(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5897570
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】提示されるオリジナルオーディオ又はビデオデータの不正利用に対する透かしによるプロテクションの方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
G10L 19/018 20130101AFI20160317BHJP
H04N 1/387 20060101ALI20160317BHJP
H04N 5/91 20060101ALI20160317BHJP
【FI】
G10L19/018
H04N1/387
H04N5/91 P
【請求項の数】27
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-522199(P2013-522199)
(86)(22)【出願日】2011年7月26日
(65)【公表番号】特表2013-539547(P2013-539547A)
(43)【公表日】2013年10月24日
(86)【国際出願番号】EP2011062807
(87)【国際公開番号】WO2012016883
(87)【国際公開日】20120209
【審査請求日】2014年7月17日
(31)【優先権主張番号】10305857.4
(32)【優先日】2010年8月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501263810
【氏名又は名称】トムソン ライセンシング
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】アーノルド,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ボーム,ピーター,ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】グリース,ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】フェーシング,ヴァルター
【審査官】
山下 剛史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−242037(JP,A)
【文献】
国際公開第2004/093448(WO,A1)
【文献】
特開2001−309162(JP,A)
【文献】
特開2009−76985(JP,A)
【文献】
特開2008−301500(JP,A)
【文献】
特開2005−130204(JP,A)
【文献】
Michael ARNOLD, et al.,"A Phase Modulation Audio Watermarking Technique",Information Hiding,Springer-Verlag,2009年 6月,pp.102-116
【文献】
Olivier BILLET, et al.,"Efficient Traitor Tracing from Collusion Secure Codes",Proceedings of the Third International Conference on Information Theoretic Security (ICITS 2008),Springer-Verlag,2008年 8月,Vol.5155,pp.171-182
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10L 19/00−19/26
H04N 1/387,5/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
提示されるオリジナルのオーディオ又はビデオデータを、不正記録やコピーなどの不正利用に対し、透かしを入れることによりプロテクトする方法であって、
送信サイトにおいて、前記オリジナルのオーディオ又はビデオデータの連続するブロック又はフレームの少なくとも2つの異なる透かし前処理されたバージョンを、前記オリジナルのオーディオ又はビデオデータから生成し、前記バージョンは、一バージョンに繰り返された透かしシンボル値を適用し、異なるバージョンに異なる透かしシンボル値を適用することにより求められ、対応する暗号鍵を用いて前記バージョンを暗号化し、加えて、前記異なる透かし前処理されたバージョンの各ブロック又はフレームは、対応する鍵シーケンスを用いて個別に暗号化される、ステップと、
前記透かし前処理され暗号化されたバージョンと前記暗号鍵と前記鍵シーケンスとを、例えば1つ以上のデータファイルとして、1つ以上のレシーバ又はレシーバ装置に転送するステップと、
受信サイトにおいて、前記暗号鍵を用いて前記透かし前処理され暗号化されたオーディオ又はビデオデータのバージョンを復号し、個別に前記鍵シーケンスを用いて前記ブロック又はフレームを復号し、所望の透かし情報ワードの値に応じて、前記復号された透かし前処理されたバージョンから、対応するフレーム又はブロックを連続してアセンブルし、前記透かし情報ワードを担う前記オリジナルのオーディオ又はビデオデータの透かしを入れたバージョンを求めるステップと、
