(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5897922
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】コネクタを備えた補機用ブラケットの固定構造
(51)【国際特許分類】
H01R 13/631 20060101AFI20160324BHJP
H01R 13/74 20060101ALI20160324BHJP
【FI】
H01R13/631
H01R13/74 Z
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-33183(P2012-33183)
(22)【出願日】2012年2月17日
(65)【公開番号】特開2013-171633(P2013-171633A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2015年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
(72)【発明者】
【氏名】村田 篤郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康郎
【審査官】
山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−150894(JP,A)
【文献】
特開平11−067356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/631
H01R 13/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井トリムよりも上方に位置する車体パネルのパネル開口部を貫通して配置された状態で、前記天井トリムの天井開口部に固定されている有底筒状の下方を開口させた待ち受けコネクタ保持部材と、
一端側のフックが前記天井開口部を介してパネル開口部に係合された状態で、他端側が前記天井トリムと平行となるように固定部材により前記車体パネルに固定されている補機側ブラケットと、
上部に相手コネクタ嵌合部を有し、前記補機側ブラケットに固定されている補機側コネクタと、
上下方向に延びる保持部軸線に沿う方向に移動自在に前記待ち受けコネクタ保持部材の内方に配置された状態で、且つ保持部軸線の直交軸回りに揺動自在となって前記相手コネクタ嵌合部に嵌合された状態で、下端が前記天井トリムから下方に突出している待ち受け側端子キャビティを有する待ち受けコネクタと、
を備えることを特徴とするコネクタを備えた補機用ブラケットの固定構造。
【請求項2】
前記補機側ブラケットに中空の補機用アームの基端部が固定され、
前記補機側コネクタの補機側端子キャビティが前記補機用アームの内方に挿入されていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタを備えた補機用ブラケットの固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタを備えた補機用ブラケットの固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車室用ランプには、運転席または助手席のフロントウインドウ上端近傍に配置されるサンバイザに設けられ、夜間でもバニティーミラーを使用できるようにしたバニティーミラー用ランプが知られている(特許文献1等参照)。
例えば
図9〜
図11に示すものは、この種の車室用ランプに使用されるコネクタを備えた補機用ブラケット501であり、パネル(車体パネル)503の開口部に配置された第1コネクタ(メスコネクタ)505と、補機支持部を有すると共に、パネル503の開口部を覆うように、パネル503の車室内側からパネル503に固定される補機用ブラケット507と、この補機用ブラケット507に装着され、補機用ブラケット507をパネル503に固定する際の動作に伴って第1コネクタ505に嵌合接続される第2コネクタ(オスコネクタ)509と、を備えて構成される。
【0003】
第1コネクタ505には、実際にコネクタの役割をする第1コネクタ本体部511が設けられ、この第1コネクタ本体部511のハウジングの内部に第1端子(オス端子)が装着されている。第2コネクタ509には、実際にコネクタの役割をする第2コネクタ本体部513が設けられ、この第2コネクタ本体部513のハウジングの内部に第2端子(メス端子)が装着されている。第1コネクタ本体部511の接続用開口は下向きに配され、第2コネクタ本体部513の接続用開口は上向きに配されている。
