特許第5897469号(P5897469)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5897469接着強度を強化したエラストマー部材、特に車両タイヤ用修復パッチ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5897469
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】接着強度を強化したエラストマー部材、特に車両タイヤ用修復パッチ
(51)【国際特許分類】
   B29C 73/10 20060101AFI20160317BHJP
【FI】
   B29C73/10
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-535651(P2012-535651)
(86)(22)【出願日】2010年10月8日
(65)【公表番号】特表2013-508198(P2013-508198A)
(43)【公表日】2013年3月7日
(86)【国際出願番号】EP2010006171
(87)【国際公開番号】WO2011054431
(87)【国際公開日】20110512
【審査請求日】2013年6月26日
(31)【優先権主張番号】102009050899.6
(32)【優先日】2009年10月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512103181
【氏名又は名称】レマ ティプ トップ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】カスペル, クリスツィアン
(72)【発明者】
【氏名】ラウフ, クリスツィアン
(72)【発明者】
【氏名】シェウングラベル, パトリック
【審査官】 粟野 正明
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04285382(US,A)
【文献】 米国特許第03039509(US,A)
【文献】 米国特許第05643648(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 73/00−73/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両タイヤ用の修復パッチであって、
−カバー層(10)と、
−該車両タイヤの壁(80)に連接するための連接層(30)と、
−該連接層(30)と該カバー層(10)の間に配置された少なくとも1個の中間層(20)と、
を有し、
−該連接層(30)は該車両タイヤとの加硫前に該修復パッチと該車両タイヤ間の連接が該修復パッチの少なくともその自重で伝達する初期接着力を有
−該連接層(30)は車両タイヤとの加硫後に少なくとも5N/mmの剥離値を有
該連接層(30)における素練り状の天然ゴムの該比率は20%〜70%であって、
該連接層(30)における液体ポリイソプレンゴムの該比率は2%〜10%であって、
該連接層(30)における樹脂の比率は1%〜10%であって、
該連接層(30)は90℃より高い時のみ反応する促進システムを含み、
該連接層の該促進システムは少なくとも0.5%のチアゾール促進剤と少なくとも0.2%のグアニジンのグループからの第二促進剤或いは他の任意のアミニック(aminic)促進剤を少なくとも0.2%を含み、
該連接層(30)の該初期接着力は該車両タイヤへの加硫前で少なくとも1N/mmであること、を特徴とする修復パッチ。
【請求項2】
該連接層(30)は、素練り状の天然ゴム、液体ポリイソプレンゴム及び樹脂を含むこと、を特徴とする請求項1に記載の該修復パッチ。
【請求項3】
少なくとも1個の剥離性保護フィルムが連接層(30)を使用されるまで泥の堆積から保護するため配設されていること、を特徴とする請求項1又は2に記載の該修復パッチ。
【請求項4】
該中間層(20)は構造化された形式で配置された複数個のフィラメント状のインサート(70)を有すること、を特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の該修復パッチ。
【請求項5】
損傷した車両タイヤを修理するために請求項1乃至のいずれかに記載の修復パッチを使用すること。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれかに記載の修復パッチを連接する方法であって、
車両タイヤを配設し、
