特許第5897777号(P5897777)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5897777非接触給電システム、受電装置、及び送電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5897777
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】非接触給電システム、受電装置、及び送電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/00 20160101AFI20160317BHJP
【FI】
   H02J17/00 B
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-530201(P2015-530201)
(86)(22)【出願日】2014年12月24日
(86)【国際出願番号】JP2014084098
【審査請求日】2015年6月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】沖段 和磨
【審査官】 田中 寛人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−124522(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/114576(WO,A1)
【文献】 特開2010−252497(JP,A)
【文献】 特開2013−106444(JP,A)
【文献】 特開2014−103751(JP,A)
【文献】 特開2010−098896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電コイルとコンデンサとを用いて構成される送電側の共振回路を有して磁界共鳴方式の非接触給電を行う送電装置と、
受電コイルとコンデンサとを用いて構成される受電側の共振回路を有して前記送電装置から前記非接触給電により給電を受ける受電装置と
を備えて構成される非接触給電システムであって、
前記受電装置は、
前記受電コイルの内部空間に設けられ、その巻回軸の方向が前記受電コイルの巻回軸の方向に対して回転可能に軸支された受電側調整用コイルと、
前記非接触給電により前記送電装置から前記受電装置への給電中に伝送効率が目標値に維持されるように、前記受電コイルの巻回軸の方向と前記受電側調整用コイルの巻回軸の方向とがなす角度θ1を調節することにより前記受電側の共振回路の共振周波数を変化させる受電側角度調節機構と、
を備える、非接触給電システム。
【請求項2】
送電コイルとコンデンサとを用いて構成される送電側の共振回路を有して磁界共鳴方式の非接触給電を行う送電装置と、
受電コイルとコンデンサとを用いて構成される受電側の共振回路を有して前記送電装置から前記非接触給電により給電を受ける受電装置と
を備えて構成される非接触給電システムであって、
前記送電装置は、
前記送電コイルの内部空間に設けられ、その巻回軸の方向が前記送電コイルの巻回軸の方向に対して回転可能に軸支された送電側調整用コイルと、
前記非接触給電により前記送電装置から前記受電装置への給電中に伝送効率が目標値に維持されるように、前記送電コイルの巻回軸の方向と前記送電側調整用コイルの巻回軸の方向とがなす角度θ2を調節することにより前記送電側の共振回路の共振周波数を変化させる送電側角度調節機構と、
を備える、非接触給電システム。
【請求項3】
請求項1に記載の非接触給電システムであって、
前記送電装置は、
前記送電コイルの内部空間に設けられ、その巻回軸の方向が前記送電コイルの巻回軸の方向に対して回転可能に軸支された送電側調整用コイルと、
前記非接触給電により前記送電装置から前記受電装置への給電中に伝送効率が目標値に維持されるように、前記送電コイルの巻回軸の方向と前記送電側調整用コイルの巻回軸の方向とがなす角度θ2を調節することにより前記送電側の共振回路の共振周波数を変化させる送電側角度調節機構と、
を備える、非接触給電システム。
【請求項4】
請求項1に記載の非接触給電システムであって、
前記受電装置は、前記受電側の共振回路の受電電力を計測する電力計測回路を備え、
前記受電側角度調節機構は、前記受電電力が目標値に維持されるように、前記受電コイルの巻回軸の方向と前記受電側調整用コイルの巻回軸の方向とがなす角度θ1を制御する
非接触給電システム。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の非接触給電システムであって、
前記送電装置は、前記送電側の共振回路の送電電力を計測する電力計測回路を備え、