【0004】
また、パネル503の車室内側には、パネル503の開口部に対応した開口部を有するトリム(天井トリム)515が設けられており、補機用ブラケット507は、このトリム515の車室内側に配される。
【0005】
補機用ブラケット507の一端側には、パネル503の開口部の周縁に引っ掛けることができ、その引っ掛けた箇所を回動支点にして、補機用ブラケット507をパネル503に対して斜めの姿勢(
図10参照)からパネル503に対して平行な姿勢(
図11参照)となるまで、
図10中の矢印Fのように回動できるようにする外向きL形のフック517が設けられている。また、フック517と反対側の補機用ブラケット507の他端側には、フック517をパネル503の開口部の周縁に引っ掛けて、パネル503に平行な姿勢となるまで補機用ブラケット507を回動させた状態で、パネル503に対して補機用ブラケット507を本固定するための本固定部としての取付孔519が設けられている。取付孔519は凸部521に形成されている。この取付孔519にビス523を通して、パネル側に設けたネジ孔部525にビス523を締め込むことにより、補機用ブラケット507をパネル503に本固定することができる。
【0006】
この第2コネクタ509が装着された補機用ブラケット507を、開口部に第1コネクタ505が配置されたパネル503に固定する場合は、次のように作業を行う。
【0007】
まず、
図9に示すように、第2コネクタ509の係合ピン527を補機用ブラケット507の係合部529に係合させ、第2コネクタ509の係合突起531を補機用ブラケット507のロック部533の上側の係合凹部535(
図10参照)に係合させ、補機用ブラケット507に対して第2コネクタ509を仮係止位置に保持する。この状態で、フック517の先端部をパネル503の開口部からパネル503の裏側まで挿入して、フック517の曲がり部の内側を、パネル503の開口部の周縁に係合させる。
【0008】
次に、この状態で補機用ブラケット507を
図10に示す矢印Fのようにパネル側に回動させる。
図11に示すように、補機用ブラケット507をパネル503に対して平行となる位置まで回動させると、第2コネクタ509の係合突起531が補機用ブラケット507のロック部533の上側の係合凹部535から外れて、下側の係合凹部537に係合し、これにより、補機用ブラケット507に対して第2コネクタ509が本係止される。
【0009】
この状態で、ビス523を補機用ブラケット507の取付孔519を通して、パネル503のネジ孔部525に締め込むことで、コネクタ同士を嵌合させた状態で、補機用ブラケット507をパネル503に固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−192949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述したコネクタを備えた補機用ブラケットの固定構造では、ビス523で補機用ブラケット507を本固定する前の段階において、補機用ブラケット507が第2コネクタ509に保持されているだけであるので、ビス止め作業中や作業前にサンバイザの重みによって、第2コネクタ509が第1コネクタ505から抜けて、補機用ブラケット507が脱落してしまうおそれがあった。従って、ビス止め作業中に常にサンバイザを手で支えていなくてはならず、作業性が悪かった。これに対し第1コネクタ505と第2コネクタ509とに仮係止形状を設ければ手による支えが不要となって作業性は改善されるが、構造が複雑となる不利がある。また、補機用ブラケット507側の第2コネクタ509は仮係止保護機能が無いと衝撃に弱い問題があり、仮係止保護機能を設ければ構造が更に複雑になる。また、補機用ブラケット507のフック517をパネル503にかけ、補機用ブラケット507を回転させながら端子が嵌合されるため、端子同士が一直線にならない状態で嵌合しようとして、端子がひろえ(嵌合状態へ誘導され)なかったり、端子がこじられて曲がる虞がある。更に、第2コネクタ509の嵌合相手となる第1コネクタ505がトリム515の開口部に引っ込んで配置されるため、嵌合位置を狙い難い問題があった。
【0012】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、仮係止形状がなく、構造が簡単で、しかも、嵌合位置が容易に狙え、こじりにより端子が曲がらないコネクタを備えた補機用ブラケットの固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1)
