(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、マルチエージェントの間で協調制御を行うには各種の情報を連絡し合う必要があり、各エージェントは自律制御に加えて協調制御のために複雑な処理を行う必要がある。
【0005】
本発明は、このような背景を鑑みてなされたものであり、分散した負荷を容易に制御することのできる、負荷制御装置、負荷制御システム、負荷制御方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の主たる発明は、負荷制御装置であって電力価格に応じて電力を消費する複数の負荷装置と通信可能に接続され、
前記負荷装置の受電電圧と所定の基準電圧
の一方から他方を減算した電圧である逸脱電圧を各前記負荷装置から取得する逸脱電圧取得部と、
前記逸脱電圧の合計を算出し、前記逸脱電圧の合計に応じて前記負荷装置による消費電力の合計の目標値である制御量を決定する制御量決定部と、
前記電力価格と前記消費電力との関係を表す情報である需要情報を前記負荷装置から取得する需要情報取得部と、
前記需要情報に基づいて前記制御量に応じた適正価格を決定する適正価格決定部と、
前記適正価格を示す価格シグナルを前記負荷装置に送信する価格シグナル送信部と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の負荷制御装置は、前記負荷装置による消費電力の合計と前記逸脱電圧の合計との関係式を過去の実績値に基づいて算出する需要逸脱電圧関係式算出部をさらに備え、前記制御量決定部は、前記逸脱電圧が0となる前記消費電力の合計を前記制御量として前記関係式から算出するようにしてもよい。
【0008】
また、本発明の負荷制御装置では、前記需要情報は、前記負荷装置が電力消費を開始する前記電力価格である買電価格と、前記買電価格における単位時間あたりの前記消費電力とを含むようにしてもよい。
【0009】
また、本発明の負荷制御装置では、前記適正価格決定部は、前記需要情報に基づいて前記電力価格と前記消費電力の合計との関係を表す需要曲線を作成し、前記需要曲線における前記制御量に対応する前記電力価格を前記適正価格として決定するようにしてもよい。
【0010】
また、本発明の他の態様は、負荷制御システムであって、電力価格に応じて電力を消費する複数の負荷装置と、前記複数の負荷装置と通信可能に接続されるサーバ装置とを含んで構成され、前記負荷装置は、前記電力価格と消費電力との関係を表す情報である需要情報を作成して前記サーバ装置に送信する需要情報送信部と、前記負荷装置が測定した電圧と所定の基準電圧
の一方から他方を減算した電圧である逸脱電圧を前記サーバ装置に送信する逸脱電圧送信部と、を備え、前記サーバ装置は、前記逸脱電圧を各前記負荷装置から受信する逸脱電圧取得部と、前記逸脱電圧の合計を算出し、前記逸脱電圧の合計に応じて前記負荷装置による消費電力の合計の目標値である制御量を決定する制御量決定部と、前記負荷装置から前記需要情報を受信する需要情報受信部と、前記需要情報に基づいて前記制御量に応じた適正価格を決定する適正価格決定部と、前記適正価格を示す価格シグナルを前記負荷装置に送信する価格シグナル送信部と、を備え、前記負荷装置は、前記サーバ装置から前記価格シグナルを受信する価格シグナル受信部と、前記価格シグナルが示す前記電力価格に応じて電力の消費を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の負荷制御システムでは、前記負荷装置は、電力を消費する価格である買電価格を、前記逸脱電圧が大きいほど高くなるように決定する買電価格決定部をさらに備え、前記需要情報は、前記買電価格と前記負荷装置を動作させて場合の消費電力とを含むようにしてもよい。
【0012】
