(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリスチレン系樹脂と、炭素数3〜5の炭化水素及び水を含む物理発泡剤と、臭素系難燃剤とを溶融混練してなる発泡性ポリスチレン系樹脂組成物を押出して押出発泡体を製造する方法において、該水の配合量が、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して0.5重量部以上であり、該発泡性ポリスチレン系樹脂組成物に、脂肪族ポリエステル系樹脂が配合されており、該脂肪族ポリエステル系樹脂の配合量が、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して5重量部以下(ただし、0は含まず。)であることを特徴とするポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
前記脂肪族ポリエステル系樹脂が、ガラス転移温度120℃以下の非晶性脂肪族ポリエステル系樹脂、及び/又は融点120℃以下の結晶性脂肪族ポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
前記臭素化ビスフェノールA系難燃剤が、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)及びテトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)であることを特徴とする請求項3に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
前記臭素系難燃剤の総配合量が、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して1重量部以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリスチレン系樹脂材料に気泡調整剤を加え、押出機で加熱溶融混練後、物理発泡剤を添加して発泡性樹脂組成物とし、この発泡性樹脂組成物を高圧域から低圧域に押出すことにより発泡させ、さらに押出機のダイ出口に連結した賦形具などにより板状に賦形することにより、ポリスチレン系樹脂押出発泡体(以下、単に押出発泡体ともいう。)を得る方法が知られている。
【0003】
前記押出発泡体の製造方法における発泡剤としては、ジクロロジフルオロメタン等の塩化フッ化炭化水素(以下、CFCという)や水素原子含有塩化フッ化炭化水素(以下、HCFCという)が広く使用されていた。これらの発泡剤は、発泡性に優れ、さらに気体としての熱伝導率も低く押出発泡体中にも長期に残存することから、低見掛け密度で断熱性にも優れる押出発泡体を得ることが可能であった。
【0004】
一方、前記押出発泡体を建築用の断熱材として使用するには、例えばJIS A9511(2006)記載の押出ポリスチレンフォーム保温板の燃焼性規格を満足するような高度な難燃性が要求される。そのために、押出発泡体には難燃剤が添加されており、難燃剤としては、ヘキサブロモシクロドデカンなどの臭素系難燃剤が広く使用されてきた。
【0005】
しかし、地球環境保護の観点から、近年は、オゾン破壊係数が0(ゼロ)であるとともに、地球温暖化係数も小さいイソブタンやイソペンタン等の飽和炭化水素が発泡剤として用いられるようになっている。
【0006】
ここで、飽和炭化水素は可燃性であるため、建材用途に要求される低見掛け密度の(発泡倍率の高い)押出発泡体を飽和炭化水素のみで製造すると、難燃剤を添加しても所望の難燃性を達成しにくくなる。そこで、押出発泡体の発泡剤としては、一般に、飽和炭化水素と共に、塩化アルキルやアルキルエーテル、二酸化炭素、水等の押出発泡体から早期に散逸する発泡剤(早期散逸性発泡剤)が併用されている。早期逸散性発泡剤の併用により飽和炭化水素の配合量を減らすことで、難燃性を有しかつ低見掛け密度の押出発泡体を製造することが可能となった。
【0007】
これらの早期散逸性発泡剤の中でも、環境面を考慮すると、水を使用することが望まれる。しかしながら、水を含む混合発泡剤を用いた場合、発泡体の発泡倍率を高めるために水の添加量が多量になってくると、得られる押出発泡体は小径の小気泡と大径の大気泡が混在する、所謂双峰分布の気泡構造になってしまうという問題があった。
【0008】
小さすぎる気泡を含む気泡構造の押出発泡体は、機械的強度が低下しやすく、さらに二次加工も難しくなる。また、小気泡が発生してしまうと、発泡体の見掛け密度を低くすることが難しくなるので、小気泡の発生を防止して、単峰分布の気泡構造の押出発泡体とすることが望ましい。
【0009】
小気泡の発生を防止して単峰分布の気泡構造を形成する技術として、特許文献1には、ポリマー溶融液における水の溶解度を上げて押出発泡体を製造する技術が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法について詳細に説明する。
