【実施例1】
【0031】
第1 構成
本発明に係る薬剤経口投与装置の一実施例である薬剤経口投与装置100について、
図1を用いて説明する。
【0032】
薬剤経口投与装置100は、一枚のシートを、対向して位置する端部を熱によって融着し、筒状にし、さらに平面状にして形成したものである。使用するシートは、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等を素材としている。
【0033】
薬剤経口投与装置100は、薬剤封入部101、媒体封入部103、先端差込部105、カバー部107、及び、薬剤・粘性媒体間融着部109を有している。薬剤封入部101、媒体封入部103、先端差込部105、及びカバー部107は、直線状に位置している。薬剤封入部101及び媒体封入部103は、薬剤経口投与装置100の中央付近に隣接して位置する。先端差込部先端差込部105は、薬剤経口投与装置100において、カバー部107が形成する端部とは異なる端部を形成する。カバー部107は、媒体封入部103に隣接して位置する。また、カバー部107は、先端差込部101が形成している端部とは異なる、もう一方の端部を形成する。
【0034】
薬剤封入部101には、所定の薬剤が封入される。封入する薬剤は、錠剤、カプセル剤、顆粒等、いずれの形状であってもよい。なお、
図1においては、封入する薬剤として、錠剤Tを例示している。
【0035】
粘性媒体封入部103には、所定の粘性を有し、個々の薬剤を被覆した上で、被覆した薬剤と一体化した薬剤被覆媒体を形成する粘性媒体が封入される。本実施例においては、粘性媒体として、いわゆるゼリーを用いている。粘性媒体を用いることによって、薬剤の状態では飲み込むことが難しい患者に対しても、容易に経口投与できるようになる。なお、粘性媒体については後述する。
【0036】
薬剤封入部101と粘性媒体封入部103とは、薬剤・粘性媒体間融着部109を介して、隣接する。薬剤・粘性媒体間融着部109は、粘性媒体を媒体封入部103に配置した後、シートを熱によって融着することによって形成する。薬剤・粘性媒体間融着部109は、粘性媒体封入部103の内圧が所定以上高くなると融着が剥がれる程度の融着強度を持つように形成する。
【0037】
粘性媒体封入部103とカバー部107とは、粘性媒体・カバー部間融着部113を介して隣接する。粘性媒体・カバー部間融着部113は、薬剤・粘性媒体間融着部109と同様、シートを熱によって融着させることによって形成する。ただし、粘性媒体・カバー部間融着部113は、粘性媒体を媒体封入部103に配置する前に融着しておく。
【0038】
なお、粘性媒体・カバー部間融着部113は、薬剤・粘性媒体間融着部109よりも強い強度となるように融着する。これにより、粘性媒体封入部103を所定の内圧にすることによって、粘性媒体・カバー部間融着部113の融着を維持しつつ、薬剤・粘性媒体間融着部109の融着を剥がすことができる。また、粘性媒体封入部103に位置する粘性媒体を、カバー部107の方向ではなく、薬剤封入部103の方向に移動させることができる。
【0039】
先端差込部105は、薬剤封入部101と隣接する端部とは異なる端部に向かって傾斜するように形成されている。これにより、先端差込部105を、先端差込部収納用開口117に容易に挿入できる。
【0040】
また、先端差込部105を、薬剤を経口投与しようとする患者の口腔内に容易に挿入できる。さらに、先端差込部105を患者の口腔内に挿入した際に、先端差込部105をショベル状にできるため、薬剤と粘性媒体との薬剤被覆媒体を患者の口腔内に容易に挿入できる。なお、先端差込部105は、患者の口腔内に挿入することができるように、口腔内に挿入した際に喉に当たらない程度の長さに形成されている。
【0041】
このように、先端差込部105は、収納の際に先端差込部収納用開口117に挿入され、薬剤経口投与装置100の2つ折り状態を維持すること、及び、薬剤被覆媒体を口腔内に容易に経口投与することを目的として形成されている。
【0042】
カバー部107は、先端差込部収納用開口117を有している。先端差込部収納用開口117は、互いに対向して位置するシートの一つ、カバー部117の側面に形成される。先端差込部収納用開口117は、半円形状の切り欠きとして形成されている。先端差込部収納用開口117に、先端差込部105を挿入することによって、薬剤経口投与装置100を2つ折りの状態にすることができる。
【0043】
第2 粘性媒体
