特許第5897923号(P5897923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5897923
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】回転検出装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 5/68 20060101AFI20160324BHJP
   H02P 7/06 20060101ALI20160324BHJP
   G01B 7/30 20060101ALI20160324BHJP
   G01D 5/243 20060101ALI20160324BHJP
【FI】
   H02P7/68 J
   H02P7/06 G
   G01B7/30 M
   G01D5/243 C
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-34160(P2012-34160)
(22)【出願日】2012年2月20日
(65)【公開番号】特開2013-172521(P2013-172521A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2014年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社日本自動車部品総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 健
(72)【発明者】
【氏名】中村 勉
(72)【発明者】
【氏名】湯元 仁
【審査官】 高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−164888(JP,A)
【文献】 特開2011−176979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 5/68
G01B 7/30
G01D 5/243
H02P 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の直流モータを駆動するモータ駆動回路と、
前記複数の直流モータに交流電圧を印加する交流重畳手段と、
前記複数の直流モータ毎に個々に設けられ、前記直流モータに流れる電流のうち交流電流に関する電気量を検出し、該検出した電気量に基づいて該直流モータの回転状態を示す回転信号を生成する回転信号生成手段と、
前記回転信号に基づいて前記直流モータの回転角、回転方向及び回転速度のうち少なくとも何れか1つを検出する回転状態検出手段と、
を備える回転検出装置において、
前記交流重畳手段は、共通の交流電圧を前記複数の直流モータに印加するよう構成されており、
前記共通の交流電圧は、前記複数の直流モータに印加される直流電圧に重畳され
前記交流重畳手段は、前記複数の直流モータに対し、該各直流モータが有する一対のブラシのうち一方と前記直流電圧を供給する直流電源の負極との間に同時に前記交流電圧を印加するよう構成されており、
前記複数の直流モータが備える前記一対のブラシのうち、少なくとも、前記交流重畳手段によって前記交流電圧が印加されるブラシについては、そのブラシと前記モータ駆動回路との間に回路側インピーダンス素子が備えられてい
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転検出装置であって、
前記複数の直流モータは、該直流モータが備える複数の整流子片のうち特定の2つの整流子片間に少なくとも1つのモータ側インピーダンス素子が接続されている
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の回転検出装置であって、
前記モータ側インピーダンス素子はコンデンサであることを特徴とする回転検出装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の回転検出装置であって、
前記モータ駆動回路は、前記複数の直流モータ毎に、対応する前記直流モータが有する前記一対のブラシの双方にそれぞれ接続されて該各ブラシをそれぞれ前記直流電源の正極側及び負極側のいずれか一方に選択的に接続するためのハーフブリッジ回路を備えており、
前記複数の直流モータのうち少なくとも2つは、各々が有する前記一対のブラシの一方が互いに接続されており、
その互いに接続された各ブラシに対しては、同じ1つの前記ハーフブリッジ回路が接続されると共に前記交流重畳手段によって前記交流電圧が印加される
ことを特徴とする回転検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の直流モータの回転角や回転方向などの回転状態を検出する回転検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシ付きの直流モータ(以下単に「直流モータ」という)は、車両においても従来から用いられており、例えば、車両の空調装置における温度調整用のエアミックスダンパーや吹き出し口切り替え用のモードダンパーなどの開閉角度を調整するために用いられている。このような用途で用いられる直流モータを制御するにあたっては、各ダンパーの開閉角度を精度良く調整するために、直流モータの回転角や回転方向、回転速度などの回転状態を検出し、その検出した回転状態に基づいて、各ダンパーの開閉角度が所望の角度となるように制御していた。
【0003】
直流モータの回転状態を検出する一般的方法として、ロータリエンコーダやポテンショメータ等のセンサを設け、このセンサからの検出信号に基づいて検出する方法がよく知られている。そのため、車両においても、このようなセンサを設けて回転状態を検出する方法が採用されている。
【0004】
しかし、このようにセンサを設けて回転状態を検出する方法では、センサを設置するスペースが直流モータ毎に必要になると共に、直流モータへの直流電源供給用のハーネスとは別に、センサによる検出信号を他の装置(車載ECU等)へ伝送するためのハーネスも直流モータ毎に必要となり、車両の重量増・コストアップを招く。そのため、センサやそれに伴うハーネスを削減するために、センサレス方式化の要望が高まっている。
【0005】
このようなセンサレス方式化への要望に応えるべく、本願出願人は、特許文献1において次のようなセンサレス技術を提案した。即ち、直流モータを、一対のブラシ間のインピーダンスが回転に伴って周期的に変化するように構成する。更に、直流電源から直流モータへ通電される直流電流に対して交流電圧(交流電流)を重畳させるための交流重畳手段を設ける。そして、直流モータに流れる電流から交流成分を抽出し、その交流成分の変化(上記インピーダンスの変化により生じる周期的な変化)に基づいて回転状態を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−63347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載のセンサレス技術では、1つの直流モータに対し、交流電流を重畳するための交流重畳手段が1つ必要となるため、直流モータの数が多くなればなるほど、その分、各直流モータの回転状態を検出するために必要な交流重畳手段も多くなる。つまり、回転状態を検出すべき直流モータの数と同数の交流重畳手段が必要となる。
【0008】
