特許第5897415号(P5897415)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5897415
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】磁気共鳴装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20160317BHJP
【FI】
   A61B5/05 311
   A61B5/05 355
   A61B5/05 374
【請求項の数】16
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2012-146767(P2012-146767)
(22)【出願日】2012年6月29日
(65)【公開番号】特開2014-8212(P2014-8212A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2014年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】300019238
【氏名又は名称】ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(72)【発明者】
【氏名】浅羽 佑介
(72)【発明者】
【氏名】荒井 謙
(72)【発明者】
【氏名】アギラー ジャネイロ
(72)【発明者】
【氏名】別宮 光洋
(72)【発明者】
【氏名】長沢 実保
【審査官】 亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−156096(JP,A)
【文献】 特開2006−175058(JP,A)
【文献】 特開2011−098031(JP,A)
【文献】 特開2011−036452(JP,A)
【文献】 特開2008−283994(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0210793(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体をスキャンするときに使用されるコイルエレメントの組合せを表すコイルモードを複数有し、複数のコイルモードの中からコイルモードを選択し、選択されたコイルモードを用いて、前記被検体のデータを取得するための所定のスキャンを実行する磁気共鳴装置であって、
前記複数のコイルモードを有するコイル装置と、
前記複数のコイルモードの中から、前記所定のスキャンを実行するときに使用されるコイルモードの候補を選択する選択手段と、
前記被検体を横切る複数の断面の各々に対して、周波数エンコード方向に勾配磁場を印加するが位相エンコード方向には勾配磁場を印加しない複数の第1のスキャンを実行するスキャン手段であって、前記複数の断面の各々において、前記複数の第1のスキャンの周波数エンコード方向が互いに異なる方向に設定されるように、前記複数の第1のスキャンを実行するスキャン手段と、
を有し、
前記複数の断面の各々の磁気共鳴信号を受信するコイルモードとして、前記選択手段により選択されたコイルモードの候補を用いて、前記複数の第1のスキャンを実行する磁気共鳴装置であり、
前記複数の第1のスキャンを実行することにより得られたデータに基づいて、前記複数の断面の各々に対して、前記位相エンコード方向に投影されたデータを表す複数の第1のプロジェクションデータを作成し、前記複数の断面の各々に対して得られた前記複数の第1のプロジェクションデータを用いて、前記選択されたコイルモードの候補の感度マップを作成する感度マップ作成手段を有する、磁気共鳴装置。
【請求項2】
前記複数の断面の各々から磁気共鳴信号を受信するRFコイルを有するマグネットを備える、請求項1に記載の磁気共鳴装置。
【請求項3】
前記スキャン手段は、
前記複数の断面の各々に対して、周波数エンコード方向に勾配磁場を印加するが位相エンコード方向には勾配磁場を印加しない複数の第2のスキャンを実行し、
前記複数の断面の各々において、前記複数の第2のスキャンの周波数エンコード方向は、互いに異なる方向に設定されている、請求項2に記載の磁気共鳴装置。
【請求項4】
前記磁気共鳴装置は、前記RFコイルを用いて前記複数の第2のスキャンを実行し、
前記感度マップ作成手段は、
前記複数の第2のスキャンを実行することにより得られたデータに基づいて、前記複数の断面の各々に対して、前記位相エンコード方向に投影されたデータを表す複数の第2のプロジェクションデータを作成し、前記複数の断面の各々に対して得られた前記複数の第1のプロジェクションデータと、前記複数の断面の各々に対して得られた前記複数の第2のプロジェクションデータとを用いて、前記感度マップを作成する、請求項3に記載の磁気共鳴装置。
【請求項5】
前記感度マップ作成手段は、
前記複数の断面の各々に対して得られた前記複数の第1のプロジェクションデータと、前記複数の断面の各々に対して得られた前記複数の第2のプロジェクションデータとに基づいて、前記複数の断面の各々に対して複数の第3のプロジェクションデータを求め、前記複数の断面の各々に対して得られた前記複数の第3のプロジェクションデータを用いて、前記感度マップを作成する、請求項4に記載の磁気共鳴装置。
【請求項6】
前記感度マップ作成手段は、
前記第1のプロジェクションデータの信号値を前記第2のプロジェクションデータの信号値で割ることにより、前記第3のプロジェクションデータを求める、請求項5に記載の磁気共鳴装置。
【請求項7】
前記複数の断面には、サジタル面、アキシャル面、およびコロナル面が含まれており、
前記感度マップ作成手段は、
前記サジタル面に対して得られた前記複数の第3のプロジェクションデータと、前記アキシャル面に対して得られた前記複数の第3のプロジェクションデータと、前記コロナル面に対して得られた前記複数の第3のプロジェクションデータとに基づいて、前記感度マップを求める、請求項5又は6に記載の磁気共鳴装置。
【請求項8】
前記サジタル面に対して実行される前記複数の第1のスキャンの周波数エンコード方向は、SI方向およびAP方向に設定され、
前記アキシャル面に対して実行される前記複数の第1のスキャンの周波数エンコード方向は、AP方向およびRL方向に設定され、
前記コロナル面に対して実行される前記複数の第1のスキャンの周波数エンコード方向は、RL方向およびSI方向に設定されており、
前記サジタル面に対して実行される前記複数の第2のスキャンの周波数エンコード方向は、SI方向およびAP方向に設定され、
前記アキシャル面に対して実行される前記複数の第2のスキャンの周波数エンコード方向は、AP方向およびRL方向に設定され、
前記コロナル面に対して実行される前記複数の第2のスキャンの周波数エンコード方向は、RL方向およびSI方向に設定されている、請求項7に記載の磁気共鳴装置。
【請求項9】
前記複数のコイルモードの各々の所定方向の感度を表す感度データを作成するデータ作成手段を有し、
前記選択手段は、
前記感度データに基づいて、前記複数のコイルモードの中から、前記コイルモードの候補を選択する、請求項1〜のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴装置。