粘性媒体は、粘度や耐荷重が小さすぎても大きすぎても、経口投与された薬剤被覆媒体を飲み込む際に、何らかの問題を発生しやすくなる。したがって、粘性媒体は、適切な耐荷重とする必要がある。そこで、粘性媒体の適正な耐荷重を決めるべく服用実験を行った。
【0044】
1.耐荷重実験
服用実験を行う前に、粘性媒体の耐荷重を計測すべく、粘性媒体に対して下記の耐荷重実験を行った。ここで、媒体封入部103に封入する粘性媒体としては、液状の被験粘性媒体を媒体封入部103に充填した後、所定の冷却期間を経過させてゲル化させることによって媒体封入部103全体に1つの塊として形成されるものと、液状の被験粘性媒体を所定の容器に充填した後、所定の冷却期間を経過させてゲル化させた後、所定の大きさに裁断し、媒体封入部103に封入されるものとがある。以下においては、前者を一体型の粘性媒体とし、後者を裁断型の粘性媒体と記述する。
(1)所定の粘性媒体(以下、被験粘性媒体)を所定の容器に配置する。なお、予め被験粘性媒体の粘度を、B型粘度計を用いて計測しておく。
(2)容器に配置した被験粘性媒体上に、側面に赤線が記された耐荷重測定容器Pを載置する。耐荷重測定容器Pについて
図2を用いて説明する。
図2において、Aは耐荷重測定容器Pの上面図を、Bは耐荷重測定容器Pの正面図を、Cは耐荷重測定容器Pの底面図を、ぞれぞれ示している。耐荷重測定容器Pは、上底面の直径が58mm、下底面の直径が43mm、高さが30mmの円錐台形状であり、下から10mmの側面の位置に所定の赤線Lを有している。また、耐荷重測定容器Pは、ポリエチレン製であり、重量は1.9gである。
(3)耐荷重測定容器Pに分銅Wをゆっくりと載置する。
(4)
図2Dに示すように、耐荷測定重容器Pの赤線Lが粘性媒体の表面と同じ高さになった時の分銅Wの重量を読みとる。このとき、耐荷重測定容器Pの重量は無視する。
(5)5回の繰返しを行い、平均値を算出する。
【0045】
次に、粘性媒体の適正な耐荷重を決めるべく、粘性媒体を用いた以下の服用試験1〜服用実験3を実施した。
【0046】
2.服用実験1
(1)
図3Aに示す耐荷重を有する一体型の粘性媒体G1〜G7を用意する。
(2)各一体型の粘性媒体G1〜G7を媒体封入部103に封入し、所定の粉末状の薬を所定のオブラートで包んだ薬剤を媒体封入部103に配置した薬剤経口投与装置100(以下、被験薬剤経口投与装置A)を一体型の粘性媒体G1〜G7毎に、所定数、作成する。
(3)被験薬剤経口投与装置Aを用いて所定数の服用者が薬剤を服用し、媒体封入部103からの取り出し性の観点の観点から、各服用者が被験薬剤経口投与装置Aを評価した。ここで、取り出し性とは、服用者が薬剤封入部101において形成した薬剤被覆媒体を先端差込部105に向かって移動させる際の取り出し易さを、服用者の感覚によって評価したものである。なお、評価に当たっては、5:取り出し易い〜1:取り出しにくいを基準に5段階で評価する。
(4)各服用者は、さらに、媒体封入部103からの残留性の観点の観点から、各服用者が被験薬剤経口投与装置Aを評価した。ここで、残留性とは、服用者が薬剤被覆媒体を服用した後に、口内及び喉内に残留感が残るか否かを、服用者の感覚によって評価したものである。あると判断した人数の割合を示す。(5)取り出し性については、各服用者の評価の平均値を算出する。残留性については、一体型の粘性媒体G1〜G7毎に、残留感があるとした服用者の人数の割合を残留率として算出する。
【0047】
実験の結果を
図3Bに示す。また、
図3Bにおける耐荷重と取り出し性の関係を
図3Cに、
図3Bにおける耐荷重と残留性の関係を
図3Dに、それぞれ示す。
【0048】
図3Cに示すように、取出し性については、粘性媒体G7が特に劣っている。また、
図3Dに示すように、残留性についても、粘性媒体G7が劣っている。よって、一体型の粘性媒体における耐荷重の下限値は、20gとすることが妥当と考えられる。
【0049】
3.服用実験2
(1)
図4Aに示す耐荷重を有する一体型の粘性媒体H1〜H5を用意する。
(2)各一体型の粘性媒体H1〜H7を媒体封入部103に封入し、所定の錠剤又はカプセルの薬剤を媒体封入部103に配置した薬剤経口投与装置100(以下、被験薬剤経口投与装置B)を、一体型の粘性媒体H1〜H5毎に、所定数、作成する。
(3)被験薬剤経口投与装置Bを用いて所定名の服用者が薬剤を服用し、媒体封入部103からの服用性の観点の観点から、各服用者が被験薬剤経口投与装置Aを評価した。ここで、服用性とは、服用者が薬剤被覆媒体を飲み込む際の喉越しの抵抗感を評価する。なお、評価に当たっては、5:抵抗感全くない、4:抵抗感ほとんどなし、3:喉に感ずるが普通に飲める、2:抵抗感やや大きいが飲める、1:抵抗感が非常に大きいか飲めない、を基準に評価する。
