(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5897453
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】過負荷防止用回路、方法、及びシステム
(51)【国際特許分類】
H02M 3/00 20060101AFI20160317BHJP
H02M 1/00 20070101ALI20160317BHJP
【FI】
H02M3/00 C
H02M1/00 H
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-264343(P2012-264343)
(22)【出願日】2012年12月3日
(65)【公開番号】特開2013-128398(P2013-128398A)
(43)【公開日】2013年6月27日
【審査請求日】2014年1月20日
(31)【優先権主張番号】11191873.6
(32)【優先日】2011年12月5日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512312185
【氏名又は名称】エフォール オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(72)【発明者】
【氏名】ニソネン,イルポ
【審査官】
神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第06104106(US,A)
【文献】
特開2009−038894(JP,A)
【文献】
特開2002−218755(JP,A)
【文献】
特開2009−005435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00〜3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源及び負荷間の過負荷防止用電気回路であって、
電源出力(−VSUPPLY)及び負荷入力(−VLOAD)間に直列で接続される制御可能なスイッチング要素(Q)と、
前記スイッチング要素の電流を直接または間接的に計測するセンサ(38)と、
計測された電流に基づき、前記スイッチング要素を制御する制御手段(35)と、
前記スイッチング要素と直列で接続されるインダクタ(L)と、
前記スイッチング要素と並列で接続される、制限電圧を有する電圧依存要素(Z)とを備え、
前記制御手段(35)は、前記計測された電流の値が、定められたトリガ閾値よりも高い時、前記スイッチング要素(Q)のスイッチをオフにするように適合されて、
前記スイッチング要素がオフ状態の間、インダクタ(L)の電流は、前記電圧依存要素(Z)に流れるよう調整され、
前記制御手段は、電流レベル値及び対応するトリップ閾値時間長の値を含む、トリガ閾値として保存されたデータを含み、前記制御手段は、所定のタイムウィンドウ内で、各電流レベルが超過された時間を監視して、前記トリップ閾値時間長の潜在的な超過を監視するように適合されていることを特徴とする過負荷防止用電気回路。
【請求項2】
前記制御手段は、前記トリガ閾値の超過により前記スイッチング要素のスイッチを切った後に、遅延が経過した後、前記スイッチング要素のスイッチをオンにするように適合されていることを特徴とする請求項1に記載の過負荷防止用電気回路。
【請求項3】
前記電圧依存要素(Z)は、金属酸化バリスタであることを特徴とする請求項1に記載の過負荷防止用電気回路。
【請求項4】
前記スイッチング要素(Q)は、少なくとも1つの電力用半導体を備えることを特徴とする請求項1に記載の過負荷防止用電気回路。
【請求項5】
前記制御手段(35)は、プログラム可能なマイクロコントローラを備えることを特徴とする請求項1に記載の過負荷防止用電気回路。
【請求項6】
前記制御手段は、前記トリップ閾値時間長が超過する場合に、前記スイッチング要素のスイッチをオフにするように適合されていることを特徴とする請求項1に記載の過負荷防止用電気回路。
【請求項7】