天井トリムよりも上方に位置する車体パネルのパネル開口部を貫通して配置され
た状態で、前記天井トリムの天井開口部に固定されている有底筒状の下方を開口させた待ち受けコネクタ保持部材と、一端側のフック
が前記天井開口部
を介してパネル開口部に
係合された状態で、他端側が前記天井トリムと平行となるよう
に固定部材により前記車体パネルに固定され
ている補機側ブラケットと、
上部に相手コネクタ嵌合部を有
し、前記補機側ブラケットに固定されている補機側コネクタと、
上下方向に延びる保持部軸線に沿う方向に移動自在
に前記待ち受けコネクタ保持部材の内方に配置された状態で、且つ保持部軸線の直交軸回りに揺動自在となって前記相手コネクタ嵌合部に嵌合
された状態で、下端が前記天井トリムから下方に突出している待ち受け側端子キャビティを有する待ち受けコネクタと、を備えることを特徴とするコネクタを備えた補機用ブラケットの固定構造。
【0014】
上記(1)の構成のコネクタを備えた補機用ブラケットの固定構造によれば、待ち受けコネクタを内方に収容した待ち受けコネクタ保持部材が、パネル開口部を貫通して天井開口部に取り付けられる。パネル開口部に取り付けられた待ち受けコネクタ保持部材の内方では、待ち受けコネクタが自重により下方に配置される。そこで、補機側ブラケットが車体パネルへ組み付け始められる際、補機側コネクタは、待ち受けコネクタの待ち受け側端子キャビティを狙った嵌合が可能となり、容易に半挿入状態になる。フックをパネル開口部に引っ掛けるために、補機側ブラケットを傾けると、待ち受けコネクタも同様に待ち受けコネクタ保持部材の内方で傾く。補機側ブラケットを傾けた状態で、更に補機側ブラケットを天井開口部へ挿入すると、半挿入状態だった待ち受けコネクタの待ち受け側端子キャビティと補機側コネクタとの挿入が進む。その後、フックがパネル開口部に掛かる。補機側ブラケットが水平になるまで組み付けられると、待ち受けコネクタは押し上げられ、待ち受けコネクタ保持部材の上端に移動され且つ水平に配置される。即ち、待ち受けコネクタ保持部材に移動自在に収容した待ち受けコネクタが組み付け前には自重によって下方に配置されるので、待ち受けコネクタの待ち受け側端子キャビティに対する補機側コネクタの狙いが容易となる。また、嵌合を開始した待ち受けコネクタと補機側コネクタは、フックを中心に揺動しながら挿入される補機側コネクタに合わせて、待ち受けコネクタが待ち受けコネクタ保持部材の内方で共に揺動される。これにより、相対的には直線方向での嵌合が行え、回転させながらの端子嵌合と異なり、端子にこじりが生じない。
【0016】
更には、待ち受けコネクタ保持部材に移動自在に収容した待ち受けコネクタの待ち受け側端子キャビティが組み付け前には自重によって、
下端が天井トリムから下方に突出して配置される。これにより、補機側ブラケットに設けられた補機側コネクタを、嵌合相手である待ち受けコネクタの待ち受け側端子キャビティに位置決めする際の狙いが更に容易となる。
【0017】
(
2) 上記
(1)の構成のコネクタを備えた補機用ブラケットの固定構造であって、前記補機側ブラケットに中空の補機用アームの基端部が固定され、前記補機側コネクタの補機側端子キャビティが前記補機用アームの内方に挿入されていることを特徴とするコネクタを備えた補機用ブラケットの固定構造。
【0018】
上記(
2)の構成のコネクタを備えた補機用ブラケットの固定構造によれば、補機側コネクタが補機用アームに直接収容される。これにより、補機用アームの内方を通じて補機本体へ配索する電線の配索スペースを補機側ブラケットに確保する必要がなくなり、補機側ブラケットの小型化が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るコネクタを備えた補機用ブラケットの固定構造によれば、仮係止形状がなく、構造が簡単で、しかも、嵌合位置が容易に狙えて、端子が確実にひろえ、こじりによる曲がりが端子に生じない。
【0020】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコネクタを備えた補機用ブラケットの固定構造の分解斜視図である。
【
図2】
図1に示した補機用ブラケットの固定構造を車体パネルの裏側から見た斜視図である。
【
図3】
図1に示した待ち受けコネクタ保持部材及び待ち受けコネクタの斜視図である。
【
図4】
図1に示したサンバイザ側コネクタ及びサンバイザ側ブラケットの斜視図である。
【
図5】(a)は
図1に示した補機用ブラケットの固定構造を車体パネルの裏側から見た平面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【
