(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ケースは、前記モータを駆動する電池を収容する電池収容部と、前記電池収容部を開閉可能に閉鎖する蓋部材とを有し、前記電池収容部の周囲に配置されて前記蓋部材により前記電池収容部を閉鎖した状態で、前記薬液が前記電池ボックスへ侵入するのを阻止する電池用のシール材が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の携帯用輸液ポンプ。
前記ケースは、外部電源を接続する電源アダプタ部を有し、前記電源アダプタ部には、取外し可能にはめ込んで閉鎖する電源アダプタ部用のシール材が配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の携帯用輸液ポンプ。
前記ケース内には警報を出すためのブザーやスピーカが収容されているとともに、前記後筐体には、液体の毛細管現象により該液体が侵入しない程度の孔径の複数の放音孔が形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の携帯用輸液ポンプ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
図1は、本発明の医療機器である携帯型の輸液ポンプのカセット収納部のカバー(透明)を閉じた概略斜視図であり、
図2はそのカセット収納部のカバーを開いた状態を示す概略正面図、
図3は輸液ポンプのカセット収納部のカバーを開き、カセットを収納した状態を示す概略斜視図である。
図1から
図3に示す輸液ポンプ10は、例えば、略矩形の本体(筐体)11を有している。本体11は、前筐体49と後筐体44を有する。本体11は、輸液ポンプ10の構成物を収容するためのケースであり、好ましくは、耐薬品性、耐衝撃性を有する熱可塑性合成樹脂、例えばハイインパクトスチロールやABS樹脂で形成されている。
【0014】
図1に示すように、本体11は、本体11の上面側のほぼ半分程度の面積を閉めるように、開閉可能なカバー12を有しており、該カバー12を、ヒンジ13を中心として回動可能として開閉できる。カバー12は、図示しない付勢手段、例えば、ヒンジ13の軸周りにトーションコイル等を配設することにより、
図2と
図3に示すように、常時開方向に付勢されている。カバー12を閉じて押し込むことにより、カバー12は本体11側の図示しないラッチ等に係合されるようになっており、本体11の側部外縁に突出する解除ボタン16,16を、矢印方向に手指にて押し込むことにより、該ラッチ等が解除されてカバー12を開けることができる。
【0015】
図1の前筐体49における符号17は、開始停止スイッチであり、この開始停止スイッチ17は、
図1において横方向に「停止−開始」のスライド操作をすることができる。符号18は液晶表示装置等で形成した表示部であり、運転状態や報知情報等を表示するようになっている。これらの他に、本体11は、図示しないモード選択スイッチ等を備えることができる。
前筐体49には、発光ダイオードランプのような点灯表示部LPが、表示部18の付近に配置されている。この点灯表示部LPは、例えば通常動作時は緑色で注入速度に応じた点滅または点灯で、異常時は赤色で点滅また点灯することにより輸液ポンプ10の動作状況を、例えば患者あるいは周囲の家族の人が目視で分かるようになっている。
また、後筐体44には、内蔵されたブザー88とスピーカ89からの音が使用者に聞き取れるように放音孔(開口部)310が配置されている。この放音孔(開口部)310から、ブザー88は警報内容を警報音で報知でき、スピーカ89は警報内容を鳴動することにより音声で報知することができる。この放音孔310の貫通孔の直径が小さすぎると液体が毛細管現象により外部から放音孔310を通じて後筐体44に侵入してしまうので好ましくない。このように、放音孔310の貫通孔の直径は、液体の毛細管現象による侵入を防ぐことができ、しかも医療用のテストピンが放音孔310に入らないような大きさを採用している。
【0016】