【請求項10】
前記選択手段は、
前記感度データの閾値に基づいて、前記複数のコイルモードの中から、前記コイルモードの候補を選択する、請求項に記載の磁気共鳴装置。
【請求項11】
前記感度マップを表示する表示部を有する、請求項1〜10のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴装置。
【請求項12】
前記感度マップに基づいて、前記所定のスキャンの撮像視野内における感度を表す感度スコアを算出する感度スコア算出手段を有する、請求項11に記載の磁気共鳴装置。
【請求項13】
前記選択手段は、前記コイルモードの候補を複数選択し、
前記感度マップ作成手段は、前記コイルモードの候補の各々の感度マップを作成し、
前記感度スコア算出手段は、前記コイルモードの候補の各々の感度マップに対して、前記感度スコアを算出し、
前記表示部は、感度スコアが最も高い感度マップを表示する、請求項12に記載の磁気共鳴装置。
【請求項14】
前記所定のスキャンは、
スライス位置を設定するときに使用されるローカライザ画像データを取得するためのローカライザスキャンであり、
前記表示部は、
前記感度マップと前記ローカライザ画像データとを重ねて表示する、請求項11〜13のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴装置。
【請求項15】
前記所定のスキャンは、
前記被検体の撮影部位の画像データを取得するための本スキャンであり、
前記表示部は、
前記感度マップと前記画像データとを重ねて表示する、請求項11〜13のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴装置。
【請求項16】
被検体をスキャンするときに使用されるコイルエレメントの組合せを表すコイルモードを複数有し、複数のコイルモードの中からコイルモードを選択し、選択されたコイルモードを用いて、前記被検体のデータを取得するための所定のスキャンを実行する磁気共鳴装置であって、前記複数のコイルモードを有するコイル装置と、前記複数のコイルモードの中から、前記所定のスキャンを実行するときに使用されるコイルモードの候補を選択する選択手段と、前記被検体を横切る複数の断面の各々に対して、周波数エンコード方向に勾配磁場を印加するが位相エンコード方向には勾配磁場を印加しない複数の第1のスキャンを実行するスキャン手段であって、前記複数の断面の各々において、前記複数の第1のスキャンの周波数エンコード方向が互いに異なる方向に設定されるように、前記複数の第1のスキャンを実行するスキャン手段とを有し、前記複数の断面の各々の磁気共鳴信号を受信するコイルモードとして、前記選択手段により選択されたコイルモードの候補を用いて、前記複数の第1のスキャンを実行する磁気共鳴装置のプログラムであって、
前記複数の第1のスキャンを実行することにより得られたデータに基づいて、前記複数の断面の各々に対して、前記位相エンコード方向に投影されたデータを表す複数の第1のプロジェクションデータを作成し、前記複数の断面の各々に対して得られた前記複数の第1のプロジェクションデータを用いて、前記選択されたコイルモードの候補の感度マップを作成する感度マップ作成処理を計算機に実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルモードを選択する磁気共鳴装置、およびその磁気共鳴装置に適用されるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検体をスキャンするときに使用されるコイルエレメントの組合せを自動的に認識する技術が知られている(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−156096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コイルエレメントの組合せを自動的に認識する一般的な技術は、コイルの設置位置が固定されている。したがって、使用できるコイルが限定されるなどの欠点がある。
【0005】
一方、磁気共鳴装置には、アンテリアコイル(Anterior coil)の位置をinteli touchと呼ばれる位置決めセンサーを用いて検出するものが知られているが、この磁気共鳴装置では、オペレータが位置決めセンサーを操作する必要があり、オペレータの作業負担が増えるという問題がある。
【0006】
また、アンテリアコイルは、変形できるように柔らかい素材で作られていることが多く、被検体の体形によって、アンテリアコイルの形状が変化する。アンテリアコイルの形状が変形すると、それに応じて感度も変化するので、最適なコイルを選択することが難しくなるという問題がある。
【0007】
更に、撮影時間の短縮という観点から、撮影に適したコイルエレメントの組合せを短時間で選択できることも重要となる。
【0008】
このような理由から、オペレータにできるだけ負担をかけずに、被検体のスキャンに適したコイルエレメントの組合せを短時間で選択できることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、複数のコイルエレメントの中から、被検体をスキャンするときに使用されるコイルエレメントの組合せを表すコイルモードを選択し、選択されたコイルモードを用いて、前記被検体のデータを取得するための所定のスキャンを実行する磁気共鳴装置であって、
n個のコイルモードを有するコイル装置と、
前記n個のコイルモードの中から、前記所定のスキャンを実行するときに使用されるコイルモードの候補を選択する選択手段と、
前記コイルモードの候補を用いて、前記被検体のデータを取得するための第1のスキャンを実行するスキャン手段と、
前記第1のスキャンにより得られたデータに基づいて、前記コイルモードの候補の感度マップを作成する感度マップ作成手段と、を有する磁気共鳴装置である。
【0010】
本発明の第2の態様は、複数のコイルエレメントの中から、被検体をスキャンするときに使用されるコイルエレメントの組合せを表すコイルモードを選択し、選択されたコイルモードを用いて、前記被検体のデータを取得するための所定のスキャンを実行する磁気共鳴装置のプログラムであって、
n個のコイルモードの中から、前記所定のスキャンを実行するときに使用されるコイルモードの候補を選択する選択処理と、
前記コイルモードの候補の感度マップを作成する感度マップ作成処理と、
を計算機に実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
コイルモードの感度マップを作成するので、コイルの形状が変形しても、コイルの形状に応じた感度マップを得ることができる。したがって、所定のスキャンに適したコイルモードを選択することが可能となる。また、感度マップを作成する前に、所定のスキャンに使用されるコイルモードの候補を選択しているので、n個のコイルモードの各々を用いた第1のスキャンをする必要がなく、所定のスキャンに適したコイルモードを短時間で選択することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一形態の磁気共鳴装置の概略図である。
図2】前部アレイコイル40および後部アレイコイル41の構造を示す図である。