前記送電側角度調節機構は、前記送電電力が目標値に維持されるように、前記送電コイルの巻回軸の方向と前記送電側調整用コイルの巻回軸の方向とがなす角度θ2を制御する
非接触給電システム。
【請求項6】
請求項1に記載の非接触給電システムであって、
前記受電コイルと前記受電側調整用コイルは、夫々導体線を互いに異なる径で環状に巻回して構成されており、一のコイルが他のコイルの内部空間に収容されるように構成されている
非接触給電システム。
【請求項7】
請求項2又は3に記載の非接触給電システムであって、
前記送電コイルと前記送電側調整用コイルは、夫々導体線を互いに異なる径で環状に巻回して構成されており、一のコイルが他のコイルの内部空間に収容されるように構成されている
非接触給電システム。
【請求項8】
請求項1に記載の非接触給電システムにおける前記受電装置であって、
前記受電コイルの内部空間に設けられ、その巻回軸の方向が前記受電コイルの巻回軸の方向に対して回転可能に軸支された受電側調整用コイルと、
前記非接触給電により前記送電装置から前記受電装置への給電中に伝送効率が目標値に維持されるように、前記受電コイルの巻回軸の方向と前記受電側調整用コイルの巻回軸の方向とがなす角度θ1を調節することにより前記受電側の共振回路の共振周波数を変化させる受電側角度調節機構と、
を備える受電装置。
【請求項9】
請求項2又は3に記載の非接触給電システムにおける前記送電装置であって、
前記送電コイルの内部空間に設けられ、その巻回軸の方向が前記送電コイルの巻回軸の方向に対して回転可能に軸支された送電側調整用コイルと、
前記非接触給電により前記送電装置から前記受電装置への給電中に伝送効率が目標値に維持されるように、前記送電コイルの巻回軸の方向と前記送電側調整用コイルの巻回軸の方向とがなす角度θ2を調節することにより前記送電側の共振回路の共振周波数を変化させる送電側角度調節機構と、
を備える送電装置。
【請求項10】
請求項4に記載の非接触給電システムにおける前記受電装置であって、
前記受電側の共振回路の受電電力を計測する電力計測回路を備え、
前記受電側角度調節機構は、前記受電電力が目標値に維持されるように、前記受電コイルの巻回軸の方向と前記受電側調整用コイルの巻回軸の方向とがなす角度θ1を制御する
受電装置。
【請求項11】
請求項5に記載の非接触給電システムにおける前記送電装置であって、
前記送電側の共振回路の送電電力を計測する電力計測回路を備え、
前記送電側角度調節機構は、前記送電電力が目標値に維持されるように、前記送電コイルの巻回軸の方向と前記送電側調整用コイルの巻回軸の方向とがなす角度θ2を制御する
送電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、非接触給電システム、受電装置、及び送電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、送電装置から受電装置に供給される電力を遮断又は送電することを目的として構成された給電システムについて記載され、送電装置が、受電装置の第1コイルに対して電力を供給するための第2コイルを有する送電回路と、第2コイルとの間で磁気的に結合される第3コイルと、電力が遮断又は供給されるように、第2コイルの巻回軸と交差する回動軸を中心に第3コイルを回動させて、送電回路のインピーダンスを変化させる回動装置とを備えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第05579953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁界共鳴方式の非接触給電を行うシステムにおける伝送効率は、送電側又は受電側の共振回路のインダクタンスや静電容量の変化、送電側のコイルと受電側のコイルのとの間の距離等によって変動する。そのため、磁界共鳴方式の非接触給電を行うシステムにおいては、伝送効率を維持して送電装置から受電装置に対して安定して電力を供給する仕組みが求められる。
【0005】
本発明はこうした背景に鑑みてなされたものであり、送電装置から受電装置に対して目標とする伝送効率を維持して安定して電力を供給することが可能な、非接触給電システム、受電装置、及び送電装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の一つは、送電コイルとコンデンサとを用いて構成される送電側の共振回路を有して磁界共鳴方式の非接触給電を行う送電装置と、受電コイルとコンデンサとを用いて構成される受電側の共振回路を有して前記送電装置から前記非接触給電により給電を受ける受電装置とを備えて構成される非接触給電システムであって、前記受電装置は、前記受電コイルの内部空間に設けられ、その巻回軸の方向が前記受電コイルの巻回軸の方向に対して回転可能に軸支された受電側調整用コイルと、前記非接触給電により前記送電装置から前記受電装置への給電中に伝送効率が目標値に維持されるように、前記受電コイルの巻回軸の方向と前記受電側調整用コイルの巻回軸の方向とがなす角度θ1を調節する受電側角度調節機構と、を備える。
