特許第5897917号(P5897917)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5897917
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】積層体及び積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/24 20060101AFI20160324BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20160324BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20160324BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20160324BHJP
   B41M 5/50 20060101ALI20160324BHJP
   B41M 5/52 20060101ALI20160324BHJP
【FI】
   B32B27/24
   B32B27/18 Z
   C09D11/00
   B41M5/00 B
   B41M5/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-20360(P2012-20360)
(22)【出願日】2012年2月1日
(65)【公開番号】特開2013-158934(P2013-158934A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2014年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田林 勲
(72)【発明者】
【氏名】土方 康之
(72)【発明者】
【氏名】並木 崇
【審査官】 岸 進
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−181193(JP,A)
【文献】 特開2012−006278(JP,A)
【文献】 特表平04−502634(JP,A)
【文献】 特開2011−012226(JP,A)
【文献】 特開2009−132845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C09D11/00−13/00
B41M 5/00
B41M 5/50− 5/52
B05D 1/00− 7/26
B29C63/00−65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、樹脂、アルコールアミンを含み、前記樹脂は乳濁しているインク組成物が記録媒体上に塗布されており、塗布された前記インク組成物がある側を被覆層が被覆しているものであり、
前記アルコールアミンは、メチル−ジエタノールアミンであることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記樹脂は酸価5mgKOH/g以上を有することを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記樹脂はアクリル系樹脂であることを特徴とする請求項に記載の積層体。
【請求項4】
前記インク組成物は、シリコーン系界面活性剤を含まないことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
前記被覆層はフィルムであり、当該フィルムの前記塗布された前記インク組成物がある側に粘着層があることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
前記記録媒体はフィルムであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項7】
記録媒体上に水、樹脂、アルコールアミンを含み、前記樹脂は乳濁しているインク組成物を塗布する塗布工程と、
前記記録媒体の塗布された前記インク組成物がある側に被覆層を設ける被覆工程と、を含み、
前記アルコールアミンは、メチル−ジエタノールアミンであることを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項8】
前記被覆工程は、粘着層が設けられたフィルムを用いて、当該粘着層が前記塗布された前記インク組成物に貼られるように前記フィルムを前記記録媒体に熱圧着することによってフィルムを前記塗布された前記インク組成物に貼り合せる工程であることを特徴とする請求項に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層体及び積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には水性インク組成物が記載されている。この水性インク組成物はインクジェットプリンタにより印刷する際に安定して吐出することを目的としている。