また、本発明の負荷制御システムでは、前記負荷装置は蓄電負荷装置または蓄熱負荷装置であり、前記需要情報は、前記負荷装置が電力消費を開始する前記電力価格である買電価格と、前記買電価格における単位時間あたりの前記消費電力とを含み、前記負荷装置の受電電圧をV、前記基準電圧をV0、前記逸脱電圧をdVとして、dVは式dV=V−V0により算出され、前記負荷装置の蓄電容量または蓄熱容量をWs、前記消費電力をQ、現在の蓄電量または蓄熱量をW、現在から前記負荷装置を使用開始するまでの時間をT、前記蓄電量または蓄熱量をWから最大値にするまでに要する時間をTfとして、Tfは式Tf=(Ws−W)÷Qにより算出され、前記需要情報送信部は、前記買電価格をP、前記買電価格の最大値をPmax、前記逸脱電圧の最大値をVaとして、Tf÷Tが所定値未満である場合には、Pを式P=Pmax×{(1−Tf÷T)÷2×Va×dV+(1+Tf÷T)÷2}により算出し、Tf÷Tが前記所定値以上である場合には、P=Pmaxとするようにしてもよい。
【0013】
また、本発明の他の態様は、負荷制御方法であって、電力価格に応じて電力を消費する複数の負荷装置と通信可能に接続されたコンピュータが、前記負荷装置の受電電圧と所定の基準電圧
の一方から他方を減算した電圧である逸脱電圧を各前記負荷装置から取得するステップと、前記逸脱電圧の合計を算出し、前記逸脱電圧の合計に応じて前記負荷装置による消費電力の合計の目標値である制御量を決定するステップと、前記電力価格と前記消費電力との関係を表す情報である需要情報を前記負荷装置から取得するステップと、前記需要情報に基づいて前記制御量に応じた適正価格を決定する適正価格決定部と、前記適正価格を示す価格シグナルを前記負荷装置に送信するステップと、
を実行することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の他の態様は、負荷制御のためのプログラムであって、電力価格に応じて電力を消費する複数の負荷装置と通信可能に接続されたコンピュータに、前記負荷装置の受電電圧と所定の基準電圧
の一方から他方を減算した電圧である逸脱電圧を各前記負荷装置から取得するステップと、前記逸脱電圧の合計を算出し、前記逸脱電圧の合計に応じて前記負荷装置による消費電力の合計の目標値である制御量を決定するステップと、前記電力価格と前記消費電力との関係を表す情報である需要情報を前記負荷装置から取得するステップと、前記需要情報に基づいて前記制御量に応じた適正価格を決定する適正価格決定部と、前記適正価格を示す価格シグナルを前記負荷装置に送信するステップと、
を実行させる
【0015】
その他本願が開示する課題やその解決方法については、発明の実施形態の欄及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、分散した負荷を容易に制御することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
==システムの全体構成==
以下、本発明の一実施形態に係る電力システムについて説明する。
図1は本実施形態の電力システムの全体構成の一例を示す図である。本実施形態の電力システムは、蓄電装置10およびサーバ20を含んで構成される。蓄電装置10およびサーバ20はそれぞれ通信機能を有しており、通信ネットワーク30を介して互いに通信可能に接続されている。通信ネットワーク30は、たとえばインターネットであり、たとえば公衆電話回線、携帯電話回線、無線通信路、専用電話回線、電力線、シリアルケーブル、イーサネット(登録商標)などにより構築される。
【0019】
蓄電装置10は電力価格に応じて蓄電池に対して充電または放電を行う負荷装置である。
【0020】
サーバ20は、需給バランスをとる適正な電力価格(以下、適正価格という。)を決定する、たとえばパーソナルコンピュータおよびワークステーションなどのコンピュータである。サーバ20は決定した適正価格を示す情報(以下、価格シグナルという。)を負荷システム10に送信する。これにより、本実施形態の電力システムでは、負荷システム10による充電または放電の自律制御を行わせつつ、電力系統における需給バランスがとれるように適正な価格を設定しようとするものである。本実施形態では、サーバ20は電力系ごとに変電所に設置され、同一エリア(同一電力系統)内の蓄電装置10を制御するものとする。