【0007】
本発明によれば、受電装置が、非接触給電により送電装置から受電装置への給電中に伝送効率が目標値に維持されるように、受電コイルの巻回軸の方向と受電側調整用コイルの巻回軸の方向とがなす角度θ1を調節するので、送電装置から受電装置に対して目標とする伝送効率を維持して安定して電力を供給することができる。
【0008】
上記目的を達成するための本発明の一つは、送電コイルとコンデンサとを用いて構成される送電側の共振回路を有して磁界共鳴方式の非接触給電を行う送電装置と、受電コイルとコンデンサとを用いて構成される受電側の共振回路を有して前記送電装置から前記非接触給電により給電を受ける受電装置とを備えて構成される非接触給電システムであって、前記送電装置は、前記送電コイルの内部空間に設けられ、その巻回軸の方向が前記送電コイルの巻回軸の方向に対して回転可能に軸支された送電側調整用コイルと、前記非接触給電により前記送電装置から前記受電装置への給電中に伝送効率が目標値に維持されるように、前記送電コイルの巻回軸の方向と前記送電側調整用コイルの巻回軸の方向とがなす角度θ2を調節する送電側角度調節機構と、を備える。
【0009】
本発明によれば、送電装置が、非接触給電により送電装置から受電装置への給電中に伝送効率が目標値に維持されるように、送電コイルの巻回軸の方向と送電側調整用コイルの巻回軸の方向とがなす角度θ2を調節するので、送電装置から受電装置に対して目標とする伝送効率を維持して安定して電力を供給することができる。
【0010】
上記目的を達成するための本発明の一つは、上記非接触給電システムであって、前記送電装置は、前記送電コイルの内部空間に設けられ、その巻回軸の方向が前記送電コイルの巻回軸の方向に対して回転可能に軸支された送電側調整用コイルと、前記非接触給電により前記送電装置から前記受電装置への給電中に伝送効率が目標値に維持されるように、前記送電コイルの巻回軸の方向と前記送電側調整用コイルの巻回軸の方向とがなす角度θ2を調節する送電側角度調節機構と、を備える。
【0011】
本発明によれば、受電装置が、非接触給電により送電装置から受電装置への給電中に伝送効率が目標値に維持されるように、受電コイルの巻回軸の方向と受電側調整用コイルの巻回軸の方向とがなす角度θ1を調節するとともに、送電装置が、非接触給電により送電装置から受電装置への給電中に伝送効率が目標値に維持されるように、送電コイルの巻回軸の方向と送電側調整用コイルの巻回軸の方向とがなす角度θ2を調節するので、送電装置から受電装置に対して目標とする伝送効率を維持してより安定して電力を供給することができる。
【0012】
上記目的を達成するための本発明の一つは、上記非接触給電システムであって、前記受電装置は、前記受電側の共振回路の受電電力を計測する電力計測回路を備え、前記受電側角度調節機構は、前記受電電力が目標値に維持されるように、前記受電コイルの巻回軸の方向と前記受電側調整用コイルの巻回軸の方向とがなす角度θ1を制御する。
【0013】
本発明によれば、受電装置は、受電電力が目標値に維持されるように、受電コイルの巻回軸の方向と受電側調整用コイルの巻回軸の方向とがなす角度θ1を制御するので、送電装置から受電装置に対して目標とする伝送効率を維持して安定して電力を供給することができる。
【0014】
上記目的を達成するための本発明の一つは、上記非接触給電システムであって、前記送電装置は、前記送電側の共振回路の送電電力を計測する電力計測回路を備え、前記送電側角度調節機構は、前記送電電力が目標値に維持されるように、前記送電コイルの巻回軸の方向と前記送電側調整用コイルの巻回軸の方向とがなす角度θ2を制御する。
【0015】
本発明によれば、送電装置は、送電電力が目標値に維持されるように、送電コイルの巻回軸の方向と送電側調整用コイルの巻回軸の方向とがなす角度θ2を制御するので、送電装置から受電装置に対して目標とする伝送効率を維持して安定して電力を供給することができる。
【0016】
上記目的を達成するための本発明の一つは、上記非接触給電システムであって、前記受電コイルと前記受電側調整用コイルは、夫々導体線を互いに異なる径で環状に巻回して構成されており、一のコイルが他のコイルの内部空間に収容されるように構成されている。
【0017】
受電コイルと受電側調整用コイルをこのような構成とすることで、受電装置の小型化を図ることができる。
【0018】
上記目的を達成するための本発明の一つは、上記非接触給電システムであって、前記送電コイルと前記送電側調整用コイルは、夫々導体線を互いに異なる径で環状に巻回して構成されており、一のコイルが他のコイルの内部空間に収容されるように構成されている。