本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法においては、ポリスチレン系樹脂、難燃剤及び発泡剤を押出機にて溶融混練して得られた発泡性ポリスチレン系樹脂組成物を、ダイを通して高圧の押出機内より低圧域に押出して発泡させることにより、ポリスチレン系樹脂押出発泡体(以下、単に押出発泡体、又は発泡体ともいう。)が製造される。この際、該ダイの出口に、平行あるいは入口から出口に向かって緩やかに拡大するよう設置された上下2枚のポリテトラフルオロエチレン樹脂等からなる板で構成される装置(以下、ガイダーとも言う。)や成形ロール等の成形具を配置し、押出された発泡体を該成形具を通過させることによって、板状に賦形することができる。
【0018】
本発明におけるポリスチレン系樹脂としては、例えばスチレン単独重合体やスチレンを主成分とするスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、、スチレン−メチルスチレン共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体(MS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)等が挙げられる。上記スチレン系共重合体におけるスチレン単位成分含有量は50モル%以上が好ましく、特に好ましくは80モル%以上である。
【0019】
本発明の目的、作用、効果が達成される範囲内において、上記ポリスチレン系樹脂にはその他の重合体を混合してもよい。その他の重合体としては、ポリエチレン系樹脂(エチレン単独重合体及びエチレン単位成分含有量が50モル%以上のエチレン共重合体)、ポリプロピレン系樹脂(プロピレン単独重合体及びプロピレン単位成分含有量が50モル%以上のプロピレン共重合体)、ポリフェニレンエーテル樹脂などの熱可塑性樹脂、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体水添物、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体水添物、スチレン−エチレン共重合体などの熱可塑性エラストマー等が挙げられ、これらの他の重合体は、ポリスチレン系樹脂中で好ましくは30重量%未満となるように、特に好ましくは0〜10重量%となるように、目的に応じて混合することができる。
【0020】
本発明においては、前記発泡性ポリスチレン系樹脂組成物に、脂肪族ポリエステル系樹脂が配合される。脂肪族ポリエステル系樹脂を配合することにより、発泡時に小気泡の発生を防止すると共に気泡を拡大して単峰分布の気泡構造を有する低見掛け密度の押出発泡体を得ることができる。
脂肪族ポリエステル系樹脂を配合することにより、小気泡の発生を防止し、気泡を拡大できる理由は定かではないが、水のポリスチレン系樹脂中への溶解度を向上させる程の配合量ではなく極少量の配合でも前記効果が得られていることから、脂肪族ポリエステル系樹脂がポリスチレン系樹脂に微細に分散しやすく、微細に分散した脂肪族ポリエステル系樹脂がポリスチレン系樹脂組成物中への水の分散性を向上させることにより小気泡の発生を抑えると共に、界面活性剤的な作用により気泡を拡大しているものと推察される。
【0021】
本発明で用いられる脂肪族ポリエステル系樹脂としては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分単位を主たる構成成分とする重合体、脂肪族多価カルボン酸成分単位と脂肪族多価アルコール成分単位とを主たる構成成分とする重合体が挙げられる。
【0022】
前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体としては、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸などの重合体、もしくはこれらの共重合体を例示することができる。
【0023】
前記脂肪族ポリエステル系樹脂中の脂肪族多価カルボン酸成分単位としては、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられ、これらの脂肪族多価カルボン酸成分単位は、単独であってもよく2種以上であってもよい。なお、多価カルボン酸成分単位には、本発明の所期の目的を阻害しない範囲において、テレフタル酸などの芳香族多価カルボン酸成分単位が少量含まれていてもよく、その量は、多価カルボン酸成分単位中に50mol%以下であることが好ましく、より好ましくは40mol%以下である。
【0024】
前記脂肪族系樹脂中の脂肪族多価アルコール成分単位としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオールを挙げることができ、これらの脂肪族多価アルコール成分は、単独であってもよく2種以上であってもよい。
【0025】
前記脂肪族ポリエステル系樹脂は、例えば少量の安息香酸,ベンゾイル安息香酸,メトキシポリエチレングリコール等のごとき単官能化合物から誘導される成分単位によって分子末端を封止されていてもよい。また、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多官能化合物から誘導される成分単位を少量含んでいてもよい。
【0026】
