【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明により上記の課題は、請求項1の特徴を有する医療用インプラント、請求項70の特徴を有する医療用インプラントを含んだ装置、請求項71記載の骨接合方法、ならびに請求項81記載の別の骨接合方法によって解決される。
【0011】
本発明に係る医療用インプラントは、導電体内あるいは導電体同士の移行領域上において(電気回路内の)最も(オーム)抵抗が大きい場所を電流が通流する際に熱が発生するという効果を利用する。本発明に係る医療用インプラントにおいて特別なことは、それ自体が導電性であるかあるいは添加物によって導電性になるよう処理されたポリマー、特に熱可塑性材料を加熱するために電流を使用することである。意外なことにその種の熱可塑性かつ導電性のポリマーの補助によって、熱可塑性樹脂の軟化および適宜なインプラントの設計を通じて人間あるいは動物の骨に対する結合を好適には外科手術中に形成することが達成される。電気回路中の最も抵抗が大きい個所すなわち電圧降下が最も大きい個所において最大の発熱が生じるため、材料を所要の個所のみで軟化させるように特殊に加熱工程を制御することも可能になる。電流は最も抵抗が小さい経路を通流して回路を形成することに留意する必要がある。最も抵抗が大きい場所がその種の回路の最も抵抗が大きい個所に相当し、インプラント中の所要の領域を介して電流が通流するように強制されその他の方向には通流し得ないようにインプラントを設計する必要がある。それ以外の領域においてインプラント材料は局部絶縁体として機能し、従って軟化は少なくなる。人間あるいは動物の身体特に骨は電流回路において導体として機能するために極めて好適な導電体であることが知られており、後述する実施例において驚くほど温度上昇が少ないものである。そのことが溶融した状態において抵抗が低下するポリマーによってさらに補完される。
【0012】
特殊な実施形態においてインプラントは回路の1つの極(直流)上あるいは相導体(交流、高周波電流の場合)上に設置することができ、一方身体(骨)上に大面積の電極を介して他方の極あるいはゼロ電位線が設置される。電流は電極を介してインプラントに通流し、さらにインプラントを介して接触面/接触個所から身体例えば骨に通流し、その後中性電極を介して流出する。電流は所要の最大電気(オーム、誘導、あるいは容量)抵抗もしくは最大電圧降下の個所においてインプラントを加熱して軟化させる。
【0013】
それに代えて患者の体を介さずに適宜に装着された2つの極(バイポーラ)の間でインプラントを介して直接電流を通流させることもでき、それによってインプラントはこの場合も抵抗が最大の個所/領域で加熱され軟化/溶融する。
【0014】
以下に本明細書の全体中で頻繁に使用される用語の概念を定義する:
電流:本発明は電極によって適宜に付加されインプラント中を通流する電流をインプラントの加熱および軟化のために使用する。電流は金属中の直流電流のように電子が通流するオーム電流とすることができる。移動させる電荷担体として陽子あるいはその他の帯電粒子も考えられる。電流は塩溶液中の電流のようなイオン移動とすることもできる。電池のように電子あるいは荷電体の移動を可能にする化学反応を使用することもできる。勿論誘導あるいは容量電流も含まれ、その実施形態において容量性荷電体移動が好適な電流通流方式である。また電流が多様な方式で通流することもでき、例えば骨中でイオン流として通流しポリマー中においては例えば同時に電子流として通流することができる。電流あるいは電圧は、直流、交流、特に好適には高周波交流(無線周波)として使用することができる。さらに、スパークを本発明の実施形態において使用することもできる。
【0015】
溶融/軟化/可塑化:本発明においてインプラントの溶融、軟化あるいは可塑化としては、最初は(通常手によって)使用可能に可塑性に変形可能ではなかったインプラントが身体内で中程度(通常手による)圧力付加によって変形可能になり本発明の方式で使用可能になるまで電流自体あるいはそれによって発生する熱によってインプラントを軟化させることが理解される。
【0016】
抵抗および導電性:“電気抵抗”および“導電性”としては使用される電流方式に対する面積抵抗率(オーム/スクウェア)、体積導電率(S/cm)あるいは絶対抵抗が理解される。それらの定義は変更可能であって限定的なものではない。特に本発明は必要な軟化のために充分な電流を形成するために充分な材料の導電性を達成することを目標とし、そうでなければ充分に大きな電圧降下を生じさせそれによってインプラントを軟化させるために充分に大きなエネルギー放出をインプラント内で発生させるために所定の抵抗が必要となる。理想的には、周囲の組織を損傷しない(加熱を小さくする)ようにするためにその周囲の組織よりも著しく低い導電性を目標とすべである。最後に、導電性は電流方式、電圧、材料断面積、および材料の体積導電率/抵抗率の関数となり、実施形態に適応させる必要がある。複素交流計算においては“抵抗”という概念が“レジスタンスR”と“リアクタンスX”の成分を有するいわゆる“インピーダンス”である複素数によって代替される。
【0017】
中性電極:“中性電極”としては交流電流の場合においてゼロ電位線あるいは接地線に接続される極が理解される。
【0018】
モノポーラ:“モノポーラ”としては身体を介して電流通流(皮膚上あるいはその他の身体部分上のゼロ電位線、“中性電極”あるいは接地線介し大面積の電極による)が実施され交流電圧は典型的にインプラントを介して供給される、実施形態が理解される。極を逆にすることもできる。
