(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5897273
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】医用画像表示装置及びX線コンピュータ断層撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20160317BHJP
A61B 6/00 20060101ALI20160317BHJP
【FI】
A61B6/03 360N
A61B6/03 370B
A61B6/00 360Z
A61B6/00 335
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-149759(P2011-149759)
(22)【出願日】2011年7月6日
(65)【公開番号】特開2012-40363(P2012-40363A)
(43)【公開日】2012年3月1日
【審査請求日】2014年7月4日
(31)【優先権主張番号】特願2010-165076(P2010-165076)
(32)【優先日】2010年7月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100159651
【弁理士】
【氏名又は名称】高倉 成男
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】荒木田 和正
(72)【発明者】
【氏名】塚越 伸介
【審査官】
原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−312775(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/093693(WO,A1)
【文献】
特開2007−260391(JP,A)
【文献】
特開2010−158275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に関する動画を構成する一連の医用画像のデータを記憶する画像記憶部と、
前記被検体の呼吸運動に関する一周期内の一部期間であって、前記呼吸運動を表す呼吸波形が極大となる時刻から前記呼吸波形が極小となる時刻までの期間又は前記呼吸波形が極小となる時刻から前記呼吸波形が極大となる時刻までの期間に対応する前記一連の医用画像の一部分を順方向と逆方向とで交互に繰り返し再生表示させるために前記画像記憶部の読み出しを制御する再生制御部とを具備することを特徴とする医用画像表示装置。
【請求項2】
前記一部期間は前記呼吸運動の吸気期間又は呼気期間であることを特徴とする請求項1記載の医用画像表示装置。
【請求項3】
前記呼吸波形の極小値と極大値とに従って前記吸気期間又は呼気期間を特定する期間特定部をさらに備えることを特徴とする請求項2記載の医用画像表示装置。
【請求項4】
前記医用画像各々について前記被検体の肺野領域を画像処理により抽出し、前記肺野領域の面積又は容積の時間変化を、前記呼吸運動を表す呼吸波形として発生する呼吸波形発生部と、
前記呼吸波形の極小値と極大値とに従って前記吸気期間又は呼気期間を特定する期間特定部とをさらに備えることを特徴とする請求項2記載の医用画像表示装置。
【請求項5】
前記吸気期間又は呼気期間に対応する前記呼吸運動を表す呼吸波形は、反転された呼吸波形と交互に前記医用画像とともに表示されることを特徴とする請求項2記載の医用画像表示装置。
【請求項6】
被検体の呼吸運動に関する一周期内の一部期間であって、前記呼吸運動を表す呼吸波形が極大となる時刻から前記呼吸波形が極小となる時刻までの期間又は前記呼吸波形が極小となる時刻から前記呼吸波形が極大となる時刻までの期間に対応する動画を構成する一連の医用画像のデータを記憶する画像記憶部と、
前記一連の医用画像を順方向と逆方向とで交互に繰り返し再生表示させるために前記画像記憶部の読み出しを制御する再生制御部とを具備することを特徴とする医用画像表示装置。
【請求項7】
前記一部期間は前記呼吸運動の吸気期間又は呼気期間であることを特徴とする請求項6記載の医用画像表示装置。
【請求項8】
X線管と、
X線検出器と、
前記X線検出器を介して被検体に関する投影データを収集するデータ収集部と、
前記収集された投影データに基づいて前記被検体に関する動画を構成する一連の医用画像のデータを再構成する再構成部と、