【0003】
また、特許文献2には、段ボール面に印字するためのインクジェット記録用インクが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−197166号公報
【特許文献2】特開2011−12226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクジェットプリンタで用いるインクにおいては、ノズルの目詰まりがより少ないことによる吐出安定性と、印刷後におけるより優れた光沢性(平滑度(グロス))とが要求されている。
【0006】
また、印刷後の記録媒体にフィルム等の被覆層をラミネートする場合において、被覆層と記録媒体との接着強度をより強くすることが要求されている。
【0007】
特許文献1に記載の水性インク組成物では、これらの要求を全て十分に満たすものではない。特許文献2には、記録媒体にインクを塗布した後、被覆層でラミネートすることについては記載されていない。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みて成されたものであり、ノズルの目詰まりがより少ないことによる優れた吐出安定性により製造でき、光沢性に優れ、ラミネートされた被覆層と記録媒体との接着強度が強い積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る積層体は、水、樹脂、アルコールアミンを含み、前記樹脂は乳濁しているインク組成物が記録媒体上に塗布されており、塗布された前記インク組成物がある側を被覆層が被覆しているものであること特徴としている。
【0010】
アルコールアミンを含むことにより、インク組成物を吐出するときのヘッドが有する温度において、当該インク組成物は皮膜を作り難くなるので、ノズルの目詰まりがより少なくなり、吐出安定性が良好になる。
【0011】
また、アルコールアミンを含むことにより、印刷後において、より優れた光沢性を発揮する。
【0012】
また、アルコールアミンを含むことにより、塗布されたインクと被覆層との間に、界面活性剤等の接着を阻害する物質がブリードする(滲み出る)ことを防ぐので、被覆層と記録媒体との接着強度がより強い。
【0013】
本発明に係る積層体では、前記アルコールアミンは、メチル−ジエタノールアミンであることがより好ましい。
【0014】
ノズルの目詰まりがより少ないことによる吐出安定性、印刷後における光沢性、ラミネートされた被覆層と記録媒体との接着強度が、より良好となる。
【0015】
本発明に係る積層体では、前記樹脂は酸価5mgKOH/g以上を有することがより好ましい。
【0016】
ノズルの目詰まりがより少ないことによる吐出安定性、印刷後における光沢性、ラミネートされた被覆層と記録媒体との接着強度が、より良好となる。
【0017】
本発明に係る積層体では、前記樹脂はアクリル系樹脂であることがより好ましい。被覆層を形成する樹脂成分がアクリル樹脂で、インクに使用する樹脂がアクリル樹脂の場合には本発明において得に優れた効果を示す。
【0018】
本発明に係る積層体では、シリコーン系界面活性剤を含まないことがより好ましい。
【0019】
シリコーン系界面活性剤は、一般に光沢性を良好とするために用いられる。しかし、シリコーン系界面活性剤は、記録媒体に着弾後のインクの表面に滲み出てくるため、フィルム等をラミネートすると接着強度が劣化する。そこで、シリコーン系界面活性剤を含まないことによって、より強い接着強度を発揮できる。
【0020】
一方、一般のインクの場合、シリコーン系界面活性剤を含まないことにより光沢性が劣化するが、本発明においてはアルコールアミンを含んでいることにより、良好な光沢性を発揮できる。
【0021】
よって、印刷後においてより優れた光沢性を発揮し、且つ、被覆層をラミネートした場合の被覆層と記録媒体と接着強度がより強くなる。
【0022】
本発明に係る積層体では、前記被覆層はフィルムであり、当該フィルムの前記塗布された前記インク組成物がある側に粘着層があってもよい。
【0023】
粘着層が、塗布されたインクの層に、より強い強度で貼り付いている。よって、フィルムが剥がれ難い。
【0024】
本発明に係る積層体では、前記記録媒体はフィルムであってもよい。本発明は記録媒体として、フィルムを好適に用いることができる。
【0025】
本発明に係る積層体の製造方法は、記録媒体上に水、樹脂、アルコールアミンを含み、前記樹脂は乳濁しているインク組成物を塗布する塗布工程と、前記記録媒体の塗布された前記インク組成物がある側に被覆層を設ける被覆工程と、を含むことを特徴としている。
【0026】
上記インク組成物を用いているので、より強い強度で被覆層と記録媒体とが接着された積層体を製造できる。また、上記インク組成物は吐出安定性に優れているので、製造し易く、また、得られるインク組成物の皮膜の光沢性も優れている。
