(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5897404
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】ヘッドレスト
(51)【国際特許分類】
A47C 7/38 20060101AFI20160317BHJP
【FI】
A47C7/38
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-119523(P2012-119523)
(22)【出願日】2012年5月25日
(65)【公開番号】特開2013-244158(P2013-244158A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2014年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】100141221
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 和明
(74)【代理人】
【識別番号】100091764
【弁理士】
【氏名又は名称】窪谷 剛至
(74)【代理人】
【識別番号】100103366
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 礼至
(72)【発明者】
【氏名】佐野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】戸畑 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】吉賀 崇之
(72)【発明者】
【氏名】袖野 豊
【審査官】
望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−253335(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01527945(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/38
B60N 2/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後に移動調整可能なヘッドレストにおいて、
シートバックに固定されるステーと、
ステーに対して移動調整可能で底板を一体に有するヘッドレスト本体と、を備え、
前記ステーは、前記シートバックに取り付けられる左右一対の縦軸部と、前記各縦軸部の上部で前方に折り曲げられた延長軸部と、前記各延長軸部間を掛け渡す横軸部と、からなり、
前記ヘッドレスト本体の底板には、前後方向に延在して前記縦軸部が挿入される長穴が設けられ、前記長穴は、前記ヘッドレスト本体内のヘッドレスト移動機構収容部に連通し、
前記長穴の周縁には、前記延長軸部の全体を挟むように立設されて前後方向に延在する左右一対の立壁が設けられ、左右の前記立壁は、前記ヘッドレスト本体の底板の後側から延在する天壁によって掛け渡されていることを特徴とするヘッドレスト。
【請求項2】
前記ヘッドレスト本体が前記ステーに対して前後方向に移動可能とされ、前記天壁が前記
ヘッドレストの傾動に沿うように湾曲状に形成されたことを特徴とする請求項1記載のヘッドレスト
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックの頂部で前後に移動調整可能なヘッドレストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開2008−253335号公報がある。この公報に記載されたヘッドレストには、シートバックの頂部に装着されるステーを具備した移動ユニットが開示されている(上記公報の
図14参照)。この移動ユニットは、カバー部材内に収容されたヘッドレストフレームを有し、このヘッドレストフレームは、ヘッドレストフレームの移動を可能にする機構を介してステーの上部に連結されている。カバー部材内には、ヘッドレスト移動機構やヘッドレストフレームが収容され、カバー部材の下側の開口端は合成樹脂製の表皮止めカバー部材(底板)で閉鎖されている。この表皮止めカバー部材には、ステーが挿入される長穴が形成されると共に、この長穴の周囲を囲むように筒状部が内方に向けて立設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−253335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来のヘッドレストの表皮止めカバー部材には、筒状部が形成されてはいるが、ヘッドレストが後側に向かって移動すると、長穴を通して外からカバー部材内のヘッドレスト移動機構などの部品が見えてしまうので、見栄えが悪くなるといった問題点がある。
【0005】
本発明は、ヘッドレスト本体の底
板に設けられた長穴からカバー部材内の部品を見え難くしたヘッドレストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前後に移動調整可能なヘッドレストにおいて、
シートバックに固定されるステーと、
ステーに対して移動調整可能で底板を一体に有するヘッドレスト本体と、を備え、
前記ステーは、前記シートバックに取り付けられる左右一対の縦軸部と、前記各縦軸部の上部で前方に折り曲げられた延長軸部と、前記各延長軸部間を掛け渡す横軸部と、からなり、
前記ヘッドレスト本体の底
板には、前後方向に延在して前記縦軸部が挿入される長穴が設けられ、前記長穴は、前記ヘッドレスト本体内のヘッドレスト移動機構収容部に連通し、
前記長穴の周縁には、前記延長軸部の全体を挟むように立設されて前後方向に延在する左右一対の立壁が設けられ、左右の前記立壁は、前記ヘッドレスト本体
の底板の後側から延在する天壁によって掛け渡されていることを特徴とする。
【0007】
このヘッドレストにおいては、ヘッドレスト本体の底
板に設けられた長穴の周縁には、ステーの延長軸部の全体を挟むように立設されて前後方向に延在する左右一対の立壁が設けられているので、立壁によって、長穴からヘッドレスト本体内の部品を見え難くすること(中見え防止対策)ができる。しかも、左右の立壁の頂部は、ヘッドレスト本体の底