前記一連の医用画像のデータを記憶する画像記憶部と、
前記被検体の呼吸運動に関する一周期内の一部期間であって、前記呼吸運動を表す呼吸波形が極大となる時刻から前記呼吸波形が極小となる時刻までの期間又は前記呼吸波形が極小となる時刻から前記呼吸波形が極大となる時刻までの期間に対応する前記一連の医用画像の一部分を順方向と逆方向とで交互に繰り返し再生表示させるために前記画像記憶部の読み出しを制御する再生制御部とを具備することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項9】
前記一部期間は前記呼吸運動の吸気期間又は呼気期間であり、
前記吸気期間又は呼気期間に限定して前記投影データを収集させるために前記呼吸運動に同期して前記データ収集部を制御する制御部をさらに備えることを特徴とする請求項8記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項10】
前記吸気期間又は呼気期間に対応する前記呼吸運動を表す呼吸波形は、反転された呼吸波形と交互に前記医用画像とともに表示されることを特徴とする請求項9記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項11】
被検体に関する投影データを収集するデータ収集部と、
前記収集された投影データに基づいて、前記被検体に関する呼吸運動に関する一周期内の一部期間であって、前記呼吸運動を表す呼吸波形が極大となる時刻から前記呼吸波形が極小となる時刻までの期間又は前記呼吸波形が極小となる時刻から前記呼吸波形が極大となる時刻までの期間に対応する動画を構成する一連の医用画像のデータを再構成する再構成部と、
前記一連の医用画像のデータを記憶する画像記憶部と、
前記一連の医用画像を順方向と逆方向とで交互に繰り返し再生表示させるために前記画像記憶部の読み出しを制御する再生制御部とを具備することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項12】
被検体の呼吸運動に関する一周期の一部期間であって、前記呼吸運動を表す呼吸波形が極大となる時刻から前記呼吸波形が極小となる時刻までの期間又は前記呼吸波形が極小となる時刻から前記呼吸波形が極大となる時刻までの期間に対応する動画を構成する第1の一連の医用画像のデータを記憶する画像記憶部と、
前記第1の一連の医用画像に対する逆配列処理(inverse arrangement)及び補間又は間引き処理により第2の一連の医用画像を発生する画像発生部と、
前記第1の一連の医用画像と前記第2の一連の医用画像とを交互に繰り返し再生表示させるために前記画像記憶部の読み出しを制御する再生制御部とを具備することを特徴とする医用画像表示装置。
【請求項13】
前記一部期間は前記呼吸運動の吸気期間又は呼気期間であることを特徴とする請求項12記載の医用画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像表示装置及びX線コンピュータ断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線コンピュータ断層撮影装置(CT)、磁気共鳴映像装置(MRI)などの医用画像発生装置を用いて呼吸動作に伴う組織動態を確認して機能解析をする方法は、疾患の診断および早期発見の観点から非常に有効である。近年では注目組織全体をカバーしたボリューム画像を繰り返し収集し、断面変換(MPR)や3次元による動画表示も一般的に用いられている。特に肺野においては、MPR画像で注目断面を指定し、その動態を観察する事が多い。
【0003】
動画を構成する一連の医用画像はその撮影順に従って時系列に配列され繰り返し再生される。肺野撮影では呼吸周期が長く、被曝低減の要請から1呼吸周期全期間にわたるスキャニングは難しい。そのため呼吸の半周期にほぼ対応する期間に短縮してスキャニングを実施することが多い。その場合、1呼吸周期全期間にわたって腫瘍などを読影することができなかった。
【0004】
動画を自動的に繰り返し再生することがあるが、その場合、動画の最終フレームと最初のフレームとの間で呼吸位相が離間しているので、その動画としての視覚上の連続性は断たれてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