−該車両タイヤの修復個所に該修復パッチを付着せしめ、
−該車両タイヤ上で該修復パッチを加硫し、該剥離値は該車両タイヤと該修復パッチの該連接層(30)の該加硫後に少なくとも5N/mmとなり、
−該車両タイヤに該修復パッチを付着せしめる前に、該修復パッチを該修復パッチの該連接層(30)の該加硫温度より低い予熱温度で予熱する、
工程を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエラストマー部材用であって特に車両タイヤ用の修復パッチ、及び追加の接着剤を使用することなく修復パッチの加硫前に強化した初期接着力を有する修復パッチでエラストマー部材を修復する方法に関する。更に、修復パッチのエラストマー部材への連接は加硫後に増強される。
【背景技術】
【0002】
車両タイヤの損傷を修復する際、ホイールのトレッド領域における小さなステッチの損傷の場合は所謂複合修復ボディが使用されるが、一方で所謂コーン形成して損傷個所を下処理した後のホイールのトレッド領域又は側壁における大きな損傷の場合は生ゴムで満たされ、そして損傷領域で遮断された補強キャリヤは対応する補強キャリヤを含む修復パッチにより架橋される。補強キャリヤ内での力の流れが車両タイヤ及び修復パッチから中間ゴム層へ伝達されなければならないので、連接層の製造において、特に車両タイヤと修復パッチの間に安全かつ恒久的に連接する高い必要性が生ずる。
【0003】
車両タイヤにおける既知の修復パッチの設置方法では、2個の部材が修復パッチと車両タイヤの恒久的な連接を保証するために必要とされ、即ちそれらは所謂修復パッチの連接層と接着剤である。
【0004】
通常、連接層は素練りされた天然ゴムと樹脂からなり、促進剤を含まない。
【0005】
接着剤は溶媒に溶解された天然ゴム、樹脂及び促進剤からなり、かかる促進剤は反応、特に加硫、するのに必要であって促進剤が無い場合、連接の加硫が生じない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両タイヤの既知の修復方法においては、修復パッチが高構造(high structure)を伴う活性表面を作るために適用される前に、修復個所は清潔にされ粗面化される。次の工程において接着剤は修復個所に適用される。次に、接着剤の溶媒は蒸発しなくてはならない。その後、修復パッチは修復個所に接触せしめられ、圧接せしめられる。選択された方法によっては、加硫が室温で圧力のなしで即ち適当な装置(例えばオートクレーブ内又は加熱プレス)を使用することによる圧力及び温度の影響下で行うことが出来る。これらの方法の欠点は溶媒が揮発するのに時間を要することである。
【0007】
更に、既知の接着剤は有機溶剤に基づくため、それらは基本的に環境及び使用者へ危険であるとされ、これらの溶剤のいくつかは多くの国でゴムからなる物を修理するためにはもはや使用できない。更に、溶剤の揮発は修復パッチの接着性が強く揮発の程度に依存するので要求が厳しい。接着剤が乾燥しすぎた場合には十分な接着力が達成されない(乾きすぎ)。反対に、乾燥或いは揮発時間が短い場合には修復個所に多量の溶剤が残留され、修復パッチの接着性が保証されない。加硫温度以下の場合は特に、修復個所内に残留した溶剤が気泡の形成を引き起こすためである。引火性の溶剤が使用される際には、出火しないようにするための対応する方法、例えば吸引又は換気による方法、を取らなければならない。
【0008】
本発明の目的は、エラストマー部材を伴う加硫前に修復パッチを固定するための十分な高強度の初期接着力が接着剤の使用をすることなく達成される一方、他方で加硫後の連接強度が少なくとも従来の方法の値以上である修復パッチを提供することである。更に、修復パッチはこの十分な高強度の初期接着力を損なうことなく長期の保存期間を有すことを意図されている。
【0009】
この目的は請求項1の特徴と同様に請求項14の方法による発明に従って達成される。本発明の有利な設計及び好適実施形態は従属項に記載されている。
【0010】
しばしば同等に用いられる、“自動接着”、“接着性”、“自己接着”或いは“初期接着力”という語は、表面の剥離に対向して接触しながら強固な連接を形成するために同じ原料からなる2個の表面の性能を指す。この特性の定量的特性評価のため、剥離に要する力が提示され、剥離状態は破壊力学の知識及び使用定義基準(use−specific criteria)より決められている。
【0011】
しかしながら、下記“初期接着力”の用語は同一原料からなる2個の表面の連接に限定されるだけでなく、異なる原料からなる連接をも網羅する。
【0012】