そのため、直流モータの数が増えれば増えるほど、交流重畳手段も同じ数だけ増やさなければならず、その分、装置の大型化・コストアップを招いてしまう。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、直流モータの回転状態を通電される交流成分の変化に基づいて検出するよう構成された回転検出装置において、回転状態を検出すべき直流モータが複数あっても、交流重畳手段の使用数を抑制することで、装置全体の低コスト化・小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた発明は、複数の直流モータを駆動するモータ駆動回路と、複数の直流モータに交流電圧を印加する交流重畳手段と、複数の直流モータ毎に個々に設けられ、直流モータに流れる電流のうち交流電流に関する電気量を検出し、その検出した電気量に基づいて直流モータの回転状態を示す回転信号を生成する回転信号生成手段と、回転信号に基づいて直流モータの回転角、回転方向及び回転速度のうち少なくとも何れか1つ(即ち回転状態)を検出する回転状態検出手段と、を備える回転検出装置である。
【0010】
そして、本発明の回転検出装置は、交流重畳手段が、共通の交流電圧を複数の直流モータに印加するよう構成されている。また、共通の交流電圧は、複数の直流モータに印加される直流電圧に重畳される。
【0011】
したがって、本発明の回転検出装置によれば、交流重畳手段が複数の直流モータへ共通の交流電圧を印加し、各直流モータではその交流電圧が直流電圧に重畳されて印加されるため、回転状態を検出すべき直流モータが複数あっても交流重畳手段の使用数を抑制することができ、これにより装置全体の低コスト化・小型化が実現される。
【0012】
尚、共通の交流電圧とは、1つの交流重畳手段から各直流モータへ並列的に印加される交流電圧(即ち交流電圧の供給源が同じ共通のもの)であることを意味する。
数の直流モータは、該直流モータが備える複数の整流子片のうち特定の2つの整流子片間に少なくとも1つのモータ側インピーダンス素子が接続されていてもよい
【0013】
このように構成された回転検出装置では、複数の直流モータはそれぞれブラシ間のインピーダンスが回転に伴って周期的に変化し、これにより各直流モータのブラシ間の電圧は周期的に変化する。そのため、回転信号生成手段により生成される回転信号はその周期的な変化が反映された信号となり、これにより、各直流モータの回転状態を確実に検出することができる。
【0014】
モータ側インピーダンス素子としては、所定のインピーダンスを有する種々の素子が考えられるが、例えばコンデンサであると、回転に伴う交流電圧の周期的な変化の幅をより大きくすることができるため、各直流モータの回転状態をより確実に検出することができる。
【0015】
流重畳手段は、複数の直流モータに対し、これら各直流モータが有する一対のブラシのうち一方と直流電圧を供給する直流電源の負極との間に同時に交流電圧を印加するよう構成されていてもよい
【0016】
上記構成の回転検出装置によれば、1つの交流重畳手段から、複数の直流モータの各々に交流電圧を印加することができ、簡素な構成ながら確実に各直流モータへ交流電圧を印加することができる。
【0017】
ータ駆動回路は、複数の直流モータ毎に、対応する直流モータが有する一対のブラシの双方にそれぞれ接続されて各ブラシをそれぞれ直流電源の正極側及び負極側のいずれか一方に選択的に接続するためのハーフブリッジ回路を備えており、複数の直流モータのうち少なくとも2つは、各々が有する一対のブラシの一方が互いに接続されていて、その互いに接続された各ブラシに対しては、複数のモータに共用される1つのハーフブリッジ回路が接続されると共に交流重畳手段によって交流電圧が印加されるように構成されていてもよい
【0018】
上記構成の回転検出装置では、複数の直流モータはいずれも、一対のブラシにそれぞれハーフブリッジ回路が接続された構成であり、且つ、互いに接続されているブラシに対しては共通の1つのハーフブリッジ回路が接続されている。そして、そのように互いに接続されているブラシに対し、交流重畳手段が交流電圧を印加する。
【0019】
したがって、上記構成の回転検出装置によれば、互いに接続された複数のブラシに対して同じ1つのハーフブリッジ回路を接続するという構成を利用して、その互いに接続されている複数のブラシに対して同じ1つの交流重畳手段によって交流電圧を印加できるため、簡素な構成ながらより効率的に交流重畳手段の使用数を抑制することができる。
【0020】
数の直流モータが備える一対のブラシのうち、少なくとも、交流重畳手段によって交流電圧が印加されるブラシについては、そのブラシとモータ駆動回路との間に回路側インピーダンス素子が備えられていてもよい
【0021】
上記構成の回転検出装置によれば、少なくとも、交流重畳手段により交流電圧が印加されるブラシとモータ駆動回路との間の通電経路(詳しくはそのブラシと直流電源との間であってその間に直流モータを含まない通電経路)にインピーダンスを持たせることで、交流重畳手段からの交流電流のうち直流モータに流れず直流電源側に流れる成分をより低減して逆に直流モータ側に流れる成分をより増加させることができ、これにより回転信号生成手段が電気量の検出(延いては回転信号の生成)をより容易且つ高い精度で行うことができる。
【0022】
尚、回路側インピーダンス素子は、交流重畳手段からの交流電流が直流モータを経ずに直流電源側に流れるのを抑制でき、且つ直流電源から直流モータへの電力供給(直流電流通電)を適切なレベルに維持できる限り、種々の種類の素子を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態のモータ駆動システムの概略構成を表す構成図である。
図2】第1実施形態のモータ駆動システムの動作例(9種類の駆動状態)を表す説明図である。
図3】モータの概略構成を表す構成図である。
図4】モータが180°回転する間に生じる3種類の状態(モータ回路)を説明するための説明図である。
図5】交流重畳部から交流を印加することにより回転パルスSPが生成されることを説明するための説明図であり、(a)は交流重畳部からの交流電圧・電流の出力波形例、(b)は交流検出部により検出される電圧の波形例、(c)はその検出された電圧に基づいて生成される回転パルスSPの波形例である。
図6】交流検出部の構成を表す回路図である。
図7】第1実施形態のモータ駆動システムにおける駆動状態毎の回転パルスSPの生成を説明するためのタイムチャートである。
図8】第2実施形態のモータ駆動システムの概略構成を表す構成図である。
図9】第2実施形態のモータ駆動システムの動作例(27種類の駆動状態)を表す説明図である。
図10】モータ駆動システムの他の実施例を表す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1に示すように、本実施形態のモータ駆動システム1は、2つのモータM1,M2を個別に駆動制御するものであり、主として、直流電源2と、3つのハーフブリッジ回路B1,B2,B3と、制御部3と、交流重畳部4と、第1交流検出部6と、第2交流検出部7と、を備えている。直流電源2は、直流電圧Vccを出力する。また、3つのハーフブリッジ回路B1,B2,B3は、いずれも、2つのトランジスタからなる周知の構成である。
【0025】
第1ハーフブリッジ回路B1は、第1トランジスタTr1と第2トランジスタTr2とが直列に接続されて構成されている。具体的には、第1トランジスタTr1のエミッタと第2トランジスタTr2のコレクタが互いに接続され、その接続点は第1インダクタL01の一端に接続されている。また、第1トランジスタTr1のコレクタは、直流電源2の正極に接続され、第2トランジスタTr2のエミッタは、直流電源2の負極(当該モータ駆動システム1のグランド電位でもある)に接続されている。そして、第1トランジスタTr1のベースには制御部3からの第1制御信号ST1が入力され、第2トランジスタTr2のベースには制御部3からの第2制御信号ST2が入力される。