目的は、動画の繰り返し再生における視覚上の連続性を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る医用画像表示装置は、被検体に関する動画を構成する一連の医用画像のデータを記憶する画像記憶部と、前記被検体の周期的運動
に関する一周期内の一部期間であって、波形が極大となる時刻から前記波形が極小となる時刻までの期間又は前記波形が極小となる時刻から前記波形が極大となる時刻までの期間に対応する前記一連の医用画像の一部分を順方向と逆方向とで交互に繰り返し再生表示させるために前記画像記憶部の読み出しを制御する再生制御部とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係る医用画像表示装置を含むX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示す図である。
【
図4】
図2の単純交互再生の説明のためのスキャニング期間を示す図である。
【
図6】
図2の呼吸同期交互再生の説明のためのスキャニング期間を示す図である。
【
図8】本実施形態による表示画面に対する画像フレームシフト処理の説明図である。
【
図9】本実施形態による他の再生手法に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態に係る医用画像表示装置は、被検体に関する動画を構成する一連の医用画像のデータを記憶する画像記憶部と、前記被検体の周期的運動に関する一周期の一部期間に対応する前記一連の医用画像の一部分を順方向と逆方向とで交互に繰り返し再生表示させるために前記画像記憶部の読み出しを制御する再生制御部とを具備する。
【0009】
例えば上記周期的運動は呼吸運動である。その呼吸周期の一部期間は、吸気期間又は呼気期間である。吸気期間又は呼気期間にわたる一連の画像が収集される。収集された一連の画像は、順方向に再生され、続いて逆方向に再生され、この交互再生が繰り返される。それにより視覚上の連続性が確保されることができる。しかも、呼吸周期の全期間にわたって画像を収集するよりも、被ばく線量は略半分に軽減されることができる。
【0010】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる医用画像表示装置を説明する。なお、医用画像表示装置は、X線コンピュータ断層撮影装置、磁気共鳴映像装置(MRI)、超音波診断装置、X線診断装置などの動画撮影の可能な医用画像発生装置により発生された動画をその表示対象とする。本実施形態に係わる医用画像表示装置は、これら医用画像発生装置に組み込まれ、又は単独で機能する。単独で機能するとき、本実施形態に係わる医用画像表示装置は、LANなどの電気的通信回線に接続され、電気的通信回線を介して病院内又は外部の医用画像補間通信システム(PACS)から表示対象としての医用画像を受信する。ここでは、本実施形態に係わる医用画像表示装置は、X線コンピュータ断層撮影装置に組み込まれたものとして説明する。
【0011】
図1に、本実施形態に係る医用画像表示装置を装備したX線コンピュータ断層撮影装置の構成をブロック図により示している。架台部100は、回転自在に支持される回転フレーム102を有する。回転フレーム102の回転中心軸をZ軸として規定して以下説明する。架台駆動部107は回転フレーム102の回転を駆動する。回転フレーム102にはコーンビーム形X線管101と2次元検出器103とがZ軸を中心とした撮影領域Sを挟んで対向して搭載される。撮影領域Sには図示しないが寝台の天板に載置された被検体が配置される。天板に載置された被検体の体軸はZ軸に略一致する。高電圧発生器109はX線管101に管電流を供給し、また高電圧を印加する。それによりX線管101のX線焦点Fから四角錐形のX線が発生される。2次元検出器103は、X線焦点Fを中心として円弧状に配列された複数のX線検出素子列を有する。複数のX線検出素子列はZ軸方向に並設される。2次元検出器103には一般的にDAS(data acquisition system) と呼ばれているデータ収集装置104が接続されている。
【0012】
コーンビームX線管101及び2次元検出器103は、スキャン位置を固定させた状態で例えば肺野全体を含む広い撮影範囲の投影データを1回転で収集することができる。典型的には1回転で収集される投影データのセットに基づいてマルチスライス又は3次元の断層像のデータが再構成され得る。