図3】コイルモードの説明図である。
図4】本形態で実行されるスキャンを示す図である。
図5】撮影部位を概略的に示す図である。
図6】被検体を撮影するときのフローを示す図である。
図7】被検体に前部アレイコイル40を取り付けたときの様子を示す図である。
図8】ランドマークLMの一例を示す図である。
図9】撮影部位を撮影可能領域25に搬送させた後の様子を示す図である。
図10】スキャンAの一例を示す図である。
図11】スキャンA〜Aの説明図である。
図12】スキャンA〜Aで使用されるパルスシーケンスの一例を示す。
図13】RFコイル24のプロジェクションデータPを概略的に示す図である。
図14】コイルモードSet1〜Set4ごとに作成されたプロジェクションデータP〜Pを概略的に示す図である。
図15】カバレージデータを作成するときの説明図である。
図16】コイルモードSet1〜Set4の中から、撮影可能領域25内で高い感度を持つコイルモードを検出するときの説明図である。
図17】スキャンBの一例を示す図である。
図18】作成されたプロジェクションデータQ01〜Q06を概略的に示す図である。
図19】感度マップ用スキャンB〜Bごとに作成されたプロジェクションデータQ11〜Q16、Q21〜Q26、Q31〜Q36を概略的に示す図である。
図20】感度マップを作成するときの説明図である。
図21】感度マップMの作成方法の一例の説明図である。
図22】コイルモードSet1〜Set3の感度マップM〜Mを概略的に示す図である。
図23】撮像可能領域25内に設定された撮像視野FOV1の一例を概略的に示す図である。
図24】感度スコアを算出するときの説明図である。
図25】表示部10に表示されたコイルモードSet1の感度マップMを概略的に示す図である。
図26】ローカライザスキャンにより得られたローカライザ画像データを概略的に示す図である。
図27】設定された撮像視野FOV2の一例を概略的に示す図である。
図28】感度スコアVを示す図である。
図29】表示部10に表示されたコイルモードSet2の感度マップMを概略的に示す図である。
図30】ローカライザ画像データをウィンドウの感度分布に重ねたときの様子を概略的に示す図である。
図31】実験結果を示すグラフである。
図32】実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、以下の形態に限定されることはない。
【0014】
図1は、本発明の一形態の磁気共鳴装置の概略図である。
磁気共鳴装置(以下、「MR装置」と呼ぶ。MR:Magnetic Resonance)100は、マグネット2、テーブル3、ポジショニングライト4、前部アレイコイル40、後部アレイコイル41などを有している。
【0015】
マグネット2は、被検体11が収容されるボア21と、超伝導コイル22と、勾配コイル23と、RFコイル24とを有している。超伝導コイル22は静磁場を印加し、勾配コイル23は勾配磁場を印加し、RFコイル24はRFパルスを送信する。尚、超伝導コイル22の代わりに、永久磁石を用いてもよい。
【0016】
マグネット2の前面には、ポジショニングライト4が設けられている。ポジショニングライト4は、被検体11をボア21に搬送するときの目印となるランドマークを設定する。
【0017】
テーブル3は、被検体11を支持するためのクレードル3aを有している。クレードル3aは、ボア21内に移動できるように構成されている。クレードル3aによって、被検体11はボア21に搬送される。
【0018】
被検体11の腹部には前部アレイコイル40が取り付けられている。また、クレードル3aには、後部アレイコイル41が埋め込まれている。前部アレイコイル40および後部アレイコイル41を合わせたものが、コイル装置に相当する。前部アレイコイル40および後部アレイコイル41の構造については、後述する。
【0019】
MR装置100は、更に、送信器5、勾配磁場電源6、受信器7、制御部8、操作部9、および表示部10などを有している。
【0020】
送信器5はRFコイル24に電流を供給し、勾配磁場電源6は勾配コイル23に電流を供給する。
受信器7は、前部アレイコイル40および後部アレイコイル41から受け取った信号に対して、検波などの信号処理を実行する。尚、マグネット2、送信器5、勾配磁場電源6を合わせたものがスキャン手段に相当する。
【0021】
制御部8は、表示部10に必要な情報を伝送したり、受信器7から受け取ったデータに基づいて画像を再構成するなど、MR装置100の各種の動作を実現するように、MR装置100の各部の動作を制御する。制御部8は、例えばコンピュータ(computer)によって構成される。制御部8は、データ作成手段81〜感度スコア算出手段84などを有している。
【0022】
データ作成手段81は、コイルモードのカバレージデータ(図15参照)を作成する。コイルモードについては後述する。
コイルモード候補選択手段82は、ローカライザスキャンLSおよび本スキャンMS1(図4参照)で使用されるコイルモードの候補を選択する。
感度マップ作成手段83はコイルモードの感度マップを作成する。
感度スコア算出手段84はコイルモードの感度スコアを算出する。
【0023】
制御部8は、データ作成手段81〜感度スコア算出手段84を構成する一例であり、所定のプログラムを実行することにより、これらの手段として機能する。
【0024】
操作部9は、オペレータにより操作され、種々の情報を制御部8に入力する。表示部10は種々の情報を表示する。
【0025】
MR装置100は、上記のように構成されている。次に、前部アレイコイル40および後部アレイコイル41の構造について説明する(図2参照)。
【0026】
図2は、前部アレイコイル40および後部アレイコイル41の構造を示す図である。
図2(a)は前部アレイコイル40および後部アレイコイル41の斜視図、図2(b)は前部アレイコイル40および後部アレイコイル41の側面図である。
【0027】
前部アレイコイル40は、被検体の撮影部位(本形態では腹部)に取り付けられるコイルである。前部アレイコイル40は、複数のコイルエレメントから構成されている。
【0028】
後部アレイコイル41は、クレードル3aに埋め込まれているコイルである。後部アレイコイル41も、複数のコイルエレメントから構成されている。
【0029】
被検体を撮影する場合は、撮影条件に応じて、前部アレイコイル40および後部アレイコイル41が有するコイルエレメントの中から、スキャンに使用するコイルエレメントが選択される(図3参照)。
【0030】
図3は、本形態において被検体をスキャンするときに使用可能なコイルエレメントの組合せを表すコイルモードの説明図である。
【0031】
本形態では、後部アレイコイル41を2つの部分(後部アレイ41aおよび後部アレイ41b)に分け、以下のようなコイルモードSet1〜Set4を使用することができるように設定されている。
(1) コイルモードSet1:前部アレイコイル40+後部アレイ41a
(2) コイルモードSet2:前部アレイコイル40+後部アレイ41b
(3) コイルモードSet3:後部アレイ41a
(4) コイルモードSet4:後部アレイ41b
【0032】