【0026】
第2ハーフブリッジ回路B2は、第3トランジスタTr3と第4トランジスタTr4とが直列に接続されて構成されている。具体的には、第3トランジスタTr3のエミッタと第4トランジスタTr4のコレクタが互いに接続され、その接続点は第2インダクタL02の一端に接続されている。また、第3トランジスタTr3のコレクタは、直流電源2の正極に接続され、第4トランジスタTr4のエミッタは、直流電源2の負極に接続されている。そして、第3トランジスタTr3のベースには制御部3からの第3制御信号ST3が入力され、第4トランジスタTr4のベースには制御部3からの第4制御信号ST4が入力される。
【0027】
第3ハーフブリッジ回路B3は、第5トランジスタTr5と第6トランジスタTr6とが直列に接続されて構成されている。具体的には、第5トランジスタTr5のエミッタと第6トランジスタTr6のコレクタが互いに接続され、その接続点は第3インダクタL03の一端に接続されている。また、第5トランジスタTr5のコレクタは、直流電源2の正極に接続され、第6トランジスタTr6のエミッタは、直流電源2の負極に接続されている。そして、第5トランジスタTr5のベースには制御部3からの第5制御信号ST5が入力され、第6トランジスタTr6のベースには制御部3からの第6制御信号ST6が入力される。
【0028】
尚、各トランジスタTr1〜Tr6は、本実施形態ではNPN型バイポーラトランジスタであるが、これはあくまでも一例であり、例えばMOSFETなどの他のスイッチング素子を用いてもよい。
【0029】
これら3つのハーフブリッジ回路B1,B2,B3は、制御部3からの各制御信号ST1〜ST6に従って各モータM1,M2に対する直流電源2からの通電を制御することにより各モータM1,M2を駆動するものである。
【0030】
2つのモータM1,M2はいずれも、後で詳しく説明するように、一対のブラシを備えたブラシ付きの直流モータである。このうち第1モータM1は、その一方のブラシ(第1ブラシ)16が第1インダクタL01の他端に接続されており、他方のブラシ(第2ブラシ)17が、第2インダクタL02の他端に接続されると共に第2モータM2の一方のブラシ(第1ブラシ)41に接続されている。第2モータM2は、その第1ブラシ41が第2インダクタL02の他端に接続されると共に第1モータM1の第2ブラシ17に接続されており、他方のブラシ(第2ブラシ)42が、第3インダクタL03の他端に接続されている。尚、2つのモータM1,M2は、本実施形態では同じスペックのものである。
【0031】
本実施形態のモータ駆動システム1では、制御部3からの各制御信号ST1〜ST6によって、図2に示すように9種類の駆動状態が実現される。図2は、各駆動状態毎に、各モータM1,M2の回転状態及び各トランジスタTr1〜Tr6のON・OFF状態を示すものである。図2に示すように、例えば第1モータM1のみ正転させる(正転方向に回転させる)駆動状態Aでは、第1ハーフブリッジ回路B1における第1トランジスタTr1と第2ハーフブリッジ回路B2における第4トランジスタTr4とがONされる。
【0032】
なお、正転方向とは、図1にも図示されているように、第1モータM1においては第1ブラシ16から第2ブラシ17へ直流電流を通電させた場合の回転方向であり、第2モータM2においては第1ブラシ41から第2ブラシ42へ直流電流を通電させた場合の回転方向である。逆転方向は、図1にも図示されているように、上記正転方向の場合とは逆方向に通電させた場合の回転方向である。
【0033】
制御部3は、各制御信号ST1〜ST6を制御することで、図2に示した9種類の駆動状態のうち何れかにて各モータM1,M2が動作するように各モータM1,M2を制御する。
【0034】
また、第1モータM1の第2ブラシ17から第2モータM2の第1ブラシ41に至る通電経路における共通接続ノードN0には、交流重畳部4が接続されており、この交流重畳部4から共通接続ノードN0に交流電圧が印加される。
【0035】
交流重畳部4は、所定の周波数の交流電圧を生成する交流電源5と、直流電源2から出力される直流電圧Vccに交流電源5にて生成された交流電圧を重畳させて各モータM1,M2へ印加するためのカップリングコンデンサC0とを備えている。交流電源5にて生成される交流電圧は、本実施形態では、図5(a)の上段に示すような方形波電圧である。そのため、カップリングコンデンサC0を介して出力される交流電流は、図5(a)の下段に示すような、略インパルス状の波形となる。
【0036】
本実施形態では、2つのモータM1,M2に対して交流重畳部4が1つだけ設けられており、その交流重畳部4からの交流電圧は、2つのモータM1,M2が互いに接続されている共通接続ノードN0に印加される。つまり、1つの交流重畳部4が2つのモータM1,M2の回転角検出用に共用される。そのため、第1ハーフブリッジ回路B1を構成する2つのトランジスタTr1,Tr2のうち何れか一方がONされると、第1モータM1に交流重畳部4からの交流電流が流れる。また、第3ハーフブリッジ回路B3を構成する2つのトランジスタTr5,Tr6のうち何れか一方がONされると、第2モータM2に交流重畳部4からの交流電流が流れる。更に、第1ハーフブリッジ回路B1を構成する各トランジスタTr1,Tr2のうちいずれか一方、及び第3ハーフブリッジ回路B3を構成する各トランジスタTr5,Tr6のうちいずれか一方がそれぞれONされると、第1モータM1及び第2モータM2の双方に同時に交流重畳部4からの交流電流が流れる。
【0037】
このような構成により、各モータM1,M2には、単に直流電源2からの直流電圧Vccが印加されるだけではなく、直流電源2からの直流電圧Vccに交流重畳部4から出力される交流電圧が重畳された交流重畳電圧が印加される。そのため、各モータM1,M2には、直流電源2からの直流電圧による直流電流に交流重畳部4からの交流電圧による交流電流が重畳された、交直混在(脈流の一種)の電流(交流重畳電流)が流れる。
【0038】
但し、各モータM1,M2は直流モータであるため、交流重畳電流のうち、各モータM1,M2の回転に寄与する(トルクを与えて回転駆動させる)成分は、直流電源2にて印加される直流電圧Vccによる直流成分であり、交流重畳部4から印加される交流電圧による交流成分は回転そのものには関与せず、トルクに影響を与えることもない。交流重畳部4からの交流電圧は、各モータM1,M2の回転状態を検出するために各モータM1,M2に印加されるのである。
【0039】
即ち、後述するように、第1交流検出部6が、第1モータM1に流れる電流のうち交流成分に基づいて(具体的には第1ノードN1の電圧の交流成分に基づいて)第1回転パルスSP1を生成する。また、第2交流検出部7が、第2モータM2に流れる電流のうち交流成分に基づいて(具体的には第2ノードN2の電圧の交流成分に基づいて)第2回転パルスSP2を生成する。つまり、交流重畳部4は、各モータM1,M2を回転させるための電源としてではなく、各モータM1,M2の回転状態を検出する目的で設けられているのである。
【0040】
なお、直流電源2からの直流電圧Vccの出力、及び交流重畳部4からの交流電圧の出力は、それぞれ独立して制御することが可能に構成されている。また、各ハーフブリッジ回路B1,B2,B3の動作状態(即ち駆動状態)によっては、モータに対し、そのモータにおける直流電流通電方向の下流側、即ちモータの何れか一方のブラシからグランドに至る通電経路に交流重畳部4からの交流電圧が印加される状態になることもある。しかし交流電圧がモータに対してその上流側及び下流側のどちら側で印加されても、モータに交流電流を流す(直流電流に交流電流を重畳させる)ことができる。