【0027】
本発明に係る積層体の製造方法では、前記被覆工程は、粘着層が設けられたフィルムを用いて、当該粘着層が前記塗布された前記インク組成物に貼られるように前記フィルムを前記記録媒体に熱圧着することによってフィルムを前記塗布された前記インク組成物に貼り合せる工程であってもよい。
【0028】
上記インク組成物を用いているため、粘着層が塗布されたインクの層に強い強度で貼り付いている。よって、フィルムが剥がれ難い積層体を製造できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ノズルの目詰まりがより少ないことによる優れた吐出安定性により製造でき、印刷後におけるより光沢性に優れ、ラミネートされた被覆層と記録媒体との接着強度がより強い積層体を提供できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0031】
<積層体>
本発明に係る積層体は、水、樹脂、アルコールアミンを含み、前記樹脂は乳濁しているインク組成物が記録媒体上に塗布されており、塗布された当該インク組成物がある側を被覆層が被覆しているものであり、ラミネート加工物ともいえる。
【0032】
〔水〕
本発明に係る積層体に用いるインク組成物は水を含んでいる。水の含有量は、インクの用途等に応じて適宜定めればよく、例えば、インク組成物の全量に対して20重量%以上であることがより好ましく、また、例えば、80重量%以下であることがより好ましい。
【0033】
〔樹脂〕
本発明に係る積層体に用いるインク組成物は樹脂を含んでおり、当該樹脂は乳濁している。水に乳濁しているため、水性エマルションを形成しているともいえる。
【0034】
樹脂の例としては、水溶性のビニル系樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等、及びこれらの変性樹脂等が挙げられる。この中でも、より好ましくは、アクリル系樹脂、水溶性ポリウレタン系樹脂、水溶性ポリエステル系樹脂、水溶性アクリル系樹脂であり、特に好ましくはアクリル系樹脂である。被覆層を形成する樹脂成分がアクリル樹脂で、インクに使用する樹脂がアクリル樹脂の場合には本発明において得に優れた効果を示す。
【0035】
また、本発明に係る積層体に用いるインク組成物に含まれる樹脂は、酸価5mgKOH/g以上を有することが好ましく、10mgKOH/g以上がより好ましい。ノズルの目詰まりがより少ないことによる吐出安定性、印刷後における光沢性、ラミネートされた被覆層と記録媒体との接着強度が、より良好となる。
【0036】
本発明に係る積層体に用いるインク組成物に含まれる樹脂は1種単独で用いることも2種以上を併用することも出来る。樹脂の配合量は、使用する樹脂の種類等により任意に決定できるが、例えば、インク組成物の全量に対して、1重量%以上であり、2重量%以上がより好ましく、また、20質量%以下であり、10質量%以下であることがより好ましい。
【0037】
〔アルコールアミン〕
本発明に係る積層体に用いるインク組成物はアルコールアミンを含んでいる。
【0038】
水性エマルションを形成しているインクにアルコールアミンを含むことにより、ノズルの目詰まりがより少ないことによる吐出安定性、印刷後におけるより優れた光沢性、被覆層をラミネートした場合の被覆層と記録媒体とのより強い接着強度を実現できる。
【0039】
通常、水性エマルションを形成するインクにおいて、吐出安定性及び光沢性を実現するためには、特許文献1に記載のようにシリコーン系界面活性剤をインクに含ませることが考えられる。しかし、シリコーン系界面活性剤をインクに含ませると、着弾したインクの表面にシリコーン系界面活性剤が滲み出る(ブリードする)。よって、当該着弾したインクの上からフィルム等をラミネートしても、ブリードしたシリコーン系界面活性剤がフィルム等の接着を阻害して、十分な接着強度(ラミネート強度)が得られない。
【0040】
一方、シリコーン系界面活性剤をインクに含ませないと、十分な吐出安定性及び光沢性を得られないと考えられていた。
【0041】
しかし、本発明に係る積層体に用いるインク組成物は、アルコールアミンを含有することにより、シリコーン系界面活性剤を含まなくても、常温においては塗膜を形成し難くなることによりノズルの目詰まりを防止して、優れた吐出安定性を得ることができる。また、光沢性にも優れている。さらに、シリコーン系界面活性剤を含まなくてもよいので、また、含んでいてもブリードすることを防止できるので、フィルム等の被覆層で覆う場合においても当該被覆層と着弾したインクとの間の接着強度を強くすることができるのである。
【0042】