前記制御手段(35)は、前記制御手段に保存するためのトリガデータ、トリップデータ及び/またはプログラムデータを転送し、及び/または前記過負荷防止用電気回路を遠隔制御し、及び/または前記過負荷防止用電気回路のパラメータを監視するためのインタフェースを有することを特徴とする請求項1に記載の過負荷防止用電気回路。
【請求項8】
電源用の過負荷防止を提供する方法であって、
制御可能なスイッチング要素(Q)を通して、電源から負荷まで電流が導かれ、
前記スイッチング要素の電流を計測し(42)、前記スイッチング要素が、計測された電流に基づき、制御手段(35)によって制御され、
前記電源の電流は、また、前記スイッチング要素に直列で接続されるインダクタ(L)を伝達され、
トリガ閾値は、前記制御手段に保存され、
前記スイッチング要素の前記計測された電流の値は、前記トリガ閾値と比較され、
前記電流の値が前記トリガ閾値を超過する時(43)、前記スイッチング要素のスイッチをオフにし(44)、
前記スイッチング要素のスイッチが切られた後に、負荷電流は、前記スイッチング要素と並列に接続される、制限電圧を有する電圧依存要素(Z)に導かれ、
電流レベル値及び対応するトリップ閾値時間長の値がトリガ閾値として前記制御手段に保存され、所定のタイムウィンドウ内で各電流レベルが超過された時間を、前記制御手段によって監視して、前記トリップ閾値時間長の潜在的な超過を検出することを特徴とする方法。
【請求項9】
前記トリガ閾値の超過により、前記スイッチング要素のスイッチを切った後(44)に、遅延が経過した後(45)、前記スイッチング要素のスイッチをオンにすることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記トリップ閾値時間長が、所定のタイムウィンドウ内で超過した場合、前記スイッチング要素のスイッチをオフにすることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記トリガ閾値データ、トリップ閾値データ及び/またはプログラムデータを前記制御手段に転送することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
負荷の電力入力部に電力を供給する電力出力部を有する1つまたは複数の電源と、
前記1つまたは複数の電源の出力部と前記負荷の入力部間に接続される1つまたは複数の過負荷防止回路を有し、
前記過負荷防止回路の少なくとも1つは、請求項1に記載の回路であることを特徴とする1つまたは複数の負荷に電力を供給するシステム。
【請求項13】
前記システムは、複数の過負荷防止回路を有し、前記過負荷防止回路は、個々の電源出力部及び負荷入力部の要求に基づき、個々のトリガ閾値データ及び/またはトリップ閾値データを有することを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に電力の供給における過負荷防止に関する。より詳細には、本発明は、独立請求項の前提部分に開示されるものに関する。本発明は、特に、容量性負荷へ電力を供給することにおいて有利な適用に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源のような電源は、セルラー式通信システムにおける基地局のような様々な電気装置に直流電力(DC)を提供するために使用される。電源において、容量性負荷部を含むこともある、電気装置に負荷がかかる。特定に制御された電圧を備えた電力が、そのような負荷に接続する時、初めは、容量性負荷部に荷電するために高電流は形成される。そのような高電流は、電源の電流定格出力を超過することがあり、これにより、電源の電力部品は、損傷を受ける。超過高負荷電流の別の要因は、短回路または、負荷における他の損傷であり得る。負荷が電力定格出力と適合しない可能性もある。そのような状況で電源を保護するために、過負荷防止回路は使用される。それら回路は、超過電流値が、電源の出力部で検出される状況において、負荷に供給される電流を制限及び/または軽減する。
【0003】
図1は、従来技術に係る過負荷防止回路を示す。回路は、電源の電力出力線−V
supplyと負荷の電力入力線−V