【0019】
送電コイルと送電側調整用コイルをこのような構成とすることで、送電装置の小型化を図ることができる。
【0020】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、送電装置から受電装置に対して目標とする伝送効率を維持して安定して電力を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施例の非接触給電システム1の概略的な構成を説明する図である。
図2】送電装置10の構成を示す図である。
図3】受電装置20の構成を示す図である。
図4】送電装置10の送電コイル111と、受電装置20の受電コイル211及び調整用コイル212の配置例を示す図である。
図5】第2実施例の非接触給電システム1の概略的な構成を説明する図である。
図6】送電装置10の構成を示す図である。
図7】受電装置20の構成を示す図である。
図8】送電装置10の送電コイル111及び調整用コイル112と、受電装置20の受電コイル211の配置例を示す図である。
図9】第3実施例の非接触給電システム1の概略的な構成を説明する図である。
図10】送電装置10の構成を示す図である。
図11】受電装置20の構成を示す図である。
図12】送電装置10の送電コイル111及び調整用コイル112と、受電装置20の受電コイル211及び調整用コイル212の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について図面とともに説明する。尚、以下の説明において、共通する構成に同一の符号を付すことにより重複する説明を省略することがある。また類似する構成について同一の符号を付してそれらの構成を総称することがある。
【0024】
=第1実施例=
図1に第1実施例として示す磁界共鳴方式の非接触給電システム1の概略的な構成を示している。同図に示すように、非接触給電システム1は、送電装置10及び受電装置20を含む。送電装置10は、受電装置20に向けて磁界共鳴方式の非接触給電により送電を行う。受電装置20は、送電装置10から送られてくる電力を受電する。
【0025】
図2に第1実施例の送電装置10の主要な構成を示している。同図に示すように、送電装置10は、送電回路11及び電源回路13を備える。
【0026】
送電回路11は、送電コイル111、送電コンデンサ113、及び制御回路114を備える。送電コイル111と送電コンデンサ113は共振回路を構成している。送電コイル111は、その巻回軸の周りに絶縁被覆銅線等の導体線を環状に所定回数巻回した構成を有する。送電コイル111は、例えば、絶縁性の枠体に固定されている。制御回路114は、ドライバ回路(ゲートドライバ、ハーフブリッジドライバ等)を含み、電源回路13から供給される電力に基づき、上記共振回路に供給する所定周波数の駆動電流を生成する。
【0027】
電源回路13は、例えば、スイッチング方式やリニア方式の回路であり、送電回路11に駆動電力を供給する。
【0028】
図3に第1実施例の受電装置20の主要な構成を示している。同図に示すように、受電装置20は、受電回路21、電力計測回路22、負荷23、及び角度調節機構24を備える。
【0029】
受電回路21は、受電コイル211、調整用コイル212、受電コンデンサ213、及び整流回路214を備える。受電コイル211と受電コンデンサ213は共振回路を構成している。受電コイル211は、その巻回軸の周りに絶縁被覆銅線等の導体線を環状に所定回数巻回した構成を有する。受電コイル211は、例えば、絶縁性の枠体に固定されている。調整用コイル212は、受電コイル211の内部空間に配置される。調整用コイル212は、受電コイル211と磁気的に結合される。整流回路214は、上記共振回路が受電した交流電力を直流電力に変換して負荷23に供給する。
【0030】
電力計測回路22は、受電回路21の受電電力を計測する。電力計測回路22は、受電回路21から出力される電力を計測するための電圧計及び電流計を含む。受電回路21の受電電力は非接触給電の伝送効率を表す指標となる。
【0031】
角度調節機構24は、電力計測回路22によって計測された受電回路21の受電電力に応じて受電コイル211の巻回軸の方向と調整用コイル212の巻回軸の方向とがなす角度θ1を調節し、非接触給電の伝送効率を調節する。角度調節機構24は、例えば、マイクロコンピュータやASIC(Application Specific Integrated Circuit)、モータ駆動機構、サーボモータ、ステッピングモータ等を用いて構成される。
【0032】
