【課題を解決するための手段】
【0003】
上記の必要性は、独立請求項の対象によって充足され得る。本発明の更なる有利な構成は従属項の対象によって明らかになる。
【0004】
本発明の第1構成例によれば、内燃機関の燃料噴射装置用高圧ポンプが提供される。この高圧ポンプは、燃料で充填されるポンプケース内部空間を備えたポンプケースを有し、ポンプケース内に、ポンプピストンを備えた少なくとも1つのポンプ要素が配置されている。ポンプピストンは、タペットボディとローラとによって、間接的に駆動軸のカムまたは偏心体で支持されている。タペットボディは、カムまたは偏心体を介して、中心軸線方向に振動運動で駆動可能である。中心軸線方向においてタペットボディにローラシューが固定結合されている。ローラシューは、ローラを部分的に受容するための実質的に部分筒状の凹部を有している。ローラシューは少なくとも1つの潤滑室を有し、タペットボディの振動運動の間に、少なくとも1つの潤滑室により、ローラにポンプケース内部空間から燃料が供給される。
【0005】
タペットボディの振動運動により、ポンプケースから燃料を補助的に目的に応じてローラに供給することができ、これによってローラシューに設けたローラの接触面に燃料が増量されて潤滑剤として提供される。この場合、燃料供給はタペットボディの運動の間だけ行うことができる。さらに、タペットボディを目的に応じて成形する以外に、たとえば電気操作弁またはポンプのような他の補助構成要素を必要としない。潤滑剤はローラに付着し、接触面相互の相対運動によって、狭くなっている潤滑隙間内へ搬送または引き込むことができる。この場合、潤滑剤または燃料の圧縮によって発生される圧力は、ローラとタペットボディとの間の接触面が互いに約1〜2μm離間する程度の大きさである。燃料供給が増量されることにより、一方では接触面での潤滑を改善させることができる。他方では、接触面に生じる熱をその中により好適に放出させることができ、従っていわゆる「ホットスポット」の発生、すなわち潤滑剤の局所的過熱を防止することができる。このように、タペットボディ内に形成される潤滑室と関連してローラシューを構成することにより、技術水準から公知の高圧ポンプに比べて潤滑剤の供給が増量されているので、ローラとローラシューとの間の接触箇所の荷重もしくは面圧をも増大させることができるように高圧ポンプは供給されている。
【0006】
本発明の更なる構成例によれば、少なくとも1つの潤滑室はローラの縦延在方向に対し実質的に平行に延在している。
【0007】
これにより、ローラにその全長にわたって燃料が供給されるよう保証できるので有利である。これは、たとえば、潤滑室からローラのほうへ向いているスリット状の開口部によって行うことができる。特に、スリット状の開口部またはスリットは、潤滑剤が供給後にローラ上に均一な厚さの潤滑膜を形成するように構成されていてよい。もちろん、潤滑室のスリットは、該スリットを通じて供給される燃料が、ローラによって、狭くなっている潤滑隙間内へ搬送されてローラシューに設けたローラの接触面に到達するように配置されている。
【0008】
本発明の更なる構成例によれば、互いに鏡対称に成形された2つの潤滑室が、ローラに関し互いに対向するようにローラシュー内に形成されている。
【0009】
ローラシュー内に潤滑室を鏡対称に成形することにより、タペットボディをローラシューとともにポンプケース内へ組み込む組み込み方向が設定されない。これにより、高圧ポンプを組み立てる際の取り付けミスが回避される。
【0010】
本発明の更なる構成例によれば、高圧ポンプのポンプケース内部空間はタペットボディによりタペット空間とポンプ内部空間とに分割されている。タペット空間内にはポンプピストンが配置され、ポンプ内部空間内にはカムまたは偏心体が駆動軸とともに配置されている。潤滑室は、第1の横断面を備えた少なくとも1つの第1の開口部により、流体を誘導するようにタペット空間と結合されている。潤滑室は、第2の横断面を備えた少なくとも1つの第2の開口部により、流体を誘導するようにポンプ内部空間と結合されている。前記第1の横断面の全体は第1の全横断面を形成している。前記第2の横断面の全体は第2の全横断面を形成している。第1の全横断面と第2の全横断面とは互いに異なっている。
【0011】
潤滑室により互いに結合されている第1および第2の開口部により、タペットボディの振動運動の際に、ポンプ内部空間とタペット空間との間で燃料の交換を行うことができるようになっていてよい。従って、タペット空間内にある燃料の圧縮が少なくとも十分に回避される。第1の開口部の第1の横断面の第1の全横断面が第2の開口部の第2の横断面の第2の全横断面と異なっていることにより、より小さな全横断面を備えた開口部は絞りとして作用する。もちろん、ローラボディを、それぞれ第1の開口部および第2の開口部のみを有するように構成してもよい。絞りによって潤滑室内に圧力を生成させることができる。この潤滑室内に生成された圧力は、燃料を潤滑室のスリット状の開口部またはスリットを通じて加圧状態でローラに供給するために使用することができる。第1および第2の開口部はたとえば穿孔部として構成されていてよい。通常は、潤滑室は、第1の開口部と第2の開口部との間で循環する燃料が潤滑室によってローラ側へ転向されるように構成されている。この場合潤滑室は、燃料がローラに対し垂直にまたは角度を成して誘導されるように構成されていてよい。また、タペットボディの上昇運動または下降運動のいずれかの際に燃料がローラに供給されるように、タペットボディの1つの位置により小さな全横断面を選定してもよい。
【0012】
本発明の更なる構成例によれば、第1および第2の全横断面は、少なくとも1つの潤滑室内に最大で2バールの過圧が生じるように構成されている。
【0013】
比較的低い圧力により、実際には無視できるような小さな抵抗のみが振動運動するタペットボディに対し反作用するようになる。しかしながら、この圧力は、ローラとローラシューとの間の接触面への十分な燃料供給もしくは潤滑剤供給を保証するためには十分である。