前記オリジナルのオーディオ又はビデオデータの復号された透かしを入れたバージョンを提供するステップと
を有する方法。
【請求項2】
前記送信サイトと受信サイトは、DCI仕様に基づきデジタルシネマシステムを表す、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記透かし情報ワードは、デジタル映画館のIDと可変のタイムスタンプとを表す、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記透かしはアダプティブスプレッド位相変調を用いる、
請求項1ないし3いずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記透かし前処理されたバージョンの1つのブロック又はフレームは、シンクデータを表す透かしシンボルで透かし前処理され、前記シンクデータは、受信サイトにおいて、前記透かし情報ワードを担う前記オリジナルのオーディオ又はビデオデータの透かしを入れたバージョンに挿入される、
請求項1ないし4いずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
各場合にシンクデータを表す前記透かしシンボルは、異なる3つの連続した透かしシンボルを構成する、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記透かし情報ワードは固定部と可変部とを有し、透かし前処理されたブロック又はフレームの異なるバージョンは、前記可変部に対してのみ用いられる、
請求項1ないし6いずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記可変部は可変タイムスタンプを表す、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記オリジナルのオーディオ又はビデオデータの連続したブロック又はフレームの少なくとも2つの異なる透かし前処理されたバージョンの一方は、ベースバージョンを表し、他のバージョンの連続したブロック又はフレームは、対応するバージョンと前記ベースバージョンとの間の透かし差分信号を表す、
請求項1ないし8いずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
受信サイトにおいて提示されるオリジナルのオーディオ又はビデオデータを、不正記録やコピーなどの不正利用に対する透かしによりプロテクトする送信システムであって、
前記送信システムは、
前記オリジナルのオーディオ又はビデオデータの連続するブロック又はフレームの少なくとも2つの異なる透かし前処理されたバージョンを、前記オリジナルのオーディオ又はビデオデータから生成するように構成された手段であって、前記バージョンは、一バージョンに繰り返された透かしシンボル値を適用し、異なるバージョンに異なる透かしシンボル値を適用し、対応する暗号鍵を用いて前記バージョンを暗号化することにより求められ、加えて、前記異なる透かし前処理されたバージョンの各ブロック又はフレームは、対応する鍵シーケンスを用いて個別に暗号化される、手段と、
前記透かし前処理され暗号化されたバージョンと前記暗号鍵と前記鍵シーケンスとを、例えば1つ以上のデータファイルとして、1つ以上のレシーバ又はレシーバ装置に転送し、前記受信サイトにおいて、前記暗号鍵を用いて前記透かし前処理され暗号化されたオーディオ又はビデオデータのバージョンを復号し、個別に前記鍵シーケンスを用いて前記ブロック又はフレームを復号し、所望の透かし情報ワードの値に応じて、前記復号された透かし前処理されたバージョンから、対応するフレーム又はブロックを連続してアセンブルし、前記透かし情報ワードを担う前記オリジナルのオーディオ又はビデオデータの透かしを入れたバージョンを求めるように構成された手段と、
を有する送信システム。
【請求項11】
前記送信システムと受信サイトは、DCI仕様に基づきデジタルシネマシステムを表す、
請求項10に記載の送信システム。
【請求項12】
前記透かし情報ワードは、デジタル映画館のIDと可変のタイムスタンプとを表す、
請求項11に記載の送信システム。
【請求項13】
前記透かしはアダプティブスプレッド位相変調を用いる、
請求項10ないし12いずれか一項に記載の送信システム。
【請求項14】
前記透かし前処理されたバージョンの1つのブロック又はフレームは、シンクデータを表す透かしシンボルで透かし前処理され、前記シンクデータは、受信サイトにおいて、前記透かし情報ワードを担う前記オリジナルのオーディオ又はビデオデータの透かしを入れたバージョンに挿入される、
請求項10ないし13いずれか一項に記載の送信システム。
【請求項15】
各場合にシンクデータを表す前記挿入された透かしシンボルは、異なる3つの連続した透かしシンボルを構成する、
請求項14に記載の送信システム。
【請求項16】
前記透かし情報ワードは固定部と可変部とを有し、透かし前処理されたブロック又はフレームの異なるバージョンは、前記可変部に対してのみ用いられる、
請求項10ないし15いずれか一項に記載の送信システム。
【請求項17】
前記可変部は可変タイムスタンプを表す、