【0041】
各モータM1,M2は、図3に示すように、軟磁性体の継鉄(ヨーク)で形成されたハウジング60を有し、このハウジング60内に、電機子コイルや図示しないロータコアなどの各種構成部品が収容されている。ハウジング60は、略円筒形の形状をなし、その内周面には、界磁発生用の2つの磁石61,62が径方向に互いに対向するように固定されている。各磁石61,62はいずれも永久磁石であり、電機子コイルと対向する面側の極性が一方はN極で他方がS極である。また、各モータM1,M2は、互いに対向して(即ち回転方向に180°離れて)配置された一対のブラシ16,17(41,42)を備え、電機子コイルとして3相の相コイルを有している。つまり、本実施形態の各モータM1,M2は、界磁が2極のブラシ付き3相直流モータとして構成されている。
【0042】
尚、第1モータM1と第2モータM2は同じ構成であるため、以下、図3の説明については、第1モータM1を対象として説明を続ける。
第1モータM1は、各ブラシ16,17と接触する3つの整流子片11,12,13からなる整流子10を備えている。そして、電機子コイルを構成する3つ(3相)の各相コイルL1,L2,L3が、それぞれ、図示のようにΔ結線されている。
【0043】
即ち、第3整流子片13と第1整流子片11との間に第1相コイルL1が接続され、第1整流子片11と第2整流子片12との間に第2相コイルL2が接続され、第2整流子片12と第3整流子片13との間に第3相コイルL3が接続されている。これら3つの相コイルL1,L2,L3からなる電機子コイル及び整流子10により、アーマチャが構成される。なお、各相コイルL1,L2,L3のインダクタンスは同じ値(L1=L2=L3)である。また、各相コイルL1,L2,L3は、互いに電気角で2/3πずつ離れるように配置されている。
【0044】
そして、3つの整流子片11,12,13のうちいずれか2つが、各ブラシ16,17にそれぞれ接触しており、各モータM1,M2の回転による整流子10の回転に伴って、各ブラシ16,17と接触する2つの整流子片は切り替わっていく。
【0045】
更に、本実施形態では、第1モータM1において、第1相コイルL1と並列に、コンデンサC1が接続されている。
コンデンサC1は、周知の通り、直流的には電流がほとんど流れない非常に高い抵抗として機能し、交流的には周波数が高くなればなるほど電流が流れやすい低インピーダンス特性を有する。そのため、直流電源2からみればこのコンデンサC1は等価的に存在しないものとして扱うことができ、よって、直流電源2からの直流電流は各相コイルL1,L2,L3にのみ流れることとなる。
【0046】
一方、各ブラシ16,17間の第1モータM1内の回路(モータ回路)を交流回路としてみれば、各相コイルL1,L2,L3は高インピーダンスであるのに対してコンデンサC1は低インピーダンスとなり、両者の差は大きい。そのため、例えば図3に示す状態から第1モータM1が時計回りに回転(即ち整流子10が時計回りに回転)して、第2ブラシ17に第1整流子片11が接触するようになると、各ブラシ16,17間に、第1相コイルL1とコンデンサC1の並列回路(並列共振回路)が形成される。そのため、その状態では、各ブラシ16,17間のモータ回路のインピーダンスは並列共振特性を有し、その共振周波数以上の周波数帯域では周波数が高くなればなるほどインピーダンスは低くなる。
【0047】
つまり、直流的にみればモータ回路は3つの相コイルL1,L2,L3のみからなる回路とみなせ、故に、直流電源2からの直流電流によって回転する第1モータM1の回転速度やトルクにコンデンサC1の存在が影響することはない。
【0048】
これに対し、交流的にみれば、第1モータM1の回転角に応じて各ブラシ16,17と接触する2つの整流子片が切り替わる毎に、各ブラシ間に形成されるモータ回路も変化し、よってモータ回路のインピーダンスも変化する。但し、本実施形態では、第1相コイルL1に対してのみコンデンサC1を一つ接続しているため、第1モータM1が180°回転する間に整流子片の切り替わりは3回生じるもののインピーダンスの変化は二段階である。
【0049】
図4(a)に、第1モータM1が180°回転する間における、第1モータM1内部の結線状態の変化、即ち各ブラシ16,17間に形成されるモータ回路の変化を示す。図4(a)に示すように、本実施形態の第1モータM1のモータ回路は、第1モータM1が180°回転する間に、主として回転状態Ma、回転状態Mb、及び回転状態Mcの三種類に変化する。
【0050】
回転状態Maは、図示の如く、第1ブラシ16に第1整流子片11が接触し、第2ブラシ17に第2整流子片12が接触した状態である。この回転状態Maでの第1モータM1の等価回路、即ち各ブラシ16,17間に形成されるモータ回路は、図中右側に示す回路となる。
【0051】
この回転状態Maでは、コンデンサC1と第3相コイルL3とが直列に接続された状態となっているため、各ブラシ16,17間には、コンデンサC1のみの通電経路は存在せず、一方のブラシ16から他方のブラシ17に至るまでの経路には必ずいずれかの相コイルが存在することになる。そのため、この回転状態Maでは、各相コイルL1,L2,L3によるインダクタンスが支配的となってモータ回路全体のインピーダンスは高くなる。
【0052】
回転状態Mbは、回転状態Maから時計回りに約50°回転した状態であり、第1ブラシ16に接触する整流子片が、回転状態Maのときの第1整流子片11から第3整流子片13へと切り替わっている。第2ブラシ17には第2整流子片12が接触している。
【0053】
この回転状態Mbでも、コンデンサC1と第2相コイルL2とが直列に接続された状態となっているため、各ブラシ16,17間には、コンデンサC1のみの通電経路は存在せず、第1ブラシ16から第2ブラシ17に至るまでの経路には必ずいずれかの相コイルが存在することになる。そのため、この回転状態Mbでもモータ回路全体のインピーダンスは高い。なお、この回転状態Mbと回転状態Maは、図の等価回路を比較して明らかなように、回路全体のインピーダンスは同じである。
【0054】
回転状態Mcは、回転状態Mbからさらに時計回りに約50°回転した状態であり、第2ブラシ17に接触する整流子片が、回転状態Ma,Mbのときの第2整流子片12から第1整流子片11へと切り替わっている。第1ブラシ16には第3整流子片13が接触している。
【0055】
この回転状態Mcでは、第2相コイルL2及び第3相コイルL3の直列回路と、第1相コイルL1と、コンデンサC1とが、それぞれ並列接続された状態となる。そのため、各ブラシ16,17間には、コンデンサC1のみの通電経路が存在する。つまり、各ブラシ間に並列共振回路が接続された状態となる。これにより、モータ回路のインピーダンスは、その並列共振回路の共振周波数より高い領域においては、周波数が高くなるほどコンデンサC1が支配的となってインピーダンスは低くなる。
【0056】
このように、第1モータM1が180°回転する間には、各ブラシ16,17と接触する整流子片の切り替わりが3回生じ、これに伴って各ブラシ16,17間のモータ回路は回転状態Ma,Mb,Mcの三種類に切り替わる。但し回転状態Maと回転状態Mbは、既述の通り、回路全体のインピーダンスが等しいため、180°回転の間に生じるインピーダンスの変化は二段階である。
【0057】
尚、第1モータM1の回転の過程では、隣接する2つの整流子片に一つのブラシが同時に接触する切り替わり期間が存在し、この切り替わり期間においてもブラシ間のインピーダンスが変化するが、この切り替わり期間は第1モータM1が一回転する間において瞬間的に生じるのみであり、これに伴うインピーダンスの変化も瞬間的なものである。そのため、本実施形態ではこの切り替わり期間については考慮しないものとする。