【0019】
バイポーラ:ここで“バイポーラ”としてはインプラントの近傍に設置された2つの電極(例えば2つの極を有する電気ピンセット)を介した電流の流入および流出が理解される。これの利点は身体を介した電流の通流を削減あるいは回避し得ることである。
【0020】
有機半導体:“有機半導体”は、一方で電荷移動錯体の一群、他方ではポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン等ならびにそれらの誘導体である導電性ポリマーの一群を示す。それらのポリマーは常に任意の混合物あるいはそれらの純粋なトランス形あるいはシス形の形態で存在することができる。
【0021】
自己導電性ポリマー:添加物なしで導電性であるポリマーが理解され、追加的に同様に導電性のコポリマー(例えばラクチドとピロールのコポリマー)も含まれる。
【0022】
導電性に形成されたポリマー:特にミクロあるいはナノ領域の粉末、自己導電性のポリマー、低分子物質、あるいは液体等の添加物を含み、その添加物によって導電性にされたポリマーが理解される。このグループからは、繊維マット、ループ状繊維、ワイヤ、糸、針等の巨視的な構成成分を含んでいてポリマー自体は非導電性でそのポリマー内に含まれた追加的な構成成分のみが発熱してそれによって周囲のポリマーを軟化させるようなポリマーは除外される。
【0023】
本発明に係る医療用インプラントは多様な課題の解決を可能にするものであり、そのうちいくつかの課題について以下に記述する。
【0024】
課題A:移植の最中の電流による医療用インプラントの選択的あるいは全体的な加熱および軟化あるいは液化:
ここで例えばピンを使用する場合、導電性のピンの末端(骨と反対側の)に接続された電極と前記の導電性のピン自体とさらに身体(例えば骨)への接触個所と身体を介して中性電極への回路が形成される。インプラントと骨の間の接触個所において最大の電圧降下(最大抵抗)が発生し、熱可塑性樹脂が加熱されて軟化ないし液状になる。ピンの中核は、それが全くあるいは極僅かにしか加熱されず硬質状態を維持するように設計される。従ってピンは例えば小さめのサイズを有するように予め穿設された穴内に挿入することができ、軟化した導電性の熱可塑性樹脂が骨中の間隙内に圧入される。電流の遮断後熱可塑性樹脂が冷却されて急速(1ないし2分未満)に硬化し、機械的な結合が形成される。
【0025】
課題B:インプラントを移植中に変形するための熱可塑性樹脂を含んだインプラントの選択的あるいは全体的な加熱
ここで例えば導電性のピンに対してその輪郭内に高い抵抗を有する領域を設けて再び回路内に設置し、その高い抵抗を有する領域上でピンを加熱する。その部分においてピンが変形することができる。
【0026】
課題C:導電性の熱可塑性樹脂を含んだインプラントの身体内への局部的な固定の形成
例えば射出成形等の適宜な製法によって内部応力を備えるようにピンを形成する。ピン全体を加熱することによって熱可塑性樹脂が柔軟化してピンが短くなるとともに直径が増大し、それによって周囲の組織内あるいは組織上での固定が達成される。
【0027】
課題D:導電性の熱可塑性樹脂を含んだ複数のインプラントを相互に溶着させることによるインプラント間の局部的な結合の形成
これは別々に身体内に挿入することができる2つの熱可塑性インプラント部材の結合において実施される。その際に結合される両方(あるいは複数)のインプラント部材を介して必要な電流が通流し得るよう配慮する必要がある。両方(あるいは複数)のインプラント部材を挿入した後インプラント部材を接触個所で軟化させる電流を通流させ、圧力の付加によって結合することができる。そのようにして例えば結び目を形成しないようにするため糸を接着することができ、その際例えば双極性の電流源によって電流が直接結合個所を通流することができる。
【0028】
課題E:中空組織のライニング
血管、腸、胃、骨、尿管、膀胱、子宮、胆嚢、卵管、膣、尿道等は上述のインプラント材料から形成された医療用インプラントによって例えばステントの形態でライニングしそれによって例えば機械的に補強することができる。その際内部応力を有するステントを加熱膨張によって変形するか、あるいは軟化した状態のステントを例えば気球の膨張による機械的圧力の付加によって変形することができる。
【0029】
課題F:軟質組織あるいは骨の締め付けあるいは被覆
例えばインプラント材料から胃壁を(開口リングとして)形成し、電流付加によって変形可能にして閉鎖式のリングに結合することができる。同様にポリマーバンドをセルクラージュ材料として使用することもできる。
【0030】
課題G:皮膚閉鎖
比較的低い融点を有する好適なポリマーを例えば機械的な皮膚閉鎖のためあるいはECG電極取り付けのために直接皮膚上に接着することもできる。
【0031】
課題H:身体内への挿入後にインプラント材料の切開によって変形可能なインプラントの製造
ここで使用される上述のインプラント材料は電流によって選択的に切断あるいは切開することができるインプラントを製造するために使用することもでき、従って特に高電圧あるいは大電流で比較的小さく“鋭い”電極を有する電気焼灼器を使用して例えば導電性の糸を切断することもできる。変形したあるいは溶融したピンは例えば骨表面上で切断するかあるいは骨の表面に対して平坦になるまで変形させることができる。そのようにして薬剤キャリアを開放して作用成分を放出させることができる。