図6】(a)は待ち受けコネクタに対するサンバイザ側コネクタの位置あわせ状況を表す
図5のA−A位置における断面図、(b)は待ち受けコネクタとサンバイザ側コネクタが嵌合を開始した状態を表す
図5のA−A位置における断面図である。
【
図7】(a)はサンバイザ側ブラケットを傾けた状態を表す
図5のA−A位置における断面図、(b)はサンバイザ側ブラケットが天井開口部へ挿入された状態を表す
図5のA−A位置における断面図である。
【
図8】(a)はフックがパネル開口部に掛けられた状態を表す
図5のA−A位置における断面図、(b)はサンバイザ側ブラケットが水平となった状態を表す
図5のA−A位置における断面図である。
【
図10】
図9に示した補機用ブラケットをパネルに固定するときの手順説明用の最初の段階を示す側断面図である。
【
図11】
図9に示した補機用ブラケットをパネルにビス止めした状態を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る実施形態のコネクタを備えた補機用ブラケットの固定構造の分解斜視図、
図2は
図1に示した補機用ブラケットの固定構造を車体パネルの裏側から見た斜視図である。
本実施形態は、本発明に係るコネクタを備えた補機用ブラケットの固定構造を、例えば、自動車の運転席または助手席のフロントウインドウ上端に設けられるサンバイザ(補機)を車体(パネル)に対してワンタッチで簡単且つ確実に装着固定できるように構成したコネクタを備えた補機用ブラケット(以下、単に補機用ブラケットとも称す)11の固定構造に適用したものである。
【0023】
本実施形態に係るコネクタを備えた補機用ブラケット11の固定構造は、パネル側構成品13と、サンバイザ側構成品15と、に大別構成される。
【0024】
パネル側構成品13は、車体パネルとしての天井部インナーパネル(以下、車体パネルと称す)17と、待ち受けコネクタ保持部材19と、待ち受けコネクタ21と、天井トリム23と、からなる。
【0025】
サンバイザ側構成品15は、サンバイザ側コネクタ(補機側コネクタ)25と、サンバイザ側ブラケット(補機側ブラケット)27と、サンバイザアーム(補機用アーム)29と、固定ビス(固定部材)31と、からなる。
【0026】
車体パネル17には、
図2に示すように、サンバイザ側コネクタ25や、サンバイザ側ブラケット27のフック33を挿入する略矩形状のパネル開口部35が形成される。パネル開口部35の長手方向一端側には固定ビス31の挿通する固定用孔37が形成される。固定用孔37に挿通された固定ビス31は、図示しない雌ネジ部と螺合する。
【0027】
図3に示すように、待ち受けコネクタ保持部材19は、本体部が摺動シリンダー39として形成されている。摺動シリンダー39は、下方を開口させた有底筒状に形成される。摺動シリンダー39の筒形状は、円筒、角筒、楕円筒、長円筒等の種々の筒形状とすることができる。摺動シリンダー39の上面には接続開口部41が形成され、接続開口部41は待ち受けコネクタ21の後述するハーネス接続部43を表出させる。摺動シリンダー39の側方には一対の天井保持部45が保持部軸線47に沿って垂設される。なお、本明細書中では、天井トリム23から車室側に向かう方向を下方向とし、天井トリム23から車体パネル17に向かう方向を上方向として説明する。それぞれの天井保持部45は、L字形の脚状に形成され、天井開口縁49(
図1参照)を挟持して固定される。天井保持部45が天井開口縁49に固定された待ち受けコネクタ保持部材19は、
図2に示すように、摺動シリンダー39がパネル開口部35を貫通して配置される。
【0028】
摺動シリンダー39の側方には一対の天井保持部45の間に、矩形状に形成される一対の係止穴51が穿設される。この係止穴51は、後述する待ち受けコネクタ21の係止爪53と係合する。
【0029】
待ち受けコネクタ21は、摺動円板83を有する。摺動円板83は、待ち受けコネクタ保持部材19の内方に収容され、保持部軸線47に沿う方向に移動自在となり且つ保持部軸線47の直交軸回りに揺動自在となる。摺動円板83は、長円形状に形成され、長手方向両側には係止爪53が突設される。この係止爪53は、摺動シリンダー39に形成される上述の係止穴51に係合する。待ち受けコネクタ21は、摺動円板83が自重によって摺動シリンダー39の下方に配置される。
【0030】
摺動円板83の中央には、待ち受け側端子キャビティ85が垂設される。待ち受け側端子キャビティ85は、下端がコネクタフード73の相手コネクタ嵌合部81に挿入可能となる。即ち、待ち受け側端子キャビティ85は、サンバイザ組付け完了後、サンバイザ側コネクタ25の相手コネクタ嵌合部81に収まる(