なお、このテストピンとは、いたずらにより細い部材を本体11の外部から放音孔310を通じて後筐体44の内面側に入れることを阻止するために、製品の製造工程で放音孔310の貫通孔の寸法を確認するのに使用されるテスト用のピンである。放音孔310の貫通孔の直径Dの範囲としては、防滴性を持たせるために、好ましくは1.4mm〜1.6mmの範囲である。放音孔310の貫通孔の直径Dが、1.4mmよりも小さいと、液体が毛細管現象により本体11の外部から放音孔310を通じて後筐体44の内面44B側に浸入してしまうので好ましくない。また、スピーカ音,ブザー音が聞き取れにくくなる。一方、開口部310の貫通孔の直径Dが、1.6mmよりも大きいと、テストピンが入ってしまったり、液体が浸入するので好ましくない。
【0017】
図2と
図3に示すように、本体11からカバー12を開くと、カセット収納部15が露出するようになっている。カセット収納部15は、本体11の厚みの約半分程度の寸法で形成された空間であり、この空間であるカセット収納部15には、
図3に示すように、輸液チューブ21を引きこみかつ導出するためのカセット20を着脱可能にセットすることができるようになっている。
【0018】
本体11のカセット収納部15内には、
図1から
図3には図示していないが駆動部としてのモータが配置されている。また、カセット収納部15上には、輸液送り部としてのロータユニット31と、閉塞検出部83が配置されている。このモータの出力軸からの駆動力が、ロータユニット31に対して図示しない皿歯車等を介して伝達されることにより、ロータユニット31が軸Lを中心にして回転する。
図2に示すように、このロータユニット31の外周には、例えば、4か所以上の図示例では5つの回転ローラである輸液チューブ押圧部31Rが設けられており、ロータユニット31の輸液チューブ押圧部31Rが
図2の矢印方向の回転することにより、順次
図3に示す輸液チューブ21を順次押圧して、輸液チューブ21に対して蠕動様運動を付与することができる。このロータユニット31は、外部から薬液を導入するための輸液チューブ21に対して圧接し、この輸液チューブ21に対して蠕動様運動をさせて、薬液を送出するための輸液送り部の一例である。本発明の実施形態では、ロータユニット31を用いて蠕動様運動させて薬液を送出しているが、これに限らず、フィンガ方式で薬液を送出するようにしても良い。
【0019】
図1から
図3に示す上記閉塞検出部83は、カセット20がカセット収納部15内に収納されたことを検出して、カセット20の輸液チューブ21の内部が閉塞されているか否かを検出する。この閉塞検出部83には、カセット検出用の突起部材99が設けられている。この突起部材99は、
図1と
図2に示す付勢部材133の力により、カセット収納部15内においてC方向に沿って突出している。しかし、
図3に示すように、カセット20がカセット収納部15内に収納された状態では、突起部材99は、
図1と
図2に示す付勢部材133の力に抗してD方向に押されることで、
図2に示すスイッチ134がオンとなり、このスイッチ134のオン信号は制御部100に通知されるようになっている。すなわち、閉塞検出部83は、輸液チューブ21内が閉塞されて輸液チューブ21の直径が大きくなったことを検出することで、薬液が輸液チューブ21内に通過していないことを制御部100に通知するものである。
【0020】
図2に示すように、カセット収納部15には、このロータユニット31の付近の上方位置に、第1のスライダ32と、該第1のスライダ32に隣接して第2のスライダ33が配置されている。第1のスライダ32と第2のスライダ32はそれぞれ係止片を備えており、これら係止片は、付勢手段により常時矢印C方向に付勢されている。しかも、第1のスライダ32と第2のスライダ33のそれぞれ係止片は、後述するカセット20がカセット収納部15にセットされる際に矢印D方向に移動されて、カセット20を保持するとともに、該カセット20に内蔵された可撓性の輸液チューブ21をロータユニット31に対して押圧することができる。
図2において、第2のスライダ33の右方の下側には、カセット20をカセット収納部15に配置する際の目印となる傾斜部34aを有するマーク34と、該マーク34の下方にはカセット20を装着する際のストッパとして機能する突起部35が設けられている。
【0021】
図3を参照して、カセット20の構造例を説明する。
カセット20は、合成樹脂で形成された図示のような横長のケース体である。輸液チューブ21の一部分は、カセット20内に収容されており、輸液チューブ21は該ケース体の外縁に沿って矢印F方向から導入され、カセット20の右端部でほぼU字状に曲折され、そして矢印E方向に導出されている可撓性輸液チューブ(輸液チューブともいう。)である。該輸液チューブ21に対しては、薬液が外部から矢印F方向に導入され、矢印E方向に導出され、輸液チューブ21の該矢印E方向の延長には留置針などが接続されており、輸液チューブ21内の薬液がこの留置針を通じて患者に対して輸液される。
