【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両タイヤの既知の修復方法においては、修復パッチが高構造(high structure)を伴う活性表面を作るために適用される前に、修復個所は清潔にされ粗面化される。次の工程において接着剤は修復個所に適用される。次に、接着剤の溶媒は蒸発しなくてはならない。その後、修復パッチは修復個所に接触せしめられ、圧接せしめられる。選択された方法によっては、加硫が室温で圧力のなしで即ち適当な装置(例えばオートクレーブ内又は加熱プレス)を使用することによる圧力及び温度の影響下で行うことが出来る。これらの方法の欠点は溶媒が揮発するのに時間を要することである。
【0007】
更に、既知の接着剤は有機溶剤に基づくため、それらは基本的に環境及び使用者へ危険であるとされ、これらの溶剤のいくつかは多くの国でゴムからなる物を修理するためにはもはや使用できない。更に、溶剤の揮発は修復パッチの接着性が強く揮発の程度に依存するので要求が厳しい。接着剤が乾燥しすぎた場合には十分な接着力が達成されない(乾きすぎ)。反対に、乾燥或いは揮発時間が短い場合には修復個所に多量の溶剤が残留され、修復パッチの接着性が保証されない。加硫温度以下の場合は特に、修復個所内に残留した溶剤が気泡の形成を引き起こすためである。引火性の溶剤が使用される際には、出火しないようにするための対応する方法、例えば吸引又は換気による方法、を取らなければならない。
【0008】
本発明の目的は、エラストマー部材を伴う加硫前に修復パッチを固定するための十分な高強度の初期接着力が接着剤の使用をすることなく達成される一方、他方で加硫後の連接強度が少なくとも従来の方法の値以上である修復パッチを提供することである。更に、修復パッチはこの十分な高強度の初期接着力を損なうことなく長期の保存期間を有すことを意図されている。
【0009】
この目的は請求項1の特徴と同様に請求項14の方法による発明に従って達成される。本発明の有利な設計及び好適実施形態は従属項に記載されている。
【0010】
しばしば同等に用いられる、“自動接着”、“接着性”、“自己接着”或いは“初期接着力”という語は、表面の剥離に対向して接触しながら強固な連接を形成するために同じ原料からなる2個の表面の性能を指す。この特性の定量的特性評価のため、剥離に要する力が提示され、剥離状態は破壊力学の知識及び使用定義基準(use−specific criteria)より決められている。
【0011】
しかしながら、下記“初期接着力”の用語は同一原料からなる2個の表面の連接に限定されるだけでなく、異なる原料からなる連接をも網羅する。
【0012】
初期接着力が小さすぎる場合、修復パッチが車両タイヤに取り付けられた後に加硫工程の完了まで所望の設置位置を維持する保証はなく、それ故にタイヤの内側壁と修復パッチの連接層との結合は共に保証されない。しかし初期接着力が強すぎる場合、これは望ましくない空洞域の発生を促進し、それにより低品質な車両タイヤと連接層の低品位な融着が続く加硫工程にて生じうる。
【0013】
従って、初期接着力は修復パッチが配設される際に全表面、つまりチューブレスタイヤ内での内側ライナ及びチューブタイプタイヤ内でのゴム化されたカーカス、に渡って一様な結合が保証されるように適合されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によると、エラストマー部材、特に車両タイヤ用の修復パッチであって、修復パッチはカバー層と、エラストマー部材の壁を連接するための連接層と、連接層とカバー層の間に配置された少なくとも1個の中間層と、を有する。連接層はエラストマー部材との加硫前に修復パッチとエラストマー部材間の連接が修復パッチの少なくともその自重で伝達する初期接着力を有し、連接層はエラストマー部材との加硫後に少なくとも5N/mmの剥離値を有する。
【0015】
剥離力用の規定された値は(試験片である)ブチルゴムベースの基準材料に関する。異なる製品のトラックタイヤとの比較試験において剥離値は基準材料と比較して銘柄により1から3倍高い値が得られる。
【0016】
修復パッチである本発明の構成は、接着剤の塗布が除外され、それ故に溶媒蒸気は換気により放出せしめられない、という利点を示す。従って換気時間はもはや不要であるから、修復工程(course)が加速される。更に、上述した防火及び溶媒蒸発の吸引が除かれる。
【0017】
本発明の修復パッチの他の利点は初期の接着力を得るための接着剤を使用しないことである。このことは連接層の加硫前に修復パッチと壁との連接を実現する。またこの工程は修復個所で修復パッチをエラストマー部材に固定する。
従って初期の接着により、特にオートクレーブ中で車両タイヤの加硫に使用するために、エラストマー部材に適用した後、本発明の修復パッチは連接層の加硫またはオートクレーブまでの搬送の間および後の車両タイヤの配向の際も所望設置位置を維持することが出来る。
【0018】
