(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る安否確認システムを、図面に基づいて説明する。
図1に示す安否確認システム10は、老齢者や要介護者などの対象者の活動を検知して、対象者の安否を確認することができるものである。
【0018】
安否確認システム10は、情報格納体として発信素子を内蔵した有床義歯20と、発信素子からの信号を検知する情報読取装置として機能するセンサ30と、センサ30からの検知通知を電気通信回線の一例であるインターネットWへ送信する通信装置40と、インターネットWからの検知通知に基づいて対象者の安否を確認する管理サーバ50とを備えている。
【0019】
有床義歯20は、対象者(装着者)が装着する局部床義歯や部分義歯と称される部分入れ歯や、全部床義歯や総義歯と称される総入れ歯などとすることができる。本実施の形態では、
図2(A)に示すように、上顎全部の歯牙を人工歯22とし、これらの人工歯22が義歯床21に支持された入れ歯の有床義歯20としている。
【0020】
有床義歯20には、左上6番の人工歯22aに、発信素子Tが埋め込まれている。この発信素子Tが埋め込まれた人工歯22aは、義歯床21に支持された他の人工歯22と異なる色に形成されている。本実施の形態1では、他の人工歯22が黄色を帯びた白色であるのに対し、人工歯22aは赤色に着色されている。この着色は、人工歯22aを樹脂成形する際に、成形材に着色材を混合して形成することができる。なお、人工歯22aの色は、赤色以外に、他の人工歯22と区別が付けばよいので、青色や緑色、濃淡の変更などとすることができる。
【0021】
発信素子Tは、人工歯22aの中心部に設けた窪み22bに収納されている。発信素子Tが収納された窪み22bは、蓋として樹脂が充填されている。発信素子Tは、非接触式のパッシブダグ型のRFIDタグとすることができる。
この発信素子Tには、個人を特定するための識別情報(ID情報)と、氏名、住所、生年月日、性別、血液型、治療に掛かった歯科院を特定する病院名や病院を識別するコードなどの個人情報、容量が十分であれば病歴などが格納されている。発信素子Tにセンサ30から電波を照射して起電力を得ることで、発信素子T内に記憶させた各種情報をセンサ30へ送信する。
【0022】
センサ30は、電波を送信して有床義歯20に埋め込まれた発信素子Tから信号(各種の情報)を読み取れれば、この信号を検知通知として通信装置40へ出力する。また、センサ30は、信号が読み取れなくなれば非検知通知を通信装置40へ出力する。検知通知は、発信素子Tを検知した旨の情報と、発信素子Tからの識別情報と個人情報である。非検知通知は、発信素子Tを検知できなくなった旨の情報と、発信素子Tからの識別情報である。本実施の形態1に係るセンサ30は、歯科補綴物である有床義歯20を収納する容器60に設けられている。
【0023】
容器60は、
図3に示すように平面視略半円形状に形成された蓋付きの入れ歯ケースである。容器60には、その底面にセンサ30が配置されている。容器60は単なる収納容器とするだけなく、洗浄容器とすることができる。容器60の電源は電池としたり、電灯線から供給を受けたりすることができる。
【0024】
通信装置40は、
図1に示すように、センサ30からの検知通知をインターネットWに接続された管理サーバ50へ送信する。通信装置40とセンサ30とは無線通信としたり有線通信としたりすることができるが、容器60の持ち運びを容易とするために、無線通信とするのが望ましい。
【0025】
管理サーバ50は、インターネットWに接続された安否確認装置として機能するコンピュータである。管理サーバ50は、安否確認プログラムを動作させることで、安否確認装置として機能する。管理サーバ50は、
図4に示すように通信部51と、安否判定部52と、報知部53と、時間設定部54と、カレンダ部55と、記憶部56とを備えている。
【0026】