(4)各服用者は、さらに、媒体封入部103からの残留性の観点の観点から、各服用者が被験薬剤経口投与装置Bを評価した。
(5)服用実験1と同様に、服用性及び残留率を算出する。
【0050】
実験の結果を
図4Bに示す。また、
図4Bにおける耐荷重と取り出し性の関係を
図4Cに、
図4Bにおける耐荷重と残留性の関係を
図4Dに、それぞれ示す。
【0051】
図4C及び
図4Dから、薬剤が錠剤であっても、カプセルであっても、服用性、残留性と粘性媒体の耐荷重とは関連性があるといえる。さらに、粘性媒体の耐荷重が低すぎても高すぎても、服用性及び残留性が悪くなる傾向がある。
図4C及び
図4Dに示すように、服用性及び残留性の観点から、一体型の粘性媒体における耐荷重の上限値は、1000gとすることが妥当と考えられる。
【0052】
4.服用実験3
(1)
図5に示す耐荷重を有する裁断型の粘性媒体I1〜I13を用意する。
(2)各裁断型の粘性媒体I1〜I13を媒体封入部103に封入し、所定の錠剤を媒体封入部103に配置した薬剤経口投与装置100(以下、被験薬剤経口投与装置C)を、一体型の粘性媒体I1〜I13毎に、所定数、作成する。
(3)被験薬剤経口投与装置Cを用いて、所定名の服用者が薬剤を服用し、媒体封入部103からの服用性の観点の観点から、各服用者が被験薬剤経口投与装置Cを評価した。
(4)服用実験1と同様に、服用性を算出する。
【0053】
実験の結果を
図5の服用性欄に示す。また、
図5における耐荷重と服用性の関係を
図6に、それぞれ示す。
【0054】
図6から、裁断型の粘性媒体において、服用性と粘性媒体の耐荷重とは関連性があるといえる。粘性媒体の耐荷重の上昇と共に服用性が良くなり、更に、上昇すると服用性は悪くなる傾向がある。
図6に基づき、服用性の観点から、裁断型の粘性媒体における耐荷重は、10g〜150gとすることが妥当と考えられる。なお、服用性における許容下限値は、「2」に設定している。
【0055】
5.まとめ
上記服用実験から、薬剤経口投与装置100で用いる粘性媒体としては、耐荷重が10〜1000gの範囲が許容範囲と考えられる。また、粘性媒体が一体型の粘性媒体である場合には、特に、耐荷重が20〜1000gであることが好ましい。さらに、粘性媒体が裁断型の粘性媒体である場合には、特に、耐荷重が10g〜150gであることが好ましい。
【0056】
第3 薬剤・粘性媒体間融着部109
薬剤・粘性媒体間融着部109は、薬剤経口投与装置100の携帯時、搬送時に、媒体封入部103から粘性媒体が漏洩しないようにする漏洩防止を目的として形成される。ただし、薬剤経口投与装置100の使用時には、媒体封入部103から粘性媒体を取り出しやすいように、薬剤・粘性媒体間融着部109を形成する必要がある。したがって、薬剤・粘性媒体間融着部109を形成するにあたっては、携帯時、搬送時に媒体封入部103から粘性媒体が漏洩しないようにするとともに、使用時に媒体封入部103から粘性媒体を取り出しやすいようにシートを融着する必要がある。
【0057】
1.粘性媒体の漏洩
薬剤・粘性媒体間融着部109の融着強度が小さいと、2つ折り状態(
図11A、
図11B参照)で携行、搬送する際に、媒体封入部103に負荷が掛かり、媒体封入部103から粘性媒体が漏洩する。そこで、薬剤・粘性媒体間融着部109の適正な融着強度を決めるべく、粘性媒体の漏洩の観点の観点から、以下の実験を行った。
(1)以下の4種類の所定の薬剤経口投与装置100(以下、被験薬剤経口投与装置)を用意する。
媒体封入部103:幅(内径)25mm
粘性媒体の封入量:3.5ml
薬剤・粘性媒体間融着部109の融着強度:10gf/15mm、15gf/15mm、18gf/15mm、35gf/15mm(融着強度は、被験薬剤経口投与装置を15mm幅に切断し、引張り試験にて測定した引っ張り強度を使用)
(2)2つ折り状態における被験薬剤経口投与装置において、媒体封入部103に荷重をかけて、媒体封入部103から薬剤・粘性媒体間融着部109を介して粘性媒体が漏洩したときの荷重(耐荷重)を計測する。
【0058】
実験の結果を
図7に示す。また、実験結果をグラフ化したものを
図8に示す。
【0059】
携行、搬送時、2つ折り状態の薬剤経口投与装置100の媒体封入部103には、10kgの荷重がかかることもある。よって、
図8から、薬剤・粘性媒体間融着部109の融着強度が10gf/15mm以下では、携行、搬送時に媒体封入部103から粘性媒体が漏洩する可能性があることが分かる。