被検体を撮影する場合は、コイルモードSet1〜Set4の中から、撮影条件に応じたコイルモードが選択される。コイルモードをどのようにして選択するかについては、後述する。尚、上記の例では、コイルモードは、複数のコイルエレメントから構成されているが、1個のコイルエレメントのみでコイルモードを構成してもよい。
【0033】
図4は本形態で実行されるスキャンを示す図、図5は撮影部位を概略的に示す図である。
本形態では、カバレージデータ用スキャンA、感度マップ用スキャンB、ローカライザスキャンLS、本スキャンMS1が実行される。
【0034】
カバレージデータ用スキャンAは、後述するカバレージデータを作成するために実行されるスキャンである。カバレージデータ用スキャンAについては、後で詳しく説明する。
【0035】
感度マップ用スキャンBは、後述する感度マップを作成するために実行されるスキャンである。感度マップ用スキャンBについても、後で詳しく説明する。
【0036】
ローカライザスキャンLSは、スライス位置を設定するときに使用されるローカライザ画像データを取得するためのスキャンである。
【0037】
本スキャンMS1は、肝臓を含む部位の画像データを収集するためのスキャンである。本スキャンMS1は、例えば、T1強調画像データやT2強調画像データを収集するためのスキャンである。
以下に、図4に示すスキャンを実行し、被検体を撮影するときのフローについて説明する。
【0038】
図6は、被検体を撮影するときのフローを示す図である。
ステップST1では、被検体11をクレードル3aに寝かせて、前部アレイコイル40を取り付ける。図7に、被検体11に前部アレイコイル40を取り付けたときの様子を概略的に示す。本形態では、被検体11の腹部を撮影するので、オペレータは被検体11の腹部に前部アレイコイル40を取り付ける。前部アレイコイル40を取り付けた後、ステップST2に進む。
【0039】
ステップST2では、オペレータは、ポジショニングライト4の光を用いて、被検体11をボア21に搬入するときの目印となるランドマークを設定する。図8に、設定されたランドマークLMの一例を示す。オペレータは被検体11の腹部がポジショニングライト4の下に位置するまでクレードル3aを移動させ、ランドマークLMを設定する。図8では、前部アレイコイル40の中心位置にランドマークLMが設定された例が示されている。
【0040】
オペレータは、ランドマークLMを設定した後、被検体の腹部がボア21の撮影可能領域25に搬送されるように、クレードル3aを移動させる。撮影可能領域25とは、静磁場が良好な均一性を示し、勾配磁場が良好な線形性を示す領域を表しており、良質な画像を取得することが可能な領域である。撮影可能領域25は、例えば、勾配磁場の中心を表すアイソセンターを基準にして規定することができる。図9に、撮影部位を撮影可能領域25に搬送させた後の様子を示す。撮影部位をボア21の撮影可能領域25に搬送した後、ステップST3に進む。
【0041】
ステップST3では、カバレージデータ用スキャンA(図4参照)を行い、コイルモードSet1〜Set4の中から、ローカライザスキャンLSおよび本スキャンMS1で使用されるコイルモードの候補を選択する。ステップST3の説明に当たっては、先ず、カバレージデータ用スキャンAについて説明する。
【0042】
図10は、カバレージデータ用スキャンAの一例を示す図である。
本形態では、カバレージデータ用スキャンAは、5つのスキャンA〜Aを有している。以下に、スキャンA〜Aについて説明する。
【0043】
図11は、スキャンA〜Aの説明図である。
スキャンA〜Aは、スクリーニング領域26内のサジタル面SGに対して周波数エンコード方向(図11ではSI(superior-inferior)方向)に勾配磁場を印加するが、位相エンコード方向には勾配磁場を印加しないスキャンである。図12に、スキャンA〜Aで使用されるパルスシーケンスの一例を示す。スクリーニング領域26は、撮影可能領域25よりも広くなるように設定されている。スクリーニング領域26の長さは、例えば、撮影可能領域26の長さの1.5倍である。尚、スキャンA〜Aでは、サジタル面SGの磁気共鳴信号を受信するために使用されるコイルが異なっている。スキャンA〜Aにおいて、サジタル面SGの磁気共鳴信号を受信するために使用されるコイルは以下の通りである。
(0)スキャンA:RFコイル24
(1)スキャンA:コイルモードSet1
(前部アレイコイル40+後部アレイ41a)
(2)スキャンA:コイルモードSet2
(前部アレイコイル40+後部アレイ41b)
(3)スキャンA:コイルモードSet3
(後部アレイ41a)
(4)スキャンA:コイルモードSet4
(後部アレイ41b)
【0044】
ステップST3では、上記スキャンA〜Aを実行し、各スキャンA〜Aにより得られたデータに基づいて、コイルモードSet1〜Set4の中から、ローカライザスキャンLSおよび本スキャンMS1で使用されるコイルモードの候補を選択する。以下に、ステップST3で実行される各サブステップST31〜ST34について順に説明する。
【0045】
サブステップST31では、RFコイル24を用いてスキャンAが実行される。RFコイル24により受信された磁気共鳴信号は、受信器7を経由して、制御部8に送られる。制御部8では、データ作成手段81(図1参照)が、スキャンAにより得られたデータに基づいて、RFコイル24を用いたときのプロジェクションデータを作成する。図13に、RFコイル24を用いたときのプロジェクションデータPを概略的に示す。スキャンAは、スクリーニング領域26内のサジタル面SGに対して周波数エンコード方向(SI方向)に勾配磁場を印加するが、位相エンコード方向には勾配磁場を印加しないスキャンであるので、スキャンAを実行することにより、位相エンコード方向に投影されたデータを表すプロジェクションデータPが得られる。周波数エンコード方向はSI方向であるので、プロジェクションデータPは、SI方向の位置と信号値との関係を表している。スキャンAを実行した後、サブステップST32に進む。
【0046】
サブステップST32では、コイルモードSet1〜Set4を用いたスキャンA〜Aが実行される。データ作成手段81は、スキャンA〜Aにより得られたデータに基づいて、コイルモードSet1〜Set4を用いたときのプロジェクションデータを作成する。図14に、コイルモードSet1〜Set4を用いたときのプロジェクションデータP〜Pを概略的に示す。スキャンA〜Aは、スクリーニング領域26内のサジタル面SGに対して周波数エンコード方向(SI方向)に勾配磁場を印加するが、位相エンコード方向には勾配磁場を印加しないスキャンであるので、スキャンA〜Aを実行することにより、位相エンコード方向に投影されたデータを表すプロジェクションデータP〜Pが得られる。周波数エンコード方向はSI方向であるので、プロジェクションデータP〜Pは、SI方向の位置と信号値との関係を表している。スキャンA〜Aを実行した後、サブステップST33に進む。
【0047】
ステップST33では、データ作成手段81が、コイルモードSet1〜Set4のSI方向の感度を表す感度データ(以下、「カバレージデータ」と呼ぶ)を作成する(図15参照)。
【0048】
図15は、カバレージデータを作成するときの説明図である。