load間に接続される。Rは、負荷の抵抗部を示すために図中で使用され、Cは、負荷の容量性部分を示すために使用される。回路は、FEYトランジスタのようなスイッチング要素Qと、トランジスタゲートを制御し、そのため負荷への電力供給を制御する制御部15を有する。制御部モニターは、電流センサ18を用いて、供給電流を監視する。トランジスタのスイッチをオンにすると、供給電流はトランジスタを通り、負荷へ流れる。電流が所定の制限を超過すると、制御部の出力部16は、電流を減らすようトランジスタを制御する。従って、トランジスタQは、供給電流の線形制御にも使用される。
【0004】
しかし、従来技術におけるその解決手段は、ある不具合を有する。トランジスタは、トランジスタの安全動作領域(SOA)を超過することなく、長期間、高電力を消費することができない。トランジスタのSOAを超過した場合、トランジスタが破損するという危険がある。従って、装置の信頼性は、低下し得る。別の不利益として、スイッチングトランジスタの線形制御の提供には、制御回路のより複雑な構造が必要である。そのような線形制御に関する不安定さの潜在的な危険もある。
【0005】
図2は、従来技術に係る別の過負荷防止回路を示す。この回路は、電源と負荷間に第1スイッチング要素Q1を有する。過負荷防止回路は、また、電力レジスタR1と直列に接続される第2スイッチング要素Q2をも有する。スイッチング要素は、制御回路25によって制御される。電力の負荷へのスイッチがオンにされると、第2スイッチング要素は、まず、制御線27によってスイッチが入り、電流を第2スイッチング要素Q2及び電力レジスタR1を通し流すことが可能になる。電流は、電流の過剰な値を避けるために、レジスタによって制限される。最初に負荷容量が荷電された後、制御線26により第1スイッチング要素のスイッチが入り、第1スイッチング要素を通り、負荷まで電流を直接流すことが可能になる。例えば、スイッチが入った第2及び第1スイッチング要素間に発生する固定遅延があり得る。
【0006】
図2に係る従来技術の過負荷防止回路に関するある不利益もある。第1に、負荷電圧は、電流がレジスタR1を通り供給されると、公称値に達しない。そのため、第1スイッチングトランジスタのスイッチがオンにされると、高荷電電流がまだ存在する可能性がある。
【0007】
第2に、電力レジスタは、電力始動間、大量のエネルギーを消費し得る。そのため、電力レジスタは、高電力定格を有さなければならない。そのような電力レジスタは、寸法が大きく、従って、多くの空間を必要とする。それは、比較的高価な部品でもあり、従って、装置の製造費が高くなる。電力レジスタの要求される抵抗及び電力定格は、電源及び負荷の必要量にも依存する。そのため、異なる部品を有する様々な種類の過負荷防止回路を提供する必要があり得る。
【0008】
図2の回路は、2つの電力スイッチング要素及び両部品に対応する制御回路をも必要とする。これにより、装置の複雑さ及び製造費はさらに高まる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
通信システムのような電気システムにおいて、システムの複数の装置へ様々な電圧の電力を供給する必要があることもある。過負荷防止回路は、各供給接続部に必要であり、そのため、要求される過負荷防止回路の数は、増加し得る。負荷装置及び各装置の入力供給が異なるため、過負荷防止回路は、異なる特性を有する必要もあることがある。さらに、破損により、電気システムの大部分が作動しなくなることもあり得るため、過負荷防止回路の信頼性が高いことが重要である。上述のように、従来技術に係る過負荷防止回路は、所望の手段におけるそれらの要求を満たしていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、従来技術の前述の不利益を避けるまたは軽減する、様々な適用のための過負荷防止回路を提供することを目的とする。そのため、本発明は、高い信頼性を有し、適度な製造費で実施することができ、電源源及び負荷の多様な要求に適合することができる、過負荷防止を達成することを目的とする。
【0011】