本発明においては、脂肪族ポリエステル系樹脂として、ガラス転移温度120℃以下の非晶性脂肪族ポリエステル系樹脂、及び/又は融点120℃以下の結晶性脂肪族ポリエステル系樹脂を用いることが好ましい。これらの脂肪族ポリエステル系樹脂を用いると、押出発泡時に、脂肪族ポリエステル系樹脂がポリスチレン系樹脂中で十分に変形可能なため、気泡を破壊しにくく、さらに小気泡の発生を防ぎつつ気泡を拡大させやすくなる。かかる観点から、非晶性脂肪族ポリエステル系樹脂のガラス転移温度は、100℃以下が好ましく、より好ましくは80℃である。また、結晶性脂肪族ポリエステル系樹脂の融点は、100℃以下が好ましく、より好ましくは80℃である。
【0027】
本発明においては、ガラス転移温度120℃以下の非晶性脂肪族ポリエステル系樹脂として非晶性ポリ乳酸が好ましいものとして挙げられる。
【0028】
なお、本発明において、「非晶性」とは、脂肪族ポリエステル系樹脂を熱流束示差走査熱量測定(以下、DSC測定と言う。)により200℃で10分間保持した後冷却速度10℃/分で冷却した際に得られるDSC曲線において求められる発熱ピークの熱量が5J/g以下(0を含む。)、好ましくは3J/g以下(0を含む。)、より好ましくは0であることを意味する。
【0029】
本発明において、前記非晶性脂肪族ポリエステルのガラス転移温度は、次のように求められる。JIS K7121(1987)に記載の「一定の熱処理を行った後、ガラス転移温度を測定する場合」(試験片の状態調節における加熱速度と冷却速度は、いずれも10℃/分とする。)を採用し、熱流束示差走査熱量測定装置(以下、DSC装置という。)を使用し、加熱速度10℃/分で得られるDSC曲線に基づいて測定される中間点ガラス転移温度を本発明におけるガラス転移温度とする。
【0030】
融点120℃以下の結晶性脂肪族ポリエステルとしては、例えば、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリオール、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートサクシネートが挙げられる。
【0031】
本発明において、前記結晶性脂肪族ポリエステルの融点は、次のように求められる。JIS K7121(1987)に記載の「一定の熱処理を行った後、融解温度を測定する場合」(試験片の状態調節における加熱速度と冷却速度は、いずれも10℃/分とする。)を採用し、熱流束示差走査熱量測定装置(以下、DSC装置という。)を使用し、加熱速度10℃/分で得られるDSC曲線に基づいて測定される融解ピーク温度を本発明における融点とする。
【0032】
前記脂肪族ポリエステル系樹脂の配合量は、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して5重量部以下(ただし、0を含まず。)である。小気泡の発生をより効果的に防ぐためには、その配合量の下限は、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して0.005重量部であることが好ましく、0.01重量部であることがより好ましく、更に好ましくは0.05重量部であり、特に好ましくは0.1重量部である。一方、一般に脂肪族ポリエステル系樹脂はポリスチレン系樹脂に比べて機械的物性に劣り、また発泡を阻害することがあるので、該配合量が多すぎると、得られる押出発泡体の機械的物性が低下しやすくなるため、該配合量の上限は、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して、5重量部であり、好ましくは4重量部であり、より好ましくは3重量部であり、さらに好ましくは2重量部、特に好ましくは1重量部である。
【0033】
本発明においては、炭素数3〜5の炭化水素及び水を含む物理発泡剤が用いられる。前記炭素数3〜5の飽和炭化水素としては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタンなどが挙げられる。これらの炭素数3〜5の飽和炭化水素の中では、発泡性の点からプロパン、ノルマルブタン、イソブタンあるいはこれらの混合物が好ましい。また、得られる発泡体の断熱性能の点からノルマルブタン、イソブタンあるいはこれらの混合物が好ましく、特に好ましくはイソブタンである。難燃性の観点から、上記飽和炭化水素の配合量は、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して4重量部以下が好ましく、より好ましくは3.5重量部以下である。一方、低見掛け密度の押出発泡体を得る上で、押出発泡時の安定性や押出直後の発泡体の収縮を防ぐという観点からは、該配合量の下限は1重量部程度である。
【0034】
本発明における物理発泡剤は、水を含むものであり、水を用いることにより前記炭化水素の添加量を抑えつつ低見掛け密度の押出発泡体を得ることができる。かかる観点から、水の配合量は、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して0.5重量部以上
であり、好ましくは0.7重量部以上である。また、水の配合量が多すぎると、ダイ内で水が分離しやすくなり、発泡体の表面に穴が発生しやくなることから、その上限は1.5重量部が好ましく、より好ましくは1.2重量部である。
【0035】
本発明における物理発泡剤には、有機系物理発泡剤や無機系物理発泡剤などのその他の物理発泡剤を配合することができる。
