【文献】
2005(平成17)年度日本水産学会大会(日本農学大会水産部会)講演要旨集,2005年 4月 1日,p.290
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ウナギの非可食部分、すなわち主に骨部分及び頭部分より、安価に高効率でコラーゲンを抽出すること、及び純度の高いウナギ由来のコラーゲン粉末を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、ウナギの非可食部分から抽出したコラーゲンを被覆したコラーゲン被覆米を提供することである。
さらに、本発明の他の目的は、ウナギの非可食部分から分離したカルシウム粉末を米と混合して、コラーゲンおよびカルシウム含有したコラーゲン被覆米を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記課題について鋭意検討し本発明を完成させた。
すなわち、本発明者は以下の特徴を有する。
本発明のコラーゲン被覆米は、
(1)ウナギ非可食部分と水を加熱すると共に撹拌し粉砕する工程;
(2)前記(1)の工程の温度よりも冷却した後、
タンパク質分解酵素を添加し酵素反応させる工程;
(3)前記(2)の工程の温度よりも加熱して酵素反応を停止させる工程;
(4)前記(3)の液体をフィルターでろ過してろ液と固形物を分離する工程;
(5)前記ろ液をコラーゲン成分と脂質とに分離する工程。
を経てウナギ由来コラーゲンを抽出し、
さらに、
前記(5)で分離されたコラーゲン成分と米とを混合し
、米表面にコラーゲン成分を被覆した後に乾燥させる工程;
を有する。
また、
前記(4)で分離された固形物を乾燥し粉砕して得たカルシウム粉末を、
前記コラーゲン成分及びおよび米との混合中に添加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ウナギの主に骨部分及び頭部分より、安価に高効率でコラーゲンを抽出することが可能である。また、抽出したコラーゲンの有効な使用方法として、コラーゲン粉末や、コラーゲン被覆米の製造方法を開示する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明は下記に限定されるものではない。
本発明の工程を有するウナギ由来コラーゲンは、以下の行程を有する。
(1)ウナギの非可食部分と水を加熱すると共に撹拌し粉砕する工程;
(2)前記(1)の工程の温度よりも冷却した後、酵素を添加し酵素反応させる工程;
(3)前記(2)の工程の温度よりも加熱して酵素反応を停止させる工程;
(4)前記(3)の液体をフィルターでろ過してろ液と固形物を分離する工程;
(5)上記ろ液をコラーゲン成分と脂質とに分離する工程。
【0009】
コラーゲンは、生体蛋白の主要な構成成分であり、殆んど全ての動物の体内に含有されている。一般的には、牛皮、豚皮、鳥皮、魚皮など、コラーゲン含有量が多い部位から煮沸抽出するのが一般的である。
本発明において、原料とするウナギは、一般的に食用に供されるウナギであり、ウナギ科 Anguillidae はウナギ属 Anguilla に属する種類を使用することができる。例えば、オオウナギ、ヨーロッパウナギ、アメリカウナギを使用することができる。また、その他、上記の種類には属さないが、一般的にウナギと呼ばれている種類、例えば、フウセンウナギ、デンキウナギ、タウナギ、ヤツメウナギ、ヌタウナギ等を使用することも可能である。
【0010】
本発明は、上記の原料において非可食部分のみを使用する。例えば、ウナギの蒲焼きを調理する際には、頭部、骨部、等の非可食部分は通常廃棄処分される。また、通常、可食部分よりも上記非可食部分の方がコラーゲン含有率が高い。そのため、本発明においては、従来廃棄されていた原料より高効率でコラーゲン抽出が可能となる。
上記非可食部分は、調理過程で食用に供される身の部分を取り除いたものであるが、当然、骨部分や頭部分に身が付いた状態でも差し支えない。また、このような非可食部分は例として骨や頭部が挙げられるが、これに限定されるものではなく、例えば、内臓、鱗、鰭、皮、血液、等が含まれていても構わない。
なお、ウナギ非可食部分が有する臭気成分を除去するため、予め作製した食塩水(例えば1〜10%程度の濃度)に浸漬処理し、アンモニアやトリメチルアミン等を食塩水中に溶出させることも好ましい。
【0011】