【0058】
回転状態Mcから更に回転が進むと、第1ブラシ16に接触する整流子片が、回転状態Mcのときの第3整流子片13から第2整流子片12へと切り替わる。第2ブラシ17には第1整流子片11が接触している。この状態は、上述した回転状態Maにおいて、第1ブラシ16と第2ブラシ17とが入れ替わった状態であり、モータ回路全体のインピーダンスは回転状態Maと同じである。そのため、以下の説明ではこの状態を回転状態Ma’という。
【0059】
この回転状態Ma’から更に回転が進むと、第2ブラシ17に接触する整流子片が、回転状態Ma’のときの第1整流子片11から第3整流子片13へと切り替わる。第1ブラシ16には第2整流子片12が接触している。この状態は、上述した回転状態Mbにおいて、第1ブラシ16と第2ブラシ17とが入れ替わった状態であり、モータ回路全体のインピーダンスは回転状態Mbと同じである。そのため、以下の説明ではこの状態を回転状態Mb’という。
【0060】
この回転状態Mb’から更に回転が進むと、第1ブラシ16に接触する整流子片が、回転状態Mb’のときの第2整流子片12から第1整流子片11へと切り替わる。第2ブラシ17には第3整流子片13が接触している。この状態は、上述した回転状態Mcにおいて、第1ブラシ16と第2ブラシ17とが入れ替わった状態であり、モータ回路全体のインピーダンスは回転状態Mcと同じである。そのため、以下の説明ではこの状態を回転状態Mc’という。
【0061】
そして、この回転状態Mc’から更に回転が進むと、再び回転状態Maに切り替わり、以下、回転が進むにつれて回転状態Mb→回転状態Mc→回転状態Ma’→回転状態Mb’→回転状態Mc’→回転状態Ma→・・・と切り替わる。
【0062】
つまり、第1モータM1は、一回転する間にその回転角に応じてモータ回路が回転状態Ma、Mb、Mc、Ma’、Mb’、Mc’の六種類に順次切り替わるのであり、60°回転毎に状態が切り替わるということになる。このうち、回転状態Ma、Mb、Ma’、Mb’は、いずれも同じインピーダンス(高インピーダンス)である。また、回転状態Mc、Mc’も同じインピーダンスであり、その値は回転状態Ma等のインピーダンスよりも非常に低い。このような構成により、各ブラシ16,17間のインピーダンス(モータ回路のインピーダンス)は、第1モータM1の回転に伴って周期的に変化することになる。
【0063】
図4(b)に、各状態におけるモータ回路のインピーダンスの周波数特性を示す。上述の通り、回転状態Ma,Mb,Ma’,Mb’のモータ回路のインピーダンスは同じである。この回転状態Ma,Mb,Ma’,Mb’の場合、コンデンサC1の影響はほとんどなく、周波数faで小さなピーク値(共振点)が生じるものの、全体としてみれば周波数が高くなるほどインピーダンスが増加する特性となる。
【0064】
これに対し、回転状態Mc,Mc’の場合、各相コイルL1,L2,L3とコンデンサC1との共振によってインピーダンス特性は大きく変化し、共振周波数fbを中心(最大値)としてインピーダンスは小さくなる。そのため、回転状態Ma,Mb,Ma’,Mb’と回転状態Mc,Mc’とでは、インピーダンスが一致(特性が交差)する周波数fcを除き、インピーダンスが異なる。特に、周波数fcよりもある程度高い周波数以上の帯域では、インピーダンスの比が大きくなる。
【0065】
そのため、本実施形態では、交流重畳部4から出力される交流電流の基本波成分の周波数(以下「交流基本周波数」という)が、上記周波数fcよりも高い所定の周波数f1となるように設定されている。
【0066】
そして、上述したモータ回路のインピーダンスの変化は、第1モータM1に流れるモータ電流に含まれる交流成分(交流モータ電流)の変化、或いはそのモータ電流が流れる通電経路の電圧に含まれる交流成分(交流電圧成分)の変化として直接現れる。
【0067】
そこで、図1に示すように、第1交流検出部6が、第1モータM1の通電経路の電圧を検出し、その検出電圧に含まれる交流成分に基づいて、第1モータM1の回転状態を示す第1回転パルスSP1を生成する。
【0068】
図5(b)は、第1モータM1が正転方向に回転しているときに第1交流検出部6により検出される第1ノードN1の電圧の一例である。図5(b)に示すように、第1ノードN1の検出電圧は、直流成分に交流成分が重畳した波形となる。そして、交流成分に着目すると、交流基本周波数f1に対するインピーダンスが小さい回転状態Mc(Mc’)の間は振幅が大きく、逆にインピーダンスが大きい回転状態Ma(Ma’),回転状態Mb(Mb’)の間は振幅が小さくなる。即ち、第1モータM1が180°回転する間に、交流成分の振幅は二種類(二段階)に変化するのである。
【0069】
そこで本実施形態では、第1交流検出部6が、第1モータM1の回転に伴う上記インピーダンスの変化によって生じる、第1ノードN1の交流電圧成分の振幅変化に基づいて、第1モータM1の回転状態を示す第1回転パルスSP1を生成する。第1交流検出部6にて生成される第1回転パルスSP1は、図5(c)に示すように、振幅の大きい回転状態Mc(Mc’)の期間でハイレベル、振幅の小さい回転状態Ma(Ma’),回転状態Mb(Mb’)の期間でローレベルとなるようなパルス信号となる。
【0070】
図6に、第1交流検出部6の具体的構成を示す。第1交流検出部6は、第1ノードN1の電圧を検出する検出抵抗R1と、ハイパスフィルタ(HPF)21と、レベルシフト回路22と、包絡線検波部23と、ローパスフィルタ(LPF)24と、比較部25と、閾値設定部26と、を備えている。
【0071】
図7に、検出抵抗R1により検出される検出電圧の一例を示す。図7は、各交流検出部6,7のうち、特に第1交流検出部6について、その内部動作例を駆動状態毎に概略例示したものである。具体的には、駆動状態A〜Gの各々について、各トランジスタTr1〜Tr6のON・OFF状態を示すと共に、第1モータM1の検出電圧(即ち第1ノードN1の電圧)波形、第1交流検出部6におけるHPF21の出力波形、レベルシフト回路22の出力波形、包絡線検波部23の出力波形、第1回転パルスSP1の波形がそれぞれ例示されている。第2交流検出部7については、最終的に出力される第2回転パルスSP2のみ、図7の最下段に例示されている。
【0072】
図7に示すように、検出抵抗R1により検出される検出電圧は、駆動状態Bや駆動状態Fのように第1モータM1に対して正転方向に通電がなされる場合には正の電圧となり、駆動状態Cや駆動状態Gのように第1モータM1に対して逆転方向に通電がなされる場合には負の電圧となる。尚、これら検出電圧の振幅が周期的に増減(二段階に変化)している理由は、図5(b)等を用いてすでに説明した通りである。
【0073】
HPF21は、コンデンサC11及び抵抗R2からなる周知の構成のものである。検出抵抗R1による検出電圧は、このHPF21によって所定の遮断周波数以下の帯域の信号がカットされる。この遮断周波数は、交流基本周波数f1よりも低い周波数に設定されている。そのため、交流重畳部4から出力される交流電流の全ての周波数成分(交流基本周波数f1の成分及びその高調波成分)がHPF21を通過することとなる。検出抵抗R1により検出された検出電圧は、このHPF21によって低周波域がカットされ、図7に示すように、0Vを中心として振幅する波形となる。
【0074】
HPF21により抽出された信号は、レベルシフト回路22によって、レベルシフト及び増幅される。