図4に、送電装置10の送電コイル111と、受電装置20の受電コイル211及び調整用コイル212の配置例を示している。この例では、送電コイル111及び受電コイル211を、夫々の巻回軸が、いずれも同図に設定した三次元直交座標系のx軸に平行な同一の直線に一致するように配置している。尚、以下の説明において、送電コイル111及び受電コイル211は夫々の巻回軸の方向がこの状態に維持されるように固定されているものとする。
【0033】
調整用コイル212の外径は、受電コイル211の内径よりも小さく、調整用コイル212は、受電コイル211の内部空間に、その中心が受電コイル211の中心と一致するように配置されている。調整用コイル212及び受電コイル211をこのような構成とすることで、受電装置20の小型化を図ることができる。
【0034】
調整用コイル212は、例えば、その中心を通りz軸に平行な回転軸に軸支されている。調整用コイル212を回転軸の周りに回転させることにより、調整用コイル212の巻回軸の方向をxy平面に平行な面内で回転させることができ、それにより受電コイル211の巻回軸の方向と調整用コイル212の巻回軸の方向とがなす角度θ1を変化させることができる。
【0035】
ここで受電回路21の共振回路において、受電コイル211が示すインダクタンスの値が上記角度θ1によって変化することが知見されている。また非接触給電システム1を構成する送電回路11又は受電回路21の共振回路の共振周波数(固有共振周波数)f0は、共振回路を構成するコイルのインダクタンスをL、共振回路を構成するコンデンサの静電容量をCとすれば、次の式1で表すことができる。
従って、上記角度θ1を変化させることにより、共振回路の共振周波数(固有共振周波数)を変化させることができる。
【0036】
一方、送電回路11の共振回路と受電回路21の共振回路の共鳴周波数(f1又はf2)は、両者の結合係数をkとすれば、例えば、次の式2又は式3で表される。
【0037】
式1乃至式3から、共鳴周波数(f1又はf2)は、共振回路を構成するコイルのインダクタンスLや共振回路を構成するコンデンサの静電容量Cによって変化することがわかる。従って、共振回路のコイルのインダクタンスを変化させることにより共鳴周波数(f1又はf2)を変化させることができる。そして共鳴周波数(f1又はf2)を変化させることで送電装置10から受電装置20への送電電力が変化し、従って、上記角度θ1を変化させることにより非接触給電の伝送効率を制御することができる。
【0038】
このため、送電回路11又は受電回路21の共振回路を構成するコイルのインダクタンスLや共振回路を構成するコンデンサの静電容量Cが変化した場合でも、上記角度θ1を変化させることにより非接触給電の伝送効率を制御することができ、送電装置10から受電装置20に対して目標とする伝送効率を維持して安定して電力を供給することができる。尚、上記結合係数kは、例えば、送電コイル111と受電コイル211の間の距離、両者の配置状態、両者が置かれている環境等によって変化するが、この変化に起因して生じる共鳴周波数(f1又はf2)のずれについても上記角度θ1を調節して補正するようにすれば、伝送効率をより安定させることができる。
【0039】
上記角度θ1の制御に際しては、例えば、伝送効率を随時モニタして伝送効率が最大になるように上記角度θ1をフィードバック制御する。また例えば、予め目標とする伝送効率が定められている場合には、目標値に維持されるように上記角度θ1をフィードバック制御する。また例えば、予め伝送効率が制限されている場合には、制限値を超えないように上記角度θ1をフィードバック制御する。
【0040】
ところで、第1実施例では、受電装置20側の共振回路のインダクタンスを変化させて伝送効率を調節しているので、例えば、1つの送電装置10が複数の受電装置20に対して一対多の関係で非接触給電を行う場合には、受電装置20ごとに適切な値に伝送効率を調節して非接触給電を行うことができる。
【0041】
=第2実施例=
図5に第2実施例として示す磁界共鳴方式の非接触給電システム1の概略的な構成を示している。同図に示すように、非接触給電システム1は、送電装置10及び受電装置20を含む。送電装置10は、受電装置20に向けて磁界共鳴方式の非接触給電により送電を行う。受電装置20は、送電装置10から送られてくる電力を受電する。
【0042】
図6に送電装置10の主要な構成を示している。同図に示すように、送電装置10は、送電回路11、電力計測回路12、電源回路13、及び角度調節機構14を備える。
【0043】
送電回路11は、送電コイル111、調整用コイル112、送電コンデンサ113、及び制御回路114を備える。送電コイル111と送電コンデンサ113は共振回路を構成している。送電コイル111は、その巻回軸の周りに絶縁被覆銅線等の導体線を環状に所定回数巻回した構成を有する。送電コイル111は、例えば、絶縁性の枠体に固定されている。調整用コイル112は、送電コイル111の内部空間に配置される。調整用コイル112は、送電コイル111と磁気的に結合される。制御回路114は、ドライバ回路(ゲートドライバ、ハーフブリッジドライバ等)を含み、電源回路13から供給される電力に基づき、上記共振回路に供給する所定周波数の駆動電流を生成する。