【0032】
本発明に係る医療用インプラントを軟化あるいは液化させるためには任意の方式の電流が適しており、特に直流、交流、誘導電流(マイクロ波)、三相電流、多相/多極電流、および一般的な電気焼灼器の電流パターンが好適である。
【0033】
電流誘導は多様な方式で実施することができ、例えば2つの電極(“バイポーラ”)を使用し熱可塑性樹脂あるいは(“モノポーラ”)身体を介した直接的な電流誘導、容量性、オーム性あるいはイオン電流による電流誘導、スパーク(アーク)による電流誘導によって実施することができる。電流源としては例えば電気焼灼器、VAPR(ジョンソンアンドジョンソン社の商品名)、あるいはマイクロ波発振器等の電流源が適している。
【0034】
高周波の交流電圧の場合好適な交流電圧の周波数は:20kHz超、特に300kHzないし3MHz(無線周波数)である。典型的な電流源の平均出力は:小型のピンあるいは固定要素(直径0.1ないし5.0mm)に対して:約0.1ないし50.0ワット、特に0.5ないし10.0ワットである。大型の補綴物の固定あるいは大型の骨損傷の充填のためには1ないし2000ワットとなる。個々のパルスが付加される間のピーク出力は5kWもしくはさらに大きいものとなり得る。一般的な電圧は:20Vないし3000V、特に20ないし300Vとなる。一般的な電流強度は:0.01ないし100.00アンペア、特に0.05ないし10.00アンペアとなる。交流電圧の形態(無線周波数交流電流)は:正弦波、矩形波、台形波等、さらに非対称形あるいは対称形、パルス状あるいは連続状となる。一般的なパルス長は:0.1msないし50msとなる。
【0035】
特に、回路の抵抗/インピーダンス(オーム)、電流(アンペア)、および放出される出力(ワット)の測定、インプラントあるいは周囲の組織の温度の直接的(例えば温度センサ)あるいは間接的(例えば赤外線カメラ)な測定によって電流強度を制御し得ることに配慮する必要がある。それによって過剰な加熱を防止し、インプラントをその他の組織やインプラント(糸)と同様に保護することができる。電気焼灼手段はしばしばそのため(一定あるいは調整された出力放出のため)に使用可能な制御機構を最初から備えている。別の可能性は、インプラントの機械的な抵抗を変形に際して測定し、それに従って電気出力を調節することである。別の調節作用としてポリマーの抵抗変化を加熱あるいは軟化に際して使用しそれによって加熱を制御することができる(上述参照)。
【0036】
本発明に係る医療用インプラントのための生体適合性かつ生分解性のポリマーは:ポリαヒドロキシエステル、ポリオルトエステル、ポリアンヒドライド、ポリフォスファゼン、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリエステルアミド、ポリエチレンフマレート、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、
ポリ炭酸トリメチレン、
ポリジオキサノン、ポリヒドロキシブチレート、ならびにそれらの共重合体および混合物の一群から選択することができる。
【0037】
本発明に係る医療用インプラントのための生体適合性であるが生分解性ではない熱可塑性ポリマーは:ポリエチレン、
ポリスチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスルホンの一群の中から選択することができる。
【0038】
本発明に係る医療用インプラントのための熱可塑性のポリマーは例えば下記の一群の物質から選択することができ、その際添加物の指標に応じて融点を低下させる必要がある:
アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリアクリル、セルロイド、アセチルセルロース、エチレンビニルアセテート(EVA)、エチレンビニルアルコール(EVAL)、フッ素樹脂、イオノマー、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル(PANあるいはアクリロニトリル)、ポリアミド(PAあるいはナイロン)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアリルエーテルケトン(PAEKあるいはケトン)、ポリブタジエン(PBD)、ポリブチレン(PB)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリカーボネート(PC)、ポリケトン(PK)、ポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンクロリネート(PEC)、ポリイミド(PI)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレン
サルファイド(PPS)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリプロピレン(PP)、ポリウレタン(PUR)、ポリスルホン(PSU)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)。
【0039】
医療用インプラントの個々の領域の所要の温度安定性は、個々の材料の導電性、融点ならびに固有電気抵抗に従った材料の選択によって変化させることができる。
【0040】