【0021】
==蓄電装置10の構成==
図2は、蓄電装置10のハードウェア構成例を示す図である。蓄電装置10は、蓄電エージェント11および蓄電池12を備える。蓄電池12は外部からの制御により充電および放電を行う一般的な蓄電池を想定している。蓄電エージェント11は、蓄電池12を制御するコンピュータである。蓄電エージェント11は、後述するように価格シグナルに応じて蓄電池12が充電または放電を行うように蓄電池12を制御する。
【0022】
蓄電エージェント11は、CPU101、メモリ102、記憶装置103、通信インタフェース104、制御インタフェース105を備える。記憶装置103は、各種のデータやプログラムを記憶する、たとえばフラッシュメモリ、ソリッドステートドライブおよびハードディスクドライブなどである。CPU101は記憶装置103に記憶されているプログラムをメモリ102に読み出して実行することにより各種の機能を実現する。通信インタフェース104は、通信ネットワーク30に接続するためのインタフェースであり、例えば、電力線に接続して電力線通信(PLC;Power Line Communications)を行うためのPLCモデム、公衆電話回線網に接続するためのモデム、無線通信網に接続するための無線通信機、イーサネット(登録商標)に接続するためのアダプタなどである。制御インタフェース105は、蓄電池12と接続するためのインタフェースである。制御インタフェース105は、たとえば、シリアル通信を行うためのインタフェースであってもよいし、電気信号を出力するための端子であってもよいし、蓄電池12と情報通信を行うための通信インタフェースであってもよい。蓄電エージェント11は、制御インタフェース105を介して命令信号を負荷12に送信することにより蓄電池12を制御することができる。
【0023】
図3は、蓄電エージェント11のソフトウェア構成例を示す図である。蓄電エージェント11は、蓄電情報取得部111、買電価格決定部112、需要情報送信部113、価格シグナル受信部114、充放電制御部115、蓄電情報記憶部131および価格シグナル記憶部132を備える。
【0024】
なお、蓄電情報取得部111、買電価格決定部112、需要情報送信部113、価格シグナル受信部114および充放電制御部115は、負荷システム10の負荷エージェント11が備えるCPU101が記憶装置103に記憶されているプログラムをメモリ102に読み出して実行することにより実現され、負荷情報記憶部131および価格シグナル記憶部132は、メモリ102および記憶装置103が提供する記憶領域の一部として実現される。
【0025】
蓄電情報記憶部131は、蓄電池12に関する情報(以下、蓄電情報という。)を記憶する。蓄電情報には、蓄電池12の単位時間あたりの消費電力、蓄電池12の容量、使用開始時刻、電力価格の最高価格(以下、Pmaxと記載する。)などが含まれる。蓄電池12は使用開始時刻までに容量分充電されるものとし、電力価格が買電価格以下であれば蓄電池12への充電を行い、電力価格がPmaxを超えている場合には充電を行わない。
【0026】
蓄電情報取得部111は、蓄電情報を取得し、取得した蓄電情報を蓄電情報記憶部131に登録する。蓄電情報取得部111は、ユーザから蓄電情報の入力を受け付けるようにすることができる。また、たとえば蓄電池12の容量については、蓄電情報取得部111は制御インタフェース105を介して蓄電池12から取得するようにすることもできる。また、蓄電情報取得部111は、蓄電池12の現在の蓄電量を取得する。蓄電情報取得部111は、ユーザから現在の蓄電量の入力を受け付けるようにしてもよいし、制御インタフェース105を介して蓄電池12から現在の蓄電量を取得するようにしてもよい。また、蓄電情報取得部111は、蓄電装置10が配電線から受電している電圧(受電電圧という。)を測定する。
【0027】