通信部51はインターネットWからの情報を受信して安否判定部52へ出力したり、安否判定部52からの情報を入力してインターネットWへ送信したりする機能を備えている。安否判定部52は、所定時間のうちに、検知通知を受信したり、非検知通知を受信したりすることにより対象者が活動状況にあることを判定したり、活動できない状況にあることを判定したりする。報知部53は、安否判定部52により安否が確認されたとき、または異常が検知されたときに、対象者の親族や関係者に報知する。本実施の形態の報知部53では、電子メールにより安否の状態を報知する機能を備えている。時間設定部54は、安否判定部52が対象者の安否の判定を行う際の時間を設定する。カレンダ部55は、日にち、時間を計測する。記憶部56は、OSやアプリケーションなどのプログラムだけでなく、各種の設定情報や統計情報が格納される。
【0027】
以上のように構成された本発明の実施の形態1に係る安否確認システムの動作および使用状態について、図面に基づいて説明する。なお、対象者は、通常、午前8時に起床し、午後9時に就寝するものとする。従って、記憶部56には、予め非検知通知の通知が予想される非検知時間として午前9時が設定され、検知通知の通知が予想される検知時間として午後10時が設定されているものとする。
【0028】
図5に示すように、前回、非検知通知を受信しているのであれば、管理サーバ50では、安否判定部52が記憶部56から検知時間である「午後10時」を読み込み(ステップS10)、現時刻をカレンダ部55から読み込んで(ステップS20)、現時刻が検知時間を過ぎたか否かを判定する(ステップS30)。
【0029】
対象者は、就寝前の午後9時に、有床義歯20を取り外して容器60へ収納する。有床義歯20を容器60へ収納することで、容器60に設けられたセンサ30が有床義歯20に設けられた発信素子Tからの信号を受信する。センサ30は発信素子Tからの信号を検知通知として通信装置40へ出力する。通信装置40では、検知通知を、インターネットWを介して管理サーバ50へ送信する。
【0030】
管理サーバ50では、現時刻が検知時間を過ぎていない場合に、安否判定部52が検知通知を受信したか否かを判定している(ステップS40)。安否判定部52は、検知通知を受信していない場合に、ステップS20へ移行する。
【0031】
安否判定部52が午後10時前に通信部51を介して検知通知を受信すると、対象者が問題なく有床義歯20を外し、就寝したことが確認できる。報知部53は記憶部56に設定された送信先アドレスを識別情報に基づいて読み出し、対象者が活動状態にあり、問題ないことを電子メールにて通知する(ステップS50)。
【0032】
ステップS30にて、検知時間である午後10時までに検知通知が受信できなかった場合であるが、通常、対象者は、午後9時には就寝して有床義歯20を外し容器60へ収納しているので、管理サーバ50側で検知通知が受信できるはずである。しかし、午後10時になっても有床義歯20が容器60へ収納されていないことから、対象者に何か不測の事態が発生した可能性がある。そこで、安否判定部52が異常と判定することで、報知部53が電子メールで親族や関係者に問題があることを通知する(ステップS60)。
【0033】
なお、ステップS50にて、問題ない旨の電子メールを関係者へ送信するようにしているが、毎日の電子メールの受信に問題があるようであれば、問題ないときに電子メールを送信しないようにすることも可能である。
【0034】
次に、前回、管理サーバ50が検知通知を受信している場合を
図6に基づいて説明する。安否判定部52が記憶部56から非検知時間である「午前9時」を読み込み(ステップS110)、現時刻をカレンダ部55から読み込んで(ステップS120)、現時刻が非検知時間となったか否かを判定する(ステップS130)。
【0035】
対象者は、起床後の午前8時に、有床義歯20を容器60から取り出して装着する。有床義歯20が容器60から取り出されることで、容器60に設けられたセンサ30は有床義歯20に設けられた発信素子Tからの信号が受信できなくなる。センサ30は発信素子Tからの信号を非検知通知として通信装置40へ出力する。通信装置40では、非検知通知を、インターネットWを介して管理サーバ50へ送信する。
【0036】
管理サーバ50では、現時刻が非検知時間を過ぎていない場合に、安否判定部52が非検知通知を受信したか否かを判定している(ステップS140)。安否判定部52は、検知通知を受信していない場合に、ステップS120へ移行する。
【0037】
安否判定部52が午前9時前に通信部51を介して非検知通知を受信すると、対象者が問題なく起床して有床義歯20を装着したことが確認できる。報知部53は記憶部56に設定された送信先アドレスを識別情報に基づいて読み出し、対象者が活動状態にあり、問題ないことを電子メールにて通知する(ステップS150)。