【0022】
図3に示すように、輸液チューブ21内の輸液の移動を目視できるように、カバー12とカセット20は好ましくは透明部材で作られている。なお、カバー12には切欠き部19が設けられており、該切欠き部19から輸液チューブ21がカバー12の外部に導出されるようになっている。
また、
図3に示すように、カセット20の下部の一端寄りには露出部24が形成されており、該露出部24はカセット20の一部を切欠き、輸液チューブ21の一部を外部に露出させている。この輸液チューブ21の露出部24には、ロータユニット31の輸液チューブ押圧部31R(
図2を参照)が押圧されることで、
図3に示すように蠕動様運動が輸液チューブ21に付与されるようになっている。
【0023】
図3のカセット20のほぼ中央部には、横に並んで2つの係合用スリット22,23が形成されており、これらスリット22,23はカセット20のケース体を貫通している。
スリット22,23には、
図2で説明した第1のスライダ32と第2のスライダ33がそれぞれ入り込むようになっている。そして、
図3に示すように、カバー12を矢印A方向に閉じた際には、ヒンジ13よりも該カバー12の内側に設けられた当接部14がカセット20を押すことにより、該カセット20がカセット収納部15において矢印B方向に移動される。
【0024】
このカセット20の矢印B方向への移動により、各係合用スリット22,23に入り込んだ第1のスライダ32と第2のスライダ33の付勢方向(
図2の矢印C方向)に働く付勢力に抗して、第1のスライダ32と第2のスライダ33を矢印D方向に移動させることができる。これにより、カセット20は、カバー12を閉止した状態においては、カバー12の押圧部14と第1のスライダ32と第2のスライダ33に挟まれて固定されるとともに、輸液チューブ21はロータユニット31側に押圧されている。
【0025】
図3に示すカセット20には、縦スリット25a及び横スリット25bを有する逆L字状の規制用スリット25が形成されている。縦スリット25aにはストッパ26が収容されており、そのストッパ26の先端の当接部は付勢手段26aにより矢印C方向に常時押圧されており、カセット20内の図示しない箇所で、輸液チューブ21の一部を押し潰して輸液チューブ21内の輸液の流れを止めている。横スリット25bには、スライダ29が配置されている。
図3のように、本体11のカセット収納部15内にカセット20を収納してカバー12を閉じると、カセット20の横スリット25bのスライダ29が、ストッパ26を付勢手段26aの力に抗して矢印D方向に押し込むことにより、ストッパ26の先端部は輸液チューブ21から離れる。これにより、輸液チューブ21は開放されて輸液チューブ21内の輸液の流れ止めは解除でき、輸液チューブ21には輸液を導入でき、ロータユニット31の輸液チューブ押圧部31Rの動きにより患者に対して輸液チューブ21を通じて薬液を送液できる。このとき、送液される設定流量の範囲は、例えば5〜300mL/hであり、輸液ポンプ10の総重量は、電池を入れた状態で約320gである。
【0026】
次に、
図4を参照して、上述した輸液ポンプ10の電気的な構成を説明する。
図4は、輸液ポンプ10の電気的な構成を示すブロック図である。
図4に示すブロック図では、本体11の前筐体49と後筐体44と、カバー12を示しており、カバー12側にはカセット20とこのカセット20の輸液チューブ21が配置されている。後筐体44には、ジャック78と電源回路80と電池(乾電池もしくは充電池)Bが配置され、ジャック78と電池Bが電源回路80に対して電気的に接続されている。ジャック78は、電源コネクタ127を介して、例えば100Vの商用交流電源に接続可能である。電源コネクタ127は、100Vの交流電源を所定の直流電圧に変換して電源回路80に供給する。
【0027】
図4に示すように、前筐体49には、ロータユニット31と、空液検出部82と、閉塞検出部83を備えている。ロータユニット31は、ギア31Gを介してモータMに連結されており、モータMはモータ駆動回路81からの駆動信号により、ロータユニット31を連続回転させることができる。回転検出回路81Tは、モータMの回転状態を検出して制御部100にモータの回転状態信号を送る。電源回路80は、モータ駆動回路18と制御部100とショックセンサ200に電気的に接続されており、モータ駆動回路18と制御部100に対して電源供給を行う。