【0014】
本発明の更なる構成例によれば、第2の全横断面は第1の全横断面よりも小さい。
【0015】
これにより、潤滑室を通じて提供される燃料は、タペットボディの上昇運動の際に、すなわちポンプ要素に供給された燃料がポンプピストンにより圧縮される場合に、ローラに供給されるようになる。従って、ローラに大きな力が作用したときに、ローラシューに設けたローラの接触面に燃料が供給されるので有利である。
【0016】
本発明の更なる構成例によれば、高圧ポンプのローラシューは、ローラシューボディとローラシューカバーとを有している。ローラシューボディとローラシューカバーとは、回転方向および並進方向で互いに固定結合され、ローラシューボディはポンプピストンとローラとの間に配置されている。ローラシューボディは駆動軸側の端面によって画成されている。この端面と、部分円柱状の凹部を画成している側面とは、1つの線に沿って交わっている。この線は前記側面に対する接線面内にあり、接線面と中心軸線とは角度を成している。この角度は17゜と25゜の間である。
【0017】
この小さな角度により、該角度が部分的に90゜に達している技術水準から公知のローラシューボディに比べてローラシューボディを薄く実施することが可能である。これに伴ってローラシューに必要な材料が減るため、移動質量をも減少させることができる。質量の減少は、高圧ポンプの疲労強度を促進させる。また、前記角度が17゜ないし25゜という小さな角度であるために部分筒状の凹部へのアクセスが良好になるので、部分筒状の凹部の表面を滑り層および/または耐摩耗層としての炭素または炭素化合物を用いてプラズマコーティングすることができ、有利である。また、ローラシューボディとローラシューカバーとは異なる素材から形成されていてもよい。特にローラシューカバーは、ローラシューボディよりも比重が小さな材料から製造されていてよい。
【0018】
本発明の更なる構成例によれば、潤滑隙間が前記線とローラとの間に形成されている。燃料はこの潤滑隙間に供給される。
【0019】
通常は、この潤滑隙間は約20μmの幅である。ローラによってポンプ内部空間から潤滑隙間内に引き込まれる燃料膜は約3〜6μmの厚さである。従って潤滑隙間には約14〜17μmの空間が残り、この空間の中に補助燃料を装入することができる。従って、潤滑室を通じて潤滑隙間に装入される燃料量は、燃料膜としてローラを通じて一緒に引き込まれる燃料量よりも多くできる。
【0020】
本発明の更なる構成例によれば、潤滑室はローラシューカバー内に形成されている。
【0021】
有利には、潤滑室は機械的に略無負荷のローラシューカバー内に形成されている。従って、ローラシューボディの作製を潤滑室の作製とは切り離して行うことができる。また、潤滑室は、たとえばローラシューカバーをローラシューボディに継ぎ合わせた後に、ローラシューカバーとローラシューボディとの協働作用によってはじめて形成させることができる。この場合、たとえばローラシューカバーのローラシューボディ側表面は連続的に形成されていてよい。この場合、潤滑室のスリット状の開口部はこの表面に形成されていてよい。さらに、ローラシューボディの、ローラシューカバーの前記表面の側にある下面は、平坦に形成されていてよい。ローラシューボディの下面をこのように構成することにより、ローラシューボディを価格的に好ましく製造できる。
【0022】
本発明の更なる構成例によれば、ローラシューカバーは、ローラシューボディに対向する下面において、ローラの縦延在方向に対し実質的に平行にエッジを形成している。このエッジは、該エッジがローラ上の潤滑膜を阻害することなくローラの汚染を防止するように、ローラから間隔をもって位置している。
【0023】
前記エッジは、有利にはローラから約10μmの間隔で位置している。このようにすると、ローラ上の3〜6μm厚の潤滑膜はエッジによって阻害されない。しかしながら、潤滑膜によって一緒に引張られる粒子はローラから除去することができ、その結果潤滑膜が潤滑隙間内へ、特にローラとローラシューとの接触面に引き込まれることがない。
【0024】
本発明の更なる構成例によれば、ローラシューカバーはローラシューボディにねじ結合部、締め付け結合部またはロック結合部により結合されている。
【0025】
本発明の更なる構成例によれば、高圧ポンプのローラシューカバーは横断面にてローラと少なくとも部分的に後方から係合している。
【0026】
ローラシューカバーのこのような構成により、ローラシューカバーは組み立ての際にローラ用の紛失阻止部として機能する。
【0027】
本発明の更なる構成例によれば、高圧ポンプのローラシューカバーは一体に形成されている。
【0028】
たとえば、ローラシューカバーは射出成形部品として形成されていてよい。もちろん、ローラシューカバーを複数の部品から形成してもよい。しかし、これは一体に形成されたローラシューカバーに比べて製造コストおよび組み立てコストがより高くなる場合もある。
【0029】
本発明の更なる構成例によれば、ローラシューカバーはプラスチックから形成されている。
【0030】
もちろん、この目的のためには、一方ではディーゼル燃料に対し抵抗力があり、他方では−40℃ないし約+150℃の温度に対して安定性がある高価値のプラスチックのみが使用される。
【0031】
本発明の更なる構成例によれば、高圧ポンプのローラシューとタペットボディとは一体に形成されている。
【0032】
なお、発明に対する思想は高圧ポンプとの関連で説明した。この場合、本発明の他の構成にもつながるように、説明した個々の構成要件を種々の態様で互いに組み合わせることができることは当業者にとって明白である。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態を添付の図を用いて説明する。図は概略的なものであり、縮尺どおりのものではない。