前記有機系物理発泡剤としては、例えば、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル類、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどのアルコール類、蟻酸メチル、蟻酸エチルプロピオン酸メチルなどのカルボン酸エステル類、塩化メチル、塩化エチルなどのハロゲン化アルキルなどが挙げられる。また、フッ化炭化水素の中でも、地球温暖化係数の小さい1、3、3、3−テトラフルオロプロペンなどのハイドロフルオロオレフィン等を用いることもできる。前記無機系物理発泡剤としては、例えば二酸化炭素などが挙げられる。
これら、その他の物理発泡剤は、単独または2種以上混合して使用することができる。
【0036】
また、前記物理発泡剤に加えて化学発泡剤を用いることもできる。該化学発泡剤としては、例えばアゾ化合物、テトラゾールなどの化学発泡剤などが挙げられる。
【0037】
前記その他の物理発泡剤の中では、発泡性、発泡体成形性、押出発泡体の寸法の早期安定性などの点から、塩化メチル、塩化エチル、ジメチルエーテル、メタノール、エタノール、蟻酸メチル、二酸化炭素が好ましく、環境面を考慮すると、二酸化炭素が特に好ましい。
【0038】
本発明における発泡剤の総配合量(圧入量)は、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して、2〜10重量部が好ましく、3〜8重量部がより好ましい。発泡剤の総配合量が少なすぎると、得られる押出発泡体の見掛け密度が高くなり、発泡体としての軽量、断熱などの特性が発揮されにくくなる。発泡剤の総配合量が多すぎると、押出発泡体中にボイドなどの不良が生じやすくなる。
【0039】
本発明においては、前記ポリスチレン系樹脂と前記物理発泡剤とに加えて、難燃性を付与するために臭素系難燃剤が配合されて、溶融混練してなる発泡性ポリスチレン系樹脂組成物が押出されて押出発泡体が製造される。
【0040】
上記臭素系難燃剤としては、例えば、ヘキサブロモシクロドデカンやテトラブロモシクロオクタンなどの臭素化脂環式炭化水素系難燃剤、臭素化ビスフェノール系難燃剤、臭素化イソシアヌレート系難燃剤、臭素含有リン化合物系難燃剤、臭素含有ポリスチレン系難燃剤等、従来公知のものが挙げられる。これらの臭素系難燃剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0041】
本発明において、臭素化ビスフェノール系難燃剤とは下記式(1)で示される、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、又はこれらの誘導体の臭素化物である。
【0042】
【化1】
[式中,Zは、CH
3−C−CH
3、CH
2、SO
2から選ばれる有機基、R
4,R
5は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、−Y−Xで表される有機基(式中,Yは炭素数1〜6のアルキレン基、Xはエポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、フェニル基である)、およびフェニル基のうちから選ばれるもの、および、これらの原子及び原子団のうち、少なくとも1つの水素原子が臭素原子に置換されている有機基である。尚、R
4,R
5の原子及び原子団は相互に異なる有機基であっても同じものであってもよい。]
【0043】
臭素化ビスフェノール系難燃剤の具体例としては、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールS−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールS−ビス(2,3−ジブロモ−2メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールF、テトラブロモビスフェノールF−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールF−ビス(2,3−ジブロモ−2メチルプロピルエーテル)テトラブロモビスフェノールA−ビス(アリルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAポリカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAオリゴマーのエポキシ基付加物等が挙げられる。上記の臭素化ビスフェノ−ル系難燃剤の中でも、特に、テトラブロモビスフェノ−ルAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、が、ポリスチレン系樹脂との混練時において分解しにくく、難燃効果も高く発現し易いため好ましい。更に、テトラブロモビスフェノ−ルA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)とテトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2メチルプロピルエーテル)とを併用すると、難燃性に優れた押出発泡体となると共に、押出時の熱安定に優れるので好ましい。