本発明に係る医療用インプラントのために使用する熱可塑性材料がそれ自体全体的に導電性でない場合、適宜な導電性要素(例えばケーブル、導電体、鉄製あるいはチタン製の芯)との組合せによって少なくとも部分的に導電性の熱可塑性樹脂に改質することができ、それによって電流を導通させる電極として適用することができる。その際患者の身体と電気的に接触する接触領域を完全あるいは部分的に導電性の熱可塑性樹脂によって被覆することができる。前記の接触領域が部分的に導電性の熱可塑性樹脂によって被覆される場合、それ以外の表面は非導電性であることが好適である。このことは適宜な材料選択あるいは適宜な被覆、例えばヒドロキシアパタイトまたはその他の例えば骨導電性、骨誘電性、あるいは骨形成性の材料によって達成することができる。
【0041】
以下に本発明に係る医療用インプラントの適用に際しての処理ステップについて詳細に記述する:
a)骨の準備、例えばボアホールの形成;
b)前記ボアホール内への固定要素の設置;
c)インプラントの(熱可塑性の)ポリマーの加熱;
d)固定する組織内へのインプラントの圧入;
e)例えば能動的冷却によって支援することができるインプラントの冷却。
【0042】
好適な実施形態において、250℃未満の加熱温度で軟化が生じるようにポリマーが選択される。
【0043】
別の実施形態においては、150℃未満、特に100℃未満の加熱温度で軟化が生じる。この実施形態の利点は組織の損傷を防止する身体(人間あるいは動物)内への移植が可能になることである。
【0044】
さらに別の実施形態においては、インプラントを加熱するためにポリマー自体以外のインプラント構成成分が含まれない。この実施形態は、インプラントの製造および使用に際して利便性が高いことを特徴とする。
【0045】
別の実施形態においては、医療用インプラントが電極を固定するための手段を含む。
【0046】
さらに別の実施例においては、前記手段がポリマーの表面上の窪みあるいは隆起から形成される。
【0047】
別の実施形態においては、前記手段は固有電気抵抗ρ
M<ρを有する材料から形成される。この実施形態の利点は、これによって電流が優先的にポリマーを介して通流し電極を固定するための手段を介しては通流せず、従って固定手段が同時に溶融しないことである。
【0048】
別の実施形態においては、ポリマーが半導体、特に有機半導体である。
【0049】
さらに別の実施形態においては、ポリマーが拡張された共役二重結合(extensively conjugated double bonds)を有する分子鎖を含む。
【0050】
さらに別の実施形態においては、固有電気抵抗ρが500Ω・cm超、特に1500Ω・cm超となる。
【0051】
別の実施形態においては、固有電気抵抗ρが3000Ω・cm超、特に10000Ω・cm超となる。
【0052】
さらに別の実施形態においては、ポリマーが少なくとも10
−1Ω/スクウェア、特に少なくとも10
2Ω/スクウェアの面抵抗を有する。
【0053】
別の実施形態においては、ポリマーが最大でも10
12Ω/スクウェア、特に最大でも10
7Ω/スクウェアの面抵抗を有する。
【0054】
さらに別の実施形態においては、ポリマーが少なくとも10
−11S/m、特に少なくとも10
−4S/mの体積導電率を有する。
【0055】
別の実施形態においては、ポリマーが最大でも10
1S/m、特に最大でも10
0S/mの体積導電率を有する。通常体積導電率は0.1S/mとなる。
【0056】
さらに別の実施形態においては、ポリマーの溶融あるいはインプラントの加熱によってインプラント中の電気抵抗が低下する。
【0057】
別の実施形態においては、溶融したあるいは加熱されたインプラントの状態において電気抵抗が少なくとも0.5、特に10の係数で低下する。
【0058】
別の実施形態においては、溶融したあるいは加熱されたインプラントの状態において電気抵抗が100超の係数で低下する。この実施形態の利点はこれによって既に溶融された領域がそれ以上加熱されず、周囲の組織が保護されることである。
【0059】
さらに別の実施形態においては、ポリマーの溶融あるいはインプラントの加熱によってインプラント中の電気抵抗が増大する。
【0060】
さらに別の実施形態においては、溶融したあるいは加熱されたインプラントの状態において電気抵抗が少なくとも0.5、特に10の係数で上昇する。
【0061】
別の実施形態においては、ポリマーが等方性とされる。
【0062】
別の実施形態においては、ポリマーが異方性とされる。
【0063】
さらに別の実施形態においては、ポリマーが熱可塑性材料とされる。
【0064】
さらに別の実施形態においては、熱可塑性材料がポリアセチレン、ポリアニリン、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリアリーレン、ポリスピロ−ビフルオレン、ポリジアルキルフルオレン、ポリチオフェン、またはポリピロールの一群の中から選択される。
【0065】
別の実施形態においては、熱可塑性材料が以下の一群の中から選択される:
− それ自体導電性である熱可塑性ポリマー;
− 非導電性のポリマー(マトリクス)と導電化を可能にする充填剤あるいは添加剤との混合物;
− 導電性および非導電性のポリマーから合成されるコポリマー;
− 電気付加あるいは加熱によって化学反応(例えば重合)または物理反応(例えば形状変化)を誘発することができる導電性のポリマー;
− 電気付加あるいは加熱によって化学反応(例えば重合)または物理反応(例えば形状変化)を誘発することができる導電性の非ポリマー。その種の材料は例えばセラミック、ゲル、コラーゲン等の有機あるいは無機自然物質、またはペースト状の組成で液体中に付加され熱活性化によって硬化する化学物質とすることができる;