【0038】
ステップS130にて、非検知時間である午前9時までに非検知通知が受信できなかった場合であるが、通常、対象者は、午前8時には起床して容器60から有床義歯20を取り出し装着する習慣であるため、管理サーバ50側で午前8時過ぎには非検知通知が受信できるはずである。しかし、午前10時になっても有床義歯20が容器60へ収納されていないことから、対象者に何か不測の事態が発生した可能性がある。そこで、安否判定部52が異常と判定することで、報知部53が電子メールで親族や関係者に問題があることを通知する(ステップS160)。
【0039】
なお、ステップS150にて、問題ない旨の電子メールを関係者へ送信するようにしているが、ステップS50と同様に、毎日の電子メールの受信に問題があるようであれば、問題ないときに電子メールを送信しないようにすることも可能である。
【0040】
このように、発信素子Tが対象者の口腔内に装着される歯科補綴物(有床義歯20)に設けているため、通信装置を介して受信した検知通知により、対象者に意識させることなく管理サーバ50にて安否の確認をすることができる。また、有床義歯20であれば、日常、対象者が装着するものであるので、新たな習慣付けの必要がない。従って、対象者が監視されているという意識を持つことなく、対象者の安否を確認することができる。
【0041】
また、対象者は就寝する際に有床義歯20を外して容器60に収納し、起床して食事する際に有床義歯20を取り出して装着するよう習慣付いている。このような習慣は概ね毎日変化がない。従って、有床義歯20を収納する容器60にセンサ30を設けることで、少なくとも1日1回ずつの発信素子Tの検知および非検知を確実に検出することができる。
【0042】
次に、時間設定部54による検知時間および非検知時間の設定方法について、
図7に基づいて説明する。
時間設定部54は、検知通知または非検知通知を受信した時刻(以下、この時刻を受信時刻と称す。)を受信時にカレンダ部55から読み込み、対象者を識別する識別情報に関連付けて記憶部56に格納する(ステップS210)。
時間設定部54は、所定期間、受信時刻を格納したか否かを判定する(ステップS220)。例えば、時間設定部54が1ヵ月間の時刻を格納すれば、受信時刻の最も遅い時刻を抽出する(ステップS230)。例えば、受信時刻の最も遅い時刻を午前8時15分とする。
【0043】
そして、時間設定部54はこの最も遅い受信時刻に少しの余裕を加えた時刻、例えば15分を加えた時刻を、検知時間、非検知時間として記憶部56へ格納する(ステップS240)。老齢者は生活リズムが安定しており極端にばらつくことが少ないため、最も遅い受信時刻を検知時間、非検知時間としてもよいが、万が一、有床義歯20の収納または取り出しが遅くなってしまったときに誤報となってしまうため、余裕を加えるのが望ましい。
【0044】
このように、時間設定部54が、非検知時間または/および検知時間を設定することで、非検知時間を習慣的に有床義歯を外す時間とすることができ、検知時間を習慣的に有床義歯を装着する時間とすることができるので、より正確な時間を設定することができる。
【0045】
また、対象者が外出している際に、万が一に事故や災害にあって、対象者から身元が聞き出せない状況にあっても、有床義歯20を対象者の口腔から取り出して読取装置などで発信素子Tの情報を読み取ることができる。このとき、対象者(装着者)が活動できる状態であっても、有床義歯20は取り外しが簡単なので、有床義歯20に内蔵された発信素子Tからデータを読み取ることが容易である。また、有床義歯20を取り外した状態で、読取装置で読み取ることができるので、有床義歯20を読取装置に接近させた状態とすることができる。従って、発信素子Tからの電波が微弱でも読み取ることができる。従って、装着者がどのような状態であっても、装着者の個人を特定することが容易にできる。
【0046】
また、有床義歯20は、
図2に示すように、人工歯22aを識別するための凹凸を設けることなく人工歯22の色の違いで発信素子Tを内蔵しているか否かを判断することができるので、対象者となる装着者に違和感を与えない。