請求項16いずれか一項に記載の送信システム。
【請求項18】
前記オリジナルのオーディオ又はビデオデータの連続したブロック又はフレームの少なくとも2つの異なる透かし前処理されたバージョンの一方は、ベースバージョンを表し、他のバージョンの連続したブロック又はフレームは、対応するバージョンと前記ベースバージョンとの間の透かし差分信号を表す、
請求項10ないし17いずれか一項に記載の送信システム。
【請求項19】
提示されるオリジナルのオーディオ又はビデオデータの不正記録やコピーなどの不正利用に対し、透かしによりプロテクトする受信システムであって、前記受信システムは、前記オリジナルのオーディオ又はビデオデータの連続するブロック又はフレームの少なくとも2つの異なる透かし前処理されたバージョンを送信サイトから受信し又は記憶し、前記バージョンは、一バージョンに繰り返された透かしシンボル値を適用し、異なるバージョンに異なる透かしシンボル値を適用し、対応する暗号鍵を用いて前記バージョンを暗号化することにより求められ、加えて、前記異なる透かし前処理されたバージョンの各ブロック又はフレームは、対応する鍵シーケンスを用いて個別に暗号化され、
前記受信システムは、前記暗号鍵と前記鍵シーケンスとを受信して記憶し、前記受信システムは、
前記暗号鍵を用いて前記透かし前処理され暗号化されたオーディオ又はビデオデータのバージョンを復号し、個別に前記鍵シーケンスを用いて前記ブロック又はフレームを復号し、所望の透かし情報ワードの値に応じて、前記復号された透かし前処理されたバージョンから、対応するフレーム又はブロックを連続してアセンブルし、前記透かし情報ワードを担う前記オリジナルのオーディオ又はビデオデータの透かしを入れたバージョンを求めるように構成された手段と、
前記オリジナルのオーディオ又はビデオデータの復号された透かしを入れたバージョンを提供するように構成された手段と
を有する、受信システム。
【請求項20】
前記送信サイトと受信システムは、DCI仕様に基づきデジタルシネマシステムを表す、
請求項19に記載の受信システム。
【請求項21】
前記透かし情報ワードは、デジタル映画館のIDと可変のタイムスタンプとを表す、
請求項20に記載の受信システム。
【請求項22】
前記透かしはアダプティブスプレッド位相変調を用いる、
請求項19ないし21いずれか一項に記載の受信システム。
【請求項23】
前記透かし前処理されたバージョンの1つのブロック又はフレームは、シンクデータを表す透かしシンボルで透かし前処理され、前記シンクデータは、受信サイトにおいて、前記透かし情報ワードを担う前記オリジナルのオーディオ又はビデオデータの透かしを入れたバージョンに挿入される、
請求項19ないし22いずれか一項に記載の受信システム。
【請求項24】
各場合にシンクデータを表す前記透かしシンボルは、異なる3つの連続した透かしシンボルを構成する、
請求項23に記載の受信システム。
【請求項25】
前記透かし情報ワードは固定部と可変部とを有し、透かし前処理されたブロック又はフレームの異なるバージョンは、前記可変部に対してのみ用いられる、
請求項19ないし24いずれか一項に記載の受信システム。
【請求項26】
前記可変部は可変タイムスタンプを表す、
請求項25に記載の受信システム。
【請求項27】
前記オリジナルのオーディオ又はビデオデータの連続したブロック又はフレームの少なくとも2つの異なる透かし前処理されたバージョンの一方は、ベースバージョンを表し、他のバージョンの連続したブロック又はフレームは、対応するバージョンと前記ベースバージョンとの間の透かし差分信号を表す、
請求項19ないし26いずれか一項に記載の受信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、デジタルシネマなどにおいて、提示されるオリジナルのオーディオ又はビデオデータの不正記録や複製などの不正利用に対する、透かしによるプロテクションの方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオ透かしはコンテンツプロテクションのセキュリティ技術の一つである。透かし(WM)は、オリジナルのオーディオ信号のデータに埋め込まれたシグネチャであり、人間の耳には聞こえないことに加え、統計的に検出できず、それを取り除こうとする試みにも耐えなければならない。例えば、デジタルシネマへの応用では、透かしシステムの要件は、一組の特性に基づいて規定できる:透かしを入れたコピーの品質と埋め込んだ透かしのロバストネスの一般的な要件に加え、かかるシネマアプリケーションには、従わねばならない追加的セキュリティ制約がある。
【0003】
「デジタルシネマイニシアチブ」(DCI)は、デジタルシネマ産業全体の標準の仕様を確立するために、7映画会社により設立された組織である。DCI仕様書第1.2版がhttp://www.dcimovies.comに公開された。映画製作のワークフローには、
図1に示すように、マスタリング、配信、及び映画館における再生が含まれる。
【0004】
デジタルシネマシナリオには、複数の異なるコンポーネントが規定されている。例えば:
−デジタルシネマ配信マスター(DCDM);
−圧縮はDCI準拠のJPEG2000コードストリームとJPEG2000デコーダとを規定している;