データ作成手段81は、コイルモードSet1〜Set4を用いたときのプロジェクションデータP〜Pの信号値を、RFコイル24を用いたときのプロジェクションデータPの信号値で割ることにより、カバレージデータC〜Cを作成する。RFコイル24の感度は撮影可能領域25内では均一と見なすことができるので、プロジェクションデータP〜Pの信号値をプロジェクションデータPの信号値で割ることにより、人体の組織の違いによる信号値の差の影響を低減することができる。カバレージデータC〜Cを作成した後、ステップST34に進む。
【0049】
ステップST34では、コイルモード候補選択手段82(図1参照)が、カバレージデータC〜Cに基づいて、コイルモードSet1〜Set4の中から、撮影可能領域25内で高い感度を持つコイルモードを選択する。
【0050】
図16は、撮影可能領域25内で高い感度を持つコイルモードを選択するときの一例の説明図である。
本形態では、先ず、各カバレージデータC〜Cごとに、撮影可能領域25の中から、閾値Sthより信号値が大きくなる範囲を検出し、検出された範囲のSI方向の長さL=L〜Lを算出する。尚、閾値Sthは予め決定された固定値でもよいし、カバレージデータC〜Cの信号値に基づいて求めてもよい。
【0051】
次に、長さL=L〜Lと、撮影可能領域25のSI方向の長さLとの間に、以下の関係式が成立するか否かを判断する。

L≧k・L ・・・(1)
【0052】
式(1)の係数kは、0<k<1の値であり、例えば、k=0.5である。式(1)を満たす場合は、コイルモードは撮影可能領域25内で高い感度を持つと判断する。一方、式(1)を満たさない場合、コイルモードは撮影可能領域25内で高い感度を持たないと判断する。
【0053】
ここでは、L、L、およびLは式(1)を満たすが、Lは式(1)を満たさないとする。したがって、コイルモードSet1〜Set4の中から、高い感度を持つコイルモードとして、3つのコイルモードSet1、Set2、およびSet3が選択される。このようにして選択されたコイルモードSet1、Set2、およびSet3が、ローカライザスキャンLSおよび本スキャンMS1で使用されるコイルモードの候補として選択される。コイルモードSet1、Set2、およびSet3を選択した後、ステップST4に進む。
【0054】
ステップST4では、感度マップ用スキャンB(図4参照)を行い、ステップST3で選択されたコイルモードSet1、Set2、およびSet3の撮影可能領域25内における感度マップを作成する。ステップST4の説明に当たっては、先ず、感度マップ用スキャンBについて説明する。
【0055】
図17は、感度マップ用スキャンBの一例を示す図である。
本形態では、感度マップ用スキャンBは、4つのスキャンB〜Bを有している。以下では、先ず、スキャンBについて説明する。
【0056】
スキャンBは、6個のスキャンb1〜b6を含んでいる。スキャンb1〜b6は以下のようなスキャンである。
(1)スキャンb1:撮影可能領域25内のサジタル面SGに対して周波数エンコード方向(SI(superior-inferior)方向)に勾配磁場を印加するが、位相エンコード方向には勾配磁場を印加しないスキャン
(2)スキャンb2:撮影可能領域25内のサジタル面SGに対して周波数エンコード方向(AP(anterior-posterior)方向)に勾配磁場を印加するが、位相エンコード方向には勾配磁場を印加しないスキャン
(3)スキャンb3:撮影可能領域25内のアキシャル面AKに対して周波数エンコード方向(AP方向)に勾配磁場を印加するが、位相エンコード方向には勾配磁場を印加しないスキャン
(4)スキャンb4:撮影可能領域25内のアキシャル面AKに対して周波数エンコード方向(RL(right-left)方向)に勾配磁場を印加するが、位相エンコード方向には勾配磁場を印加しないスキャン
(5)スキャンb5:撮影可能領域25内のコロナル面COに対して周波数エンコード方向(RL方向)に勾配磁場を印加するが、位相エンコード方向には勾配磁場を印加しないスキャン
(6)スキャンb6:撮影可能領域25内のコロナル面COに対して周波数エンコード方向(SI方向)に勾配磁場を印加するが、位相エンコード方向には勾配磁場を印加しないスキャン
【0057】
つまり、スキャンBでは、6回のスキャンb1〜b6が実行される。スキャンb1〜b6のパルスシーケンスとしては、図12と同じパルスシーケンスを使用することができる。尚、スキャンB、B、およびBについても、スキャンBと同様に、上記のスキャンb1〜b6が実行される。しかし、スキャンB〜Bは、磁気共鳴信号を受信するために使用されるコイルが異なっている。スキャンB〜Bにおいて、磁気共鳴信号を受信するために使用されるコイルは以下の通りである。
(0)スキャンB:RFコイル24
(1)スキャンB:コイルモードSet1
(前部アレイコイル40+後部アレイ41a)
(2)スキャンB:コイルモードSet2
(前部アレイコイル40+後部アレイ41b)
(3)スキャンB:コイルモードSet3
(後部アレイ41a)
【0058】
ステップST4では、上記のスキャンB〜Bを実行し、各スキャンB〜Bにより得られたデータに基づいて、ステップST3で選択されたコイルモードSet1、Set2、およびSet3の感度マップを作成する。以下に、ステップST4で実行される各サブステップST41〜43について順に説明する。
【0059】
サブステップST41では、RFコイル24を用いてスキャンB(スキャンb1〜b6)が実行される。RFコイル24により受信された磁気共鳴信号は、受信器7を経由して、制御部8に送られる。制御部8では、感度マップ作成手段83(図1参照)が、スキャンBにより得られたデータに基づいて、RFコイル24を用いたときのプロジェクションデータを作成する。図18に、RFコイル24を用いたときのプロジェクションデータQ01〜Q06を概略的に示す。
プロジェクションデータQ01は、サジタル面SGのSI方向の各位置と信号値との関係を表している。プロジェクションデータQ02は、サジタル面SGのAP方向の各位置と信号値との関係を表している。
プロジェクションデータQ03は、アキシャル面AKのAP方向の各位置と信号値との関係を表している。プロジェクションデータQ04は、アキシャル面AKのRL方向の各位置と信号値との関係を表している。
プロジェクションデータQ05は、コロナル面COのRL方向の各位置と信号値との関係を表している。プロジェクションデータQ06は、コロナル面COのSI方向の各位置と信号値との関係を表している。
スキャンBを実行した後、サブステップST42に進む。
【0060】
サブステップST42では、スキャンB〜Bを実行する。スキャンB〜Bでも、スキャンBと同様に、スキャンb1〜b6が実行される。ただし、スキャンB〜Bでは、それぞれ、コイルモードSet1〜Set3を用いて磁気共鳴信号を受信する。コイルモードSet1〜Set3により受信された磁気共鳴信号は、受信器7を経由して、制御部8に送られる。制御部8では、感度マップ作成手段83が、スキャンB〜Bにより得られたデータに基づいて、コイルモードSet1〜Set3を用いたときのプロジェクションデータを作成する。図19に、コイルモードSet1〜Set3を用いたときのプロジェクションデータQ11〜Q16、Q21〜Q26、Q31〜Q36を概略的に示す。