− 上記の材料の組合せ。
【0066】
さらに別の実施形態においては、医療用インプラントがポリマーの他に特に以下の一群の中から選択される別の材料からなるインプラント部材をさらに含む:金属、炭素、セラミック、PEEK、好適にはポリメチルメタクリレートの基から選択される非熱可塑性のポリマー、および/またはリン酸カルシウム、硫酸カルシウムあるいは骨セメント等の無機材料。
【0067】
別の実施形態においては、ポリマーがそれ自体導電性である。
【0068】
さらに別の実施形態においては、ポリマーの導電性が適宜なドーピングによって達成される。
【0069】
別の実施形態においては、ポリマーが導電性のセラミック、特にガラス状あるいは非晶質の構造と組み合わされる。
【0070】
さらに別の実施形態においては、ポリマーが非導電性のポリマーに対する導電性添加物質の付加によって得られる。適宜な添加物質は例えば:好適には3ないし50%の煤状物質(“カーボンブラック”);好適には3ないし50%で可能な限り均等にポリマー内に分散された最大1mmの長さの炭素繊維;好適には0.1ないし5%の炭素ナノチューブ;特に鉄、チタン、金、マグネシウム、鋼鉄等の金属粒子;特にNaCl、バリウム、マグネシウム塩等の塩;タンパク質および骨物質;脂質;ケイ酸塩である。全ての導電性の添加物質は、球体、フロック等の形態で添加することができる。
【0071】
別の実施形態においては、導電性の添加物質が粒子、顆粒、任意の外形を有する粒子蓄積体の形態からなる任意の導電性の固形あるいは流体材料から形成される。
【0072】
さらに別の実施形態においては、導電性の添加物質が以下の材料から選択される:
− 例えば鉄、マグネシウム、金、銀、合金あるいはアマルガム等の金属材料;
− 煤、カーボンナノチューブ、フラーレン等の炭素粒子;
− 所要の大きさで電気の通流を可能にするために水分を急速に吸収することができる塩あるいは物質。その種の塩は例えば塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、あるいはマグネシウム塩から形成することができる;
− 例えばピロール、アニリン、
ジアルキルフルオン、チオフェン、またはエチレンジオキシチオフェンのポリマーから選択される導電性のポリマー;
− シリコーン等の生体適合性オイル;
− 特に塩溶液等の水性溶液。
【0073】
導電性が所要の目的に適合するように充填剤/添加剤の分量を目的とする適用形態に適応させる必要があり、例えば加熱された材料が熱可塑性、流動性、あるいは液状になるか、または特定の化学反応の導入に際して材料が硬化するように材料の電気抵抗を適応させる。
【0074】
別の実施形態においては、ポリマーが開孔質の構造を有する。この実施形態の利点は、そのことによって骨の治癒が促進され、また導電性の液体、ゲル、あるいはその他の物質の保持が可能になることである。
【0075】
さらに別の実施形態においては、ポリマーが毛細管を有する。それによって、導電性を変化させるために身体の塩溶液あるいはその他の溶液が浸透することが可能になるという利点が達成される。
【0076】
別の実施形態においては、ポリマーが親水性の特性を有する。
【0077】
さらに別の実施形態においては、医療用インプラントが均質な材料から形成される。
【0078】
別の実施形態においては、前記の均質な材料が内部構造を有していない。
【0079】
さらに別の実施形態においては、ポリマーがインプラント被覆層の形態で存在する。
【0080】
別の実施形態においては、インプラントの表面の一部のみがポリマーによって被覆される。
【0081】
さらに別の実施形態においては、ポリマーがそれぞれ異なった固有電気抵抗ρを有する区域群を特に表面被覆の形態で含む。
【0082】
別の実施形態においては、被覆層が変動的な層厚を有する。
【0083】
さらに別の実施形態においては、インプラント全体あるいはポリマーのみが部分的に非導電性の材料によって被覆される。その結果、被覆の実施によって電流通流の経路を設定し得るという利点が達成される。前記非導電性の層は絶縁材として機能し短絡を防止するものである。
【0084】
別の実施形態においては、非導電性の材料が骨伝導性、骨誘導性、あるいは骨形成性の特性を有する。
【0085】
さらに別の実施形態においては、非導電性の材料がポリラクチドあるいはヒドロキシアパタイトである。
【0086】
別の実施形態においては、ポリマーが生体適合性かつ導電性の少なくとも2種類の異なった熱可塑性材料からなる混合物を含む。この実施形態は、一様なインプラント形状を有しながら異なった抵抗を有する複数群が得られることを特徴とする。前記の導電性熱可塑性材料はポリマー、ゲル、ペースト、ワックスの形態で存在し得る。
【0087】
さらに別の実施形態においては、医療用インプラントが固形の形態を有する。この実施形態の利点は、インプラントに対してより良好に外部圧力を付加し得ることである。
【0088】
別の実施形態においては、ポリマーが顆粒形態で存在する。それによって、ポリマーをその方式で間隙あるいは空洞内に充填しそこで固化させ得るという利点が達成される。
【0089】