【0060】
一方、
図8から、薬剤・粘性媒体間融着部109の融着強度が13gf/15mm以上で耐荷重が上昇を始め、15gf/15mmあたりで耐荷重が大幅に上昇する。融着強度が15gf/15mm以上では、ほぼ液漏れの心配は無くなる。
【0061】
以上から、薬剤・粘性媒体間融着部109の融着強度については、15gf/15mm以上、好ましくは20gf/15mm以上が必要である。
【0062】
2.粘性媒体の取り出し
薬剤・粘性媒体間融着部109の適正な融着強度を決めるべく、媒体封入部103からの取り出し性の観点の観点から、以下の実験を行った。ここで、取り出し性とは、ユーザが薬剤封入部101において形成した薬剤被覆媒体を先端差込部105に向かって移動させる際の取り出し易さを、ユーザの感覚によって評価したものである。
(1)以下の6種類の所定の薬剤経口投与装置100(以下、被験薬剤経口投与装置)を用意する。
・媒体封入部103:幅(内径)25mm
・粘性媒体の封入量:3.5ml
・薬剤・粘性媒体間融着部109の融着強度:13gf/15mm、28gf/15mm、56gf/15mm、95gf/15mm、171gf/15mm、600gf/15mm(融着強度は、被験薬剤経口投与装置を15mm幅に切断し、引張り試験にて測定した引っ張り強度を使用)
(2)個々の被験薬剤経口投与装置について、媒体封入部103からの粘性媒体の取り出し性について評価する。ここで、取り出し性とは、ユーザが薬剤封入部101において形成した薬剤被覆媒体を先端差込部105に向かって移動させる際の取り出し易さを、ユーザの感覚によって評価したものである。取り出し性については、5段階評価として、1:融着強度が小さすぎる〜3:適正〜5:融着強度が大きすぎる、として評価する。
(3)2つ折り状態における被験薬剤経口投与装置において、媒体封入部103に荷重をかけて、媒体封入部103から薬剤・粘性媒体間融着部109を介して粘性媒体が漏洩したときの荷重を取り出し荷重として計測する。
【0063】
実験の結果を
図8図9に示す。また、実験結果をグラフ化したものを
図8図10に示す。
【0064】
取り出し性の適正範囲は2〜4と考えられる。したがって、
図8図10から、取り出し荷重については200〜800gが、引っ張り強度については30〜300gf/15mmが、それぞれ適正と判断できる。なお、好ましくは、取り出し性については3〜3.5が適正範囲と考えられる。よって、取り出し荷重については400〜600gが、引っ張り強度は80〜160gf/15mmが、それぞれ好まし適正範囲と考えられる。
【0065】
3.まとめ
上記2つの実験から、薬剤・粘性媒体間融着部109の融着強度は、媒体封入部103からの粘性媒体の漏れの観点からすると、融着強度50gf/15mm以上が適正と評価できる。なお、上記実験で生じた粘性媒体の漏れは微量であるため、20gf/15mm以上は許容範囲と評価できる。
【0066】
また、薬剤・粘性媒体間融着部109の融着強度は、媒体封入部103からの粘性媒体の取り出し性の観点からすると、融着強度30gf/15mm〜120gf/15mmが適正と評価できる。なお、使用者の使用感から、20gf/15mm〜200gf/15mmは許容範囲と評価できる。
【0067】
薬剤経口投与装置100は、粘性媒体の漏れの観点及び粘性媒体の取り出し性の観点の両者を満足する必要がある。よって、薬剤・粘性媒体間融着部109の的瀬名融着強度は、15〜300gf/15mmと判断できる。
【0068】
第4 使用方法
薬剤経口投与装置100を使用する際には、錠剤T等の薬剤を薬剤封入部103に封入する準備段階と、薬剤被覆媒体を経口投与する経口投与段階とがある。以下に、段階毎に説明する。
【0069】
1.準備段階
準備段階においては、薬剤経口投与装置100は、粘性媒体封入部103に所定の粘性媒体が予め封入された状態で、薬剤を封入する使用者(以下、封入者)に提供される。以下において、薬剤経口投与装置100の準備段階を
図1、
図11を用いて説明する。なお、
図11は、薬剤経口投与装置100を2つ折りにした状態を示し、Aは横から見た状態を、Bは上から見た状態を、それぞれ示している。
【0070】
図1に示すように、薬剤経口投与装置100を薬剤である錠剤Tを封入しようとする封入者は、錠剤Tを、先端差込部115を介して、薬剤封入部101へ投入する。このとき、先端差込部105をショベル状に広げて、錠剤Tを薬剤封入部101へ投入する。
【0071】
次に、
