特許第5897892号(P5897892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5897892
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】演色グラス
(51)【国際特許分類】
   A47G 19/22 20060101AFI20160324BHJP
【FI】
   A47G19/22 B
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-272372(P2011-272372)
(22)【出願日】2011年12月13日
(65)【公開番号】特開2013-123469(P2013-123469A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】508115299
【氏名又は名称】有限会社パラダイスグラス
(74)【代理人】
【識別番号】100091465
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 久夫
(72)【発明者】
【氏名】岩内 和生
【審査官】 村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭43−019659(JP,Y1)
【文献】 実開昭61−131979(JP,U)
【文献】 実開平05−051169(JP,U)
【文献】 特開2003−131599(JP,A)
【文献】 特開2002−249344(JP,A)
【文献】 特開2007−118203(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/128678(WO,A1)
【文献】 独国特許出願公開第19949457(DE,A1)
【文献】 特開平08−299144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 19/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄光してグラス全体を発光させるようにした演色グラスであって、
グラス本体(11)は透明又は半透明の有底筒状をなし、グラス本体(11)の底面は収納凹部(11A)と蓋(14)とによる密封構造を有し、該密閉構造内は充填状態の液状シリコン(13)を備えており、該液状シリコン(13)には50μm〜150μmの範囲内の大きさの平均粒径で液状シリコン(13)に対して40重量〜70重量%の範囲内の量の蓄光顔料が含まれ、該蓄光顔料は液状シリコン(13)中で沈降された状態の高密度層をなしている一方、
グラス本体(11)の下部外側面は表面が凹凸の繰り返しとなった光乱反射層(12)で覆われており、該光乱反射層(12)の外表面はグラス本体外方への光の透過抑制するフロスト加工面となっていることを特徴とする演色グラス。
【請求項2】
上記蓋(14)の材料は鏡面加工表面を有するステンレス鋼である請求項1記載の演色グラス。
【請求項3】
上記光乱反射層(12)は、氷粒形状の透明又は半透明の部材又は複数の氷粒形状を線状に連続させた山脈形状の透明又は半透明の部材上記グラス本体(11)の下部外側面を覆ってなる構造を有している請求項1記載の演色グラス。
【請求項4】
上記グラス本体(11)の底面密閉構造内は上記透明又は半透明の液状シリコン(13)中の蓄光顔料の高密度層の下側に白色の液状シリコンの層を有している請求項1記載の演色グラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は演色グラスに関し、特にグラス底部が厚く重くなることがなく、優れた演色性を得ることができるようにしたグラスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ショットバーやカフェバーでは周囲を薄暗くするとともに静かなミュージックをながす一方、カクテルなどの飲み物を入れたグラスに上方からスポット照明をあてて手元を明るくし、静かで落ち着いた雰囲気をかもしだすことが行われている。
【0003】
他方、グラスの底部を二重構造とし、LEDと電源とを内蔵し、スポット照明を用いることなく、グラスの底部を発光させるようにした演色グラスが提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、グラスの搭載面内にLEDを設けるとともに電源を内蔵し、載せたグラスを下方から照明するようにした発光コースタも提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−345957号公報