【0044】
テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)とテトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)とを併用する場合、その混合比は、重量比で90:10〜30:70であることが好ましく、より好ましくは60:40〜40:60である。この重量比の混合難燃剤は、難燃性に優れると共に、熱安定に優れるものである。
【0045】
ここで、脂肪族ポリエステル系樹脂を配合せずに、飽和炭化水素及び水を含む物理発泡剤を用いてポリスチレン系樹脂押出発泡体を製造する場合、上記臭素系難燃剤の中でも、臭素化ビスフェノール系難燃剤を使用すると、特に小気泡が発生しやすい傾向にあり、特にポリスチレン系樹脂と相溶性が異なるビスフェノール系難燃剤を併用した場合、例えば、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)とテトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)とを併用した場合に、特に双峰分布の気泡構造となる傾向にある。また、臭素化ビスフェノール系難燃剤の配合量を増やすと、小気泡がより発生しやすくなる傾向にある。また、臭素化ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体などの臭素含有ポリスチレン系難燃剤を使用した場合にも、同様に気泡が微細化する傾向にある。本発明においては、脂肪族ポリエステル系樹脂を配合することより、小気泡の発生を防ぐことができる。
【0046】
さらに、本発明で用いられる臭素系難燃剤は、臭素化イソシアヌレート系難燃剤を含むことが好ましい。該臭素化イソシアヌレート系難燃剤は、難燃効果を有すると共に、前記脂肪族ポリエステル系樹脂との相乗効果により、小気泡の発生を防止して単峰分布の気泡構造の形成を容易にすることができるものである。
【0047】
該臭素化イソシアヌレート系難燃剤とは、下記式(2)に示される、イソシアヌル酸又はイソシアヌル酸誘導体の臭素化物である。
【0048】
【化2】
[式中、R
1,R
2,R
3は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、−Y−Xで表される有機基(式中、Yは炭素数1〜6のアルキレン基、Xはエポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、フェニル基である)、およびフェニル基の中から選択される有機基、および、これらの原子及び原子団のうち、少なくとも1つの水素原子が臭素原子に置換されている有機基である。但し、R
1,R
2,R
3のうち少なくとも1つは、前記原子及び原子団のうち少なくとも1つの水素原子が臭素原子に置換されている有機基とする。尚、R
1,R
2,R
3の原子及び原子団は相互に異なる有機基であっても同じものであってもよい。]
【0049】
上記臭素化イソシアヌレート計難燃剤の具体例としては、モノ(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、ジ(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、モノ(2,3,4−トリブロモブチル)イソシアヌレート、ジ(2,3,4−トリブロモブチル)イソシアヌレート、トリス(2,3,4−トリブロモブチル)イソシアヌレート等が挙げられる。また、上記の臭素化イソシアヌレートの中で特に、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートは、極めて高い難燃効果が容易に発現すると共に、小気泡の発生を防止する効果が高いため好ましい。
【0050】
上記臭素化イソシアヌレート系難燃剤の配合量はポリスチレン系樹脂100重量部に対して0.1重量部以上が好ましく、より好ましくは0.2重量部以上であり、更に好ましくは0.5重量部である。また、その上限は、小気泡の発生を抑制するという観点からは特に制限されるものではないが、概ね5重量部程度である。
【0051】
上記臭素系難燃剤の配合量は、所望の難燃性に応じて適宜決定されるものであるが、JISA 9511(2006A)記載の押出ポリスチレンフォーム保温板の燃焼性規格を満足するポリスチレン系樹脂押出発泡体を得るためには、臭素系難燃剤を、ポリスチレン100重量部に対して合計1重量部以上配合することが好ましく、より好ましくは合計2重量部以上、更に好ましくは合計3重量部以上である。該難燃剤の合計配合量が少なすぎると、高度な難燃性を達成できなくなる虞がある。一方、臭素系難燃剤の合計配合量の上限は、10重量部が好ましく、より好ましくは8重量部である。難燃剤の配合量が多すぎると、発泡性ポリスチレン系樹脂組成物の流動性が向上し過ぎ、製造時にダイ内で内部発泡を起こしやすくなり、表面状態の良好な発泡体を得ることができなくなる虞があるばかりか、得られる発泡体の圧縮、曲げ等の機械物性が低くなる虞がある。
【0052】
