(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の往復移動装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、往復移動装置は、軌道1と、該軌道1に往復移動可能に設けられた移動体2と、該移動体2を移動する移動手段3と、該移動手段3を駆動制御する移動制御手段4と、移動体2の移動のための電力を出力制御する電力制御手段5とを備えている。さらに、電力制御手段5に接続され、軌道1の一端側(図示左端側)に設けられた第1送電部6と、電力制御手段5に接続され、軌道1の他端側(図示右端側)に設けられた第2送電部7と、移動制御手段4に接続され、第1送電部6と対向するように移動体2に設けられた第1受電部8と、移動制御手段4に接続され、第2送電部7と対向するように移動体2に設けられた第2受電部9とを備えており、非接触給電により送電される電力を受電し、該電力により移動体2を軌道1に沿って往復移動する装置である。
【0025】
軌道1は、直線棒状に形成され、両端が図略の固定壁に固定支持されている。移動体2は、箱状に形成され、軌道1に沿って摺動可能に配設されている。移動手段3は、ボールネジ31と、ボールナット32と、ギヤ機構33と、モータ34とを備えている。ボールネジ31は、軌道1の長さと略同一長に加工され、軌道1と平行に配設されて両端が支持部31aに固定支持されている。ボールナット32は、ボールネジ31に螺合され移動体2内に回転可能に支承されている。ギヤ機構33は、移動体2に固定されたモータ34の駆動によりボールナット32が回転可能なようにモータ34の回転軸とボールナット32とを回転連結し移動体2内に回転可能に支承されている。
【0026】
移動制御手段4は、第1受電部8および第2受電部9と配線され第1受電部8および第2受電部9からの電力が入力可能なように構成されていると共にモータ34と配線されモータ34の正逆回転速度を制御可能なように構成されている。電力制御手段5は、第1送電部6および第2送電部7と配線され第1送電部6および第2送電部7に夫々供給する電力を例えば電流により出力制御可能なように構成されている。
【0027】
第1送電部6は、軌道1の一端側の図略の固定壁に固定され電力制御手段5と配線されている。第1受電部8は、第1送電部6と対向するように移動体2に固定され移動制御手段4と配線されている。第2送電部7は、軌道1の他端側の図略の固定壁に固定され電力制御手段5と配線されている。第2受電部9は、第2送電部7と対向するように移動体2に固定され移動制御手段4と配線されている。第1受電部8および第2受電部9は、受電面とは反対側の面同士が電気、磁気的に遮断して貼合わされて移動体2に固定されている。第1送電部6と第1受電部8、および第2送電部7と第2受電部9は、例えば磁界共鳴、電界共鳴もしくは電磁誘導により夫々非接触給電可能となっている。
【0028】
本実施形態では、第1送電部6および第2送電部8から送電する電力を第1受電部7および第2受電部9にて効率よく受電するために、第1送電部6と第1受電部8とを対向配置すると共に第2送電部7と第2受電部9とを対向配置する構成としたが対向配置としなくても非接触給電は可能である。これにより、送受電部のレイアウトの自由度を高めることができる。また、第1受電部8および第2受電部9という2つの受電部により第1送電部6および第2送電部7から送電される電力を夫々受電するように構成したが、1つの受電部により第1送電部6および第2送電部7から送電される電力を夫々受電するように構成してもよい。これにより、低コスト化を図ることができる。
【0029】
第1送電部6と第1受電部8、および第2送電部7と第2受電部9は同一構成であり、その構成を磁界共鳴を適用した場合について
図2を参照して説明する。第1送電部6(第2送電部7)には、1次コイル61(71)および該1次コイル61(71)に近接して配置された1次アンテナ62(72)が設けられ、第1受電部8(第2受電部9)には、2次コイル81(91)および該2次コイル81(91)に近接して配置された2次アンテナ82(92)が設けられている。そして、1次コイル61(71)には電力制御手段5が配線され、2次コイル81(91)には移動制御手段4が配線されている。1次アンテナ62(72)と2次アンテナ82(92)とは、同一の共鳴周波数で共鳴するように調整されている。
【0030】