また、装着者が、会話ができない状況であっても、発信素子Tを内蔵している有床義歯20を装着しているか否かが一目で判断することができるので、有床義歯20を取り出し、発信素子Tを内蔵した人工歯22aを特定して読取装置に接近させた状態で読み取ることができ、個人を特定することができる。
更に、発信素子Tが内蔵されていることを示すために、人工歯22aを形成するための成形材に着色材を混合しただけなので、人工歯22に刻印を付与するより、簡単な工程で人工歯に識別するための着色を行うことができる。
【0047】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る安否確認システムを、図面に基づいて説明する。
なお、
図8においては、
図1と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
図8では、インターネットWと管理サーバ50とを図示していない。
【0048】
図8に示す安否確認システム11は、センサ30からの電波を起電力として有床義歯20xに内蔵した発信素子Tが送信する電波に十分な到達距離がある場合に、対象者の住居Hの各所にセンサ30を配置することで、対象者の住居内での活動を監視するものである。
【0049】
有床義歯20xは人工歯と人工歯を支持する義歯床とを備えた入れ歯であるため、
図9に示すように、義歯床に発信素子Tを内蔵させることができるだけなく、アンテナAを埋設することができる。従って、発信素子Tからの電波の到達距離を延ばすことができる。
図8に示す住居Hでは、玄関、トイレ、台所、居間、和室、洋室、廊下および容器60にセンサ30が設置されている。これらのセンサ30は、通信装置40と有線または無線により接続されている。
【0050】
対象者の住居H内での移動を細かく監視するときには、センサ30に他のセンサ30と識別するための情報を設定しておき、センサ30が発信素子Tからの信号を受信すると、発信素子Tの識別情報と共に、センサ30の識別情報を、通信装置40を介して管理サーバ50へ検知通知として送信する。センサ30の識別情報を管理サーバ50へ送信することで、対象者が住居H内でどのように移動しているかを管理サーバ50で把握することができる。また、容器60に設けられたセンサ30が識別できるので、実施の形態1で説明した管理サーバ50の制御も可能である。
【0051】
対象者が住居H内で移動していることだけがわかればよいのであれば、センサ30が検知した発信素子Tの識別情報のみを管理サーバ50へ検知通知として送信する。
このように、住居H内にセンサ30を設置することで、日中に活動する対象者は有床義歯20xを装着した状態なので、特別な習慣付けが不要である。従って、対象者が監視されているという意識を持つことなく、住居Hの中での活動する対象者をセンサ30により検知することができる。
【0052】
実施の形態1,2では、対象者が屋内にいる場合を例に説明したが、屋外でもセンサ30を適宜配置し、通信装置40と接続することで、対象者の安否を確認することができる。
【0053】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態に係る有床義歯について、図面に基づいて説明する。
実施の形態1,2では総義歯を例に説明したが、本実施の形態3では部分義歯を例に説明する。
【0054】
部分義歯とした有床義歯200は、人工歯201と、人工歯201を支持する義歯床202と、義歯床202を支持するバー203と、支台歯に係止するためのクラスプ204とを備えている。
図10から
図13に示すように、発信素子Tは、これら、人工歯201、義歯床202、バー203またはクラスプ204のいずれかに内蔵することができる。
【0055】
図10(A)および同図(B)において、発信素子Tを人工歯201に内蔵するときには、人工歯201を樹脂成形する際に、周囲面に凹部201aを設けておく。そして、この凹部201aに発信素子Tを挿入して、発信素子Tを樹脂で封止する。凹部201aは、人工歯201を成形した後に切削して形成してもよい。発信素子Tの樹脂封止は、凹部201aに発信素子Tを入れた状態で、熱硬化性樹脂を発信素子Tの表面および周囲面に塗布し、加熱して封止樹脂を硬化させる。発信素子Tの耐熱性に問題がなければ、人工歯201を樹脂成形するときに、発信素子Tを入れて成形してもよい。しかし、人工歯201の表面に凹部201aを設ける方が、電波が通過しやすいので望ましい。