このようなウナギ非可食部分(以下、単に非可食部分、あるいは原料という)を、簡単に水で洗浄し、または洗浄無しで、水と共に容器に投入し加熱する。水の量は、例えばウナギ非可食部分の2〜4倍の重量とすることが好ましい。例えば、ウナギの頭部、骨部等の合わせて50kgを、水100〜200kgに投入し加熱する。
上記加熱処理は、原料を軟化させ、次工程である粉砕処理を容易にすることを目的とするものである。
【0012】
上記加熱段階において、ウナギ非可食部分は、生の状態でも良いが、冷凍状態であっても構わない。
ウナギ非可食部分を水中で加熱するにあたって、加熱手段としては煮沸等の一般的な加熱手段で良い。本発明において、ウナギ非可食部分が冷凍されている場合には、蒸気加熱(スチーム加熱)を行えば、急速解凍によりウナギ非可食部分の変質を抑えることができるため好ましい。
ウナギ非可食部分が冷凍状態の場合、この段階における加熱温度及び加熱時間は、ウナギ非可食部分が解凍できれば特に限定されない。例えば、80〜100℃で30〜120分間加熱した場合、全体的に解凍状態となるので好ましい。
ウナギ非可食部分が冷凍状態でない場合でも、同様に80〜100℃で30〜120分間程度加熱処理することが原料に脆性を与える観点では好ましい。
100℃以上、あるいは120分間以上の加熱処理を施した場合、原料に含有されるコラーゲンが変性する可能性があるため好ましくない。
【0013】
上記原料は、加熱すると共に撹拌粉砕する。粉砕は、原料が解凍した状態で行っても良いし、冷凍状態のままでも良い。加熱を開始すると同時に、原料が冷凍状態のまま撹拌粉砕した方が、時間的に早く解凍されるので時間短縮となって好ましい。
撹拌粉砕の手段としては、通常使用される手段を使用することができるが、例えばボールミル、エッジミル、ジェットミル等を使用することができる。
この段階で原料を大まかに粉砕しておくことにより、次工程の酵素反応において反応時間を短縮することが可能となる。
粉砕は2段階に分けて行っても良い。例えば、第1粉砕処理として、汎用のミキサーを用いて粗粉砕(粒径1〜2mm程度)を行い、続いて第2粉砕処理として、専用の粉砕機(例えば、オリエント粉砕機株式会社製を用いて更に細かい微粉砕(粒径200μm以下)を行うこととしても良い。
【0014】
その後、粉砕した原料を酵素を用いて溶解する。原料の溶解に使用する酵素としては、通常使用されるタンパク質を分解するための酵素(ペプチド結合加水分解酵素)であれば特に限定されず、例えば、プロテアーゼを含む酵素が挙げられる。本発明においてプロテアーゼを含む酵素は、動物系たんぱく質を分解する酵素であり、プロテアーゼ類を含む酵素であれば特に制限はなく、プロテアーゼとしては、例えば、パパイン、ブロメライン、ファイシン、エンドプロティナーゼ、エンドペプチダーゼなどが挙げられる。
酵素反応においては、粉砕した原料の温度を、使用する酵素に適した温度に調整する必要がある。例えば30℃〜65℃等の温度において、使用する酵素の至適温度に制御した状態で、所定の時間(例えば30〜90分間)維持し、原料の溶解・分解反応を進行させる。
粉砕した原料は、酵素反応に最適なPHに調整されていることが好ましいが、本発明においては例えばpH6前後に調整することが好ましい。
【0015】
次いで、酵素反応を停止させるために、原料の液体を加熱する。加熱温度及び加熱時間は、使用した酵素が失活する温度及び時間を適宜選択することができるが、例えば、90℃以上で20〜40分間維持することにより、酵素が失活し、原料の分解反応が停止する。
続いて、原料の溶液をフィルターでろ過し、上記酵素反応で未溶解の固形物と、ろ液と、を分離する。この工程において、分離された固形物は主にウナギ骨部分である。未溶解の骨部分は、必要に応じて後の工程で乾燥粉砕してカルシウム原料とし、コラーゲン粉末に添加することも可能である。
【0016】
ろ過したろ液から、コラーゲン成分及び脂質を分離する。分離方法としては、例えば遠心分離器により分離することが可能である。あるいは、ろ液を静置して比重により上に分離した脂質のみを除去し、下に沈殿するコラーゲン成分を回収することも可能である。
得られたコラーゲン成分は、そのまま保存する、濃縮する、乾燥して粉末にする、等が可能である。
【0017】
以下に、上記コラーゲン成分を使用したウナギ由来コラーゲン粉末の製造方法を説明する。
得られたコラーゲン成分の粘度を調整し粉末化するために、デキストリンを添加する。デキストリンは通常液体の粉末化に際して使用される量を添加すれば良い。例えば、重量比で、コラーゲン成分:デキストリン=1:2〜3となるように添加することが可能である。