−パッケージング;
−トランスポート;
−映画館システム;
−プロジェクション;
−セキュリティ。
【0005】
デジタルシネマ配信マスターDCDMは、2K及び4Kマスターをサポートする階層的な画像構造に基づく。デジタルシネマシステムは、ファイルベースデザインで構築されている。すなわち、完全なコンテンツが、画像フレームを中心として構成された複数のファイルとして記憶されたデータよりなっている。含まれるDCDMオーディオデータは、ビット深度が24ビット/サンプルであり、サンプルレートが48または96kHzである。ファイルフォーマットはPCM WAVEであり、データは圧縮されていない。
【0006】
デジタルシネマシステムでは、
図2に示したようにセキュリティシステムは、異なる要件を有し、これは適切なセキュリティメカニズムで実装される。これには、配信から映画館での再生又はプロジェクション21までの暗号化セキュリティが含まれる。暗号化は、不法なアクセス、及び不正なコピー、編集、若しくは再生に対するプロテクションになる。暗号化されたコンテンツは、各映画館に、1つのデジタルシネマパッケージ(DCP)として配信される。DCPコンテントのコンポーネントは、権利者(例えば、映画スタジオや配信会社)により選択的に暗号化されている。ロギングメカニズムにより、プロテクトされたコンテンツへのアクセスのログが取られる。犯罪科学的トラッキングを可能とするため透かし法と指紋法が使われる。
【0007】
透かしは、映画館に配置されたサーバのメディアブロックMEDBL中の埋込器22で入れられる。オーディオデータの透かしに関して最も重要な要件は、透かしがABXリスニングテストにおいて聞こえないことである。埋め込まれるペイロードには、19ビットワード長を用いた映画館の識別情報が含まれ、これは2
19=524,288映画館に相当する。また、15分おきに変化し、毎年反復されるタイムスタンプが埋め込まれる。これには、2進法で表すと、16ビットが必要である:4タイムスタンプ/時×24時間/日×366日/年=35136タイムスタンプ。このように、透かしwの情報ビットの全長l(w)は、l(w)=19+16ビット=35ビットである。データレートはl(w)ビット/5分=7ビット/分と設定される。
【0008】
透かしの埋込は映画館における再生の直前に行わなければならないので、リアルタイムかそれよりも早く実行されねばならない。検出に必要な最小時間セグメントは30分を過ぎてはならない。
【0009】
以下、オリジナルすなわちキャリアオブジェクトをCoで表す。表記法において、
<外1>
は時間ドメインにおけるオリジナル信号のサンプルを表す。ここで、l
Coは、トラックC
oのサンプル数を示す。例えば、サンプリングレートfs=44.1kHzの場合、1秒は44,100サンプルに相当する。8または16ビットの振幅解像度では、数シーケンスの範囲は
<外2>
である。
【0010】
キャリア要素C
ojの付加インデックス「j」は、オーディオ信号のサブセットを示す。良くあることだが、すべてのオーディオ透かしアルゴリズムは、オーディオ信号を重なった又は重なっていない異なるブロックに分割し、普通これらのブロックのサイズは同じである。このため、C
oj[i]は、長さがl
Cojである、j番目のブロックのi番目のサンプルを示す。個々のブロックは、透かしw全体の1ビットの情報を埋め込むのに使われる。
【0011】
非特許文献1の発明は、内通者が共謀して、復号ボックス(デコーダ)から不法に取り出した共有秘密(鍵)から海賊版デコーダを作ったとしても、その内通者の追跡を可能にする。それゆえ、これは、透かし技術を用いていない暗号化手段による内通者の追跡である。海賊版デコーダがコンテンツを復号できる場合、そのコンテンツに基づいて不法ユーザを追跡するメカニズムは他にはない。次に、不正ユーザを追跡するには、追跡者は海賊版コーダにアクセスする必要がある。透かしの場合、追跡者は、デコーダに組み込まれた一組の鍵と対照的に、コンテンツに埋め込まれたユーザのID(又はDCI透かし)を有する海賊版コンテンツにアクセスすればよい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】O. Billet et al.著「Efficient Traitor Tracing from Collusion Secure Codes」(10 Aug. 2008, Information Theoretic Security, Lecture Notes in Computer Science,Springer Berlin Heidelberg, pp.171-182, XP019102288)
【発明の概要】
【0013】
対照的に、本発明が解決する問題は、デジタルシネマのシナリオの場合のように、埋込がレシーバサイトで行われる場合、敵対者は潜在的にオリジナルコンテンツにアクセスできるということである。上記の方法と組み合わせて、復号ボックス(デジタルシネマの場合にはDCIサーバ)からセキュリティ鍵が漏れることによる共謀攻撃に対してさらにセキュリティを提供することにより、セキュリティレベルを高めることができる。
【0014】