凹部201aは、内側となる面に形成する方が美観の点で望ましい。また、封止樹脂が人工歯201と同じ色であり、人工歯201と封止樹脂との境界が視認できないのであれば、外側となる面に凹部201aを形成してもよい。
【0056】
図11(A)および同図(B)において、発信素子Tを義歯床202に内蔵するときには、義歯床202を樹脂成形する際に、歯肉部分に凹部202aを設けておく。そして、この凹部202aに発信素子Tを挿入して、発信素子Tを樹脂で封止する。凹部202aは、義歯床202を成形した後に切削して形成してもよい。発信素子Tの樹脂封止は、凹部202aに発信素子Tを入れた状態で、熱硬化性樹脂を発信素子Tの表面および周囲面に塗布し、加熱して封止樹脂を硬化させる。発信素子Tの耐熱性に問題がなければ、義歯床202を樹脂成形するときに、発信素子Tを入れて成形してもよい。しかし、義歯床202の表面に凹部202aを設ける方が、電波が通過しやすいので望ましい。
凹部202aは、内側となる面に形成する方が美観の観点から望ましい。また、封止樹脂が義歯床202と同じ色であり、義歯床202と封止樹脂との境界が視認できないのであれば、外側となる面に凹部202aを形成してもよい。
【0057】
図12(A)および同図(B)において、発信素子Tをバー203に内蔵するときには、バー203を鋳造する際に、発信素子Tが配置できる広さと深さが確保できる部分に凹部203aを設けておく。そして、この凹部203aに裏面に接着材を塗布した発信素子Tを挿入して固定する。凹部203aは、バー203を鋳造した後に切削して形成してもよい。発信素子Tの耐熱性に問題がなければ、バー203を鋳造するときに、発信素子Tを入れて形成してもよい。しかし、バー203が金属製であるため、発信素子Tからの電波が通過できない可能性があるので、バー203の表面に凹部203aを設ける方が望ましい。
【0058】
図13(A)および同図(B)において、発信素子Tをクラスプ204に内蔵するときには、クラスプ204を鋳造する際に、支台歯に係止する先端部より幅が広い基端部に凹部204aを設けておく。そして、この凹部204aに裏面に接着材を塗布した発信素子Tを挿入して固定する。凹部204aは、クラスプ204を鋳造した後に切削して形成してもよい。発信素子Tの耐熱性に問題がなければ、クラスプ204を鋳造するときに、発信素子Tを入れて形成してもよい。しかし、クラスプ204が金属製であるため、発信素子Tからの電波が通過できない可能性があるので、クラスプ204の表面に凹部204aを設ける方が望ましい。
【0059】
このように、部分義歯とした有床義歯であっても、発信素子Tを、部分義歯を構成する人工歯201、義歯床202、バー203またはクラスプ204に内蔵させることができる。なお、
図10から
図13においては、それぞれの構成部材のいずれかに発信素子Tが内蔵されているが、いずれか一つまたはその組み合わせ、または全部に発信素子Tを内蔵させることができる。また、発信素子Tを、複数の人工歯201に内蔵させたり、義歯床202の左右両方の歯肉部分に内蔵させたりすることもできる。複数の発信素子Tを内蔵させるときには、情報が同じ発信素子T、または情報が異なる発信素子Tを内蔵させることができる。
【0060】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態に係る有床義歯について、図面に基づいて説明する。
実施の形態3では、情報格納体として無線通信より情報が読み取れる発信素子を部分義歯に内蔵させていたが、本実施の形態4では光学的に情報が読み取られる情報格納体を例に説明する。なお、
図16においては、
図10〜
図13と同じ構成のものは同符号を付してせつを省略する。
【0061】
図14(A)から同図(C)に示す本実施の形態4に係る情報格納体M1〜M3(以下、総称して情報格納体Mと記載する。)には、情報の担持体として板体Pに各種の光学的読取情報が表記されたものである。情報は、発信素子Tと同様に、個人を特定するための識別情報(ID情報)と、氏名、住所、生年月日、性別、血液型、治療に掛かった歯科院を特定する病院名や病院を識別するコードなどの個人情報、容量が十分であれば病歴などが担持されている。
【0062】
図14(A)では、板体Pに一次元コードとしてバーコードが表記されている。
