(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、支持体表面に、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、吸液状態と非吸液状態で透明性を異にする多孔質像と、導電性物質を含む導電性印刷像が併設されてなる通電性水変色体である。
【0008】
前記支持体の材質
は、編物、織物、不織布等の布帛
が用いられる。
前記支持体の形状は特に限定されるものではなく、平面形状、シート状の他、凹凸を有する形状であってもよい。
【0009】
前記支持体上には、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、吸液状態と非吸液状態で透明性を異にする多孔質像を設けてなる。
前記低屈折率顔料としては、珪酸及び/又は珪酸塩、バライト粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、タルク、アルミナホワイト、炭酸マグネシウム等が挙げられ、これらは屈折率が1.4〜1.8の範囲にあり、液体を吸液すると良好な透明性を示すものである。
なお、前記珪酸塩としては、珪酸アルミニウム、珪酸アルミニウムカリウム、珪酸アルミニウムナトリウム、珪酸アルミニウムカルシウム、珪酸カリウム、珪酸カルシウム、珪酸カルシウムナトリウム、珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウムカリウム等が挙げられる。
前記低屈折率顔料の粒径は特に限定されるものではないが、0.03〜10.0μmのものが好適に用いられる。
又、前記低屈折率顔料は2種以上を併用することもできる。
なお、好適に用いられる低屈折率顔料としては珪酸が挙げられる。
前記珪酸は、乾式法により製造される珪酸(以下、乾式法珪酸と称する)であってもよいが、湿式法により製造される珪酸(以下、湿式法珪酸と称する)が好適である。
この点を以下に説明する。
珪酸は非晶質の無定形珪酸として製造され、その製造方法により、四塩化ケイ素等のハロゲン化ケイ素の熱分解等の気相反応を用いる乾式法によるものと、ケイ酸ナトリウム等の酸による分解等の液相反応を用いる湿式法によるものとに大別される。
乾式法珪酸と湿式法珪酸とでは構造が異なり、前記乾式法珪酸は珪酸が密に結合した構造であるのに対して、湿式法珪酸は、珪酸が縮合して長い分子配列を形成した構造部分を有している。
従って、湿式法珪酸は乾式法珪酸と比較して分子構造が粗になるため、湿式法珪酸を適用した場合、乾式法珪酸を用いた系と比較して乾燥状態における光の乱反射性に優れ、隠蔽性が大きくなるものと推察される。
又、多孔質像は水を吸液させるものであるから、湿式法珪酸は乾式法珪酸に比べて粒子表面にシラノール基として存在する水酸基が多く、親水性の度合いが大であり、好適に用いられる。
【0010】
前記バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、ナイロン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリルポリオール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合樹脂、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合樹脂、ブタジエン樹脂、クロロプレン樹脂、メラミン樹脂、及び前記各樹脂エマルジョン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
前記低屈折率顔料とバインダー樹脂の混合比率は、低屈折率顔料の種類及び性状に左右されるが、好ましくは、低屈折率顔料1重量部に対してバインダー樹脂固形分0.5〜2重量部であり、より好ましくは、0.8〜1.5重量部である。低屈折率顔料1重量部に対してバインダー樹脂固形分が0.5重量部未満の場合には、形成される多孔質像の実用的な皮膜強度を得ることが困難であり、2重量部を越える場合には、前記多孔質像内部への水の浸透性が悪くなる。
前記多孔質像は、一般的な塗膜と比較して着色剤に対するバインダー樹脂の混合比率が小さいため、十分な皮膜強度が得られ難い。そこで、前記のバインダー樹脂のうち、ナイロン樹脂又はウレタン系樹脂を用いて耐擦過強度を高めることが好ましい。