このような構成において、電力制御手段5から1次コイル61(71)に1次電流が出力されると、電磁誘導により1次アンテナ62(72)に誘導電流が流れ、更に、該1次アンテナ62(72)のインダクタンスLsおよび浮遊容量Csにより、該1次アンテナ62(72)が共鳴周波数ωs(=1/√(Ls・Cs))で共鳴する。すると、この1次アンテナ62(72)に対向して設けられた2次アンテナ81(91)が共鳴周波数ωsで共鳴し、更に、2次アンテナ81(91)に2次電流が流れる。そして、電磁誘導により2次コイル81(91)に2次電流が流れ、この2次電流が移動制御手段4に供給される。上記動作により、第1送電部6(第2送電部7)から第1受電部8(第2受電部9)に非接触で電力を供給することができる。
【0031】
次に、往復移動装置の動作について説明する。移動体2を軌道1に沿って安定的に往復移動させるためには、電力制御手段5は、第1送電部6と第1受電部8との距離および第2送電部7と第2受電部9との距離が変化しても、第1送電部6から送電されて第1受電部8で受電する電力と第2送電部7から送電されて第2受電部9で受電する電力との電力和が一定となるように制御すればよい。
【0032】
ここで、
図3に示すように、移動体2が軌道1に沿って一端位置PLから他端位置PRに向かって移動するときに、一定電力Wを第1送電部6および第2送電部7から送電した場合、第1送電部6から送電されて第1受電部8で受電する電力W1は、第1送電部6と第1受電部8とが離間するにつれて漸減し、第2送電部7から送電されて第2受電部9で受電する電力W2は、第2送電部7と第2受電部9とが接近するにつれて漸増する。一方、移動体2が軌道1に沿って他端位置PRから一端位置PLに向かって移動するときに、一定電力Wを第1送電部6および第2送電部7から送電した場合、第2送電部7から送電されて第2受電部9で受電する電力W2は、第2送電部7と第2受電部9とが離間するにつれて漸減し、第1送電部6から送電されて第1受電部8で受電する電力W1は、第1送電部6と第1受電部8とが接近するにつれて漸増する。
【0033】
すなわち、第1受電部8で受電する電力W1の変化および第2受電部9で受電する電力W2の変化は、軌道1の中央位置PCを中心に対称形状となっている。そこで、移動体2(第1受電部8と第2受電部9との貼合わせ面)が軌道1の中央位置PCに位置したときの第1受電部8で受電する電力Wc/2と第2受電部9で受電する電力Wc/2との和の電力Wcを電力制御手段5が制御する一定値の制御電力として設定する。これにより、移動制御手段4は、移動体2を軌道1に沿って安定的に往復移動させることができる。
【0034】
電力制御手段5の具体的な制御方法としては、移動体2(第1受電部8と第2受電部9との貼合わせ面)が軌道1に沿って左端位置PLから右端位置PRに向かって移動を開始してから第1受電部8で受電する電力W1がWcとなる位置P1に達するまでは、電力制御手段5は、第2送電部7に供給する電力は切り、第1受電部8で受電する電力W1がWcとなるように第1送電部6に電力を供給する制御を行う。
【0035】
そして、移動体2が位置P1を超えて中央位置PCに達するまでは、電力制御手段5は、第2送電部7に供給する電力を入りにして、第2受電部9で受電する電力W2が制御電力Wcと第1受電部8で受電する電力W1との差分の電力となるように第2送電部9に電力を供給する制御を行う。このとき、第1受電部8で受電する電力W1が制御電力Wcと第2受電部9で受電する電力W2との差分の電力となるように第1受電部8に電力を供給する制御を行うようにしてもよい。
【0036】
そして、移動体2が中央位置Pcを超えて第2受電部9で受電する電力W2がWcとなる位置P2に達するまでは、電力制御手段5は、第1受電部8で受電する電力W1が制御電力Wcと第2受電部9で受電する電力W2との差分の電力となるように第1送電部6に電力を供給する制御を行う。このとき、第2受電部9で受電する電力W2が制御電力Wcと第1受電部8で受電する電力W1との差分の電力となるように第2受電部9に電力を供給する制御を行うようにしてもよい。
【0037】