図14(B)では、板体Pにニ次元コードとしてQRコード(登録商標)が表記されている。
図14(C)では、板体Pにドットコードが表記されている。板体Pは、金属や樹脂、セラミックとすることができる。これらの光学的読取情報は、印刷、刻印とすることができる。
【0063】
バーコードは縞状に表記されたそれぞれの線幅によって情報を示すものである。バーコードは情報読取装置として、コンビニやスーパーなどで使用されているバーコードリーダーにより読み取ることができる。バーコードでは、情報として多くは担持できないので、ID情報のみでもよい。
【0064】
QRコードは、矩形状のセルを縦列および横列に二次元的に並べたものである。QRコードは、携帯電話機などでも読めるが、QRコードリーダ、QRコードスキャナ等と称されて販売されている情報読取装置が使用できる。
【0065】
ここで、ドットコードについて
図15に基づいて説明する。ドットコードは、基準となるキードットと、このキードットを基準として一辺が2mmの正方形に、格子ドットと、情報を示す16個の情報ドットが含まれている。この情報ドットにより48bitの情報を板体Pに担持させることができる。ドットコードは、例えば、「Grid Onput(登録商標)」とすることができる。このドットコードをカーボンインクで印刷すると、カーボンインクは赤外線を吸収するため、情報読取装置として赤外線カメラにより撮像することで、ドットを黒色で読み取ることができる。しかし、板体Pにはドットコードのみが表記されることからドットコードを非カーボンインクにより印刷して可視光カメラにより撮像してもよい。
【0066】
板体Pに光学的読取情報を担持させた
図14(A)から同図(C)のいずれかの情報格納体Mは、
図16に示すように、人工歯201、義歯床202と、バー203と、クラスプ204に内蔵させることができる。
これは、実施の形態3において、発信素子を例に説明したように、各パーツの凹部201a〜204aにそれぞれ情報格納体Mを入れ、樹脂にて情報格納体Mを封止したり、情報格納体Mの裏面に接着材を塗布して凹部201a〜204aに固定したりすることで、情報格納体Mを収容することができる。
【0067】
この場合、封止樹脂は、情報格納体Mが外側から読み取れる必要があるため、硬化した際に透明樹脂もしくは読取光を透過させる樹脂とする。
【0068】
光学的読取情報を板体Pに担持させた情報格納体Mは、発信素子より記憶容量が劣るものの、有床義歯200に情報格納体Mを内蔵させているため、容易に取り出して個人を特定することができる。また、情報格納体Mは、半導体である発信素子と異なり、故障せず、高い耐熱性を有しているため、情報格納体Mの封止の際に高温により情報が破壊されることがない。また、封止樹脂の表面が汚染され、読取りできなくなっても、封止樹脂の表面を洗浄すればよいので、読取り作業の回復が容易である。
【0069】
情報格納体Mを樹脂製である人工歯201または義歯床202に内蔵させた場合には、情報格納体Mが樹脂封止されるので耐久性を高くすることができる。また、情報格納体Mをバー203またはクラスプ204に内蔵させた場合には、情報格納体Mの裏面の接着材により内蔵させ、おもて面は露出させた状態なので、封止樹脂が無い分、読取り精度が高い。
【0070】
情報格納体Mを有床義歯200に内蔵させるときに、それぞれの構成部材(人工歯201,義歯床202,バー203,クラスプ204)のいずれかに内蔵されたり、組み合わせたり、または全部に内蔵させたりすることができる。また、情報格納体Mを、複数の人工歯201に内蔵させたり、義歯床202の左右両方の歯肉部分に内蔵させたりすることもできる。複数の情報格納体Mを内蔵させるときには、情報が同じ情報格納体M、または情報が異なる情報格納体Mを内蔵させることができる。
【0071】
このようにして有床義歯に内蔵された情報格納体Mが担持する情報を読取装置にて読み取ることで、対象者(装着者)が活動できる状態であっても、有床義歯200は取り外しが簡単なので、有床義歯200に内蔵された情報格納体Mから情報を読み取ることが容易である。従って、装着者がどのような状態であっても、装着者の個人を特定することが容易にできる。
なお、実施の形態4においては、部分義歯を例に説明したが、情報格納体Mを全部床義歯の人工歯や義歯床に内蔵するようにしてもよい。