初期接着力が小さすぎる場合、修復パッチが車両タイヤに取り付けられた後に加硫工程の完了まで所望の設置位置を維持する保証はなく、それ故にタイヤの内側壁と修復パッチの連接層との結合は共に保証されない。しかし初期接着力が強すぎる場合、これは望ましくない空洞域の発生を促進し、それにより低品質な車両タイヤと連接層の低品位な融着が続く加硫工程にて生じうる。
【0013】
従って、初期接着力は修復パッチが配設される際に全表面、つまりチューブレスタイヤ内での内側ライナ及びチューブタイプタイヤ内でのゴム化されたカーカス、に渡って一様な結合が保証されるように適合されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によると、エラストマー部材、特に車両タイヤ用の修復パッチであって、修復パッチはカバー層と、エラストマー部材の壁を連接するための連接層と、連接層とカバー層の間に配置された少なくとも1個の中間層と、を有する。連接層はエラストマー部材との加硫前に修復パッチとエラストマー部材間の連接が修復パッチの少なくともその自重で伝達する初期接着力を有し、連接層はエラストマー部材との加硫後に少なくとも5N/mmの剥離値を有する。
【0015】
剥離力用の規定された値は(試験片である)ブチルゴムベースの基準材料に関する。異なる製品のトラックタイヤとの比較試験において剥離値は基準材料と比較して銘柄により1から3倍高い値が得られる。
【0016】
修復パッチである本発明の構成は、接着剤の塗布が除外され、それ故に溶媒蒸気は換気により放出せしめられない、という利点を示す。従って換気時間はもはや不要であるから、修復工程(course)が加速される。更に、上述した防火及び溶媒蒸発の吸引が除かれる。
【0017】
本発明の修復パッチの他の利点は初期の接着力を得るための接着剤を使用しないことである。このことは連接層の加硫前に修復パッチと壁との連接を実現する。またこの工程は修復個所で修復パッチをエラストマー部材に固定する。
従って初期の接着により、特にオートクレーブ中で車両タイヤの加硫に使用するために、エラストマー部材に適用した後、本発明の修復パッチは連接層の加硫またはオートクレーブまでの搬送の間および後の車両タイヤの配向の際も所望設置位置を維持することが出来る。
【0018】
更に、本修復パッチは設置時の必要初期接着力を生じ、又は有するのでその取扱い及び保存期間が改良されるという利点を示す。
【0019】
初期接着力に関する剥離値を測定するための試験手順はDIN EN 28510又はISO 8510に基づく手順であるのが好ましい。剥離値を測定する前に、まず修復パッチは予熱温度に加熱又は室温で使用されてよく、前記パッチは然る後にエラストマー部材或いは構成試験片(component test piece)に適用される。続いて、試験片を室温で安置して1時間後、DIN EN 28510又はISO 8510に基づく手順がなされる。
【0020】
好適には、エラストマー部材への加硫前の本修復パッチにおける連接層の初期接着力は少なくとも0.8N/mmであってよい。
【0021】
所謂高温剥離値において特に(この目的を達成するため、試験片は試験前に90℃に加熱せしめられる)、本修復パッチは従来の修復パッチ、即ち接着剤の使用により固定されたものよりも高い値を示す。本態様を用いる理由(one cause)はとりわけ、接着層が存在しないことでより良い連接がエラストマー部材と修復パッチの連接層との間で達成されるということである。接着剤に含まれた固体、特に初期接着力のために追加された樹脂は樹脂に由来する軟化する性質により高温では特に剥離値の低下を引き起こすように思われる。
【0022】
更に、修復パッチにおける連接層の初期接着力は、少なくとも室温であって且つ連接層の加硫温度より低い予熱温度の選択を介してエラストマー部材へ加硫前に適合される。
【0023】
好適には、修復パッチにおける連接層は少なくとも1N/mmの剥離値が加硫前に最初の温度幅において達成されるように適合されてよい。好適には、最初の温度幅の最高温度は連接層の加硫温度よりも低い。
【0024】
修復パッチの好適な変形例において、連接層は最初の温度幅が実質的に60℃と70℃の間であり、且つ連接層の加硫温度以下であって、剥離値または初期接着力が急激に上昇する温度幅に形成されてよい。最初の温度幅は例えば最高温度と最低温度の差が実質的に10Kであってよい。更に、所定の温度幅は最高温度と最低温度の差が実質的に5Kであってもよい。
【0025】
更に、修復パッチでは、連接層における剥離値が最初の温度幅の温度よりも高い温度で実質的に一定に維持或いは増加するように形成されてもよい。