【0013】
なお、説明の便宜上、マルチスライス又は3次元の断層像のデータの集合体をここでは“ボリュームデータセット”と称する。また、ボリュームデータセットの再構成に要する投影データセットを収集する単位動作をここでは“ボリュームスキャン”と称する。1回のボリュームスキャンにより、1つの投影データセットが収集される。1つの投影データセットから1つのボリュームデータセットが再構成されるものとして説明する。このボリュームスキャンに対して、シングルスキャンとは単一のスライスに係る断層像の再構成に要する投影データセットを収集する単位動作として定義される。なお、ここではボリュームスキャンを一例に説明するが、本実施形態はボリュームスキャンだけでなく、シングルスキャンにも適用可能である。1回のシングルスキャンにより、1つの投影データセットが収集され、1つの投影データセットから1スライスの断層像データセットが再構成される。
【0014】
データ収集装置104には、2次元検出器103の各チャンネルの電流信号を電圧に変換するI−V変換器と、この電圧信号をX線の曝射周期に同期して周期的に積分する積分器と、この積分器の出力信号を増幅するアンプと、このプリアンプの出力信号をディジタル信号に変換するアナログ・ディジタル・コンバータとが、チャンネルごとに設けられている。
【0015】
データ収集装置104の出力には光学的又は磁気的要素を媒介させる非接触データ伝送装置105を介して前処理装置106が接続される。前処理装置106は、データ収集装置104で検出されたデータに対して、チャンネル間の感度不均一を補正し、またX線強吸収体、主に金属部による極端な信号強度の低下又は信号脱落を補正する等の前処理を実行する。前処理装置106で前処理を受けたデータ(投影データ)は投影データ記憶部112に記憶される。投影データには、データ収集時刻に対応するタイムコード、チャンネル番号コード、ビュー角コードなどの属性情報がホストコントローラ110の制御のもとで関連付けられる。
【0016】
画像再構成処理部116は、投影データ記憶部112に記憶された投影データセットに基づいて、ボリュームデータセットを再構成する。ボリュームデータ記憶部113は、再構成されたボリュームデータセットを記憶するために設けられる。
【0017】
本実施形態では、ホストコントローラ110の制御のもと、いわゆる4次元ダイナミックスキャンが実行される。4次元ダイナミックスキャンでは、回転フレーム102の連続回転を伴って、上記ボリュームスキャンが繰り返される。ボリュームスキャンの繰り返しにより、複数の撮影時刻にそれぞれ対応する複数のボリュームデータセットが再構成され得る。典型的にはボリュームデータセットの再構成に用いた投影データセットの中心時刻が、当該ボリュームデータセットに対応する撮影時刻として特定される。複数のボリュームデータセットにはそれぞれ撮影時刻を表すタイムコードが関連付けられる。
【0018】
なお、複数のボリュームデータセットの時間間隔は1回転に要する時間(スキャン時間)、例えば0.4秒であるが、回転角が例えば10°、30°等ずつシフトした投影データセットを抽出して、それらにより時間間隔が10°の回転に要する時間、30°の回転に要する時間等の1回転に要する時間よりも短い高時間分解能の複数のボリュームデータセットを生成するようにしてもよい。
【0019】
画像処理部115は、画像表示部(ディスプレイ)117への表示に適合するいわゆるMPR処理(断面変換処理)によりボリュームデータセットから任意断面の断層像(MPR画像)のデータを生成し、またいわゆるレンダリング処理によりボリュームデータセットからレンダリング画像のデータを生成する。ここではMPR画像、レンダリング画像その他ディスプレイ117への表示に適合する2次元座標に変換された画像を単に“医用画像”と称する。4次元ダイナミックスキャンにより得られる時系列に係る複数のボリュームデータセットからそれぞれ対応する動画を構成する一連の医用画像が生成される。ボリュームデータ記憶部113は、ボリュームデータセットとともに、画像処理部115で生成された一連の医用画像のデータを記憶する。一連の医用画像各々には、それぞれが由来するボリュームデータセットと同じタイムコードが関連付けられる。
【0020】