スキャンB〜Bを実行した後、サブステップST43に進む。
【0061】
ステップST43では、感度マップ作成手段83が、コイルモードSet1〜Set3の撮影可能領域25における感度を表す感度マップを作成する(図20参照)。
図20は、感度マップを作成するときの説明図である。尚、図20では、コイルモードSet1〜Set3のうち、代表してコイルモードSet1の感度マップを作成する方法について説明するが、他のコイルモードSet2およびSet3の感度マップについても、以下に説明する方法で作成することができる。
【0062】
感度マップ作成手段83は、先ず、コイルモードSet1を用いたときのプロジェクションデータQ11〜Q16の信号値を、RFコイル24を用いたときのプロジェクションデータQ01〜Q06の信号値で割る。これにより、人体の組織の違いによる信号値の差の影響を低減することができる。図20には、RFコイル24のプロジェクションデータQ01〜Q06で割った後のコイルモードSet1のプロジェクションデータQ11〜Q16を、符号「Q11′」〜「Q16′」で示してある。
【0063】
次に、感度マップ作成手段83は、得られたプロジェクションデータQ11′〜Q16′に基づいて、コイルモードSet1の撮影可能領域25における感度マップMを作成する(図21参照)。
【0064】
図21は、感度マップMの作成方法の一例の説明図である。
感度マップMの座標点(x,y,z)の感度は、プロジェクションデータQ11′〜Q16′の各座標x、y、およびzの信号値を掛け合わせることにより求める。その他の座標点についても、同様にプロジェクションデータQ11′〜Q16′の各座標の信号値を掛け合わせることにより求める。
このようにして、プロジェクションデータQ11′〜Q16′から、コイルモードSet1の撮影可能領域25における感度マップMを作成することができる。
【0065】
尚、コイルモードSet2およびSet3の感度マップも、同じ手順で作成することができる。図22に、コイルモードSet1〜Set3の感度マップM〜Mを概略的に示す。感度マップM〜Mを作成した後、ステップST5に進む。
【0066】
ステップST5では、感度マップM〜Mが作成されたコイルモードSet1〜Set3の中から、ローカライザスキャンLS(図4参照)に最も適していると考えられるコイルモードを特定する。以下に、ステップST5の各サブステップST51〜ST54について説明する。
【0067】
サブステップST51では、撮影可能領域25内に、ローカライザスキャンLSを実行するときの撮像視野を設定する(図23参照)。
【0068】
図23は、撮像可能領域25内に設定された撮像視野FOV1の一例を概略的に示す図である。
オペレータは、ステップST4で作成された感度マップM〜Mを表示部10に表示させる。そして、表示部10に表示された感度マップM〜Mを参考にしながら、ローカライザスキャンLSを実行するときのFOV1を設定する。FOV1を設定した後、サブステップST52に進む。尚、ローカライザスキャンLSを実行するときのFOV1がデフォルトで予め設定されている場合は、サブステップST51をスキップしてサブステップST52に進む。
【0069】
サブステップST52では、感度スコア算出手段84(図1参照)が、コイルモードSet1〜Set3の感度マップM〜Mごとに、FOV1内の感度を表す感度スコアを算出する(図24参照)。
【0070】
図24は、感度スコアを算出するときの説明図である。
感度スコアVは、例えば、FOV1内の各位置の感度の平均値として計算することができる。図24では、コイルモードSet1、Set2、およびSet3の感度スコアVは、V、V、およびVで表されている。感度スコアを算出した後、ステップST53に進む。
【0071】
ステップST53では、コイルモードSet1〜Set3の中から、感度スコアVが最も大きいコイルモードを求める。ここでは、感度スコアV、V、およびVの中で、Vが最大値であるとする。したがって、コイルモードSet1が選択される。感度スコアVが最も大きいコイルモードSet1を選択した後、サブステップST54に進む。
【0072】
サブステップST54では、表示部10に、コイルモードSet1の感度マップMが表示される(図25参照)。
図25は、表示部10に表示されたコイルモードSet1の感度マップMを概略的に示す図である。
表示部10には、3つのウィンドウW1、W2、およびW3などが表示される。
【0073】
ウィンドウW1は、感度マップMのサジタル面SGの感度分布を表示するウィンドウである。ウィンドウW2は、感度マップMのアキシャル面AKの感度分布を表示するウィンドウである。ウィンドウW3は、感度マップMのコロナル面COの感度分布を表示するウィンドウである。
【0074】
オペレータは、必要に応じて、感度マップMのサジタル面SG、アキシャル面AK、およびコロナル面COの位置を、それぞれRL方向、SI方向、およびAP方向に移動させることができる。したがって、オペレータは、各ウィンドウW1、W2、W3の感度分布を見ることによって、ローカライザスキャンLSを実行する前に、撮影可能領域25内におけるコイルモードSet1の感度マップMを視覚的に確認することができる。これにより、オペレータは、ローカライザスキャンLSを実行する前に、コイルモードSet1がローカライザスキャンLSの撮影部位に対してどの程度の感度を有しているのか、確認することができる。
【0075】
また、オペレータは、操作部9を操作することにより、コイルモードSet1の感度マップMだけでなく、コイルモードSet2の感度マップMや、コイルモードSet3の感度マップMも表示部10に表示させることができる。したがって、オペレータは、コイルモードSet1の感度マップMだけでなく、コイルモードSet2の感度マップMや、コイルモードSet3の感度マップMも確認することができる。
【0076】
オペレータは、表示部10に表示されているコイルモードSet1の感度マップMを確認し、コイルモードSet1を用いてローカライザスキャンLSを実行するか否かを判断する。オペレータは、コイルモードSet1を用いてローカライザスキャンLSを実行すると判断した場合は、操作部9を操作し、ローカライザスキャンLSを実行するための命令を入力する。この命令が入力されると、ステップST6に進み、コイルモードSet1を用いたローカライザスキャンLSが実行される。
【0077】
一方、オペレータは、コイルモードSet1とは別のコイルモードを用いてローカライザスキャンLSを実行したいと考えた場合は、操作部9を操作し、コイルモードを変更する命令を入力する。例えば、コイルモードSet2を用いてローカライザスキャンLSを実行したいと考えた場合は、操作部9を操作し、コイルモードをSet1からSet2に変更する命令を入力する。コイルモードを変更する命令を入力した後、ローカライザスキャンLSを実行するための命令を入力する。この命令が入力されると、ステップST6に進み、コイルモードSet2を用いたローカライザスキャンLSが実行される。
【0078】