そして、移動体2が位置P2を超えて右端位置PRに達するまでは、電力制御手段5は、第1送電部6に供給する電力は切り、第2受電部9で受電する電力W2がWcとなるように第2送電部7に電力を供給する制御を行う。以上のように、電力制御手段5は、第1送電部6と第1受電部8との距離が所定値以下となったとき、すなわち移動体2が位置P1よりも左端位置PLに移動したとき、第2送電部7への電力の供給を切った上で第1送電部への電力の供給を制御することにより、第2受電部9で受電する電力W2が一定の制御電力Wcとなるように効率的に制御することができる。同様に、第2送電部7と第2受電部9との距離が所定値以下となったとき、すなわち移動体2が位置P2よりも右端位置PRに移動したとき、第1送電部6への電力の供給を切った上で第2送電部への電力の供給を制御することにより、第1受電部8で受電する電力W1が一定の制御電力Wcとなるように効率的に制御することができる。よって、移動体2を軌道1の両端間において安定的に往復移動させることができると共に、余分な電力を供給しなくてもよく省エネルギ化を図ることができる。
【0038】
上述の往復移動装置の実施形態によれば、軌道1に沿って移動可能な移動体2に設けた第1受電部8および第2受電部9を挟み込むように、第1送電部6および第2送電部7を軌道1の一端側および他端側に設けているので、移動体2が軌道1の一端側又は他端側に移動して第2受電部9又は第1受電部8が他端側の第2送電部7又は一端側の第1送電部6から離間したときは、第1受電部8又は第2受電部9は接近した一端側の第1送電部6又は他端側の第2送電部7から高効率に電力を受電することができ、簡易な構成で移動体2を軌道1の両端間において往復移動させることができる。
【0039】
特に、受電部として2つの第1受電部8および第2受電部9を設け、第1受電部8で第1送電部6から送電される電力を受電し、第2受電部9で第2送電部7から送電される電力を受電するようにしているので、軌道1の両端間における移動体2の移動に合わせて第1送電部6および第2送電部7から送電する電力比率を制御することにより、移動体2を省電力で移動させることが可能となる。また、第1受電部8および第2受電部9は第1送電部6および第2送電部7に夫々対向するように設けられているので、第1送電部6および第2送電部7から送電する電力を第1受電部8および第2受電部9にて夫々効率よく受電することができる。また、移動体2は、磁界共鳴もしくは電界共鳴による非接触給電により移動するので、送受電部間の距離が比較的離れていても高効率で電力を送受電することができる。また、電磁誘導による非接触給電により移動体2を移動させる場合は、磁界共鳴もしくは電界共鳴による非接触給電と比較して簡易な構成となり、コスト低減を図ることができる。
【0040】
本実施形態の往復移動装置は、搬送位置決めされる基板上に部品を装着する部品実装機の部品装着装置に適用することができる。なお、以下の説明において、基板の搬送方向をX軸方向と称し、水平面内においてX軸方向に直角な方向をY軸方向と称し、X軸方向とY軸方向とに直角な方向をZ軸方向と称する。
図4に示すように、部品実装機100は、フィーダ21による部品供給装置20、部品装着装置40および制御装置70を有しており、X軸方向に複数台(
図4では2台示す)直列に配置され2台の搬送装置11,12を並設したダブルコンベアタイプの基板搬送装置10が配設されている。
【0041】
図4および
図5に示すように、部品装着装置40は、XYロボットからなり、XYロボットは、基台41上に装架されて基板搬送装置10および部品供給装置20の上方に配設されている。XYロボットは、Y軸方向に延在するように両端が固定壁41a,41bに固定支持されたガイドレール42(本発明の「軌道」、「レール」に相当する)に沿ってY軸方向に移動可能なY軸スライド43(本発明の「移動体」、「スライド」に相当する)を備えている。Y軸スライド43の天板43aは、ガイドレール42に沿って摺動可能なように配設されており、Y軸スライド43は、移動装置44(本発明の「移動手段」に相当する)によってガイドレール42に沿ってY軸方向に移動される。
【0042】
この移動装置44は、ボールネジ51と、ボールナット52と、ギヤ機構53と、Y軸サーボモータ54とを備えている。ボールネジ51は、ガイドレール42の長さと略同一長に加工され、ガイドレール42と平行に配設されて両端が支持部51aに固定支持されている。ボールナット52は、ボールネジ51に螺合されY軸スライド43の天板43a上に固定されたハウジング43bに回転可能に支承されている。ギヤ機構53は、ハウジング43bに固定されたY軸サーボモータ54の駆動によりボールナット52が回転可能なようにY軸サーボモータ54の回転軸とボールナット52とを回転連結し、ハウジング43bに回転可能に支承されている。そして、移動装置44を駆動制御する移動制御装置55(本発明の「移動制御手段」に相当する)が、ハウジング43b内に配設されている。