図11A示すように、封入者は、薬剤封入部101及び先端差込部105を矢印a5方向へ折り返し、先端差込部105の先端をカバー部107の先端差込部用切り欠き117aからカバー部107の内部に挿入する。これにより、薬剤経口投与装置100を、
図11Bに示すような2つ折りの状態とすることができる。
【0072】
また、折り返す際には、粘性媒体封入部103の薬剤・粘性媒体間融着部109側の端部に沿って折り返す。これにより、粘性媒体封入部103に圧力がかかったとしても、粘性媒体封入部103に封入される粘性媒体の移動を薬剤・粘性媒体間融着部109の手前に制限できるため、薬剤・粘性媒体間融着部109の破損を防止できる。
【0073】
2.経口投与段階
薬剤経口投与装置100に収納されている薬剤を自ら経口する、又は、他の者に経口させる経口投与者は、
図11に示すような2つ折り状態とされた薬剤経口投与装置100を、
図1に示すような平面状態とする。
【0074】
図1に示すような平面状態において、経口投与者は、粘性媒体封入部103を指でつまむ。これにより、粘性媒体封入部103の内部の圧力が高くなる。粘性媒体封入部103の内圧が所定以上高くなると、薬剤・粘性媒体間融着部109の融着が剥がれ、媒体封入部103の内部に位置する粘性媒体が、薬剤封入部101の方向へ移動する。これにより、薬剤封入部101の内部に位置する薬剤及び粘性媒体によって薬剤被覆媒体を生成できる。なお、粘性媒体が薬剤封入部101の方向へ移動した段階で、薬剤と粘性媒体とを揉み込むようにすることによって、粘性媒体に薬剤が均一に包含された薬剤被覆媒体を生成できる。
【0075】
そして、薬剤被覆媒体を、先端差込部105の方向へ移動させる。最終的には、先端差込部105の先端から薬剤被覆媒体を経口投与する。
【実施例2】
【0076】
前述の実施例1における薬剤経口投与装置100は、収納時に2つ折り状態にして小型化するものであった。本実施例における薬剤経口投与装置200は、収納時に4つ折り状態にし、さらに小型化するものである。
【0077】
以下においては、実施例1と同じ構成については実施例1と同じ符号を付し、その詳細な記述を省略する。
【0078】
第1 構成
本発明に係る薬剤経口投与装置の一実施例である薬剤経口投与装置200について、
図12を用いて説明する。
【0079】
薬剤経口投与装置200は、薬剤封入部201、媒体封入部103、先端差込部205、及びカバー部207を有している。
【0080】
薬剤封入部201の構造、機能については実施例1における薬剤封入部101と同様である。ただし、薬剤封入部201は、先端差込部切除用切り欠き211を有している。収納差込切除用切り欠き211は、薬剤被覆媒体を経口投与する際に、先端差込部205を切除するために形成されている。
【0081】
先端差込部205の構造、機能については、実施例1における先端差込部105と同様である。ただし、先端差込部205は、先端差込部105に比して、長さが長くなっている。これは、先端差込部205は、主として、収納の際に先端差込部収納用開口117に挿入され、薬剤経口投与装置200の2つ折り状態を維持することを目的として設けられているからである。
【0082】
なお、先端差込部205は、先端差込部105に比して長く形成されているため、経口投与の際に、先端差込部205の先端が喉にひっかかる場合が生ずる。この場合には、薬剤封入部201の収納差込切除用切り欠き211から先端差込部205を切除することによって、薬剤被覆媒体を経口投与し易くできる。
【0083】
カバー部207は、先端差込部収納用開口117、及び、薬剤媒体部収納用開口217を有している。薬剤媒体部収納用開口217は、先端差込部収納用開口117が形成されているシートとは異なるシートに形成される。薬剤媒体部収納用開口217に、薬剤経口投与装置200を2つ折りにすることによって形成される薬剤封入部201と媒体封入部103との重なり部を挿入することによって、薬剤経口投与装置200を4つ折りの状態にすることができる。
【0084】
なお、薬剤媒体部収納用開口217は、4分の1楕円形状の切り欠きとして形成されている。これにより、薬剤封入部201と媒体封入部103との重なり部を、上側から薬剤媒体部収納用開口217に容易に挿入して、収納することができる(
図15参照)。
【0085】
第2 使用方法
薬剤経口投与装置200を使用する際には、錠剤T等の薬剤を薬剤封入部103に封入する準備段階と、薬剤被覆媒体を経口投与する経口投与段階とがある。以下に、各段階について説明する。
【0086】
1.準備段階