本発明に係る積層体に用いるインク組成物が含むアルコールアミンの具体例としては、インクの用途等に応じて適宜定めることができ、例えば、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン等のアルカノールアミン、芳香族アミノアルコール、また、1級、2級、3級アルコールなどは区別なく使用することができる。具体的には、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、メチルエタノールアミン、メチル−ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、エチルエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリメチルエタノールアミンなどである。中でも、メチル−ジエタノールアミン(以下、「MDA」という。)がさらに好ましい。
【0043】
本発明に係る積層体に用いるインク組成物におけるアルコールアミンの含有量は、インクの用途等に応じて適宜定めればよく、例えば、インク組成物全量に対して、0.1重量%以上であることがより好ましく、また、例えば、2.0重量%以下であることがより好ましい。
【0044】
〔着色剤〕
本発明に係る積層体に用いるインク組成物は、着色剤を含んでもよい。着色剤は、顔料でもよく、染料でもよい。
【0045】
顔料、染料の具体的な構成は特に限定されるものではなく、インクの用途等に応じて適宜選択することができる。
【0046】
本発明に係る積層体に用いるインク組成物における着色剤の含有量は、インクの用途等に応じて適宜定めればよく、例えば、インク組成物全量に対して、1重量%以上であることがより好ましく、また、例えば、15重量%以下であることがより好ましい。
【0047】
〔インク組成物のその他の成分〕
本発明に係る積層体に用いるインク組成物は、上述した構成以外に、他の成分を適宜含んでもよい。例えば、接着性を阻害しない程度に、水溶性有機溶剤、防腐剤、防カビ剤、表面張力調整剤を含んでもよい。
【0048】
水溶性有機溶剤としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エチレングリコールのモノエーテル誘導体、ジエチレングリコールのモノエーテル誘導体、トリエチレングリコールのモノエーテル誘導体等のグリコールエーテル類、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2、4−ヘキサンジオール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、テトラメチル尿素、尿素等が挙げられる。これらは1種でもよく、複数種を混合してもよい。
【0049】
本発明に係る積層体に用いるインク組成物における水溶性有機溶剤の含有量は、インクの用途等に応じて適宜定めればよく、例えば、インク組成物全量に対して、10重量%以上であることがより好ましく、また、例えば、60重量%以下であることがより好ましい。
【0050】
また、本発明に係る積層体に用いるインク組成物では、上述のようにシリコーン系界面活性剤を含まなくても、優れた吐出安定性、光沢性を発揮できる。また、被覆層を設けた場合の当該被覆層と記録媒体との接着強度をより強くする観点から、本発明に係る積層体に用いるインク組成物は、シリコーン系界面活性剤を含まないことがより好ましい。なお、シリコーン系界面活性剤としては、例えば特許文献1に記載のシリコーン系化合物が挙げられる。
【0051】
〔記録媒体〕
記録媒体の具体例としては、積層体の使用目的等に応じて適宜選択すればよく、紙、布帛、又は、樹脂、金属等を含むフィルム若しくは塊状体等、様々なものが挙げられる。
【0052】
〔被覆層〕
本発明に係る積層体において、インク組成物が塗布された面の記録媒体を被覆する被覆層の構成については、積層体の使用目的等に応じて様々なものを選択できる。例えば、フィルムでもよく、被覆層を形成する材料をインクジェットやスクリーン印刷で塗布して膜化したものであってもよい。フィルムとしては、例えば、樹脂、金属等により構成されるフィルムが挙げられる。
【0053】
例えば、本発明に係る積層体の一実施形態としては、被覆層はフィルムであり、片面、つまり、記録媒体に塗布されたインク組成物がある側に粘着層があり、当該インク組成物が塗布された記録媒体上にラミネートしているものが挙げられる。
【0054】
本発明に係る積層体は、記録媒体上に上述のインク組成物が塗布されているので、被覆層の接着強度(ラミネート強度)が強い。
【0055】
<積層体の製造方法>
本発明に係る積層体の製造方法は、記録媒体上に水、樹脂、アルコールアミンを含み、前記樹脂は乳濁しているインク組成物を塗布する塗布工程と、前記記録媒体の前記塗布された当該インク組成物がある側に被覆層を設ける被覆工程と、を含めばよい。
【0056】
塗布工程では、例えば、従来公知のインクジェット記録装置、スクリーン印刷装置等を用いて、上述のインク組成物を記録媒体上に塗布すればよい。