図5参照)。一方、待ち受け側端子キャビティ85は、上端が摺動円板83の上面で上述のハーネス接続部43となって表出する。待ち受けコネクタ21は、摺動円板83が摺動シリンダー39の上端に移動されると、ハーネス接続部43が摺動シリンダー39の接続開口部41に配置される。待ち受けコネクタ21は、重力によって、摺動円板83が摺動シリンダー内で下方へ摺動することにより、待ち受け側端子キャビティ85が天井トリム23から下方に突出する(
図6(a)参照)。つまり、サンバイザ側コネクタ25の嵌合相手となる待ち受けコネクタ21の待ち受け側端子キャビティ85が車室側から容易に狙えるようになされている。
【0031】
図4に示すように、サンバイザ側ブラケット27は、ブラケット本体55が楕円板状に形成される。ブラケット本体55の中央部にはブラケット本体55を貫通する円筒状のアーム支持部57が立設され、アーム支持部57の上縁は切り込み59により分けられた複数のアーム係止爪61が形成されている。アーム支持部57には車室側から中空のサンバイザアーム29の基端部63が挿入される。サンバイザアーム29の基端部63には円周方向の係止溝65(
図1参照)が形成される。アーム支持部57は、挿入された基端部63の係止溝65にアーム係止爪61を係止することで、サンバイザアーム29を固定する。これにより、中空のサンバイザアーム29は、ブラケット本体55の上面に開口される。
【0032】
ブラケット本体55の上面にはアーム支持部57の近傍にフードロック部67が立設されている。このフードロック部67は、アーム支持部57に被せられるようにして取り付けられるサンバイザ側コネクタ25に係合し、アーム支持部57からのサンバイザ側コネクタ25の離脱を規制する。
【0033】
ブラケット本体55には、一端側にフック33が立設される。フック33は、基端がブラケット本体55に接続されて先端が外側に突出する逆J字状に形成される。フック33は、天井開口部69及びパネル開口部35(
図1参照)に挿入されてパネル開口部35の背面側でパネル開口縁71に引っ掛けられる。フック33は、引っ掛けた箇所を回動支点にして、サンバイザ側ブラケット27を天井トリム23に対して斜めの姿勢(
図8(a)参照)から天井トリム23に対して平行な姿勢(
図8(b)参照)となるまで回動可能とする。ブラケット本体55にはアーム支持部57を挟んでフック33と反対側の他端側に固定用孔37が形成され、固定用孔37は車室側から固定ビス31が挿通される。サンバイザ側ブラケット27は、一端側のフック33を天井開口部69から挿入してパネル開口縁71に引っ掛けて天井トリム23と平行とした後、他端側が固定用孔37に挿通される固定ビス31により車室側から車体パネル17に固定される。
【0034】
サンバイザ側コネクタ25は、下方を開口させた有底筒状のコネクタフード73を有する。コネクタフード73は、上部75が、待ち受けコネクタ保持部材19の摺動シリンダー39に、下方から嵌合する(
図5(b)参照)。コネクタフード73の外周にはロック突起77が突設される。コネクタフード73は、ブラケット本体55のアーム支持部57に上方から被せられる。アーム支持部57に被せられたコネクタフード73は、ロック突起77が上述のフードロック部67に係合して、アーム支持部57から離脱が規制される。
【0035】
サンバイザ側コネクタ25のコネクタフード73には、内方にサンバイザ側端子キャビティ(補機側端子キャビティ)79が垂設される。サンバイザ側端子キャビティ79は、上方に相手コネクタ嵌合部81を有し、この相手コネクタ嵌合部81がコネクタフード73の上部75に開口する。本実施形態において、サンバイザ側端子キャビティ79は、
図5に示すように、サンバイザアーム29の内方に挿入される。サンバイザ側端子キャビティ79からは図示しない電線が下方へ導出され、導出された電線はサンバイザアーム29の内方に通されて図示しないサンバイザ本体のバニティーミラー用ランプに接続される。
【0036】
次に、
図5〜
図8を参照しながら上記構成を有するコネクタを備えた補機用ブラケット11の固定構造の作用を説明する。
図6(a)に示すように、本実施形態に係るコネクタを備えた補機用ブラケット11の固定構造では、待ち受けコネクタ21を内方に収容した待ち受けコネクタ保持部材19が、パネル開口部35を貫通して天井開口部69に取り付けられる。パネル開口部35に取り付けられた待ち受けコネクタ保持部材19の内方では、待ち受けコネクタ21が自重により下方に配置される。
【0037】