再生コントローラ118は、ボリュームデータ記憶部113から医用画像のデータの読み出しを制御することにより、ボリュームデータ記憶部113に記憶された一連の医用画像の全期間又は一部期間を動画として再生表示させる。再生表示は被検体の周期的な生理運動に関連付けられる。周期的な生理運動は、典型的には呼吸運動又は心拍運動である。本実施形態では、呼吸運動と心拍運動とのいずれにも適用することができる。ここでは呼吸運動として説明する。被検体の呼吸運動は、例えば呼吸センサ120により測定される。周知の通り、呼吸動作は、横隔膜の往復運動に伴なう肺野の拡張収縮である。肺野の拡張収縮に伴って腹部が前後に往復移動をする。呼吸センサ120は、例えばレーザ測長技術を用いて被検体の腹部表面と外部固定点(レーザ照射位置)との間の距離を繰り返し計測する。この距離の時間的変化は、被検体の呼吸の状態(呼吸位相)の変化を表している。呼吸センサ120は、腹部にバンド状のものを巻き、バンドと腹部の間に圧力センサーを取り付け、圧力の変化により、呼吸の状態を観測するものでもよい。また、腹部上に載せた光反射材を取り付けたものを、カメラで撮影し、光反射材の部分の動きにより、呼吸の状態を観測するものでもよい。また、画像処理部115により、呼吸波形を発生しても良い。例えばMPR画像から肺野領域が抽出され、抽出された肺野領域の面積又は容積の時間的変化は、被検体の呼吸の状態(呼吸位相)の変化を表している。少なくとも4次元スキャンの実行期間中の呼吸状態を表す上記距離、圧力、面積、容積等のインデックスのデータは、タイムコードとともに呼吸波形記憶部121に記憶される。タイムコードにより、呼吸インデックスと医用画像とが関連付けられる。
【0021】
最大値/最小値特定部123は、記憶された呼吸インデックスから、4次元スキャンの実行期間中の最大値と最小値を特定する。例えば呼吸インデックスが最小値を示す時刻は呼気ボトム時刻を表し、呼吸インデックスが最大値を示す時刻は吸気ピーク時刻を表している。呼気ボトム時刻から吸気ピーク時刻までの期間(吸気期間)は、呼吸周期の略半周期を表している。
【0022】
4次元ダイナミックスキャンは、1呼吸周期全期間より短く、呼吸の半周期より少しだけ長いスキャニング期間にわたって実行される。好適には、4次元ダイナミックスキャニング期間は、一呼吸周期全期間の半分の期間に設定される。この半分の期間は、典型的には吸気期間である。例えば呼吸同期技法により、吸気期間に限定して4次元ダイナミックスキャニングが実行される。呼気期間には4次元ダイナミックスキャニングは実行されない。もちろん呼気期間に限定して4次元ダイナミックスキャニングを実行し、吸気期間には4次元ダイナミックスキャニングを実行しないものであってもよい。
【0023】
この4次元ダイナミックスキャンの実行中に収集された投影データに基づいて、n個のボリュームデータセットが再構成される。n個のボリュームデータセットからそれぞれ対応するnフレームの医用画像のデータが発生される。nフレームの医用画像のデータはそれぞれのタイムコードとともにボリュームデータ記憶部113に記憶される。
【0024】
再生コントローラ118は、3種類の再生方式を装備する。3種類の再生方式には、単純繰り返し再生方式と、単純交互再生方式と、呼吸同期交互再生方式とが含まれる。
図2に示すように、3種類の再生方式の何れかの方式が、操作者により図示しない入力操作デバイスを介して選択される(S01)。
【0025】
図3に示すように、単純繰り返し再生方式のもとでは、4次元ダイナミックスキャンの全期間に対応する全ての発生されたnフレームの医用画像が、それぞれのタイムコードに従って収集時の時間経過と同じ時間経過で順方向に実時間再生され、それが繰り返される(S02)。単純繰り返し再生方式は、従来方式に相当する。呼吸波形記憶部121に記憶された呼吸波形データに従って、4次元ダイナミックスキャンの全期間(t01−t02)に対応する呼吸波形カーブが連結され、ディスプレイ117の画面に動画とともに表示される。
【0026】
図4、
図5に示すように、単純交互再生方式のもとでは、4次元ダイナミックスキャンの全期間(t01−t02)に対応する全ての発生されたnフレームの医用画像が、それぞれのタイムコードに従って収集時の時間経過と同じ時間経過で順方向に実時間再生され(順方向再生)、それに続いて、nフレームの医用画像がタイムコードに従って今度は収集時の時間経過に逆行する時間経過で逆方向に実時間再生され(逆方向再生)、このように順方向再生と逆方向再生とが交互に繰り返される(S03)。呼吸波形記憶部121に記憶された4次元ダイナミックスキャンの全期間に対応する呼吸波形カーブが順逆交互に連結され、ディスプレイ117の画面に動画とともに表示される。収集時と同じ順方向の時間経過で生成される呼吸波形カーブは例えば実線で表示され、収集時の時間経過に逆行する時間経過で生成される呼吸波形カーブは例えば点線で表示される。