前記ウレタン系樹脂としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂等があり、2種以上を併用することもできる。又、前記樹脂が水に乳化分散したウレタン系エマルジョン樹脂や、イオン性を有するウレタン樹脂(ウレタンアイオノマー)自体のイオン基により乳化剤を必要とすることなく自己乳化して、水中に溶解乃至分散したコロイド分散型(アイオノマー型)ウレタン樹脂を用いることもできる。
尚、前記ウレタン系樹脂は水性ウレタン系樹脂又は油性ウレタン系樹脂のいずれを用いることもできるが、水性ウレタン系樹脂、殊に、ウレタン系エマルジョン樹脂やコロイド分散型ウレタン系樹脂が好適に用いられる。
前記ウレタン系樹脂は単独で用いることもできるが、支持体の種類や皮膜に必要とされる性能に応じて、他のバインダー樹脂を併用することもできる。ウレタン系樹脂以外のバインダー樹脂を併用する場合、実用的な皮膜強度を得るためには、前記多孔質像のバインダー樹脂中にウレタン系樹脂を固形分比率で30重量%以上含有させることが好ましい。
前記バインダー樹脂において、架橋性のものは任意の架橋剤を添加して架橋させることにより、さらに皮膜強度を向上させることができる。
前記バインダー樹脂には、水との親和性に大小が存在するが、これらを組み合わせることにより、多孔質像中への浸透時間、浸透度合い、浸透後の乾燥の遅速を調整することができる。更には、適宜分散剤を添加して前記調整をコントロールすることができる。
前記多孔質像中には着色剤を含有させることもできる。
【0011】
前記多孔質像は、公知の手段、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等により形成できる。
【0012】
前記導電性印刷像に含まれる導電性物質としては、カーボンブラッ
クが用いられる。
なお、前記カーボンブラックのうち、空隙率が50〜80%のカーボンブラックは、従来のカーボンブラック(空隙率が20%以下)のカーボンと比較して1/2〜1/3程度の添加量で同等の導電性能が得られるため、バインダー樹脂の添加量を増加させることができる。そのため、柔軟性を有する支持体、例えば布への適用性に優れ、従来のカーボンブラックを用いたインキと比較して洗濯強度や耐擦過強度に優れた導電性印刷像が得られる。
更に、窒素吸着比表面積が500〜1500m
2/gのカーボンブラックを用いると、従来のカーボンブラック(空隙率が20%以下)のカーボンと比較して1/2〜1/3程度の添加量で同等の導電性能が得られると共に、バインダー樹脂への分散性能に優れるため、安定した導電機能を有する導電性印刷像が得られる。
前記カーボンブラックとしては、中空シェル状構造のカーボンブラック、或いは、内部が疎の凝集体からなるカーボンブラックが好適に用いられる。
【0013】
前記導電性印刷像は単一の像であってもよいが、複数の独立した導電性印刷像を備えることにより、多孔質像を水で変色させて導電性印刷像同士を繋ぎ合わせ、電気的に連結することにより、通電させる機能を付与でき、意外性を付与できるため好適である。
【0014】
前記多孔質像中には着色剤を含有させたり、支持体と多孔質像の間に着色剤を含む非変色層を設けることもできる。
【0015】
前記多孔質像に併設される導電性印刷像は、前記導電性物質とバインダー樹脂により構成され、適宜印刷手段により形成される。
前記導電性印刷像のバインダー樹脂は多孔質像と同様のバインダー樹脂が用いられる。
前記多孔質像と導電性印刷像は互いに接していることが必要であり、部分的に接している他、全周が接していてもよい。
【0016】
前記導電性印刷像は単一の像であってもよいが、複数の独立した導電性印刷像を備えると多孔質像を水で変色させて導電性印刷像同士を繋ぎ合わせ、電気的に連結することにより、通電させる機能を付与でき、遊戯性に富むため好適である。
【0017】
前記通電性水変色体に水を付着させる手段としては、手や指を水等の液体で濡らして接触させる他、水付着具を適用することもできる。