図6(b)に示すように、サンバイザ側ブラケット27が車体パネル17へ組み付け始められる際、サンバイザ側コネクタ25は、待ち受けコネクタ21の待ち受け側端子キャビティ85を狙った嵌合が可能となり、容易に半挿入状態になる。即ち、待ち受けコネクタ保持部材19に移動自在に収容された待ち受けコネクタ21は、組み付け前には自重によって、天井トリム23から待ち受け側端子キャビティ85が下方に突出して配置される。これにより、サンバイザ側ブラケット27に設けられたサンバイザ側コネクタ25を、嵌合相手である待ち受けコネクタ21の待ち受け側端子キャビティ85に位置決めする際の狙いが容易となる。
【0038】
図7(a)に示すように、フック33を車体パネル17のパネル開口部35に引っ掛けるために、サンバイザ側ブラケット27を傾けると、待ち受けコネクタ21も同様に待ち受けコネクタ保持部材19の内方で傾く。
図7(b)に示すように、サンバイザ側ブラケット27を傾けた状態で、更にサンバイザ側ブラケット27を天井開口部69へ挿入すると、半挿入状態だった待ち受けコネクタ21の待ち受け側端子キャビティ85とサンバイザ側コネクタ25との挿入が進む。
【0039】
図8(a)に示すように、更にサンバイザ側ブラケット27を天井開口部69へ挿入すると、フック33がパネル開口部35のパネル開口縁71に掛かる。フック33がパネル開口縁71に掛かった後、
図8(b)に示すように、サンバイザ側ブラケット27が水平になるまで組み付けられると、待ち受けコネクタ21は押し上げられ、摺動円板83が摺動シリンダー39の上端に移動され且つ揺動して水平に配置される。最後に固定ビス31が締められ、
図5の状態となってサンバイザ側ブラケット27の組み付けが完了する。
【0040】
このように、本実施形態の構成を有するコネクタを備えた補機用ブラケット11の固定構造では、待ち受けコネクタ保持部材19に移動自在に収容した待ち受けコネクタ21が組み付け前には自重によって下方に配置されるので、待ち受けコネクタ21の待ち受け側端子キャビティ85に対するサンバイザ側コネクタ25の狙いが容易となる。また、嵌合を開始した待ち受けコネクタ21とサンバイザ側コネクタ25は、フック33を中心に揺動しながら挿入されるサンバイザ側コネクタ25に合わせて、待ち受けコネクタ21が待ち受けコネクタ保持部材19の内方で共に揺動される。つまり、サンバイザ側ブラケット27の回転組み付けが始まっても、待ち受けコネクタ21とサンバイザ側コネクタ25との半挿入が維持される。これにより、相対的には直線方向での嵌合が行え、回転させながらの端子嵌合と異なり、端子にこじりが生じない。
【0041】
また、本実施形態に係る補機用ブラケット11では、上述のように、サンバイザ側ブラケット27には中空のサンバイザアーム29の基端部63が固定され、サンバイザ側端子キャビティ79がサンバイザアーム29の内方に挿入されている。即ち、サンバイザ側コネクタ25は、サンバイザアーム29に直接収容されている。これにより、サンバイザアーム29の内方を通じてサンバイザ本体へ配索する電線の配索スペースをサンバイザ側ブラケット27に確保する必要がなくなり、サンバイザ側ブラケット27の小型化が可能となっている。
【0042】
従って、本実施形態に係るコネクタを備えた補機用ブラケット11の固定構造によれば、仮係止形状がなく、構造が簡単で、しかも、嵌合位置が容易に狙えて、端子が確実にひろえ、こじりによる曲がりが端子に生じない。
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
例えば、上記実施形態においては、補機であるバニティーミラー用ランプを備えたサンバイザを車体パネルに装着固定できるように構成したコネクタを備えた補機用ブラケット11を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の補機を車体パネルに装着固定できるように構成したコネクタを備えた補機用ブラケットに応用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0043】
11…コネクタを備えた補機用ブラケット
17…車体パネル
19…待ち受けコネクタ保持部材
21…待ち受けコネクタ
23…天井トリム
25…サンバイザ側コネクタ(補機側コネクタ)
27…サンバイザ側ブラケット(補機側ブラケット)
29…サンバイザアーム(補機用アーム)
31…固定ビス(固定部材)
33…フック
35…パネル開口部
47…保持部軸線
63…基端部
69…天井開口部
71…パネル開口縁
75…上部
79…サンバイザ側端子キャビティ(補機側端子キャビティ)
81…相手コネクタ嵌合部
85…待ち受け側端子キャビティ