さらに別の実施形態においては、医療用インプラントが繊維から形成され、その際ポリマーが好適には繊維の被覆として機能する。前記繊維はフロック状、湾曲形状、あるいは連結形とすることができ、また個々に糸、網、布地、あるいは袋体として存在することができる。この実施形態の利点は、織物/繊維状のインプラントを所要の形状に成形するとともに電流によって固化/固着し得ることである。
【0090】
別の実施形態においては、医療用インプラントが開孔質の発泡体あるいは海綿体の形態で存在する。
【0091】
別の実施形態においては、医療用インプラントが特に骨ネジ、骨杆体、骨ダボ、ピン、プレート、ダボ、ホース(管)、糸、ホース/管の糸、あるいは(スレッディングアイレットを備えた)アンカの形態の骨固定要素として形成される。
【0092】
別の実施形態においては、ポリマーが棒形状に形成されるとともに、電極と結合された金属棒あるいは電極上に固定的に取り付けられたピンを軸方向に摺動可能に収容するために適した中央縦穴を有する。
【0093】
別の実施形態においては、末端部分を除いて絶縁材が設けられていて縦穴内に収容可能である金属棒あるいは金属ワイヤをインプラントが含む。
【0094】
さらに別の実施形態においては、ポリマーが棒形状に形成されるとともに非導電性の周囲絶縁層を含む。
【0095】
さらに別の実施形態においては、ポリマーが棒形状に形成されるとともにより高い抵抗を有する第2の導電性ポリマーからなる外側ブシュを備える。
【0096】
別の実施形態においては、ポリマーが
ビーズとして形成されるとともにワイヤの形態の電極と取り外し可能に結合可能である。
【0097】
別の実施形態においては、医療用インプラントが歯科インプラントあるいは歯根インプラントとして形成される。
【0098】
さらに別の実施形態においては、ポリマーが少なくとも部分的に軟化した状態で存在する。
【0099】
別の実施形態においては、前記軟化した状態がポリマーを介して通流する電流によって形成される。
【0100】
さらに別の実施形態においては、前記電流が外部電流源によって生成される。
【0101】
別の実施形態においては、電流源が交流電源である。
【0102】
さらに別の実施形態においては、ポリマーが20000Hz超、特に300000Hz超の周波数vを有する交流電流によって加熱可能および軟化可能である。
【0103】
別の実施形態においては、ポリマーが0.001ないし10アンペアの電流強度Iを有する交流電流によって加熱可能および軟化可能である。
【0104】
さらに別の実施形態においては、ポリマーが20ないし300ボルトの電圧Uを有する交流電流によって加熱可能および軟化可能である。
【0105】
別の実施形態においては、軟化される容積Vのポリマーが出力密度P=0.005ないし5ワット/mm
3の交流電流によって約0.1ないし10秒以内に加熱可能および軟化可能である。その際付加されるエネルギーEは約E=0.0005ないし50ワット秒/mm
3となる。
【0106】
別の実施形態においては、ポリマーが均一な導電性を備えておらず、その導電性が好適にはインプラントの表面上においてインプラントの内部よりも低くなる。両方の実施形態(バイポーラおよびモノポーラ)において本発明に係るインプラントは外側に向かって電気絶縁性の領域を備えることができ、すなわちモノポーラで使用されるピンにおいては例えば導電性のシャフトを非導電性の層で被覆し、インプラントの先端のみが身体に対して導電性の接触を有するようにすることができる。それによって、インプラントが例えばまずその先端上でのみ軟化して骨内で溶融しその間ピンのシャフトはその安定性を保持することが達成される。それによって選択的なポリマーの加熱が可能になり、特に電流によって溶融、液化、あるいは軟化することが必要な個所、特に患者の組織と接触するインプラントの表面を標的とした加熱が可能になるという利点が達成される。
【0107】
別の実施形態においては、医療用インプラントの導電性ポリマーが外部から電気エネルギーを付加されそれによって加熱されるような内部構成要素、内部構造あるいは繊維を含まない。
【0108】
別の実施形態においては、医療用インプラントの導電性ポリマー内の熱生成がその導電性ポリマーを介した電流通流のみによって達成される。
【0109】
別の実施形態においては、医療用インプラントの導電性ポリマー全体にその均一な加熱が達成されるように電流が通流する。
【0110】
別の実施形態においては、医療用インプラントの導電性ポリマー全体にその不均一な加熱が実施されるように電流が通流する。
【0111】
本発明の方法の好適な実施形態において、患者の身体がそれ自体回路の中性電極として使用される。
【0112】
本発明の方法の別の実施形態においては、医療用インプラントが回路内において2つの骨の間に接続される。これは骨−熱可塑性樹脂−骨の医療用インプラント適用形態に適している。
【0113】
本発明の方法の別の実施形態においては、回路の一電極が骨片に結合され第2の電極は該当する骨あるいは患者の身体のその他の部分に結合される。
【0114】
本発明の方法の別の実施形態においては、回路の一電極が骨片に結合され第2の電極は前記骨片と骨の間に挿入された医療用インプラントに結合される。
【0115】
本発明の方法のさらに別の実施形態においては、移植個所が骨穿孔部とされる。
【0116】
本発明の方法の別の実施形態においては、医療用インプラントが軟化していない状態において骨穿孔部より大きな寸法となる。
【0117】
本発明の方法のさらに別の実施形態においては、医療用インプラントが軟化していない状態において骨穿孔部より大きな寸法を有していないが内部予圧を有している。予圧の付加は例えば射出成形による製造中に実施することができる。