買電価格決定部112は、蓄電装置10が電力を消費する価格、すなわち蓄電池12に充電を行う価格(以下、買電価格という。)を決定する。買電価格決定部112は、蓄電池12の現在の蓄電量と受電電圧とに応じて買電価格を決定する。買電価格決定部112は、たとえば蓄電池12の容量と現在の蓄電量との差が大きいほど安くなるように買電価格を決定する。また、買電価格決定部112は、たとえば受電電圧と所定の基準電圧との差(以下、逸脱電圧という。)が大きいほど高くなるように買電価格を決定する。本実施形態では、受電電圧をV[V]、基準電圧をV0[V]、逸脱電圧をdV[V]、逸脱電圧の許容最大値をVa[V]、蓄電池12の容量をWs[kWh]、単位時間あたりの消費電力をQ[kW]、蓄電池12の現在の蓄電量をW[kWh]、現在時刻から使用開始時刻までの時間をT[h]、蓄電池12の最小容量から満充電までにかかる時間をTf0[h]、現在の蓄電量から満充電までにかかる時間をT[h]として、買電価格Pを次式(1)〜(4)により算出する。
【0031】
【数4】
図4は、逸脱電圧dVと買電価格Pとの関係を表すグラフの例である。このように、逸脱電圧dVが大きくなるほど買電価格Pは高くなるように決定される。
【0032】
需要情報送信部113は、蓄電装置10による電力需要に関する情報(以下、需要情報という。)をサーバ20に送信する。需要情報には、蓄電エージェント11を特定するための情報(以下、エージェントIDという。)、買電価格、消費電力および逸脱電圧が含まれる。需要情報送信部113は、当該蓄電エージェント11のエージェントIDと、蓄電情報記憶部131に記憶されている買電価格および消費電力と、蓄電情報取得部111が測定した受電電圧Vから基準電圧V0を引いた逸脱電圧dVとを含めた需要情報をサーバ20に送信する。
【0033】
価格シグナル受信部114は、サーバ20から送信される価格シグナルを受信する。価格シグナル受信部114は、サーバ20から受信した価格シグナルを価格シグナル記憶部132に登録する。
【0034】
充放電制御部115は、価格シグナルに応じて蓄電池12を制御する。充放電制御部115は、価格シグナル記憶部に132に記憶されている価格シグナルが、蓄電情報記憶部131に記憶されている買電価格以下である場合に、蓄電池12への充電を行い、蓄電池12が満充電になった(蓄電池12の蓄電量が蓄電池12の容量になった)場合、または、価格シグナルが買電価格を超えた場合には、蓄電池12への充電を停止する。なお、蓄電池12への充電の制御は一般的な制御であるものとして、ここでは説明を省略する。
【0035】
==蓄電装置10の処理==
図5は、蓄電エージェント11による処理の流れを示す図である。
【0036】
買電価格決定部112は、蓄電情報記憶部131に記憶されている使用開始時刻をt0とし(S401)、蓄電情報記憶部131に記憶されている容量(Ws)を、単位時間あたりの消費電力(Q)で割った値をTf0とする(S402)。蓄電エージェント11は以下の処理を繰り返す。
【0037】
蓄電エージェント11は、
図6に示す需要情報送信処理を実行する(S403)。
【0038】
図6に示すように、蓄電装置10が切(OFF)であるとき(S421:YES)、蓄電情報取得部111は、受電電圧Vを計測し(S422)、計測した受電電圧Vから基準電圧V0を減算して逸脱電圧dVを算出する(S423)。買電価格決定部112は、t0から現在時刻tを引いて、使用開始時刻までの時間Tを算出する(S424)。蓄電情報取得部111は、蓄電池12の現在の蓄電量Wを取得する(S425)。買電価格決定部112は、WをQで割った値をTf0から引いて、満充電までにかかる時間Tfを算出する(S426)。買電価格決定部112は、満充電までにかかる時間Tfを使用開始時刻までの時間Tで割った値が所定値(本実施形態では1)より小さければ(S427:YES)、次式
【0039】
【数5】
により買電価格Pを算出し(S428)、そうでなければ(S427:NO)、Pmaxを買電価格Pとする(S429)。需要情報送信部113は、買電価格Pと消費電力Qと逸脱電圧dVとを含む需要情報をサーバ20に送信する(S430)。
【0040】