【特許文献2】特開2006−20926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1記載の演色グラスではグラス底部が厚くなるので、デザインが損なわれやすくて商品性が低下するばかりでなく、グラスが重くなって取扱いが煩わしい。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑み、グラス底部が厚く重くなることがなく、優れた演色性を得ることができるようにした演色グラスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る演色グラスは、蓄光してグラス全体を発光させるようにした演色グラスであって、グラス本体は透明又は半透明の材料を用いて有底筒状に製作され、グラス本体の底面には収納凹部が形成され、該収納凹部には液状シリコンが充填されて蓋によって密封され、該液状シリコンには50μm〜150μmの範囲内の大きさの平均粒径を有する蓄光顔料が液状シリコンに対して40重量〜70重量%の範囲内の量だけ混合され、上記蓄光顔料が液状シリコン中を沈降することによって、液状シリコン内には蓄光顔料の高密度層が形成されている一方、グラス本体の下部外側面には表面が凹凸の繰り返しとなった光乱反射層が下部外側面を覆って形成され、該光乱反射層の外表面にはフロスト加工が施され、グラス本体外方への光の透過が抑制されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の特徴の1つはグラス底面の収納凹部に、透明な液状シリコンを充填して蓋で密封し、液状シリコンには蓄光顔料を混合して沈降させ、液状シリコン内に蓄光顔料の高密度層を形成するようにした点にある。これにより、蓄光顔料の高密度層に対して光、例えば紫外線域の光を照射することによって蓄光させ、光の照射を停止させると、蓄光顔料が発光する。
【0010】
蓄光顔料の平均粒径を50μm〜150μmの範囲内の大きさとしたのは、50μm未満では沈降させるのに長い時間を必要とするばかりでなく、十分な厚みのある蓄光顔料の高密度層が形成され難い一方、150μmを超えると、蓄光顔料の高密度層が厚くなりすぎて高密度層の下部まで光が十分に到達し難くくなるおそれがあるからである。
【0011】
また、蓄光顔料の量を液状シリコンに対して40重量〜70重量%の範囲内の量だけ混合するようにしたのは、40重量%未満では蓄光顔料の高密度層の厚みが確保できない一方、70重量%を超えると、蓄光顔料の高密度層が厚くなりすぎて高密度層の下部まで光が十分に到達し難くくなるおそれがあるからである。
【0012】
ところで、透明又は半透明のグラスの場合、グラス底部で発光させると、その光が外方に透過してしまい、特に透明なグラスの場合にはほとんど発光していないような印象を受ける。
【0013】
本発明の第2の特徴はグラスの下部外側面に光乱反射層を形成し、光乱反射層の外表面にはフロスト加工を施すようにした点にある。これにより、グラス底部で発光した光はグラス下部の乱反射層で乱反射されてグラスの形状内に戻され、グラスを透過して外方に漏れ出る光は少ないので、グラス全体を明るく発光させることができる。
【0014】
また、液状シリコンを透明としているので、蓄光顔料で発光した光はグラス底部を透過しやすくなる。しかも、液状シリコンの底方を蓋で密封しているので、蓄光顔料で発光した光は蓋で反射されてグラス内に向かうこととなるので、グラス全体をより一層明るく発光させることができる。
【0015】
ここで、蓋の機能を考慮すると、蓋の表面が鏡面加工されているので好ましい。また、演色グラスは絶えず洗浄され、耐水性が要求されるので、蓋はステンレス鋼で製作されるのが好ましい。
【0016】
また、光乱反射層は下部外側面には表面が凹凸の繰り返しとなった形状に形成されていればよく、例えば氷粒形状の透明又は半透明の部材又は複数の氷粒形状を線状に連続させた山脈形状の透明又は半透明の部材がグラス本体の下部外側面を覆うように固着されることにより形成されることができる。
【0017】
光乱反射層はグラス本体と同じ材料、具体的にはガラス材料で製作されるのがよい。この場合、フロスト加工法は、フッ酸やフッ化水素酸を用いたケミカルフロスト加工法を採用することができる。
【0018】
また、蓄光顔料を混合した透明又は半透明の液状シリコンを収納凹部に入れた後、白色の液状シリコンを収納凹部に入れると、蓄光顔料の高密度層の下側に白色液状シリコンの層ができ、蓄光顔料の発光輝度をさらにアップさせることができる。
【0019】
また、上述の演色グラスと演色グラスに対して光を照射する発光素子との組合せも斬新である。即ち、本発明によれば、蓄光してグラス全体を発光させるようにした演色グラス装置であって、演色グラスと発光素子とから構成され、上記演色グラスは、グラス本体は透明又は半透明の材料を用いて有底筒状に製作され、グラス本体の底面には収納凹部が形成され、該収納凹部には液状シリコンが充填されて蓋によって密封され、該液状シリコンには50μm〜150μmの範囲内の大きさの平均粒径を有する蓄光顔料が液状シリコンに対して40重量〜70重量%の範囲内の量だけ混合され、上記蓄光顔料が液状シリコン中を沈降することによって、液状シリコン内には蓄光顔料の高密度層が形成されている一方、グラス本体の下部外側面には表面が凹凸の繰り返しとなった光乱反射層が下部外側面を覆って形成され、該光乱反射層の外表面にはフロスト加工が施され、グラス本体外方への光の透過が抑制され、上記発光素子は上記演色グラスの蓄光顔料の高密度層に対して上方又は斜め上方から紫外線域の光を照射するようになっていることを特徴とする演色グラス装置を提供することができる。