レベルシフト回路22は、オペアンプ27と、このオペアンプ27の出力端子と反転入力端子との間に接続された抵抗R5と、一端がこのオペアンプ27の非反転入力端子に接続されて他端がグランドラインに接続された抵抗R6と、一端がこのオペアンプ27の反転入力端子に接続された抵抗R4と、一端がこのオペアンプ27の非反転入力端子に接続された抵抗R3と、レベルシフトさせる量に対応した所定の基準電圧を生成する基準電圧生成部29と、オペアンプ28と、を備えている。このオペアンプ28は、反転入力端子と出力端子が短絡された、いわゆる電圧フォロワとして構成されており、非反転入力端子に入力された基準電圧生成部29からの基準電圧がそのままの値で入力される。このオペアンプ28の出力端子は抵抗R4の他端に接続されており、オペアンプ28からの出力電圧(即ち基準電圧)は、抵抗R4を介してオペアンプ27の反転入力端子に入力される。
【0075】
一方、オペアンプ27は、これに接続された各抵抗R3,R4,R5と共に全体として非反転増幅回路を構成している。そして、HPF21からの検出信号は、抵抗R3を介してオペアンプ27の非反転入力端子に入力される。
【0076】
そのため、HPF21からの検出信号は、基準電圧生成部29にて生成される基準電圧だけレベルシフト(レベルダウン)されると共に、上記の非反転増幅回路にて増幅される。つまり、図7に示すように、HPF21からの出力信号に対して基準電圧だけ直流オフセットが加えられ、更に増幅されて、0V以上の電圧が包絡線検波部23へ出力される。
【0077】
レベルシフト回路22にてレベルシフト、増幅された信号は、包絡線検波部23にて包絡線検波される。この包絡線検波部23は、整流用のダイオードD1と、一端がこのダイオードD1のカソードに接続されて他端がグランド電位に接続された抵抗R7と、一端がダイオードD1のカソードに接続されて他端がグランド電位に接続されたコンデンサC12とを備えてなるものであり、ダイオードD1のアノードに、レベルシフト回路22からの信号が入力される。
【0078】
この包絡線検波部23により、レベルシフト回路22から入力された信号が包絡線検波され、図7に示すように、交流電流の振幅に応じた一定の信号(以下「検波信号」という)が生成される。
【0079】
そして、その生成された検波信号は、LPF24にて高周波成分がカットされた上で、比較部25に入力される。LPF24は、抵抗R8及びコンデンサC13からなる周知の構成のものである。なお、抵抗R8にはダイオードD2が並列接続されている。このダイオードD2の接続方向は、検波信号が入力される方向に対して逆方向となっている。
【0080】
比較部25は、コンパレータ30と、コンパレータ30の出力端子と反転入力端子との間に接続された抵抗R11と、一端がコンパレータ30の非反転入力端子に接続されて他端がLPF24に接続された抵抗R9と、一端がコンパレータ30の反転入力端子に接続されて他端が閾値設定部26に接続された抵抗R10とを備えてなるものである。
【0081】
包絡線検波部23から出力された検波信号は、LPF24を介して比較部25に入力され、この比較部25において抵抗R9を介してコンパレータ30の非反転入力端子に入力される。一方、コンパレータ30の反転入力端子には、抵抗R10を介して閾値設定部26からの閾値が入力される。これにより、コンパレータ30では、検波信号と閾値との比較が行われ、その比較結果が出力される。
【0082】
閾値設定部26にて設定され比較部25に入力される閾値は、本実施形態では、図5(b)に示した検出電圧のうち振幅が小さい期間(つまり回転状態Ma、Mb、Ma’、Mb’の期間)での検波信号よりも大きく、且つ、振幅が大きい期間(つまり回転状態Mc、Mc’の期間)での検波信号よりも小さい、所定の値が設定されている。
【0083】
そのため、振幅の小さい期間では、包絡線検波部23から比較部25へ入力される検波信号は0Vであって閾値設定部26からの閾値よりも小さいため、コンパレータ30からはローレベルの信号が出力される。一方、振幅の大きい期間では、包絡線検波部23から比較部25へ入力される検波信号は閾値よりも大きくなるため、コンパレータ30からはハイレベルの信号が出力される。
【0084】
そして、コンパレータ30から出力されるローレベル、ハイレベルの信号が、図7に示すように、第1モータM1の回転角に応じた第1回転パルスSP1として制御部3へ出力される。
【0085】
尚、第2モータM2に対する第2回転パルスSP2を生成する第2交流検出部7の構成も、上記の第1交流検出部6の構成と全く同じである。即ち、第2交流検出部7は、第2モータM2の第2ブラシ42と第3インダクタL03の他端との間の通電経路における第2ノードN2の電圧を検出し、その検出電圧に基づいて、上述した第1回転パルスSP1と同様の信号処理を経て、第2回転パルスSP2を生成し、制御部3へ出力する。
【0086】
制御部3は、図1に示すように、第1回転検出部31及び第2回転検出部32を備えている。第1回転検出部31は、第1交流検出部6から出力された第1回転パルスSP1が入力され、その第1回転パルスSP1に基づいて、例えばその第1回転パルスSP1の立ち上がりエッジを検出・計数するといった方法により、第1モータM1の回転角を検出する。そして、その検出された回転角は、制御部3内の図示しない第1モータM1の制御回路にフィードバックされ、第1モータM1の制御に用いられる。
【0087】
第2回転検出部32は、第2交流検出部7から出力された第2回転パルスSP2が入力され、その第2回転パルスSP2に基づいて、例えばその第2回転パルスSP2の立ち上がりエッジを検出・計数するといった方法により、第2モータM2の回転角を検出する。そして、その検出された回転角は、制御部3内の図示しない第2モータM2の制御回路にフィードバックされ、第2モータM2の制御に用いられる。
【0088】
なお、本実施形態のモータ駆動システム1は、各回転パルスSP1,SP2に基づいて各モータM1,M2の回転角を検出するよう構成されているが、各回転パルスSP1,SP2の間隔(例えば立ち上がりエッジの間隔)に基づいて各モータM1,M2の回転速度も(あるいは回転速度のみを)検出するよう構成してもよい。
【0089】
また、本実施形態では、第1ハーフブリッジ回路B1と第1ノードN1の間に第1インダクタL01が配置され、第2ハーフブリッジ回路B2と共通接続ノードN0の間に第2インダクタL02が配置され、第3ハーフブリッジ回路B3と第2ノードN2の間に第3インダクタL03が配置されている。これら各インダクタのうち、第1インダクタL01は、第1ノードN1をグランドから分離するためのものであり、第2インダクタL02は、共通接続ノードN0をグランドから分離するためのものであり、第3インダクタL03は、第2ノードN2をグランドから分離するためのものである。
【0090】
交流重畳部4からみた交流等価回路は、共通接続ノードN0から第1モータM1、第1インダクタL01、及び第1ハーフブリッジ回路B1を経てグランドに至る回路(第1回路)と、共通接続ノードN0から第2インダクタL02及び第2ハーフブリッジ回路B2を経てグランドに至る回路(第2回路)と、共通接続ノードN0から第2モータM2、第3インダクタL03、及び第3ハーフブリッジ回路B3を経てグランドに至る回路(第3回路)と、が並列に接続された状態となる。
【0091】