準備段階においては、薬剤経口投与装置200は、粘性媒体封入部103に所定の粘性媒体が予め封入された状態で、薬剤を封入する使用者(以下、封入者)に提供される。以下において、薬剤経口投与装置200の準備段階を
図12〜
図15を用いて説明する。なお、
図13は、薬剤経口投与装置200を2つ折りにした状態を示し、Aは横から見た状態を、Bは上から見た状態を、それぞれ示している。
図14も同様である。但し、
図14は、薬剤経口投与装置200を4つ折りにした状態を示している。
【0087】
図12に示すように、薬剤経口投与装置200を薬剤である錠剤Tを封入しようとする封入者は、錠剤Tを、先端差込部215を介して、薬剤封入部201へ投入する。このとき、先端差込部205をショベル状に広げて、錠剤Tを薬剤封入部201へ投入する。
【0088】
次に、
図13A示すように、封入者は、薬剤封入部201及び先端差込部205を矢印a5方向へ折り返し、先端差込部205の先端をカバー部207の先端差込部用切り欠き117からカバー部207の内部に挿入する。これにより、薬剤経口投与装置200を、
図13Bに示すような2つ折りの状態とすることができる。なお、折り返す際には、実施例1と同様に、粘性媒体封入部103の薬剤・粘性媒体間融着部109側の端部に沿って折り返す。
【0089】
薬剤経口投与装置200を2つ折りにした状態から、封入者は、さらに、
図14Aに示すように、粘性媒体・カバー部間融着部113を中心に、薬剤封入部201及び媒体封入部103を矢印a6方向へ折り返し、
図15に示すように、薬剤封入部201と媒体封入部103との重なり部を、上側から、カバー部107の薬剤媒体部収納用開口217からカバー部207の内部に挿入する。これにより、薬剤経口投与装置200を、
図14Bに示すような4つ折りの状態とすることができる。なお、
図15は、
図14Aにおける矢印a61方向から薬剤経口投与装置200を4つ折り状態にしようとする際の状態を見ている。このように、薬剤経口投与装置200を4つ折り状態とすることによって、コンパクトに収納できるとともに、形態を安定させることができる。
【0090】
2.経口投与段階
薬剤経口投与装置200に収納されている薬剤を自ら経口する、又は、他の者に経口させる経口投与者は、
図14Aに示すような4つ折り状態とされた薬剤経口投与装置200を、
図12に示すような平面状態とする。
【0091】
図12に示すような平面状態において、経口投与者は、粘性媒体封入部103を指でつまむ。これにより、粘性媒体封入部103の内部の圧力が高くなる。粘性媒体封入部103の内圧が所定以上高くなると、薬剤・粘性媒体間融着部109の融着が剥がれ、媒体封入部103の内部に位置する粘性媒体が、薬剤封入部201の方向へ移動する。これにより、薬剤封入部201の内部に位置する薬剤及び粘性媒体によって薬剤被覆媒体を生成できる。なお、粘性媒体が薬剤封入部201の方向へ移動した段階で、薬剤と粘性媒体とを揉み込むようにすることによって、粘性媒体に薬剤が均一に包含された薬剤被覆媒体を生成できる。
【0092】
そして、薬剤封入部201に形成されている収納差込切除用切り欠き211を矢印a7方向へ切り裂き、先端差込部205を切除する。
【0093】
その後、薬剤被覆媒体を、薬剤封入部201の先端方向へ移動させる。最終的には、薬剤封入部201の先端から薬剤被覆媒体を経口投与する。
【実施例4】
【0100】
前述の実施例1における薬剤経口投与装置100は、カバー部107の側面に先端差込部用開口117を形成し、先端差込部105を収納することによって、収納時に2つ折り状態にして小型化するものであった。本実施例における薬剤経口投与装置400は、カバー部407の端部に先端差込部用開口417を形成し、薬剤封入部401の端部を収納することによって、収納時に3つ折り状態にして小型化するものである。
【0101】
以下においては、実施例1と同じ構成については実施例1と同じ符号を付し、その詳細な記述を省略する。
【0102】
第1 構成
本発明に係る薬剤経口投与装置の一実施例である薬剤経口投与装置400について、
図17を用いて説明する。
【0103】
薬剤経口投与装置400は、薬剤封入部401、媒体封入部103、カバー部407、及び、媒体間融着部109を有している。薬剤封入部401、媒体封入部103、及びカバー部407は、直線状に位置している。薬剤封入部401は、媒体封入部103に隣接して位置し、薬剤経口投与装置100の一端部に位置する。また、先端差込部105は、媒体封入部103に隣接し、薬剤経口投与装置100の一端部に位置する。カバー部107は、媒体封入部103に隣接して位置し、薬剤封入部401が位置する端部とは異なる、もう一方の端部に位置する。