【0044】
電源回路13は、例えば、スイッチング方式やリニア方式の回路であり、送電回路11に駆動電力を供給する。
【0045】
電力計測回路12は、送電回路11の消費電力を計測する。電力計測回路12は、電源回路13から送電回路11に供給される電力を計測するための電圧計及び電流計を含む。送電回路11の消費電力は非接触給電の伝送効率を表す指標となる。
【0046】
角度調節機構14は、電力計測回路12によって計測された送電回路11の消費電力に応じて送電コイル111の巻回軸の方向と調整用コイル112の巻回軸の方向とがなす角度θ2を調節し、非接触給電の伝送効率を調節する。角度調節機構14は、例えば、マイクロコンピュータやASIC、モータ駆動機構、サーボモータ、ステッピングモータ等を用いて構成される。
【0047】
図7に第2実施例の受電装置20の主要な構成を示している。同図に示すように、受電装置20は、受電回路21、及び負荷23を備える。
【0048】
受電回路21は、受電コイル211、受電コンデンサ213、及び整流回路214を備える。受電コイル211及び受電コンデンサ213は共振回路を構成している。受電コイル211は、その巻回軸の周りに絶縁被覆銅線等の導体線を環状に所定回数巻回した構成を有する。整流回路214は、上記共振回路が受電した交流電力を直流電力に変換して負荷23に供給する。
【0049】
図8に、送電装置10の送電コイル111及び調整用コイル112と、受電装置20の受電コイル211の配置例を示している。この例では、送電コイル111及び受電コイル211を、夫々の巻回軸が、いずれも同図に設定した三次元直交座標系のx軸に平行な同一の直線に一致するように配置している。尚、以下の説明において、送電コイル111及び受電コイル211は夫々の巻回軸の方向がこの状態に維持されるように固定されているものとする。
【0050】
調整用コイル112の外径は、送電コイル111の内径よりも小さく、調整用コイル112は、送電コイル111の内部空間に、その中心が送電コイル111の中心と一致するように配置されている。調整用コイル112及び送電コイル111をこのような構成とすることで、送電装置10の小型化を図ることができる。
【0051】
調整用コイル112は、例えば、その中心を通りz軸に平行な回転軸よって軸支されている。調整用コイル112を回転軸の周りに回転させることにより、調整用コイル112の巻回軸の方向をxy平面に平行な面内で回転させることができ、それにより送電コイル111の巻回軸の方向と調整用コイル112の巻回軸の方向とがなす角度θ2を変化させることができる。
【0052】
ここで送電回路11の共振回路において、送電コイル111が示すインダクタンスの値が上記角度θ2によって変化することが知見されている。また第1実施例で説明したように、上記角度θ2を変化させることにより、送電回路11の共振回路の共振周波数(固有共振周波数)を変化させることができ、前述した共鳴周波数(f1又はf2)を変化させることができる。そして共鳴周波数(f1又はf2)を変化させることで送電装置10から受電装置20への送電電力が変化し、従って、上記角度θ2を変化させることにより非接触給電の伝送効率を制御することができる。
【0053】
このため、送電回路11又は受電回路21の共振回路を構成するコイルのインダクタンスLや共振回路を構成するコンデンサの静電容量Cが変化した場合でも、上記角度θ2を変化させることにより非接触給電の伝送効率を制御することができ、送電装置10から受電装置20に対して目標とする伝送効率を維持して安定して電力を供給することができる。尚、上記結合係数kは、例えば、送電コイル111と受電コイル211の間の距離、両者の配置状態、両者が置かれている環境等によって変化するが、この変化に起因して生じる共鳴周波数(f1又はf2)のずれについても上記角度θ2を調節して補正するようにすれば、伝送効率をより安定させることができる。
【0054】
上記角度θ2の制御に際しては、例えば、伝送効率を随時モニタして伝送効率が最大になるように上記角度θ2をフィードバック制御する。また例えば、予め目標とする伝送効率が定められている場合には、目標値に維持されるように上記角度θ2をフィードバック制御する。また例えば、予め伝送効率が制限されている場合には、制限値を超えないように上記角度θ2をフィードバック制御する。
【0055】
ところで、前述したように、非接触給電の伝送効率は、送電回路11の消費電力を指標として把握することができるが、伝送効率は、例えば、送電装置10からの送電電力と受電装置20の受電電力との比から求めてもよい。その場合、例えば、送電装置10と受電装置20とを通信可能に接続し、送電装置10側で受電装置20の受電電力を把握できるようにする。