本発明の目的は、スイッチング要素と直列に接合したインダクタを有する過負荷防止回路を提供することにより達成される。スイッチング要素は、定められた電流制限に達するまで、インダクタを介して、電流を負荷へ供給するよう制御される。電流制限に達した後、インダクタの転流電流が、スイッチング要素に並列に接合される電圧依存要素を伝達された後、スイッチング要素は、オフ状態に制御される。
【0012】
より詳細には、本発明の目的は、電源と負荷間に過負荷防止用電気回路を提供することにより達成され、この回路は、
電源出力部及び負荷入力部間に直列で接続される制御可能なスイッチング要素と、
スイッチング要素の電流を直接または間接的に計測するセンサと、
実測電流に基づき、スイッチング要素を制御する制御手段とを備え、
過負荷防止は、
スイッチング要素に直列に接続されるインダクタと、
スイッチング要素に並列で接続される電圧依存要素とをさらに備え、
実測電流が、定められたトリガ閾値よりも高い時、制御手段は、スイッチング要素のスイッチをオフにするように適合され、
スイッチング要素がオフ状態の間、インダクタの電流は、電圧依存要素を流れるよう調整されることを特徴とする。
【0013】
本発明は、また、電源用の過負荷防止を提供する方法にも関し、
電流は、電源から、制御可能なスイッチング要素を通り、負荷へ伝達され、
スイッチング要素の電流は、計測され、スイッチング要素は、実測電流に基づき、制御され、
この方法は、
供給電流は、また、スイッチング要素に直列に接続されるインダクタを伝達され、
トリガ閾値は、制御手段に保存され、
スイッチング要素の実測電流は、トリガ閾値と比較され、
電流値が閾値を超過した時、スイッチング要素のスイッチが切られ、
スイッチング要素のスイッチが切られた後、負荷電流は、スイッチング要素と並列に接続される電圧依存要素を伝達されることを特徴とする。
【0014】
本発明は、さらに、電気力を負荷に供給するシステムに関し、このシステムは、電力を負荷の電力入力部に供給する電力出力部を有する1つまたは複数の電源、及び複数の電源出力部及び負荷入力部間に接続される過負荷防止回路を有し、システムは、過負荷防止回路の少なくとも1つが、本発明に係る回路であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一実施形態によれば、トリガ閾値の超過によりスイッチング要素のスイッチが切られた後に、スイッチング要素は、所定の遅延が経過した後、スイッチング要素のスイッチをオンにする。スイッチング要素のスイッチのオン及びオフの切替えの周期は、荷電電流がトリガ閾値を超過する限り、何度も繰り返され得る。遅延は、例えば、固定式、プログラム可能または制御可能であり得る。様々な遅延は、ヒステリシス制御、適応制御等を通り決定され得る。
【0016】
本発明の別の一実施形態によれば、過負荷防止回路は、例えば、継続的な過負荷状況の場合に、電力のスイッチをオフにするトリップ機能をも有する。トリップ機能において、電流レベル値及び対応するトリップ閾値時間長は、制御手段に保存される。スイッチング要素の電流は計測され、時間窓内の超過保存電流レベルは監視される。トリップ閾値時間が電流レベルに対して超過した場合、制御手段によりスイッチング要素のスイッチは、オフにされる。
【0017】
本発明の別の一実施形態によれば、トリガ閾値データ及び/またはトリップデータは、回路のインタフェースを通り制御手段に保存される。データは、過負荷防止回路のインストール前、間または後に保存することができ、データは、電源出力部及び負荷入力部の要求に応じて、決定することができる。本発明の一実施形態において、回路のインタフェースは、過負荷防止回路の動作状況及び/または履歴に関するデータを得るためにも使用される。
【0018】
本発明の別の一実施形態において、過負荷防止回路は、電源、または負荷に供給される電圧から受け取る電圧を計測する手段をも含む。実測電圧情報は、スイッチング要素の制御に使用され得る。実測電圧値は、許容電圧範囲の保存された情報と比較されてもよく、実測電圧値が許容範囲外にある場合、制御手段は、電力のスイッチをオフにしてもよい。
【0019】
