(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5897628
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】間接活線工事用アダプタ
(51)【国際特許分類】
H02G 1/02 20060101AFI20160317BHJP
【FI】
H02G1/02
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-53805(P2014-53805)
(22)【出願日】2014年3月17日
(65)【公開番号】特開2015-177692(P2015-177692A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2015年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】森山 裕之
【審査官】
久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−161217(JP,A)
【文献】
特開2007−276024(JP,A)
【文献】
特開2003−170364(JP,A)
【文献】
特開2014−107922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
B25B 7/00−7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁操作棒の先端部に設けた一対の開閉する湾曲した把持腕に取り付けでき、対向する把持面の間に把持対象物を挟持可能な、一組で構成される間接活線工事用アダプタであって、
一対の前記把持腕から遠心方向に突出する把持爪が挿入可能な穴部を前記把持面と反対側に開口したブロック状のアダプタ本体と、
アダプタ本体に取り付け、前記把持爪の把持面と反対面から当該把持爪を固定する係止手段と、
前記アダプタ本体に一端部を固定すると共に、一対の前記把持面に沿って延び、他端部が交差できるように他端部側を湾曲した一組の板状の湾曲腕と、を備え、
一方の前記湾曲腕は、単一腕を中央部に有し、
他方の前記湾曲腕は、前記単一腕の先端部が導入可能な二股に分岐した一対の分岐腕を有し、
前記アダプタ本体の穴部の一方の開口端から前記把持爪を挿入して、当該把持爪から延長するように、一組の前記湾曲腕が対向配置される第1の取り付け状態と、
前記アダプタ本体の穴部の他方の開口端から前記把持爪を挿入して、当該把持腕の湾曲した内壁に沿って一組の前記湾曲腕が対向配置される第2の取り付け状態と、に変換できる間接活線工事用アダプタ。
【請求項2】
前記係止手段は、
先端部が前記穴部の内壁から突出できると共に、前記把持爪の把持面と反対面から当該把持爪に当接する係合ピンと、
前記アダプタ本体の内部に保持され、前記係合ピンが前記把持爪に向かう力を付勢する圧縮コイルばねと、を有している請求項1記載の間接活線工事用アダプタ。
【請求項3】
一組の前記アダプタ本体は、それらの対向する把持面を粗面で形成している請求項1又は2記載の間接活線工事用アダプタ。
【請求項4】
一組の前記湾曲腕は、それらの一端部を前記アダプタ本体の一端部側に突出する取り付け片に着脱自在に固定している請求項1から3のいずれかに記載の間接活線工事用アダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間接活線工事用アダプタに関する。特に、間接活線工事用の絶縁ヤットコの先端部に設けた一対の開閉する把持腕に着脱自在な一組のアダプタであって、クイック型アームを把持腕から延長した状態で取り付けると、クイック型ヤットコとして使用でき、クイック型アームを把持腕の間に配置したときには、把持腕の間に電線が脱落することを抑制できる間接活線工事用アダプタの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧配電線を無停電で配電工事を行う活線作業には、直接活線工法と間接活線工法の二通りがある。直接活線工法は、作業者が高圧ゴム手袋などの保護具を着用して、通電中の高圧配電線に直接触れて配電工事を行う。一方、間接活線工法は、作業者が絶縁操作棒(ホットスティック)などを用いて、通電中の高圧配電線に直接触れることなく配電工事を行うことができる。