【0028】
図4の空液検出部82と閉塞検出部83は制御部100に電気的に接続され、空液検出部82は、輸液チューブ21内が薬液により満たされているか気泡が存在するかを検出して、制御部100に通知する。閉塞検出部83は、輸液チューブ21が閉塞されて輸液チューブ21の直径が大きくなったことを検出することで、薬液が輸液チューブ21内に通過していないことを制御部100に通知する。
開始停止スイッチ17は、開始停止検出回路84に電気的に接続され、開始停止検出回路84は、開始停止スイッチ17が、
図1に示す開始位置に位置されているか停止位置に位置されているかを検出して、その状態を制御部100に通知する。制御部100はマイクロコンピュータなどのCPUとCPUにより実行される装置全体の制御プログラムや各種データを記憶するROMとワークエリアとして測定データや各種データを一時的に記憶するRAMなどを備え、各工程での処理、判断を行なう。メモリ部111は、CPU110との間で情報を記憶したり、記憶した情報を読み出したりするもので、しかもメモリ部111はCPU110により処理すべきプログラムが記憶されているROM(読み出し専用メモリ)をも含んでいる。
【0029】
図4の表示部18は、制御回路18Tに電気的に接続され、点灯表示部LPは、制御回路85に電気的に接続されている。制御回路18Tと制御回路85は制御部100に電気的に接続され、制御部100の指令により、制御回路18Tは表示部18に必要な内容を表示させる。また、制御部100の指令により、制御回路85は点灯表示部18を例えば点滅させて、患者に点滅により警報があることを報知することができる。
ブザー88は、ブザー回路90に電気的に接続され、スピーカ89は、音声回路91に電気的に接続されている。ブザー回路90と音声回路91は、制御部100に電気的に接続されている。その他に、外部通信回路101が制御部100に電気的に接続されている。
【0030】
図4のブロック図に示すように、輸液ポンプ10は、ショックセンサ200と内部バッテリ201を有している。
図4に示すショックセンサ200は、本体11に加わる衝撃力を検出すためのセンサであり、例えば本体11の前筐体49内に配置されている。内部バッテリ201は、電源オフ時にショックセンサ200に電源を供給するためのバックアップ用のバッテリであり、例えばボタン電池である。
【0031】
図5は、本体11の前筐体49を後筐体44から取り外して、前筐体49の内部と後筐体44の内部を露出させた状態を示す斜視図である。
図6は、前筐体49と後筐体44と、前筐体49から取り外された駆動操作部600を示す斜視図である。
図5に示すように、前筐体49は、複数本のネジNを外すことで、後筐体44から取り外すことができる。前筐体49の内部には、メイン基板400と、メイン基板400に付属の回路基板401と、駆動操作部600等が配置されている。
図5に示すように、後筐体44の内部には、電源基板500と、スピーカ89と、ブザー88と、電池収容部としての電池ボックスBXと、モータMと減速ユニットを機械的に保持するためのサポート部599等が配置されている。メイン基板400には、
図4に示す前筐体49側の制御部100等の各要素が配置されており、電源基板500には、
図4に示す後筐体44側の電源回路80等の各要素が配置されている。メイン基板400のサイズは、電源基板500のサイズよりも大きい。メイン基板400と電源回路500は、配線ハーネス499により電気的に接続されている。
【0032】
図6では、駆動操作部600は前筐体49から取り外されており、しかも駆動操作部600の表側が示されている。
図6を参照すると、駆動操作部600が前筐体49から取り外されているので、前筐体49の内面49Nには、複数の開口部441,442,443が現れている。この開口部441は、第1のスライダ32を前筐体49の内部から前筐体49の表側に露出させるためのほぼ長方形の穴である。同様にして、開口部442は、第2のスライダ32を前筐体49の内部から前筐体49の表側に露出させるための長方形の穴である。そして、開口部443は、ロータユニット31を前筐体49の内部から前筐体49の表側に露出させるために、このロータユニット31を通している円形の穴である。このロータユニット31は、前筐体49内に固定されるベース445に搭載されている。