本発明の別の一実施形態において、過負荷防止回路は、過負荷防止回路の周囲の温度及び/または部品温度を計測する手段をも含む。実測温度値は、許容温度範囲の保存された情報と比較されてもよく、実測温度値が許容範囲外にある場合、制御手段は、電力のスイッチをオフにしてもよい。
【0020】
本発明のいくつかの好ましい実施形態は、従属項に記載される。
【0021】
本発明は、従来技術の解決手段を越える著しい利点を有する。回路のスイッチング要素は、電流の線形制御に使用されない。そのため、スイッチング要素における電力消費は、小さい。また、電圧依存要素における電力消費の個々の期間は、短い。そのため、電力部品が安全動作領域にて動作する過負荷防止回路を提供することを実現可能である。結果として、電源同様、過負荷防止回路の高い信頼性を達成することが可能である。
【0022】
回路の制御部は、閾値電流、遅延、及び/または電圧の機能のような最適なスイッチングのためにプログラミングされ得る。必ずしも異なる部品を有する様々な種類の過負荷防止回路を有する必要はなく、同一の回路を、異なる要求を有する電源及び負荷の多くの範囲に適用することが可能である。
【0023】
本発明に係る過負荷回路は、少ない数の電力部品及び制御部品で実施されてもよく、そのため、回路は、経済的に製造され得る。
【0024】
本発明に記載されている利点及び他の利点は、以下の詳細な説明から、及び添付の図面を参照することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図3】本発明に係る例示的な過負荷防止回路を示す。
【
図4】本発明に係る例示的な過負荷防止方法を示すフロー図である。
【
図5a】本発明に係る例示的な過負荷防止回路における少ない負荷容量の荷電間のトランジスタ電圧及び電流を示す。
【
図5b】本発明に係る例示的な過負荷防止回路における大きな負荷容量の荷電間のトランジスタ電圧及び電流を示す。
【
図6】電流レベルとの相関関係で最大時間長を示すグラフである。
【
図7】本発明に係る複数の過負荷防止回路を含む、例示的な電力供給システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1及び2は、本明細書の従来技術の部分に記載した。
【0027】
図3は、本発明に係る例示的な過負荷防止回路を示す。電源は、グランドGND及び陰極電圧出力部−V
SUPPLY端子間に出力電圧を提供する。電源は、グランドGNDと陰極電圧入力部−V
LOADの端子を有する負荷に電力を提供する。Rは、抵抗負荷を示すために図中で使用され、Cは、容量性負荷を示すために図中で使用される。
【0028】
過負荷防止回路は、例えば、MOSFETまたはIGBTのような電力半導体であり得るスイッチング要素Qを有する。スイッチングトランジスタは、スイッチングトランジスタのゲートGに接続される制御出力部36を有する制御手段35を用いて制御される。過負荷防止回路は、スイッチング要素Qに直列で接続されるインダクタLを有する。
図3の回路において、スイッチング要素のソースSは、電源の陰極端子−V
SUPPLYに接続され、スイッチング要素のドレインDは、インダクタLの第1端子に接続され、インダクタLの第2端子は、負荷の陰極入力端子−V
LOADに接続される。スイッチング要素Qが、導電状態(スイッチが入った状態)にある場合、供給電流は、スイッチング要素及びインダクタを通り負荷へ流れる。
【0029】
回路は、その電流が部品を通過する電圧の非線形関数である電圧依存要素Zをも有する。電圧依存要素は、例えば、金属酸化バリスタを用いて実装され得る。電圧依存要素を通過する電圧が小さい時、部品を通る電流は小さく、回路の機能に対しごく少量である。電圧依存要素を通過する電圧が部品の制限電圧uを超過する時、部位の電流は急速に増大する。電圧依存要素は、スイッチング要素Qと並列に、そのソースS及びドレインDの端子と接続される。従って、電圧依存要素は、スイッチング要素を通過する電圧が電圧依存要素の制限電圧を十分に超えて増大することを妨げる。制限電圧は、スイッチング要素の降伏電圧よりも著しく低く選択され、それにより電圧依存要素は過負荷からスイッチング要素を保護する。バリスタは、電圧依存要素に適しているが、ツェナーダイオードまたは電圧抑制材料のような制限電圧を有する他の種類の抵抗性材料も使用され得る。
