【実施例】
【0016】
図1〜
図27に実施例を示す。
図1,
図2は電気化学センサ2(以下「ガスセンサ2」)の構造を示し、4は金属容器で、水6を収容し、8はMEAである。10は金属の底板、12は金属の拡散制御板、16は金属のキャップ、11,14,18,19は開口で、この内、開口14はMEA8への被検出雰囲気の拡散を制限する。キャップ16には活性炭、シリカゲル、ゼオライト等のフィルタ材20が収容され、22はリング状のガスケットでキャップ16と金属容器4とを気密に絶縁する。なおMEA8の外周とガスケット22の内周との間には隙間が有る。ガスセンサ2の構造、材料は公知であり、水6はなくても良く、MEA8の取り付け構造は任意である。
【0017】
図2に示すように、MEA8は液体電解質を保持した膜状の微孔質セパレータ24と、その両面の検知極S及び対極C、並びにカーボンシート等のガス拡散膜25,26から成る。実施例では液体電解質は芳香族スルホン酸のポリマーであるが、硫酸、KOH水溶液、K2CO3水溶液等、任意である。なおガス拡散膜25,26は無くても良く、また電極S,Cとセパレータ24との間に、固体高分子プロトン導電体膜、固体高分子アニオン導電体膜等を設けても良い。検知極S、対極Cは、Ptを担持したカーボンブラックにプロトン導電性の高分子を添加したもので、材質は任意である。
【0018】
ガスセンサ2は、対極から検知極へ向けて直流電流を加えることにより、CO感度を増感すると共に、H2感度の向き、即ちH2中で流れる電流あるいは起電力の向きを反転させたものである。この処理の効果は、
図4〜
図27に示す。
【0019】
図3はガス検出装置を示し、30は電池等の直流電源で、抵抗R1,R2等により1V等の定電位を取り出し、ガスセンサ2の対極Cの電位を定電位に保つ。検知極S側に増幅回路A1を接続し、CO,H2等によりガスセンサ2を流れる検知電流を増幅して電圧信号に変換し、算術論理回路32により、電圧信号の正負と大小とによりCOかH2かを識別すると共にその濃度を求める。なお対極Cを増幅回路A1及び算術論理回路32側へ接続しても良い。
【0020】
図4〜
図27に、ガスセンサ2への直流電圧及び直流電流の影響を示す。実験では各条件毎に3個のセンサを用いたが、
図4〜
図19の波形図では各1個のセンサの信号を示す。また対極C側を+、検知極S側を−として加えた直流電圧と直流電流の極性を示し、図中の300等の数字はガス濃度を示し、縦軸は増幅回路A1の出力を示す。
図4は直流を加える前のCOへのレスポンスを、
図5は直流を加える前のH2へのレスポンスを示し、これらはガスセンサ2のばらつきを示している。
図6は、-2V〜+2Vの直流電圧を100msec×1回加えた後のCOへのレスポンスを示し、直流電圧の影響は小さい。
図7は、-2V〜+2Vの直流電圧を100msec×5回加えた後のCOへのレスポンスを示し、+の直流電圧を加えるとCO感度はわずかに増加ないしわずかに減少し、−の直流電圧を加えるとCO感度は減少する。
図8は、-2V〜+2Vの直流電圧を100msec×10回加えた後のCOへのレスポンスを示し、この例では直流電圧の影響は大きくはない。
【0021】
図9は、-2V〜+2Vの直流電圧を100msec×1回加えた後のH2へのレスポンスを示し、直流電圧の影響は小さい。
図10は、-2V〜+2Vの直流電圧を100msec×5回加えた後のH2へのレスポンスを示し、+1.5V以上の直流電圧を加えるとH2感度は極性が反転し、対極Cから検知極Sへ向けて検知電流が流れるようになる。
図11は、-2V〜+2Vの直流電圧を100msec×10回加えた後のH2へのレスポンスを示し、+1.5V以上の直流電圧を加えると、対極Cから検知極Sへ向けて検知電流が流れるようになる。
【0022】
図12は、-500mA〜+500mAの直流電流を100msec×1回加えた後のCOへのレスポンスを示し、+の直流電流を加えるとCO感度が増し、-の直流電流を加えるとCO感度が減少する。
図13は、-500mA〜+500mAの直流電流を100msec×5回加えた後のCOへのレスポンスを示し、+の直流電流を加えるとCO感度が著しく増し、-の直流電流を加えるとCO感度は著しく減少する。
図14は、-500mA〜+500mAの直流電流を100msec×10回加えた後のCOへのレスポンスを示し、+の直流電流を加えるとCO感度が著しく増し、-の直流電流を加えるとCO感度が著しく減少する。
【0023】
図15は、-500mA〜+500mAの直流電流を100msec×1回加えた後のH2へのレスポンスを示し、+300mAの直流電流を加えるとH2感度は負になり、検知極Sから対極Cへ向けて検知電流が流れるようになる。
図16は、-500mA〜+500mAの直流電流を100msec×5回加えた後のH2へのレスポンスを示し、+100mA以上の直流電流を加えると、H2に対して対極Cから検知極Sへ向けて検知電流が流れるようになる。
図17は、-500mA〜+500mAの直流電流を100msec×10回加えた後のH2へのレスポンスを示し、+100mA以上の直流電流を加えると、H2に対して対極Cから検知極Sへ向けて検知電流が流れるようになる。
【0024】
図18は+300mAの直流電流を空気中で加えている際の電流と電圧の波形を示し,
図19は-300mAの直流電流を空気中で加えている際の電流と電圧の波形を示す。ガスセンサ2の抵抗成分は10〜20Ω程度で、抵抗には極性があり、抵抗成分の他に容量成分も含まれている。
【0025】
図20,
図21は直流電圧の印加前後でのCO300ppmへの感度の変化を示し、
図20では100msec単位で印加し、
図21では1sec印加した。
図22,
図23は直流電圧の印加前後でのH2 300ppmへの感度の変化を示し、
図22では100msec単位で印加し、
図23では1sec印加した。+の直流電圧を加えると、CO感度が増加してH2感度は負になり、-の直流電圧を加えると、CO感度が減少しH2感度が増加する。
【0026】
図24,
図25は直流電流の印加前後でのCO300ppmへの感度の変化を示し、
図24では100msec単位で印加し、
図25では1sec印加した。
図26,
図27は直流電流の印加前後でのH2 300ppmへの感度の変化を示し、
図26では100msec単位で印加し、
図27では1sec印加した。+の直流電流を加えると、CO感度が増加してH2感度は負になり、-の直流電流を加えると、CO感度が減少しH2感度が増加する。
【0027】
実施例ではセパレータ24に液体電解質を支持させたが、セパレータ24に
代えて、固体高分子プロトン導電体を用いても、同様の結果が得られた。直流電流あるいは直流電圧の値、印加時間、印加回数等はMEAの材質、サイズ等の種類に応じて最適値が有り、実施例に限定されるものではない。