ここでは、オペレータは、コイルモードSet1を用いてローカライザスキャンLSを実行すると判断したとする。したがって、ステップST6では、コイルモードSet1を用いたローカライザスキャンLSが実行される。図26に、ローカライザスキャンにより得られたローカライザ画像データを概略的に示す。本形態では、サジタル面SGのローカライザ画像データD1と、アキシャル面AKのローカライザ画像データD2と、コロナル面COのローカライザ画像データD3とが取得される。ローカライザスキャンLSを実行した後、ステップST7に進む。
【0079】
ステップST7では、感度マップM〜Mが作成されたコイルモードSet1〜Set3の中から、本スキャンMS1(図4参照)に最も適していると考えられるコイルモードを特定する。以下に、ステップST7の各サブステップST71〜ST74について説明する。
【0080】
サブステップST71では、本スキャンMS1を実行するときの撮像視野を設定する(図27参照)。
図27は、設定された撮像視野FOV2の一例を概略的に示す図である。
オペレータは、ステップST6で取得されたローカライザ画像データを参考にしながら、本スキャンMS1を実行するときのスライス位置や撮像視野FOV2を設定する。FOV2を設定した後、サブステップST72に進む。
【0081】
サブステップST72では、感度スコア算出手段84が、コイルモードSet1〜Set3の感度マップM〜Mごとに、FOV2内の感度を表す感度スコアを算出する。図28に感度スコアVを示す。尚、感度スコアの算出方法は、サブステップST52と同じ方法であるので(図24参照)、説明は省略する。
【0082】
サブステップST73では、コイルモードSet1〜Set3の中から、感度スコアVが最も大きいコイルモードを求める。ここでは、感度スコアV、V、およびVの中で、Vが最大値であるとする。したがって、コイルモードSet2が選択される。感度スコアVが最も大きいコイルモードSet2を選択した後、サブステップST74に進む。
【0083】
サブステップST74では、表示部10に、コイルモードSet2の感度マップMが表示される(図29参照)。
図29は、表示部10に表示されたコイルモードSet2の感度マップMを概略的に示す図である。
表示部10には、3つのウィンドウW1、W2、およびW3などが表示される。
【0084】
ウィンドウW1は、感度マップMのサジタル面SGの感度分布を表示するウィンドウである。ウィンドウW2は、感度マップMのアキシャル面AKの感度分布を表示するウィンドウである。ウィンドウW3は、感度マップMのコロナル面COの感度分布を表示するウィンドウである。
【0085】
オペレータは、必要に応じて、感度マップMのサジタル面SG、アキシャル面AK、およびコロナル面COの位置を、それぞれRL方向、SI方向、およびAP方向に移動させることができる。したがって、オペレータは、各ウィンドウW1、W2、W3の感度分布を見ることによって、本スキャンMS1を実行する前に、コイルモードSet2の感度マップMを視覚的に確認することができる。これにより、オペレータは、本スキャンMS1を実行する前に、コイルモードSet2が撮影部位に対してどの程度の感度を有しているのか、確認することができる。
【0086】
尚、オペレータは、ステップST6で取得されたローカライザ画像データ(図26参照)を、表示部10のウィンドウW1、W2、およびW3内の感度分布に重ねて表示してもよい(図30参照)。
【0087】
図30は、ローカライザ画像データをウィンドウの感度分布に重ねたときの様子を概略的に示す図である。
ローカライザ画像データをウィンドウの感度分布に重ねることにより、ローカライザ画像データと感度分布との対応関係を視覚的に認識できる。したがって、オペレータは、ローカライザ画像データに表示されている部位と感度との関係を、より詳細に知ることができる。
【0088】
また、オペレータは、操作部9を操作することにより、コイルモードSet2の感度マップMだけでなく、コイルモードSet1の感度マップMや、コイルモードSet3の感度マップMも表示部10に表示させることができる。したがって、オペレータは、コイルモードSet2の感度マップMだけでなく、コイルモードSet1の感度マップMや、コイルモードSet3の感度マップMも確認することができる。
【0089】
オペレータは、表示部10に表示されているコイルモードSet2の感度マップMを確認し、コイルモードSet2を用いて本スキャンMS1を実行するか否かを判断する。オペレータは、コイルモードSet2を用いて本スキャンMS1を実行すると判断した場合は、操作部9を操作し、本スキャンMS1を実行するための命令を入力する。この命令が入力されると、ステップST8進み、コイルモードSet2を用いた本スキャンMS1が実行される。
【0090】
一方、オペレータは、コイルモードSet2とは別のコイルモードを用いて本スキャンMS1を実行したいと考えた場合は、操作部9を操作し、コイルモードを変更する命令を入力する。例えば、コイルモードSet1を用いて本スキャンMS1を実行したいと考えた場合は、操作部9を操作し、コイルモードをSet2からSet1に変更する命令を入力する。コイルモードを変更する命令を入力した後、本スキャンMS1を実行するための命令を入力する。この命令が入力されると、ステップST8に進み、コイルモードSet1を用いた本スキャンMS1が実行され、フローが終了する。
【0091】
本形態では、ローカライザスキャンLSを実行する前に、コイルモードSet1〜Set4の中から、SI方向の感度が大きいコイルモードSet1〜Set3を選択する(サブステップST34)。そして、コイルモードSet1〜Set3の感度マップを作成し、コイルモードSet1〜Set3の中から、ローカライザスキャンLSのFOV1内の感度スコアが最大となるコイルモードSet1を求めている。したがって、ローカライザスキャンLSに適したコイルモードSet1を自動的に検出することができる。また、コイルモードSet1の感度マップは、表示部10に表示されるので、オペレータは、ローカライザスキャンLSを実行する前に、コイルモードSet1がローカライザスキャンLSの撮影部位に対してどの程度の感度を有しているのかを視覚的に確認することができる。更に、オペレータは、コイルモードSet1とは別のコイルモードSet2およびSet3の感度マップも表示部10に表示することができるので、コイルモードSet2およびSet3の感度マップも視覚的に確認することができる。したがって、オペレータは、ローカライザスキャンLSを実行する前に、コイルモードSet1〜Set3の感度マップを比較することもできる。また、オペレータが、コイルモードSet1ではなく、別のコイルモード(例えばSet2)を用いてローカライザスキャンLSを実行した方がよいと考えた場合は、オペレータの意思で、コイルモードを変更することができるので、オペレータが望むようなローカライザスキャンLSを実行することができる。
【0092】
また、カバレージデータ用スキャンAおよび感度マップ用スキャンBでは、位相エンコード量を変更しないスキャンが実行される。したがって、カバレージデータ用スキャンAに掛かるスキャン時間、および感度マップ用スキャンBに掛かるスキャン時間を短くすることができる。
【0093】