【0030】
過負荷防止回路は、負荷に供給される電流を計測する電流センサ38を有する。電流電サは、スイッチング要素のソース及びドレイン端子に設置され得るか、または電源と過負荷防止回路間の−V
SUPPLYリード線に、または過負荷防止回路と負荷間の−V
LOADリード線に設置され得る。あるいは、負荷電流を、電源と負荷間のグランドのような、他のいくつかの点で計測しても良い。
【0031】
電流センサ38は、スイッチング要素Qの制御において、検出電流値の情報を使用する制御手段35に接続される。制御手段35は、マイクロコントローラおよび適切な入力/出力インタフェース回路のようなプロセッサと共に実装され得る。
【0032】
次に、
図3の回路の動作を、
図4a、4b、5a及び5bをさらに参照して記載する。
図4aは、トリガ閾値制御を使用することにより、過負荷防止を提供する例示的な方法のフロー図を示す。初めに、段階40において、最大負荷電流を超過することにより、過負荷防止回路がトリップ状態にないことを確認する。トリップ状態の情報は、回路のトリップ制御工程から受け取る。トリップが発生している場合、トリガ制御機能を、トリップ状態が正常にリセットされるまで停止する。
【0033】
段階41において、スイッチング要素Qのスイッチがオンにされる。スイッチング要素のスイッチがオンにされると、負荷は、継続して負荷防止回路に接続され、それにより供給電圧は、負荷に印加されることが可能である。あるいは、負荷は、過負荷防止回路に負荷を接続する分離型電力スイッチを含み得る。
【0034】
段階42において、供給電流は、電流センサ38を用いて計測される。制御手段35は、センサ信号を受け取り、信号を実測電流値に変換する。制御手段は、さらに、段階43において、所定のトリガ閾値と実測電流値を比較する。負荷が、多くの容量性負荷部品を有する場合、実測電流値は、トリガ閾値を超過してもよく、段階44において、スイッチング要素のスイッチがオフにされる。スイッチング要素のスイッチがオフにされると、インダクタに蓄積された誘導性エネルギーにより、電流は、インダクタLを通り、流れ続ける。これにより、電圧は、点Pでスイッチング要素及び電圧依存要素に接続されるインダクタ端子で増大する。負荷電流が電圧依存要素Zを通り流れ始めた後に電圧依存要素Zを通過する電圧が制限電圧に達する。
【0035】
スイッチング要素Qは、所定の期間、オフ状態に保持される。これは、トリップが発生しているかどうか確認するために、制御工程を段階40に戻した後、段階45において、所定の遅延を印加することにより実施される。段階40〜45は、実測電流が段階43において、トリガ閾値を超過する、または過負荷防止回路がトリップする限り繰り返される。遅延は、例えば、固定式、プログラム可能、または制御可能であり得る。様々な遅延は、ヒステリシス制御、適応制御等を通して決定され得る。
【0036】
図5a及び5bは、負荷容量の荷電の間、時間(横軸)との相関関係で電流及び電圧(縦軸)を示す例示的なグラフである。
図5aは、スイッチング要素を流れる電流のグラフ51a、及びスイッチングトランジスタQ、インダクタ及び電圧依存要素Zの接続点Pにおける電圧のグラフ52aを示す。
図5aは、負荷容量が、25μFのように少ない状況を示す。負荷容量を荷電するために要求されるピーク電流55aは、トリガ閾値を超過せず、そのため、荷電の間、スイッチング要素のスイッチがオフにされることはない。
【0037】
図5bは、負荷容量が1000μFのように大きい状況を示す。
図5bは、スイッチング要素を流れる電流のグラフ51b、及び負荷における電圧のグラフ52bを示す。負荷容量が大きいため、電流は、点55bにおいてトリガ閾値を超過し、そのためスイッチング要素のスイッチはオフにされる。スイッチング要素のスイッチのオン/オフの切換え手順は、負荷電流がその公称値に安定した後、負荷容量が荷電されるまで数回繰り返される。
【0038】
