【実施例】
【0017】
<構成>以下、構成について説明する。
【0018】
先ず、「軟質薄肉樹脂成形装置」について説明する。
【0019】
(構成1)
図3に示すように、この軟質薄肉樹脂成形装置11は、軟質薄肉樹脂成形品12を成形(射出成形)するための成形空間13を有する凹型14および凸型15を備えている。
【0020】
また、
図4、
図5に示すように、この軟質薄肉樹脂成形装置11は、上記した成形空間13の内部に形成された軟質薄肉樹脂成形品12を、凹型14から脱型する成形品取出機16とを備えている。
【0021】
そして、上記した成形品取出機16が、凸型15または凹型14の少なくとも一方を型開きすることにより、凹形状となっている部分(例えば、製品裏面側)が開放されるように凹型14に残された軟質薄肉樹脂成形品12の凹形状となっている部分の外側(例えば、
高さ違いに設けられた上下の縁部)に形成された少なくとも2つの係止用タブ(例えば、複数のチャック用タブ17)を係止するアーム(例えば、チャック用タブ17を把持するチャック部18)と、上記した軟質薄肉樹脂成形品12の凹形状となっている部分(例えば、製品裏面側の上下方向中間部)
の内側を
下側から支持するサポートアーム19とを備えるようにしている。
【0022】
また、上記した成形品取出機16が、上記した凹型14に対して離間可能(離反動可能)に構成されている。
【0023】
(補足説明1)
ここで、上記した「軟質薄肉樹脂成形品12」は、例えば、
図1および
図2のインストルメントパネル1における表皮材4の場合、幅が約1.4m〜2m、高さが約60cm〜90cm、車両前後方向の奥行きが約40cm〜90cmなどの、複雑形状をした大判(大面積)のものとされる。これに対し、インストルメントパネル1の表皮材4の厚さは、約1.0mm〜2.0mmという極く薄肉で柔らかいものとなる。そして、インストルメントパネル1(の表皮材4)は、側面視で、概略、少なくとも上方へ向いた上面部1aと、乗員側へ向いた後面部1bと、これら上面部1aと後面部1bとの間に介在される屈曲部1cとを有する湾曲形状のものとされる。そして、この湾曲形状の凸面側(凸形状となっている部分)が製品表面とされると共に、湾曲形状の凹面側(凹形状となっている部分)が製品裏面とされる。
【0024】
上記した「成形空間13」は、
図3に示すように、凹型14と凸型15との間に形成される。上記したように、軟質薄肉樹脂成形品12を成形するための成形空間13は、極く狭い(約1.0mm〜2.0mmの)隙間によって構成されるものとなる。よって、この極く狭い成形空間13には、隅々まで行き渡らせることができるように、非常に流動性の高い溶融樹脂が注入される。
【0025】
上記した「凹型14」は、軟質薄肉樹脂成形品12の製品表面を形成するもの
(雌型またはキャビティ型)とされる。凹型14は、例えば、凹固定型とされる。但し、凹可動型としても良い。凹型14側の成形空間13には、必要に応じて、製品表面を加飾するためのシボ模様などの加飾模様が形成される。また、凹型14には、
図6A、
図6Bに示すような、エアエジェクタ21が設けられる。
このエアエジェクタ21は、空気圧によって凹型14から軟質薄肉樹脂成形品12を浮かせるようにするものである。このエアエジェクタ21は、凹型14内部に成形空間13の内外間を連通するように設けられたエア通路22と、このエア通路22の成形空間13側の開口部分に設けられた弁収容空間23に対して出入自在に収容設置された可動弁体24と、この可動弁体24を弁収容空間23内に収容する方向へ付勢する復帰スプリング25(復帰用弾性部材、引張バネ)とを有している。
上記した可動弁体24は、円柱状の軸部に、先広がりの円錐状をした弁部を一体的に有するものとされる。これに応じて、上記した弁収容空間23も、上記した軸部よりも径の大きい円筒状空間と、上記した弁部と同じ大きさおよび形状の円錐状空間とを有するものとされる。
このエアエジェクタ21は、軟質薄肉樹脂成形品12の製品となる部分よりも外側の位置や、軟質薄肉樹脂成形品12の開口部などとなる位置、即ち、後工程で製品から切断される位置などに対して複数設けられる。
【0026】
上記した「凸型15」は、軟質薄肉樹脂成形品12の製品裏面を形成するもの
(雄型またはコア型)とされる。凸型15は、例えば、凸可動型とされる。但し、凸固定型としても良い。凸型15には、上記と同様に、
図6A、