【0003】
一般に、絶縁操作棒は、長尺の操作棒とこの操作棒の先端部に取り付けた配電作業用工具(以下、先端工具という)で構成している。そして、絶縁操作棒は、高圧配電線を把持、又は切断するなど、作業目的に対応して、先端工具を交換できるように構成している。
【0004】
このような遠隔に配置された高圧配電線を把持する絶縁操作棒としては、絶縁操作棒の先端部に設けた一対の把持腕を手許の操作で開閉できる遠隔把持用絶縁操作棒、いわゆる「絶縁ヤットコ」が知られている。この絶縁ヤットコを用いて、電線を把持する作業の他に、電線に防護管を被せる作業、又は電柱に営巣されたカラスの巣を除去する作業などが実施されている。
【0005】
図6は、高圧配電線などを把持するための絶縁操作棒の正面図である。
図7は、
図6に示した絶縁操作棒の先端部を拡大した正面図である。
図8は、
図7の左側面図である。
【0006】
図6を参照すると、絶縁操作棒9は、長尺の操作棒91と把持工具92で構成している。又、絶縁操作棒9は、作動棒93を備えている。把持工具92は、操作棒91の先端部に取り付けている。
【0007】
図6又は
図7を参照すると、把持工具92は、開閉する一対の湾曲した把持腕9a・9bで構成している。そして、一方の把持腕9aは、基端部が固定された固定腕であり、他方の把持腕9bは、一方の把持腕9aの基端部に設けた回動軸9cを中心に回動する可動腕となっている。
【0008】
図6を参照すると、作動棒93は、操作棒91に沿って保持されている。作動棒93の先端部は、他方の把持腕9bに回動自在に連結している。そして、作動棒93の基端部に設けた操作レバー94を操作すると、一方の把持腕9aに対して、他方の把持腕9bを開閉できる。絶縁操作棒9は、操作棒91及び作動棒93の中間部が絶縁性を有するプラスチックパイプなどで構成され、間接活線工法に好適なように、絶縁性を確保している。
【0009】
図6を参照して、操作レバー94を握って、操作レバー94を操作棒91に近づけると、一方の把持腕9aに対して、他方の把持腕9bを閉じることができる。操作レバー94を解放すると、操作レバー94に連結したばね(図示せず)の力で、一方の把持腕9aに対して、他方の把持腕9bを開くことができる。
図6又は
図7は、一方の把持腕9aに対して、他方の把持腕9bが最大に開いた状態を示している。
【0010】
図7又は
図8を参照して、一方の把持腕9aは、先細り状の把持爪91aを突出している。把持爪91aは、把持面90aを形成している。把持面90aは、回動軸9cの回転中心から遠心方向に沿って略平行に形成されている。同様に、他方の把持腕9bは、先細り状の把持爪91bを突出している。把持爪91bは、把持面90bを形成している。把持面90bは、把持面90aと所定の開角を設けて配置されている。
図6又は
図7を参照して、操作レバー94を握ると、把持面90bを把持面90aに近づけることができる。
【0011】
図6から
図8に示した絶縁操作棒9は、高所に配置された高圧配電線などを一対の把持爪91a・91bで把持できる、いわゆる「絶縁ヤットコ」になっている。
【0012】
ところで、
図6から
図8に示した把持工具92は、電線や直線スリーブなどの略円形の断面を有する把持対象物を平坦な把持面90a・90bで確実に把持することが難しいという不具合があった。又、略円形の断面を有する把持対象物が一対の把持腕9a・9bの内部に脱落し易いという不具合があった。
【0013】
このような不具合を解消するため、把持対象物が一対の把持腕の内部に脱落することを防止する絶縁ヤットコが開示されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0014】
しかし、特許文献1による絶縁ヤットコは、複数の襞を表面に形成したゴム板を一対の把持腕の間に掛け渡しているので、蛇などを確実に把持できるが、略円形の断面を有する把持対象物を確実に把持することは容易でないという問題がある。
【0015】
このため、略円形の断面を有する把持対象物を把持することのみに特化した絶縁操作棒(いわゆる、クイック型ヤットコ)が開発されている。