図2に示すように、映画の上映の直前に透かしを埋め込むため、その埋込は映画館のメディアブロックMEDBLでリアルタイムに行わねばならない。このためには、オーディオ透かしアルゴリズムが受信サイトの専用DSPハードウェアに実装されていなければならない。しかし、レシーバ(映画館)サイトにおいてDSPハードウェアと透かしを用いるため、このソリューションにはいくつか欠点がある:
−レシーバサイトにおいてDSPハードウェアを組み込むにはコストがかかる;
−(セキュリティ欠陥が検出された時の)透かしアルゴリズムの更新を各レシーバ(映画館)で行わねばならず、時間と費用がかかる;
−かかるシステムには潜在的なセキュリティ上の欠陥がある。復号後、メディアストリームに透かしを埋め込む直前に、オリジナルのコンテンツにアクセスできるからである;
−透かし鍵は埋込するためレシーバに格納され、又は送信されねばならず、このセキュリティ処理が破られるおそれが大きくなる;
−正しいタイムスタンプの埋込を保証できない。潜在的な敵対者は、透かしハードウェアをリバースエンジニアリングして、異なる透かしシンボルが埋め込まれたフレームの、前に復号されたバージョンを用いることにより、不正なタイムスタンプを埋め込める。それにもかかわらず、敵対者は、送信サイトで制御できる範囲内のタイムスタンプを有する、透かしを入れたコピーを構成することができる;
−DSPハードウェアが組み込まれているという制約のため、異なる(場合によってはリアルタイムではない)透かし処理に切り換えることは可能ではない;
−同じメディアストリームに透かしを入れる、異なる透かし手順を組み合わせることは、処理のハードウェア実装のため、不可能である。
【0015】
こうした種類の問題は、埋込がレシーバサイトで行われ、透かしアルゴリズムがハードウェアで実装されるすべてのアプリケーションで生じる。
【0016】
本発明が解決しようとする問題は、かかるプロテクション処理又はシステムの全体的なセキュリティを高めることである。この問題は、請求項1に開示した方法により解決される。この方法を利用するシステムを請求項2と請求項3に開示する。
【0017】
本発明は、透かし前処理して暗号化したコピーを用いることにより、透かしを埋め込む負荷を、受信サイト(映画館)から送信サイト(ポストプロダクション、スタジオ)に移す;
−透かしアルゴリズムの専用DSPによる実装はもう必要ない。透かしはソフトウェアで実行できる。これにより安価なハードウェアを用い易くなる;
−ハードウェアの更新が必要ないので、新しい透かし処理の更新は容易に実行できる。
−透かし埋込器と鍵へのアクセスは可能ではなく、そのため透かしエンコーディングに関するセキュリティ問題を回避できる。
【0018】
フレームごとに透かし前処理をして暗号化した、オーディオPCMファイルのコピーが配信される。フレームごと又はブロックごとの透かしと暗号化は送信サイト(ポストプロダクション又はスタジオ)で行われ、フレーム/ブロックごとに暗号化されたファイルは、パックされ、受信サイト(映画館)に配信される。コピー又はトラックの異なるバージョンは、異なる透かしのシンボルで透かしを入れられた、暗号化された候補を表す。例えば、オーディオ又はビデオ信号の第1のコピーは、送信サイトで、各ブロック又はフレームに対して値「0」の透かしシンボルで透かしが入れられ、第2のコピーは、送信サイトで、各ブロック又はフレームに対して値「1」の透かしシンボルで透かしが入れられる。さらに別のコピーはシンク透かしシンボルを含んでいてもよい。
【0019】
ファイルが配信されるのに加えて、各レシーバに、フレーム/ブロック番号により識別された個々のフレームやブロックを復号する鍵と、埋め込まれたシンボルとよりなる鍵シーケンスが送信される。受信サイトでは、送信された鍵シーケンスに基づき、適切なフレームのみに復号がなされる。透かし前処理され暗号化されたフレームを用いて、正しい透かし情報ビットを、例えばDCIアプリケーションのIDとタイムスタンプを黙示的に担う1つの透かしを入れたコピーを生成する。所望の透かし情報ビットワードのビット又は値に基づき1つの透かし入れしたコピーを生成するため、受信した、又は格納したコピーから、連続的に、対応するフレームやブロックを取り、アセンブルする。
【0020】
送信サイトにおけるコンテンツの透かし前処理により、透かしの埋込は以下の利点を有する:
−専用ハードウェアによる透かし処理の実装が必要なく、受信サイトにおけるハードウェアのコストが削減される;
−ハードウェアの更新が必要ないので、異なる透かし処理への更新が容易である。
−透かしトラックの構成速度は、I/O性能のみによって決まり、用いる透かし処理の速度にはよらない。それゆえ、リアルタイムでは実行できない高度な透かし処理への切り替えが可能である。
−異なる透かし処理を組み合わせて利用でき、これにより透かしを交互に埋め込み、もって犯罪捜査トラッキングシステムのロバスト性を高めることができる。これは、ブロックサイズが異なる場合にはタイミング情報を提供することにより、構成サイトで制御できる;
−受信サイト(映画館)は、すでに透かし(映画館のID)が埋め込まれた、透かし前処理をしたコピーを受け取る。これにより、受信サイトでいつわりの透かしを不正に埋め込むことを防止する;