【0104】
薬剤封入部401と粘性媒体封入部103とは、薬剤・粘性媒体間融着部109を介して、隣接する。粘性媒体封入部103とカバー部407とは、粘性媒体・カバー部間融着部113を介して隣接する。
【0105】
カバー部407は、端部に薬剤封入部収納用開口417を有している。薬剤封入部収納用開口417から薬剤封入部401を挿入することによって、薬剤経口投与装置100を3つ折りの状態にすることができる。
【0106】
第2 薬剤・粘性媒体間融着部109及び端部融着部419の融着強度
次に、薬剤経口投与装置400における薬剤・粘性媒体間融着部109及び端部融着部419の融着強度について考察する。まず、以下の実験により、薬剤経口投与装置400における薬剤被覆媒体をどの程度排出できるか(以下、排出性)を評価した上で、薬剤経口投与装置400における薬剤・粘性媒体間融着部109及び端部融着部419の融着強度を決定する。
(1)端部融着部419の融着強度及び薬剤・粘性媒体間融着部109の融着強度の様々な組合せの被験薬剤経口投与装置を用意する。
(2)粘性媒体に圧力を加えて、薬剤被覆媒体を生成し、生成した薬剤被覆媒体を排出させる。
(3)薬剤被覆媒体をどの程度排出できたのかを評価する。
【0107】
実験の結果を
図18に示す。この実験結果から、以下のことが分かる。
(1)端部融着部419の融着強度以外に薬剤・粘性媒体間融着部109の融着強度により薬剤被覆媒体の排出性が異なってくる。
(2)薬剤・粘性媒体間融着部109の融着強度が30g/15mmの場合、薬剤被覆媒体の排出性に、端部融着部419の融着強度が影響することは少ない。全体的に、薬剤被覆媒体の排出性は大きい。ただし、薬剤被覆媒体の排出性を100%とすることは難しい。
(3)薬剤・粘性媒体間融着部109の融着強度が60g/15mmの場合、薬剤・粘性媒体間融着部109の融着強度に対し端部融着部419の融着強度が、薬剤・粘性媒体間融着部109の融着強度に比して−40g〜±0gとなる範囲で、100%の薬剤被覆媒体の排出性を確保できる。一方、端部融着部419の融着強度が、薬剤・粘性媒体間融着部109の融着強度より大きくなると薬剤被覆媒体の排出性が悪くなる。また、端部融着部419の融着強度が、薬剤・粘性媒体間融着部109の融着強度より60g以上大きくなると、薬剤被覆媒体を排出できない。
(4)薬剤・粘性媒体間融着部109の融着強度が120g/15mmの場合、端部融着部419の融着強度が0より小さいと、概ね薬剤被覆媒体を全量排出することが可能となる。ただし、薬剤・粘性媒体間融着部109と端部融着部419とが同等の融着強度を有するとすると、薬剤被覆媒体に関する排出性が激減し、+80g/15mmでは全く排出しなくなる。
(5)薬剤・粘性媒体間融着部109の融着強度が200g/15mmの場合、端部融着部419が薬剤・粘性媒体間融着部109の融着強度に比して、−170g/15mmでとなると、全ての薬剤被覆媒体を排出することも可能とある。ただし、端部融着部419の融着強度が薬剤・粘性媒体間融着部109の融着強度に比して、大きくなると薬剤被覆媒体の排出性は劇的に減少する。また、端部融着部419の融着強度と薬剤・粘性媒体間融着部109の融着強度とが同等であれば、薬剤被覆媒体を全く排出させることができない。
【0108】
以上のことから、薬剤経口投与装置400では、薬剤・粘性媒体間融着部109の融着強度が30g/15mm〜120g/15mmであり、かつ、端部融着部419の融着強度が薬剤・粘性媒体間融着部109に比して±0g/15mm〜+60g/15mmとなる場合が適正と考えられる。ただし、薬剤・粘性媒体間融着部109の融着強度が20g/15mm以上200g/15mm未満であり、端部融着部419の融着強度が0g/15mm以上100g/15mm未満である場合は許容範
囲と考えられる。
【0109】
第3 使用方法
薬剤経口投与装置400を使用する際には、錠剤T等の薬剤を薬剤封入部103に封入する準備段階と、薬剤被覆媒体を経口投与する経口投与段階とがある。以下に、段階毎に説明する。
【0110】
1.準備段階
準備段階においては、薬剤経口投与装置400は、粘性媒体封入部103に所定の粘性媒体が予め封入された状態で、薬剤を封入する使用者(以下、封入者)に提供される。以下において、薬剤経口投与装置100の準備段階を
図17、
図19を用いて説明する。
【0111】