【0118】
本発明の方法の別の実施形態においては、導電性のポリマーが棒体の形状でインプラントの絶縁化された中空部内に挿入され、好適には導電性のコアを備える。
【0119】
本発明の方法のさらに別の実施形態においては、放射方向の流出穴を有する中空部を備えたインプラント内に導電性のポリマーが挿入される。
【0120】
別の実施形態においては、椎骨形成術のための医療用インプラントの適用が実施される。
【0121】
さらに別の実施形態においては、インプラントの鎖錠および/または心合せ、特に骨内に挿入した後の脊髄釘固定のための医療用インプラントの適用が実施される。
【0122】
さらに別の実施形態においては、軟化が40℃超の加熱温度で生じるようにポリマーが選択される。
【0123】
例1(プレート骨接合)
1mmの厚みを有するポリ−D,L−ラクチドから形成された吸収性の骨接合プレートを固定すべき骨片上に取り付け必要な穴を骨内に穿設した。この例は2.0mmのネジに対応する穴を有するプレートに関するものである。1.7mmの穴を骨内に穿設した。その後2.0mmの直径を有する導電性のピンを市販の電気焼灼器に接続された電極上に装着した。そのピンは15%のカーボンブラックが混合されたポリ−D,L−ラクチドから形成した。
【0124】
患者は通常の方式で電気焼灼器の中性電極に接続した。ピンはプレートのネジ穴を予め穿設された孔内に取り付け電流を付加した(出力5ワット)。導電性のピンを介して電流が通流してそれを加熱した。骨とピンの移行部分において最大の電圧降下が生じるためピン内に最大の熱が発生し、それによってピンが特にその表面上で軟化した。そこで電極への緩やかな圧力によって骨中に予め穿設された穴内にピンを圧入することができ、熱可塑性材料が近傍の海綿状の骨の骨梁間隙内に流入した。電流の遮断後ポリマーが再び冷却され1分未満の間に硬化した。ここでいくらかオーバーサイズの(すなわちプレート穴より幅が大きい)ヘッドを有するピンがプレートを所要の場所に保持した。
【0125】
例2(プレート骨接合)
例1に対する変更例において上記のピンと同等な導電性の熱可塑性樹脂から製造された骨プレートを使用した。ピンは上記の例と同様に装着した。プレートも穴の領域において導電性でありその部分においてプレートとヘッドの溶融が可能になるため、ピンのヘッドがプレートと接触すると同時にプレートとピンの間の溶着が発生した。冷却後ピンとプレートが互いに固定的に結合し、その結合が角度固定式になった。
【0126】
例3(骨アンカ)
ここで解決すべき課題は、糸によって腱またはその他の骨断片を保持するための骨内の糸の固定であった。そのため3mmないし15mmの直径を有する穴を骨内に深く穿設した。骨の穴内に高い融点を有する糸を挿入した。その穴の上にその穴よりもいくらか太いアンカを装着した。そのアンカは1000Ω/スクウェアの導電性を有するポリピロールから形成した。
【0127】
例1と同様に電気焼灼器によってアンカに電流を付加し、電流の通流によって軟化した後骨内に圧入した。電流の遮断後ポリマーが硬化し、アンカが骨内で糸と共に保持された。
【0128】
例4(骨アンカ)
例3と異なって横断孔を介して糸をアンカ内に挿入し、その後アンカを骨内に挿入してそこで電極と固定した。その後破断した腱を糸によって固定した。ここで糸は牽引力によって保持した。同時に実施した電流の点入によってアンカが部分的に溶融し、小さな圧力によって糸に接着しそれによって骨内での固定力が得られた。約30秒以内の冷却後糸の牽引力を解除することができた。通常は必要である結び目が省略された。
【0129】
例5(補綴物の移植)
チタン製の歯科インプラントにおいて遠心側の1/3を導電性の熱可塑性樹脂によって被覆した。そのためインプラントを25%のカーボンブラックを含んだポリ−D,L−ラクチド溶液で複数回浸漬し、その際各浸漬工程の間に乾燥させた。上方の2/3の表面は絶縁のために小さな分子量を有する急速溶解性のポリラクチド−コ
−グリコリドによって同様に浸漬した。
【0130】
歯根先端と逆方の側部は電流源に接続した。インプラントをアンダーサイズに予穿設された穴内に設置して電流を点入した。電流が電極を介してインプラント内に通流しさらにポリマーならびに骨を介して流出すると同時に遠心側の末端の被覆が軟化し、インプラントを圧力によって穴に深く圧入することができた。骨内におけるポリマーの硬化によって負荷耐久性を有する骨とインプラントの間の一次結合が達成された。ポリラクチド−コグリコリドからなる被覆は数日内に分解されその後チタンインプラント上の骨の成長が可能になる。
【0131】
例6(血管クリップ)
クリップは止血のために血管を締めつける機能した。これは主に2本のアームと1個のヒンジとから形成した。アームは1個のバイポーラのクランプによって把持され血管がその間に保持された。アームに電流を付加して圧接した。電流によってヒンジが軟化しクリップの湾曲が可能になった。ヒンジと逆側の各アームの末端が互いに当接した際にそこにも電流が通流して両方のアームの溶融と所要の結合が達成された。
【0132】
例7(糸クリップ)
この実施形態においては、結び目を回避するために例6で記述したものと同様なクリップを糸の固定のために使用した。クリップは7mmの縦の長さを有し、同様な長さの2本のアームから形成した。アームの横径は3×3mmであった。
【0133】
例8(椎骨形成術)