図9は、クイック型ヤットコの一例による構成を示す図であり、
図9(A)は、クイック型ヤットコの正面図、
図9(B)は、クイック型ヤットコの右側面図である。
【0016】
図9を参照すると、把持工具82は、開閉する一対の湾曲した把持腕8a・8bで構成している。そして、一方の把持腕aは、基端部が固定された固定腕であり、他方の把持腕8bは、一方の把持腕8aの基端部に設けた回動軸8cを中心に回動する可動腕となっている。
【0017】
図9を参照すると、作動棒83は、操作棒81に沿って保持されている。作動棒83の先端部は、他方の把持腕8bに回動自在に連結している。そして、作動棒83の基端部に設けた操作レバー84を操作すると、一方の把持腕8aに対して、他方の把持腕8bを開閉できる。絶縁操作棒8は、操作棒81及び作動棒83の中間部が絶縁性を有するプラスチックパイプなどで構成され、間接活線工法に好適なように、絶縁性を確保している。
【0018】
図9を参照して、操作レバー84を握って、操作レバー84を操作棒81に近づけると、一方の把持腕8aに対して、他方の把持腕8bを閉じることができる。操作レバー84を解放すると、操作レバー84に連結したばね(図示せず)の力で、一方の把持腕8aに対して、他方の把持腕8bを開くことができる。
【0019】
図9を参照すると、一方の把持腕8aは、鉤状に屈折するように形成している。他方の把持腕8bは、円弧状に湾曲するように形成している。一方の把持腕8aは、二股に分岐した一対の分岐腕となっている。他方の把持腕8bは、一対の分岐腕の間に導入される単一腕になっている。これにより、一対の把持腕8a・8bを閉じると、略円形の断面を有する把持対象物を確実に把持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2012−157121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかし、間接活線工事では、様々な把持対象物が存在している。
図9に示した絶縁操作棒8は、比較的細径の電線などを確実に把持できるが、他の用途に使用できないという問題がある。
図6に示した絶縁操作棒9は、比較的太径の電線を把持できるが、前述したように、把持対象物が一対の把持腕の内部に脱落し易いという問題があった。
【0022】
又、高所作業車に設置したバケット内に、絶縁操作棒8と絶縁操作棒9の双方を用意しておけば、これらの問題は解決できるが、バケットの内部が狭くなり、作業効率に支障をきたすことが心配される。
【0023】
以上のことから、間接活線工事用の絶縁ヤットコの先端部に設けた一対の開閉する把持腕に着脱自在な一組のアダプタであって、クイック型アームを把持腕から延長した状態で取り付けると、クイック型ヤットコとして使用でき、クイック型アームを把持腕の間に配置したときには、開閉腕の間に電線が脱落することを抑制できる間接活線工事用アダプタが求められていた。
【0024】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、間接活線工事用の絶縁ヤットコでクイック型ヤットコの役割を果たすことができる間接活線工事用アダプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明者は、クイック型アームを絶縁ヤットコの先端部に取り付けて、クイック型ヤットコとして使用でき、クイック型アームを開閉する把持腕の間に配置したときには、把持腕の間に電線が脱落することを抑制できるようにアダプタ構成することで、間接活線工事用の絶縁ヤットコでクイック型ヤットコの役割を果たすことができることを見出し、これに基づいて、以下のような新たな間接活線工事用アダプタを発明するに至った。
【0026】