図6Bに示すような、エアエジェクタ21が設けられる。なお、凸型15のエアエジェクタ21については、凹型14のエアエジェクタ21と同じなので、上記記載における、凹型14を凸型15と読替えるものとすることによって、記載を省略する。
【0027】
上記した「成形品取出機16」は、
図4、
図5に示すように、型開きされた凹型14と凸型15との間に挿入可能なものとされる。或いは、凸型15が型開きされた後の凹型14の開放された成形空間13に対面可能なものとされる。この場合、成形品取出機16には、例えば、主に産業用ロボットが使用される。この産業用ロボットは、少なくとも直交する3軸の方向へ移動可能な3軸タイプのものか、3軸タイプ以上のものとするのが好ましい。成形品取出機16の、凹型14に対する離間方向(または離反動の方向)は、軟質薄肉樹脂成形品12の脱型方向、或いは、凸型15の型抜方向などと同じとされる。なお、成形品取出機16が、凹型14に対して近接動できることは勿論である。
【0028】
上記した「係止用タブ」または「チャック用タブ17」は、
図7A、
図7B、
図7Cに示すように、軟質薄肉樹脂成形品12の製品となる部分の外側部分に、軟質薄肉樹脂成形品12に対して一体に成形される。チャック用タブ17は、基本的に軟質薄肉樹脂成形品12とほぼ同じ肉厚に形成される(即ち、極く薄肉のものとされる)。但し、チャック用タブ17は、型抜きし易いように、先細りのテーパ形状とすることもできる。この場合には、チャック用タブ17は、少なくとも、軟質薄肉樹脂成形品12の外側、例えば、上下縁部に、複数箇所設けられる。チャック用タブ17は、例えば、幅3cm〜5cm程度、長さが2cm〜4cm程度、厚みが約1.0mm〜2.0mm程度の舌片状のものなどとされる。但し、チャック用タブ17の大きさは、上記に限るものではない。上記した図では、チャック用タブ17は、千切れ難くなるように、先端側を上底とし、軟質薄肉樹脂成形品12側を下底とする、ほぼ台形状のものとされている。このチャック用タブ17は、脱型後の適宜時期に軟質薄肉樹脂成形品12から切断除去される。
【0029】
上記した「成形品取出機16のアーム」または「チャック部18」は、
図4、
図5および
図8に示すように、成形品取出機16を構成する産業用ロボットに取付けられたベースプレート31に対し、直接、または、可動シリンダ32を介して間接的に設置される。この可動シリンダ32は、チャック用タブ17に対して近接離反動可能なものとされる。この場合、成形空間13を、後述するような形状とすることに伴って、上縁部側のチャック部18は、ベースプレート31に直接設置され、下縁部側のチャック部18は、ベースプレート31に可動シリンダ32を介して間接的に設置されるようにしている。但し、可動シリンダ32は、上下のチャック部18の両方に設けても良い。また、可動シリンダ32は、状況によっては、設けなくても良い。
【0030】
このチャック部18は、チャック用タブ17を挟持可能な一対のチャック片33(
図8参照)と、一対のチャック片33を開閉可能なチャック用シリンダ34と(
図4参照。但し、詳しくは図示せず)を備えている。一対のチャック片33の対向面(挟着面)には、凹凸形状をした噛込部35がそれぞれ形成されている。このチャック部18は、チャック用タブ17の数だけ設けるようにする。或いは、チャック部18を、複数のチャック用タブ17を同時に挟着把持できるものにして、チャック部18の設置個数を減らすようにしても良い。
【0031】
上記した「サポートアーム19」は、
図4、
図5に示すように、上記したベースプレート31に設置された可動シリンダ36と、この可動シリンダ36の先端部に取付けられたサポート部材37とを有するものとされる。可動シリンダ36はサポート部材37を軟質薄肉樹脂成形品12に対して近接離反動可能に保持するものとされる。サポート部材37は、例えば、紙面と垂直方向へ延びるバー形状のものとすることができる。このサポート部材37は、その先端側に、軟質薄肉樹脂成形品12を下側から(持上げるかのように)支持可能な傾斜面を有するものとすることができる。この場合、サポート部材37の先端側の傾斜面は、軟質薄肉樹脂成形品12の製品裏面側の傾斜形状にほぼ沿った、図中、左上がりのものとされている。サポート部材37は、軟質薄肉樹脂成形品12に対して傷などの損傷を与えないようにするために、全体にアール加工が施されており、軟質薄肉樹脂成形品12に対して点当たりや線当たりなどをしないように配慮されている。上記したサポートアーム19は、上下方向や紙面と垂直方向などに対して複数設置することができる。