板の後側から延在する天壁によって掛け渡されているので、ヘッドレスト本体が後方に移動した場合でも、この天壁によって、長穴からヘッドレスト本体内の部品を見え難くすること(中見え防止対策)ができる。さらに、誤って長穴から指を入れても、ヘッドレスト本体内の部品に指が触れることを立壁及び天壁によって阻止すること(指入れ防止対策)ができる。また、誤って長穴から異物が入っても、ヘッドレスト本体内の部品に異物が混入することを立壁及び天壁によって阻止すること(異物混入防止対策)ができる。
前記ヘッドレスト本体を前記ステーに対して前後方向に移動可能で、前記天壁が前記ヘッドレストの傾動に沿うように湾曲状に形成することにより、ヘッドレスト本体の内部における天壁用スペースを狭小化でき、天壁を設けることによるヘッドレスト本体の大形化を阻止できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ヘッドレスト本体の底板に設けられた長穴からカバー部材内の部品を見え難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係るヘッドレストを適用したシートバックを示す側面図である。
【
図6】底板に設けられた被装壁を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るヘッドレストの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1に示されるように、ヘッドレストHRは、ステー2に対して前後方向に傾動することにより移動調整可能なヘッドレスト本体1と、ヘッドレスト本体1の底板から突出するステー2と、からなる。ステー2は、シートバックSBの頂部から抜き差しが可能であると共に、乗員の頭部の位置に合わせるように、シートバックSBに対して差し込み量を調整することができる。
【0012】
図2及び
図3に示されるように、ステー2は、シートバックSBの頂部に設けられた装填孔(不図示)内に差し込まれる左右一対の縦軸部2a,2bと、各縦軸部2a,2bの上部で前方に折り曲げられた延長軸部2c,2dと、各延長軸部2c,2d間を掛け渡す横軸部2eとからなる。
【0013】
ヘッドレスト本体1の移動は、ステー2を具備してなる移動ユニットPが利用されている。この移動ユニットPは、ヘッドレスト移動機構収容部Sを有し、このヘッドレスト移動機構収容部S内には、扁平なヘッドレストフレーム(不図示)やヘッドレスト移動機構(不図示)が収容されている。
【0014】
また、ヘッドレストフレームには、回転軸20が固定され、ステー2の横軸部2eにはブラケット21が固定され、このブラケット21は、ヘッドレストフレームに固定された回転軸20に軸着されている。そして、ヘッドレスト移動機構によって回転軸20を中心に移動ユニットPを移動させることができる。
【0015】
このヘッドレスト移動機構収容部Sは、カバー部材12で覆われ、カバー部材12の開口端は、合成樹脂製の底板13によって塞がれている。ヘッドレスト本体1において、カバー部材12は、パッド材11で覆われ、パッド材11は、表皮材14で覆われている。この表皮材14の開口端は、カバー部材12の底板13の周縁に止着されている。これによって、この底板13は、ヘッドレスト本体1の底板として利用されることになる。
【0016】
図4〜
図6に示されるように、ヘッドレスト本体1を構成するカバー部材12の底板13には、前後方向に延在してステー2の各縦軸部2a,2bが挿入される左右一対の長穴15が形成されている。左右一対の長穴15は、ヘッドレスト移動機構収容部Sに連通し、各長穴15の周縁には、ステー2の各延長軸部2c,2dの全体を挟むように
底板13に立設されて前後方向に延在する左右一対の立壁16a,16bが設けられている。そして、左右の立壁16a,16bは、ヘッドレストHRが傾動することにより、前後に移動する構造であるため、ヘッドレストHRの傾動に沿うように、底板13の後側から延在する湾曲状に形成された天壁16cによって掛け渡されている。
【0017】
立壁16a,16bは、長穴15の周縁の長辺に沿って後端から前端近傍まで延在する。天壁16cは、長穴15の周縁の後部側の短辺部から立壁16a,16bの途中まで延在する。よって、この天壁16cは、左右の立壁16a,16bの遊端に沿って、後側から途中まで延在することになる。そして、立壁16a,16bと天壁16cとで構成される被装壁16は、平板状の底板本体13aの内面に立設されると共に、断面U字状に形成されている。被装壁16の前部は、延長軸部2c,2dの前端を露出させるために開放され、被装壁16の後部は閉鎖されている。
【0018】
このヘッドレストHRにおいては、ヘッドレスト本体1の底板13に設けられた長穴15の周縁には、ステー2の延長軸部2c,2dの全体を挟むように立設されて前後方向に延在する左右一対の立壁16a,16bが設けられているので、立壁16a,16bによって、長穴15からヘッドレスト本体1内の部品(扁平なヘッドレストフレームや移動機構など)を見え難くすること(中見え防止対策)ができる。
【0019】
しかも、左右の立壁16a,16bは、ヘッドレスト本体1の底板13から延在する天壁16cによって掛け渡されているので、ヘッドレスト本体1が最も後方に移動した場合でも、この天壁16cによって、矢印B(
図2参照)方向から長穴15を通してヘッドレスト本体1内の部品を見え難くすること(中見え防止対策)ができる。さらに、誤って長穴15から指を入れても、ヘッドレスト本体1内の部品に指が触れることを立壁16a,16b及び天壁16cによって阻止すること(指入れ防止対策)ができる。また、誤って長穴15から異物が入っても、ヘッドレスト本体1内の部品に異物が混入することを立壁16a,16b及び天壁16cによって阻止すること(異物混入防止対策)ができる。
【0020】
そして、立壁16a,16bと天壁16cとで構成される被装壁16の前部は開放され、後部は閉鎖されているので、前後で形状が異なり、底板13の前後を特定し易く、これによって、誤組み防止や組立作業性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0021】
1…ヘッドレスト本体 2…ステー 2a,2b…縦軸部 2c,2d…延長軸部 2e…横軸部 13…底板 15…長穴 16…被装壁 16a,16b…立壁 16c…天壁 HR…ヘッドレスト P…移動ユニット S…ヘッドレスト移動機構収容部 SB…シートバック