【0026】
更に、本修復パッチにおいて、連接層は素練り状の天然ゴムを20から70%含んでもよい。更に、連接層は液体ポリイソプレンゴムを2から10%含んでもよい。更に、連接層は樹脂、好適にはコレジン樹脂、を1から10%含んでもよい。これら3要素の組み合わせは温度依存するとみなされる初期接着力に特に有効であることが判明した。
【0027】
好適には、修復パッチにおいて、連接層における素練り状の天然ゴムの割合は35から60%であってよい。更に、連接層における液体ポリイソプレンゴムの割合は好適には5から7%であってよい。更に、連接層におけるコレジン樹脂の割合は好適には2から4%であってよい。混合要素は100%となるように充填剤(例えばカーボンブラック、シリカ、チョーク)、反応中間剤(硫黄、遅延剤、促進剤、酸化亜鉛)、可塑剤、加工助剤(ステアリン酸)及び抗酸化物質から構成される。
【0028】
更に、修復パッチにおいて、連接層は90℃より高温でのみ反応する促進システムを含んでよい。
【0029】
好適には、本修復パッチにおいて、連接層の促進システムはチアゾール促進剤又はスルフェンアミド、カルバミン酸塩、チウラムからなるグループからの促進剤を少なくとも0.5%、グアニジン或いは任意の他のアミン系グループの第二の促進剤を少なくとも0.2%含んでよい。促進剤は常温で反応が無く製品の保存期間がそれ故に保証されるよう選択せしめられる。チアゾール促進剤は90℃の温度で設定される架橋結合を引き起こす。第二の促進剤は反応速度を上げ、それ故に架橋結合に要する時間を短くする。
【0030】
修復パッチの好適変形例において、使用されるまで連接層を汚染から保護する少なくとも1個の剥離性保護フィルムが配設されてよい。
【0031】
更に、修復パッチにおいて、中間層は構造様式で実質的に配置された複数個のフィラメント状のインサートを有していてよい。
【0032】
更に、本発明は損傷した車両タイヤを修復するための修復パッチの使用を含む。
【0033】
車両タイヤへの修復パッチを連接する方法はエラストマー部材を配設し、エラストマー部材、特に修復個所、に修復パッチに付着せしめる工程を含んでよい。更に、かかる方法はエラストマー部材上で修復パッチを加硫し、剥離値がエラストマー部材と修復パッチの連接層の加硫後に少なくとも5N/mmとなる工程を含んでよい。
【0034】
更に、かかる方法はエラストマー部材に修復パッチを付着せしめる前に、修復パッチを修復パッチの連接層の加硫温度より低い予熱温度に予熱する工程を含んでよい。
【0035】
本発明の有利な設計及び更なる詳細について図面を参照し実施例を使用して以下で述べる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明による車両タイヤ用の修復パッチの側面図。
図2】予熱温度に依存する多様な修復パッチの剥離値を示すグラフ。
図3】試験温度に依存する多様な修復パッチの剥離値を示すグラフ。
図4】エラストマー部材の原料の修復パッチの剥離力の依存性を示すグラフ。
図5】本発明の修復パッチの保存期間と剥離力の依存性を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1を参照すると、本発明による車両タイヤ用の修復パッチ10が摸式的に図示されている。カバー層10が修復パッチ1の上面に形成されており、それは修復前後において初期接着力を有さない。カバー層10に隣接する中間層20は複数個のフィラメント状のインサート70を有して形成される。これらインサート70は通常1個以上の層内で中間層20の厚さ全域に渡って配設され、夫々の層はフィラメント状のインサートの構造配列を有している。中間層20内の個別の層の配向性は互いに異なっていてよい。トレッド又は側壁領域での大きな損傷の場合は特に、これらのインサート70が損傷領域で遮断される補強キャリヤを架橋するのに役立つ。
【0038】
修復パッチ1の下面には連接層30が形成されており、それは修復の間及び然る後に車両タイヤの壁80と接する。更に、連接層30は車両タイヤの加硫前後で天然ゴム塊50と接する。
【0039】
損傷した車両タイヤの修復のフレーム内で車両タイヤの損傷部分は粗面化され、かくして塵や泥が除去せしめられ、車両タイヤ内に含まれる部材の損傷していない層が暴露せしめられ、実質上円錐形状が車両タイヤ内の修復個所60に形成される。従って、修復個所60は連接層30の加硫前に天然ゴム塊50で満たされる。
【0040】