【0032】
そして、軟質薄肉樹脂成形品12の上下方向中間部に対するサポートアーム19の支持位置は、サポートアーム19が単数の場合、上下方向中央位置の周辺で、型抜方向(
図4中左右方向)の中央位置の周辺で、軟質薄肉樹脂成形品12の重心位置の周辺の、少なくともいずれか1つが成立する位置となるようにするのが好ましい。但し、これらの位置は、全て一致するものではなく、また、軟質薄肉樹脂成形品12の具体的な形状によって様々に異なるので、具体的な(最適)支持位置については、トライアンドエラーなどを利用して設定するようにする。なお、サポートアーム19が複数設けられる場合には、状況に応じて、最適支持位置を適宜選定すれば良い。
【0033】
なお、上記実施例では、凸型15(凸可動型)と凹型14(凹固定型)とに対し、凹型14(凹固定型)に軟質薄肉樹脂成形品12に残すようにしていたが、他の実施例として、凸型15(凸固定型)と凹型14(凹可動型)とに対し、凹型14(凹可動型)に軟質薄肉樹脂成形品12に残すようにしても良い。
【0034】
(構成2)
図3に示すように、上記した成形空間13が、上側(
軟質薄肉樹脂成形品12の上側に位置する部分)よりも下側(
下側に位置する部分)の方が、曲率半径が小さい湾曲形状を有するように構成される。
【0035】
(補足説明2)
例えば、上記した「成形空間13」は、上側に比較的曲率半径の大きい湾曲形状部41を有し、下側に比較的曲率半径の小さい湾曲形状部42を有するものとされている。
【0036】
(構成3)
上記した成形空間13が、下縁部
(軟質薄肉樹脂成形品12の下側に位置する縁部)よりも上縁部
(上側に位置する縁部)の方が、型抜方向の外方側へ突出するように構成される(外方突出量43)。
【0037】
(補足説明3)
例えば、上記した「成形空間13」は、上縁部が、下縁部よりもかなり大きく凸型15の側へ突出されるようになっている。そして、
図5に示すように、成形空間13の下縁部の位置が、軟質薄肉樹脂成形品12の上下方向の中間部におけるサポートアーム19の支持位置に対して、上下方向にほぼ重なるようにしている。
【0038】
(構成4)
図7A、
図7B、
図7Cに示すように、上記したチャック用タブ17に、上記したチャック部18から外れないようにするための脱落防止形状部45が設けられる。
【0039】
(構成5)
上記した「脱落防止形状部45」は、チャック用タブ17に設けた部分的な厚肉部などとすることができる。この場合、脱落防止形状部45は、チャック用タブ17に設けた円柱状の厚肉部としている。この円柱状の厚肉部は、型抜方向へ延びるものとされる。
【0040】
この円柱状の厚肉部は、ほぼ平行に2本設けられている。但し、脱落防止形状部45の形状や、設置位置や、設置本数や、設置方向などについては、これに限るものではない。例えば、上記した厚肉部の設置本数は、1本または3本以上設けるようにしても良い。また、上記した厚肉部の設置方向は、型抜方向と直交する方向へ延びるものとしても良い。上記した厚肉部は、スポット的な形状のものなどとしても良い。
【0041】
次に、上記軟質薄肉樹脂成形装置11を用いた「軟質薄肉樹脂成形品12の成形方法」について説明する。
【0042】
(構成6)
この軟質薄肉樹脂成形品12の成形方法は、まず、凹型14と凸型15との間に形成される成形空間13に溶融樹脂を注入することによって軟質薄肉樹脂成形品12を成形(射出成形)する(成形工程)。
【0043】
そして、軟質薄肉樹脂成形品12を凹型14に残して、凹型14と凸型15との少なくとも一方を型開きする。例えば、上記した凸型15を、軟質薄肉樹脂成形品12の製品裏面側が開放されるように、上記した凹型14に残して型開きする(型開工程)。
【0044】
更に、
図4に示すように、凹型14に残された軟質薄肉樹脂成形品12の凹形状となっている部分の外側に形成された少なくとも2つの係止用タブを、成形品取出機16のアームで係止すると共に、軟質薄肉樹脂成形品12の凹形状となっている部分を成形品取出機16に設けられたサポートアーム19で支持する。例えば、上記した凹型14に残された上記した軟質薄肉樹脂成形品12の上下縁部に形成された複数のチャック用タブ17を、成形品取出機16に設けられたチャック部18で把持すると共に、上記した軟質薄肉樹脂成形品12の凹形状となっている製品裏面側の上下方向中間部を、上記した成形品取出機16に設けられたサポートアーム19で支持する(軟質薄肉樹脂成形品支持工程)。