第一腰椎の圧迫骨折を被った患者において、茎(局部麻酔された)を介して背側から4mmの直径を有する穴を椎体内に穿設した(長さ約4cm)。その穴を介して背側から未だ電流を付加せずにポリピロールを添加しそれによって1200Ω/スクウェアの導電性を達成したポリ−D−L−ラクチドのピン(直径3.9mm)を挿入した。ピン自体は外側に0.5mmの厚さのポリ−D−L−ラクチドからなる絶縁層が被覆され、0.6mmの直径の中央縦穴を備えていた。この縦穴内に電極と接続された0.55mmの金属棒(手術用スチール)が存在する。ここで電極に通電してピンを椎体内に挿入した。ピンがその先端上に絶縁層を有していないため、その部分で骨と接触して溶融する。ピンをさらに押し込むことによって(電極の位置を中央に保持、すなわちピンを壁厚の管のようにして電極上に深く押し被せる)、椎体へのポリ−D−L−ラクチドの充填を達成することができた。ピンは溶融に際して連続的にその先端上の絶縁層を喪失し、従ってピンの材料を継続的に溶融することによって椎体内にさらに押し込むことができた。2分間の冷却後椎体は負荷耐久性を有するとともに痛みが消えた。
【0134】
例9(電極設計)
ここでは極めて好適なインプラントと電極の構成について記述する:電極は例8と同様に電流が付加される個所の近くに挿入し得るように設計する。勿論この例においても電極は絶縁層を有していてその先端の7mmの長さのみが露出して導電性になっている。例8と同様に電極を中空のピン(15%のカーボンブラックを含んだポリラクチド製)内に挿入し、茎を介して椎体内に挿入した。ここで、電極を介して中空のピンを少ない抵抗で椎体内に挿入することができた。ここでは例8と異なってピンが茎壁に対して絶縁されていないが、電極が先端のみに電流を付加するためその先端のみが溶融する。臨床結果は例8と同様である。発展型の実施形態においては、電極の先端に温度センサを設けて、熱を測定するとともに制御回路を使用して電流源を制御することもできた。それによって過剰な発熱を追加的に防止することができた。
【0135】
例10(損傷充填)
例9で記述したものと同様なピンを骨の損傷の充填、ここでは脛骨頭損傷の充填のために使用した。そのため脛骨頭骨折を被った患者において直径4mmの穴を腹側から皮膚を介して患部に向かって穿設した(長さ2cm)。電流を付加しながらこの穴を介して骨の髄腔および海綿空間内にピンを挿入し、それによって複合骨接合術と同様な安定的な骨が形成された。その後その場所に挿入されたネジが溶融されたポリマー内で効果的に固定された。骨接合材料あるいは補綴物の存在下においてポリマーを追加的に溶融して流入させることによって同様な安定性が達成されることが判明した。
【0136】
例11(複合骨接合)
骨粗鬆症による大腿骨頸骨折の状況において、下記のように改良されたダイナミックヒップスクリューを大腿骨頸に移植した:内部に3mmの直径を有する追加的な縦孔を備えネジ山が設けられている先端部上に1mmの直径を有する10個の放射穴が設けられ、それによって中央孔と骨との間の交流が可能にされた。この中央孔内に例9と同様に絶縁化された2.9mmの直径を有するピンを挿入し、後方から電流を付加した。電流の付加によってピンがネジの内部で溶融して液化したポリマーが穴に沿って外の骨内に浸透し、それによってインプラントが保持された骨の補強が達成された。ポリマーの硬化後(2分)ネジは負荷耐久性となった。
【0137】
例12(ステント)
血管拡張の状況において、レントゲン医師が大腿口を介して心臓カテーテルを大腿血管内に設置しそのカテーテルを収縮した腎動脈内に挿入する。カテーテルの先端上には気球が取り付けられ、その周りに折り畳まれたポリピロール製のステント(直径1.5mm、長さ2cm)が設けられる。気球自体はモノポーラ導体でありステント内に折り畳まれて存在する。ここで気球に電流が付加され、その電流がステントを介して通流しこれを加熱および柔軟化する。ここで気球を膨張させて適正な血流が達成されるまでステントを延伸させることができる。電流を遮断しステントを冷却して硬化させ(40秒以内)、血管が開いたまま保持される。
【0138】
例13(メモリ効果)
射出成形によって骨アンカに予圧をもたせて製造する(PLA/ポリアニリン)。この冷却された状態においてアンカは直線状である(長さ10mm、直径3mm)。アイレットによってアンカの上部1/3に通された糸により、予め穿設された外踝の穴内に緩やかな圧力でアンカが押し込まれる。モノポーラで供給される電流による熱作用のためアンカの柔軟化がもたらされ湾曲する。それによってアンカが骨穴内に嵌合し機械的保持力が発生する。アンカ上の糸は30秒後に負荷をかけられるようになり、靭帯再形成のために使用することができる。
【0139】
例14(釘鎖錠)
骨接合のために大腿髄内釘を大腿骨内に挿入する。しかしながら患者は86歳で鎖錠を行うには遠心側において骨が脆弱過ぎるため、外科医は4mmの穴を側方から皮膚を介して釘に向かって穿設した。導電性樹脂からなる3.5mmのピンが穴を介して釘まで押し込まれた。ここでピンにモノポーラで電流を付加して髄管内に押し込み、その結果釘上でピンが継続的に溶融して流れ出して中空の髄管内に充満し、その際釘が埋め込まれた。インプラント材料が良好に髄腔内に分配されるように比較的高い出力(70ワット)を選択し、また過度に急速に冷却して硬化しないように高い熱容量を有するポリマーを選択した。電流の遮断後釘が確実に大腿骨の中心に固定された。
【0140】
次に、本発明ならびにその追加構成について添付の一部概略化した図面ならびに複数の実施例を参照しながら以下詳細に説明する。