(1)本発明による間接活線工事用アダプタは、絶縁操作棒の先端部に設けた一対の開閉する湾曲した把持腕に取り付けでき、対向する把持面の間に把持対象物を挟持可能な、一組で構成される間接活線工事用アダプタであって、一対の前記把持腕から遠心方向に突出する把持爪が挿入可能な穴部を前記把持面と反対側に開口したブロック状のアダプタ本体と、アダプタ本体に取り付け、前記把持爪の把持面と反対面から当該把持爪を固定する係止手段と、前記アダプタ本体に一端部を固定すると共に、一対の前記把持面に沿って延び、他端部が交差できるように他端部側を湾曲した一組の板状の湾曲腕と、を備え、一方の前記湾曲腕は、単一腕を中央部に有し、他方の前記湾曲腕は、前記単一腕の先端部が導入可能な二股に分岐した一対の分岐腕を有し、前記アダプタ本体の穴部の一方の開口端から前記把持爪を挿入して、当該把持爪から延長するように、一組の前記湾曲腕が対向配置される第1の取り付け状態と、前記アダプタ本体の穴部の他方の開口端から前記把持爪を挿入して、当該把持腕の湾曲した内壁に沿って一組の前記湾曲腕が対向配置される第2の取り付け状態と、に変換できる。
【0027】
(2)前記係止手段は、先端部が前記穴部の内壁から突出できると共に、前記把持爪の把持面と反対面から当該把持爪に当接する係合ピンと、前記アダプタ本体の内部に保持され、前記係合ピンが前記把持爪に向かう力を付勢する圧縮コイルばねと、を有していることが好ましい。
【0028】
(3)一組の前記アダプタ本体は、それらの対向する把持面を粗面で形成していることが好ましい。
【0029】
(4)一組の前記湾曲腕は、それらの一端部を前記アダプタ本体の一端部側に突出する取り付け片に着脱自在に固定していることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明による接活線工事用アダプタは、アダプタ本体の穴部の一方の開口端から把持爪を挿入して、把持爪から延長するように、一組の湾曲腕が対向配置される第1の取り付け状態と、アダプタ本体の穴部の他方の開口端から把持爪を挿入して、把持腕の湾曲した内壁に沿って一組の湾曲腕が対向配置される第2の取り付け状態に変換できるので、異なる用途を有する複数の絶縁操作棒を用意する必要が無くなるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態による間接活線工事用アダプタの構成を示す斜視図である。
【
図2】前記実施形態による間接活線工事用アダプタの構成を示す図であり、
図2(A)は、一方の間接活線工事用アダプタの斜視図、
図2(B)は、一方の間接活線工事用アダプタの要部縦断面図、
図2(C)は、一方の間接活線工事用アダプタの要部横断面図である。
【
図3】前記実施形態による間接活線工事用アダプタの要部を縦断面で示す正面図であり、一対の把持腕が最も開角した状態で、一対の把持腕に一組の間接活線工事用アダプタを取り付けた状態図である。
【
図4】
図3の状態変化図であり、一対の把持腕を閉じて、一対の湾曲腕が閉じた状態を示す正面図である。
【
図5】前記実施形態による間接活線工事用アダプタの要部を縦断面で示す正面図であり、一対の把持腕が最も開角した状態で、一対の湾曲腕が一対の把持腕の内部に配置された状態図である。
【
図6】高圧配電線などを把持するための絶縁操作棒の正面図である。
【
図7】
図6に示した絶縁操作棒の先端部を拡大した正面図である。
【
図9】クイック型ヤットコの一例による構成を示す図であり、
図9(A)は、クイック型ヤットコの正面図、
図9(B)は、クイック型ヤットコの右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
[間接活線工事用アダプタの構成]
最初に、本発明の一実施形態による間接活線工事用アダプタの構成を説明する。
【0033】
図1は、本発明の一実施形態による間接活線工事用アダプタの構成を示す斜視図である。
図2は、前記実施形態による間接活線工事用アダプタの構成を示す図であり、
図2(A)は、一方の間接活線工事用アダプタの斜視図、
図2(B)は、一方の間接活線工事用アダプタの要部縦断面図、
図2(C)は、一方の間接活線工事用アダプタの要部横断面図である。
【0034】
図3は、前記実施形態による間接活線工事用アダプタの要部を縦断面で示す正面図であり、一対の把持腕が最も開角した状態で、一対の把持腕に一組の間接活線工事用アダプタを取り付けた状態図である。
【0035】
図4は、
図3の状態変化図であり、一対の把持腕を閉じて、一対の湾曲腕が閉じた状態を示す正面図である。
【0036】
図5は、前記実施形態による間接活線工事用アダプタの要部を縦断面で示す正面図であり、一対の把持腕が最も開角した状態で、一対の湾曲腕が一対の把持腕の内部に配置された状態図である。