【0020】
この演色グラス装置は非フタル酸系塩化ビニル、シリコン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂に蓄光顔料と骨材を混合して構成され、演色グラスが載置される蓄光コースタを更に備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る演色グラスの好ましい実施形態を示す斜視図である。
図2】上記実施形態における乱反射層の例を示す図である。
図3】上記実施形態におけるグラス本体の断面図である。
図4】上記実施形態における下部の断面構造を示す図である。
図5】上記実施形態における蓄光コースタの例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を図に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1ないし図4は本発明に係る演色グラスの好ましい実施形態を示す。図において、演色グラス10はグラス本体10は透明なガラス材料を用いて概略円筒状に成形され、グラス本体10の底面には収納凹部11Aが形成され、収納凹部11Aは上面が断面円弧状をなし、収納凹部11Aの下端縁には段部11Bが形成されている。
【0023】
この収納凹部11A内には透明な液状シリコン13が例えば1.5mm〜3mm程度の厚さに入れられ、透明液状シリコン13の下側には白色の液状シリコン16が例えば2mm程度入れられ、段部11Bに蓋14を嵌め込むことによって液状シリコン13、16が封入され、蓋14には表面が鏡面加工されたステンレス鋼板が用いられている。
【0024】
透明な液状シリコン13内には50μm〜150μmの範囲内の大きさの平均粒径、例えば60μm〜100μmの範囲内の平均粒径を有する蓄光顔料が液状シリコン13に対して40重量〜70重量%の範囲内の量、例えば50重量%〜60重量%混合されている。この液状シリコン13に混合された蓄光顔料は液状シリコン13内を下方に沈降し、透明液状シリコン13と白色液状シリコン16の境界に1mm程度の厚さの蓄光顔料の高密度層15が形成されている。
【0025】
また、グラス本体11の下部外側面には光乱反射層12が下部外側面を覆って形成されている。光乱反射層12は図2の(a)に示されるような氷粒形状の透明(又は半透明)なガラス部材又は図2の(b)に示されるような複数の氷粒形状を線状に連続させた山脈形状の透明(又は半透明)なガラス部材をグラス本体11の下部外側面を覆うように固着することにより形成され、表面は凹凸を繰り返した表面となっている。
【0026】
この光乱反射層12の外表面にはフッ酸又はフッ化水素酸を用いたケミカルフロスト加工法が施され、例えば600メッシュ〜1200メッシュの範囲内の大きさの微小凹凸が形成され、グラス本体11の外方への光の透過を抑制するようになっている。
【0027】
本例の演色グラス10を用いる場合、使用する直前にLEDランプを用い、紫外線域の光を演色グラス10の上方又は斜め上方から当てる。すると、演色グラス10の蓄光顔料の高密度層15に蓄光される。この演色グラス10に飲み物を注いだ後、薄暗い雰囲気の中に置くと、蓄光顔料から光が発生される。
【0028】
演色グラス10の下部外側面に光乱反射層12が形成され、しかも光乱反射層12の外表面にはフロスト加工が施されているので、演色グラス10の底部で発光した光は演色グラス10下部の光乱反射層12で乱反射されて演色グラス10の形状内に戻され、グラスを透過して外方に漏れ出る光は少なく、演色グラス10の全体を明るく発光させることができる。
【0029】
演色グラス10の底部の液状シリコン13は蓋14で密封されているので、演色グラス10を洗浄しても液状シリコン13が漏れ出ることはない。
【0030】
このとき、図5に示される蓄光コースタ20の上に演色グラス10を載せ、LEDランプで照明して蓄光させると、演色グラス10だけでなく、コースタ20も発光するので、雰囲気をさらに盛り上げることができる。
【0031】
図5に示される蓄光コースタ20は非フタル酸系塩化ビニル、シリコン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂に蓄光顔料と骨材を混合してコースタ21を製造し、目板に嵌め込むようにしているが、コースタ21だけを用いるようにしてもよい。
【0032】
なお、上記の例では白色の液状シリコンの層を形成するようにしたが、この白色の液状シリコンの層は必ずしも設ける必要はない。
【符号の説明】
【0033】
10 演色グラス
11 グラス本体
11A 収納凹部
12 光乱反射層
13 液状シリコン
14 蓋
15 蓄光顔料の高密度層
16 白色の液状シリコン
図1
図2
図3
図4
図5