また、本形態では、本スキャンMS1を実行する前に、コイルモードSet1〜Set3の中から、本スキャンMS1のFOV2内の感度スコアが最大となるコイルモードSet2を求めている。したがって、本スキャンMS1に適したコイルモードSet2を自動的に検出することができる。また、コイルモードSet2の感度マップは、表示部10に表示されるので、オペレータは、本スキャンMS1を実行する前に、コイルモードSet2が本スキャンMS1の撮影部位に対してどの程度の感度を有しているのかを視覚的に確認することができる。更に、オペレータは、コイルモードSet2とは別のコイルモードSet1およびSet3の感度マップも表示部10に表示することができるので、コイルモードSet1およびSet3の感度マップも視覚的に確認することができる。したがって、オペレータは、本スキャンを実行する前に、コイルモードSet1〜Set3の感度マップを比較することもできる。また、オペレータが、コイルモードSet2ではなく、別のコイルモード(例えば、Set1)を用いて本スキャンMS1を実行した方がよいと考えた場合は、オペレータの意思で、コイルモードを変更することができるので、オペレータが望むような本スキャンMS1を実行することができる。
【0094】
尚、本スキャンMS1を行った後に、別の本スキャンMS2を行う場合は、ステップST7を実行し、別の本スキャンMS2を実行するときに使用するコイルモードを選択する。そして、選択されたコイルモードを用いて、本スキャンMS2を実行すればよい。ただし、本スキャンMS2の撮影部位の位置が、本スキャンMS1の撮影部位の位置から大きく離れる場合は、ステップST2に戻ってランドマークの位置を設定し直し、ステップST3およびステップST4を実行した上で、ステップST7を実行し、本スキャンMS2を実行するときに使用するコイルモードを選択すればよい。
【0095】
本形態では、ローカライザスキャンLSを実行する前に、SI方向の感度が大きいコイルモードSet1、Set2、およびSet3を、ローカライザスキャンLSおよび本スキャンMS1で使用するコイルモードの候補として選択している(ステップST3)。したがって、SI方向の感度が小さいコイルモードSet4は、ローカライザスキャンLSおよび本スキャンMS1で使用するコイルモードの候補から外すことができるので、ステップST42において、コイルモードSet4を用いたスキャンをする必要がなく、スキャン時間の短縮化を図ることができる。
【0096】
また、本形態では、互いに交差する3つの面(サジタル面SG、アキシャル面AK、コロナル面CO)からプロジェクションデータを取得し、感度マップを作成している。しかし、3つ以上の面からプロジェクションデータを取得し、感度マップを作成してもよい。更に、互いに交差する複数の面からプロジェクションデータを取得する代わりに、平行に並ぶ複数の面からプロジェクションデータを取得し、感度マップを作成してもよい。
【0097】
尚、ステップST3では、カバレージデータC〜Cにより、SI方向の感度が高いコイルモードSet1〜Set3と、SI方向の感度が低いコイルモードSet4とを区別できることが説明されている。そこで、この区別ができることを検証するための簡単な実験を行った。以下に、実験結果を示す。
図31は、実験結果を示すグラフである。
実験では、クレードル3aの上にファントムを設置し、ファントムの上に前部アレイコイル40を設置した。そして、ステップST3の手順に従ってカバレージデータを作成した。図31を参照すると、コイルモードSet1〜Set3のカバレージデータC〜Cと、コイルモードSet4のカバレージデータCとの間には、明らかな信号値の差異が見られる。したがって、SI方向の感度の高いコイルモードSet1〜Set3と、SI方向の感度の低いコイルモードSet4との区別が可能であることがわかる。
【0098】
また、ステップST4では、プロジェクションデータに基づいて感度マップを作成している。そこで、プロジェクションデータに基づいて作成された感度マップがどの程度の品質を有するかを検証するための簡単な実験を行った。以下に、実験結果を示す。
図32は、実験結果を示すグラフである。
実験では、クレードル3aの上にファントムを設置し、ファントムの上に前部アレイコイル40を設置した。そして、ステップST4の手順に従ってコイルモードSet1の感度マップと、コイルモードSet3の感度マップとを作成した。図32(a)は、コイルモードSet1の感度マップのサジタル面、コロナル面、アキシャル面を示しており、図32(b)は、コイルモードSet3の感度マップのサジタル面、コロナル面、アキシャル面を示している。また、各感度マップの右側には、対応する断面のローカライザ画像が示されている。感度マップとローカライザ画像とを比較すると、感度マップは、ローカライザ画像と同じような明暗の傾向を示しており、感度マップの信頼性が高いことがわかる。
【0099】
尚、本形態では、使用可能なコイルモードとして、以下のコイルモードが設定されている。
(1) コイルモードSet1:前部アレイコイル40+後部アレイ41a
(2) コイルモードSet2:前部アレイコイル40+後部アレイ41b
(3) コイルモードSet3:後部アレイ41a
(4) コイルモードSet4:後部アレイ41b
【0100】
しかし、使用可能なコイルモードは、Set1〜Set4に限定されることはない。以下に、使用可能なコイルモードの別の例を示す。
(1) コイルモードSet1:前部アレイコイル40+後部アレイ41a
(2) コイルモードSet2:前部アレイコイル40+後部アレイ41b
(3) コイルモードSet3:後部アレイ41a
(4) コイルモードSet4:後部アレイ41b
(5) コイルモードSet5:後部アレイ41a+後部アレイ41b
この例では、コイルモードSet1〜Set4の他に、コイルモードSet5が追加されている。したがって、ステップST3では、コイルモードSet1〜Set4を用いたスキャンA〜Aの他に、コイルモードSet5を用いたスキャンAを実行すればよい。イルモードSet5を用いたスキャンAにより、コイルモードSet5のプロジェクションデータを作成することができるので、RFコイルのプロジェクションデータで割ることにより、コイルモードSet5のカバレージデータを得ることができる。尚、コイルモードSet5は、コイルモードSet3とSet4から構成されているので、コイルモードSet5のプロジェクションデータを、コイルモードSetのプロジェクションデータと、コイルモードSet4のプロジェクションデータから予測してもよい。コイルモードSet5のプロジェクションデータを、コイルモードSetのプロジェクションデータと、コイルモードSet4のプロジェクションデータから予測する場合は、コイルモードSet5を用いたスキャンが不要となるので、ステップST3で掛かるスキャン時間が長くなることを防止できる。
【符号の説明】
【0101】
2 マグネット
3 テーブル
3a クレードル
4 ポジショニングライト
5 送信器
6 勾配磁場電源
7 受信器
8 制御部
9 操作部
10 表示部
11 被検体
21 ボア
22 超伝導コイル
23 勾配コイル
24 RFコイル
40 前部アレイコイル
41 後部アレイコイル
81 データ作成手段
82 コイルモード候補選択手段
83 感度マップ作成手段
84 感度スコア算出手段
100 MR装置
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