図4bは、本発明に係る過負荷防止回路において、トリップ制御を実施する例示的な方法のフロー図を示す。最初に、監視される電流段階、及びトリップ閾値として使用される時間長を決定する。その後、スイッチング要素の電流は、段階46において、計測される。トリガ制御に使用されるものと同様の電流計測を、トリップ制御に使用し得る。
【0039】
電流が電流段階を超過する時、その後、例えば、特定のタイムウィンドウ内に、どのくらいの時間、電流段階の超過が発生したかが監視される。段階48において、該時間長が監視された電流段階に定義される時間閾値を超過したかどうかが確認される。時間閾値を超過しない場合、電流計測及び時間計測を継続する。時間閾値を超過する場合、段階49において、制御手段35によりスイッチング要素のスイッチをオフにする(それは、過負荷防止回路がトリップすることを意味する)。トリップ状態の情報は、トリップ時にスイッチング要素のスイッチがオンにされることを妨げるためにトリガ制御でも使用される。
【0040】
トリップ閾値の超過は、過負荷状況が発生していることを意味し、これにより、電力の供給を継続する場合、電源は損傷を受け得る。従って、スイッチング要素は、自動的にオンに戻されることはない。例えば、トリップ後に負荷への電力のスイッチをオンにするために、制御手段でトリップ状態をリセットする必要があり得る。
【0041】
トリップ監視を実施するいくつかの可能性があることに留意されたい。電流段階の数は、例えば、6であり得るが、あるいは、それ以下でもそれ以上でも良い。電流計測のサンプリング時間は、例えば1ミリ秒であり得るが、あるいは、それ以下でもそれ以上でも良い。それらパラメータは、プログラム可能であり得る。
【0042】
トリップ監視のための計測用タイムウィンドウを適用することが好ましい。そのようなタイムウィンドウは、例えば、1秒の長さを有し得る。タイムウィンドウの間、監視される電流レベルの超過は、その後、記録され累積される。電流レベルの時間閾値がタイムウィンドウ内で超過する場合、スイッチング要素のスイッチがオフにされる(すなわち、トリップする)。タイムウィンドウを終えた後、記録された電流の超過時間値は、リセットされ、新しいタイムウィンドウを超過した電流レベルの累積時間をとして開始され得る。新しいタイムウィンドウは、電流レベルが次に超過する時に開始し得る。タイムウィンドウを自動的に繰り返すことも可能である。
【0043】
あるいは、スライディングタイムウィンドウを適用することも可能である。この場合、超過電流レベルの記録される時間長は、最新のタイムウィンドウ内に記録されるデータから累積される。この手順は、より正確であるが、より効率的なデータ処理を必要とする。
【0044】
切換え監視及びトリップ監視の工程は、並行工程として上述される。あるいは、工程が経時的である実施を有することも可能である。
【0045】
図6は、電流値との相関関係で最大時間長を示す例示的なグラフ61である。横軸は、時間長を示し、縦軸は、電源の瞬間電流値とその公称電流値間の比率を示す。
図6のグラフは、ETSI(European Telecommunications Standards Institute)の標準EN300 132−2により決定される。グラフは、公称電圧及び最大負荷における電気通信装置の最大突入電流を示す。グラフの値を超過することを避けるため、トリップ閾値には、グラフで示されるよりも短い時間長を使用することが好ましい。グラフの時間値及び過負荷防止装置のトリップ閾値間の差は、過負荷防止装置の電流の測定精度、時間軸分解能等に依存する。
【0046】
図7は、8つの負荷91〜98に電力を供給する例示的なシステムを示す。負荷91及び93〜97は、1つの電力入力部を有し、負荷92は、2つの電力入力部を有し、負荷98は、3つの電力入力部を有する。システムは、3つの出力部V1、V2及びV3を有する第1電源71を有する。第1電源は、負荷91及び92に電力を提供する。第2電源72は、2つの出力部V4及びV5を有する。第2電源は、負荷93及び94に電力を提供する。第3電源73は、3つの負荷95、96、及び97に電力を提供する1つの電力出力部V6を有する。第4電源74は、単一負荷98の3つの電力入力部に電力を提供する1つの出力部を有する。負荷91〜95の各6つの電力接続は、個々の過負荷防止回路OL1〜OL6を有する。負荷96及び97は、共通の過負荷防止回路OL7を有する。負荷98は、2つの電力入力部のための1つの過負荷防止回路OL8及び第3の電力入力部のための別の過負荷防止回路OL9を有する。