【0033】
図7は、駆動操作部600の構造例を示す斜視図である。
図7に示すように、駆動操作部600は、ロータユニット31と、電動のモータMと、減速ユニット444と、すでに説明した第1のスライダ32と第2のスライダ33と、ベース445を有している。駆動操作部600のプラスチック製のベース445の表面449には、ロータユニット31と第1のスライダ32と第2のスライダ33が搭載されている。ロータユニット31は、ベース445の第1端部446側に配置されている。第1のスライダ32と第2のスライダ33は、ベース445の第2端部447側に寄せてしかも並べて配置されている。
モータMと減速ユニット444からなる組み立て体は、取り付け具450を用いて、ベース445の第1端部446に固定されている。ベース445の第2端部447は、カバー12(
図2を参照)に連結されている。
【0034】
ところで、患者が主に在宅で使用することを想定している通常の携帯型の輸液ポンプは、輸液チューブ内を通す薬液が、病院内で使用される場合に比べて、誤ってケースにかかってしまうリスクが高い。そのため、薬液がケースの例えばローラユニット(回転ローラ)の付近の開口部等からケース内に侵入して、モータ等にかかってしまい内部故障を起こす可能性がある。このように、モータに薬液がかかってモータ等の動作が停止すると、輸液ポンプは、患者に対して時間当たり薬液を決められた量だけ長時間かけて注入する輸液動作を行えなくなる可能性がある。
そこで、
図5と
図6に示す本発明の実施形態の携帯型の輸液ポンプ10は、本体(ケース)11内の要素であるモータM等に対する薬液等の液体の侵入を確実に防いで、輸液ポンプ10が内部故障を起こさないようにして薬液を注入する輸液動作を行うことができるようにするために、以下に説明する幾つかのシール材を用いている。なお、これらのシール材は、薬液だけではなく、水分等の液体をも本体11の内部に侵入させない機能を有する。
【0035】
以下に説明するシール材は、パッキンとも呼ぶことができる。シール材は、輸液ポンプ10において薬液や水分等の液体が輸液ポンプ10の本体11内に侵入しないようにする部品や素材である。シール材の材質としては、例えば天然ゴムの他にニトリルゴム、シリコンゴム、アクリルゴム、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴムなどの合成ゴム、四フッ化エチレンゴム樹脂等を採用できるが、本発明の実施形態では、特に好ましい例としてシリコンゴムを使用している。
【0036】
図6では2種類のシール材700,750を示しており、
図7ではシール材750がベース445に装着されている例を示している。シール材700のサイズはシール材750のサイズよりも大きく、シール材750はシール材700の内側に位置されている。
図6に示すシール材700は、本体(ケース)11密閉用のシール材である。すなわち、シール材700は、前筐体49の接合部49Sと後筐体44の接合部44Sの間に配置されることで、前筐体49と後筐体44の外側と前筐体49と後筐体44の内側との隙間を埋めて密閉して、薬液等の液体が、前筐体49と後筐体44の接合部49S、44Sを通じて、前筐体49と後筐体44の内部に入らないようにする機能を有する。
シール材700は、前筐体49の4辺の接合部49Sと後筐体44の4辺の接合部44Sに配置できるように、図示例では長方形状に形成されている細長い材料により、エンドレス状に作られている。
【0037】
図8(A)と
図8(B)は、前筐体49と後筐体44の接合部に配置されるシール材700の形状例を示す図である。
図8に示すシール材700は、断面が例えば円形状であり、2つの短辺部701,702と2つの長辺部703,704を有している。短辺部701は、
図6に示すベース445の第2端部447を通すために長い輪の形状部分705を有している。短辺部702は、前筐体49の形状に合わせるために変形部分706を有している。モータMの出力軸は、モータMの出力軸の回転を減速するための減速ユニット444の出力軸に機械的に連結されている。