その後、スプレードライ装置などを使用して粉末化することにより、本発明のウナギ由来コラーゲン粉末を得ることができる。
【0018】
また、本発明におけるコラーゲン被覆米の製造方法は、米と、上記得られたコラーゲン成分とを混合し、米表面にコラーゲン成分を均一にコーティングした後に、米をオーブン等の乾燥手段により乾燥させる。
上記実施形態において使用される米としては通常の食用に供される米の種類、すなわち、うるち米の玄米、精白米、等を挙げることができる。あるいは、黒米、赤米、もち米、等も使用することができる。
【0019】
上記コラーゲン被覆米の製造工程において、カルシウム粉末を同時に混合し、カルシウム含有コラーゲン被覆米としてもよい。
使用されるカルシウム粉末は通常食品に使用されるカルシウム粉末であれば特に制限されないが、コラーゲン成分を製造する際に分離された固形物であるウナギ骨を回収・乾燥・粉砕して、カルシウム粉末として使用することも有用である。
カルシウム含有コラーゲン被覆米は、米と、コラーゲン成分と、カルシウム粉末とを混合し、米表面にコラーゲン成分及びカルシウム粉末を均一にコーティングした後に、米をオーブン等の乾燥手段により乾燥させて得ることができる。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を図面を用いて詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の第1の実施形態を示すフローチャートである。
図1に示すように、ウナギ由来コラーゲン粉末は以下の手順で製造することが可能である。
まず、タンク中に冷凍状態のうなぎの頭(50kg)+水(150kg)、合計200kgを投入し、90℃で30分スチーム加熱するとともに、タンクのお湯の中で回転羽根によりうなぎの頭を粉砕した。粉砕は、最初は周速50m/秒で10秒間粗粉砕し、その後200メッシュ程度となるまで粉砕を継続した。
次に、粉砕した液体全体を58℃に冷却し、分解酵素としてプロテアーゼを添加し、2時間攪拌しながら酵素反応させた。
その後、液体を90℃で30分加熱し、酵素反応を停止した。この段階で、液体中の固形物はほぼ溶解し、どろどろの状態となった。
次いで、液体をフィルターでろ過し、溶解しなかった固形物を分離した。得られる固形物は主に骨である。固形物を除去した後のろ液の量は約260リットル、濃度計で計測したブリックスは約2%であった。
得られたろ液を遠心分離器にかけ、コラーゲン成分(固形)と脂質を分離した。
ろ液260リットルからのコラーゲンの取得量は、ブリックス分=2%で計算した場合、固形分で5.2kgと計算することができる。
上記コラーゲン成分(固形)にデキストリン10.4kgを添加し混合した。
その後、スプレードライヤ装置で粉末化(SD粉末)し、うなぎ頭由来のコラーゲン粉末を得た。得られた粉末量は約10kgであった。
【0022】
図2は、本発明の第2の実施形態を示すフローチャートである(
図1のBからのスタート)。
図2に示すように、コラーゲン被覆米の製造方法は以下の手順で製造することが可能である。
図1において、ろ液からコラーゲン成分と脂質を分離した後に得られたコラーゲン成分(固形)5.2kgを、米52kgに混合撹拌し、米粒の表面にコラーゲンを被覆する。その後、オーブンにて低温乾燥しコラーゲン被覆米を得た。得られたコラーゲン被覆米は約55kgであった。
【0023】
図3は、本発明の第3の実施形態を示すフローチャートである(
図1のB及びCからのスタート)。
図3に示すように、カルシウム含有コラーゲン被覆米の製造方法は以下の手順で製造することが可能である。
酵素反応後に未溶解であった固形物(主に骨)を回収し、乾燥粉砕し、カルシウム粉末とした。得られたカルシウム粉末は約2kgであった。
次いで、コラーゲン成分(固形)5.2kg、カルシウム粉末2kg、米52kgを混合撹拌し、米粒の表面にカルシウム及びコラーゲンを被覆した。その後、オーブンにて低温乾燥しカルシウム含有コラーゲン被覆米を得た。得られたカルシウム含有コラーゲン被覆米は約56kgであった。
これに水を加え炊きあげ蒸らし、約110kgのカルシウム及びコラーゲンを含有したご飯を得た。
【0024】
なお、本発明において得られたうなぎ頭由来のコラーゲン粉末の成分を下記に示す。
【表1】