仮に、第2インダクタL02が設けられていないとすると、第2回路のインピーダンスは実質的に第2ハーフブリッジ回路B2の各トランジスタTr3,Tr4のインピーダンスと等価となり、これら2つのトランジスタのうちいずれか一方がONされると、第2回路のインピーダンスはそのONされたトランジスタのON抵抗(通常、非常に小さい値)となる。そのため、交流重畳部4からの交流電流は、その多くが第2回路に分流してしまい、本来必要な第1回路及び第3回路(即ち各モータM1,M2側)に流れる分が少なくなってしまう。そして、そのように各モータM1,M2への交流電流の通電量が少なくなると、各交流検出部6,7により検出される交流電圧の振幅変化も鈍くなり、各回転パルスSP1、SP2の生成精度が低下してしまうおそれがある。
【0092】
そこで本実施形態では、第2回路に第2インダクタL02を配置してこの第2回路のインピーダンスを高くし、これにより、交流重畳部4からの交流電流の多くが各モータM1,M2側へ分流するようにしている。
【0093】
また、第1回路において仮に第1インダクタL01が設けられていないとすると、第1ハーフブリッジ回路B1を構成する各トランジスタTr1,Tr2のうちいずれか一方がONされると、第1ノードN1の電位はグランド電位にごく近くなり、よって第1ノードN1の交流電圧の振幅変化が鈍くなってしまう。そこで本実施形態では、第1回路に第1インダクタL01を配置して第1ノードN1とグランドとを電気的に分離することで、第1ノードN1の電圧変動の振幅が大きくなるようにしている。第3回路において第3インダクタL03を設けている理由も、この第1インダクタL01と同じであり、第2ノードN2とグランドとを電気的に分離して第2ノードN2の電圧変動の振幅が大きくなるようにするためである。
【0094】
以上説明したように、本実施形態のモータ駆動システム1は、3つのハーフブリッジ回路B1,B2,B3を用いて2つのモータM1,M2を個別に駆動制御できるよう構成されている。そして、各モータM1,M2が相互に接続される共通接続ノードN0に1つの交流重畳部4からの交流電圧を印加(重畳)させることで、この1つの交流重畳部4から各モータM1,M2のいずれか又は双方へ交流電圧を印加させることができる。つまり、1つの交流重畳部4から、共通の交流電圧が、各モータM1,M2に印加され、直流電圧が印加されている間はその直流電圧に重畳される。そのため、モータの数(本例では2つ)に対して交流重畳部4の使用数を抑制することができ、これによりシステム全体の小型化・コストダウンが可能となる。
【0095】
特に、本実施形態の交流重畳部4は、交流電源5とカップリングコンデンサC0とからなるものであるため、交流重畳部4の使用数抑制により交流電源5の使用数が削減できる効果は大きい。また、カップリングコンデンサC0についても、原理的にその静電容量は大きい方が望ましいため、例えばIC(集積回路)内にコンデンサを集積させるのではなく、ICとは別に外付けで設けるケースが現実的である。そのため、本発明の適用によりカップリングコンデンサC0の使用数も低減できることは、システム全体の小型化・コストダウンに大きく寄与することになる。
【0096】
また、交流重畳部4は1つであるものの、交流検出部については各モータM1,M2毎に個別に設けられており、各モータM1,M2毎に独立して各回転パルスSP1,SP2が生成される。そのため、当該システムの駆動状態にかかわらず、各モータM1,M2の回転角を独立して検出することができる。
【0097】
また、本実施形態では、各ハーフブリッジ回路B1,B2,B3と各ノードN1,N0,N2との間にそれぞれ第1インダクタL01,第2インダクタL02,第3インダクタLO3を配置し、これにより各ノードN1,N0,N2とグランドとの分離を図っている。そのため、各交流検出部N1,N2において交流電圧の振幅を十分に発生させることができ、交流電圧の検出、延いては各回転パルスSP1,SP2の検出を高精度で行うことができる。
【0098】
尚、本実施形態において、各モータM1,M2が有するコンデンサC1は本発明のモータ側インピーダンス素子に相当し、3つのハーフブリッジ回路B1,B2,B3は本発明のモータ駆動回路に相当し、交流重畳部4は本発明の交流重畳手段に相当し、2つの交流検出部6,7は本発明の回転信号生成手段に相当し、2つの回転検出部31,32は本発明の回転状態検出手段に相当し、第2インダクタL02は本発明の回路側インピーダンス素子に相当する。
【0099】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態のモータ駆動システム50について、図8を用いて説明する。図1と比較して明らかなように、本実施形態のモータ駆動システム50は、第1実施形態のモータ駆動システム1に対し、モータが1つ多く搭載されており、これに伴い、ハーフブリッジ回路、交流検出部、及び制御部内の回転検出部がそれぞれ、1つずつ追加されている。以下、第1実施形態のモータ駆動システム1と異なる部分に絞って説明する。
【0100】
本実施形態のモータ駆動システム50は、第1モータM1及び第2モータM2に加え、更に第3モータM3を備えている。この第3モータM3も、他の各モータM1,M2と全く同じ構成・スペックのものである。この第3モータM3が備える各ブラシ43,44のうち一方の第1ブラシ43は、共通接続ノードN0に接続されており、他方の第2ブラシ44は、第4インダクタL04を介して第4ハーフブリッジ回路B4に接続されている。
【0101】
第4ハーフブリッジ回路B4は、第7トランジスタTr7と第8トランジスタTr8とが直列に接続されて構成されている。具体的には、第7トランジスタTr7のエミッタと第8トランジスタTr8のコレクタが互いに接続され、その接続点は第4インダクタL04の一端に接続されている。また、第7トランジスタTr7のコレクタは、直流電源2の正極に接続され、第8トランジスタTr8のエミッタは、直流電源2の負極に接続されている。そして、第7トランジスタTr7のベースには制御部51からの第7制御信号ST7が入力され、第8トランジスタTr8のベースには制御部51からの第8制御信号ST8が入力される。
【0102】
このように、本実施形態のモータ駆動システム50では、3つのモータM1,M2,M3に対して交流重畳部4が1つだけ設けられており、この1つの交流重畳部4が3つのモータM1,M2,M3に共用される。
【0103】
そして、第4インダクタL04の他端と第3モータM3の第2ブラシ44との間の通電経路における第3ノードN3には、第3交流検出部8が接続されている。この第3交流検出部8は、第3モータM3の回転に伴う各ブラシ43,44間のインピーダンスの変化によって生じる、第3ノードN3の交流電圧成分の振幅変化に基づいて、第3モータM3の回転状態を示す第3回転パルスSP3を生成するものであり、その具体的構成は、図6に示した第1交流検出部6の構成と全く同じである。
【0104】
一方、制御部3には、第1回転検出部31及び第2回転検出部32に加えて第3回転検出部33が設けられており、この第3回転検出部33が、第3交流検出部8からの第3回転パルスSP3に基づいて第3モータM3の回転角を検出する。
【0105】
尚、本実施形態のモータ駆動システム50では、制御部51からの各制御信号ST1〜ST8によって、図9に示すように27種類の駆動状態が実現される。図9は、各駆動状態毎に、各モータM1,M2,M3の回転状態及び各トランジスタTr1〜Tr8のON・OFF状態を示すものである。図9に示すように、例えば第1モータM1を正転させて第3モータM3を逆転させる駆動状態Pでは、第1ハーフブリッジ回路B1における第1トランジスタTr1と第2ハーフブリッジ回路B2における第4トランジスタTr4と第4ハーフブリッジ回路B4における第7トランジスタTr7とがONされる。
【0106】