−透かしアルゴリズムのリバースエンジニアリングが不可能なので、透かしシステムのセキュリティが確保される。さらに、送信サイトで透かし前処理をするので、透かしシステムの鍵へのアクセスができない。
【0021】
それにもかかわらず、説明する発明は、まだ2つの欠点を有する:
−映画館サイトには潜在的にセキュリティの脆弱性がある。復号された透かし前処理コピーを用いて、正しい透かしを担わない透かし(例えば、映画館のIDは正しいが、タイムスタンプが異なるもの)を構成できる;
−透かし前処理コピーを用いるため、必要な帯域幅はほぼ2倍になる。
それゆえ、上記の通り、暗号化はブロックごとに行うことができる。
【0022】
原理的に、本発明の方法は、提示するオリジナルのオーディオ又はビデオデータ信号に透かしをいれることにより、不正な記録やコピーなどの不正利用に対して保護するのに適する。前記方法は:
−送信サイトにおいて、前記オリジナルのオーディオ又はビデオデータの連続するブロック又はフレームの少なくとも2つの異なる透かし前処理されたバージョンを、前記オリジナルのオーディオ又はビデオデータから発生し、前記バージョンは、一バージョンに繰り返された透かしシンボル値を適用し、異なるバージョンに異なる透かしシンボル値を適用し、対応する暗号鍵を用いて前記バージョンを暗号化することにより求められ、加えて、前記異なる透かし前処理されたバージョンの各ブロック又はフレームは、対応する鍵シーケンスを用いて個別に暗号化される、ステップと、
−前記透かし前処理され暗号化されたバージョンと前記暗号鍵と前記鍵シーケンスとを、例えば1つ以上のデータファイルとして、1つ以上のレシーバ又はレシーバ装置に転送するステップと、
−受信サイトにおいて、前記暗号鍵を用いて前記透かし前処理され暗号化されたオーディオ又はビデオデータのバージョンを復号し、個別に前記鍵シーケンスを用いて前記ブロック又はフレームを復号し、所望の透かし情報ワードの値に応じて、前記復号された透かし前処理されたバージョンから、対応するフレーム又はブロックを連続してアセンブルし、前記透かし情報ワードを担う前記オリジナルのオーディオ又はビデオデータの透かしを入れたバージョンを求めるステップと、
−前記オリジナルのオーディオ又はビデオデータの復号された透かしを入れたバージョンを提供するステップとを有する。
【0023】
原理的に、本発明の送信システムは、受信サイトで提示できるオリジナルのオーディオ又はビデオデータ信号に透かしをいれることにより、不正な記録やコピーなどの不正利用に対して保護するのに適する。前記送信システムは:
−前記オリジナルのオーディオ又はビデオデータの連続するブロック又はフレームの少なくとも2つの異なる透かし前処理されたバージョンを、前記オリジナルのオーディオ又はビデオデータから発生し、前記バージョンは、一バージョンに繰り返された透かしシンボル値を適用し、異なるバージョンに異なる透かしシンボル値を適用し、対応する暗号鍵を用いて前記バージョンを暗号化することにより求められ、加えて、前記異なる透かし前処理されたバージョンの各ブロック又はフレームは、対応する鍵シーケンスを用いて個別に暗号化される、ように構成された手段と、
−前記透かし前処理され暗号化されたバージョンと前記暗号鍵と前記鍵シーケンスとを、例えば1つ以上のデータファイルとして、1つ以上のレシーバ又はレシーバ装置に転送し、前記受信サイトにおいて、前記暗号鍵を用いて前記透かし前処理され暗号化されたオーディオ又はビデオデータのバージョンを復号し、個別に前記鍵シーケンスを用いて前記ブロック又はフレームを復号し、所望の透かし情報ワードの値に応じて、前記復号された透かし前処理されたバージョンから、対応するフレーム又はブロックを連続してアセンブルし、前記透かし情報ワードを担う前記オリジナルのオーディオ又はビデオデータの透かしを入れたバージョンを求める、ように構成された手段と、を有する。
【0024】
原理的に、本発明の受信システムは、提示するオリジナルのオーディオ又はビデオデータ信号に透かしをいれることにより、不正な記録やコピーなどの不正利用に対して保護するのに適する。前記受信システムは、前記オリジナルのオーディオ又はビデオデータの連続するブロック又はフレームの少なくとも2つの異なる透かし前処理されたバージョンを受信し又は記憶し、前記バージョンは、一バージョンに繰り返された透かしシンボル値を適用し、異なるバージョンに異なる透かしシンボル値を適用し、対応する暗号鍵を用いて前記バージョンを暗号化することにより求められ、加えて、前記異なる透かし前処理されたバージョンの各ブロック又はフレームは、対応する鍵シーケンスを用いて個別に暗号化され、前記受信システムは、前記暗号鍵と前記鍵シーケンスとを受信して記憶し、前記送信システムは、
−前記暗号鍵を用いて前記透かし前処理され暗号化されたオーディオ又はビデオデータのバージョンを復号し、個別に前記鍵シーケンスを用いて前記ブロック又はフレームを復号し、所望の透かし情報ワードの値に応じて、前記復号された透かし前処理されたバージョンから、対応するフレーム又はブロックを連続してアセンブルし、前記透かし情報ワードを担う前記オリジナルのオーディオ又はビデオデータの透かしを入れたバージョンを求める、ように構成された手段と、
−前記オリジナルのオーディオ又はビデオデータの復号された透かしを入れたバージョンを提供するように構成された手段とを有する。