【0056】
=第3実施例=
図9に第3実施例として示す磁界共鳴方式の非接触給電システム1の概略的な構成を示している。同図に示すように、非接触給電システム1は、送電装置10及び受電装置20を含む。送電装置10は、受電装置20に向けて磁界共鳴方式の非接触給電により送電を行う。受電装置20は、送電装置10から送られてくる電力を受電する。
【0057】
図10に第3実施例の送電装置10の主要な構成を示している。第3実施例の送電装置10の構成は第2実施例の送電装置10と同様である。
【0058】
図11に受電装置20の主要な構成を示している。第3実施例の受電装置20の構成は第1実施例の受電装置20と同様である。
【0059】
図12に、送電装置10の送電コイル111及び調整用コイル112と、受電装置20の受電コイル211及び調整用コイル212の配置例を示している。この例では、送電コイル111及び受電コイル211を、夫々の巻回軸が、いずれも同図に設定した三次元直交座標系のx軸に平行な同一の直線に一致するように配置している。
【0060】
第3実施例の非接触給電システム1においては、送電装置10は、送電コイル111の巻回軸の方向と調整用コイル112の巻回軸の方向とがなす角度θ2を変化させることにより、非接触給電の伝送効率を制御する。また受電装置20は、受電コイル211の巻回軸の方向と調整用コイル212の巻回軸の方向とがなす角度θ1を変化させることにより、非接触給電の伝送効率を制御する。このように、第3実施例の非接触給電システム1においては、送電装置10及び受電装置20の双方が共振回路のインダクタンスを変化させて伝送効率を調節するので、伝送効率をより確実に安定して維持することができる。
【0061】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、以上の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0062】
以上では、受電コイル211を固定し、調整用コイル212を回転させて角度θ1を変化させているが、これとは逆に、受電コイル211を回転させて角度θ1を変化させるようにしてもよい。また受電コイル211と調整用コイル212の双方を回転させて角度θ1を変化させるようにしてもよい。同様に、以上では、送電コイル111を固定し、調整用コイル112を回転させて角度θ2を変化させているが、これとは逆に、送電コイル111を回転させて角度θ2を変化させるようにしてもよい。また送電コイル111と調整用コイル112の双方を回転させて角度θ2を変化させるようにしてもよい。
【0063】
以上では、調整用コイル112(又は調整用コイル212)として、その径が送電コイル111(又は受電コイル211)の径よりも小さいものを採用したが、調整用コイル112(又は調整用コイル212)として、その径が送電コイル111(又は受電コイル211)と同一(又はほぼ同一)のものを採用してもよいし、その径が送電コイル111(又は受電コイル211)の径よりも大きいものを採用してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 非接触給電システム、10 送電装置、11 送電回路、12 電力計測回路、13 電源回路、14 角度調節機構、111 送電コイル、112 調整用コイル、113 送電コンデンサ、114 制御回路、20 受電装置、21 受電回路、22 電力計測回路、23 負荷、24 角度調節機構、211 受電コイル、212 調整用コイル、213 受電コンデンサ、214 整流回路
【要約】
磁界共鳴方式の非接触給電システム1において、送電装置10から受電装置20に対して目標とする伝送効率を維持して安定して電力が供給されるようにする。受電装置20は、受電コイル211の内部空間に設けられ、その巻回軸の方向が受電コイル211の巻回軸の方向に対して回転する調整用コイル212と、給電中に伝送効率が目標値に維持されるように、受電コイル211の巻回軸の方向と調整用コイル212の巻回軸の方向とがなす角度θ1を調節する角度調節機構24とを備える。送電装置10は、送電コイル111の内部空間に設けられ、その巻回軸の方向が送電コイル111の巻回軸の方向に対して回転する調整用コイル112と、給電中に伝送効率が目標値に維持されるように、送電コイル111の巻回軸の方向と調整用コイル112の巻回軸の方向とがなす角度θ2を調節する角度調節機構14とを備える。
図1
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図10
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図12