図17に示すように、薬剤経口投与装置400を薬剤である錠剤Tを封入しようとする封入者は、錠剤Tを、薬剤封入部401へ投入する。このとき、薬剤封入部401の端部を広げて、錠剤Tを薬剤封入部401へ投入する。そして、封入者は、薬剤封入部401の端部を融着し、端部融着部419を形成する。
【0112】
次に、
図19A示すように、封入者は、カバー部407を矢印a41方向へ折り返す。次に、薬剤封入部401の単端をカバー部407の端部に形成されている薬剤封入部収納用開口417からカバー部407の内部に挿入する。これにより、薬剤経口投与装置400を、
図19Bに示すような3つ折りの状態とすることができる。
【0113】
なお、薬剤封入部401を折り返す際には、実施例1と同様に、粘性媒体封入部103の薬剤・粘性媒体間融着部109側の端部に沿って折り返す。
【0114】
2.経口投与段階
薬剤経口投与装置400に収納されている薬剤を自ら経口する、又は、他の者に経口させる経口投与者は、
図19Bに示すような3つ折り状態とされた薬剤経口投与装置400を、
図17に示すような平面状態とする。
【0115】
図17に示すような平面状態において、経口投与者は、粘性媒体封入部103を指でつまむ。これにより、粘性媒体封入部103の内部の圧力が高くなる。粘性媒体封入部103の内圧が所定以上高くなると、薬剤・粘性媒体間融着部109の融着が剥がれ、媒体封入部103の内部に位置する粘性媒体が、薬剤封入部101の方向へ移動する。これにより、薬剤封入部101の内部に位置する薬剤及び粘性媒体によって薬剤被覆媒体を生成できる。なお、粘性媒体が薬剤封入部101の方向へ移動した段階で、薬剤と粘性媒体とを揉み込むようにすることによって、粘性媒体に薬剤が均一に包含された薬剤被覆媒体を生成できる。
【0116】
そして、薬剤封入部401に形成されている収納差込切除用切り欠き411を矢印a47方向へ切り裂き、端部融着部419を切除する。
【0117】
その後、薬剤被覆媒体を、薬剤封入部401の先端方向へ移動させる。最終的には、薬剤封入部401の先端から薬剤被覆媒体を経口投与する。
【0118】
[その他の実施例]
(1)粘性媒体 : 前述の実施例1においては、粘性媒体として、いわゆるゼリーを用いたが、所定の粘度、所定の強度を有し、薬剤を被覆し、被覆された複数の薬剤が一体となった薬剤被覆媒体を形成するものであれば例示のものに限定されない。
【0119】
(2)薬剤 : 前述の実施例1においては、薬剤として錠剤Tを示したが、薬剤であれば例示のものに限定されない。例えば、ミニタブレット、ペレット、ハードカプセル、ソフトカプセル、包蔵物、顆粒、粉剤、APIであってもよい。
【0120】
また、薬剤の代わりに、所定の栄養素を補給するためのものであるサプリメントを用いるようにしてもよい。
【0121】
(3)材質 : 前述の実施例1〜実施例4における薬剤経口投与装置100〜薬剤経口投与装置400を形成するシートの材質としてポリプロピレン等を示したが、薬剤・粘性媒体間融着部109を形成でき、媒体封入部103を手によって所定の圧力をかけることができるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、アルミニウム等、軟質の材料によって形成するようにしてもよい。また、透明、半透明であってもよい。
【0122】
(4)薬剤媒体部収納用開口217 : 前述の実施例2においては、4分の1楕円形状の薬剤媒体部収納用開口217を形成したが、薬剤封入部201と媒体封入部103との重なり部を収納することができるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、斜め直線状の開口であってもよい。
【0123】
また、薬剤経口投与装置200及び薬剤経口投与装置300において、薬剤媒体部収納用開口217を形成しなくともよい。
【0124】
(5)先端差込部105の形状 : 前述の実施例1における薬剤経口投与装置100の先端差込部105は、薬剤封入部101と隣接する端部とは異なる端部に向かって傾斜するように形成されているとしたが、先端差込部105を、先端差込部収納用開口117に挿入できる形状であれば、例示のものに限定されない。
【0125】
また、先端差込部105では、患者の口腔内に挿入した際にショベル状にできるとしたが、薬剤被覆媒体を患者の口腔内に挿入できるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、長方形状で、先端及び上端が開放され、下端が閉じられているものであってもよい。