【0037】
なお、従来技術で使用した符号と同じ符号を有する構成品は、その作用を同じとするので、以下説明を省略することがある。
【0038】
(全体構成)
図1から
図5を参照すると、本発明の一実施形態による間接活線工事用アダプタ(以下、アダプタと略称する)10は、ブロック状のアダプタ本体1、係止手段2、及び一組の板状の湾曲腕3a・3bを備えている。
【0039】
(アダプタ本体の構成)
図1から
図5を参照すると、アダプタ本体1は、絶縁操作棒90の先端部に設けた一対の開閉する湾曲した把持腕9a・9bに取り付けことができる。又、アダプタ本体1は、対向する一対の把持面10a・10aの間に比較的太径の電線Wbなどの把持対象物を挟持できる(
図5参照)。なお、把持面10aには、綾目ローレットなどの粗面を形成しておくことが好ましい。
【0040】
(アダプタ本体の構成)
図1から
図5を参照すると、アダプタ本体1は、絶縁操作棒90の先端部に設けた一対の開閉する湾曲した把持腕9a・9bに取り付けことができる。又、アダプタ本体1は、対向する一対の把持面10a・10aの間に比較的太径の電線Wbなどの把持対象物を挟持できる(
図5参照)。
【0041】
図2を参照すると、アダプタ本体1は、穴部11hを把持面10aと反対側に開口している。穴部11hには、一対の把持腕9a・9bから遠心方向に突出する把持爪91a又は把持爪91bを挿入できる(
図3参照)。
【0042】
図1から
図5を参照すると、アダプタ本体1は、帯状の取り付け片11を一端部側に突出している。取り付け片11には、後述する湾曲腕3a・3bの一端部を着脱自在に固定できる。取り付け片11には、湾曲腕3a・3bを雄ねじなどで固定するための雌ねじ穴11sを設けている(
図2(A)参照)。そして、アダプタ本体1は、一対の把持面10a・10aに沿って延びるように、湾曲腕3a又は湾曲腕3bを先端部から突出している。
【0043】
(係止手段の構成)
次に、係止手段2の構成を説明する。
図2を参照すると、係止手段2は、係合ピン21と圧縮コイルばね22を備えている。係合ピン21は、軸部21sと鍔部21fで構成している。軸部21sは、アダプタ本体1の外壁から突出した円筒部2pの内部に収容されている。軸部21sは、その先端部が穴部11hの内壁から内部に突出している(
図2(B)参照)。鍔部21fは、円筒部2pの上端縁に当接している。
【0044】
図2(B)を参照すると、圧縮コイルばね22は、軸部21sの外周を巻回している。又、圧縮コイルばね22は、円筒部2pの内部に収容されている。圧縮コイルばね22の一端部は、軸部21sに固定されている。圧縮コイルばね22の他端部は、円筒部2pの内壁に固定されている。そして、圧縮コイルばね22は、軸部21sの先端部が穴部11hの内部に突出する力を付勢している。
【0045】
図2(A)又は
図2(B)を参照して、鍔部21fを把持して、圧縮コイルばね22の弾性力に抗して、係合ピン21を引き上げると、把持爪91a又は把持爪91bを穴部11hに収容できる(
図3参照)。そして、鍔部21fを解放すると、把持爪91a又は把持爪91bの把持面90a・90bと反対面から把持爪91a又は把持爪91bに係合ピン21の先端部を当接できる。把持爪91a又は把持爪91bには、係合ピン21の先端部が進入する窪み9dを設けることが好ましい(
図1又は
図3参照)。
【0046】
図2(B)又は
図2(C)を参照すると、軸部21sは、遠心方向に係止ピン21pを突出している。一方、円筒部2pの内部には、係止ピン21pを軸部21sの軸方向に案内するスリット状の溝21mを設けている。
【0047】
図2(B)又は
図2(C)を参照して、鍔部21fを把持して、係合ピン21を引き上げると、係止ピン21pを円筒部2pの上端縁を超える高さに移動できる。そして、係合ピン21を外周方向に回動すると、係止ピン21pを円筒部2pの上端縁に当接できる。これにより、係合ピン21を引き上げた状態を維持でき、把持爪91a又は把持爪91bを穴部11hに収容した後に、係合ピン21を逆方向に回動することで、アダプタ本体1を把持爪91a又は把持爪91bに固定できる。
【0048】
(湾曲腕の構成)
次に、一組の湾曲腕3a・3bの構成を説明する。