【0057】
被覆工程では、被覆層を記録媒体における塗布されたインク組成物がある側に設ければよい。例えば、被覆層がフィルムである場合は、フィルムを貼り付ければよい。より具体的には、被覆工程は、粘着層が設けられたフィルムを用いて、当該粘着層が前記塗布された当該インク組成物に貼られるように前記フィルムを前記記録媒体に熱圧着することによってフィルムを前記塗布された当該インク組成物に貼り合せる工程であってもよい。
【0058】
また、被覆工程では、被覆層を構成する材料を、記録媒体における塗布されたインク組成物がある側にインクジェットやスクリーン印刷により、直接塗布してもよい。
【0059】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。また、本明細書中に記載された文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【実施例】
【0060】
〔インクの配合〕
実施例及び参考例として、インクは次のように調製した。即ち、インク全量を100重量%として、ジエチレングリコールモノブチルエーテル15重量%、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル15重量%、水性アクリル樹脂6.5重量%、顔料分散液15重量%(最終濃度が顔料5重量%、アクリル分散剤3重量%、水7重量%となるように水に顔料をアクリル分散剤で予め分散させた物。顔料としてはカーボンブラック、CIピグメント120(イエロー)、CIピグメント122(マゼンタ)、CIピグメントC15:3(シアン)の4種類を用いた。)、後述の表1に示す量でMDA又はTEAを配合し、残部をイオン交換水とした。MDA及びTEA以外の成分をベースインクと表記する。なお、後述の結果は4種類の顔料を含む4種類のインク組成物について全て同じであった。
【0061】
また、比較例として、MDA及びTEAを配合せずに、表面調整剤(シリコーン系表面調整剤1.0重量%)を加えた以外は実施例と同じ方法で作製したものを比較例1のインク組成物とし、MDA及びTEAを配合しない以外は実施例と同じ方法で作製したものを比較例2のインク組成物とした。
【0062】
〔ラミネート強度〕
ラミネート強度については、次のようにして評価した。
【0063】
まず、実施例、参考例及び比較例のインクをメディア(SPC−0441:白塩化ビニル光沢)上にインクジェットで塗布した後、印刷面に対して2kgの荷重をかけながらスキージでフィルム(SPC−0714:UVラミG)の貼り付けを行ない、積層体を得た。
【0064】
次に、島津社のオートグラフを用いてT型剥離法(剥離速度300mm/min)により剥離強度の測定を行なった(積層体寸法:25mm×100mm、破断点までの平均を1試験体の接着力とする)。その結果、剥離強度が7以上を丸、7未満3より大を三角、3以下をバツとして評価した。
【0065】
〔光沢〕
上記のラミネート強度を評価する際に得た積層体の表面の光沢を、光沢度計(ミノルタ社製、MULTIGLOSS268、光沢20°、光沢60°)を用いて測定した。比較例2の結果を三角として、比較例2より光沢のあったものを丸、無かったものをバツとして評価した。
【0066】
〔吐出安定性〕
上記のラミネート強度を評価する際に用いた積層体を製造するときに、実施例、参考例及び比較例のインク組成物を吐出する間のノズル詰まりが起こるか否かで吐出安定性を評価した。インク組成物をミマキエンジニアリング社製のインクジェットプリンタで、3m印刷を行ない、インク吐出量を極小にしてインクを吐出させた。良好にインクが吐出されれば丸、乾燥等により塗膜が形成し、インクの吐出が不良であればバツと評価した。
【0067】
〔ノズル復旧性〕
インク組成物をミマキエンジニアリング社製のインクジェットプリンタで印刷を行なった。吐出が不良となった後に、当該プリンタに搭載されているクリーニングシステムを使用して、1回のクリーニングにより回復すれば丸、2〜3回のクリーニングにより回復すれば三角、3回のクリーニングで回復しなかった場合はバツと評価した。
【0068】
【表1】
【0069】
〔結論〕
表1に示されるように、アルコールアミンを添加すると、ラミネート強度、光沢、と出安定性、ノズル復旧性に優れることが分かった。さらにアルコールアミンとしてMDAを用いると、ラミネート強度及びノズル復旧性がさらに優れることが分かった。アルコールアミンが無い比較例1では、表面調整剤を加えているので光沢及び吐出安定性に優れていたが、ラミネート強度が弱かった。また、アルコールアミンも表面調整剤も入れない場合は、表面調整剤がブリードしないためラミネート強度は十分であったが、光沢、吐出安定性に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、様々な印刷物のラミネートに利用することができる。