これにより、シール材700は、前筐体49と後筐体44の接合部49S、44S間で挟んで押し潰すことで、前筐体49と後筐体44の外部と前筐体49と後筐体44の内部とを密閉して、薬液等の液体が前筐体49と後筐体44の接合部49S、44Sを通じて、前筐体49と後筐体44の内部に入らないようにする。従って、薬液等の液体が、前筐体49と後筐体44の接合部49S、44Sを通じて、モータMや減速ユニット444、メイン基板400と電源基板500等の本体11内の各要素に対して侵入が無いようにすることができる。このため、輸液ポンプ10は、内部故障を起こさずに薬液を注入する輸液動作を連続して行うことができる。
【0038】
次に、
図6と
図7に示すシール材750は、モータMや減速ユニット付近に配置されて、モータM等を守るためのモータ等を密閉するためのシール材である。
図6と
図7に示すシール材750は、ベース445の表面449において、ロータユニット31と第1のスライダ32と第2のスライダ33を囲むようにして配置され、細長い材料によりエンドレス状に作られている。
図9は、シール材750の形状例を示している。
図9に示すように、シール材750は、断面が例えば円形状であり、第1辺部751、第2辺部752、第3辺部753、第4辺部754、第5辺部755、そして第6辺部756を有している。第1辺部751は、最も長く、第1辺部751の両端部には第2辺部752と第3辺部753が連続している。第2辺部752は、直線部分752Aと円弧部分752Bを有している。第3辺部753と第4辺部754は、第1辺部751よりも短く、第4辺部754は第3辺部753に連続している。
【0039】
第5辺部755は第4辺部754に連続しており、第5辺部755は、直線部分755Aと円弧部分755B有している。第6辺部756は、第2辺部752と第5辺部755の間に連続している。
図7を参照すると、第1辺部751、第2辺部752の直線部分752Aと第3辺部753と第4辺部754は、第1のスライダ32と第2のスライダ33の周囲を囲んでいる。第2辺部752の円弧部分752Bと、第5辺部755と第6辺部756は、ロータユニット31の周囲を囲んでいる。
このシール材750をベース445の表面449に配置して固定し、このシール材750を前筐体49に内面49Nを押し当てて潰す。これにより、薬液等の液体が、
図6に示す前筐体49の外側から前筐体49の開口部441だけでなく、開口部442,443を通じて、前筐体49の内部に侵入したとしても、薬液等も液体はシール材750の存在により、シール材750の範囲外へ侵入することが阻止される。従って、薬液等の液体が、シール材750の外側のモータMや減速ユニット444、メイン基板400と電源基板500等の本体11内の要素に対して侵入するのを防ぐことができる。このため、輸液ポンプ10は、内部故障を起こさずに薬液を注入する輸液動作を連続して行うことができる。
【0040】
図10は、モータMと減速ユニット444の付近に配置される別のシール材800を示している。
図11(A)は、シール材800付近の部分870の断面を示し、
図11(B)と
図11(C)は、シール材の形状例を示している。
図10に示すシール材800は、モータMと減速ユニット444に対して薬剤や水分等の液体が侵入しないようにするために、ベース445の第1端部446と減速ユニット444の間に配置されている。シール材800は、図示例ではリング状に形成されている。
図10に示すように、減速ユニット444は出力軸444Pを有している。シール材800は、ベース445の第1端部446と取り付け具450の間に配置されている。シール材800は出力軸444Pに通されている。取り付け具450は、モータMと減速ユニット444の組み立て体を、複数のネジ450Nを用いてベース445の第1端部446に固定している。
【0041】
図11(A)に示す部分は、
図10の部分870を拡大して示している。
図11(B)と
図11(C)に示すように、シール材800は、第1面部801、第2面部802、2つの凹部803、穴部804を有している。2つの凹部803は、
図11(A)に示すネジ691の頭部691Hを避けるために半円形状に形成されている。
図11(B)に示すシール材800の厚みDP1は例えば2.3mmである。穴部804は、円形の内周部805,806、テーパー部807により形成され、内周部805の内径IS1は例えば6.8mmであり、内周部806の内径IS2は例えば7mmであるので、
図11(A)に示す内径の差SSは0.2mmである。シール材800の外径IS3は、例えば11.7mmである。また、
図11(A)では、2つの凹部803の深さIS4を示しており、この深さIS4は例えば0.3mmである。ネジ691は、取り付け具450を減速ユニット444側に固定しており、凹部803はこのネジ691の頭部691Hを避けるために形成されている。