このように構成された本実施形態のモータ駆動システム50によれば、4つのハーフブリッジ回路B1,B2,B3,B4を用いて3つのモータM1,M2,M3を個別に駆動制御できる。そして、各モータM1,M2,M3が相互に接続される共通接続ノードN0に1つの交流重畳部4からの交流電圧を印加(重畳)させることで、この1つの交流重畳部4から各モータM1,M2,M3のいずれか1つ又は2つ又は全てに対して交流電圧を印加させることができる。そのため、モータの数(本例では3つ)に対して交流重畳部4の使用数を抑制することができ、これによりシステム全体の小型化・コストダウンが可能となる。
【0107】
[変形例]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0108】
例えば、上記実施形態では、第1交流検出部6が、第1ノードN1の電圧を検出し、その検出電圧に含まれる交流成分に基づいて第1回転パルスSP1を生成するようにしたが、このようにノードの電圧に基づいて回転パルスを生成する方法はあくまでも一例である(他の各交流検出部7,8についても同様)。例えば、通電経路上に電流検出抵抗を配置し、その電流検出抵抗の両端の電圧を検出することによってモータに流れる電流を検出し、その検出電流に含まれる交流成分に基づいて回転パルスSPを生成するようにしてもよい。つまり、モータに流れる交流電流に関する(即ち交流電流を直接又は間接的に示す)電気量を検出し、その検出した電気量に基づいて回転パルスSPを生成できる限り、その具体的構成は他にも種々考えられる。
【0109】
また、上記実施形態では、モータの数が2つの場合及び3つの場合について説明したが、システムを構成するモータの数は特に限定されるものではなく、4つ以上のモータを用いたモータ駆動システムにおいても同様に本発明を適用できる。また、モータを構成するブラシの数(対数)についても、上記実施形態のように一対のブラシに限らず、複数対のブラシを有するモータであってもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、複数のモータに対して1つの交流重畳部4を用いて交流電圧を印加する構成を例示したが、交流重畳部の数は1つに限らず、使用するモータの数よりも少ない数である限り特に限定されるものではない。
【0111】
図10に示すモータ駆動装置70は、3つのモータM1,M2,M3に対して2つの交流重畳部71,72を用いて交流電圧を印加するよう構成されたものである。このモータ駆動装置70は、図8に示した第2実施形態のモータ駆動システム50と比較して、第3モータM3の第1ブラシ43が第2ノードN2に接続されている点、共通接続ノードN1に接続された第1交流重畳部71(図8の交流重畳部4と同じ)の他に第2ノードN2にも別の第1交流重畳部72が接続されている点、及び制御部73がこれら2つの交流重畳部71,72を制御する点で異なり、それ以外は第2実施形態と同じである。尚、第2交流重畳部72は、図10の例では第1交流重畳部71と同じ構成のものであるが、互いに異なる構成のものであってもよい。
【0112】
このように構成されたモータ駆動装置70では、第1交流重畳部71からの交流電圧は第1モータM1及び第2モータM2の回転状態検出に用いられ、第2交流重畳部72からの交流電圧は第3モータM3の回転状態検出に用いられる。このような構成によっても、各モータM1,M2,M3の回転状態を、モータ数よりも少ない数の交流重畳部によって検出できるため、システム全体の小型化・コストダウンが可能となる。
【0113】
また、上記実施形態では、各モータを駆動するための駆動回路として、複数のハーフブリッジ回路からなる駆動回路を示したが、本発明の適用はハーフブリッジ回路を備えたモータ駆動システムに限定されるものではない。
【0114】
また、上記実施形態のモータは、各相コイルL1,L2,L3のうち第1相コイルと並列にコンデンサC1が接続された構成であったが、この構成はあくまでも一例である。例えば、何れか2つの相コイルにそれぞれ静電容量が同じ又は異なるコンデンサを並列接続してもよいし、何れか1つの相コイルに別途コイルを並列接続してもよい。また例えば、コンデンサやコイルなどのインピーダンス素子を接続する構成以外の他の構成でもよく、結果として回転に伴ってブラシ間のインピーダンスが周期的に変化する限り、モータ内部の具体的構成は種々考えられる。尚、既述の通り、第1モータM1の回転の過程では、隣接する2つの整流子片に一つのブラシが同時に接触する切り替わり期間が存在し、この切り替わり期間においてもブラシ間のインピーダンスが変化する。上記実施形態では、この切り替わり期間で瞬間的に生じるインピーダンスの変化は考慮しないものとしたが、この瞬間的に生じるインピーダンスの変化を利用して(即ちそのインピーダンス変化により生じる交流成分の瞬間的な変化に基づいて)回転状態を検出するようにしてもよい。
【0115】
更に、回転に伴うブラシ間のインピーダンスの変化をより多段階に発生させることで、モータの回転方向を検出できるようにしてもよい。例えば、上記実施形態のモータにおいて、更に、第2相コイルL2と並列にコンデンサを設ける。但しこのコンデンサは、第1相コイルL1に並列接続されたコンデンサC1とは静電容量が異なるものとする。モータをこのように構成することで、モータが180度回転する間にブラシ間のインピーダンスは三段階に変化し、これにより交流成分の振幅も三段階に変化する。そこで、その交流成分の振幅の変化パターンに基づいて、モータの回転方向を検出することができる。
【0116】
また、上記実施形態では、交流重畳部4を構成する交流電源5が、図5(a)に例示したような方形波電圧を生成するものであったが、これもあくまでも一例であり、交流電源5がどのような交流電圧を生成するかについては特に限定されるものではない。
【0117】
また、上記実施形態では、各ノードN1,N0,N2と各ハーフブリッジ回路B1,B2,B3との間に各インダクタL01,L02,L03を配置したが、インダクタに代えて例えば抵抗を配置するなど、他の種類のインピーダンス素子を配置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0118】
1,50,70…モータ駆動システム、2…直流電源、3,51,73…制御部、4…交流重畳部、5…交流電源、6…第1交流検出部、7…第2交流検出部、8…第3交流検出部、10…整流子、11…第1整流子片、12…第2整流子片、13…第3整流子片、16,41,43…第1ブラシ、17,42,44…第2ブラシ、21…HPF、22…レベルシフト回路、23…包絡線検波部、24…LPF、25…比較部、26…閾値設定部、27,28…オペアンプ、29…基準電圧生成部、30…コンパレータ、31…第1回転検出部、32…第2回転検出部、33…第3回転検出部、60…ハウジング、61,62…磁石、71…第1交流重畳部、72…第2交流重畳部、B1…第1ハーフブリッジ回路、B2…第2ハーフブリッジ回路、B3…第3ハーフブリッジ回路、B4…第4ハーフブリッジ回路、C0…カップリングコンデンサ、C1,C11,C12,C13…コンデンサ、D1,D2…ダイオード、L01…第1インダクタ、L02…第2インダクタ、L03…第3インダクタ、L04…第4インダクタ、L1…第1相コイル、L2…第2相コイル、L3…第3相コイル、M1…第1モータ、M2…第2モータ、M3…第3モータ、N0…共通接続ノード、N1…第1ノード、N2…第2ノード、N3…第3ノード、R1…検出抵抗、R2〜R11…抵抗、SP…回転パルス、Tr1…第1トランジスタ、Tr2…第2トランジスタ、Tr3…第3トランジスタ、Tr4…第4トランジスタ、Tr5…第5トランジスタ、Tr6…第6トランジスタ、Tr7…第7トランジスタ、Tr8…第8トランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図10
図9