【0027】
図6、
図7に示すように、呼吸同期交互再生方式のもとでは、4次元ダイナミックスキャンの全期間(t01−t02)の一部期間、ここでは最大値/最小値特定部123で特定された呼吸半周期(t11−t12)に限定して動画の交互再生が繰り返される。呼吸波形記憶部121に記憶された4次元ダイナミックスキャンの呼吸半周期に対応する部分的な呼吸波形カーブが順逆交互に連結され、ディスプレイ117の画面に動画とともに表示される。
【0028】
より具体的には、
図2に示すように、呼吸波形データが呼吸波形記憶部121から再生コントローラ118に読み込まれる(S04)。当該4次元ダイナミックスキャンの全期間(t01−t02)に対応する呼吸波形データが再生コントローラ118により検索される(S05)。当該4次元ダイナミックスキャンの全期間(t01−t02)に対応する呼吸波形データがあるとき、当該4次元ダイナミックスキャンの全期間(t01−t02)に対応する呼吸波形カーブがディスプレイ117に表示される(S06)。
【0029】
当該4次元ダイナミックスキャンの全期間(t01−t02)に対応する呼吸波形データがないとき、当該4次元ダイナミックスキャンの全期間(t01−t02)に対応するn個のボリュームデータセットがボリュームデータ記憶部113から画像処理部115に読み出される。画像処理部115では、n個のボリュームデータセットに対して個々に、例えばCT値に対する閾値処理により肺野領域を抽出し、その容積を呼吸インデックスとして計算する。計算された複数の肺野容積を収集時と同じ順方向の時間経過で配列して、必要に応じて補間し、それにより容積カーブを呼吸波形カーブとして生成する(S10)。生成された呼吸波形カーブはディスプレイ117に表示される(S06)。
【0030】
呼吸波形カーブの最大値と最小値とが最大値/最小値特定部123により特定される(S07)。例えば呼吸インデックスが最小値を示す時刻は呼気ボトム時刻を表し、呼吸インデックスが最大値を示す時刻は吸気ピーク時刻を表す。呼気ボトム時刻から吸気ピーク時刻までの期間は、呼吸の略半周期に対応する。なお、単純に最大値・最小値を検索しても良いし、波形をフィッティングするなどして微分値から極大値・極小値を算出しても良い。
【0031】
画像処理部115では、算出した最小値から最大値までの呼吸の略半周期に対応する順方向の部分的な呼吸波形と、その部分的な呼吸波形を時間経過に関して反転させた逆方向の呼吸波形とを交互に連結する(S08)。
【0032】
図7に示すように、4次元ダイナミックスキャンの全期間(t01−t02)の一部期間を構成する呼吸の略半周期に対応する期間(t11−t12)に含まれるフレーム(I11−Im)の医用画像が、それぞれのタイムコードに従って収集時の時間経過と同じ時間経過で順方向に実時間再生され(順方向再生)、それに続いて、今度は収集時の時間経過に逆行する時間経過で逆方向に実時間再生され(逆方向再生)、このように順方向再生と逆方向再生とが交互に繰り返される(S03)。S08で生成された呼吸波形カーブがディスプレイ117の画面に動画とともに表示される。収集時と同じ順方向の時間経過で生成される呼吸波形カーブは例えば実線で表示され、収集時の時間経過に逆行する時間経過で生成される呼吸波形カーブは例えば点線で表示される。
【0033】
この呼吸の略半周期に限定して交互再生される動画は、1呼吸期間の動画の繰り返し再生に近似的である。略半周期の期間に限定した交互再生では、動画の最終フレーム(Im)と最終フレーム(Im)とが連続し、また最初のフレーム(I11)と最初のフレーム(I11)とが連続し、従って当然にして組織分布は画面上で変位は生じない。それによりその動きの視覚上の連続性は維持され、例えば腫瘍に注目して動画を観察しているとき、観察者は大きく視線を移動する必要がない。
【0034】
なお、呼吸同期交互再生方式のもとで擬似的な1呼吸周期で動画を再生する際に、期待した時間におけるボリュームデータが無い場合、隣接するボリュームから求めてもよい。離散的なデータまたは、等間隔ではないデータなどを再生する際に有効である。再生時にユーザが指定、あるいは組織の濃度差から自動的に抽出されたオブジェクトに注目し、そのオブジェクトが常に表示される断面で表示しても良い。