前記水付着具としては、水鉄砲や噴霧機のような液体を吹き付ける装置、先端部に筆穂や繊維ペン体等を有する筆記又は塗布具、容器内に液体を収容し、且つ、容器内の液体を導出する繊維体や刷毛を設けた筆記又は塗布具、ローラー形態のスタンプ具等が挙げられる。
【0018】
前記通電作動装置は複数の通電素子を有してなり、素子が通電することにより発音、発光又は可動する装置である。
通電作動装置の本体には、装置の作動によって所望の音声を発生させる回路と音声を発する報知手段(スピーカー)を設けたり、発光手段(電球やLED)を設けたり、動作手段(モーター)を設けることができる。
なお、前記音声としては、人の声、動物の鳴き声、音楽、メロディー、或いはこれらを複合した音声を例示できる。更に、前記音声として日本語又は英語読みの数字、五十音やアルファベットを発する知育用の音声であってもよい。
【0019】
前記装置を作動させる電源としては、コンセントから供給したり、或いは、乾電池等の電源を利用する方法が挙げられるが、本体内に電源を収容する構成が電気を供給するコードが邪魔にならず好適である。
前記乾電池は一次電池或いは二次電池のいずれであってもよい。又、太陽電池を内蔵して、光源から電気を得ることもできる。
また、必要によりスイッチを設けることもできる。
【0020】
なお、前記通電作動装置と、通電性水変色体を組み合わせて通電性水変色装置を構成したり、前記水付着具と、通電性水変色装置を組み合わせて通電性水変色セットを構成することもできる。
【実施例】
【0021】
以下に実施例を示すが、本発明は実施例に限定されない。なお、実施例中の部は質量部を示す。
実施例1
支持体として、目付量110g/m
2の白色のT/C(65/35)ブロード生地上に、青色顔料10部、アクリルエマルジョンを主成分とするバインダー樹脂80部を混合したスクリーン印刷インキを用いて、180メッシュのスクリーン版にて全面ベタ印刷して青色の着色層を設けた。
前記着色層上に導電性物質として微粉末カーボンブラック(空隙率:70%、窒素吸着比表面積が900m
2/g)5部、アクリル樹脂エマルジョン50部(固形分50%)、シリコーン系顔料分散剤0.5部、消泡剤1.0部、粘度調整剤3.0部、水40.5部を混合してなる黒色の導電性スクリーン印刷インキを用いて、180メッシュのスクリーン版にて3mmの線幅で「パンダ」の文字とパンダの絵柄をそれぞれ印刷して、導電性印刷像を形成した。
前記導電性印刷像の周囲に、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE−200、日本シリカ工業(株)製、平均粒子径:3.0μm〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW−930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、イソシアネート系架橋剤3部を混合してなる印刷インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて多孔質像を形成して通電性水変色体を得た。
【0022】
前記通電性水変色体は、常態(非吸水状態)では白色の多孔質像の周囲に黒色の「パンダ」の文字とパンダの絵柄が視認されるが、多孔質像に水を付着させると、白色の多孔質像が水の吸液により透明化して下層の着色層による青色が視認される。前記水が付着した状態では、青色が視認されていたが、水が蒸発すると再び元の白色に戻る。
前記通電性水変色体に通電作動装置を取り付けて通電性水変色装置を得た。
前記通電性水変色装置の各通電性印刷像には通電により発光する通電作動装置の素子を取り付けてなり、常態(非吸液状態)では作動しないが、通電印刷像である「パンダ」の文字とパンダの絵柄の間の多孔質像に水を内部に収容可能な塗布具を用いて水を付着させて通電性印刷像を繋ぐと通電して発光する。
また、水が付着した多孔質像は白色から青色に変色するため、筆跡を明瞭に視認することができる。
前記筆跡は乾燥により、元の状態に戻るため、何度も繰り返し遊ぶことができ、筆跡形成と発光機能を備えた知育玩具として有用であった。
【0023】
実施例2
実施例1で作製した通電性水変色装置と、水付着手段として水を内部に収容可能な塗布具を組み合わせて通電性水変色セットを得た。
前記通電性水変色セットは、実施例1と同様に水の適用により何度も繰り返し遊ぶことができた。