該難燃剤のポリスチレン系樹脂への配合方法としては、所定割合の難燃剤をポリスチレン系樹脂と共に押出機上流に設けられている供給部に供給し、押出機中にて混練する方法を採用することができる。その他、押出機途中に設けられた難燃剤供給部より溶融ポリスチレン樹脂中に難燃剤を供給する方法も採用することができる。尚、難燃剤を押出機に供給する場合、難燃剤とポリスチレン系樹脂とをドライブレンドしたものを押出機に供給する方法、難燃剤とポリスチレン系樹脂をニーダー等により混練した溶融混練物を押出機に供給する方法や難燃剤マスターバッチを作製し押出機に供給する方法を採用することができる。特に、分散性の点から難燃剤マスターバッチを作製し押出機に供給する方法を採用することが好ましい。
【0053】
本発明においては、難燃助剤として、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、2,3−ジエチル−2,3−ジフェニルブタンなどのジフェニルアルカンや、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、2,4−ジフェニル−4−エチル−1−ペンテンなどのジフェニルアルケンを添加することができる。
【0054】
本発明においては、ヒンダードフェノール系安定剤、リン系安定剤、およびヒンダードアミン系安定剤等の安定剤を添加することができる。安定剤は、加工時に臭素系難燃剤が分解して発生するハロゲンラジカルやハロゲンイオンを補足することにより、ポリスチレン系樹脂の分子量低下や着色を抑制することができるものである。
【0055】
本発明の製造方法において、発泡性溶融樹脂組成物には、難燃剤以外に、押出発泡体の平均気泡径を調整するために気泡調整剤を添加することができる。気泡調整剤としては、タルク、カオリン、マイカ、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、クレー、酸化アルミニウム、ベントナイト、ケイソウ土等の無機物が例示される。また、本発明において該気泡調整剤は2種以上組合せて用いることもできる。前記各種の気泡調整剤の中で、得られる発泡体の気泡径の調整が容易で気泡径を小さくし易い等の理由でタルクが好適に用いられ、特に、粒子径の細かい平均粒径(光透過遠心沈降法による50%粒径)が0.5〜10mmのタルクが好ましい。
【0056】
該気泡調整剤の添加量は、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して0.01〜7.5重量部、更に0.1〜5重量部の割合で添加されることが好ましい。
【0057】
本発明の製造方法においては、前記気泡調整剤、難燃剤以外にも、本発明の目的、効果を妨げない範囲において、グラファイト、ハイドロタルサイト、カーボンブラック、酸化チタンやアルミニウム等の断熱性向上剤、着色剤、酸化防止剤、充填剤、滑剤等の各種添加剤を適宜添加することができる。尚、前記気泡調整剤、着色剤等の各種添加剤の押出発泡工程における添加方法としては、前記難燃剤の添加方法と同様の添加方法が採用できる。
【0058】
軽量性と機械的強度とのバランスを考慮すると、ポリスチレン系樹脂押出発泡体の見掛け密度は、20〜60kg/m
3が好ましく、より好ましくは22〜50kg/m
3である。
ここで、押出発泡時に小気泡が発生してしまうと、発泡過程において気泡が成長しにくくなるため、見掛け密度30kg/m
3以下の押出発泡体を製造しにくくなる。本発明においては、脂肪族ポリエステル系樹脂を配合することより、小気泡の発生を防ぐことができる。
【0059】
本発明により得られるポリスチレン系樹脂押出発泡体を建築用断熱材や、土木用途に使用する場合には、該押出発泡体の厚みは10〜150mmが好ましく、より好ましくは20〜100mmである。
【0060】
機械的強度と断熱性とのバランスを考慮すると、ポリスチレン系樹脂押出発泡体の厚み方向の平均気泡径は0.08〜1mmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.8mmである。一般に、平均気泡径が一定の範囲において大きい程、ポリスチレン系樹脂押出発泡体は機械的強度に優れたものとなり、断熱性は低下する傾向にある。一方、平均気泡径が一定の範囲において小さい程、機械的強度は低下し、断熱性は向上する傾向にある。ここで、特に圧縮強さなどの機械的強度に優れた押出発泡体とするためには、0.1mm以下の気泡は少ないほど好ましく、さらに厚み方向の平均気泡径が0.2mm以上であることが好ましい。
【0061】
本明細書における平均気泡径とは、次の測定方法により求められる気泡径を意味する。
押出発泡体厚み方向の平均気泡径(DT:mm)及び押出発泡体幅方向の平均気泡径(DW:mm)は、押出発泡体の幅方向垂直断面(押出発泡体の押出方向と直交する垂直断面)に存在する個々の気泡に対して、厚み方向及び幅方向に平行な四辺を有し、かつ気泡に外接する長方形の厚み方向の辺の長さ及び幅方向の辺の長さを計測して、それぞれを各気泡の厚み方向の気泡径、幅方向の気泡径を求め、各々の算術平均値を厚み方向の平均気泡径(DW)、幅方向の平均気泡径(DT)とする。
一方、押出発泡体押出方向の平均気泡径(DL:mm)は、押出発泡体の押出方向垂直断面(押出発泡体の押出方向に平行に、幅方向の中央部で二等分した垂直断面)に存在する個々の気泡に対して、厚み方向及び押出方向に平行な四辺を有し、かつ気泡に外接する長方形の押出方向の辺の長さを計測して、各気泡の厚み方向の気泡径を求め、それらの算術平均値を押出方向の平均気泡径(DL)とする。。