【0043】
移動装置44は非接触給電により移動制御装置55を介して駆動制御されるように構成されており、そのための第1送電部56、第2送電部57、第1受電部58、第2受電部59および制御装置70に内蔵された電力制御装置60(本発明の「電力制御手段」に相当する)が配設されている。第1送電部56は、ガイドレール42の一端側(
図5の左端側)が固定支持された固定壁41aに固定され電力制御装置60と配線されている。第1受電部58は、第1送電部56と対向するようにY軸スライド43の天板43aの下面に固定され移動制御装置55と配線されている。第2送電部57は、ガイドレール42の他端側(
図5の右端側)が固定支持された固定壁41bに固定され電力制御装置60と配線されている。第2受電部59は、第2送電部57と対向するようにY軸スライド43の天板43aの下面に固定され移動制御装置55と配線されている。
【0044】
Y軸スライド43には、部品装着ヘッド48の一部であるX軸スライド45がY軸方向と直交するX軸方向に移動可能に案内されている。Y軸スライド43にはX軸サーボモータ46が設置され、このX軸サーボモータ46の出力軸に回転連結されY軸スライド43に回転可能に軸承された図略のボールねじがX軸スライド45に固定されたボールナットと螺合することによってX軸スライド45がX軸方向に移動される。X軸スライド45は、部品を吸着するZ軸方向に移動可能な吸着ノズル47を保持した部品装着ヘッド48(本発明の「移動体」に相当する)の一部をなしている。また、X軸スライド45上には、基板認識用カメラ49が設けられている。
【0045】
部品装着ヘッド48のX軸スライド45は移動ストロークが短くてケーブルベア(登録商標)のばたつきが起きにくいので、本実施形態では部品装着ヘッド48の往復移動装置を従来のケーブルベア(登録商標)によって電力供給されるサーボモータによって駆動されるボールねじ機構とし、本実施形態に係る往復移動装置を適用していない。しかしながら、X軸方向に移動可能な部品装着ヘッド48を移動させる往復移動装置に本実施形態に係る往復移動装置を、Y軸スライド43に適用した場合と同様に適用してもよい。
【0046】
第1送電部56、第2送電部57、第1受電部58および第2受電部59は、
図2に示す構成となっており、電力制御装置60は、
図3を参照して説明した制御が実行されることにより第1送電部56と第1受電部58との距離および第2送電部57と第2受電部59との距離が変化しても電力和が一定となるように制御することができる。よって、移動制御装置55は、Y軸スライド43および部品装着ヘッド48をガイドレール42に沿って安定的に往復移動させることができる。
【0047】
特に、本実施形態の部品装着装置40では、従来の部品装着装置で必要であった部品装着ヘッド等の移動装置への電力供給用のケーブルやケーブルベア(登録商標)等が不要となる。従来の部品装着装置では、部品装着ヘッド等の高速移動時においてケーブルが断線する場合があり、また、ケーブルベア(登録商標)の自重や曲げ応力の負荷によってエネルギ損が発生していたが、本実施形態の部品装着装置40によれば、ケーブルやケーブルベア(登録商標)が不要となるためこれらの問題を解消することができる。また、従来の部品装着装置は、部品装着ヘッド等の移動速度を高めるとケーブルベア(登録商標)がばたついて部品装着ヘッドの位置決め精度が低下したり動作エラーが発生するため部品装着ヘッド等の高速化には限界があったが、本実施形態の部品装着装置40によれば、ケーブルベア(登録商標)が不要となるため従来よりも部品装着ヘッド48等の高速化を図ることができる。また、ケーブルやケーブルベア(登録商標)等が不要となるため部品実装機100の省スペース化を図ることができる。
【0048】
なお、上述の実施形態の往復移動装置の移動手段3および部品装着装置40の移動装置44としてモータ34,54によって回転駆動されるボールネジ31,51等を備えた機構を例に説明したが、軌道1に沿って往復移動可能な移動体2およびガイドレール42に沿って往復移動可能なY軸スライド43(部品装着ヘッド48)が移動可能であれば特に限定されるものではなく、例えば、リニアモータにより移動体2およびY軸スライド43(部品装着ヘッド48)を往復移動させるように構成してもよい。