【0042】
図11(A)に示すように、このシール材870がベース445の第1端部446と取り付け具450の間に配置された状態では、シール材800の厚みDP1は厚みDP2まで押し潰された状態で配置される。すなわち、厚みDP1は2.3mmからDP2の2.0mmまで押し潰され、この押し潰し量DP3は0.3mmである。
これにより、シール材800を配置して押し潰すことで、薬液等の液体が、ベース450の第1端部446側から、減速ユニット444とモータM側に侵入するのを阻止する。このため、薬液等の液体が、モータMや減速ユニット444、そしてメイン基板400と電源基板500等の本体11内の要素に対して侵入するのを防ぐことができる。このため、輸液ポンプ10は、内部故障を起こさずに薬液を注入する輸液動作を連続して行うことができる。
【0043】
図12は、輸液ポンプ10の電池ボックス900を示す斜視図である。
図12に示す電池収容部としての電池ボックス900は、
図6にも示すように後筐体44側に設けられており、電池ボックス900には、蓋部材901がヒンジ902を用いてRR方向に開閉可能に取り付けられている。この電池ボックス900内には、2本の電池Bが着脱可能に装着できる空間903を有している。シール材950が、後筐体44の表面であってこの電池ボックス900の周囲の4辺の溝部分905に固定されている。
このシール材950は、蓋部材901により電池ボックス900を閉じた状態で、電池ボックス900内の電池Bに対して薬剤等の液体が侵入しないようにするために、図示例では長方形状に形成されている。シール材950は、長辺の第1辺部951と第2辺部952と、短辺の第3辺部953と第4辺部954を有している。
従って、シール材950が蓋部材901により押し潰されることで、薬液等の液体が、電池ボックス900の内の電池Bばかりでなく、
図6に示す輸液ポンプ10内のモータMや減速ユニット444、そしてメイン基板400と電源基板500等の本体11内の要素に対して侵入するのを防ぐことができる。このため、輸液ポンプ10は、内部故障を起こさずに薬液を注入する輸液動作を行うことができる。
【0044】
図13は、オス型のジャック78を収容している電源アダプタ部970を示している。この電源アダプタ部970は、
図1にも示すように、後筐体44の側面部に配置されており、空間部975と、ジャック78と、円形の穴部976を有する。
埋め込み式の蓋部材980は、シリコンゴムにより作られており、電源アダプタ部970をシールするためのシール材である。蓋部材980は、板状の曲げ変形部分981と、ほぼ円柱型のはめ込み部分982を有している。曲げ変形部981は空間部975を閉じ、はめ込み部分982は穴部976を閉じるようになっている。これにより、埋め込み式の蓋部材980は、電源アダプタ部970の空間部975と、ジャック78と、円形の穴部976を、開閉可能に閉鎖できる。
【0045】
従って、シール材としての埋め込み式の蓋部材980は、電源アダプタ部970に押し込むことで、薬液が、電源アダプタ部970内のジャック78ばかりでなく、
図6に示す輸液ポンプ10内のモータMや減速ユニット444、そしてメイン基板400と電源基板500等の本体11内の要素に対して侵入するのを防ぐことができる。このため、内部故障を起こさずに薬液を注入する輸液動作を連続して行うことができる。
本発明の実施形態の輸液ポンプ10では、シール材を用いることにより、モータ等のケース(本体)11内の要素に対する薬液等の液体の侵入を防ぐことができ、輸液ポンプ10の内部故障を起こさず、薬液を注入する輸液動作を連続して行うことができる。
【0046】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明は様々な修正と変更が可能であり、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変形が可能である。
本発明の実施形態の輸液ポンプ10では、シール材700,750,800,950,シール材としての埋め込み式の蓋部材980の形状は、図示例に限定されず、前筐体49、後筐体44、モータM等の要素の形状に合わせて任意に選択できる。また、シール材750に対して、シール材700、800,950の全部あるいはシール材700、800,950を任意に組み合わせて使用できる。