【0035】
上記手段を用いる事で、再生時の段差がなくなるため、動画の違和感が無くなる。腫瘍などを観察する際は、MPR画像を用いて動きを見ることが多い。この時、段差があるとその動きが把握しづらいが、本手法で再生することで動きを把握しやすくなることが期待される。また1呼吸周期全期間にわたってスキャンを実行する必要なくなるため、被ばくを低減させることができる。
【0036】
図8には、本実施形態による表示画面に対する画像フレームシフト処理を示している。画像フレームシフト処理は、動画表示に際して、ディスプレイ117の画像表示画面内の特定位置に腫瘍などの関心部位が固定されるように、画像表示画面に対する各医用画像のフレーム位置をシフトする処理である。まず画像処理部115で、表示対象の動画を構成する一連の医用画像各々から、閾値処理等により腫瘍などの関心部位の領域を抽出し、抽出した関心部位の領域の位置、例えば重心位置を計算する。再生コントローラ118は、各医用画像について計算された関心領域の位置を、画像表示画面の特定位置に一致させるよう、各医用画像に対して座標変換をする。画像表示画面の特定位置は、典型的には操作者指定位置、画像表示画面の中心位置、又は表示対象の動画を構成する一連の医用画像中の最初のフレームにおける関心領域の例えば重心が表示される表示画面上の位置に設定される。座標変換した医用画像のデータに対して再生コントローラ118がボリュームデータ記憶部113に対して読み出し制御をすることにより、ディスプレイ117の画像表示画面内の特定位置に腫瘍などの関心部位が固定された状態で動画が再生される。読影者は動画上で腫瘍を視認するに際して、画面内での視線移動の負担が軽減され得る。
【0037】
上述の説明では、吸気期間に収集した一連の画像を順方向と逆方向とで交互に再生する。換言すると、画像収集をしていない呼気期間に対応する一連の画像は、吸気期間に実際に収集した一連の画像を逆方向に再配列することにより生成する。
図9に示すように、呼気期間に対応する一連の画像I21,I22、・・・Ikは、吸気期間に収集した一連の画像I11,I12、・・・Imに対する逆配列処理(inverse arrangement)及び補間又は間引き処理により生成されるようにしてもよい。典型的には、呼気期間の画像は、それを挟んで前後の2フレーム又は3以上のフレームの画像を、時間間隔に応じた重みによる加重加算処理により生成される。補間処理の手法は、それに限定されず、任意の技法を採用することができる。また吸気期間に実際に収集した一連の画像の一部を一定の間隔で間引くことにより、呼気期間に対応する一連の画像を生成するようにしても良い。実際に収集された吸気期間に対応する一連の画像と、生成された呼気期間に対応する一連の画像とは交互に表示される。
【0038】
また、実際には収集されていない吸気期間に対応する一連の画像は、実際に収集された吸気期間に対応する一連の画像から生成することに限定されない。例えば吸気期間に対応する標準的な一連のモデル画像を予め用意する。被検体の平均的な心拍数、年齢、性別、体格、肺容量、肺活量等に応じて最も被検体に近似的な一連のモデル画像が選択される。実際に収集された吸気期間に対応する一連の画像と、選択された呼気期間に対応する一連のモデル画像とは交互に表示される。
【0039】
また、上述の説明では、呼吸周期の一部期間、例えば吸気期間に一連の画像を実際に収集するが、呼気期間は画像を収集しない。しかし、呼吸運動の少なくとも一周期にわたって不規則な間隔で一連の画像が収集され、この実際に収集された一連の画像から、補間処理により一定の間隔で配列する一連の医用画像を発生するようにしてもよい。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0041】
100…架台部、101…X線管、102…回転フレーム、103…2次元検出器、104…データ収集装置、106…前処理装置、107…架台駆動部、109…高電圧発生器、110…ホストコントローラ、112…投影データ記憶部、113…ボリュームデータ記憶部、115…画像処理部、116…画像再構成処理部、117…表示部(ディスプレイ)、118…再生コントローラ、120…呼吸センサ、121…呼吸波形記憶部、123…最大値/最小値特定部。