図5に戻り、価格シグナル受信部114が価格シグナルPsを受信していた場合(S404:YES)、充放電制御部115は、価格シグナルPsが買電価格P以下であれば(S405:YES)、充電池12への充電を行い(S406)、価格シグナルPsが買電価格Pより大きければ(S405:NO)、充電池12への充電を停止する(S407)。蓄電情報取得部111は、受電電圧Vを計測し(S408)、計測した受電電圧Vから基準電圧V0を減算して逸脱電圧dVを算出する(S409)。需要情報送信部113は、買電価格Pと消費電力Qと逸脱電圧dVとを含む需要情報をサーバ20に送信する(S410)
以上の処理を繰り返し実行することにより、蓄電エージェント11からは、充電までにかかる時間と現在の蓄電量と逸脱電圧とに応じて買電価格を決定し、これをサーバ20に通知するとともに、価格シグナルに応じて蓄電池12への充電制御を行うことができる。
【0041】
==サーバ20の構成==
図7は、サーバ20のハードウェア構成例を示す図である。サーバ20は、CPU201、メモリ202、記憶装置203、通信インタフェース204、入力装置205、出力装置206を備える。記憶装置203は、各種のデータやプログラムを記憶する、例えばハードディスクドライブやソリッドステートドライブ、フラッシュメモリなどである。CPU201は記憶装置203に記憶されているプログラムをメモリ202に読み出して実行することにより各種の機能を実現する。通信インタフェース204は、通信ネットワーク30に接続するためのインタフェースであり、たとえば、電力線に接続して電力線通信(PLC;Power Line Communications)を行うためのPLCモデム、公衆電話回線網に接続するためのモデム、イーサネット(登録商標)に接続するためのアダプタ、無線通信網に接続するための無線通信機などである。入力装置205は、データの入力を受け付ける、例えばキーボードやマウス、トラックボール、タッチパネル、マイクロフォンなどである。出力装置206は、データを出力する、例えばディスプレイやプリンタ、スピーカなどである。
【0042】
図8は、サーバ20のソフトウェア構成例を示す図である。サーバ20は、需要情報受信部211、需要曲線作成部212、負荷電流測定部213、制御量決定部214、適正価格決定部215、価格シグナル送信部216、需要情報記憶部231、需要曲線記憶部232、需要履歴記憶部233および適正価格記憶部234を備える。
【0043】
なお、需要情報受信部211、需要曲線作成部212、負荷電流測定部213、制御量決定部214、適正価格決定部215および価格シグナル送信部216は、サーバ20が備えるCPU201が記憶装置203に記憶されているプログラムをメモリ202に読み出して実行することにより実現され、需要情報記憶部231、需要曲線記憶部232、需要履歴記憶部233および適正価格記憶部234は、サーバ20が備えるメモリ202および記憶装置203が提供する記憶領域の一部として実現される。
【0044】
需要情報受信部211(本発明の逸脱電圧取得部および需要情報取得部に対応する。)は、蓄電装置10から送信される需要情報を受信する。需要情報受信部211は受信した需要情報を需要情報記憶部231に登録する。なお、需要情報記憶部231には最新の需要情報のみが記憶されるものとする。
【0045】
需要曲線作成部212は、需要情報に基づいてエリア内における需要曲線を求める。需要曲線作成部212は、たとえば需要情報の消費電力を電力価格ごとに合計し、電力価格の順に累積消費電力を計算していき、電力価格と累積消費電力との関係を表す関数を作成することができる。なお、需要曲線は、幾何的に作成するようにしてもよいし、所定の単位円(たとえば1円)ごとの電力価格に対応付けて累積消費電力量を表形式で記憶するようにしてもよい。
【0046】