また、押出発泡体の水平方向の平均気泡径(DH:mm)は、DWとDLの相加平均値とする。
【0062】
更に、本発明で得られる押出発泡体においては、気泡変形率が0.7〜2.0であることが好ましい。気泡変形率とは、上記測定方法により求められたDTをDHで除すことにより算出される値(DT/DH)であり、該気泡変形率が1よりも小さいほど気泡は扁平であり、1よりも大きいほど縦長である。気泡変形率が小さすぎる場合は、気泡が扁平なので圧縮強度が低下する虞れがあり、扁平な気泡は球形に戻ろうとする傾向が強いので、押出発泡体の寸法安定性も低下する虞がある。気泡変形率が大きすぎる場合は、厚み方向における気泡数が少なくなるので、気泡形状による断熱性向上効果が小さくなる。そのような観点から、上記気泡変形率は、0.8〜1.5であることが好ましく、0.8〜1.2であることがより好ましい。気泡変形率が上記範囲内にあることにより、機械的強度に優れ、かつ更に高い断熱性を有する押出発泡体となる。
【0063】
本発明により得られる押出発泡体は、前記の通り小気泡の発生が防止されて単峰分布の気泡構造を有するものである。押出発泡体の断面における気泡は様々な位置で切断された気泡の集合であることから、元々ある程度の分散度を有するが、厚み方向の気泡径(DT)の変動係数は60%以下であることが好ましく、より好ましくは50%以下である。
【0064】
気泡径の変動係数Cv(%)は、厚み方向の個々の気泡径(DTi)の[標準偏差V(mm)/厚み方向の気泡径平均値(DTav:mm)]×100で求められる値であり、気泡径のバラツキ度合いを表す指標である。なお、気泡径の標準偏差(V)は次式(3)により求められる。
V(mm)={Σ(DTi−DTav)
2/(n−1)}
1/2 (3)
【0065】
式(3)において、DTiは平均気泡径の測定の際に測定した個々の厚み方向の気泡径の測定値を、DTavは厚み方向の気泡径平均値を、nは測定数をそれぞれ表す。
変動係数(Cv)は(3)式により求めた標準偏差(V)を用いて、次式(4)によって求められる。
Cv(%)=(V/DTav)×100 (4)
【0066】
本発明で得られる押出発泡体の独立気泡率は90%以上であることが好ましく、93%以上であることがより好ましい。独立気泡率が高い程、高い断熱性能を維持することができる。独立気泡率S(%)は、ASTM−D2856−70の手順Cに従って、空気比較式比重計(例えば、東芝ベックマン(株)製、空気比較式比重計、型式:930型)を使用して測定された押出発泡体の真の体積Vxを用い、下記式(5)により算出される。
測定試料は、押出発泡体において中央部および幅方向両端部付近の計3箇所からカットサンプルを切り出して各々のカットサンプルについて独立気泡率を測定し、3箇所の独立気泡率の算術平均値を押出発泡体の独立気泡率とする。なお、カットサンプルは押出発泡体から縦25mm×横25mm×厚み20mmの大きさに切断された、押出発泡体表皮を有しないサンプルとし、厚みが薄く厚み方向に20mmのサンプルが切り出せない場合には、例えば縦25mm×横25mm×厚み10mmの大きさに切断された試料(カットサンプル)を2枚重ねて測定する。
【0067】
S(%)=(Vx−W/ρ)×100/(VA−W/ρ) (5)
ただし、Vx:上記空気比較式比重計による測定により求められるカットサンプルの真の体積(cm
3)(押出発泡体のカットサンプルを構成する樹脂の容積と、カットサンプル内の独立気泡部分の気泡全容積との和に相当する。)
VA:測定に使用されたカットサンプルの外寸法から算出されたカットサンプルの見かけ上の体積(cm
3)
W:測定に使用されたカットサンプル全重量(g)
ρ:押出発泡体を構成する樹脂の密度(g/cm
3)
【実施例1】
【0068】
以下、本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡体について、実施例により詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0069】
[装置]
内径65mmの第1押出機と内径90mmの第2押出機と内径150mmの第3押出機が直列に連結されており、発泡剤注入口が第1押出機の終端付近に設けられており、間隙1mm×幅90mmの幅方向断面が長方形の樹脂排出口(ダイリップ)を備えたフラットダイが第3押出機の出口に連結されており、該フラットダイの樹脂出口には、これと平行するように設置された上下一対のポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる板により構成された賦形装置(間隔28mm)が付設されている装置を用いた。
【0070】
[ポリスチレン系樹脂]
PS1:PSジャパン株式会社製「GX154(MFR:1.6g/10分)」50重量%とPSジャパン株式会社製「679(MFR:18g/10分)」50重量%との混合樹脂
【0071】
[ポリエステル系樹脂]
表1に示すポリエステル系樹脂を用いた。
【0072】
【表1】
【0073】
[臭素系難燃剤]
