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合生成物;または脂肪族カルボン酸と、グアニジン、アミノグアニジン、尿素もしくはチオ尿素との反応生成物およびそれらの塩を挙げることができる。
【0068】
摩擦調整剤はまた、硫化脂肪族化合物およびオレフィン、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、ジチオカルバミン酸モリブデン、ならびに、ポリオールとヒマワリ油もしくは大豆油から誘導されたまたは誘導され得る脂肪族カルボン酸とのモノエステルなどの材料も包含する。
【0069】
摩擦調整剤は、長鎖脂肪酸エステルであってもよい。長鎖脂肪酸エステルは、モノエステル、ジエステル、(トリ)グリセリド、またはこれらの2つ以上の混合物であってもよい。
【0070】
潤滑剤組成物は任意に、少なくとも1つの摩耗防止剤をさらに含んでもよい。好適な摩耗防止剤の例として、酒石酸塩(タルトレート)、タルトリミド、リン化合物の油溶性アミン塩、硫化オレフィン、金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート(亜鉛ジアルキルジチオホスフェートなど)、ホスファイト(亜リン酸ジブチルなど)、ホスホネート、チオカルバメート含有化合物、たとえばチオカルバメートエステル、チオカルバメートアミド、チオカルバミン酸エーテル、アルキレン結合チオカルバメート、およびビス(S−アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドを挙げることができる。摩耗防止剤は、一実施形態では、国際公開第2006/044411号またはカナダ特許第1 183 125号に開示されているようなタルトレートまたはタルトリミドを含んでもよい。タルトレートまたはタルトリミドは、アルキル基の炭素原子の合計が少なくとも約8であるアルキル基(単数または複数)を含んでもよい。
【0071】
添加剤の別のクラスは、米国特許第7,727,943号および米国特許出願公開第2006/0014651号に開示されているような油溶性チタン化合物を含んでもよい。これらは、摩耗防止剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、デポジット抑制添加剤および同様のものとして働き得る。これらの添加剤は、多機能添加剤であってもよい。たとえば、これらの添加剤の1つは、耐摩耗性および酸化防止性の両方を付与し得る。油溶性チタン化合物は、チタン(IV)アルコキシドであってもよい。チタンアルコキシドは、一価アルコール、ポリオールまたはこれらの混合物から形成することができる。一価アルコキシドは、2〜約16個の炭素原子、または3〜約10個の炭素原子を含んでもよい。チタンアルコキシドは、チタン(IV)イソプロポキシドであってもよい。チタンアルコキシドは、チタン(IV)2−エチルヘキサオキシドであってもよい。チタン化合物は、隣接1,2−ジオールまたはポリオールのアルコキシドを含んでもよい。1,2−隣接ジオールは、オレイン酸エステルなどグリセロールの脂肪酸モノ−エステルを含んでもよい。
【0072】
油溶性チタン化合物は、チタンカルボキシレートであってもよい。チタンカルボキシレートは、チタンアルコキシドと、非直鎖状モノカルボン酸および約22個より多く最大約25個の炭素原子を有するカルボン酸からなる群から選択されるカルボン酸とから誘導することができる。チタン/カルボン酸生成物の例として、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、ネオデカン酸および同様のものを含む群から選択される酸とのチタン反応生成物を挙げることができる。こうしたチタン/カルボン酸生成物を製造する方法は、たとえば、米国特許第5,260,466号に記載されている。
【0073】
油に可溶である局圧(EP)剤は、硫黄含有およびクロロ硫黄含有EP剤、分散剤(典型的にはスクシンイミド分散剤)のジメルカプトチアジアゾールまたはCS
2誘導体、塩素化炭化水素EP剤およびリンEP剤の誘導体を含んでもよい。こうしたEP剤の例として、塩素化ワックス;硫化オレフィン(硫化イソブチレンなど)、ヒドロカルビル置換2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールまたはそのオリゴマー、有機スルフィドおよびポリスルフィド、たとえばジベンジルジスルフィド、ビス−(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペン、ならびに硫化ディールスアルダー付加物;リン硫化炭化水素、たとえば硫化リンとテレビンまたはオレイン酸メチルとの反応生成物;リンエステル、たとえば二炭化水素および三炭化水素亜リン酸エステル、たとえば、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジヘプチル、亜リン酸ジシクロヘキシル、亜リン酸ペンチルフェニル;亜リン酸ジペンチルフェニル、亜リン酸トリデシル、亜リン酸ジステアリルおよびポリプロピレン置換フェノールホスファイト;金属チオカルバミン酸塩、たとえばジオクチルジチオカルバミン酸亜鉛およびバリウムヘプチルフェノール二酸;アルキルおよびジアルキルリン酸のアミン塩、または、たとえば、ジアルキルジチオリン酸とプロピレンオキシドとの反応生成物のアミン塩、およびその後さらにP
2O
5と反応させたものなどの誘導体;およびこれらの混合物(米国特許第3,197,405号に記載されている)を挙げることができる。
【0074】
潤滑剤組成物に使用してもよい抑泡剤は、ポリシロキサン、アクリル酸エチルと2−エチルヘキシルアクリレートのコポリマー、およびさらに任意に酢酸ビニル;抗乳化剤、たとえばフッ素化ポリシロキサン、トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよび(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ポリマーを含んでもよい。
【0075】
潤滑剤組成物に使用してもよい流動点降下剤は、ポリα−オレフィン、無水マレイン酸−スチレンコポリマーのエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリレートまたはポリアクリルアミドを含んでもよい。
【0076】
使用してもよい抗乳化剤は、トリアルキルホスフェート、ならびにエチレングリコール、エチレンオキシド、プロピレンオキシドの様々なポリマーおよびコポリマー、またはこれらの2つ以上の混合物を含んでもよい。
【0077】
金属活性低下剤は、ベンゾトリアゾールの誘導体(典型的にはトリルトリアゾール)、1,2,4−トリアゾールの誘導体、ベンゾイミダゾールの誘導体、2−アルキルジチオベンゾイミダゾールの誘導体または2−アルキルジチオ−ベンゾチアゾールの誘導体を含んでもよい。金属活性低下剤は、腐食抑制剤とも呼ばれる。
【0078】
使用してもよいシール膨潤剤は、スルホレン誘導体、たとえばExxon Necton−37(商標)(FN 1380)およびExxon Mineral Seal Oil(商標)(FN 3200)を含んでもよい。