負荷電流測定部213は、サーバ20が設置されている電力系統の変電所における負荷電流(以下、PLと表記する。)を測定する。なお、負荷電流測定部213による負荷電流の測定処理には公知の手法を用いるものとしてここでは説明を省略する。負荷電流測定部213は負荷電流を測定する度に、測定した負荷電流の履歴を需要履歴記憶部233に登録していくものとする。負荷電流PLは、価格シグナルにより制御可能な負荷(本実施形態では、蓄電装置10である。)による消費電力の合計(以下、Qsと表記する。)と、価格シグナルにより制御することのできない負荷(本実施形態では、蓄電装置10以外の負荷すべてである。以下、非制御負荷という。)による消費電力の合計(以下、PL0と表記する。)との合計値となる。
【0047】
制御量決定部214(本発明の制御量決定部および需要逸脱電圧関係式算出部に対応する。)は、逸脱電圧dVの合計ΣdVに応じて蓄電装置10による消費電力の合計の目標値(以下、制御量といい、これもQsと表記する。)を決定する。制御量決定部214は、たとえば風力発電や太陽光発電などにより電力供給量が変動した場合に、その変動に応じて蓄電装置10による需要量を増やすべきものとして、その目標値を制御量Qsとして決定する。なお、制御量Qsの決定処理の詳細については後述する。制御量決定部214は、制御量Qsを決定する度に、逸脱電圧dVの合計ΣdVの履歴、負荷電流(すなわち需要量)PLの履歴、および決定した制御量の履歴を需要履歴記憶部233に登録していくものとする。
【0048】
適正価格決定部215は、適正価格を決定する。適正価格決定部215は、需要曲線における制御量Qsに対応する電力価格を適正価格として決定する。適正価格決定部215は決定した適正価格を適正価格記憶部234に登録する。
【0049】
価格シグナル送信部216は、適正価格記憶部334に記憶されている適正価格を示す価格シグナルを蓄電装置10に送信する。これにより蓄電装置10において、適正価格に応じた充電の制御が行われる。
【0050】
==サーバ20の処理==
図9は、サーバ20による処理の流れを示す図である。
【0051】
需要情報受信部211が蓄電装置10から送信される需要情報を受信した場合(S501:YES)、受信した需要情報を需要情報記憶部231に登録する(S502)。
図10のリスト21に示すような需要情報が需要情報記憶部231に登録されることになる。
【0052】
需要曲線作成部212は、需要情報記憶部231から買電価格ごとに消費電力を集計し、エリア内の需要曲線を作成する(S503)。
図10に示すように、需要曲線作成部212は、たとえば最高価格Pmaxから1円単位で、最低価格(たとえば0円とすることができる。)まで電力価格ごとに、買電価格が電力価格に一致する需要情報の消費電力を合計し、累積商品電力を計算していく。
図10の表22はその計算結果を示している。
【0053】
制御量決定部214は後述する
図11に示す制御量の算出処理により制御量Qsを算出する(S504)。
【0054】
図11に示すように、制御量決定部214は、消費電力の最低値(以下、最低負荷電力という。)Qminを設定する(S521)。最低負荷電力はたとえばオペレータからの入力を受け付けるようにしてもよいし、発電機からの最小発電電力量に応じて決定するようにしてもよい。制御量決定部214は、逸脱電力dVの合計値ΣdVと、需要量PLとの関係式(以下、需要逸脱電圧関係式という。)を推計する(S522)。なお、制御量決定部214は、たとえば需要履歴記憶部233に登録されているΣdVの履歴およびPLの履歴について重回帰分析などの公知の手法により需要逸脱電圧関係式を求めることができる。
図12は需要逸脱電圧関係式の一例を表す図である。同図に示すように、風力発電や太陽光発電などにより電力供給量が増加した場合には、これらの発電設備が接続された電力系統における電力需要は減少するとともに、電圧が上昇して逸脱電圧の合計値ΣdVも上昇する。
図12の例では、需要逸脱電圧関係式は線形の一次式であることを想定しているが、高次の関係式としてもよい。
【0055】