【0045】
最後に、
図5に示すように、成形品取出機16のアームを凹型14から離間させることで、凹型14から軟質薄肉樹脂成形品12を脱型する。例えば、上記状態(チャック用タブ17をチャック部18で把持し、軟質薄肉樹脂成形品12の上下方向中間部をサポートアーム19で支持した状態)を保持しつつ、上記した成形品取出機16を、上記した凹型14から離間(離反動)させることで、上記した凹型14から上記した軟質薄肉樹脂成形品12を脱型する(脱型工程)。
【0046】
(補足説明6)
特に図示しないが、成形空間13に対する溶融樹脂の注入は、周知の手段によって行うことができる。
凸型15を型開きする際には、
図6A、
図6Bに示すような、エアエジェクタ21を用いて、空気圧によって凸型15から軟質薄肉樹脂成形品12を少なくとも部分的に浮かせるようにする。
【0047】
また、成形品取出機16によって凹型14から軟質薄肉樹脂成形品12を脱型する際には、事前に、上記したエアエジェクタ21を用いて、空気圧によって凹型14から軟質薄肉樹脂成形品12を少なくとも部分的に浮かせておくようにする。この際、エアエジェクタ21は、空気圧で可動弁体24を突出させることによって軟質薄肉樹脂成形品12を部分的に押出すと共に、軟質薄肉樹脂成形品12の押出された部分と、凸型15または凹型14との間にエアを注入することによって凸型15または凹型14から軟質薄肉樹脂成形品12を浮かせるようにする。なお、エアエジェクタ21によって凹型14から軟質薄肉樹脂成形品12を浮かせるのは、凸型15の型開きが終わった後に行うようにする。
【0048】
<効果>この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
【0049】
(作用効果1)
軟質薄肉樹脂成形品12の凹形状になっている部分の外側の少なくとも2箇所の位置(例えば、上下縁部)と、軟質薄肉樹脂成形品12の凹形状になっている部分(例えば、上下方向中間部)との少なくとも3点を、成形品取出機16のアーム(例えば、チャック部18)で把持およびサポートアーム19で支持した状態で脱型を行わせることができるので、軟質薄肉樹脂成形品12を、折れシワなどの形状不良を生じさせることなく、うまく脱型することが可能となる。これにより、これまで困難であった軟質薄肉樹脂成形品12の脱型を機械化し自動化することが可能になる。
【0050】
この際、凸型15または凹型14の少なくとも一方を、軟質薄肉樹脂成形品12の凹形状になっている部分(例えば、製品裏面側)が開放されるように、上記した凹型14に残して型開きすることにより、
図4、
図5に示すように、凹形状になっている軟質薄肉樹脂成形品12(の製品裏面側の上下方向中間部)をサポートアーム19で支持することができるようになるので、脱型時に、例えば、軟質薄肉樹脂成形品12の上下方向中間部が自重で垂れ下がって、軟質薄肉樹脂成形品12に折れシワなどの形状不良が生じるのを防止することができる。
【0051】
これに対し、
図9、
図10に示すように、凹型14を、軟質薄肉樹脂成形品12の製品表面側が開放されるように、上記した凸型15に残して型開きした場合には、凸形状になっている軟質薄肉樹脂成形品12(の製品表面側)の上下方向中間部をサポートアーム19で(下側から持ち上げるように)支持することができないので、脱型時に軟質薄肉樹脂成形品12の上下方向中間部が自重で垂れ下がってしまい、軟質薄肉樹脂成形品12に折れシワなどの形状不良が生じるのを避けることができない(特に、
図10中の、丸で囲んだ部分)。
【0052】
(作用効果2)
成形空間13が、上側よりも下側の方が、曲率半径が小さい湾曲形状を有するように構成されたことにより、
図4、
図5に示すように、成形空間13内で成形された軟質薄肉樹脂成形品12は、上側が曲率半径が大きく比較的変形し易い部分となり、下側が曲率半径が小さく比較的変形し難い部分となるので、軟質薄肉樹脂成形品12の上側の比較的変形し易い部分をサポートアーム19によって適切に支持することができる。よって、軟質薄肉樹脂成形品12を凹型14からうまく脱型することができる。
【0053】
これに対し、上記とは反対に、成形空間13を、下側よりも上側の方が、曲率半径が小さい湾曲形状を有するように構成した場合には、特に図示しないが、成形された軟質薄肉樹脂成形品12は、上側が曲率半径が小さく比較的変形し難い部分となり、下側が曲率半径が大きく比較的変形し易い部分となるので、サポートアーム19は軟質薄肉樹脂成形品12の上側の比較的変形し難い部分を支持することになり、下側の比較的変形し易い部分を適切に支持することができなくなる。よって、軟質薄肉樹脂成形品12を凹型14からうまく脱型することが難しくなる。