更に、本修復パッチは設置時の必要初期接着力を生じ、又は有するのでその取扱い及び保存期間が改良されるという利点を示す。
【0019】
初期接着力に関する剥離値を測定するための試験手順はDIN EN 28510又はISO 8510に基づく手順であるのが好ましい。剥離値を測定する前に、まず修復パッチは予熱温度に加熱又は室温で使用されてよく、前記パッチは然る後にエラストマー部材或いは構成試験片(component test piece)に適用される。続いて、試験片を室温で安置して1時間後、DIN EN 28510又はISO 8510に基づく手順がなされる。
【0020】
好適には、エラストマー部材への加硫前の本修復パッチにおける連接層の初期接着力は少なくとも0.8N/mmであってよい。
【0021】
所謂高温剥離値において特に(この目的を達成するため、試験片は試験前に90℃に加熱せしめられる)、本修復パッチは従来の修復パッチ、即ち接着剤の使用により固定されたものよりも高い値を示す。本態様を用いる理由(one cause)はとりわけ、接着層が存在しないことでより良い連接がエラストマー部材と修復パッチの連接層との間で達成されるということである。接着剤に含まれた固体、特に初期接着力のために追加された樹脂は樹脂に由来する軟化する性質により高温では特に剥離値の低下を引き起こすように思われる。
【0022】
更に、修復パッチにおける連接層の初期接着力は、少なくとも室温であって且つ連接層の加硫温度より低い予熱温度の選択を介してエラストマー部材へ加硫前に適合される。
【0023】
好適には、修復パッチにおける連接層は少なくとも1N/mmの剥離値が加硫前に最初の温度幅において達成されるように適合されてよい。好適には、最初の温度幅の最高温度は連接層の加硫温度よりも低い。
【0024】
修復パッチの好適な変形例において、連接層は最初の温度幅が実質的に60℃と70℃の間であり、且つ連接層の加硫温度以下であって、剥離値または初期接着力が急激に上昇する温度幅に形成されてよい。最初の温度幅は例えば最高温度と最低温度の差が実質的に10Kであってよい。更に、所定の温度幅は最高温度と最低温度の差が実質的に5Kであってもよい。
【0025】
更に、修復パッチでは、連接層における剥離値が最初の温度幅の温度よりも高い温度で実質的に一定に維持或いは増加するように形成されてもよい。
【0026】
更に、本修復パッチにおいて、連接層は素練り状の天然ゴムを20から70%含んでもよい。更に、連接層は液体ポリイソプレンゴムを2から10%含んでもよい。更に、連接層は樹脂、好適にはコレジン樹脂、を1から10%含んでもよい。これら3要素の組み合わせは温度依存するとみなされる初期接着力に特に有効であることが判明した。
【0027】
好適には、修復パッチにおいて、連接層における素練り状の天然ゴムの割合は35から60%であってよい。更に、連接層における液体ポリイソプレンゴムの割合は好適には5から7%であってよい。更に、連接層におけるコレジン樹脂の割合は好適には2から4%であってよい。混合要素は100%となるように充填剤(例えばカーボンブラック、シリカ、チョーク)、反応中間剤(硫黄、遅延剤、促進剤、酸化亜鉛)、可塑剤、加工助剤(ステアリン酸)及び抗酸化物質から構成される。
【0028】
更に、修復パッチにおいて、連接層は90℃より高温でのみ反応する促進システムを含んでよい。
【0029】
好適には、本修復パッチにおいて、連接層の促進システムはチアゾール促進剤又はスルフェンアミド、カルバミン酸塩、チウラムからなるグループからの促進剤を少なくとも0.5%、グアニジン或いは任意の他のアミン系グループの第二の促進剤を少なくとも0.2%含んでよい。促進剤は常温で反応が無く製品の保存期間がそれ故に保証されるよう選択せしめられる。チアゾール促進剤は90℃の温度で設定される架橋結合を引き起こす。第二の促進剤は反応速度を上げ、それ故に架橋結合に要する時間を短くする。
【0030】
修復パッチの好適変形例において、使用されるまで連接層を汚染から保護する少なくとも1個の剥離性保護フィルムが配設されてよい。
【0031】
更に、修復パッチにおいて、中間層は構造様式で実質的に配置された複数個のフィラメント状のインサートを有していてよい。
【0032】
更に、本発明は損傷した車両タイヤを修復するための修復パッチの使用を含む。
【0033】
車両タイヤへの修復パッチを連接する方法はエラストマー部材を配設し、エラストマー部材、特に修復個所、に修復パッチに付着せしめる工程を含んでよい。更に、かかる方法はエラストマー部材上で修復パッチを加硫し、剥離値がエラストマー部材と修復パッチの連接層の加硫後に少なくとも5N/mmとなる工程を含んでよい。
【0034】
更に、かかる方法はエラストマー部材に修復パッチを付着せしめる前に、修復パッチを修復パッチの連接層の加硫温度より低い予熱温度に予熱する工程を含んでよい。
【0035】
本発明の有利な設計及び更なる詳細について図面を参照し実施例を使用して以下で述べる。