次に、対応する結合温度に予熱された修復パッチ1は修復個所60に適用され、寸法は修復個所60が修復パッチ1により完全に覆われるように選定される。更に、修復パッチ1の寸法はタイヤの壁80が安定して連接するため連接層30によって十分覆われるように選定されるべきである。
【0041】
修復パッチを圧接した後、修復個所及び修復パッチの加硫が適当な装置により又はオートクレーブ内で所定圧力及び温度下でおこなわれる。
【0042】
ここで、車両タイヤの構造は車両タイヤの壁80が内側ライナ90により形成されたラジアルトラックタイヤのフランク領域(flank area)用に図示され、カーカス100は後に隣接するインサートの形でコード150を有している。車両タイヤの側壁ゴム110はカーカス100に隣接して位置せしめられている。
【0043】
図2は接着剤を使用した関連技術による既知の修復パッチと接着剤を使用しない本修復パッチの予熱温度の依存性を計測した剥離値の比較を示している。
【0044】
図2で示された剥離値2は夫々、DIN EN 28510及び/又はISO 8510に基づいた標準化された試験手順に従って、1時間後及び室温に試験片を冷却した後に測定したものである。
【0045】
修復パッチ(四角形の凡例で図示される)の本連接層は室温で既に所定の初期接着力及び、既知の修復パッチ(三角形の凡例で図示される)と比較して所定の剥離値を示し、修復パッチを設置場所へ固定する際の修復パッチの取り扱いはまだ影響を受けていない。
【0046】
本連接層の修復パッチへの固定及び連接層の加硫前に加熱される際、計測される剥離値の急激な上昇が60℃から70℃の範囲で観測されるであろう。予熱温度が70℃より高く選択された場合、70℃での剥離値に対してわずかな増加が示される。
【0047】
本工程において、本連接層はチューブタイプのタイヤ、即ち車両タイヤの内側ライナが主にブチルゴムから構成される場合とチューブタイプのタイヤ、即ちタイヤカーカス、の場合の両方で安全な接着を可能とする。
【0048】
本連接層を有する修復パッチは高温加硫用に使用されるのが好適である。しかしながら原理上、実施例は連接層が熱により活性化せしめられ、加硫工程が室温で続いて実行されてよいことが理解されうる。
【0049】
図3は試験温度による様々な修復パッチの剥離値のグラフを示す。この目的を達成するため、各修復パッチの剥離値を得るため様々な試験温度で既知の修復パッチと比較された。従って、本修復パッチの20℃での剥離値が既知の修復パッチに対して4%増加し、かくして本修復パッチの改良された強度は実現された。修復パッチと試験片間の連接強度では90℃の試験温度でより大きな増加が見られ、そこでの本修復パッチの剥離値は既知の修復パッチに対して13%大きくなった。
【0050】
図4は車両タイヤにおける、エラストマー部材の原料である修復パッチの剥離値の依存性のグラフを示す。図の棒は夫々、修復パッチが先行してオートクレーブ内で車両タイヤ或いは試験材料に加硫せしめられた後の、20℃の試験温度における剥離値を示す。
【0051】
試験材料を使用する際、即ちその試験片の設計は車両タイヤに対応するのではなく実質上長方形の平坦な試験片の場合、参照剥離値5.4N/mmが計測された。本修復パッチが製品A又は製品Bのタイヤに取り付けられる場合は対照的に、上述の如く夫々14.6N/mm及び16.7N/mmの剥離値を生ずるであろう。それとは対照的に、製品Cの車両タイヤの連接の場合、剥離値は5.5N/mmであった。
【0052】
図5は本修復パッチの剥離値の保存期間への依存性のグラフを示す。例えば、室温に相当する試験温度では保存期間が長期化すると剥離値の減少が観測され、剥離値は実質的に24カ月の間の参照剥離値に相当する。例えば、参照剥離値は図4の試験片に適用された連接する本修復パッチ上で室温に相当する試験温度にて保存期間無しで計測された剥離値から決定される。単に24カ月の期間を超える保存期間の場合は、初期値の約3分の2へ剥離値の減少がこの例で見られる。
【0053】
定性的等価工程は試験片が90℃に予め加熱された時の剥離値で検討する際に見られ、本例における修復パッチの参照値は室温での試験温度に相当する値の約3分の1である。
【0054】
示されたような実施態様は単なる実例として解釈され、限定するものではない。多くの実施形態が本特許請求の範囲を逸脱することなく構成されてよい。
【符号の説明】
【0055】
1:修復パッチ
10:カバー層
20:中間層
30:連接層
50:天然ゴム塊
60:修復個所
70:インサート
80:車両タイヤの壁
90:内側ライナ
100:カーカス
110:側壁ゴム
150:コード
図1
図2
図3
図4
図5