表2に示す難燃剤を含有する難燃剤マスターバッチを、ポリスチレン系樹脂に対する難燃剤としての添加量が表3及び4に示す量となるようにポリスチレン系樹脂に添加した。
【0074】
【表2】
【0075】
[気泡調整剤マスターバッチ]
ポリスチレン樹脂をベースレジンとし、タルク(松村産業(株)製、商品名:ハイフィラー#12)60重量%を含有するタルクマスターバッチを用いた。
【0076】
実施例1〜14、比較例1〜7
表3及び4に示す配合及び配合量となるようにポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、難燃剤、さらに気泡調整剤マスターバッチ0.2重量部を、前記第1押出機に供給し、220℃まで加熱し、これらを溶融、混練し、発泡剤注入口から表3及び4に示す配合組成、量の発泡剤を溶融物に供給してさらに溶融混練し、得られた発泡性溶融樹脂組成物を、順に第2押出機、第3押出機に供給して樹脂温度を表3及び4に示すような発泡に適した発泡樹脂温度(押出機とダイとの接合部の位置で測定された発泡性溶融樹脂組成物の温度)に調整した後、吐出量70kg/hrでダイリップからガイダー内に押出し、ガイダー内を通過させることにより板状に成形(賦形)しポリスチレン系樹脂押出発泡体を製造した。
【0077】
なお、表3及び4中のポリエステル系樹脂、及び難燃剤の配合量[重量部]は、ポリスチレン系樹脂100重量部に対する値であり、発泡剤の配合量[モル/kg]は、ポリスチレン系樹脂1kgあたりの添加量である。また、表中の発泡剤の「i−Bu」はイソブタンを、「CO
2」は二酸化炭素を意味する。
【0078】
実施例、比較例で得られた押出発泡体における厚み方向の平均気泡径(DT)、気泡変形率(DT/DH)、厚み方向の気泡径の変動係数(Cv)、全気泡中に占める0.1mm以下の小気泡の個数基準の割合(小気泡の割合)、見掛け密度、独立気泡率、難燃性などの物性を表3及び4に示す。
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
表3及び4に示す押出発泡体の各種物性の測定方法及び評価方法は下記の通りである。
【0082】
[平均気泡径、気泡変形率]
厚み方向の平均気泡径(DT)、気泡変形率(DT/DH)については、前記方法により測定した。厚み方向の平均気泡径(DT)及び幅方向の平均気泡径(DT)は、押出発泡体の幅方向垂直断面の中央部及び両端部付近の計三箇所の拡大倍率50倍の拡大写真を得、各々の写真上において、ナノシステム株式会社製の画像処理ソフトNS2K−proを用いて個々の気泡の厚み方向の気泡径及び幅方向の気泡径を計測し、それらの値を各々算術平均することにより求めた。また、押出方向の平均気泡径(DL)は、押出発泡体の幅方向を二等分する位置で押出発泡体を切断した押出方向垂直断面の中央部及び両端部付近の計三箇所の拡大倍率50倍の拡大写真を得、各々の写真上において、ナノシステム株式会社製の画像処理ソフトNS2K−proを用いて個々の気泡の押出方向の気泡径を計測し、それらの値を各々算術平均することにより求めた。
【0083】
[変動係数]
変動係数Cvについては、上記で計測した個々の気泡の厚み方向の気泡径から前記方法により求めた。
【0084】
[小気泡の割合]
上記で厚み方向の気泡径を計測した個々の気泡のうち、厚み方向の気泡径が0.1mm以下の気泡の数の割合(個数基準)を100分率で表した値を小気泡の割合とした。
【0085】
[見掛け密度]
JIS K7222(1985)に基づいて測定された値である。
【0086】
[独立気泡率]
押出発泡体の幅方向中央部及び両端部付近から、それぞれ25mm×25mm×20mmのサイズの成形表皮を持たないサンプルを切り出し、前記ASTM−D2856−70の手順Cにより各サンプルの独立気泡率を測定し、それらの測定値を算術平均した値を押出発泡板の独立気泡率とした。
【0087】
[難燃性]
製造直後の押出発泡体を気温23℃、相対湿度50%の部屋に移し、その部屋で4週間放置した後、JIS A9511(2006R)の5.13.1「測定方法A」に基づいて測定した。尚、測定は一つの発泡体から試験片を5個切り出して(N=5)下記の評価基準にて評価した。
◎:全ての試験片において3秒以内で消え、且つ、5個の試験片の平均燃焼時間が2秒以内である。
○:全ての試験片において3秒以内で消え、且つ、5個の試験片の平均燃焼時間が2秒を超え3秒以内である。
×:5個の試験片の平均燃焼時間が3秒を越える。
【0088】
実施例1〜14においては、脂肪族ポリエステル系樹脂を配合することにより、いずれも小気泡の発生が抑制されており、さらに全体的に気泡が拡大され、低見掛け密度の良好な押出発泡体が得られている。これに対し、脂肪族ポリエステル系樹脂を配合していない比較例1〜6においては、小気泡が発生してしまい、比較例1〜4においては、気泡が十分に成長できないため、同発泡条件下で実施例と比べると高見掛け密度の押出発泡体しか得られておらず、比較例5及び6においては、気泡が微細すぎて板状の押出発泡体に成形することができなかった。また、比較例7は、脂肪族ポリエステル系樹脂の代わりに、芳香族ポリエステル系樹脂を配合した例であるが、やはり小気泡の発生を抑制することができず、同発泡条件下で実施例と比べると高見掛け密度の押出発泡体しか得られていない。