図1を参照すると、湾曲腕3a又は湾曲腕3bは、六角穴付きボルトなどを用いて、その一端部を取り付け片11に着脱自在に固定している。一組の湾曲腕3a・3bは、一対の把持面10a・10aに沿って延び、他端部が交差できるように他端部側を湾曲している。そして、一組の湾曲腕3a・3bを対向配置することで、比較的細径の電線Wsなどを確実に把持できる(
図4参照)。
【0049】
図1を参照すると、一方の湾曲腕3aは、単一腕31aを中央部に有している。他方の湾曲腕3bは、単一腕31aの先端部が導入可能な二股に分岐した一対の分岐腕31b・31bを有している。単一腕31aの先端部と一対の分岐腕31b・31bの先端部が交差することで、比較的細径の電線Wsなどを確実に把持できる(
図4参照)。
【0050】
[間接活線工事用アダプタの作用]
次に、実施形態によるアダプタ10の操作方法を説明しながら、アダプタ10の作用及び効果を説明する。
【0051】
図1から
図3を参照すると、アダプタ10は、把持爪91a又は把持爪91bを穴部11hの一方の開口端から挿入し(
図3参照)、係合ピン21で固定できる。一組のアダプタ10・10は、対向する一組の湾曲腕3a・3bの間に比較的細径の電線Wsなどの把持対象物を挟持できる(
図4参照)。
【0052】
図3に示した状態から、操作レバー94を握って、操作レバー94を操作棒91に近づけると(
図6参照)、一方のアダプタ10に対して、他方のアダプタ10を閉じることができる。つまり、一方の湾曲腕3aに対して、他方の湾曲腕3bを閉じることができる(
図4参照)。
図4に示した状態では、単一腕31aの先端部と一対の分岐腕31b・31bの先端部が交差することで、比較的細径の電線Wsなどを確実に把持できる。
【0053】
又、
図5を参照すると、アダプタ10は、把持爪91a又は把持爪91bを穴部11hの他方の開口端から挿入し、係合ピン21で固定できる。
図5に示した状態では、一組のアダプタ10・10は、対向する把持面10a・10aの間に比較的太径の電線Wbなどの把持対象物を挟持できる。
【0054】
又、
図5に示した状態では、把持腕9a・9bの湾曲した内壁に沿って一組の湾曲腕3a・3bが対向配置されるので、比較的太径の電線Wbなどが一対の把持腕9a・9bの内部に脱落することを防止できる。
【0055】
図5に示した状態から、操作レバー94を握って、操作レバー94を操作棒91に近づけると(
図6参照)、一方のアダプタ10に対して、他方のアダプタ10を閉じることができる。そして、対向する把持面10a・10aの間に比較的太径の電線Wbなどの把持対象物を挟持できる。
【0056】
このように、実施形態によるアダプタ10は、アダプタ本体1・1の穴部11h・11hの一方の開口端から把持爪91a・91bを挿入して、把持爪91a・91bから延長するように、一組の湾曲腕3a・3bが対向配置される第1の取り付け状態と、アダプタ本体1・1の穴部11h・11hの他方の開口端から把持爪91a・91bを挿入して、把持腕9a・9bの湾曲した内壁に沿って一組の湾曲腕3a・3bが対向配置される第2の取り付け状態と、に変換できるので、異なる用途を有する複数の絶縁操作棒を用意する必要が無くなり、便利である。
【0057】
本発明による間接活線工事用アダプタは、次のような効果が奏される。
(1)間接活線工事用の絶縁ヤットコでクイック型ヤットコの役割を果たすことができる。
(2)細径の電線でも確実に把持できる。
(3)電線が脱落することを防止できる。
(4)別途、クイック型ヤットコ用意する必要が無くなる。
(5)バケットの内部が煩雑にならず、内部空間が広くなる。
【0058】
本発明は、絶縁操作棒などを用いて、無停電状態の高圧配電線を間接的に活線工事できる間接活線工事用のアダプタを開示したが、本発明のアダプタは、間接活線工事用に限定されることなく、他の分野でも応用されることが期待される。
【符号の説明】
【0059】
1 アダプタ本体
2 係止手段
3a 一方の湾曲腕
3b 他方の湾曲腕
9a・9b 一対の把持腕
10 アダプタ(間接活線工事用アダプタ)
10a・10a 対向する把持面
11h 穴部
31a 単一腕
31b・31b 一対の分岐腕
90a・90b 把持面
91a・91b 把持爪