その後以下の処理が繰り返される。すなわち、負荷電流測定部213は、変電所における負荷電流PLを計測する(S523)。負荷電流測定部213は、計測した負荷電流PLを需要履歴記憶部233に登録する(S524)。制御量決定部214は、需要情報記憶部231に記憶されている需要情報に含まれる逸脱電圧dVを合計してΣdVを算出し(S525)、算出したΣdVを需要履歴記憶部233に登録する(S526)。制御量決定部214は、ΣdVが所定の閾値よりも大きければ(S527:YES)、需要逸脱電圧関係式からΣdVが0となる需要量(すなわち
図12におけるPLxである。)を求めて制御量Qsとする(S528)。一方、ΣdVが閾値以下であれば(S527:NO)、制御量決定部214は、負荷電流PLを制御量Qsとして決定する(S529)。
【0056】
図9に戻り、制御量決定部214は決定したQsを需要履歴記憶部233に登録し(S505)、適正価格決定部215は需要曲線からQsに対応する価格を求めて適正価格Psとする(S506)。
図9の需要曲線23において制御量Qsに対応する価格Pが適正価格Psとなる。価格シグナル送信部216は、適正価格Psを価格シグナルとして全ての蓄電装置10(蓄電エージェント11)に送信する(S507)。
【0057】
==本電力システムによる効果==
以上のようにして、本実施形態の電力システムによれば、サーバ20は価格シグナルを蓄電装置10に与えるのみで蓄電装置10を制御することができる。したがって、分散した蓄電装置10の制御を容易に実現することが可能となる。
【0058】
また、本実施形態の電力システムによれば、蓄電装置10から取得した需要情報に基づいてサーバ20が需要曲線を求め、この需要曲線において制御量Qsに対応する価格を適正価格として決定することができる。したがって、需要曲線に基づいていることから、適正価格を容易かつ適切に決定することができる。
【0059】
また、本実施形態の電力システムによれば、逸脱電圧ΣdVが0となる需要量を制御量Qsとして価格シグナルを決定し、これにより蓄電装置10を制御している。たとえば
図12の例において、時刻tにおける需要量PL(t)に対応する逸脱電圧の合計ΣdV(t)は0よりも大きいところ、需要量をPLxまで上げることにより逸脱電圧ΣdVを解消することができることが分かる。本実施形態の電力システムでは、ΣdVが閾値を超えた場合には、
図12のPLx(ΣdV=0となる需要量)を制御量Qsとしているので(
図11ステップS528)、電力系統における逸脱電圧を解消することができる。よって、風力発電や太陽光発電などにより電力供給量が変動する場合であっても、安定した電力系統の運用を行うことが可能となる。
【0060】
また、本実施形態の電力システムによれば、蓄電装置10は価格シグナルが示す電力価格Psと買電価格Pとの比較に応じて蓄電池12への充電を行うかどうかを決定すればよく、蓄電装置10の充電制御を簡単に行うことができる。
【0061】
==変形例==
本実施形態では、サーバ20からの制御対象となる負荷は蓄電池12への充電を制御する蓄電装置10であるものとしたが、これに限らず、電力を消費するものであればその種類を問わない。たとえば負荷は温水器などの蓄熱装置であってもよい。この場合、蓄熱装置も蓄電エージェント11と同様のエージェントを備えるようにし、
図6のステップS425では現在の蓄熱量を取得してWとし、
図5のステップS406およびS407では、温水器への加熱の開始(S406)または終了(S407)を行うものとする。
【0062】
また、本実施形態では、サーバ20は電力系統の変電所に設置して電力系統ごとの需要を制御するものとしたが、複数の電力系統からの需要情報を1台のサーバ20が受信し、1台のサーバ20が複数の電力系統の需要を調整するように価格シグナルを送信するようにしてもよい。この場合、サーバ20の需要情報記憶部231、需要曲線記憶部232、需要履歴記憶部233および適正価格記憶部234はそれぞれ、電力系統ごとに需要情報、需要曲線、負荷電流および制御量、ならびに適正価格を記憶するようにし、需要曲線作成部212は電力系統ごとの需要曲線を作成し、負荷電流測定部213は電力系統ごとの負荷電流を測定し、制御量決定部214は電力系統ごとに制御量Qsを決定し、適正価格決定部215は電力系統ごとの需要曲線から、当該電力系統についての制御量に対応する電力価格を適正価格として決定し、価格シグナル送信部216は、電力系統ごとの適正価格を、当該電力系統に対応する蓄電装置10にのみ価格シグナルとして送信する。