【0025】
本発明のこれ以外の有利な実施形態は、それぞれの従属項に開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
添付した図面を参照して、本発明の実施形態を例として説明する。
【
図1】パッケージングからプロジェクションまでのデジタルシネマアプリケーションの配信ワークフローを示す図である。
【
図2】デジタルシネマにおける透かし技術の応用を示す図である。
【
図3】予め透かしを入れ暗号化されたコピーの準備を示す図である。
【
図4】透かしを入れたオーディオトラックの構成を示す図である。
【
図5】予め透かしを入れブロックごとに暗号化されたコピーの準備を示す図である。
【
図6】ブロックごとに復号されたコピーからの透かしを入れたトラックの構成を示す図である。
【
図7】可変部を有する予め透かしを入れ暗号化されたコピーを示す図である。
【
図8】差分信号を有する予め透かしを入れ暗号化されたコピーを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
事前透かし入れと暗号化
本発明により、一オーディオPCMファイルに対し複数のブロック毎に事前透かし入れされたトラックが配信される。すべての事前透かし入れされたトラックは暗号化されファイルに格納される。レシーバサイトでは、事前透かし入れされたトラックが復号され、透かし情報ワード(例えば、映画館のIDとタイムスタンプ)に基づき、透かし入れされたオーディオストリームが提示のため構成される。
【0028】
本発明の処理は、次の基準を満たすものであれば、他の透かしシステムにも適用できる。
−土台の透かしシステムがブロックベースで動作する。実際、ほとんどの透かしシステムは元の信号を、空間的又は時間的にバラバラな領域に分割する。オーディオ透かしシステムでは、オーディオトラックは時間的に一連の連続したオーディオブロックに分割する。
−異なるブロック間で重なりが生じても、1ブロックにおける透かしの埋込が隣接ブロックのコンテンツに依存しない。少なくとも、かかる依存性は、透かしを入れたトラックの品質と透かしのロバスト性の大幅な減少のため、無視できる。
【0029】
上記の特性意外に、アダプティブスプレッドフェーズ変調(ASPM)の特殊な場合には、以下を仮定できる:
−透かしwのN個の情報ビットは、一連の別々のシンボル
<外3>
により表され、各シンボルはN
SB個のサブブロックよりなるブロックに埋め込まれる。
−透かしシステムにおいて、各サブブロックは心理音響モデルの利用により決定される同数のサンプルを含む。例えば、サブブロックのサイズlは
<外4>
である。
【0030】
オーディオトラックが配信される前に、オリジナルのファイルデータc
orgは特殊な透かし
<外5>
を用いてN
A回透かしを埋め込まれ、結果としてNA個の透かしコピーが得られる。
図3は、時間tに対して、同じデータファイルの2つのバージョンc
0、c
1と、同期シンボルが埋め込まれたバージョンc
Sとを示す。各バージョンは異なる透かしが入れられ(及び暗号化され)ている。透かしされたトラックのコピーはそれぞれ
<外6>
のうちの時間的に一連の同一透かし情報ビットパターンにより表される。例えば、ファイルバージョンc
0では、ビットパターン
<外7>
を用いて、t
4からt
nまでの時間の透かしシンボルを発生し、ファイルバージョンc1では、ビットパターン
<外8>
を用いて、透かしシンボルw1を発生する。かかるデータの準備は、透かし前処理と呼ぶ。これらの透かしの埋込は、異なるビット又はシンクワード
<外9>
を表すビットパターンを発生する一意的な鍵Kを用いて行う。ASPM処理を用いる場合、他の信号処理動作に対し検出がうまくいくように、3つの異なる順次的同期シーケンス
<外10>
を、
図3でデータファイルのバージョンc
Sに示したように、透かしw
0/w
1の始めに挿入しなければならない。この実施例では、透かし情報ワードの長さはl(w)=35ビットなので、同期ビットはブロック位置が固定され、別途透かし前処理したコピーとして格納する必要はない。これにより、
図3に示したように、すべての透かしブロックをカウントする場合の数よりも、必要な透かし前処理コピーの数が減少する。
【0031】
セキュリティを高めるため、個々のオーディオファイルに対して透かし鍵は異なってもよい。しかし、これにより、透かし検出の際に識別問題が生じる。しかし、この問題は、指紋技術を組み込むことにより解決できる。
【0032】
トラックの透かしコピーは、例えば全体として、鍵K
Eを用いて暗号化関数
<外11>
により
<外12>
により暗号化される。得られた暗号化ファイルはパックされ、レシーバ(映画館)に配信又は転送される。デジタルシネマアプリケーションでは、透かし前処理した暗号化ファイルは、映画館のメディアサーバに格納される。
【0033】
レシーバサイトでオーディオトラックを提示する前に、透かし前処理したコピーを、同じ鍵KEを用いて復号関数
<外13>
により復号
<外14>
する。オーディオトラックへのl(w)個の透かし情報ビットの埋込は、透かし前処理したコピーから透かしコピーをブロック又はフレームごとに構成することにより行う。ブロックの総数は
<外15>