【0054】
(作用効果3)
成形空間13が、下縁部よりも上縁部の方が、型抜方向の外方側へ突出するように構成されたことにより、
図4、
図5に示すように、成形空間13内で成形された軟質薄肉樹脂成形品12は、上側の部分が、サポートアーム19の支持点よりも手前側に位置されることになるので、サポートアーム19によって軟質薄肉樹脂成形品12の上側の部分を確実に支持することができる。よって、軟質薄肉樹脂成形品12を凹型14からうまく脱型することができる。
【0055】
これに対し、上記とは反対に、
図11、
図12に示すように、成形空間13を、上縁部よりも下縁部の方が、型抜方向の外方側へ突出するように構成した場合には、成形された軟質薄肉樹脂成形品12は、上側の部分が、サポートアーム19によって支持し難い
図4とは逆勾配の形状となるので、サポートアーム19によって軟質薄肉樹脂成形品12の上側の部分をうまく支持することが困難になる。よって、軟質薄肉樹脂成形品12を凹型14からうまく脱型することが難しくなり、軟質薄肉樹脂成形品12が自重で垂れ下がることによって、軟質薄肉樹脂成形品12に折れシワなどの形状不良が生じるような事態(脱型不良)が発生する(特に、
図12中の、丸で囲んだ部分)。
【0056】
(作用効果4)
図7A、
図7B、
図7Cに示すように、チャック用タブ17に、チャック部18から外れないようにするための脱落防止形状部45が設けられたことにより、
図8に示すように、チャック部18が軟質薄肉樹脂成形品12とほぼ同じ肉厚を有する(即ち、薄肉の)チャック用タブ17を確実に把持することができるようになるので、チャック部18から軟質薄肉樹脂成形品12が外れるのを、脱落防止形状部45によって防止することができる。これにより、チャック部18がチャック用タブ17を確実に把持した状態で脱型を行わせることができるので、軟質薄肉樹脂成形品12に折れシワなどの形状不良が生じないようにすることができる。また、凹型14から軟質薄肉樹脂成形品12を脱型する際には、チャック部18に大きな引剥がし力が作用するが、脱落防止形状部45を設けることによって、この引剥がし力を、チャック部18が確実に受けることができるようになる。
【0057】
これに対し、上記とは反対に、
図13A、
図13B、
図13Cに示すように、軟質薄肉樹脂成形品12と同じ肉厚を有する(即ち、薄肉の)チャック用タブ17に脱落防止形状部45を設けない場合には、
図14A、
図14Bに示すように、脱型途中でチャック部18からチャック用タブ17がスリップして外れてしまい、
図15に示すように、チャック部18からチャック用タブ17が外れた部分で、軟質薄肉樹脂成形品12が自重で垂れ下がることによって、軟質薄肉樹脂成形品12に折れシワなどの形状不良が生じるような事態(脱型不良)が発生する(特に、
図15中の、丸で囲んだ部分)。
【0058】
更に、上記した脱落防止形状部45を、上記したように、部分的な厚肉部とした場合には、チャック用タブ17の剛性を上げてチャック用タブ17を変形し難くすると共に、チャック用タブ17をチャック部18が把持し易いものとすることができて最適である。
【0059】
加えて、脱落防止形状部45を設けた場合には、特に図示しないが、チャック用タブ17全体の板厚を単純に厚くする場合と比べて、型内での冷却時間を短縮することができるので、チャック用タブ17の冷却不足による固化不良によって、チャック用タブ17が引剥がしの途中で千切れてしまうようなことをなくすことができる。
【0060】
これに対し、チャック用タブ17全体の板厚を単純に厚くした場合には、型内でのチャック用タブ17の冷却時間が長くなると共に、チャック用タブ17の冷却不足による固化不良によって、チャック用タブ17が引剥がしの途中で千切れてしまうようなことが発生し易くなる。
【0061】
(作用効果5)
上記した脱落防止形状部45が、円柱状の厚肉部から成るものとされ、この円柱状の厚肉部が、型抜方向へ延設されることにより、成形時に支障なく型抜きを行うことができると共に、脱型時に支障なくチャック部18で把持することができる。
【0062】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。