【0047】
システムにおいて、電源、過負荷防止回路または負荷の数は、記載される数に限定するわけではないことに注意されたい。従って、システムは、1つまたは複数の電源を有してもよく、電源は、1つまたは複数の電力出力部を有し得る。1つの過負荷防止装置は、1つまたは複数の電源の1つまたは複数の出力部から電力を受け取る。1つの過負荷防止回路は、1つまたは複数の負荷に電力を提供してもよく、負荷は、1つまたは複数の電力入力部を有し得る。またさらに、1つの負荷は、1つまたは複数の過負荷防止回路から電力を受け取り得る。過負荷防止回路の入力部及び出力部は共通のグランドを有することが好ましい。
【0048】
過負荷防止回路は、例えば、直列または並列制御インタフェース80でプログラミング可能である。過負荷防止回路は、個別の制御に、個別のアドレスを有し得る。過負荷防止回路の遠隔制御のために、有線または無線データ転送を調整することも可能である。制御入力データは、例えばトリガ閾値、遅延値、及びトリップ閾値データを含み得る。制御出力データは、例えば、過負荷防止回路の動作に関する状態及び履歴情報を含み得る。例えば、装置のオン/オフを切り替えるために遠隔制御を使用することも可能である。
【0049】
例えば、過負荷防止回路は、初めは、製造間にプログラミングされてもよく、及び/またはそれらは、インストール及びメンテナンス間にローカルにプログラミングされてもよく、及び/または、中央管理機能から遠隔でプログラミングされ得る。過負荷防止回路は、そのような遠隔制御センタへ、履歴、状態及び計測情報を送信し得る。過負荷防止回路が、それらが接続される電源のプロセッサに、その状態及び他のあり得る情報を転送する。この方法で、例えば、その出力部において過負荷防止回路がトリップしている場合、電源のスイッチをオフにしてもよい。
【0050】
本明細書において、過負荷防止回路の他の様々な構成要素の構造は、上述の説明及び当業者の一般的な知識を使用して実施され得るため、より詳細には記載しない。スイッチング要素、インダクタ、及び電圧依存要素のような各部品は、1つの構成要素を含み得り、また2つ以上の構成要素を含有しても良い。構成要素の種類は、一例として、述べており、当業者であれば、上述の機能を提供するいくつかの種類の代替え構成要素を考えることができる。
【0051】
過負荷防止回路の制御機能は、ASIC回路を用いて実施することが可能であり、それにより、単純な実施を達成するであろう。しかし、より高度な機能を達成するためには、デジタルでの実施が好ましい。マイクロコントローラ/プロセッサを使用する時、回路は装置で実行される適切なプロセッサプログラムを必要とする。既知の装置またはシステムを本発明に記載の機器に変えるためには、ハードウェアの変更に加えて、マイクロプロセッサに上述の機能を実行するよう指示する機械可読の指示のセットをメモリ手段に保存する必要がある。そのような指示をメモリに作成及び保存することは、本特許出願の教えと組み合わせた時、当業者の能力内にある既知の技術を含む。
【0052】
上述のように、本発明に係る解決手段のいくつかの実施形態のみが、記載されている。本発明に記載の原理は、例えば、実装の詳細及び使用の範囲を変更することにより、特許請求の範囲により定義される範囲の枠内で自然に変更させることが可能である。
【0053】
例えば、上述の実施形態は、切換え及びトリップ機能の制御に基づくデジタル、マイクロコントローラを含んでいる。しかし、代替え品として、例えば、切換え及び/またはトリップ機能を実施するために、適切なフィルタを有するアナログ回路を使用することも可能である。
【0054】
本発明は、負荷が容量性負荷部品を有する実施形態と共に記載されているが、本発明に係る過負荷防止回路が、負荷インピーダンスを有する負荷に適用可能であることは、明らかである。
【0055】
本発明は、電気通信システム、電気車両アプリケーション、ソーラーパネル等のような様々な目的でDC電源に適用することができる。