であり、l(w)=35個の透かしブロックとn
S=3個の同期ブロックとがある。
【0034】
図4は、コンストラクタ40に必要なトラックc
wを構成することにより、ビットシーケンス
<外16>
<外17>
中の現在のビット値「i」によると、透かし前処理セクション
<外18>
が、透かし前処理トラックc
0又はc
1からコンストラクタ40により連続して取られ、アセンブルされる。
【0035】
透かし情報ワード「w」の内容はレシーバにより個別に決定できる。
【0036】
有利にも、透かしトラックの構成速度は、I/O性能のみによって決まり、用いる透かし処理の種類にはよらない。データ準備ステップで行われる透かし処理は、すべてのレシーバ(映画館)に対して同じであり、そのため一オーディオトラックに対して一度だけ行えばよい。
ブロック毎の暗号化
前述の実施形態では、間違った透かし(すなわち、映画館ID)を担う透かしトラックを構成することができてしまう。以下の実施形態では、透かし前処理と構成処理が異なる。
【0037】
透かし前処理コピーを生成するために行う透かし処理は、前の実施形態と同じである。しかし、透かし処理されたコピーはブロック毎に暗号化される。
【0038】
各ブロック
<外19>
は、
図5に示したように、透かしトラック中の位置t
jで始まるブロックに対して、及びシンボルタイプiに対して、異なる鍵K
ijを用いることにより暗号化される。ブロック毎に暗号化されたファイルは、パックされ、例えばそれがメディアサーバに記憶される映画館に配信される。メディアファイルに加えて、透かしを構成するためのビットを担うブロックのみを復号するのに必要な鍵よりなる鍵シーケンス
<外20>
が、各レシーバに送信される。
【0039】
デジタルシネマアプリケーションの場合、透かし
<外21>
は、映画館のIDとタイムスタンプよりなる。鍵シーケンスは、同期ブロック
<外22>
と映画館のID
<外23>
よりなる固定部と、タイムスタンプ
<外24>
の可変部とに分割できる。
【0040】
【数1】
は、DCI透かしの35ビットと、3同期ビットよりなる。
【0041】
最後のサブシーケンスK
timeを可変することにより、異なるタイムスタンプを実装できる。これにより、対応する鍵シーケンスのみを送信することにより、タイムスタンプを一定の期間に限定することが可能になる。
【0042】
レシーバ(映画館)は、(上部が
図5に対応する)
図6に示したように、鍵シーケンス
<外25>
を用いて、暗号化されたブロック
<外26>
から位置jのブロックを求めることにより、透かしw
IDとw
timeが埋め込まれたブロックのみを正しく復号できる。
【0043】
前述の実施形態に加え、この実施形態は、適当なブロックのみが、割り当てられた鍵シーケンスにより復号できるので、正しい透かし(及び、それにより映画館のID)が黙示的に埋め込まれているとの利点を有する。しかし、欠点も残る:
−デジタルシネマアプリケーションでは、この処理では、正しいタイムスタンプの埋込が保証できない。潜在的な敵対者が、異なるシンボルが埋め込まれたブロックのすでに復号されたバージョンを用いて、間違ったタイムスタンプを埋め込める。それにもかかわらず、透かしコピーを、送信された鍵サブシーケンスK
timeに応じた範囲内のタイムスタンプだけで構成することができる。間違ったタイムスタンプは、送信された鍵シーケンスを知っていれば検出できる。
−透かし前処理されたコピーとブロック毎に暗号化されたコピーとを送信しなければならないので、帯域幅がほぼ二倍になる。
帯域幅の削減
透かしの静的部分と動的部分とを考慮することにより、帯域幅の削減をできる。これは、ストリームの透かし前処理されブロック毎に暗号化された部分を、同期ビットと透かしのIDとを担う固定透かし部分とともに送信することにより、行える。可変部分のみの場合、透かし前処理したブロックと暗号化したブロックの2つのバージョンをレシーバ(映画館)に送信する。タイムスタンプ範囲は、送信者サイトで制御可能である。
【0044】
透かしの埋込は、前の実施形態で説明したものと同じである。復号するブロックの選択は、透かしの可変部w
timeに対してのみ行われなければならない。これは
図7に示した。
【0045】
必要な帯域幅は、透かしの可変部w
timeに対して、一透かしシンボルでマークされたトラックと、異なる透かしシンボルの透かし信号の差分とを送信することにより、さらに低減できる。
図8に示したように、位置t
jにある各ブロックに対して、第1のシンボル「0」の透かしバージョン
<外27>
が埋め込まれ、差分
<外28>
【0047】
【数3】
透かし差分信号はオリジナルの透かし信号よりもダイナミックレンジが低いので、有効に圧縮できる。
【0048】
前の実施形態で説明したように、可変透かし部分w
timeからブロックを選択するのに加え、構成により透かしを埋め込むため、透かし前処理したコピーのシンボル以外のシンボルを埋め込む場合、式(3)による異なる信号のブロック毎の加算が行われる。
【0049】
前述の通り、本発明はデジタルシネマアプリケーションに応用できる。さらに、レシーバサイトにおいてセキュアでないデバイスで透かし埋込ステップを実行しなければならないすべてのアプリケーションに応用可能である。