【0063】
また、本実施形態では、需要情報は買電価格と単位時間あたりの消費電力とが含まれるものとしたが、これに限らず、たとえば買電価格に応じて消費電力を求めるための関数など、買電価格と負荷における消費電力との関係を表すものであり、これに基づいてエリア内における需要曲線が作成できるものであればよい。
【0064】
また、本実施形態では、定期的に需要情報をサーバ20に送信するものとしたが、任意のタイミングで送信するようにしてもよい。たとえば、サーバ20からのリクエストに応じて需要情報を応答するようにしてもよいし、オペレータからの指示に応じて送信するようにしてもよい。
【0065】
また、本実施形態では、サーバ20から価格シグナルが送信されて蓄電装置10はこれを待つものとしたが、これに限らず、たとえば価格シグナル受信部114が、任意のタイミングで(たとえば、蓄電情報が登録されたときや、オペレータから指示のあったときなどに)サーバ20にリクエストを送信し、サーバ20がリクエストに応じて応答した価格シグナルを受信するようにしてもよい。
【0066】
また、本実施形態では、価格シグナルの示す価格Psが買電価格以下であれば無条件で充電を行うものとしたが、満充電であれば充電を行わないようにしてもよい。
【0067】
また、本実施形態では、容量Wsを消費電力Qで割って充電にかかる時間Tf0を求めるものとしたが、これに限らず、充電に用いる消費電力量を変動させることができる場合には、買電価格よりもより安い価格シグナルの場合により多くの消費電力量となるように充電を行うようにしてもよい。この場合、需要情報として、価格ごとの消費電力量をサーバ20に送信するようにする。
【0068】
また、本実施形態では、供給関数および蓄電関数(充電関数および放電関数を含む。)は、電力価格を代入して発電量または充放電量を算出する関数であるものとしたが、これに限らず、電力価格と発電量または充放電量との関係を示す情報であればよい。たとえば、所定の単位金額(たとえば1円、5円、10円など任意の金額とすることができる。)ごとの電力価格に対応付けて発電量または充放電量を管理する表としてもよい。
【0069】
また、供給関数および蓄電関数(充電関数および放電関数を含む。)は、電力価格と発電量および充放電量との関係を示す情報であり、電力価格の変化と発電量または充放電量の変化との関係、すなわち発電量または充放電量の価格弾力性を示す情報も含むものとする。
【0070】
また、本実施形態では、電力価格ごとの総供給量および総充電量を表として記録し、これに基づいて供給曲線および需要曲線を決定するものとしたが、たとえば、発電関数および蓄電関数が方程式により表されているものである場合には、供給関数および需要関数も方程式により表すようにすることも可能であり、この場合、供給関数と需要関数との交点を、方程式を用いて計算により算出するようにしてもよい。
【0071】
また、本実施形態では、発電装置10が発電エージェント11および発電機12を含んでいるものとしたが、発電エージェント11および発電機12を別の装置として設けるようにしてもよい。同様に、蓄電エージェント21と蓄電池22とを別の装置として設けるようにしてもよい。また、1台の発電エージェント11が複数の発電機12を制御し、1台の蓄電エージェント21が複数の蓄電池22を制御するようにしてもよい。
【0072】
また、本実施形態では、サーバ30は1台のコンピュータであるものとしたが、複数台のコンピュータにより実現することもできる。この場合、たとえば、複数台のコンピュータで仮想的な1台のコンピュータを実現するようにしてもよいし、記憶部と機能部とを複数のコンピュータに分散させるようにしてもよい。
【0073】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。